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特開2023-130605加熱方法、加熱装置、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130605
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】加熱方法、加熱装置、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230913BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230913BHJP
   B23K 3/04 20060101ALI20230913BHJP
   B23K 3/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
H01L21/60 321Z
B23K1/00 330E
B23K3/04 Y
B23K3/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034986
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】岩月 忠宏
(57)【要約】
【課題】ヒータツールの下面を加熱対象の上面に当てて当該加熱対象を加熱するときの加熱効率を良くする。
【解決手段】加熱方法は、ヒータツールの下面をワークのICチップの上面に当ててヒータツールによりICチップを加熱する加熱方法である。加熱方法は、校正用ワークの上面からなる基準面に対するヒータツールの下面の傾きを取得する第1ステップと、基準面に対するICチップの上面の傾きを検出する第2ステップと、ヒータツールの下面の傾きとICチップの上面の傾きとに基づいて下面と上面とが平行となるようにヒータツールの向きを調整する第3ステップと、を備える。加熱方法は、第3ステップのあとにヒータツールをICチップに対して相対的に移動させて、ヒータツールの下面をICチップの上面に当てる第4ステップと、第4ステップのあとにヒータツールの下面を発熱させることで加熱対象を加熱する第5ステップと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータツールの下面を加熱対象の上面に当てて前記ヒータツールにより前記加熱対象を加熱する加熱方法であって、
基準面に対する前記ヒータツールの前記下面の傾きを取得する第1ステップと、
前記基準面に対する前記加熱対象の上面の傾きを検出する第2ステップと、
前記下面の前記傾きと前記上面の前記傾きとに基づいて前記下面と前記上面とが平行となるように前記ヒータツールの向きを調整する第3ステップと、
前記第3ステップのあとに前記ヒータツールを前記加熱対象に対して相対的に移動させて、前記ヒータツールの前記下面を前記加熱対象の前記上面に当てる第4ステップと、
前記第4ステップのあとに前記ヒータツールの前記下面を発熱させることで前記加熱対象を加熱する第5ステップと、
を備える加熱方法。
【請求項2】
前記加熱対象は、ステージに配置され、
前記基準面は、前記ステージ又は前記ステージに配置された校正用ワークの上面であり、
前記ヒータツールは、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を3軸とした3軸移動機構により、前記ステージに対して前記3軸の方向に相対的に移動し、
前記第1ステップは、
前記X軸及び前記Y軸を通るXY平面が前記基準面と平行になるように前記3軸移動機構の傾きを調整する第1-1ステップと、
前記第1-1ステップのあとに前記ヒータツールの前記下面を前記基準面に合わせ、前記下面を前記基準面に合わせたときの前記ヒータツールの向きを前記下面の前記傾きとして検出する第1-2ステップと、を備え、
前記第2ステップでは、前記第1-1ステップのあと、距離計を前記X軸及び前記Y軸の各方向に沿って3箇所以上の各位置に移動させ、かつ、前記距離計により前記各位置での前記加熱対象の上面までの各距離を計測し、計測結果に基づいて、前記基準面に対する前記加熱対象の前記上面の傾きを検出する、
請求項1に記載の加熱方法。
【請求項3】
前記第1-2ステップでは、前記ヒータツールの前記下面と前記基準面との間に感圧シートを介在させ、当該感圧シートの変色が一様になるように前記下面を前記上面に合わせる、
請求項2に記載の加熱方法。
【請求項4】
前記ヒータツールは、傾斜ステージにより支持されており、
前記第1-2ステップでは、前記傾斜ステージにより前記ヒータツールの向きを調整し、調整後の前記傾斜ステージの傾斜角を前記下面の傾きとして検出する、
請求項2又は3に記載の加熱方法。
【請求項5】
前記第4ステップでは、前記ヒータツールの前記下面を、柔軟性を有する熱伝導材を介して前記加熱対象の前記上面に当てる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱方法。
【請求項6】
前記加熱対象は、基板に半田付けされた電子部品であり、
前記加熱方法は、前記電子部品を前記基板に固定している半田を溶かして前記電子部品を前記基板から取り除くために、前記電子部品を加熱する加熱方法であり、
前記ヒータツールは、弾性部材により前記加熱対象の側に付勢されており、
前記第4ステップでは、
前記ヒータツールを支持する支持部材を前記加熱対象の側に相対的に移動させることで、前記ヒータツールの前記下面を前記加熱対象の前記上面に当て、
