IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130660
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】インクジェット用インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20230913BHJP
【FI】
C09D11/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035079
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】土橋 一揮
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD03
4J039AD09
4J039BE01
4J039BE25
4J039CA06
4J039EA41
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】ノズル詰まりの発生を抑制でき、且つ保存安定性に優れるインクジェット用インクを提供する。
【解決手段】インクジェット用インクは、水性媒体と、水性媒体に分散する顔料粒子とを含有する。顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含む。架橋樹脂は、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を有する。架橋樹脂の架橋率は、50%以上80%以下である。1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体と、前記水性媒体に分散する顔料粒子とを含有し、
前記顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含み、
前記架橋樹脂は、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を有し、
前記架橋樹脂の架橋率は、50%以上80%以下であり、
1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下である、インクジェット用インク。
【請求項2】
前記架橋樹脂は、前記イソシアネート架橋剤によるスチレン-(メタ)アクリル樹脂の架橋物である、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記イソシアネート架橋剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
前記架橋樹脂の前記架橋率は、55%以上80%以下である、請求項1~3の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、顔料及び水性媒体を含有する水性のインクジェット用インクが用いられることがある。インクジェット用インクには、優れた保存安定性が要求される。このような要求に対して、特許文献1において、例えば、インクジェット記録用水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクが提案されている。このインクジェット記録用水分散体は、着色剤を含有する架橋ポリマー粒子を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-150535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット記録用水系インクは、保存安定性の点で不十分である。また、特許文献1に記載のインクジェット記録用水系インクは、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズル詰まりの発生を抑制する点でも不十分である。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、ノズル詰まりの発生を抑制し、且つ保存安定性に優れるインクジェット用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット用インクは、水性媒体と、前記水性媒体に分散する顔料粒子とを含有する。前記顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含む。前記架橋樹脂は、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を有する。前記架橋樹脂の架橋率は、50%以上80%以下である。本発明のインクにおいて、1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るインクジェット用インクは、ノズル詰まりの発生を抑制でき、且つ保存安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。まず、本明細書において用いられる用語について説明する。質量平均分子量(Mw)の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。体積中位径(D50)は、何ら規定していなければ、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定された値である。酸価は、何ら規定していなければ、JIS(日本産業規格)K0070:1992に記載の方法に従って求めることができる。アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。アクリレート及びメタクリレートを包括的に「(メタ)アクリレート」と総称する場合がある。以下に説明する各成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以上、本明細書において用いられる用語について説明した。
【0009】
<インクジェット用インク>
