(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130658
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/00 20060101AFI20230913BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20230913BHJP
H02P 3/00 20060101ALI20230913BHJP
H02P 5/46 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
B60T13/74 G
H02P3/00 D
H02P5/46 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035074
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】塚本 駿
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
5H530
5H572
【Fターム(参考)】
3D048CC49
3D048CC54
3D048HH18
3D048HH51
3D048HH58
3D048KK18
3D048PP08
3D048QQ07
3D048RR29
3D246BA02
3D246DA01
3D246HA34A
3D246HA38A
3D246HC11
3D246JB01
3D246JB11
3D246LA13Z
3D246LA15Z
3D246LA52Z
5H530AA06
5H530BB18
5H530CD01
5H530CE15
5H530CE16
5H530EE05
5H572AA03
5H572BB07
5H572CC04
5H572DD02
5H572FF06
5H572GG04
5H572HB08
5H572HB18
5H572JJ03
5H572JJ28
5H572KK04
5H572LL01
5H572LL22
5H572LL28
5H572LL29
5H572LL32
(57)【要約】
【課題】電動制動装置の電気モータで発生した回生電力を適切に消費できるようにすること。
【解決手段】ブレーキシステム20は複数の電動制動装置21~24を備えている。複数の電動制動装置21~24は電気モータ71,72をそれぞれ有している。ブレーキシステム20では、電気モータ71,72で回生電力が発生するか否かが判定され、複数の電気モータ71,72の何れかで回生電力が発生することが判定されている場合には、回生電力を発生することが判定された電気モータ以外の他の電気モータの電力消費量が増大されるように当該他の電気モータが駆動される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車輪と第2車輪とを車輪として備える車両に適用され、
前記第1車輪に制動力を付与する第1電動制動装置と、前記第2車輪に制動力を付与する第2電動制動装置と、を備え、
前記第1電動制動装置及び前記第2電動制動装置は、被摩擦部に摩擦部を当接させて前記車輪に制動力を付与するものであり、前記被摩擦部に前記摩擦部が当接している当接状態と前記被摩擦部から前記摩擦部が離間している離間状態とに前記電動制動装置の作動状態を遷移させるアクチュエータをそれぞれ有しており、
前記第1電動制動装置の前記アクチュエータの動力源である第1電気モータと前記第2電動制動装置の前記アクチュエータの動力源である第2電気モータとは、共通の電源回路に接続されているブレーキシステムにおいて、
前記第1電気モータで回生電力が発生するか否かを判定する判定部と、
前記第1電気モータで回生電力が発生することが前記判定部によって判定されている場合に、前記第2電気モータの消費電力量を増大させる制御部と、
を備えているブレーキシステム。
【請求項2】
前記制御部は、
ベクトル制御によって前記第2電気モータへのd軸成分の電流とq軸成分の電流とを制御し、
前記第1電気モータで回生電力が発生することが前記判定部によって判定されている場合に、前記ベクトル制御における前記d軸成分の電流の絶対値を増大させることによって前記第2電気モータの消費電力量を増大させる、
請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1電気モータで回生電力が発生することが前記判定部によって判定されており、且つ前記第2電動制動装置の作動状態が前記離間状態である場合、当該第2電動制動装置の作動状態が前記離間状態に維持される範囲で前記第2電気モータを駆動することによって当該第2電気モータの消費電力量を増大させる、
請求項1又は2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記第1電動制動装置に対応する第1制御装置と、前記第2電動制動装置に対応する第2制御装置と、を備え、
前記第1制御装置は、
前記判定部を有し、
前記第1電気モータで回生電力が発生することが前記判定部によって判定されている場合に、前記第2電気モータの消費電力量を増大させることを前記制御部に要求する要求部を有し、
前記第2制御装置は、
前記制御部を有し、
前記制御部は、前記第2電気モータの消費電力量を増大させることが前記要求部によって要求されている場合に、前記第2電気モータの消費電力量を増大させる、
請求項1~3のうち何れか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
3つ以上の車輪を備える車両に適用され、
前記3つ以上の車輪に対応する3つ以上の電動制動装置を備え、
前記3つ以上の電動制動装置は、被摩擦部に摩擦部を当接させて前記車輪に制動力を付与するものであり、前記被摩擦部に前記摩擦部が当接している当接状態と前記被摩擦部から前記摩擦部が離間している離間状態とに前記電動制動装置の作動状態を遷移させるアクチュエータをそれぞれ有しており、
前記3つ以上の前記アクチュエータの動力源である電気モータは共通の電源回路に接続されているブレーキシステムにおいて、
前記3つ以上の電気モータの少なくとも1つで回生電力が発生するか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって回生電力が発生することが判定されている前記電気モータである電力発生モータ以外の前記電気モータを有する前記電動制動装置の作動状態に基づいて、前記電力発生モータ以外の前記電気モータの中から、前記電力発生モータで発生した回生電力を消費させる前記電気モータである電力消費モータを選定する選定部と、
前記3つ以上の電気モータの何れかで回生電力が発生することが前記判定部によって判定されている場合に、前記選定部によって選定された前記電力消費モータの消費電力量を増大させる制御部と、