前記下面が前記上面に当たったあと前記ヒータツールが前記弾性部材の付勢力に抗して前記支持部材に対して相対的に変位する変位量が所定量に達したときに前記支持部材の移動を停止させる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の加熱方法。
【請求項7】
前記第5ステップでは、前記ヒータツールの前記下面の温度を半田接合温度よりも高い温度に、半田が溶け始めるまでの第1期間保持し、第1期間経過後前記下面の温度を前記半田接合温度まで低下させる、
請求項1から6のいずれか1項に記載の加熱方法。
【請求項8】
加熱対象が配置されるステージと、
前記加熱対象の上面に当たる下面を有し、当該下面により前記加熱対象を前記上面から加熱するヒータツールと、
前記ヒータツールの向きを調整する傾斜ステージと、
前記ヒータツールの近傍に設けられ、前記加熱対象との距離を計測する距離計と、
前記ヒータツール及び前記距離計を前記ステージに対して互いに直交するX軸方向及びY軸方向に相対的に移動させ、かつ、少なくとも前記ヒータツールを前記ステージ対して前記X軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向に相対的に移動させる3軸移動機構と、
前記ヒータツール、前記傾斜ステージ、及び、前記3軸移動機構を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
基準面に対する前記ヒータツールの前記下面の傾きを取得する第1処理と、
前記3軸移動機構により前記距離計を3箇所以上の各位置に移動させ、かつ、前記距離計により前記各位置での前記加熱対象の上面までの各距離を計測し、計測結果に基づいて、前記基準面に対する前記加熱対象の前記上面の傾きを検出する第2処理と、
前記下面の前記傾き及び前記上面の前記傾きに基づいて前記下面と前記上面とが平行となるように前記傾斜ステージを制御する第3処理と、
前記第3処理のあとに、前記3軸移動機構を制御し、前記ヒータツールを前記加熱対象に対して相対的に移動させて、前記下面を前記上面に当てる第4処理と、
前記第4処理のあとに、前記ヒータツールの前記下面を発熱させ、前記加熱対象を加熱する第5処理と、を行うように構成されている、
加熱装置。
【請求項9】
前記3軸移動機構の傾きを調整する傾き調整機構をさらに備え、
前記基準面は、前記ステージ又は前記ステージに配置された校正用ワークの上面であり、
前記第1処理は、
前記X軸及び前記Y軸を通るXY平面が前記基準面と平行になるよう前記3軸移動機構の傾きを調整する第1-1処理と、
前記第1-1処理のあとに前記ヒータツールの前記下面を前記基準面に合わせ、前記下面を前記基準面に合わせたときの前記傾斜ステージの傾斜角を前記下面の前記傾きとして検出する第1-2処理と、を備える、
請求項8に記載の加熱装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のコントローラに前記第1処理から前記第5処理を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱方法、加熱装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に半田付けされたIC(Integrated Circuit)チップが不良品であるときに、当該ICチップを新しいICチップに交換するリワーク技術が開発されている。このリワーク技術では、不良品のICチップを基板から取り外すときに半田を溶かすため、当該不良品のICチップをその上面から加熱することが行われている。特許文献1では、レーザ加熱によりICチップがその上面から加熱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-17230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ICチップをその上面から加熱する方法として、特許文献1に開示されているような非接触による加熱の他、ヒータツールの下面をICチップの上面に当ててICチップを加熱する方法も考えられる。このような方法としては、例えば、パルスヒート工法がある。パルスヒート工法は、温度制御が容易で、短時間での昇温によりICチップ周囲への熱影響を抑制できる点で、リワーク技術に好適である。しかし、ICチップの上面は、半田付けの際の作業誤差などにより、基板に対して傾いて固定されることもある。このような場合、ヒータツールの下面とICチップの上面とが平行とならず、両者の接触面積が小さくなり、その結果、加熱効率が悪くなってしまう。このような課題は、ヒータツールの下面を加熱対象の上面に当てて当該加熱対象を加熱する技術一般に生じ得る。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、ヒータツールの下面を加熱対象の上面に当てて当該加熱対象を加熱するときの加熱効率を良くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明にかかる加熱方法は、ヒータツールの下面を加熱対象の上面に当てて前記ヒータツールにより前記加熱対象を加熱する加熱方法であって、基準面に対する前記ヒータツールの前記下面の傾きを取得する第1ステップと、前記基準面に対する前記加熱対象の上面の傾きを検出する第2ステップと、前記下面の前記傾きと前記上面の前記傾きとに基づいて前記下面と前記上面とが平行となるように前記ヒータツールの向きを調整する第3ステップと、前記第3ステップのあとに前記ヒータツールを前記加熱対象に対して相対的に移動させて、前記ヒータツールの前記下面を前記加熱対象の前記上面に当てる第4ステップと、前記第4ステップのあとに前記ヒータツールの前記下面を発熱させることで前記加熱対象を加熱する第5ステップと、を備える。