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット用インク(以下、単にインクと記載することがある)を説明する。本実施形態のインクは、水性媒体と、顔料粒子とを含有する。顔料粒子は、水性媒体に分散する。顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含む。架橋樹脂は、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を有する。架橋樹脂の架橋率は、50%以上80%以下である。本実施形態のインクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下である。以下、「インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合」を「上澄み固形分割合」と記載することがある。
【0010】
本実施形態のインクは、上述の構成を備えることにより、ノズル詰まりの発生を抑制でき、且つ保存安定性に優れる。その理由は以下のように推察される。
【0011】
顔料は、単独では水性媒体に対する分散性が低い成分である。そこで、水性媒体に顔料を分散させるために、例えば、水性媒体との親和性に優れる樹脂を顔料に吸着させることがある。しかしながら、顔料に対する樹脂の吸着力は比較的弱く、顔料から樹脂が容易に遊離する傾向がある。そこで、イソシアネート架橋剤を用いて顔料に吸着した樹脂を架橋することで、架橋樹脂を形成する。本実施形態のインクにおいて、顔料粒子は顔料及び架橋樹脂を含み、架橋樹脂はイソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を有する。架橋樹脂はイソシアネート架橋剤によって架橋されているため、顔料から架橋樹脂が遊離し難い。これにより、顔料から架橋樹脂が遊離し、剥き出しとなった顔料が凝集することを抑制できる。その結果、本実施形態のインクは、保存安定性に優れる。
【0012】
また、イソシアネート架橋剤は、親水性の高い架橋構造を形成できる。このため、架橋剤としてイソシアネート架橋剤を用いることで、架橋樹脂に適度な親水性を付与できる。更に、架橋樹脂の架橋率は80%以下であり、架橋樹脂は、イソシアネート架橋剤によって過度に架橋されているわけではない。このため、水性媒体に対する顔料粒子の分散性が十分に維持される。これらの結果、本実施形態のインクは、保存安定性に優れる。
【0013】
ここで、インクの上澄み液に含まれる固形分は、例えば、インクの製造時及び保管時に、顔料粒子に含まれる架橋樹脂のうちの一部が、水性媒体に遊離することで生じる。インクの上澄み液に含まれる固形分は、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズル詰まりの原因となることがある。本実施形態のインクの上澄み固形分割合は2.0質量%以下であるため、上述の固形分に起因するノズル詰まりの発生を抑制できる。
【0014】
また、架橋樹脂の架橋率は50%以上であり、架橋樹脂は、イソシアネート架橋剤によって十分に架橋されている。このため、顔料から架橋樹脂が遊離し難く、遊離した架橋樹脂に起因するノズル詰まりの発生を抑制できる。
【0015】
また、他の架橋剤(例えば、エポキシ架橋剤)には、不純物として塩素が含まれる場合がある。イソシアネート架橋剤は、他の架橋剤(例えば、エポキシ架橋剤)と比較して塩素に由来する腐食性が低く、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズルを腐食させ難い。その結果、本実施形態のインクはノズル詰まりの発生を抑制できる。
【0016】
以上、本実施形態のインクが、ノズル詰まりの発生を抑制でき、且つ保存安定性に優れる理由を説明した。以下、本実施形態のインクについて、更に詳細に説明する。
【0017】
[顔料粒子]
顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含む。顔料粒子は、例えば、顔料を含むコアと、コアを被覆する架橋樹脂とにより構成される。顔料粒子における、顔料及び架橋樹脂の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
【0018】
本実施形態のインクの色濃度、色相、及び安定性を最適化する観点から、顔料粒子の体積中位径としては、30nm以上200nm以下が好ましく、70nm以上130nm以下がより好ましい。
【0019】
本実施形態のインクにおいて、顔料粒子の含有割合としては、5質量%以上30質量%以下が好ましく、8質量%以上15質量%以下がより好ましい。顔料粒子の含有割合を5質量%以上とすることで、本実施形態のインクは、所望する画像濃度を有する画像を形成できる。また、顔料粒子の含有割合を30質量%以下とすることで、本実施形態のインクの流動性を最適化できる。
【0020】
(顔料)
顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
【0021】
本実施形態のインクにおいて、顔料の含有割合としては、3質量%以上20質量%以下が好ましく、4質量%以上8質量%以下がより好ましい。インクにおける顔料の含有割合が3質量%以上であると、所望の画像濃度を有する画像が得られ易い。インクにおける顔料の含有割合が20質量%以下であると、記録媒体に対するインクの浸透性を好適化できる。顔料粒子における顔料の含有割合としては、50質量%以上90質量%以下が好ましく、60質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0022】
(架橋樹脂)
架橋樹脂は、例えば、顔料粒子において、顔料の表面に付着(例えば、吸着)している。例えば、架橋樹脂の親油性部位が顔料に吸着し、架橋樹脂の親水性部位が水性媒体の方を向くことで、顔料粒子が水性媒体に好適に分散する。このように、架橋樹脂は、水性媒体に顔料粒子を分散させる分散剤として機能する。
【0023】