を備えているブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用されるブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回生制動力を車両に作用させる主モータで発生した回生電力のうち、車両の蓄電部に蓄電できない余剰電力を、主モータとは異なる副モータで消費させるブレーキシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレーキシステムとしては、車輪に設けた電動制動装置を備えるシステムがある。こうしたシステムでは、電動制動装置が備える電気モータで回生電力が発生することがある。電動制動装置が備える電気モータは、特許文献1のブレーキシステムにおける副モータに相当する。本発明の課題は、電動制動装置の電気モータで発生した回生電力を適切に消費できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのブレーキシステムの一例は、第1車輪と第2車輪とを車輪として備える車両に適用される。このブレーキシステムは、前記第1車輪に制動力を付与する第1電動制動装置と、前記第2車輪に制動力を付与する第2電動制動装置と、を備えている。前記第1電動制動装置及び前記第2電動制動装置は、被摩擦部に摩擦部を当接させて前記車輪に制動力を付与するものであり、前記被摩擦部に前記摩擦部が当接している当接状態と前記被摩擦部から前記摩擦部が離間している離間状態とに前記電動制動装置の作動状態を遷移させるアクチュエータをそれぞれ有している。前記第1電動制動装置の前記アクチュエータの動力源である第1電気モータと前記第2電動制動装置の前記アクチュエータの動力源である第2電気モータとは、共通の電源回路に接続されている。こうしたブレーキシステムにおいて、前記第1電気モータで回生電力が発生するか否かを判定する判定部と、前記第1電気モータで回生電力が発生することが前記判定部によって判定されている場合に、前記第2電気モータの消費電力量を増大させる制御部と、を備えている。
【0006】
第1電気モータと第2電気モータとは共通の電源回路に接続されているため、第1電気モータで発生した回生電力を、電源回路を介して第2電気モータに供給することができる。そこで、上記のブレーキシステムでは、第1電気モータで回生電力が発生することが判定されている場合には第2電気モータの消費電力量が増大される。これにより、第1電気モータで発生した回生電力の少なくとも一部を、第2電気モータで消費させることができる。したがって、上記ブレーキシステムは、第1電動制動装置の電気モータで発生した回生電力を適切に消費することができる。
【0007】
上記課題を解決するためのブレーキシステムの一例は、3つ以上の車輪を備える車両に適用される。このブレーキシステムは、前記3つ以上の車輪に対応する3つ以上の電動制動装置を備えている。前記3つ以上の電動制動装置は、被摩擦部に摩擦部を当接させて前記車輪に制動力を付与するものであり、前記被摩擦部に前記摩擦部が当接している当接状態と前記被摩擦部から前記摩擦部が離間している離間状態とに前記電動制動装置の作動状態を遷移させるアクチュエータをそれぞれ有している。前記3つ以上の前記アクチュエータの動力源である電気モータは共通の電源回路に接続されている。こうしたブレーキシステムにおいて、前記3つ以上の電気モータの少なくとも1つで回生電力が発生するか否かを判定する判定部と、前記判定部によって回生電力が発生することが判定されている前記電気モータである電力発生モータ以外の前記電気モータを有する前記電動制動装置の作動状態に基づいて、前記電力発生モータ以外の前記電気モータの中から、前記電力発生モータで発生した回生電力を消費させる前記電気モータである電力消費モータを選定する選定部と、前記3つ以上の電気モータの何れかで回生電力が発生することが前記判定部によって判定されている場合に、前記選定部によって選定された前記電力消費モータの消費電力量を増大させる制御部と、を備えている。
【0008】
3つ以上の電気モータは共通の電源回路に接続されているため、3つ以上の電気モータの何れかで発生した回生電力を、回生電力を発生した電気モータ以外の他の電気モータに電源回路を介して供給することができる。そこで、上記のブレーキシステムでは、3つ以上の電気モータの中に回生電力を発生することが判定された電気モータである電力発生モータがある場合、当該電力発生モータ以外の電気モータの中から、電力発生モータを備える電動制動装置以外の他の電動制動装置の作動状態に基づいて電力消費モータが選定される。そして、電力消費モータの電力消費量が増大されるように当該電力消費モータが駆動される。これにより、3つ以上の電気モータの何れかで回生電力が発生した際に、電力発生モータで発生した回生電力を、他の電気モータに消費させることができる。したがって、上記ブレーキシステムは、電動制動装置の電気モータで発生した回生電力を適切に消費することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態のブレーキシステムを備える車両の概略を示す構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のブレーキシステムの制御構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ベクトル制御の回転座標を示すグラフである。
【
図4】
図4は、第1実施形態のブレーキシステムにおいて、電動制動装置の実行部が実行する消費電力量増大要求処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態のブレーキシステムにおいて、同電動制動装置の実行部が実行する消費電力量増大処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態のブレーキシステムを備える車両の概略を示す構成図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態のブレーキシステムの制御構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態のブレーキシステムにおいて、統括制御装置の実行部が実行する消費電力量増大要求処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、ブレーキシステムの第1実施形態を
図1~
図5に従って説明する。
図1に示すように、車両10は、複数の車輪と、複数の車輪に付与する制動力を調整するブレーキシステム20とを備えている。車両10は、車輪として、左前輪11と右前輪12と左後輪13と右後輪14とを備えている。
【0011】
<ブレーキシステム>
ブレーキシステム20は、複数の車輪11~14に対して個別に設けられている複数の電動制動装置21,22,23,24と、複数の電源回路26,27と、統括制御装置30とを備えている。複数の電動制動装置のうち、前輪11,12に制動力を付与する電動制動装置21,22を「前輪電動制動装置21,22」といい、後輪13,14に制動力を付与する電動制動装置23,24を「後輪電動制動装置23,24」という。
【0012】
複数の電源回路26,27のうち、第1電源回路26は、左前輪11に制動力を付与する前輪電動制動装置21と、右後輪14に制動力を付与する後輪電動制動装置24とに電力を供給する。第2電源回路27は、右前輪12に制動力を付与する前輪電動制動装置22と、左後輪13に制動力を付与する後輪電動制動装置23とに電力を供給する。
【0013】
統括制御装置30は実行部31と記憶部32とを有している。例えば、実行部31はCPUである。記憶部32には、実行部31によって実行される各種の制御プログラムが記憶されている。実行部31は、制御プログラムを実行することにより、電動制動装置21~24によって車輪11~14に付与する制動力の指令値である制動力指令値を導出する。そして、実行部31は、制動力指令値を、後述する複数の電動制動装置21~24の制御ユニット81,82,83,84に送信することにより、複数の電動制動装置21~24を作動させる。
【0014】
<前輪電動制動装置>
本実施形態では、前輪電動制動装置21,22は湿式の電動制動装置である。具体的には、前輪電動制動装置21,22は、摩擦部41と被摩擦部42とホイールシリンダ43と電動シリンダ44と電気モータ71と制御ユニットとを有している。左前輪11用の前輪電動制動装置21の制御ユニットを「制御ユニット81」とし、右前輪12用の前輪電動制動装置22の制御ユニットを「制御ユニット82」とする。
【0015】