【0007】
一例として、前記加熱対象は、ステージに配置され、前記基準面は、前記ステージ又は前記ステージに配置された校正用ワークの上面であり、前記ヒータツールは、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を3軸とした3軸移動機構により、前記ステージに対して前記3軸の方向に相対的に移動し、前記第1ステップは、前記X軸及び前記Y軸を通るXY平面が前記基準面と平行になるように前記3軸移動機構の傾きを調整する第1-1ステップと、前記第1-1ステップのあとに前記ヒータツールの前記下面を前記基準面に合わせ、前記下面を前記基準面に合わせたときの前記ヒータツールの向きを前記下面の前記傾きとして検出する第1-2ステップと、を備え、前記第2ステップでは、前記第1-1ステップのあと、距離計を前記X軸及び前記Y軸の各方向に沿って3箇所以上の各位置に移動させ、かつ、前記距離計により前記各位置での前記加熱対象の上面までの各距離を計測し、計測結果に基づいて、前記基準面に対する前記加熱対象の前記上面の傾きを検出する。
【0008】
一例として、前記第1-2ステップでは、前記ヒータツールの前記下面と前記基準面との間に感圧シートを介在させ、当該感圧シートの変色が一様になるように前記下面を前記上面に合わせる。
【0009】
一例として、前記ヒータツールは、傾斜ステージにより支持されており、前記第1-2ステップでは、前記傾斜ステージにより前記ヒータツールの向きを調整し、調整後の前記傾斜ステージの傾斜角を前記下面の傾きとして検出する。
【0010】
一例として、前記第4ステップでは、前記ヒータツールの前記下面を、柔軟性を有する熱伝導材を介して前記加熱対象の前記上面に当てる。
【0011】
一例として、前記加熱対象は、基板に半田付けされた電子部品であり、前記加熱方法は、前記電子部品を前記基板に固定している半田を溶かして前記電子部品を前記基板から取り除くために、前記電子部品を加熱する加熱方法であり、前記ヒータツールは、弾性部材により前記加熱対象の側に付勢されており、前記第4ステップでは、前記ヒータツールを支持する支持部材を前記加熱対象の側に相対的に移動させることで、前記ヒータツールの前記下面を前記加熱対象の前記上面に当て、前記下面が前記上面に当たったあと前記ヒータツールが前記弾性部材の付勢力に抗して前記支持部材に対して相対的に変位する変位量が所定量に達したときに前記支持部材の移動を停止させる。
【0012】
一例として、前記第5ステップでは、前記ヒータツールの前記下面の温度を半田接合温度よりも高い温度に、半田が溶け始めるまでの第1期間保持し、第1期間経過後前記下面の温度を前記半田接合温度まで低下させる。
【0013】
本発明に係る加熱装置は、加熱対象が配置されるステージと、前記加熱対象の上面に当たる下面を有し、当該下面により前記加熱対象を前記上面から加熱するヒータツールと、前記ヒータツールの向きを調整する傾斜ステージと、前記ヒータツールの近傍に設けられ、前記加熱対象との距離を計測する距離計と、前記ヒータツール及び前記距離計を前記ステージに対して互いに直交するX軸方向及びY軸方向に相対的に移動させ、かつ、少なくとも前記ヒータツールを前記ステージ対して前記X軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向に相対的に移動させる3軸移動機構と、前記ヒータツール、前記傾斜ステージ、及び、前記3軸移動機構を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、基準面に対する前記ヒータツールの前記下面の傾きを取得する第1処理と、前記3軸移動機構により前記距離計を3箇所以上の各位置に移動させ、かつ、前記距離計により前記各位置での前記加熱対象の上面までの各距離を計測し、計測結果に基づいて、前記基準面に対する前記加熱対象の前記上面の傾きを検出する第2処理と、前記下面の前記傾き及び前記上面の前記傾きに基づいて前記下面と前記上面とが平行となるように前記傾斜ステージを制御する第3処理と、前記第3処理のあとに、前記3軸移動機構を制御し、前記ヒータツールを前記加熱対象に対して相対的に移動させて、前記下面を前記上面に当てる第4処理と、前記第4処理のあとに、前記ヒータツールの前記下面を発熱させ、前記加熱対象を加熱する第5処理と、を行うように構成されている。
【0014】
一例として、上記加熱装置は、前記3軸移動機構の傾きを調整する傾き調整機構をさらに備え、前記基準面は、前記ステージ又は前記ステージに配置された校正用ワークの上面であり、前記第1処理は、前記X軸及び前記Y軸を通るXY平面が前記基準面と平行になるよう前記3軸移動機構の傾きを調整する第1-1処理と、前記第1-1処理のあとに前記ヒータツールの前記下面を前記基準面に合わせ、前記下面を前記基準面に合わせたときの前記傾斜ステージの傾斜角を前記下面の前記傾きとして検出する第1-2処理と、を備える。
【0015】
本発明に係るプログラムは、コントローラに前記第1処理から前記第5処理を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヒータツールの下面を加熱対象の上面に当てて当該加熱対象を加熱するときの加熱効率が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態にかかる加熱装置の構成を示す構成図である。