イソシアネート架橋剤は、少なくとも2つのNCO基を有する。NCO基は、式「-N=C=O」で表される基である。架橋樹脂は、例えば、イソシアネート架橋剤と、イソシアネート架橋剤が有するNCO基と反応可能な官能基を有する樹脂とを、架橋反応することにより得られる。以下、「イソシアネート架橋剤が有するNCO基と反応可能な官能基を有する樹脂」を、「架橋前樹脂」と記載することがある。イソシアネート架橋剤による架橋前樹脂の架橋物(即ち、イソシアネート架橋剤と架橋前樹脂との架橋反応生成物)が、架橋樹脂である。従って、架橋樹脂は、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を有する。イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造は、アミド結合を含む。このアミド(-NH-CO-)結合は、イソシアネート架橋剤が有するNCO基に由来する。
【0024】
既に述べたように、架橋樹脂の架橋率は、50%以上80%以下である。ノズル詰まりの発生を抑制し且つ保存安定性に優れたインクを得るために、架橋樹脂の架橋率は、55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0025】
本明細書において、架橋率とは、架橋樹脂において、イソシアネート架橋剤が有するNCO基と反応可能な官能基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の総モル数に対する、架橋構造を有する繰り返し単位のモル数の百分率を意味する。架橋率は、実施例に記載の方法によって算出することができる。
【0026】
本実施形態のインクにおいて、架橋樹脂の含有割合としては、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上5質量%以下がより好ましい。顔料粒子における架橋樹脂の含有割合としては、10質量%以上50質量%以下が好ましく、20質量%以上40質量%以下がより好ましい。顔料粒子における架橋樹脂の含有割合が10質量%以上であると、水性媒体に顔料粒子が十分に分散する。また、インクにより画像が形成された記録媒体に裏抜けが生じ難い。顔料粒子における架橋樹脂の含有割合が50質量%以下であると、所望の画像濃度を有する画像が得られ易い。次に、架橋前樹脂、及びイソシアネート架橋剤について、詳細に説明する。
【0027】
(架橋前樹脂)
イソシアネート架橋剤が有するNCO基と反応可能な官能基としては、例えば、カルボキシ基、アミノ基、及びヒドロキシ基が挙げられる。架橋前樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、5000以上100000以下が好ましく、15000以上30000以下がより好ましい。架橋前樹脂は、ランダム重合体でもよく、ブロック重合体でもよい。架橋前樹脂は、ランダム重合体であることが好ましい。なお、イソシアネート架橋剤がNCO基を有しているため、架橋前樹脂は、NCO基を有していなくてもよい。水性媒体と反応し易いNCO基を架橋前樹脂が有していないことで、水性媒体における架橋樹脂を含む顔料粒子の分散性を容易に制御できる。
【0028】
上述のNCO基と反応可能な官能基として例示したもののうち、カルボキシ基が好ましい。即ち、架橋前樹脂は、カルボキシ基を有する樹脂(以下、カルボキシ基含有樹脂と記載することがある)であることが好ましい。以下、カルボキシ基含有樹脂について説明する。
【0029】
(カルボキシ基含有樹脂)
カルボキシ基含有樹脂が有するカルボキシ基は、例えば、下記反応式で示すように、イソシアネート架橋剤のNCO基と架橋反応する。
【0030】
【化1】
【0031】
式(1)は、カルボキシ基含有樹脂が有するカルボキシ基を表す。式(1)中の*1は、結合手を表す。*1が表す結合手は、例えば、カルボキシ基含有樹脂の主鎖を構成する炭素原子に結合する。式(2)は、イソシアネート架橋剤が有するNCO基を表す。式(2)中の*2は、結合手を表す。*2が表す結合手は、例えば、イソシアネート架橋剤を構成する原子(例えば、炭素原子)に結合する。
【0032】
式(1)で表されるカルボキシ基と、式(2)で表されるNCO基とが、架橋反応することで、式(1A)で表される結合構造が形成される。式(1A)中の*1及び*2は、各々、式(1)中の*1及び式(2)中の*2と同義である。式(1A)中の破線X1で囲まれた構造が、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造である。従って、式(1A)で表される結合構造は、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を含んでいる。
【0033】
カルボキシ基含有樹脂の酸価としては、50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が好ましく、75mgKOH/g以上120mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以上120mgKOH/g以下が更に好ましい。カルボキシ基含有樹脂の酸価を50mgKOH/g以上とすることで、イソシアネート架橋剤によって十分に架橋することができる。カルボキシ基含有樹脂の酸価を200mgKOH/g以下とすることで、架橋率が所望の範囲内の値に調整され易くなり、ノズル詰まりの発生を抑制できる。
【0034】
カルボキシ基含有樹脂は、例えば、カルボキシ基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を有する。カルボキシ基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸誘導体、及び不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0035】
カルボキシ基含有樹脂としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、及びビニルナフタレン-マレイン酸共重合体が挙げられる。
【0036】
水性媒体に顔料粒子を好適に分散させるために、架橋前樹脂であるカルボキシ基含有樹脂としては、スチレン-(メタ)アクリル樹脂が好ましい。即ち、架橋樹脂としては、イソシアネート架橋剤によるスチレン-(メタ)アクリル樹脂の架橋物が好ましい。以下、スチレン-(メタ)アクリル樹脂について説明する。
【0037】
(スチレン-(メタ)アクリル樹脂)
