(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130564
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ロジン系サイズ剤の定着方法
(51)【国際特許分類】
D21H 21/16 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
D21H21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034909
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 夏彦
(72)【発明者】
【氏名】若松 英之
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AG08
4L055AG50
4L055AG71
4L055AG72
4L055AH09
4L055AH11
4L055EA08
4L055EA10
4L055EA25
4L055EA32
4L055FA17
(57)【要約】
【課題】
製紙工程における抄紙前の製紙原料において、水溶性高分子を使用し、パルプ繊維にロジン系サイズ剤を定着させ優れたサイズ効果が得られ、安定な操業を図ることができるサイズ定着方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
硫酸バンド及びロジン系サイズ剤を添加後、特定の組成を有するアニオン性水溶性高分子を添加することで、優れたサイズ定着効果が得られると共にロジン系サイズ剤の添加率を削減でき、未定着のサイズ剤による成紙欠陥や製紙工程の汚れや発泡等のトラブルの抑制が達成できる。アニオン性水溶性高分子の25℃で測定した0.5質量%における、4質量%食塩水溶液中の固有粘度が3~30dl/gの範囲にあることが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙工程における抄紙前の製紙原料に、硫酸バンド及びロジン系サイズ剤を添加後、下記一般式(1)で表されるアニオン性単量体5~80モル%、非イオン性単量体20~95モル%を構成単位とするアニオン性水溶性高分子を添加することを特徴とするサイズ定着方法。
一般式(1)
R
1は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO
3
-、C
6H
4SO
3
-、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3
-、C
6H
4COO
-あるいはCOO
-、R
2は水素またはCOOY
2、Y
1あるいはY
2は水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記アニオン性水溶性高分子の25℃で測定した0.5質量%における、4質量%食塩水溶液中の固有粘度が3~30dl/gの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のサイズ定着方法。
【請求項3】
前記アニオン性水溶性高分子をパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上の製紙原料に添加することを特徴とする請求項1あるいは2に記載のサイズ定着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙工程における紙のサイズ定着方法に関するものであり、詳しくは、水溶性高分子を用いたロジン系サイズ剤のパルプ繊維への定着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工程において、成紙に耐水性を付与する目的で使用されるサイズ剤は、高品質の紙を製造するためには必要不可欠な製紙用薬品の一つである。サイズ剤の中でもロジン系サイズ剤は、アルケニル無水コハク酸サイズ剤やアルキルケテンダイマーサイズ剤の様に管理が煩雑ではないことや印刷適正に劣ることがなく高いサイズ効果が得られるため有用であり、特に中性抄造化により中性ロジン系サイズ剤使用の要望が高い。そこで、酸性抄造においてロジン系サイズ剤の定着剤として従来、使用されてきた硫酸バンドの代用や併用として、水溶性高分子の定着剤が種々考案されてきた。
例えば、特許文献1では、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩を必須成分として5~90モル%含む複数種の水溶性単量体の重合体であって、極限粘度が8dl/g以上である重合体の使用、特許文献2では、特定のモノマー単位30~100モル%とアクリルアミド単位0~70モル%を有し、1モル/L塩化ナトリウム水溶液を溶媒として25℃で測定した固有粘度が0.5~3dL/gであるカチオン性ポリマーの使用がそれぞれ開示されている。
これらは何れもカチオン性あるいは両性水溶性高分子であり、ロジン系サイズ剤の表面電荷がアニオン性に帯電しているため、ロジン系サイズ剤の定着剤としてカチオン性水溶性高分子の検討が主に行われてきたという経緯がある。
しかし、未だロジン系サイズ剤の満足な定着効果が得られていない場合が多く、サイズ度の向上を図るためにサイズ剤の添加率を増加するとコストアップになり、又、未定着となったサイズ剤は成紙欠陥や汚れの発生等のピッチトラブルの要因となるため、更なる高いサイズ定着方法が求められおり、本発明の課題である。
