(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130575
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20230913BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20230913BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A61F13/494 200
A61F13/49 413
A61F13/49 312Z
A61F13/51
A61F13/494 111
A61F13/494 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034931
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】納 瑞穂
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA05
3B200BA12
3B200BB03
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA06
3B200DA01
3B200DA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】使い捨ておむつの装着時に、排泄物の背側から外部への漏れ出しを防止して、装着者の腰部の皮膚に過度の刺激が加わるのを抑制することができる使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】内装体と外装体を設け、平面視において、背側外装体3の身体側面に、吸収要素の前後方向の背側部を覆うギャザー部材を設け、ギャザー部材を、前後方向で2つ折りにした液透過性のギャザーシート41と、液不透過性の防水シート42と、前後方向に第1間隔L1を隔てて幅方向に延在する伸縮部材43で形成し、ギャザー部材の腹側部を身体側から後側に折り返して、ギャザー部材における身体側に位置する身体部と反身体側に位置する反身体部を形成し、身体部の幅方向の両側部を反身体部に固定し、身体部の最も背側部に設けられた伸縮部材43を、身体部の背側端部から前後方向の前側に第2間隔L2を隔てて設けた。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、液不透過性のバックシートと、前記表面シートとバックシートの間の吸収要素とから形成される内装体と、
前記内装体の反身体面側に、矩形形状の背側外装体と、矩形状の腹側外装体とから形成される外装体を設け、
平面視において、前記背側外装体の身体側面に、前記吸収要素の前後方向の背側部を覆うギャザー部材を設け、
前記ギャザー部材を、前後方向で2つ折りにした液透過性のギャザーシートと、液不透過性の防水シートと、前後方向に第1間隔を隔てて幅方向に延在する伸縮部材で形成し、
前記ギャザー部材の腹側部を身体側から後側に折り返して、前記ギャザー部材における身体側に位置する身体部と反身体側に位置する反身体部を形成し、
前記身体部の幅方向の両側部を反身体部に固定し、
前記身体部の最も背側部に設けられた伸縮部材を、前記身体部の背側端部から前後方向の前側に第2間隔を隔てて設けたことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記第2間隔を、第1間隔の50~150%に形成した請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記身体部に延在する防水シートを身体側のギャザーシートと伸縮部材の間に設け、前記反身体部に延在する防水シートを身体側のギャザーシートと反身体側のギャザーシートの間に設けた請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
平面視において、前記防水シートの背側端部を、前記身体部の最も背側部に設けられた伸縮部材に位置させた請求項1~3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記反身体部の幅方向の両側部を背側外装体と立体ギャザーに固定し、前記反身体部の幅方向の中間部を表面シートに固定した請求項1~4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
平面視において、前記反身体部の幅方向の中間部を表面シートにおける吸収要素の吸収体の背側部と重なる位置に固定した請求項5記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関するものであり、特に、吸収体の背側部にギャザー部材を設けて排泄物の外部への漏れ出しを防止した使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸収体の背側部に、身体側に向けて起立するギャザー部材を設けて吸収体の身体側面を移動してくる排泄物の外部への漏れ出しを防止する技術が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、ギャザー部材の起立部の先端部に伸縮部材が設けられているために、使い捨ておむつの装着時に、装着者の腰部の背側に接触して、装着者の腰部の背側の皮膚に過度の刺激が加わる恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、使い捨ておむつの装着時に、排泄物の背側から外部への漏れ出しを防止して、装着者の腰部の皮膚に過度の刺激が加わるのを抑制することができる使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した手段は以下のとおりである。
