(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130625
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ワークシュート
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/08 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
B23Q7/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035021
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大貴
(72)【発明者】
【氏名】平田 周一
(72)【発明者】
【氏名】澤端 良彦
【テーマコード(参考)】
3C033
【Fターム(参考)】
3C033BB10
3C033CC04
3C033LL08
(57)【要約】
【課題】工作機械に適したワークシュートを提供すること。
【解決手段】傾斜した所定幅のガイド面をもった2本のガイドレールがワークを移動方向の左右両側で摺動支持するように一定の間隔で平行に配置され、前記2本のガイドレールを囲むようにシュート本体が設けられたものであり、例えば、前記ガイドレールは、ワークが摺動する前記ガイド面に波形形状が形成され、その波形形状が、複数の波形形状部が前後にV字形状の溝部を介して連続するものであり、前記波形形状部は、前記溝部の一面を構成する傾斜面と、その傾斜面に連続する曲面と、前記曲面に連続するものであってワークが摺接する平面と、前記溝部の他面を構成するように前記平面に直交する後面とから形成されたものであるワークシュート。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜した所定幅のガイド面をもった2本のガイドレールがワークを移動方向の左右両側で摺動支持するように一定の間隔で平行に配置され、前記2本のガイドレールを囲むようにシュート本体が設けられたワークシュート。
【請求項2】
前記ガイドレールは、ワークが摺動する前記ガイド面に波形形状が形成された請求項1に記載のワークシュート。
【請求項3】
前記ガイド面の波形形状は、複数の波形形状部が前後にV字形状の溝部を介して連続するものであり、前記波形形状部は、前記溝部の一面を構成する傾斜面と、その傾斜面に連続する曲面と、前記曲面に連続するものであってワークが摺接する平面と、前記溝部の他面を構成するように前記平面に直交する後面とから形成されたワークシュート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの排出がスムーズなワークシュートに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、オートローダによるワークの自動搬送が行われ、主軸装置に把持されたワークに対して工具を使用した切削など所定の加工が行われる。加工ワークについて検測を行うためには加工後のワークを取り出す必要があり、工作機械にはワークシュートが設けられ、オートローダによって運ばれたワークが機外へと排出される。しかし、加工中に噴き付けられるクーラントによってワークが濡れてしまうため、滑り台のようにして構成された従来のワークシュートは、排出途中のワークが摺接するシュート面に貼り付いてしまい、機外まで滑り落ちず途中で止まってしまうことがある。
【0003】
下記特許文献1には、レーザ加工時に使用するクーラントによりワークがシュータ面に貼り付いてしまう課題に対応したワークシュートが開示されている。同文献のワークシュートは、テーブルフレーム上にワークが排出される方向に連続した波形のシュート部材を有する。シュート部材の波形形状の内部には圧縮空気を送るパイプが挿着され、ワークの排出方向に向かって複数の噴出口から圧縮空気が噴出するよう構成されている。排出されるワークは、波形のシュート部材の上を線接触することにより摩擦抵抗が小さくなり、更に圧縮空気が送られることもあってワークが浮いて、より滑らかに移動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のワークシュートは、ワークの接触面積を小さくしてクーラントによる貼り付きを防止することができるが、レーザ加工機におけるものであり、プレートをワークとしている点で工作機械に適応することが困難なものである。工作機械では、加工によってワークの下面に凹凸が形成されるようなものがあり、その段差部分が波形形状部に引っ掛かってしまう可能性がある。また、従来のワークシュートは、三角の波形形状の鋭角な部分をワークが摺動するためワークが傷ついてしまう。