図2】傾き検出フローのフローチャートである。
図3】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図4】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図5】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図6】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図7】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図8】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図9】本動作フローのフローチャートである。
図10】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図11】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図12】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図13】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図14】本発明の実施形態にかかる加熱装置の一部を示す図であって加熱装置の動作を説明するための図である。
図15】変形例に係る加熱装置の一部を示す図である。
図16】変形例に係る加熱装置の一部を示す図である。
図17】変形例に係る加熱装置の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る加熱装置を図面を参照して説明する。
【0019】
[加熱装置の構成]
本発明の実施形態に係る加熱装置10の構成を図1に示す。加熱装置10は、ワークWを加熱するように構成されている。ワークWは、ここでは、基板W1と、当該基板W1に半田付けされた不良品のIC(Integrated Circuit)チップW2と、を含む。加熱装置10は、半田付けされたICチップW2を、当該半田を溶かして基板W1から取り外すリワーク装置として構成されている。半田を溶かすため、ここでは、ワークWのうち、特に、ICチップW2が加熱対象として加熱される。ICチップW2は、ここでは、BGA(Ball Grid Array)タイプのチップであり、その上面から加熱される。
【0020】
加熱装置10は、ICチップW2を加熱する機構である加熱装置本体20と、加熱装置本体20を制御する制御系30と、を備える。なお、図1等の上下方向は、加熱装置10の構成を説明するために設定されている。このため、上下方向は、実際の天地方向と一致しなくてもよい。
【0021】
加熱装置本体20は、ステージ21と、ヒータツール22と、傾斜ステージ23と、距離計24と、3軸移動機構25と、傾き調整機構26と、を備える。
【0022】
ステージ21は、平坦な上面を有する。ステージ21の上面には、ワークW又は後述の校正用ワークCWが配置されて固定される。この上面は、例えば、水平面と平行である。
【0023】
ヒータツール22は、ワークWのICチップW2を加熱するように構成されている。ヒータツール22は、ICチップW2の平坦な上面に当たる平坦な下面を有する。ヒータツール22は、その下面を発熱させることで、当該下面によりICチップW2をその上面から加熱する。ヒータツール22は、パルスヒートを行うように構成されている。具体的に、ヒータツール22は、発熱する下面を構成する金属ヒータと、金属ヒータに接合された熱電対とを備える。ヒータツール22は、ICチップW2を吸着して持ち上げる機能も有する。なお、ヒータツール22は、把持機構によりICチップW2を把持して持ち上げるように構成されてもよい。
【0024】
傾斜ステージ23は、ヒータツール22を支持しており、ヒータツール22の向き(ステージ21の法線方向に対する傾き)を調整する。傾斜ステージ23としては、例えば、X軸及びY軸を各回転軸としてヒータツール22を傾斜させる二軸傾斜ステージが採用される。
【0025】
距離計24は、レーザ変位計などであり、ヒータツール22の近傍に配置されている。距離計24は、当該距離計24にZ軸方向に対向する物体、例えばICチップW2とのZ軸方向に沿った距離を計測する。
【0026】
3軸移動機構25は、傾斜ステージ23及び距離計24をステージ21に対して互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の3軸方向に移動させる。上述のように、傾斜ステージ23は、ヒータツール22を支持している。従って、3軸移動機構25は、傾斜ステージ23を移動させることでヒータツール22を移動させる。
【0027】
