(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130613
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】スパウト及びその製造方法、口栓、包装容器、並びに包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 25/40 20060101AFI20230913BHJP
B65D 5/74 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B65D25/40
B65D5/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034998
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】山口 恵介
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅文
【テーマコード(参考)】
3E060
3E062
【Fターム(参考)】
3E060AA05
3E060AB03
3E060BA01
3E060BC01
3E060CF06
3E060EA03
3E062AA01
3E062AB02
3E062AC02
3E062AC03
3E062AC05
3E062AC08
3E062KA04
3E062KB03
(57)【要約】
【課題】嫌悪臭を十分に低減することが可能なスパウト及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂と酸化亜鉛粒子とを含有し、酸化亜鉛粒子の含有率が0.5~20質量%であるスパウト30を提供する。酸化亜鉛粒子と溶融している樹脂組成物とを含む混合物を射出成形してスパウト30を得る工程を有し、混合物における酸化亜鉛粒子の含有率が0.5~20質量%である、スパウト30の製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と酸化亜鉛粒子とを含有し、
前記酸化亜鉛粒子の含有率が0.5~20質量%であるスパウト。
【請求項2】
前記酸化亜鉛粒子の平均粒子径が10~100nmである、請求項1に記載のスパウト。
【請求項3】
前記樹脂の成形体で構成され、前記酸化亜鉛粒子は前記成形体の全体に分散している、請求項1又は2に記載のスパウト。
【請求項4】
前記樹脂がポリオレフィン樹脂を含み、
前記酸化亜鉛粒子は前記ポリオレフィン樹脂中に分散している、請求項1~3のいずれか一項に記載のスパウト。
【請求項5】
射出成形によって成形された樹脂成形体で構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のスパウト。
【請求項6】
前記酸化亜鉛粒子は、表面に疎水化処理が施されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のスパウト。
【請求項7】
硫黄化合物を吸着可能に構成され、硫黄化合物を生成する被包装物の包装体用である、請求項1~6のいずれか一項に記載のスパウト。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のスパウトと、当該スパウトに取り付けられたキャップと、を備える口栓。
【請求項9】
被包装物を収容する収容部を有し、最内層にシーラントフィルムを有する積層シートで構成される容器本体を備える包装容器であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載のスパウトが前記シーラントフィルムに溶着されている、包装容器。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の包装容器と、当該包装容器の中に収容される被包装物と、を備える包装体。
【請求項11】
酸化亜鉛粒子と溶融している樹脂組成物とを含む混合物を射出成形してスパウトを得る工程を有し、
前記混合物における酸化亜鉛粒子の含有率が0.5~20質量%である、スパウトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、スパウト及びその製造方法、口栓、包装容器、並びに包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