従って、従来のような三角形状の波形形状で、ワークが摺動するガイド面が構成されたワークシュートは、工作機械に使用するものとしては適したものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、工作機械に適したワークシュートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るワークシュートは、傾斜した所定幅のガイド面をもった2本のガイドレールがワークを移動方向の左右両側で摺動支持するように一定の間隔で平行に配置され、前記2本のガイドレールを囲むようにシュート本体が設けられたものであり、例えば、前記ガイドレールは、ワークが摺動する前記ガイド面に波形形状が形成され、その波形形状が、複数の波形形状部が前後にV字形状の溝部を介して連続するものであり、前記波形形状部は、前記溝部の一面を構成する傾斜面と、その傾斜面に連続する曲面と、前記曲面に連続するものであってワークが摺接する平面と、前記溝部の他面を構成するように前記平面に直交する後面とから形成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、2本のガイドレールによってワークを摺動支持するように構成されているため、凸形状を有するワークにも対応可能であり、また、ガイドレールがワークと接する面が小さいため、付着したクーラントもガイド面に多くを残すことなく排除することができ、特にガイド面を波形形状にすることにより、溝部からのクーラント排除によってワークをスムーズに滑らせることにより移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ワークシュートの一実施形態を備える工作機械の側面図である。
【
図3】正面側から傾斜方向に見たワークシュートを示す図である。
【
図4】2本のガイドレールを滑り落ちるワークを下から示した図である。
【
図5】ガイドレールを摺動するワークの状態と、ガイドレールのガイド面を拡大して示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るワークシュートの一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、ワークシュートの一実施形態を備える工作機械の側面図である。この工作機械1は、全体が機体カバー3によって覆われ、その内部の加工室には旋盤が組み込まれている。機体の外には不図示のワークストッカが配置され、複数のワークが搭載されている。工作機械1は、そのワークストッカと加工室内との間でワークの受け渡しを行うガントリ式のオートローダ5が設けられている。
【0011】
オートローダ5は、アーム51の先端にロボットハンド53を備え、そのロボットハンド53が機体幅方向(図面を貫く方向)のほか、機体前後方向および上下方向に移動するよう構成されている。そうした工作機械1には図面右側の機体前面301から突き出すようにしてワークシュート7が設けられている。ワークシュート7は、工作機械1に配置されたワークストッカとは反対の側面に設けられている。
図2は、そのワークシュート7を機体正面側から示した図である。
【0012】
ワークシュート7は、所定の高さに設けられ、機体前方へと下るように傾斜している。
図3は、正面側からその傾斜方向にワークシュート7を見た図であり、ワークWが投入された状態が示されている。このワークWは、工作機械1で加工が行われるものの一例であり、中央部分の軸部101と円形に張り出したフランジ部103とを有する形状のものである。こうしたワークWは、オートローダ5による搬送時には、
図1及び
図2に示すように、軸部101の短部側がロボットハンド53によって把持することができる。
【0013】
しかし、ワークシュートが滑り台のような平らな滑り面や、従来例のような波形形状では、ワークWが姿勢を安定させることができず、最終位置まで滑らせることができなくなってしまう。そこで、本実施形態のワークシュート7は、ワークWの姿勢を安定させるため2本のガイドレール11が一定の間隔で平行に配置されている。すなわち、フランジ部103が両側のガイドレール11によって支えられ、中央に位置する軸部101の長部側が下向きの姿勢を変えずにワークWが移動できるようになっている。
【0014】
ワークシュート7は、2本のガイドレール11を囲むようにシュート本体13が構成されている。シュート本体13は、ガイドレール11と同じ傾斜で全長にわたって設けられた底面部21と、その幅方向両側に起立した側板部23とが形成された滑り台形状の部材である。こうしたシュート本体13は、ワークWから滴り落ちるクーラントを受ける役割があり、最も低い先端部にはドレンポート15が形成されている。
【0015】
2本のガイドレール11は、左右の側板部23に固定された支持ロッド16によって支えられている。そして、ワークシュート7の先端部には止め板17が固定され、投入されて滑り落ちたワークWが留め置かれるようになっている。ワークシュート7を構成するガイドレール11は、帯形状の平板部材が幅方向に立った状態で固定されている。そのためワークWは、
図4に示すように、フランジ部103が細い幅のガイドレール11上を摺動するようになっている。細い幅とは、ワーク全体を支えるような広さではなく、特に本実施形態ではワークを移動方向に対して左右両側の一部分に接する程度の幅をいう。
図4は、そのガイドレール11を滑り落ちるワークWを下側から示した図である。
【0016】