3軸移動機構25は、移動部材25A~25D及び4つの支持部材25Eを備える。移動部材25Aは、傾斜ステージ23及び距離計24を支持し、かつ、傾斜ステージ23及び距離計24をZ軸方向に移動させる。移動部材25Aは、リニアモータなどからなる。移動部材25Bは、移動部材25Aを支持する可動子25BAを備え、当該可動子25BAを介して移動部材25AをY軸方向に移動させる。移動部材25Bは、リニアモータなどからなる。移動部材25C及び25Dは、移動部材25Bの両端を支持しかつX軸方向に移動させる。移動部材25C及び25Dは、それぞれ、移動部材25Bをナットとしたボールネジ及びモータなどからなる。移動部材25A~25Dのそれぞれは、どのような方式で対象を移動させてもよい。移動部材25A~25Dのそれぞれは、ラックアンドピニオンなどにより、移動対象を移動させてもよい。4つの支持部材25Eは、移動部材25C及び25Dの各両端をそれぞれ支持する柱状部材である。
【0028】
傾き調整機構26は、3軸移動機構25の傾きを調整するための機構である。傾き調整機構26は、4つの支持部材25Eそれぞれの上下方向に沿った位置を個別に調整する4つの移動部材26A~26Dを含む。移動部材26A~26Dのそれぞれは、リニアモータなどからなり、移動対象とする支持部材25Eを上下方向に移動させる。4つの支持部材25Eの位置が個別に調整されることで、3軸移動機構25、つまり、X軸、Y軸、及びZ軸の3軸をステージ21の上面又はその法線方向と平行にできる。
【0029】
制御系30は、操作装置31と、表示装置32と、コントローラ35と、を備える。
【0030】
操作装置31は、タッチセンサ、キーボード、マウスなどの1又は複数の入力装置からなる。ユーザは、加熱装置10を動作させるときに使用されるパラメータなどを操作装置31を介して入力する。
【0031】
表示装置32は、液晶表示装置などからなる。表示装置32は、操作画面などを表示する。
【0032】
コントローラ35は、コンピュータなどから構成され、加熱装置本体20の動作を制御するように構成されている。
【0033】
コントローラ35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ36と、プロセッサ36のメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)37と、を備える。さらに、コントローラ35は、プロセッサ36が実行又は使用するプログラム及びデータを記憶する不揮発性の記憶装置38も備える。プロセッサ36が、記憶装置38が記憶するプログラムを実行することにより、コントローラ35の動作が実現される。
【0034】
加熱装置10は、ワークWのICチップW2を加熱する前にヒータツール22の下面の傾きを検出する傾き検出モードと、ICチップW2を加熱する本動作モードと、を備える。以下、各動作モードを説明する。
【0035】
[傾き検出モード]
傾き検出モードでは、図2の傾き検出フローが実行される。
【0036】
図2の傾き検出フローでは、まず、ユーザがステージ21に校正用ワークCWを固定する(ステップS11)。校正用ワークCWを配置した加熱装置10の一部を図3に示す。なお、図3では、3軸移動機構25が全体として傾いており、そのZ軸方向が上下方向とずれている。図3に示すように、傾斜ステージ23は、傾斜ステージ23の下面を変位させるための駆動部23A及び23Bなども備える。校正用ワークCWは、その上面CWAと下面とが平行となっている板状部材であればよい。校正用ワークCWの上面CWAは、後述の各種の傾きや傾斜の基準となる基準面となる。ユーザは、校正用ワークCWの固定後、操作装置31を介して加熱装置10に傾き検出開始の指示を入力する(ステップS12)。
【0037】
コントローラ35は、上記指示の入力を契機として、3軸移動機構25を制御することで、3軸移動機構25により距離計24をX軸方向及びY軸方向に移動させる。このとき、コントローラ35は、距離計24を、校正用ワークCWの上方の任意の3箇所以上の各位置(例えば、校正用ワークの四隅を含む4つ以上の位置の上方の各位置)に移動させる(ステップS13)。コントローラ35は、距離計24を前記の各位置に位置させたときに、距離計24から校正用ワークCWの上面CWAまでのZ軸方向に沿った各距離を距離計24により計測する(ステップS13、図4参照)。
【0038】
その後、コントローラ35は、計測した各距離が等距離になるように、3軸移動機構25の傾きを制御する(ステップS14)。コントローラ35は、傾き調整機構26の移動部材26A~26Dそれぞれを個別に制御して4つの支持部材25Eの各位置を個別に調整することで、3軸移動機構25の傾きを制御する(図5参照)。この制御により、3軸移動機構25のX軸及びY軸が通るXY平面が、校正用ワークCWの上面CWA(基準面)と平行となり、Z軸が当該上面に直交し、上下方向と一致する(図5参照)。
【0039】
その後、ユーザは、校正用ワークCWの上面CWAに感圧シートSを配置する(ステップS15、図6参照)。その後、ユーザは、ヒータツール22をZ軸方向に移動させる旨の指示を操作装置31に入力する(ステップS16)。コントローラ35は、この指示の入力を受けて、3軸移動機構25を制御し、ヒータツール22を下方に移動させて、ヒータツール22の下面22Aと校正用ワークCWのCWAとで感圧シートを挟み(図7参照)、その後、ヒータツール22を上方に移動させる(ステップS17)。感圧シートSは、ヒータツール22により押圧された部分が、押圧力に応じて異なる色で変色する。図7の場合、ヒータツール22の下面22Aは、校正用ワークCWの上面CWAに対して傾いているので、感圧シートSは一様に変色しない。他方、ヒータツール22の下面22Aが、校正用ワークCWの上面CWAと平行である場合、感圧シートSは一様に変色する。
【0040】