スチレン-(メタ)アクリル樹脂は、繰り返し単位として、スチレンに由来する繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位とを少なくとも有する。スチレン-(メタ)アクリル樹脂は、繰り返し単位として、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を更に有することが好ましい。
【0038】
スチレンに由来する繰り返し単位は、式(3)で表される。
【0039】
【化2】
【0040】
スチレン-(メタ)アクリル樹脂において、全繰り返し単位に対する、スチレンに由来する繰り返し単位の含有割合としては、10.0質量%以上80.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上40.0質量%以下がより好ましい。スチレン-(メタ)アクリル樹脂において、全繰り返し単位に対する、スチレンに由来する繰り返し単位の含有割合としては、10.0質量%、13.9質量%、23.5質量%、35.0質量%、35.5質量%、35.9質量%、37.4質量%、及び40.0質量%からなる群から選択される2つの値の範囲内であることも好ましい。スチレンに由来する繰り返し単位中のベンゼン環は、架橋樹脂の親油性部位となる。スチレンに由来する繰り返し単位の含有割合を10.0質量%以上80.0質量%以下とすることで、架橋樹脂に親油性部位を適度に導入できる。親油性部位が顔料に吸着することで、架橋樹脂を含む顔料粒子が、水性媒体に好適に分散する。
【0041】
(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位は、式(4)で表される。式(4)中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位は、メタクリル酸に由来する繰り返し単位であること、即ち、式(4)中のR1がメチル基を表すことが好ましい。
【0042】
【化3】
【0043】
式(4)で表される繰り返し単位のカルボキシ基と、イソシアネート架橋剤が有する式(2)で表されるNCO基とが、架橋反応することで、式(4A)で表される繰り返し単位が形成される。式(4A)中のR1及び*2は、各々、式(4)中のR1及び式(2)中の*2と同義である。式(4A)中の破線X4で囲まれた構造が、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造である。従って、式(4A)で表される繰り返し単位は、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を有している。
【0044】
【化4】
【0045】
スチレン-(メタ)アクリル樹脂において、全繰り返し単位に対する、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合としては、5.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上19.0質量%以下がより好ましく、15.0質量%以上19.0質量%以下が更に好ましい。スチレン-(メタ)アクリル樹脂において、全繰り返し単位に対する、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合としては、10.0質量%、15.0質量%、15.4質量%、18.4質量%、及び19.0質量%からなる群から選択される2つの値の範囲内であることも好ましい。(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合を5.0質量%以上30.0質量%以下とすることで、スチレン-(メタ)アクリル樹脂に適度な酸価を付与できると共に、架橋樹脂に架橋構造を適度に導入できる。また、架橋後の架橋樹脂における、全繰り返し単位に対する、式(4)で表される繰り返し単位及び式(4A)で表される繰り返し単位の合計含有割合は、上述のスチレン-(メタ)アクリル樹脂における、全繰り返し単位に対する、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合と同様の値であることが好ましい。また、架橋後の架橋樹脂における、式(4)で表される繰り返し単位及び式(4A)で表される繰り返し単位の合計に対する、式(4A)で表される繰り返し単位の含有率は、上述の架橋率と同様の値であることが好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルに由来する繰り返し単位、(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する繰り返し単位、及びポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位が挙げられる。スチレン-(メタ)アクリル樹脂において、全繰り返し単位に対する、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の含有割合としては、45.0質量%以上75.0質量%以下が好ましい。
【0047】
(メタ)アクリル酸アルキルに由来する繰り返し単位は、例えば、式(5)で表される。式(5)中、R2は、水素原子又はメチル基を表す。R3は、アルキル基を表す。
【0048】
【化5】
【0049】
式(5)中、R3が表すアルキル基は、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。R3が表すアルキル基は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基、炭素原子数4のアルキル基、又は炭素原子数8のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、n-ブチル基、又は2-エチルヘキシルであることが更に好ましい。
【0050】