【0003】
【特許文献1】特開平8-144189号公報
【特許文献2】特開2002-249995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、製紙工程における抄紙前の製紙原料において、水溶性高分子を使用し、パルプ繊維にロジン系サイズ剤を定着させ優れたサイズ効果が得られ、安定な操業を図ることができるサイズ定着方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、以下に述べる発明に達した。即ち、特定の組成を有する水溶性高分子を特定の条件で添加することでロジン系サイズ剤定着の向上が達成できることを見出したものである。
【発明の効果】
【0006】
製紙工程において抄紙前の製紙原料に、硫酸バンド及びロジン系サイズ剤を添加後、特定の組成を有するアニオン性水溶性高分子を添加することで、優れたサイズ定着効果が得られると共に未定着のサイズ剤による成紙欠陥、製紙工程の汚れ、発泡等のトラブルを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明におけるアニオン性水溶性高分子は、下記一般式(1)で表されるアニオン性単量体5~80モル%、非イオン性単量体20~95モル%を含有する単量体混合物水溶液を重合して製造したものである。一般式(1)で表わされるアニオン性単量体は5~60モル%が好ましく、5~50モル%がより好ましい。これは、アニオン性単量体がこの範囲にあるとサイズ定着効果がより得られやすいためである。
一般式(1)
R
1は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO
3
-、C
6H
4SO
3
-、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3
-、C
6H
4COO
-あるいはCOO
-、R
2は水素またはCOOY
2、Y
1あるいはY
2は水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【0008】
一般式(1)で表されるアニオン性単量体としては、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸あるいはp-カルボキシスチレン酸、あるいはそれらの塩、等が挙げられる。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。
【0009】
本発明で使用する非イオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。
【0010】
本発明におけるアニオン性水溶性高分子は、重合時にカチオン性単量体を含有することができるが、カチオン性単量体を多く含むとアニオン性水溶性高分子の効果を阻害するため全単量体に対して10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。カチオン性単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である。その例として、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物等が挙げられる。
【0011】
本発明におけるアニオン性水溶性高分子の製品形態は特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。即ち、アニオン性単量体及び非イオン性単量体を含有する単量体混合物を共重合することによって製造することができる。重合はこれら単量体を混合した水溶液を調製した後、例えば、水溶液重合、油中水型エマルジョン重合、油中水型分散重合、塩水中分散重合等によって重合した後、水溶液、油中水型エマルジョン、塩水中分散液、あるいは粉末等、任意の製品形態を使用できる。これら重合法の中でも分子量の調整がしやすい油中水型エマルジョン重合あるいは塩水中分散重合が好ましい。
【0012】
油中水型エマルジョンの重合方法としては、特開昭55-137147号公報、特開昭59-130397号公報、特開平10-140496号公報、特開2011-99076号公報等に準じて適宜に製造することができる。即ち、アニオン性単量体及び非イオン性単量体含有する単量体混合物を水、水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合する。
【0013】
本発明におけるアニオン性水溶性高分子を塩水中分散重合法によって行なう場合は、特開62-20511号公報、特開平10-212320号公報あるいは特開2004-231822号公報等に準じて適宜に製造することができる。即ち、塩水溶液中において、該塩水溶液中に溶解可能な高分子分散剤を共存させアニオン性単量体及び非イオン性単量体混合物を分散重合して製造する。
【0014】
本発明におけるアニオン性水溶性高分子は、重合時あるいは重合後、構造変性剤として、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン等の架橋性単量体を使用しても良い。
【0015】