ステップS17のあと、ユーザは、感圧シートの変色が一様であるかを確認する(ステップS18)。一様でない場合(ステップS18;No)、ユーザは、当該変色が一様になるような傾斜ステージ23の傾斜角(X軸周りの傾斜角及びY軸周りの傾斜角)を操作装置31に操作入力する(ステップS19)。コントローラ35は、当該傾斜角の入力を受けて、当該傾斜角分、傾斜ステージ23を傾斜させる(ステップS20)。これにより、ヒータツール22の向きが調整される(図8参照)。ステップS18~ステップS20は、感圧シートの変色が一様になるまで、つまり、図8に示すようにヒータツール22の下面22Aが校正用ワークCWの上面CWAと平行になるまで繰り返し行われる。
【0041】
ユーザは、感圧シートの変色が一様になったとき(ステップS18;Yes)に、操作装置31を操作して記憶指示を入力する(ステップS21)。コントローラ35は、現在の傾斜ステージ23(より詳細にはヒータツール22を支持する下面)のX軸周りの傾斜角及びY軸周りの傾斜角を、校正用ワークCWの上面CWA(基準面)に対するヒータツール22の下面22Aの傾きとして検出し、当該傾きを記憶装置38に記憶する(ステップS22)。このように、コントローラ35は、ヒータツール22の下面22Aが校正用ワークCWの上面CWAに合わさるように傾斜ステージ23を制御し、制御後の傾斜ステージ23の傾斜角をヒータツール22の下面22Aの傾きとして取得する。
【0042】
以上のような処理により、校正用ワークCWの上面CWAを基準面とした、当該基準面に対するヒータツール22の下面22Aの傾きが加熱装置10に設定される。
【0043】
[本動作モード]
本動作モードでは、図9の本動作フローが実行される。本動作フローでは、傾き検出モードで調整された3軸移動機構25の傾き及び傾斜ステージ23の傾斜が維持されるものとする。
【0044】
本動作フローでは、まず、ユーザがステージ21にワークWを固定する(ステップS31、図10参照)。ユーザは、ワークWの設置後、操作装置31を介して加熱装置10に、基板W1からICチップW2を外すための本動作の開始の指示を入力する(ステップS32)。当該指示には、ICチップW2の位置などが含まれる。
【0045】
コントローラ35は、上記指示の入力を契機として、3軸移動機構25を制御することで、距離計24をX軸方向及びY軸方向に移動させる。コントローラ35は、距離計24をICチップW2の上方の任意の3箇所以上の各位置(例えば、ICチップW2の上面W2Aの四隅を含む4つ以上の位置の上方の各位置)に順次移動させる(ステップS33、図11参照)。コントローラ35は、距離計24を前記の各位置にそれぞれ位置させたときに、当該距離計24により当該距離計24からICチップW2の上面W2AまでのZ軸方向に沿った各距離を計測する(ステップS33)。この計測結果は、ICチップW2の上面W2Aの、3軸移動機構25のXY平面に対する傾きを表し、当該XY平面に平行な校正用ワークCWの上面CWA(基準面)に対する傾きを表す。コントローラ35は、測定した前記各距離に基づいて前記傾きを導出する。これにより、校正用ワークCWの上面CWA(基準面)に対するICチップW2の上面W2Aの傾きが検出される(ステップS34)。傾きは、X軸周りの傾斜角及びY軸周りの傾斜角により表される。
【0046】
その後、コントローラ35は、3軸移動機構25を制御することで、ヒータツール22をX軸方向及びY軸方向に移動させ、ヒータツール22をICチップW2の直上に移動させる(ステップS35)。
【0047】
その後、コントローラ35は、上記で検出したICチップW2の上面W2Aの傾きと、記憶装置38に記憶しているヒータツール22の下面22Aの傾きと、に基づいて、前記上面W2Aと下面22Aとが平行となるようにヒータツール22の向きを調整する(ステップS36、図12参照)。コントローラ35は、傾斜ステージ23を制御して、ヒータツール22の向きを調整する。例えば、現状の傾斜ステージ23のX軸及びY軸周りの各傾斜角から、ICチップW2の上面の傾きを表すX軸及びY軸周りの各傾斜角をそれぞれ減算した各傾斜角となるよう、傾斜ステージ23が制御される。
【0048】
その後、コントローラ35は、3軸移動機構25を制御し、ヒータツール22を移動させて、ヒータツール22の下面22AをICチップW2の上面W2Aに当てる(ステップS37、図13)。ステップS36で、ヒータツール22の下面22AとICチップW2の上面W2Aとは平行になっているので、下面22Aと上面W2Aとは綺麗に合わさる。
【0049】
その後、コントローラ35は、ヒータツール22にパルス電流を流して下面22Aを発熱させ、パルスヒートによりICチップW2をその上面W2Aから加熱する(ステップS38)。この加熱により、ICチップW2を基板W1に固定している半田が溶かされる。その後、コントローラ35は、3軸移動機構25及びヒータツール22を制御し、ヒータツール22によりICチップW2を持ち上げる(ステップS39、図14)。これにより、ICチップW2が基板W1から取り外される。加熱装置10は、その後、新しいICチップを基板W1に半田付けにより実装してもよい。
【0050】
[加熱装置の他の例]
傾斜ステージ23の上面が平坦であれば、傾斜ステージ23の上面を基準面としてもよい。この場合には、校正用ワークCWが配置される必要はない。3軸移動機構25は、ヒータツール22をZ軸方向に移動させるが、距離計についてはZ軸方向に移動させないように構成されてもよい。
【0051】