被包装物を収容して保管する包装容器には、取り出し用の口栓が設けられることがある。このような口栓を構成する部材として、蓋体が取り付けられるスパウトが用いられる。このようなスパウトにキャップを取り付けることによって被包装物が包装容器中に密封される。このような包装容器は、被包装物の漏洩及び劣化を防ぐために、優れた密封性を有することが求められる。
【0003】
一方で、被包装物としては種々のものがあり、密封しても容器の材質との反応等によって変質が避けられない場合もある。飲食品の場合は、このような変質が臭気の要因となることもある。例えば、特許文献1では、金属缶を使用してワインを詰めた場合に、開栓時に亜硫酸ガス及び硫化水素の臭いが生じることに着目し、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛の少なくとも一方を含有した材料でキャップのライナーを形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一側面は、嫌悪臭を十分に低減することが可能なスパウト及びその製造方法を提供する。本開示の一側面は、嫌悪臭を十分に低減することが可能な口栓、包装容器及び包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、樹脂と酸化亜鉛粒子とを含有し、酸化亜鉛粒子の含有率が0.5~20質量%であるスパウトを提供する。このようなスパウトは、被包装物が収容される収容部に露出する面積が十分に大きいため、被包装物から収容部に放出される硫黄化合物を効率よく吸着し、嫌悪臭を十分に低減することができる。
【0007】
酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、10~100nmであってよい。これによって、酸化亜鉛粒子同士の凝集を抑制して硫黄化合物の吸着性能を一層高くしつつ、粒子サイズに起因する凹凸を低減して、例えばキャップとのシール性を十分に高く維持することができる。
【0008】
上記スパウトは、樹脂の成形体で構成され、酸化亜鉛粒子は成形体の全体に分散していてよい。このようなスパウトは、一つの部材(樹脂の成形体)として構成することが可能であり、効率よく製造することができる。また、嫌悪臭の要因となる硫黄化合物との接触頻度を十分に高くして硫黄化合物を一層効率よく吸着することができる。
【0009】
樹脂はポリオレフィン樹脂を含み、酸化亜鉛粒子はポリオレフィン樹脂中に分散していてよい。このようなスパウトは、低い製造コストで効率よく製造することができる。
【0010】
上記スパウトは、射出成形によって成形された樹脂成形体で構成されていてよい。このようなスパウトは、低い製造コストで効率よく製造することができる。
【0011】
酸化亜鉛粒子は、表面に疎水化処理が施されていてよい。これによって、酸化亜鉛粒子の分散性が向上し、硫黄化合物の吸着性能及びスパウトのシール性を一層向上することができる。
【0012】
上記スパウトは、硫黄化合物を吸着可能に構成され、硫黄化合物を生成する被包装物の包装体用であってよい。これによって、被包装物から生じる嫌悪臭を十分に低減することができる。
【0013】
本開示の一側面は、上述のいずれかのスパウトと、当該スパウトに取り付けられたキャップと、を備える口栓を提供する。この口栓は上述のスパウトを備えるため、嫌悪臭を十分に低減することができる。
【0014】
本開示の一側面は、被包装物を収容する収容部を有し、最内層にシーラントフィルムを有する積層シートで構成される容器本体を備える包装容器であって、上述のいずれかのスパウトがシーラントフィルムに溶着されている、包装容器を提供する。この口栓は上述のスパウトを備えるため、被包装物から収容部に放出される硫黄化合物を効率よく吸着し、嫌悪臭を十分に低減することができる。
【0015】
本開示の一側面は、上記包装容器と、当該包装容器の中に収容される被包装物と、を備える包装体を提供する。この包装容器は上述のいずれかのスパウトを備えるため、被包装物から収容部に放出される硫黄化合物を効率よく吸着し、嫌悪臭を十分に低減することができる。
【0016】
本開示の一側面は、酸化亜鉛粒子と溶融している樹脂組成物とを含む混合物を射出成形してスパウトを得る工程を有し、混合物における酸化亜鉛粒子の含有率が0.5~20質量%である、スパウトの製造方法を提供する。