本発明におけるアニオン性水溶性高分子は、より高いサイズ定着効果を得るには一定の分子量範囲を有することが好ましい。本発明では分子量を固有粘度で表わす。アニオン性水溶性高分子の25℃で測定した0.5質量%における、4質量%食塩水溶液中の固有粘度が3~30dl/gの範囲であるが、好ましくは7~30dl/g、より好ましくは10~30dl/gである。固有粘度が3dl/gより低いとサイズ定着効果が著しく低下し、30dl/gより高いと紙の品質、特に地合いが低下する傾向にあり好ましくはない。極限粘度法による重量平均分子量では、100万から3000万の範囲であり、300万から3000万が好ましい。
【0016】
サイズ定着剤は、従来、製紙工程でのリファイナー、原料配合チェスト、ミキシングチェスト、マシンチェスト、種箱等のパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上の様々な場所に添加されているが、一般的にサイズ定着剤としてカチオン性水溶性高分子を硫酸バンドの効果を補う目的で硫酸バンドの前に添加する方法が採用されていることが多い。一方、本発明におけるアニオン性水溶性高分子は、硫酸バンドとロジン系サイズ剤を添加した後に添加することが必須である。これは、先ず硫酸バンドによりアルミニウム塩を形成しロジン系サイズ剤がパルプ繊維に定着する。そのままでは下流工程で定着したサイズ剤が徐々に剥離する。一方、アルミニウム塩を形成したロジン系サイズ剤は若干プラスに帯電しており、その後に添加するアニオン性水溶性高分子との凝結作用により、ロジン系サイズ剤がパルプ繊維に定着することが促進され、優れたサイズ効果を発現するという機構が推測される。硫酸バンドとロジン系サイズ剤の添加場所は、パルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上の種箱等のアニオン性水溶性高分子と同じ場所であっても良いし、それより上流のリファイナー、原料配合チェスト、ミキシングチェスト、マシンチェスト等でも良い。硫酸バンドとロジン系サイズ剤は同時であっても良いが、好ましくは、硫酸バンド、ロジン系サイズ剤の添加順序である。
【0017】
製紙工程の上流からパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上で移送されてきた製紙原料が下流の抄紙機の直前では白水や清水等によりパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%より低い製紙原料に希釈されている。一般的には0.5~1.5質量%に希釈されており、ファンポンプやスクリーンという装置を通過して抄紙機に移送され抄紙される。抄紙機に移送される直前の希釈された製紙原料はインレット原料やヘッドボックス原料(以下、インレット原料とする。)と呼ばれており、硫酸バンド、ロジン系サイズ剤の添加後に、本発明におけるアニオン性水溶性高分子を添加するという添加順序であれば、パルプ乾燥固形分濃度が0.5~1.5質量%に希釈された製紙原料(インレット原料)にも適用することが可能である。この場合、添加場所としてはせん断工程であるファンポンプ通過後からスクリーン前あるいはスクリーン通過後に添加する。パルプ乾燥固形分濃度が0.5~1.5質量%に希釈された製紙原料に高分子量のアニオン性水溶性高分子を添加する場合は、抄造条件によっては紙質の地合いが悪化する場合があるため、パルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上の製紙原料に添加する方が好ましい。
【0018】
本発明における方法を適用する対象抄造製紙原料としては特に限定はなく、新聞用紙、上質印刷用紙、中質印刷用紙、グラビア印刷用紙、PPC用紙、塗工原紙、微塗工紙、包装用紙、ライナーや中芯原紙の板紙等が挙げられるサイズ性付与が最も求められる板紙原料において特に効果が顕著である。
【0019】
本発明におけるアニオン性水溶性高分子の添加率は、パルプ乾燥固形分に対しポリマー純分として5~1000ppm、好ましくは10~500ppmである。5ppmより低いとサイズ剤定着効果が得られ難く、1000ppmを超えると過剰添加でありサイズ定着作用に関与しないアニオン性水溶性高分子が製紙工程でのピッチトラブルの要因となり好ましくはない。又、本発明におけるアニオン性水溶性高分子は、紙力剤、凝結剤やその他の製紙用薬品と併用することができる。
本発明におけるアニオン性水溶性高分子は、水で0.01~1.0質量%に希釈溶解して使用する。溶解する水は、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等が任意に使用できる。
硫酸バンドの添加率は、対製紙原料当たり有姿として0.5~10質量%の範囲で適用される。好ましくは2~10質量%である。サイズ剤の添加率は、対製紙原料当たり固形分0.05~1質量%の範囲である。
【実施例0020】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0021】
(サイズ定着用水溶性高分子試料)
本発明におけるアニオン性水溶性高分子試料A~E、比較試料としてカチオン性水溶性高分子試料Fをそれぞれ水溶液重合法、油中水型エマルジョン重合法の常法により調製した。これらの組成、物性を表1に示す。
【0022】
(表1)
単量体組成;AAC:アクリル酸、AAM:アクリルアミド、DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物
製品形態;AQ:水溶液重合体、EM:油中水型エマルジョン