被摩擦部42は前輪11,12と一体に回転するため、摩擦部41を被摩擦部42に当接させることにより、前輪11,12に制動力が付与される。ホイールシリンダ43に液圧が発生していない場合、摩擦部41は被摩擦部42から離間している。ホイールシリンダ43に液圧を発生させることにより、摩擦部41が被摩擦部42に当接する、すなわち、被摩擦部42に摩擦部41が押し付けられる。ホイールシリンダ43の液圧が高いほど、被摩擦部42に摩擦部41を押し付ける力が大きくなるため、前輪11,12に付与する制動力が大きくなる。
【0016】
電動シリンダ44は、伝達機構45とシリンダ48とピストン49とを有している。伝達機構45は、電気モータ71と同期して回転する回転部46と、回転部46の回転に応じた方向に直線移動する直動部47とを有している。ピストン49はシリンダ48内に配置されている。回転部46の回転に応じて直動部47が直線移動すると、ピストン49がシリンダ48内を直線移動する。シリンダ48内にはピストン49によって液室50が区画されており、液室50が液路51を介してホイールシリンダ43に接続されている。液室50の容積を小さくする方向にピストン49が直線移動すると、液室50のブレーキ液が液路51を介してホイールシリンダ43に供給されるため、ホイールシリンダ43の液圧が高くなる。すなわち、電動シリンダ44及びホイールシリンダ43は、被摩擦部42に摩擦部41が当接している当接状態と、被摩擦部42から摩擦部41が離間している離間状態とに前輪電動制動装置21,22の作動状態を遷移させることができる。前輪電動制動装置21,22では、電動シリンダ44及びホイールシリンダ43が、電気モータ71を動力源とする「アクチュエータ」に対応する。
【0017】
制御ユニット81,82は、統括制御装置30から受信した制動力指令値に基づいて電気モータ71を制御する。具体的には、制御ユニット81,82は、制動力指示値が大きいほど前輪11,12に付与する制動力が大きくなるように、電気モータ71を駆動させる。制御ユニット81,82の具体的な構成については後述する。
【0018】
なお、前輪電動制動装置21,22では、電気モータ71で回生電力が発生することがある。電気モータ71で発生した回生電力は電源回路に供給される。すなわち、前輪電動制動装置21の電気モータ71で発生した回生電力は、第1電源回路26に供給される。前輪電動制動装置22の電気モータ71で発生した回生電力は、第2電源回路27に供給される。
【0019】
電気モータ71は、電気モータ71の回転方向とトルク方向とが逆方向になった場合に回生電力を発生することがある。このような状態は、前輪電動制動装置21,22の制御モードが切り替わった場合に生じ得る。電動制動装置の制御モードとしては、車輪に付与する制動力を減少させる減少モードと、制動力を保持させる保持モードと、制動力を増大させる増大モードとがある。回生電力が発生する制御モードの切り替わりとしては、減少モードから保持モードへの切り替わりと、減少モードから増大モードへの切り替わりと、増大モードから保持モードへの切り替わりと、増大モードから減少モードへの切り替わりとがある。回生電力は、上述した電気モータ71の作動に伴い発生する電力が電気モータ71の銅損による消費電力を超えた場合に発生する。
【0020】
<後輪電動制動装置>
本実施形態では、後輪電動制動装置23,24は乾式の電動制動装置である。具体的には、後輪電動制動装置23,24は、摩擦部61と被摩擦部62とアクチュエータ63と電気モータ72と制御ユニットとを備えている。左後輪13の後輪電動制動装置23の制御ユニットを「制御ユニット83」とし、右後輪14用の後輪電動制動装置24の制御ユニットを「制御ユニット84」とする。
【0021】
被摩擦部62は後輪13,14と一体に回転するため、摩擦部61を被摩擦部62に当接させることにより、後輪13,14に制動力が付与される。被摩擦部62に摩擦部61を押し付ける力を大きくすることにより、後輪13,14に付与する制動力が大きくなる。
【0022】
アクチュエータ63は電気モータ72を動力源として作動する。具体的には、アクチュエータ63は、後輪電動制動装置23,24の作動状態を当接状態と離間状態とに変位させるべく作動する。こうしたアクチュエータ63は減速機構64と直動変換機構65とを有している。減速機構64は、電気モータ72の回転運動を減速して直動変換機構65に出力する。直動変換機構65は、減速機構64から入力された回転運動を直線運動に変換して摩擦部61に出力する。そのため、後輪電動制動装置23,24では、電気モータ72が駆動すると、電気モータ72の出力トルクがアクチュエータ63を介して摩擦部61に伝達される。これにより、摩擦部61が被摩擦部62に接近したり、摩擦部61が被摩擦部62から離間したりする。そして、摩擦部61が被摩擦部62に当接するようになると、後輪13,14に摩擦力が付与される。
【0023】
制御ユニット83,84は、統括制御装置30から受信した制動力指令値に基づいて電気モータ72を制御する。具体的には、制御ユニット83,84は、制動力指示値が大きいほど後輪13,14に付与する制動力が大きくなるように、電気モータ72を駆動させる。制御ユニット83,84の具体的な構成については後述する。
【0024】
なお、後輪電動制動装置23,24では、電気モータ72で回生電力が発生することがある。電気モータ72で発生した回生電力は電源回路に供給される。すなわち、後輪電動制動装置23の電気モータ72で発生した回生電力は、第2電源回路27に供給される。後輪電動制動装置24の電気モータ72で発生した回生電力は、第1電源回路26に供給される。
【0025】
電気モータ72は、後輪電動制動装置23,24の制御モードが切り替わった場合に回生電力を発生することがある。電気モータ72で回生電力が発生する状況は電気モータ71で回生電力が発生する状況と同じであるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
【0026】
<ブレーキシステムの制御系>
図2は、統括制御装置30と、複数の制御ユニット81~84と、車両10に設けられているCANバス86とを示すブロック図である。統括制御装置30及び複数の制御ユニット81~84は、CANバス86に接続されている。そのため、統括制御装置30は、CANバス86を介して複数の制御ユニット81~84との間で情報を送受信することができる。複数の制御ユニット81~84は、CANバス86を介して相互に情報を送受信することができる。
【0027】
複数の制御ユニット81~84は実行部91と記憶部92とをそれぞれ有している。例えば、実行部91はCPUである。記憶部92には、実行部91によって実行される各種の制御プログラムが記憶されている。
【0028】
複数の実行部91は、制御プログラムを実行することにより、判定部101と要求部102と制御部103としてそれぞれ機能する。
判定部101は、自身に対応付けられている電気モータで回生電力が発生するか否かを判定する。制御ユニット81の判定部101に対応付けられている電気モータは、前輪電動制動装置21の電気モータ71である。制御ユニット82の判定部101に対応付けられている電気モータは、前輪電動制動装置22の電気モータ71である。制御ユニット83の判定部101に対応付けられている電気モータは、後輪電動制動装置23の電気モータ72である。制御ユニット84の判定部101に対応付けられている電気モータは、後輪電動制動装置24の電気モータ72である。
【0029】
本実施形態では、判定部101は、自身に対応付けられている電動制動装置の制御モードが切り替わった場合、当該電動制動装置の電気モータで回生電力が発生すると判定する。具体的には、判定部101は、以下の条件(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)の何れかが成立した場合に、電気モータで回生電力が発生すると判定する。