X軸及びY軸を通るXY平面が基準面と平行になっている場合、3軸移動機構25の傾きの調整(ステップS13及びS14)は不要である。基準面に対するヒータツール22の下面22Aの傾きは、記憶装置38に固定値として記憶されてもよく、コントローラ35は、記憶装置38から前記傾きを読み出すことで前記傾きを取得してもよい。
【0052】
上記では、ヒータツール22の下面22AがICチップW2の上面W2Aよりも大きいが、下面22Aは、上面W2Aよりも小さくてもよい。この場合、コントローラ35は、ステップS37及びS38を、ヒータツール22の位置をずらしながら複数回行えばよい。
【0053】
[加熱装置の構成のまとめ及び効果など]
上述のように、コントローラ35は、基準面に対するヒータツール22の下面22Aの傾きを取得し、基準面に対するICチップW2の上面W2Aの傾きを検出する。コントローラ35は、取得又は検出した下面22Aの傾き及びICチップW2の上面W2Aの傾きに基づいて、当該下面22Aと当該上面W2Aとが平行となるように傾斜ステージ23を制御する。このような制御により、ヒータツール22の下面22AをICチップW2の上面W2Aに当てるときに、両者をきれいに合わせることができ、両面の接触面積が確保される。従って、ヒータツール22からの熱が、ICチップW2のヒータツール22との接触部に均一に伝わる。これにより、ICチップW2に対する加熱効率が良くなる。
【0054】
さらに、上記構成では、加熱にパルスヒート工法が採用されている。パルスヒート工法は、上述のように、短時間での昇温によりICチップW2の周囲への熱影響を抑制できるのでリワーク技術に好適である。しかし、パルスヒート工法では、ヒータツール22をICチップW2に接触させる必要があるため、その下面22Aと上面W2Aとの接触面積が問題となる。特に、ICチップW2の上面W2Aは、半田付けの際の作業誤差などにより、基板W1ないしXY平面に対して傾いて固定されることがあり、この場合、接触面積が確保できない。この実施の形態では、下面22Aと上面W2Aとが平行となるように傾斜ステージ23を制御することで、下面22Aと上面W2Aとの接触面積を確保することができ、パルスヒート工法の欠点が補われる。
【0055】
さらに、上記では、コントローラ35が、X軸及びY軸を通るXY平面が基準面と平行になるよう3軸移動機構25の傾きを調整する。さらに、コントローラ35が、ヒータツール22の下面22Aを基準面(校正用ワークCWの上面CWAなど)に合わせたときのヒータツール22の向き(より具体的には傾斜ステージ23の傾斜角)を下面22Aの傾きとして検出する。さらに、コントローラ35は、距離計24をX軸及びY軸の各方向に移動させ、かつ、距離計24によりICチップW2の上面W2AまでのZ軸方向に沿った距離を3以上の位置で計測し、計測結果に基づいて、基準面に対するICチップW2の上面W2Aの傾きを検出する。このような構成によれば、X軸及びY軸の各方向に延びる面を基準面と平行とすることができ、Z軸方向を基準面の法線方向と一致させることができ、基準面に対するヒータツール22の下面22A及びICチップW2の上面W2Aの各傾きの精度が良くなる。
【0056】
さらに、上記のように、ヒータツール22の向きの調整に傾斜ステージを使用することで、ヒータツール22の向きの調整及び検出が容易となる。
【0057】
上記では、コントローラ35が、ヒータツール22の下面22Aを、感圧シートSの変色が一様になるように基準面に合せることで、下面22Aを基準面に綺麗に(下面22Aの基準面への押圧力が一様になるように)合わせることができる。これにより、下面22AとICチップW2の上面W2Aとの平行の精度が高くなる。
【0058】
感圧シートSを用いる代わりに、傾斜ステージ23の下面の動きを自由とした状態(つまり、下面に加わる力により当該下面が容易に傾斜する状態)で、コントローラ35が、傾斜ステージ23を下方に移動させてもよい。そして、コントローラ35は、この移動により、ヒータツール22の下面22Aを基準面に当てて当該基準面により傾斜させることで両面を合わせてもよい。この場合、コントローラ35は、そのときの傾斜ステージ23の傾斜角を検出することで、下面22Aの傾きを検出してもよい。
【0059】
[変形例]
以下、上記実施の形態の変形例を列挙する。なお、上記実施形態と同じ要素については、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0060】
(1)ICチップW2を加熱する際、図15に示すように、ヒータツール22の下面22Aを、熱伝導ペースト又は熱伝導シートなどの柔軟性を有する熱伝導材Mを介してICチップW2の上面W2Aに当ててもよい。下面22A及び上面W2Aは、平坦であっても、傷などの微小な凹部がある場合がある。また、各面の元々の形状として凹部がある場合がある。上記のように柔軟性を有する熱伝導材を介在させることで、熱伝導材により前記の凹部を埋めることができ、これにより、下面22Aから上面W2Aへの熱伝導率が向上し、ICチップW2への加熱効率が向上する。
【0061】
(2)図16及び図17に示すように、変形例に係る加熱装置は、ヒータツール22を下側つまりICチップW2側に付勢する弾性部材91を備えてもよい。弾性部材91の構成は任意であるが、ここでは、シリンダ91Aと、シリンダ91Aに対して相対移動可能なピストン91Bと、ピストン91Bを下側に付勢するバネなどの弾性体91Cと、を備える。弾性部材91の設置箇所の任意であるが、ここでは、3軸移動機構25の移動部材25Aの可動子25AAと傾斜ステージ23との間に設置されている。従って、弾性部材91は、可動子25AAに支持され、ピストン91Bにより傾斜ステージ23及びヒータツール22を支持している。可動子25AAは、弾性部材91を介して傾斜ステージ23及びヒータツール22を支持している。弾性部材91の弾性変形により、ヒータツール22がICチップW2を押圧しすぎることが軽減される。