第1手段は、液透過性の表面シートと、液不透過性のバックシートと、前記表面シートとバックシートの間の吸収要素とから形成される内装体と、前記内装体の反身体面側に、矩形形状の背側外装体と、矩形状の腹側外装体とから形成される外装体を設け、平面視において、前記背側外装体の身体側面に、前記吸収要素の前後方向の背側部を覆うギャザー部材を設け、前記ギャザー部材を、前後方向で2つ折りにした液透過性のギャザーシートと、液不透過性の防水シートと、前後方向に第1間隔を隔てて幅方向に延在する伸縮部材で形成し、前記ギャザー部材の腹側部を身体側から後側に折り返して、前記ギャザー部材における身体側に位置する身体部と反身体側に位置する反身体部を形成し、前記身体部の幅方向の両側部を反身体部に固定し、前記身体部の最も背側部に設けられた伸縮部材を、前記身体部の背側端部から前後方向の前側に第2間隔を隔てて設けたことを特徴とする。
【0007】
第2手段は、第1手段において、前記第2間隔を、第1間隔の50~150%に形成したことを特徴とする。
【0008】
第3手段は、第1又は2手段において、前記身体部に延在する防水シートを身体側のギャザーシートと伸縮部材の間に設け、前記反身体部に延在する防水シートを身体側のギャザーシートと反身体側のギャザーシートの間に設けたことを特徴とする。
【0009】
第4手段は、第1~3のいずれかの手段において、平面視において、前記防水シートの背側端部を、前記身体部の最も背側部に設けられた伸縮部材に位置させたことを特徴とする。
【0010】
第5手段は、第1~4のいずれかの手段において、前記反身体部の幅方向の両側部を背側外装体と立体ギャザーに固定し、前記反身体部の幅方向の中間部を表面シートに固定したことを特徴とする。
【0011】
第6手段は、第5手段において、平面視において、前記反身体部の幅方向の中間部を表面シートにおける吸収要素の吸収体の背側部と重なる位置に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1手段によれば、液透過性の表面シートと、液不透過性のバックシートと、表面シートとバックシートの間の吸収要素とから形成される内装体と、内装体の反身体面側に、矩形形状の背側外装体と、矩形状の腹側外装体とから形成される外装体を設け、平面視において、背側外装体の身体側面に、吸収要素の前後方向の背側部を覆うギャザー部材を設け、ギャザー部材を、前後方向で2つ折りにした液透過性のギャザーシートと、液不透過性の防水シートと、前後方向に第1間隔を隔てて幅方向に延在する伸縮部材で形成し、ギャザー部材の腹側部を身体側から後側に折り返して、ギャザー部材における身体側に位置する身体部と反身体側に位置する反身体部を形成し、身体部の幅方向の両側部を反身体部に固定し、身体部の最も背側部に設けられた伸縮部材を、身体部の背側端部から前後方向の前側に第2間隔を隔てて設けたので、使い捨ておむつの装着時に、装着者の腰部の背側に接触する身体部の背側端部にキャザーシートで囲まれる空間が形成されて、装着者の腰部の背側の皮膚に過度の刺激が加わるのを防止することができる。また、使い捨ておむつの装着時に、身体部を装着者の腰部の背側に向かって起立させて、吸収要素の背側部に移動してきた排泄物の外部への漏れ出しを防止することができる。
【0013】
第2手段によれば、第1手段による効果に加えて、第2間隔を、第1間隔の50~150%に形成したので、装着者の腰部の背側の皮膚に過度の刺激が加わるのをより防止することができ、また、使い捨ておむつの装着時に、キャザーシートで囲まれる空間が過度に変形するのを防止することができる。
【0014】
第3手段によれば、第1又は2手段による効果に加えて、身体部に延在する防水シートを身体側のギャザーシートと伸縮部材の間に設け、反身体部に延在する防水シートを身体側のギャザーシートと反身体側のギャザーシートの間に設けたので、吸収要素の背側部に移動してきた排泄物の外部への漏れ出しをより防止することができる。
【0015】
第4手段によれば、第1~3のいずれかの手段による効果に加えて、平面視において、防水シートの背側端部を、身体部の最も背側部に設けられた伸縮部材に位置させたので、空間の外周部の設けられたキャザーシートには緩やかな皺が形成されて、装着者の腰部の背側の皮膚に過度の刺激が加わるのをさらに防止することができる。
【0016】
第5手段によれば、第1~4のいずれかの手段による効果に加えて、反身体部の幅方向の両側部を背側外装体と立体ギャザーに固定し、反身体部の幅方向の中間部を表面シートに固定したので、吸収要素の背側部に大きなポケットを形成して、多くの排泄物をポケット内に滞留させることができる。
【0017】
第6手段によれば、第1手段による効果に加えて、平面視において、反身体部の幅方向の中間部を表面シートにおける吸収要素の吸収体の背側部と重なる位置に固定したので、ポケット内に滞留した排泄物を吸収要素の吸収体に吸収させて、排泄物の外部への漏れ出しをさらに防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】
図1のギャザー部材を除いたB-B断面図である。
【
図6】ギャザー部材の一部を断面した平面図である。
【
図8】
図5のギャザー部材の拡大図であり、装着時の状態に合わせて上下を逆さに図示した説明図である。
【
図9】背側外装体の身体側の一部を断面した平面図である。
【
図11】腹側外装体の身体側の一部を断面した平面図である。
【0019】
図1~5に示すように、使い捨ておむつは、内装体1と、内装体1の反身体側面に設けられた外装体2で形成されている。外装体2は、装着時に装着者の腰部の背側に対向する背側外装体3と、腹側に対向する腹側外装体4から形成されている。また、背側外装体3の幅方向の両側部と腹側外装体4の幅方向の両側部は連結されて周状に形成される。