(A1)電動制動装置の制御モードが減少モードから保持モードに切り替わったこと。
(A2)電動制動装置の制御モードが減少モードから増大モードに切り替わったこと。
(A3)電動制動装置の制御モードが増大モードから保持モードに切り替わったこと。
(A4)電動制動装置の制御モードが増大モードから減少モードに切り替わったこと。
【0030】
要求部102は、電気モータで回生電力が発生すると判定部101によって判定されている場合に、自身に対応付けられている電気モータ以外の他の電気モータの消費電力量を増大させることを、当該他の電気モータに対応付けられている制御部103に要求する。要求部102に対応付けられている電気モータを「第1電気モータ」とし、第1電気モータと同じ電源回路に接続されている第1電気モータ以外の電気モータを「第2電気モータ」としたとき、ここでいう他の電気モータが第2電気モータに対応する。そのため、制御ユニット81の要求部102は、後輪電動制動装置24の電気モータ72の消費電力量を増大させることを、制御ユニット84の制御部103に要求する。制御ユニット82の要求部102は、後輪電動制動装置23の電気モータ72の消費電力量を増大させることを、制御ユニット83の制御部103に要求する。制御ユニット83の要求部102は、前輪電動制動装置22の電気モータ71の消費電力量を増大させることを、制御ユニット82の制御部103に要求する。制御ユニット84の要求部102は、前輪電動制動装置21の電気モータ71の消費電力量を増大させることを、制御ユニット81の制御部103に要求する。
【0031】
制御部103は、統括制御装置30から受信した制動力指示値に基づいて、自身に対応付けられている電気モータを制御する。本実施形態では、制御部103は、ベクトル制御によって電気モータを制御する。
【0032】
図3はベクトル制御の回転座標を示す図である。ベクトル制御の回転座標において、d軸は電気モータの永久磁石の磁束軸の方向に延びる制御軸であり、q軸はトルクの方向に延びる制御軸である。制御部103は、ベクトル制御において、d軸の方向の電流成分であるd軸電流Idと、q軸の方向の電流成分であるq軸電流Iqとを調整することによって電気モータを駆動させる。具体的には、制御部103は、電気モータの出力トルクの指令値であるトルク指令値を制動力指令値に基づいて導出し、当該トルク指令値に基づいてd軸電流Id及びq軸電流Iqを導出する。そして、制御部103は、d軸電流Id及びq軸電流Iqに基づいて電気モータの各コイルに流す電流を制御することにより、電気モータを駆動させる。
【0033】
図3には、最大トルク曲線CV1が一点鎖線で図示されているとともに、トルク指令値の等トルク線L1が破線で図示されている。回転座標において、d軸電流Id及びq軸電流Iqで示す電流ベクトルVCが、最大トルク曲線CV1と等トルク線L1との交点P1を指している場合、電気モータの消費電力量を最小にしつつ、電気モータの出力トルクをトルク指令値とすることができる。言い換えると、等トルク線L1のうち、交点P1以外の点を電流ベクトルVCが指している場合、電流ベクトルVCが交点P1を指している場合と比較して電気モータの電力消費量が多くなる。
【0034】
なお、
図3に二点鎖線で示すように交点P1を指す電流ベクトルVCを「基準電流ベクトルVCb」という。基準電流ベクトルVCbのd軸電流Idを「基準d軸電流Idb」といい、基準電流ベクトルVCbのq軸電流Iqを「基準q軸電流Iqb」という。
【0035】
制御部103は、第1電気モータに対応付けられている判定部101によって第1電気モータで回生電力が発生すると判定されている場合に、自身に対応付けられている電気モータ(第2電気モータ)の消費電力量を増大させる。すなわち、第1電気モータに対応付けられている判定部101によって第1電気モータで回生電力が発生すると判定されると、第1電気モータに対応付けられている要求部102は、第2電気モータの消費電力量を増大させることを、第2電気モータに対応付けられている制御部103に要求する。そのため、第2電気モータに対応付けられている制御部103は、第1電気モータに対応付けられている要求部102から、第2電気モータの消費電力量を増大させることが要求された場合に、第2電気モータの消費電力量を増大させる。例えば、制御ユニット81の制御部103は、制御ユニット84の要求部102から、前輪電動制動装置21の電気モータ71の消費電力量を増大させることが要求された場合に、前輪電動制動装置21の電気モータ71の消費電力量を増大させる。この例の場合では、前輪電動制動装置21の電気モータ71が「第1電気モータ」に対応し、後輪電動制動装置24の電気モータ72が「第2電気モータ」に対応する。
【0036】
本実施形態では、制御部103は、自身に対応している電動制動装置の作動状態が当接状態である場合、d軸電流Idを増大させるd軸電流増大制御を実施することによって、電気モータの消費電力量を増大させる。具体的には、制御部103は、d軸電流増大制御において、d軸電流Idの絶対値が基準d軸電流Idbの絶対値よりも大きくなるように、d軸電流Id及びq軸電流Iqを導出する。例えば、制御部103は、
図3に実線で示す電流ベクトルVCのd軸電流Id及びq軸電流Iqを導出する。制御部103がd軸電流増大制御を実施する場合の電気モータの消費電力量は、制御部103がd軸電流増大制御を実施しない場合の電気モータの消費電力量よりも多くなる。
【0037】
一方、制御部103は、自身に対応している電動制動装置の作動状態が離間状態である場合、電動制動装置の作動状態が離間状態に維持される範囲で電気モータがを駆動する電気モータ強制駆動制御を実施することによって、当該電気モータの消費電力量を増大させる。具体的には、制御部103は、摩擦部が被摩擦部に接近したり、摩擦部が被摩擦部から離間したりするように電気モータを駆動させる。
【0038】
<消費電力量増大要求処理>
図4を参照し、第2電気モータの消費電力量を増大させることを、第2電気モータを制御する制御ユニットに要求する処理の流れである消費電力量増大要求処理を説明する。
図4は消費電力量増大要求処理を示すフローチャートである。消費電力量増大要求処理に対応する制御プログラムは、制御ユニット81~84の記憶部92に記憶されている。当該制御プログラムは、電動制動装置の作動によって車輪に制動力が付与されている場合には実行部91によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0039】
ステップS11において、実行部91は、自身に対応している電動制動装置の制御モードを取得する。具体的には、実行部91は、自身に対応している電動制動装置の電気モータ(第1電気モータ)の制御量の推移に基づいて制御モードを取得する。電気モータの制御量は所定周期毎に導出されている。そのため、実行部91は、例えば、制御量の最新値が前回値よりも小さい場合には減少モードを制御モードとして取得し、制御量の最新値が前回値よりも大きい場合には増大モードを制御モードとして取得し、制御量の最新値が前回値と同じ場合には保持モードを制御モードとして取得する。
【0040】
ステップS13において、実行部91は、判定部101として機能することにより、自身に対応している電動制動装置の電気モータ(第1電気モータ)で回生電力が発生するか否かを判定する。具体的には、実行部91は、消費電力量増大要求処理の前回の実行時にステップS11で取得した制御モードと、今回にステップS11で取得した制御モードとに基づいて、上記の条件(A1)~(A4)の何れかが成立したか否かを判定する。そして、実行部91は、条件(A1)~(A4)の何れかが成立したと判定した場合、電気モータで回生電力が発生すると判定する。一方、実行部91は、条件(A1)~(A4)の何れもが成立していないと判定した場合、電気モータで回生電力が発生しないと判定する。そして、実行部91は、電気モータで回生電力が発生すると判定した場合(S13:YES)、ステップS15の処理に移行し、回生電力が発生しないと判定した場合(S13:NO)、今回の処理を一旦終了する。