固有粘度;水溶性高分子の25℃において測定した0.5質量%における、4質量%食塩水溶液中の固有粘度。
【0023】
(実施例1、2)
某製紙会社から入手したライナー板紙製造種原料(pH8.0、カチオン要求量BTG社製PCD05型測定140μeq/L、乾燥固形分濃度3.5質量%)を対象にサイズ度効果試験を実施した。表1に記載の各試料は純水で0.1質量%に溶解し試験に用いた。
前記種原料の所定量を1Lポリ容器に採取し、硫酸バンドを5質量%添加、400rpmで30秒攪拌、ロジン系サイズ剤(市販品、濃度50質量%)を0.44質量%添加、10秒攪拌、アニオン性水溶性高分子試料Aを300ppm添加、60秒撹拌した(何れも種箱添加想定、添加率は対製紙原料固形分)。その後、ポリ容器に清水を所定量加え、30秒攪拌後、TAPPIスタンダード抄紙機(80メッシュワイヤー使用)で坪量65g/m2になる様に抄紙した。抄紙した湿紙を4.1kgf/cm2で5分間、プレス機にてプレス脱水し、回転式ドラムドライヤーで105℃、3分間乾燥後、23℃、RH50%の条件で24時間調湿し、JIS P-8140に準じて成紙のCobb吸水度を測定した。これを実施例1とする。又、アニオン性水溶性高分子試料Aを試料Bに替えた以外は同様な操作で同様な試験を実施した。これを実施例2とする。これらの結果を表2に示す。
【0024】
(実施例3)
実施例1と同じ種原料の所定量を1Lポリ容器に採取し、硫酸バンドを5質量%添加、400rpmで30秒攪拌、ロジン系サイズ剤(市販品、濃度50質量%)を0.44質量%添加、70秒攪拌した(何れも種箱添加想定、添加率は対製紙原料固形分)。その後、ポリ容器に清水を所定量加え、20秒攪拌後、アニオン性水溶性高分子試料Bを300ppm添加、10秒攪拌後(スクリーン通過後添加想定、添加率は対製紙原料固形分)、TAPPIスタンダード抄紙機(80メッシュワイヤー使用)で坪量65g/m2になる様に抄紙した。抄紙した湿紙を4.1kgf/cm2で5分間、プレス機にてプレス脱水し、回転式ドラムドライヤーで105℃、3分間乾燥後、23℃、RH50%の条件で24時間調湿し、JIS P-8140に準じて成紙のCobb吸水度を測定した。結果を表2に示す。
【0025】
(比較例1)
実施例1と同じ種原料の所定量を1Lポリ容器に採取し、硫酸バンドを5質量%添加、400rpmで30秒攪拌、アニオン性水溶性高分子試料Aを300ppm添加、10秒攪拌、ロジン系サイズ剤(市販品、濃度50質量%)を0.44質量%添加、60秒攪拌した(何れも種箱添加想定、添加率は対製紙原料固形分)。その後、ポリ容器に清水を所定量加え、30秒攪拌後、TAPPIスタンダード抄紙機(80メッシュワイヤー使用)で坪量65g/m2になる様に抄紙した。抄紙した湿紙を4.1kgf/cm2で5分間、プレス機にてプレス脱水し、回転式ドラムドライヤーで105℃、3分間乾燥後、23℃、RH50%の条件で24時間調湿し、JIS P-8140に準じて成紙のCobb吸水度を測定した。結果を表2に示す。
【0026】
【0027】
実施例1~3の添加方法では、比較例1に比べてCobb吸水度が小さい値を示し、硫酸バンド、サイズ剤を添加後に本発明におけるアニオン性水溶性高分子を添加するとサイズ定着効果が優れることが分かった。
【0028】
(実施例4~7)
段ボール古紙原料(pH8.2、カチオン要求量BTG社製PCD05型測定70μeq/L、乾燥固形分濃度2.25質量%、叩解度349mL)を対象にサイズ度効果試験を実施した。表1に記載の各試料は純水で0.1質量%に溶解し試験に用いた。
前記段ボール古紙原料の所定量を1Lポリ容器に採取し、硫酸バンドを4質量%添加、500rpmで30秒攪拌、ロジン系サイズ剤(市販品、濃度50質量%)を0.1質量%添加、30秒攪拌、アニオン性水溶性高分子試料Bを200ppm添加、60秒撹拌した(何れも種箱添加想定、添加率は対製紙原料固形分)。その後、ポリ容器に清水を所定量加え、30秒攪拌後、TAPPIスタンダード抄紙機(80メッシュワイヤー使用)で坪量105g/m2になる様に抄紙した。抄紙した湿紙を4.1kgf/cm2で5分間、プレス機にてプレス脱水し、回転式ドラムドライヤーで105℃、3分間乾燥後、23℃、RH50%の条件で24時間調湿し、JIS P-8140に準じて成紙のCobb吸水度を測定した。これを実施例4とする。又、アニオン性水溶性高分子試料Bを試料C~Eに替えた以外は同様な操作で同様な試験を実施した(実施例5~7)。これらの結果を表3に示す。
【0029】
(比較例2~4)
実施例4と同じ原料を対象に本発明における範囲外の方法で同様な試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
【0030】
【0031】
実施例4~7の硫酸バンドとサイズ剤の添加後にアニオン性水溶性高分子を添加した方法が、比較例2~4に比べてCobb吸水度の値が小さくサイズ度が良好であることが分かった。又、汎用品であるカチオン性水溶性高分子試料F添加時よりも本発明における方法のサイズ度が良好であった。これは、硫酸バンドを介在してサイズ剤がパルプ繊維に定着し、更にその後のアニオン性水溶性高分子との凝結作用によりロジン系サイズ剤がパルプ繊維に定着することが促進されたことが考えられる。
【0032】
本発明におけるサイズ剤の定着方法により優れたサイズ定着効果が得られる結果、ロジン系サイズ剤の添加率を削減でき、未定着のサイズ剤による成紙欠陥や製紙工程の汚れや発泡等のトラブルの抑制が可能となる。