【0020】
内装体1は、身体側に設けられた液透過性の表面シート10と、反身体側に設けられた液不透過性のバックシート11と、表面シート10とバックシート11の間に設けられた吸収要素20から形成されている。
【0021】
表面シート10と吸収要素20の間には、不織布等からなる中間シートを設けるのが好ましい。これにより、表面シート10を透過した排泄物を吸収要素20に効率良く移動させて排泄物の逆戻りをより防止することができる。
【0022】
吸収要素20は、吸収体21と、吸収体21を覆う包装シート22とから形成されている。
【0023】
吸収要素20の幅方向の両側には、身体面側に向かって起立する立体ギャザー30が設けられている。これにより、吸収要素20の幅方向の両側部に移動してきた排泄物の移動を立体ギャザー30で抑制して、排泄物が吸収要素20の幅方向の両側部から外部に漏れ出すのを防止することができる。
【0024】
立体ギャザー30は、吸収要素20の前後方向の長さと略同一長さに形成された矩形形状のシートを二つ折りにして形成したギャザーシート31と、ギャザーシート31の間に設けられた防水シート32と、ギャザーシート31の間に前後方向に沿って伸長状態でホットメルト等の接着剤で固定された細長状の伸縮部材33から形成されている。
【0025】
立体ギャザー30の反身体側面における背側部は、表面シート10を介して吸収要素20の包装シート22の身体側面に固定され、背側固定部35は、前後方向に長手方向を有する矩形形状に形成されている。また、立体ギャザー30の反身体側面における腹側部は、表面シート10を介して吸収要素20の包装シート22の身体側面に固定され、腹側固定部36は、前後方向に長手方向を有する矩形形状に形成されている。
【0026】
立体ギャザー30は、吸収要素20の側部を前後方向と幅方向に直交する上下方向に延在し、吸収要素20の反身体側に回り込んだ後、立体ギャザー30の基部は、バックシート11の反身体側面の幅方向側部に固定されている。
【0027】
吸収要素20の前後方向の背側部は、ギャザー部材40で覆われている。これにより、吸収要素20の身体面側における左右の立体ギャザー30の間を前後方向の背側部に移動してきたしてきた排泄物の移動をギャザー部材40で抑制して、排泄物の外部に漏れ出すのを防止することができる。
【0028】
ギャザー部材40は、背側外装体3の幅方向の長さと略同一長さに形成された矩形形状のシートを二つ折りにして形成したギャザーシート41と、ギャザーシート41の間に設けられた防水シート42と、ギャザーシート41の間に幅方向に沿って伸長状態で固定された細長状の伸縮部材43から形成されている。
【0029】
ギャザー部材40の腹側部は、身体側からギャザー部材40の背側部に向かって折り曲げられ身体部40Aを形成している。身体部40Aの反身体側面における幅方向の両側部は、ギャザー部材40の背側部である反身体部40Bの身体側面における幅方向の両側部に固定され、固定部44は、前後方向に長手方向を有する矩形形状に形成されている。これにより、使い捨ておむつの装着時に、身体部40Aを装着者の腰部の背側に向かってより起立させて、排泄物の外部に漏れ出すのをより防止することができる。
【0030】
反身体部40Bの反身体側面における幅方向の両側部は、立体ギャザー30の身体側面における背側部と、背側外装体3の身体側面における立体ギャザー30よりも外側の部位
に固定され、固定部45は、幅方向に長手方向を有する矩形形状に形成されている。また、反身体部40Bの反身体側面における前後方向の中間部は、表面シート10の身体側面における吸収要素20の吸収体21の背側部に対向する部位に固定され、固定部46は、幅方向に長手方向を有する矩形形状に形成されている。なお、固定部46の幅方向の両側部は、それぞれ固定部45に連結されている。これにより、使い捨ておむつの装着時に、反身体部40Bの幅方向の中間部が装着者の腰部の背側に向かって起立してポケットの入り口になって、排泄物をポケット内に滞留させ、一部の滞留した排泄物を吸収体21に吸収させて排泄物の外部に漏れ出すのをさらに防止することができる。また、本明細書では、ポケットとは、背側外装体3と表面シート10の身体面側と反身体部40Bの反身体側面における固定部45と固定部46で囲まれた部位をいう。
【0031】
図6,7に示すように、身体部40Aには、前後方向に所定の間隔(請求項の「第1間隔」)L1を隔てて幅方向に延在する伸縮部材43が設けられ、伸縮部材43における身体部40Aの最も背側端部側に設けられた伸縮部材43は、身体部40Aの背側端部、すなわち、ギャザーシート41の二つ折り部から前後方向に所定の間隔(請求項の「第2間隔」)L2を隔てた前側に設けられている。これにより、身体部40Aの最も背側端部側に設けられた伸縮部材43と身体部40Aの背側端部の間に空間Sを形成することができるので、使い捨ておむつの装着時に、身体部40Aの空間Sを形成するギャザーシート41が装着者の腰部の背側に接触して、装着者の腰部の背側の皮膚に過度の刺激が加わるのを防止することができる。
【0032】
本実施形態では、身体部40Aの前後方向の長さを15mmに形成し、身体部40Aの最も背側端部側に設けられた伸縮部材43と身体部40Aの背側端部の間隔L2を、身体部40Aの伸縮部材43の間隔L1と同一間隔である5mmに形成しているが、間隔L2を間隔L1の50%~150%である2.5~7.5mmに形成することもできる。
【0033】
間隔L2を間隔L1の50%未満である2.5mm未満に形成した場合には、使い捨ておむつの装着時に、身体部40Aの最も背側端部側に設けられた伸縮部材43が装着者の腰部の背側の皮膚に接触する恐れがあり、間隔L2を間隔L1の150%超である7,5mm超に形成した場合には、使い捨ておむつの装着時に、空間Sを形成するギャザーシート41が過度に変形する恐れがある。