【0041】
ステップS15において、実行部91は、要求部として機能することにより、自身に対応している電動制動装置の電気モータ(第1電気モータ)と共通の電源回路に接続されている電気モータ(第2電気モータ)に対応している制御ユニットに、電気モータ(第2電気モータ)の消費電力量を増大させることを要求する。その後、実行部91は今回の処理を終了する。
【0042】
<消費電力量増大処理>
図5を参照し、電気モータ(第2電気モータ)の消費電力量を増大させる処理の流れである消費電力量増大処理を説明する。
図5は消費電力量増大処理を示すフローチャートである。消費電力量増大処理に対応する制御プログラムは、制御ユニット81~84の記憶部92に記憶されている。当該制御プログラムは、実行部91によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0043】
ステップS21において、実行部91は、自身に対応している電気モータ(第2電気モータ)の消費電力量を増大させることを、他の電気モータ(第1電気モータ)に対応している制御ユニットから要求されているか否かを判定する。実行部91は、電気モータの消費電力量を増大させることを要求されている場合(S21:YES)、ステップS23の処理に移行し、電気モータの消費電力量を増大させることを要求されていない場合(S21:NO)、今回の処理を一旦終了する。
【0044】
ステップS23において、実行部91は、自身に対応している電動制動装置の作動状態を取得する。具体的には、実行部91は、電動制動装置の作動状態が当接状態であるのか離間状態であるのかを取得する。
【0045】
ステップS25において、実行部91は、ステップS23で取得した電動制動装置の作動状態が当接状態であるか否かを判定する。実行部91は、作動状態が当接状態である場合(S25:YES)、ステップS27の処理に移行し、作動状態が離間状態である場合(S25:NO)、ステップS29の処理に移行する。
【0046】
ステップS27において、実行部91は、制御部103として機能することにより、上述したd軸電流増大制御を開始する。その後、実行部91は今回の処理を一旦終了する。
ステップS29において、実行部91は、制御部103として機能することにより、上述した電気モータ強制駆動制御を開始する。その後、実行部91は今回の処理を一旦終了する。
【0047】
なお、消費電力量増大処理を実行することによってd軸電流増大制御や電気モータ強制駆動制御を開始した場合、実行部91は、所定期間の間、当該制御を実施したあと、当該制御を終了する。
【0048】
<本実施形態の作用及び効果>
(B1)統括制御装置30からの指令に基づいて後輪電動制動装置23,24によって後輪13,14に制動力が付与されている場合の作用及び効果を説明する。
【0049】
例えば後輪電動制動装置24の制御モードが切り替わると、後輪電動制動装置24の制御ユニット84では、後輪電動制動装置24の電気モータ72で回生電力が発生すると判定される。
図1に示したように後輪電動制動装置24と前輪電動制動装置21とは共通の第1電源回路26に接続されているため、制御ユニット84は、前輪電動制動装置21の電気モータ71の消費電力量を増大させることを前輪電動制動装置21の制御ユニット81に要求する。
【0050】
制御ユニット81では、上記の要求を制御ユニット84から受信すると、前輪電動制動装置21の電気モータ71の消費電力量を増大させるべく電気モータ71が駆動する。このとき、前輪電動制動装置21によって左前輪11に制動力が付与されている場合、前輪電動制動装置21の作動状態が当接状態であるため、制御ユニット81ではd軸電流増大制御が実施される。これにより、前輪電動制動装置21の電気モータ71の出力トルクの変動を抑制しつつ、電気モータ71の消費電力量が増大される。電気モータ71の出力トルクが変動しないと云うことは、前輪電動制動装置21によって左前輪11に付与される制動力が変わらないことを意味する。後輪電動制動装置24の電気モータ72で発生した回生電力は、第1電源回路26を介して前輪電動制動装置21の電気モータ71に供給できる。そのため、前輪電動制動装置21の電気モータ71の消費電力量を増大させることにより、左前輪11に付与される制動力の増大を抑制しつつ、後輪電動制動装置24の電気モータ72で発生した回生電力の少なくとも一部を、前輪電動制動装置21の電気モータ71で消費させることができる。
【0051】
一方、上記の要求を制御ユニット81が受信したときに前輪電動制動装置21によって左前輪11に制動力が付与されていない場合、前輪電動制動装置21の作動状態が離間状態であるため、制御ユニット81では電気モータ強制駆動制御が実施される。この場合、前輪電動制動装置21の電気モータ71は、左前輪11に制動力を付与させない範囲で駆動する。そのため、左前輪11に制動力を付与させることなく、後輪電動制動装置24の電気モータ72で発生した回生電力の少なくとも一部を、前輪電動制動装置21の電気モータ71で消費することができる。
【0052】
この場合、後輪電動制動装置24が「第1電動制動装置」に対応し、後輪電動制動装置24の電気モータ72が「第1電気モータ」に対応する。後輪電動制動装置24の制御ユニット84が、第1電動制動装置に対応する「第1制御装置」に対応し、右後輪14が「第1車輪」に対応する。前輪電動制動装置21が「第2電動制動装置」に対応し、前輪電動制動装置21の電気モータ71が「第2電気モータ」に対応する。前輪電動制動装置21の制御ユニット81が、第2電動制動装置に対応する「第2制御装置」に対応し、左前輪11が「第2車輪」に対応する。
【0053】
ちなみに、後輪電動制動装置23の電気モータ72で回生電力が発生すると判定された場合、当該回生電力を消費させる電気モータは前輪電動制動装置22の電気モータ71になる。そのため、この場合では後輪電動制動装置23が「第1電動制動装置」に対応し、後輪電動制動装置23の電気モータ72が「第1電気モータ」に対応する。後輪電動制動装置23の制御ユニット83が「第1制御装置」に対応し、左後輪13が「第1車輪」に対応する。前輪電動制動装置22が「第2電動制動装置」に対応し、前輪電動制動装置22の電気モータ71が「第2電気モータ」に対応する。前輪電動制動装置22の制御ユニット82が「第2制御装置」に対応し、右前輪12が「第2車輪」に対応する。
【0054】
(B2)統括制御装置30からの指令に基づいて前輪電動制動装置21,22によって前輪11,12に制動力が付与されている場合の作用及び効果を説明する。
例えば前輪電動制動装置22の制御モードが切り替わると、前輪電動制動装置22の制御ユニット82では、前輪電動制動装置22の電気モータ71で回生電力が発生すると判定される。
図1に示したように前輪電動制動装置22と後輪電動制動装置23とは共通の第2電源回路27に接続されているため、制御ユニット82は、後輪電動制動装置23の電気モータ72の消費電力量を増大させることを後輪電動制動装置23の制御ユニット83に要求する。
【0055】