【0017】
このようなスパウトは、被包装物が収容される収容部に露出する面積が十分に大きいため、収容部に放出される硫黄化合物を効率よく吸着し、嫌悪臭を十分に低減することができる。また、このようなスパウトは、低い製造コストで効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一側面は、嫌悪臭を十分に低減することが可能なスパウト及びその製造方法を提供することができる。本開示の一側面は、嫌悪臭を十分に低減することが可能な口栓、包装容器及び包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】スパウトとキャップとを備える口栓の断面図である。
【
図4】包装容器を構成する積層シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面の符号の向きを基準とする位置関係に基づくものとする。各部材の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
一実施形態に係るスパウトは、樹脂と酸化亜鉛粒子とを含有し、酸化亜鉛粒子の含有率が0.5~20質量%であるスパウトを提供する。本明細書における酸化亜鉛粒子の含有率は、スパウト全体を基準とする含有率である。スパウトは樹脂の成形体で構成されていてよく、射出成形によって成形された樹脂の成形体で構成されていてよい。このようなスパウトは、低い製造コストで効率よく製造することができる。
【0022】
酸化亜鉛粒子は、樹脂中に分散していてよい。酸化亜鉛粒子の含有率が0.5質量%以上であることによって、硫化水素等の硫黄化合物を十分に吸着することができる。硫黄化合物の吸着性能をさらに向上する観点から、酸化亜鉛粒子の含有率は、1質量%以上であってよく、2質量%以上であってよく、3質量%以上であってもよい。
【0023】
酸化亜鉛粒子の含有率が20質量%以下であることによって、スパウトの強度を十分に高く維持することができる。スパウトの強度、シール性及び成形性を向上する観点から、酸化亜鉛粒子の含有率は、15質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってもよい。
【0024】
酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、10~100nmであってよい。これによって、酸化亜鉛粒子同士の凝集を抑制して硫黄化合物の吸着性能を一層高くしつつ、粒子サイズに起因する凹凸を低減してキャップとのシール性を十分に高く維持することができる。また、このようなサイズの酸化亜鉛粒子は市販品として入手することができる。酸化亜鉛粒子の平均粒子径の下限は、酸化亜鉛粒子同士の凝集を抑制して硫黄化合物の吸着性能を一層高くする観点から、15nmであってよく、20nmであってもよい。酸化亜鉛粒子の平均粒子径の上限は、シール性を一層高く維持する観点から、80nmであってよく、50nmであってもよい。
【0025】
酸化亜鉛粒子の平均粒子径とは、一次粒子の粒子径の平均値である。この平均粒子径はは、レーザー回折・散乱法によって測定される体積基準の粒度分布において頻度の累積が50%となるメジアン径(D50)である。
【0026】
酸化亜鉛粒子の一次粒子の粒子径も上述の範囲であってもよい。すなわち、一次粒子の粒子径の最小値が上述の範囲の下限値以上であり、一次粒子の粒子径の最大値が上述の範囲の上限値以下であってよい。
【0027】
酸化亜鉛粒子は、表面に疎水化処理が施されていてよい。これによって、スパウトに含まれる酸化亜鉛粒子の凝集が抑制されて分散性が向上し、硫黄化合物の吸着性能及びシール性を一層向上することができる。疎水化処理としては、ポリシロキサン、アルキルシラン、アルキルアルコキシシラン及びアクリルシリコンからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物を用いる処理が挙げられる。このような化合物を用いた疎水化処理を行うことによって、酸化亜鉛粒子の表面が疎水化され、樹脂中における分散性を向上することができる。疎水化処理が施された酸化亜鉛粒子は、表面にポロシロキサン層を有していてよく、例えば、ハイドロゲンジメチコン層を有していてもよい。
【0028】