【0062】
移動部材25Aによりヒータツール22が下方に移動し、ヒータツール22の下面22AがICチップW2の上面W2Aに当たると、ピストン91Bが弾性体91Cの弾性力に抗してシリンダ91Aに対して相対的に上方に移動する。これにより、ヒータツール22が可動子25AAに対して弾性部材91の付勢力に抗して相対的に変位する。
【0063】
変形例に係る加熱装置は、さらに、ヒータツール22を支持している可動子25AAに設置された変位計92を備える。変位計92は、ヒータツール22が可動子25AAに対して弾性部材91の付勢力に抗して相対的に変位したときの変位量を検出する。変位計92は、ここでは、ピストン91Bのフランジ91BAの変位量を、ピストン91Bが支持するヒータツール22の変位量として検出するレーザ変位計などから構成されている。
【0064】
コントローラ35は、ヒータツール22の下面22AがICチップW2の上面W2Aに当ったあとにヒータツール22が弾性部材91の付勢力に抗して可動子25AAに対して相対的に変位する変位量を変位計92で計測する。コントローラ35は、計測した変位量が所定量に達したときに可動子25AAの移動を停止させてもよい。これにより、ヒータツール22がICチップW2を押圧しすぎることが軽減される。
【0065】
(3)コントローラ35は、ヒータツール22の下面22Aの温度を半田接合温度よりも高い温度に、半田が溶け始めるまでの第1期間保持し、第1期間経過後に下面22Aの温度を半田接合温度まで低下させてもよい。コントローラ35は、ヒータツール22に流す電流を制御することで、前記の各温度を制御する。半田接合温度は、半田を溶かすのに最適な温度として予め設定されている。半田接合温度は、無鉛半田では約250℃である。半田の熱伝導性は、溶ける前が悪く、溶けた後が良い。この構成では、熱伝導性が悪い第1期間において下面22Aの温度を高くして、半田を早く溶かすので、ICチップW2の加熱時間を短くすることができる。
【0066】
(4)コントローラ35のハードウェア構成は任意であり、その少なくとも一部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの論理回路により構成されてもよい。記憶装置38の少なくとも一部は、コントローラ35の外部に配置されてもよい。プログラムは、不揮発性の記憶部など、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納されればよい。
【0067】
(5)ヒータツール22、傾斜ステージ23、及び距離計24などは、ステージ21などに対して相対的に移動すればよい。例えば、3軸移動機構25は、ステージ21をZ軸方向に移動させてもよい。
【0068】
(6)傾斜ステージ23の傾斜角の制御は、ユーザによる手動により行われてもよい。このように、上記の加熱装置10の動作は、適宜手動に変更されてもよい。従って、ICチップW2を加熱する方法は、例えば、以下のような方法であればよい。校正用ワークCWの上面XCAなどの基準面に対するヒータツール22の下面22Aの傾きを取得する。基準面に対するICチップW2の上面W2Aの傾きを検出する。下面22Aの傾きと上面W2Aの傾きとに基づいて下面22Aと上面W2Aとが平行となるようにヒータツール22の向きを調整する。その後、ヒータツール22をICチップW2に対して相対的に移動させて、ヒータツール22の下面22AをICチップW2の上面W2Aに当てる。その後、ヒータツール22の下面22Aを発熱させることでICチップW2を加熱する。
【0069】
(7)上記実施形態では、加熱装置10が加熱する加熱対象をICチップW2としているが、加熱対象は、例えば、基板W1に半田付けにより実装された電子部品であればよい。さらに、本発明の適用対象は、リワーク技術に限定されず、加熱対象はその他のものであってもよい。
【0070】
[本発明の範囲]
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。上記実施形態及び変形例に対しても様々な変更をすることができる。また、上記で開示している各構成は、矛盾しない範囲で任意に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
10…加熱装置、20…加熱装置本体、21…ステージ、22…ヒータツール、22A…下面、23…傾斜ステージ、23A…駆動部、23B…駆動部、24…距離計、25…軸移動機構、25A…移動部材、25AA…可動子、25B…移動部材、25BA…可動子、25C…移動部材、25D…移動部材、25E…支持部材、26…調整機構、26A…移動部材、26B…移動部材、26C…移動部材、26D…移動部材、30…制御系、31…操作装置、32…表示装置、35…コントローラ、36…プロセッサ、38…記憶装置、91…弾性部材、91A…シリンダ、91B…ピストン、91BA…フランジ、91C…弾性体、92…変位計、CW…校正用ワーク、CWA…上面、M…熱伝導材、S…感圧シート、W…ワーク、W1…基板、W2…ICチップ、W2A…上面、XCA…上面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図16
図17