制御ユニット83では、上記の要求を制御ユニット82から受信すると、電気モータ72の消費電力量を増大させるべく、d軸電流増大制御又は電気モータ強制駆動制御が実施される。すなわち、後輪電動制動装置23によって左後輪13に制動力が付与されている場合、後輪電動制動装置23の作動状態が当接状態であるため、制御ユニット83ではd軸電流増大制御が実施される。一方、後輪電動制動装置23によって左後輪13に制動力が付与されていない場合、後輪電動制動装置23の作動状態が離間状態であるため、制御ユニット83では電気モータ強制駆動制御が実施される。これにより、前輪電動制動装置22の電気モータ71で発生した回生電力の少なくとも一部を、後輪電動制動装置23の電気モータ72で消費することができる。
【0056】
この場合、前輪電動制動装置22が「第1電動制動装置」に対応し、前輪電動制動装置22の電気モータ71が「第1電気モータ」に対応する。前輪電動制動装置22の制御ユニット82が「第1制御装置」に対応し、右前輪12が「第1車輪」に対応する。後輪電動制動装置23が「第2電動制動装置」に対応し、後輪電動制動装置23の電気モータ72が「第2電気モータ」に対応する。後輪電動制動装置23の制御ユニット83が「第2制御装置」に対応し、左後輪13が「第2車輪」に対応する。
【0057】
ちなみに、前輪電動制動装置21の電気モータ71で回生電力が発生すると判定された場合、当該回生電力を消費させる電気モータは後輪電動制動装置24の電気モータ72になる。そのため、この場合では前輪電動制動装置21が「第1電動制動装置」に対応し、前輪電動制動装置21の電気モータ71が「第1電気モータ」に対応する。前輪電動制動装置21の制御ユニット81が「第1制御装置」に対応し、左前輪11が「第1車輪」に対応する。後輪電動制動装置24が「第2電動制動装置」に対応し、後輪電動制動装置24の電気モータ72が「第2電気モータ」に対応する。後輪電動制動装置24の制御ユニット84が「第2制御装置」に対応し、右後輪14が「第2車輪」に対応する。
【0058】
本実施形態では、以下の効果をさらに得ることができる。
(1)第1電気モータで回生電力が実際に発生してから、第2電気モータの消費電力量を増大させることを、第1電動制動装置の制御ユニットが第2電動制動装置の制御ユニットに要求する場合を考える。この場合、第1電気モータでの回生電力の発生に対し、第2電気モータの消費電力量を増大させるためのd軸電流増大制御や電気モータ強制駆動制御の開始が遅れてしまい、第1電気モータで発生した回生電力を、第2電気モータに消費させることができないおそれがある。
【0059】
この点、本実施形態では、上記条件(A1)~(A4)の何れかが成立した電動制動装置の電気モータで回生電力が発生すると判定するようにしている。そのため、第1電気モータで回生電力が実際に発生する前に、第2電気モータで回生電力を消費するための準備として、第2電動制動装置の制御ユニットがd軸電流増大制御や電気モータ強制駆動制御を開始することができる。したがって、第1電気モータでの回生電力の発生に対し、第2電気モータの消費電力の増大の開始が遅れることを抑制でき、ひいては第1電気モータで発生した回生電力を、第2電気モータで消費させることができる。
【0060】
(第2実施形態)
ブレーキシステムの第2実施形態を
図6~
図8に従って説明する。なお、第2実施形態では、電源回路が1つである点、1つの前輪電動制動装置で両前輪11,12に制動力を付与できるようにした点、及び制御の内容などが第1実施形態と異なっている。以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0061】
図6は、本実施形態のブレーキシステム20Aを示す模式図である。ブレーキシステム20Aは、前輪電動制動装置21Aと、2つの後輪電動制動装置23,24と、電源回路26Aと、統括制御装置30Aとを備えている。電源回路26Aは、複数の後輪電動制動装置23,24と前輪電動制動装置21Aとに電力を供給する。
【0062】
<前輪電動制動装置>
前輪電動制動装置21Aは、電動シリンダ44Aと電気モータ71Aと制御ユニット80Aとを有している。電動シリンダ44Aは電気モータ71Aを動力源として作動する電動加圧装置である。電動シリンダ44Aのシリンダの容積が上記第1実施形態で説明した電動シリンダ44のシリンダ48の容積よりも大きいこと以外では、電動シリンダ44Aの構成は電動シリンダ44と概ね同じであるため、詳細な説明を割愛する。電動シリンダ44Aの液室50Aは、液路51Aを介して、左前輪11に設けられているホイールシリンダ43と右前輪12に設けられているホイールシリンダ43との双方に接続されている。そのため、電動シリンダ44Aは、左前輪11用のホイールシリンダ43の液圧と右前輪12用のホイールシリンダ43の液圧との双方を調整することができる。本実施形態では、電動シリンダ44Aと左前輪11用のホイールシリンダ43と右前輪12用のホイールシリンダ43とが、電気モータ71Aを動力源とする「アクチュエータ」に対応する。
【0063】
制御ユニット80Aは、統括制御装置30Aから受信した制動力指示値に基づいて、電気モータ71Aを駆動させる。制御ユニット80Aの具体的な構成については後述する。
<ブレーキシステムの制御系>
図7は、統括制御装置30Aと、複数の制御ユニット80A,83,84と、CANバス86とを示すブロック図である。
【0064】
統括制御装置30Aは実行部31と記憶部32とを有している。例えば、実行部31はCPUである。記憶部32には、実行部31によって実行される各種の制御プログラムが記憶されている。
【0065】
複数の制御ユニット80A,83,84は、実行部91と記憶部92とをそれぞれ有している。例えば、実行部91はCPUである。記憶部92には、実行部91によって実行される各種の制御プログラムが記憶されている。
【0066】
本実施形態では、統括制御装置30Aの実行部31は、記憶部32に記憶されている制御プログラムを実行することにより、指令部106Aと判定部101Aと選定部104Aと要求部102Aとして機能する。複数の制御ユニット80A,83,84の実行部91は、記憶部92に記憶されている制御プログラムを実行することにより、制御部103としてそれぞれ機能する。制御部103の処理内容は第1実施形態と同様であるため、ここでは制御部103の説明は割愛する。
【0067】
指令部106Aは、電動制動装置21A,23,24によって車輪11~14に付与する制動力の指令値である制動力指令値を導出する。具体的には、指令部106Aは、車両10の運転者のブレーキ操作量や他の制御装置からの要求に基づいて制動力指令値を導出する。そして、指令部106Aは、導出した制動力指令値を、電動制動装置21A,23,24の制御部103に送信する。
【0068】
判定部101Aは、複数の電気モータ71A,72で回生電力が発生するか否かを判定する。具体的には、判定部101Aは、前輪電動制動装置21Aにおいて上記の条件(A1)~(A4)の何れかが成立した場合、前輪電動制動装置21Aの制御モードが切り替わったと判断できるため、電気モータ71Aで回生電力が発生すると判定する。同様に、判定部101Aは、後輪電動制動装置23において上記の条件(A1)~(A4)の何れかが成立した場合、後輪電動制動装置23の電気モータ72で回生電力が発生すると判定する。判定部101Aは、後輪電動制動装置24において上記の条件(A1)~(A4)の何れかが成立した場合、後輪電動制動装置24の電気モータ72で回生電力が発生すると判定する。本実施形態では、判定部101Aによって回生電力が発生すると判定された電気モータを「電力発生モータ」といい、判定部101Aによって回生電力が発生しないと判定された電気モータを「電力非発生モータ」という。
【0069】