スパウトに含まれる樹脂は、例えば合成樹脂であり、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂、及びABS樹脂等が挙げられる。このうち、耐久性、加工性及び製造コスト低減の観点から、ポリオレフィン樹脂を含んでよい。ポリオレフィン樹脂は、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)、及び、ポリプロピレン樹脂(PP)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでよい。
【0029】
スパウトにおける樹脂の含有量は80質量%以上であってよく、85質量%以上であってよく、90質量%以上であってもよい。スパウトは、樹脂及び酸化亜鉛粒子以外の成分を含んでよい。例えば、スパウトを着色するために、酸化チタン粒子等の顔料を含んでよい。酸化亜鉛粒子は白色系の色を有することから、スパウトが酸化亜鉛粒子を含むことによっては、このような顔料の使用量を低減することができる。
【0030】
スパウトの形状は特に限定されず、包装容器に取り付けられる種々の形状のものが挙げられる。スパウトが取り付けられる包装容器は、二方袋、三方袋、四方袋、又は合掌袋であってもよいし、箱型形状、三角屋根の形状又は円柱形状等の紙パックであってよいし、スパウト付きパウチ、或いはスタンディングパウチであってもよい。
【0031】
本実施形態のスパウトの一例である
図1のスパウト30は、外ネジ35aが形成された円筒状の側壁35と、側壁35の下端から外方に延出するフランジ32と、を備える。円筒状の側壁35は、外ネジ35aの下方に突起37を有する。スパウト30は、フランジ32が容器本体のシーラントフィルムに溶着されて容器本体に取り付けられてよい。スパウト30は、樹脂成形体であり、酸化亜鉛粒子はスパウト30全体に分散して含まれている。側壁35の内面35Aは、被包装物が収容される収容部のヘッドスペースに露出する。これによって、収容部に放出され嫌悪臭の要因となる硫黄化合物を効率よく吸着することができる。
【0032】
一実施形態に係る口栓は、上述のスパウトと、当該スパウトに取り付けられたキャップと、を備える。キャップは、スパウトに取り付けられて、包装容器の収容部を密封可能なものであればよい。キャップは、スパウトに対して繰り返し着脱可能なものであれば、口栓を一旦開封した後に再封止することができる。
【0033】
本実施形態の口栓の一例である
図2の口栓100は、
図1のスパウト30とこれに取り付けられたキャップ10とを備える。キャップ10は、天板14と、内周面に内ネジ15aが形成された側壁15と、側壁15で取り囲まれるように天板14に周状に設けられた円筒状のインナーリング19とを有する。天板14の外周縁には、テーパー部16が形成されている。テーパー部16から下方に延びる側壁15の外周面には、複数の突起を含むローレットが形成されていてよい。ローレットは、例えば、円周方向に沿って並ぶ複数の突起で構成されていてよい。
【0034】
キャップ10は、樹脂製であってよく、樹脂及び酸化亜鉛粒子を含んでいてよい。キャップ10の天板14の内面14Aは、被包装物が収容される収容部のヘッドスペースに露出する。キャップ10が酸化亜鉛粒子を含んでいれば、キャップ10も、収容部に放出され嫌悪臭の要因となる硫黄化合物を効率よく吸着することができる。
【0035】
ただし、口栓100の開封時にはキャップ10には大きな力が加わる。酸化亜鉛粒子を含有すると強度が低下する傾向にあることから、キャップ10の酸化亜鉛粒子の含有率は、スパウト30の酸化亜鉛粒子の含有率よりも小さい方が好ましい。例えば、キャップ10の酸化亜鉛粒子の含有率は、15質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってもよい。キャップ10における酸化亜鉛の含有率は、0~15質量%であってよい。
【0036】
キャップ10は、側壁15の部分が、包装容器の収容部に直接露出しない。このため、酸化亜鉛粒子を含んでもその機能を十分に発揮できない傾向にある。したがって、口栓100の製造コストを十分に低減する観点、及びキャップ10の強度を十分に高く維持する観点から、キャップ10は酸化亜鉛粒子を含んでいなくてもよい。
【0037】