【0034】
伸縮部材43の外周部には、幅方向に所定の間隔を隔てて固定部47が形成されている。伸縮部材43は、固定部47を介して、ギャザーシート41と防水シート42に固定されている。これにより、
図8に示すように、使い捨ておむつの装着時に、伸縮部材43が収縮してギャザーシート41と防水シート42の身体側面と反身体側面に略山形の皺48が形成されて空間Sを形成するギャザーシート41にも身体側面と反身体側面に略山形の皺48が形成されるので、装着者の腰部の背側の皮膚に過度の刺激が加わるのを防止し、装着者にふわふわ感を与えることができる。
【0035】
身体部40Aでは、身体側から順に、身体側のギャザーシート41、防水シート42、伸縮部材43、及び反身体側のギャザーシート41が設けられ、また、防水シート42の背側端部は、背側端部側に設けられた伸縮部材43と重なる位置に設けられている。これにより、使い捨ておむつの装着時に、身体側のギャザーシート41における防水シート42と対向する部位が伸縮部材43の収縮によって変形するのが抑制されるので、空間Sを形成するギャザーシート41に大きな皺の形成が防止され、空間Sを形成するギャザーシート41の高い柔軟性が維持されて、装着者の腰部の背側の皮膚に過度の刺激が加わるのをより防止することができる。
【0036】
反身体部40Bでは、身体側から順に、身体側のギャザーシート41、防水シート42、及び反身体側のギャザーシート41が設けられている。これにより、ギャザー部材40のポケットに滞留した排泄物がポケットから外部に漏れ出すのを防止することができる。また、固定部46の幅方向の中間部は、表面シート10の身体側面における吸収要素20の背側部に対向する部位に固定されている。これにより、ポケットに滞留した排泄物を表面シート10を介して吸収要素20に移動させて吸収体21で吸収することができるので、ポケットに滞留した排泄物が反身体部40Bを超えて外部に漏れ出すのをより防止することができる。
【0037】
図9に示すように、背側外装体3は、矩形形状の内側シート50と、矩形形状の外側シート51と、内側シート50と外側シート51の間に上下方向に所定の間隔を隔てて幅方向に沿って伸長状態で固定された細長状の伸縮部材52から形成されている。
【0038】
伸縮部材52は、内側シート50と外側シート51における吸収要素20の背側端部よりも背側に設けられた伸縮部材52Aと、内側シート50と外側シート51における吸収要素20の背側端部よりも腹側に設けられた伸縮部材52Bから形成されている。
【0039】
伸縮部材52Bは、内側シート50と外側シート51における吸収要素20、特に吸収体21と重なる部位の幅方向の両側部には延出しているが、幅方向の両側部を除く中間部には延在していない。これにより、吸収要素20の背側端部を装着者の腰部の背側に向かって過度に押圧するのが抑制され、装着者の肌に装着痕が残るのを防止することができる。
【0040】
伸縮部材52の外周部には、幅方向に所定の間隔を隔てて固定部53が形成されている。伸縮部材52は、固定部53を介して、内側シート50と外側シート51に固定されている。これにより、
図10に示すように、装着時には、伸縮部材52が収縮して背側外装体3の身体側面と反身体側面に略山形の皺54が形成され、装着者の腰部の背側へのフィット性を高めることができる。
【0041】
図11に示すように、腹側外装体4は、矩形形状の内側シート55と、矩形形状の外側シート56と、内側シート55と外側シート56の間に上下方向に所定の間隔を隔てて幅方向に沿って伸長状態で固定された細長状の伸縮部材57から形成されている。
【0042】
伸縮部材57は、内側シート55と外側シート56における吸収要素20の腹側端部よりも腹側に設けられた伸縮部材57Aと、内側シート55と外側シート56における吸収要素20の腹側端部よりも背側に設けられた伸縮部材57Bから形成されている。
【0043】
伸縮部材57Bは、内側シート55と外側シート56における吸収要素20、特に吸収体21と重なる部位の幅方向の両側部には延出しているが、幅方向の両側部を除く中間部には延在していない。これにより、吸収要素20の背側端部を装着者の腰部の背側に向かって過度に押圧するのが抑制され、装着者の肌に装着痕が残るのを防止することができる。
【0044】
伸縮部材57の外周部には、幅方向に所定の間隔を隔てて固定部58が形成されている。伸縮部材57は、固定部58を介して、内側シート55と外側シート56に固定されている。これにより、
図12に示すように、装着時には、伸縮部材57が収縮して腹側外装体4の身体側面と反身体側面に略山形の皺59が形成され、装着者の腰部の腹側へのフィット性を高めることができる。
【0045】
次に、表面シート10等の素材および特徴部分について順に説明する。
(表面シート)
表面シート10は、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシート等で形成されている。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維等を例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
なお、表面シート10の表面には、予め親水性剤が塗布されているのは好ましい。
【0046】
(バックシート)
バックシート11は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とでバックシート11が構成される。)等で形成されている。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、バックシート11として用いることができる。
【0047】