選定部104Aは、複数の電気モータ71A,72の中に電力発生モータがある場合、電力非発生モータを有する電動制動装置の作動状態に基づいて、電力非発生モータの中から、回生電力を消費させる電気モータである電力消費モータを選定する。例えば、判定部101Aによって前輪電動制動装置21Aの電気モータ71Aで回生電力が発生すると判定されている場合、選定部104Aは、複数の後輪電動制動装置23,24の作動状態に基づいて、複数の電気モータ72の中から、電気モータ71Aで発生した回生電力を消費させる電力消費モータを選定する。この例の場合では前輪電動制動装置21Aの電気モータ71Aが「電力発生モータ」に対応し、複数の電気モータ72が「電力非発生モータ」に対応する。
【0070】
本実施形態では、選定部104Aは、電力非発生モータが1つのみである場合、当該電力非発生モータを電力消費モータとして選定する。一方、選定部104Aは、電力非発生モータが複数ある場合、複数の電力非発生モータのうちの少なくとも1つを電力消費量として選定する。例えば、選定部104Aは、電力非発生モータを有する電動制動装置の中に、作動状態が離間状態である電動制動装置がある場合には当該電動制動装置の電気モータを電力消費モータとして選定する一方、電力非発生モータを有する電動制動装置の中に、作動状態が離間状態である電動制動装置がない場合には所定のルールに沿って電力消費モータを選定する。
【0071】
所定のルールとしては、例えば、最も回転速度が小さい電気モータを電力消費モータとして選定すること、最もトルク指令値が小さい電気モータを電力消費モータとして選定することなどがある。
【0072】
要求部102Aは、選定部104Aによって電力消費モータとして選定された電気モータに対応している制御部103に対し、当該電気モータの消費電力量を増大させることを要求する。例えば後輪電動制動装置23の電気モータ72が選定部104Aによって電力消費モータとして選定されている場合、要求部102Aは、後輪電動制動装置23の電気モータ72の消費電力量を増大させることを後輪電動制動装置23の制御部103に要求する。
【0073】
<消費電力量増大要求処理>
図8を参照し、本実施形態で実行される消費電力量増大要求処理を説明する。
図8は当該消費電力量増大要求処理を示すフローチャートである。消費電力量増大要求処理に対応する制御プログラムは、統括制御装置30Aの記憶部32に記憶されている。当該制御プログラムは、統括制御装置30Aの実行部31によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0074】
ステップS41において、実行部31は、複数の電動制動装置21A,23,24の制御モードを取得する。具体的には、実行部31は、電動制動装置の電気モータの制御量を所定の周期毎に制御ユニット80A,83,84から取得することによって得た電気モータの推移に基づいて制御モードを取得する。
【0075】
ステップS43において、実行部31は、判定部101Aとして機能することにより、複数の電気モータ71A,72の中に、回生電力を発生すると判定した電気モータである電力発生モータがあるか否かを判定する。実行部31は、電力発生モータがある場合(S43:YES)、ステップS45の処理に移行し、電力発生モータがない場合(S43:NO)、今回の処理を一旦終了する。
【0076】
ステップS45において、実行部31は、選定部104Aとして機能することにより、電動制動装置によって制動力が付与されていない車輪があるか否かを判定する。実行部31は、電動制動装置によって制動力が付与されていない車輪がある場合(S45:YES)、ステップS47の処理に移行し、電動制動装置によって制動力が付与されていない車輪がない場合(S45:NO)、ステップS49の処理に移行する。本実施形態では、電動制動装置によって制動力が付与されていない車輪を「非制動車輪」という。
【0077】
ステップS47において、実行部31は、選定部104Aとして機能することにより、非制動車輪に対応する電動制動装置の電気モータを電力消費モータとして選定する。そして、実行部31はステップS51の処理に移行する。
【0078】
ステップS49において、実行部31は、選定部104Aとして機能することにより、上記所定のルールに沿って電力消費モータを選定する。そして、実行部31はステップS51の処理に移行する。
【0079】
ステップS51において、実行部31は、要求部102Aとして機能することにより、ステップS47又はステップS49で電力消費モータとして選定した電気モータに対応している制御ユニットに対し、電気モータの消費電力量を増大させることを要求する。その後、実行部31は今回の処理を一旦終了する。
【0080】
<本実施形態の作用及び効果>
(B3)統括制御装置30からの指令に基づいて前輪電動制動装置21Aによって両前輪11,12に制動力が付与されている場合の作用及び効果を説明する。
【0081】
例えば前輪電動制動装置21Aの制御モードが切り替わると、統括制御装置30Aでは、前輪電動制動装置21Aの電気モータ71Aで回生電力が発生すると判定される。すなわち、電気モータ71Aが電力発生モータに相当する。電力発生モータに相当する電気モータ71A以外の他の電気モータ72は、電気モータ71Aと共通の電源回路26Aに接続されている。そのため、2つの電気モータ72の少なくとも一方の消費電力量を増大させることが要求される。
【0082】
具体的には、2つの後輪電動制動装置23,24の中に、後輪に制動力を付与していない後輪電動制動装置があるか否かが判定される。2つの後輪電動制動装置23,24の何れもが後輪に制動力を付与していない場合、2つの電気モータ72の何れもが電力消費モータに選定される。また、2つの後輪電動制動装置23,24のうち、一方の後輪電動制動装置のみが後輪に制動力を付与していない場合、当該一方の後輪電動制動装置の電気モータ72のみが電力消費モータに選定される。この場合、後輪に制動力を付与している後輪電動制動装置の電気モータ72は電力消費モータに選定されない。また、2つの後輪電動制動装置23,24の何れもが後輪に制動力を付与している場合、2つの電気モータ72の少なくとも一方が、所定のルールに沿って電力消費モータに選定される。
【0083】
このように電力消費モータが選定されると、統括制御装置30Aは、電力消費モータに選定された電気モータ72に対応している制御ユニットに、当該電気モータ72の消費電力量の増大を要求する。例えば後輪電動制動装置23の電気モータ72が電力消費モータに選定されている場合、後輪電動制動装置23の制御ユニット83に、電気モータ72の消費電力量の増大が要求される。
【0084】
制御ユニット82,83は、電気モータ72の消費電力量の増大が統括制御装置30Aから要求されると、自身に対応している電気モータ72の消費電力量が増大されるように電気モータ72を駆動させる。例えば後輪電動制動装置の作動状態が当接状態である場合、制御ユニット82,83ではd軸電流増大制御が実施される。また例えば後輪電動制動装置の作動状態が離間状態である場合、制御ユニット82,83では電気モータ強制駆動制御が実施される。これにより、前輪電動制動装置21Aの電気モータ71Aで発生した回生電力の少なくとも一部を、当該電気モータ71A以外の他の電気モータ72で消費することができる。
【0085】
なお、前輪電動制動装置21Aの電気モータ71A以外の他の電気モータが電力発生モータになる場合についての作用は上記(B3)の場合と略同等となるため、ここでは説明を割愛する。
【0086】
また、本実施形態では、上記第1実施形態の(1)と同等の効果を得ることができる。
(変更例)
上記複数の実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記複数の実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0087】