キャップ10の側壁15の下部には、円筒形状を有するベース部17が設けられている。ベース部17の下端に、薄肉部45を介してバンド部20が接続されている。バンド部20はピルファープルーフバンドと称される場合もある。バンド部20は、樹脂を含んでよく、樹脂及び酸化亜鉛粒子を含んでもよい。ただし、バンド部20も、包装容器の収容部に直接露出しない。したがって、バンド部20も酸化亜鉛粒子を含んでいなくてもよい。キャップ10及びバンド部20に含まれる樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含んでよく、ポリプロピレン樹脂を含んでいてもよい。
【0038】
バンド部20は、内壁面から天板14に向かうように傾斜して設けられる複数のフック部22を有する。フック部22は、キャップ10がスパウト30に対して相対的に離間することを規制する機能と、薄肉部45を破断させてバンド部20を開放する機能を有する。口栓100が未開栓のとき、
図2に示すように、フック部22は、その先端がスパウト30の側壁35において外ネジ35aよりも下方に形成された突起37と対向している。スパウト30からキャップ10を取り外すために、スパウト30に対してキャップ10を相対的に回転させると、内ネジ15a及び外ネジ35aによって、キャップ10及びバンド部20は、スパウト30のフランジ32から徐々に離れる。
【0039】
キャップ10とバンド部20がスパウト30のフランジ32から離れ始めると、ほどなくバンド部20のフック部22が突起37に当接する。これによって、バンド部20とキャップ10のベース部17との間に引っ張り応力が生じ、キャップ10及びバンド部20がスパウト30のフランジ32から離れることを規制する。そして、所定の引っ張り応力に達すると、薄肉部45が破断し、キャップ10の移動の規制が解除される。その後、スパウト30に対してキャップ10を相対的に回転させることによって、キャップ10をスパウト30から取り外すことができる。
【0040】
スパウト30は、キャップ10よりも包装容器の収容部内の被包装物に近い位置に設けられる。このため、スパウト30に含まれる酸化亜鉛粒子は被包装物から発生する硫黄化合物を効率よく吸着することができる。包装容器に取り付けられたスパウト30は、被包装物の導出口として用いられることのみならず、ユーザーに直接口でくわえられる場合もある。また、導出口から被包装物を他の物質の上に落下させる場合には、他の物質が飛び散ってスパウト30に付着する場合もある。このように、スパウト30には様々な異物が付着し得るため、スパウト30近傍において非包装物の変質又は劣化が生じやすく、それによって嫌悪臭の発生源になる場合もある。このように嫌悪臭の発生源に近いスパウト30が酸化亜鉛粒子を所定量含むことによって、嫌悪臭を効果的に低減することができる。
【0041】
一実施形態に係る包装容器は、被包装物を収容する収容部を有する容器本体と、容器本体に取り付けられたスパウトと、スパウトに取り付けられたキャップとを備える。容器本体は、例えば紙基材を有するものであってよく、樹脂基材を有するものであってもよい。被包装物は、特に限定されず、例えば、食料、飲料、調味料等、種々のものが挙げられる。被包装物は保管中に硫黄化合物を生成するものであってよい。硫黄化合物としては、硫化水素、及び亜硫酸ガス等が挙げられる。このような硫黄化合物を生じる可能性がある被包装物としては、例えば、ワイン、日本酒、焼酎、ウィスキー、ビール、発泡酒等が挙げられる。
【0042】
一実施形態に係る包装体は、包装容器と、当該包装容器の中に収容される被包装物と、を備える。包装体は上述のとおりスパウトを備える。被包装物としては上述のとおり種々のものが挙げられる。
【0043】
上述の包装容器及び包装体は、上記スパウトを備えることから、被包装物から収容部に放出され嫌悪臭の要因となる硫黄化合物を効率よく吸着することができる。したがって、包装体を開封したときの嫌悪臭を十分に低減することができる。
【0044】
包装容器の一例である
図3の包装容器150は、
図2の口栓100と口栓100が取り付けられる容器本体120とを備える。包装体の一例である
図3の包装体160は、包装容器150と、これに収容される被包装物(不図示)とを備える。容器本体120は、積層シートで構成されていてもよい。口栓100は、容器本体120を構成する積層シートのシーラントフィルムにスパウト30のフランジ32の一方面32aが溶着されて取り付けられてよい。容器本体120に取り付けられたスパウト30の側壁35の内面35A及びフランジ32の他方面32bが容器本体120の収容部に露出する。このように、スパウト30は、包装容器150の収容部における露出面積が、キャップ10よりもはるかに大きい。また、収容部の上部にあるガス溜まり部に露出する。これによって、被包装物から生じるガス状の硫黄化合物を効率よく吸着することができる。