(吸収体)
吸収体21は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0048】
吸収体21は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0049】
吸収体21の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート22上にある形態も排除されるものではない。
【0050】
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150~400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系等のものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体等のものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0051】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体21内に供給された液が吸収体21外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0052】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体21の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0053】
(包装シート)
包装シート22は、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等で形成されている。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン等を使用できる。繊維目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0054】
(ギャザーシート)
ギャザーシート31とギャザーシート41は、表面シート10と同じ素材を使用することができ、表面には予め撥水性剤が塗布されているのは好ましい。
【0055】
防水シート32と防水シート42は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて固定した積層シートを用いることができる。
【0056】
伸縮部材33と伸縮部材43は、太さ470~940dtexのゴム糸を用いることができ、伸長率200~300%に伸ばして設けている。
【0057】
(内側シート)
背側外装体3の内側シート50と腹側外装体4の内側シート55は、不織布で形成するのが好適である。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互を接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10~50g/m2、特に15~30g/m2のものが望ましい。
【0058】
(外側シート)
背側外装体3の外側シート51と腹側外装体4の外側シート56は、背側外装体3の内側シート50と腹側外装体4の内側シート55と同一素材を用いることができる。
【0059】
(伸縮部材)
背側外装体3の伸縮部材52と腹側外装体4の伸縮部材57は、太さ470~940dtexのゴム糸を用いることができ、伸長率200~300%に伸ばして設けている。
【0060】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0061】
・「前後(縦)方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
・「表側」とは装着者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは装着者の肌から遠い方を意味する。「表面」とは部材の、装着者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは装着者の肌から遠い方の面を意味する。
・「MD方向」及び「CD方向」とは、製造設備における流れ方向(MD方向)及びこれと直交する横方向(CD方向)を意味し、いずれか一方が製品の前後方向となるものであり、他方が製品の幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T471の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
・「展開」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
・「人工尿」は、尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したものであり、特に記載の無い限り、温度40度で使用される。
・「目付け量」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
・「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・試験や測定における環境条件についての記載がない場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に利用可能なものである。
【符号の説明】
【0063】
1 内装体
2 外装体
3 背側外装体
4 腹側外装体
10 表面シート
11 バックシート
20 吸収要素
21 吸収体
40 ギャザー部材
40A 身体部
40B 反身体部
41 ギャザーシート
42 防水シート
43 伸縮部材
L1 間隔(第1間隔)
L2 間隔(第2間隔)