・上記複数の実施形態において、判定部101は、制御モードの切り替わりに加えて、又は制御モードの切り替わりに替えて、電気モータの回転方向とトルクの方向に基づいて、電気モータで回生電力が発生すると判定してもよい。詳しくは判定部101は、電気モータの回転方向とトルク方向とが逆方向になった場合に、電気モータで回生制動力が発生すると判定してもよい。この場合、電気モータの回転方向は、例えば電気モータの回転角度を検出する回転角センサの出力信号から導出すればよい。また電気モータのトルク方向は、例えばトルク指令値から導出すればよい。
【0088】
・上記第2実施形態において、判定部101Aは、複数の電気モータ71A,72の少なくとも1つで回生電力が発生するか否かを判定すればよい。例えば、判定部101Aは、複数の電気モータ72で回生電力が発生するか否かを判定するのであれば、電気モータ71Aで回生電力が発生するか否かを判定しなくてもよい。また例えば、判定部101Aは、電気モータ71Aで回生電力が発生するか否かを判定するのであれば、電気モータ72で回生電力が発生するか否かを判定しなくてもよい。
【0089】
・上記第2実施形態において、選定部104Aは、複数の電気モータ71A,72の中で、電力消費モータ以外の全ての電気モータを電力消費モータとして選定するようにしてもよい。
【0090】
・上記第2実施形態では、統括制御装置30Aを判定部101Aとして機能させているが、これに限らない。すなわち、複数の制御ユニット80A,83,84を、判定部としてそれぞれ機能させるようにしてもよい。この場合、複数の制御ユニット80A,83,84を選定部としてそれぞれ機能させてもよいし、複数の制御ユニット80A,83,84を選定部及び要求部としてそれぞれ機能させてもよい。
【0091】
・上記第1実施形態では、複数の制御ユニット81~84を、判定部101及び要求部102としてそれぞれ機能させているが、これに限らない。例えば、統括制御装置30を、判定部及び要求部として機能させるようにしてもよい。
【0092】
・上記第1実施形態において、複数の制御ユニット81~84を要求部102として機能させなくてもよい。この場合、判定部101が電気モータで回生電力が発生すると判定した際にはその判定結果を他の制御ユニットに送信し、他の制御ユニットではd軸電流増大制御や電気モータ強制駆動制御を実施するようにするとよい。
【0093】
・上記複数の実施形態において、電気モータの消費電力量を増大させる場合、電動制動装置の作動状態が離間状態であるか当接状態であるかに拘わらず、d軸電流増大制御を実施するようにしてもよい。
【0094】
・上記第2実施形態において、ブレーキシステムは、前輪電動制動装置21Aの代わりに、
図1に示した2つの前輪電動制動装置21,22を備えた構成であってもよい。
・上記第1実施形態において、前輪11,12に制動力を付与する前輪電動制動装置は、後輪電動制動装置23,24のように乾式の電動制動装置であってもよい。
【0095】
・上記複数の実施形態において、後輪13,14に制動力を付与する後輪電動制動装置は、前輪電動制動装置21,22のように湿式の電動制動装置であってもよい。
・上記第1実施形態では、電源回路として第1電源回路26及び第2電源回路27を備えているが、電源回路は1つのみでよい。この場合、1つの電源回路から複数の電動制動装置21~24に電力が供給されることになる。そのため、複数の制御ユニット81~84の実行部91を選定部として機能させるようにしてもよい。すなわち、実行部91は、
図8に示した消費電力量増大要求処理と同等の処理を実行する。
【0096】
・上記第1実施形態において、後輪電動制動装置23と後輪電動制動装置24とが共通の第1電源回路に接続されているとともに、前輪電動制動装置21と前輪電動制動装置22とが共通の第2電源回路に接続されていてもよい。
【0097】
・上記複数の実施形態では、後輪電動制動装置23に制御ユニット83を設けるとともに後輪電動制動装置24に制御ユニット84を設けているが、後輪電動制動装置23と後輪電動制動装置24とを共通の制御ユニットで制御するようにしてもよい。
【0098】
・上記第1実施形態では、前輪電動制動装置21に制御ユニット81を設けるとともに前輪電動制動装置22に制御ユニット82を設けているが、前輪電動制動装置21と前輪電動制動装置22とを共通の制御ユニットで制御するようにしてもよい。
【0099】
・上記複数の実施形態では、電動制動装置毎に制御ユニットを設けるとともに、電動制動装置の電気モータを当該制御ユニットが制御しているが、これに限らない。例えば、電動制動装置は制御ユニットを備えない構成であってもよい。この場合、統括制御装置30,30Aが複数の電動制動装置の電気モータを制御する。
【0100】
・統括制御装置30,30A及び制御ユニット81~84,80Aは、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェアなどの1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。専用のハードウェアとしては、例えば、特定用途向け集積回路であるASICを挙げることができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0101】
(他の技術的思想)
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記第1電動制動装置の制御モードとして、前記車輪に付与する制動力を減少させる減少モードと、前記制動力を保持する保持モードと、前記制動力を増大させる増大モードとが用意されており、
前記判定部は、前記第1電動制動装置の制御モードが切り替わった場合に、前記第1電気モータで回生電力が発生すると判定することが好ましい。
【0102】
(ロ)前記判定部は、前記第1電動制動装置の制御モードが前記減少モードから前記保持モードに切り替わったこと、前記第1電動制動装置の制御モードが前記減少モードから前記増大モードが切り替わったこと、前記第1電動制動装置の制御モードが前記増大モードから前記保持モードに切り替わったこと、及び前記第1電動制動装置の制御モードが前記増大モードから前記減少モードに切り替わったことの何れかが成立した場合に、前記第1電気モータで回生電力が発生すると判定することが好ましい。
【0103】
(ハ)前記判定部は、前記電動制動装置の制御モードが前記減少モードから前記保持モードに切り替わったこと、前記電動制動装置の制御モードが前記減少モードから前記増大モードが切り替わったこと、前記電動制動装置の制御モードが前記増大モードから前記保持モードに切り替わったこと、及び前記電動制動装置の制御モードが前記増大モードから前記減少モードに切り替わったことの何れかが成立した場合に、当該電動制動装置の前記電気モータで回生電力が発生すると判定することが好ましい。
【0104】
なお、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」又は「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」又は「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0105】
10…車両
11~14…車輪
20,20A…ブレーキシステム
21~24,21A…電動制動装置
26,26A,27…電源回路
30…統括制御装置
41,61…摩擦部
42,62…被摩擦部
43…ホイールシリンダ(アクチュエータの一例)
44,44A…電動シリンダ(アクチュエータの一例)
63…アクチュエータ
71,71A,72…電気モータ
80A,81~84…制御ユニット(制御装置の一例)
101,101A…判定部
102,102A…要求部
103…制御部
104A…選定部