【0045】
容器本体120を構成する積層シートは、
図4に示すように、被包装物の収容部側から、シーラントフィルム40と、バリア層41と、中間層42と、紙基材44と、外層46とをこの順に備えていてもよい。このような積層シートを用いて包装容器150を作製したときに、シーラントフィルム40が最内層となり、外層46が最外層となる。このような積層シートを用いる場合、スパウト30のフランジ32の一方面32aが、シーラントフィルム40に溶着されてよい。
【0046】
シーラントフィルム40は、ポリオレフィン樹脂を含んでよい。ポリオレフィン樹脂は、ヒートシール性向上の観点から無延伸のものであってよい。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンープロピレン共重合体(EPR)、ポリメチルペンテン(TPX)等が挙げられる。これによって、シーラントフィルム40のヒートシール性を十分に高くすることができる。
【0047】
シーラントフィルム40は、スパウト30に含まれる酸化亜鉛粒子と同様の酸化亜鉛粒子を含んでいてもよい。シーラントフィルム40が酸化亜鉛粒子を含むことによって、包装容器150中に生じた硫黄化合物を一層効率よく吸着し、嫌悪臭をより一層低減することができる。
【0048】
シーラントフィルム40は、酸化亜鉛粒子を含まない第1樹脂層と、酸化亜鉛粒子を含む第2樹脂層とを有していてもよい。第1樹脂層が包装容器150の内側(収容部側)、第2樹脂層が外側になるように配置することによって、シーラントフィルム40のシール性を高い水準に維持しつつ、硫黄化合物を十分効率よく吸着することができる。第1樹脂層及び第2樹脂層に含まれる樹脂成分は、互いに同じであってよく、互いに異なっていてもよい。このような2層構造を有するシーラントフィルム40は、酸化亜鉛粒子を含有しない第一樹脂組成物と、酸化亜鉛粒子を含有する第二樹脂組成物と、の共押出によって形成してもよい。
【0049】
バリア層41は、バリア性を有する層である。バリア層41としては、例えば、無機物からなる蒸着フィルム、金属箔、樹脂フィルム、及び樹脂フィルムに蒸着層を積層したもの等が挙げられる。具体的には、シリカ等の無機蒸着フィルム、アルミ蒸着フィルム、アルミニウム箔、アルミニウム箔積層PETフィルム、並びに、ナイロン系バリアフィルム及びエチレンビニルアルコール系のバリアフィルムなどの各種バリアフィルムが挙げられる。これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて有していてもよい。
【0050】
バリア層41の厚みは特に限定されない。バリア層41が蒸着層からなる場合、その厚みは、例えば5~100nmであってよい。バリア層41がアルミニウム箔からなる場合、その厚みは例えば7~9μmであってよい。バリア層41は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)、ドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等によって形成することができる。
【0051】
中間層42及び外層46は、樹脂フィルムで構成されてよい。樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリスチレンフィルム;6,6-ナイロン等のポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアクリロニトリルフィルム、及びポリイミドフィルム等が挙げられる。
【0052】
中間層42及び外層46の材質は同じであってよく、異なっていてもよい。中間層42及び外層46は、上記樹脂フィルムの一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。中間層42及び外層46は、同種の樹脂フィルムを複数積層することによって構成されてもよい。樹脂フィルムは、延伸及び未延伸のどちらであってもよい。少なくとも一つの延伸フィルムと少なくとも一つの未延伸フィルムとが積層されているものであってもよい。中間層42及び外層46は、二軸方向に任意に延伸されたフィルムを有することによって、機械強度及び寸法安定性を向上することができる。