こうしたガイドレール11は、ワークWが摺動する細い幅のガイド面が当初平面であった。滑り台のような平面を滑るワークシュートに比べて接触面積は小さく、クーラントによる濡れの影響は小さいと考えられた。しかし、それでもスムーズな滑りが妨げられることがあった。そこで、本実施形態のガイドレール11は、細い幅のガイド面25に対して前記従来例のように波形形状が施されている。
【0017】
ただし本実施形態の波形形状は、従来例における三角の波形形状とは異なる特徴を有する。すなわち、従来例の波形形状は、鋭角な角度の先端部分をワークWが滑ることになるため、ワークの引っ掛かりや摺接する下面に生じる傷が問題となる。特に、工作機械1のワークWは、
図4に示すように、摺接する下面が加工によって複雑な形状をしているため、細部の段差形状部分が引っかからないように溝を小さくすることが望ましい。この点、三角形状の波形形状は、寸法が小さな加工の場合にはワークWと接する頂部がより鋭角になってしまう。
【0018】
図5は、ガイドレール11を摺動するワークWの状態と、ガイド面25を拡大して示した側面図である。ガイド面25に規則的に形成された波形形状は、板厚が6mmの帯形状の鋼材に対し、その長辺に沿ってレーザ加工で形成されたものである。1つの波形形状部30は、大きさ(長さ)Lが15mmであり、深さHが5mmである。そして、波形形状部30は、摺動するワークWに向かった前方側から傾斜面31、曲面32、平面33および後面34が連続して形成されている。
【0019】
ガイド面25には複数の波形形状部30が連億し、後面34と傾斜面31との間にV字形状の溝部35が形成されている。そこで、前方部分の傾斜面31は、溝部35の一面を構成する45度の角度θで形成された面であり、曲面32は、その傾斜面31に連続した面である。平面33は、曲面32に連続するものであってワークWが摺接する面である。そして、後面34は、溝部35の他面を構成するものであり、平面33に直交する面である。
【0020】
続いて、工作機械1ではストッカからオートローダ5によって運び出されたワークWに加工が施され、加工後のワークWが再びストッカへと戻される。複数のワークWが加工される中、任意に選択されたワークWがワークシュート7へと送られ、作業者による検測が行われる。
図1に示すように、ロボットハンド53によって把持された加工済みワークWがワークシュート7の投入部に運ばれる。そこから降ろされたワークWは、
図3に示すようにフランジ部103がガイドレール11に掛けられ、中央部分の軸部101が吊られたような姿勢になる。
【0021】
ガイドレール11のガイド面25上に置かれたワークWは、
図4に示すように、細い幅のガイドレール11上をフランジ部103の一部分が摺接するようにして滑り落ちる。ガイド面25に摺接するフランジ部103の下面は、1つの波形形状部30において前方側の傾斜面31から曲面32を通って平面33を滑り、後面34から次の波形形状部30の傾斜面31へと、その間に存在する溝部35を跨ぐようにして移動する。こうしてフランジ部103の両側がガイドレール11上を滑りながら、傾斜上方の投入部から下方の最終位置へとワークWが移動して停止する。最終位置にまでワークWが滑り落ちることにより作業者が確認でき、そのワークWについて検測が行われる。
【0022】
従って、本実施形態のワークシュート7は、2本のガイドレール11によってワークWを摺動支持するように構成されているため、軸部101のような凸形状を有するワークにも対応が能である。また、ガイドレール11がワークWと接する面が小さいため、付着したクーラントもガイド面25に多くを残すことなく排除することができる。ワークWがガイドレール11を摺動する場合、フランジ部103とガイド面25との間にクーラントが存在したとしても、そのクーラントは溝部35から横に流れてしまい、フランジ部103をガイド面25に貼り付かせるようなことはない。よって、ワークWを最終位置までスムーズに滑らせることができる。
【0023】
また、ガイドレール11のガイド面25にはワークWが摺接する箇所に角部が存在しないため、摺動するワークWを傷つけるようなことはない。そのガイド面25に形成された波形形状部30は、前後する溝部35が平面33を挟んでレーザ加工が行われるため、溝部35を小さくしても前述したように角部が生じないようにできる。また、摺動するワークWに向かう前方側の曲面32によってワークWが引っ掛かるようなことはなく、それは特に溝部35が小さく形成されていることも有効に機能している。
【0024】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、軸部101とフランジ部103都からなるワークWを対象として説明したが、本願発明のワークシュートは、2本のガイドレールを摺動することが可能であれば取り扱うワークを特に限定するものではない。
また、前記実施形態のガイドレール11は、帯形状の平板によって形成されたものを示したが、細い幅のガイド面であれば形状は特に限定されない。
【符号の説明】
【0025】
1…工作機械 3…機体カバー 5…オートローダ 7…ワークシュート 11…ガイドレール 13…シュート本体 25…ガイド面 30…波形形状部 31…傾斜面 32…曲面 33…平面 34…後面 35…溝部 101…軸部 103…フランジ部 W…ワーク