【0053】
中間層42及び外層46の厚みは、特に制限されず、例えば、3~100μmであってもよく、6~50μmであってもよい。樹脂フィルムは、フィラー、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、及び酸化防止剤等から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含有してもよい。
【0054】
紙基材44は、例えば、液体用紙容器に使用する板紙であってよい。紙基材44の秤量は、例えば、200~500g/m2であってもよく、300~400g/m2であってもよい。紙基材44の外層46側の面上に、必要に応じて適宜印刷層を設けてもよい。印刷層は、例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、又はゴム系などの従来から用いられているバインダー樹脂に、各種顔料、可塑剤、乾燥剤、及び安定剤などを添加してなるインキにより構成される層である。この印刷層によって、文字、絵柄などを表示することができる。印刷方法としては、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法を用いることができる。
【0055】
容器本体を構成する積層シート(積層フィルム)は、
図4の構造に限定されない。例えば、
図4の積層フィルムの各構成層の間に、任意の中間層又は接着層を設けてもよい。接着層を構成する接着剤成分としては、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤、及びイソシアネート系接着剤などの公知の接着剤が挙げられる。また、紙基材44及び/又は中間層42は、用途に応じて設けなくてもよい。
【0056】
本実施形態の包装容器は、
図3の例に限定されない。包装容器は、二方袋、三方袋、四方袋、又は合掌袋であってもよいし、箱型形状、三角屋根の形状又は円柱形状等の紙パックであってよいし、スパウト付きパウチ、或いはスタンディングパウチであってもよい。
【0057】
一実施形態に係るスパウトの製造方法は、酸化亜鉛粒子と樹脂組成物とを混合して加熱し、樹脂組成物を溶融させる。酸化亜鉛粒子と溶融している樹脂組成物とを含む混合物を金型に射出して成形する。このように混合物を用いた射出成形によって、スパウトを製造することができる。スパウトは、通常の射出成形機を用いて製造可能であることから、低い製造コストで効率よく製造することができる。
【0058】
図4の積層シートを用いて
図3の包装容器150及び包装体160を製造する場合、例えば共押出によって製造したシーラントフィルム40の一方面とバリア層41とを対向させ、接着剤を用いて接着する。その後、バリア層41の上に、中間層42、紙基材44及び外層46を、接着剤を用いて積層する。このようにして得られた
図4の積層シートを切断して所定の形状に加工する。
【0059】
積層シートのシーラントフィルム40の他方面とスパウト30のフランジ32の一方面32aとを対向配置し加熱して溶着する。その後、一対の積層シートの一部同士を、シーラントフィルム40同士が対向するようにして重ねてヒートシールする。このようにしてスパウト30が溶着された容器本体120が得られる。容器本体120の上部に取り付けられたスパウト30にキャップ10を取り付ければ、口栓100を有する包装容器150が得られる。
【0060】
次に、口栓100からキャップ10を取り外し、スパウト30から被包装物を充填する。充填後、キャップ10を取り付けて口栓100を封止すれば、包装体160が得られる。なお、上述のスパウト、包装容器及び包装体の製造方法は一例であり、上述の製造方法に限定されない。例えば、被包装物の充填は、スパウト30を介さずに、包装容器の一部をシールする前に行い、充填後にシールして包装容器及び包装体を得てもよい。
【0061】
以上、本開示の実施形態及び幾つかの例を説明したが、本開示は上述の実施形態及び例に何ら限定されるものではない。
【実施例0062】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
<スパウトの製造>
ポリエチレン樹脂(旭化成株式会社製、商品名:M2170)と、ハイドロゲンジメチコンで疎水化処理されている酸化亜鉛粒子(堺化学工業株式会社製、商品名:FINEX-50-LPT、平均粒子径:20nm、酸化亜鉛含有量:96質量%)とを、96:4の質量比で配合して混合物を調製した。射出成形機を用いて、この混合物の射出成形を行って、
図1に示すような形状を有するスパウトを得た。フランジ32の外径は、35mmであり、フランジ32の下面を基準とする側壁35の上端の高さは、17mmであった。
【0064】
<H2S吸着性の評価>
2000mlの内容積を有するバリア袋に、作製したスパウトと、所定濃度の硫化水素(H2S)を含有する空気とを封入した。そして、バリア袋におけるH2S濃度の経時変化を測定した。硫化水素の発生及び検出には、ガステック社製の硫化水素ガス発生キットを用いた。3日間及び1週間経過したときのバリア袋内のH2S濃度の測定結果は表1に示すとおりであった。
【0065】
(実施例2~4)
スパウトを製造する際に、ポリプロピレン樹脂と酸化亜鉛粒子との質量比を変更して混合物を調製したこと以外は、実施例1と同様にしてスパウトを製造した。混合物における酸化亜鉛粒子の含有率は表1に示すとおりとした。製造したスパウトを用いて実施例1と同様にしてH2S吸着性の評価を行った。3日間及び1週間経過したときのバリア袋内のH2S濃度の測定結果は表1に示すとおりであった。なお、H2Sの初期濃度は表1に示すとおりとした。
【0066】
(比較例1)
スパウトを製造する際に、酸化亜鉛粒子を用いず、実施例1で用いたポリプロピレン樹脂のみを用いた。このこと以外は実施例1と同様にしてスパウトを製造した。製造したスパウトを用いて実施例1と同じ手順でH2S吸着性の評価を行った。3日間及び1週間経過したときのバリア袋内のH2S濃度の測定結果は表1に示すとおりであった。なお、H2Sの初期濃度は表1に示すとおりとした。
【0067】
【0068】
表1の「H2S吸着量」の欄には、「初期濃度」と「1週間」経過時のH2S濃度との差を示し、「H2S吸着率」の欄には、(H2S吸着量)/(初期濃度)の値を百分率で示した。表1に示すとおり、各実施例のスパウトは、H2Sを十分に吸着できることが確認された。比較例1でもH2S濃度が時間の経過とともに僅かに低下した。この要因としては、サンプリングの際にバリア袋内に空気が混入したこと、及び、微量のH2S及び空気がバリア袋を透過したこと等が考えられる。
【0069】
(参考例1)
<シーラントフィルムの製造>
低密度ポリエチレン樹脂(旭化成株式会社製、商品名:サンテックL2170E)と、実施例1で用いた酸化亜鉛粒子とを、70:30の質量比で配合して混合物を得た。この混合物を押出製膜機に供給して製膜し、厚さ60μmのシーラントフィルムを製造した。
【0070】
<シーラントフィルムの評価>
製造したシーラントフィルムを短冊状(幅:15mm、長さ:200mm)にカットして測定サンプルを得た。JIS K7127:1999に準拠して、測定サンプルの引張強度と引張伸度を測定した。測定には市販の引張試験機を用いた。測定サンプルが破断したときの応力と伸度は表2に示すとおりであった。
【0071】
(参考例2~6)
低密度ポリエチレン樹脂と酸化亜鉛粒子との混合比を変更して混合物を調製したこと以外は、参考例1と同様にしてシーラントフィルムを製造した。混合物における酸化亜鉛粒子の含有率は表2に示すとおりとした。製造したシーラントフィルムを用いて参考例1と同様にして引張強度と引張伸度を測定した。測定結果は表2に示すとおりであった。
【0072】
【0073】
表2に示すとおり、酸化亜鉛粒子の含有率が0~20質量%の範囲では、引張強度及び引張伸度に大きな変化はなかった。一方、酸化亜鉛粒子の含有率が30質量%になると、引張強度及び引張伸度が大幅に低下することが確認された。
被包装物の変質等によって生じる嫌悪臭を十分に低減することが可能なスパウト及びその製造方法が提供される。被包装物の変質等によって生じる嫌悪臭を十分に低減することが可能な口栓、包装容器及び包装体が提供される。
10…キャップ、14…天板、14A,35A…内面、15,35…側壁、15a…内ネジ、16…テーパー部、17…ベース部、19…インナーリング、20…バンド部、40…シーラントフィルム、41…バリア層、22…フック部、42…中間層、44…紙基材、46…外層、30…スパウト、32…フランジ、32a…一方面、32b…他方面、35a…外ネジ、37…突起、45…薄肉部、100…口栓、120…容器本体、150…包装容器、160…包装体。