(メタ)アクリル酸アルキルに由来する繰り返し単位は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位であること、即ち、R2がメチル基を表し、R3がメチル基を表すことが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルに由来する繰り返し単位は、アクリル酸メチルに由来する繰り返し単位であること、即ち、R2が水素原子を表し、R3がメチル基を表すことも好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルに由来する繰り返し単位は、アクリル酸n-ブチルに由来する繰り返し単位であること、即ち、R2が水素原子を表し、R3がn-ブチル基を表すことも好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルに由来する繰り返し単位は、メタクリル酸2-エチルヘキシルに由来する繰り返し単位であること、即ち、R2がメチル基を表し、R3が2-エチルヘキシル基を表すことも好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する繰り返し単位は、例えば、式(6)で表される。式(6)中、R4は、水素原子又はメチル基を表す。(メタ)アクリル酸ベンジルに由来する繰り返し単位は、メタクリル酸ベンジルに由来する繰り返し単位であること、即ち、R4がメチル基を表すことが好ましい。
【0052】
【化6】
【0053】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位は、例えば、式(7)で表される。式(7)中、R5は、水素原子又はメチル基を表す。R6は、水素原子又はメチル基を表す。R7は、水素原子又はアルキル基を表す。mは、2以上20以下の整数を表す。
【0054】
【化7】
【0055】
式(7)中、R5は、水素原子を表すことが好ましい。R6は、水素原子を表すことが好ましい。R7が表すアルキル基は、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。R7が表すアルキル基は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。mは、5以上15以下の整数を表すことが好ましく、8以上10以下の整数を表すことがより好ましく、9を表すことが更に好ましい。ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位は、メトキシ-ポリエチレングリコールアクリレートに由来する繰り返し単位であること、即ち、R5が水素原子を表し、R6が水素原子を表し、R7がメチル基を表すことが好ましい。
【0056】
スチレン-(メタ)アクリル樹脂は、以下の組み合わせ(I)、(II)又は(III)に示すモノマー由来の繰り返し単位を有することが好ましく、繰り返し単位として組み合わせ(I)、(II)又は(III)に示すモノマー由来の繰り返し単位のみを有することがより好ましい。
組み合わせ(I):スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、及び(メタ)アクリル酸n-ブチル
組み合わせ(II):スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、及びメトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート
組み合わせ(III):スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸メチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル
【0057】
スチレン-(メタ)アクリル樹脂は、以下の組み合わせ(Ia)、(IIa)又は(IIIa)に示すモノマー由来の繰り返し単位を有することが好ましく、繰り返し単位として組み合わせ(Ia)、(IIa)又は(IIIa)に示すモノマー由来の繰り返し単位のみを有することがより好ましい。
組み合わせ(Ia):スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸n-ブチル
組み合わせ(IIa):スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、及びメトキシ-ポリエチレングリコールアクリレート
組み合わせ(IIIa):スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸メチル、及びメタクリル酸2-エチルヘキシル
【0058】
(イソシアネート架橋剤)
イソシアネート架橋剤は、分子中に少なくとも2つのNCO基を有する架橋剤である。イソシアネート架橋剤は、例えば、顔料に付着(例えば、吸着)した架橋前樹脂を架橋する。
【0059】
イソシアネート架橋剤の質量に対するNCO基の含有率は、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0060】
イソシアネート架橋剤としては、例えば、ジイソシアネート架橋剤、及び高分子型イソシアネート架橋剤が挙げられる。
【0061】
ジイソシアネート架橋剤としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、炭素原子数1以上10以下のアルキレンジイソシアネートが挙げられ、より具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、及び4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアン酸イソホロンが挙げられる。
【0062】
架橋構造に適度な柔軟性を付与して架橋反応を促進させるために、ジイソシアネート架橋剤としては、脂肪族ジイソシアネートが好ましく、炭素原子数1以上10以下のアルキレンジイソシアネートがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートが更に好ましい。
【0063】
イソシアネート架橋剤が、脂肪族ジイソシアネートであり、架橋前樹脂が、カルボキシ基含有樹脂である場合、例えば、下記反応式で示すように、架橋反応が進行する。
【0064】
【化8】
【0065】
式(8)中のR8は、アルカンジイル基を表す。式(1)については、既に述べた。式(8A)中の*1及びR8は、各々、式(1)中の*1及び式(8)中のR8と同義である。式(8)で表される脂肪族ジイソシアネートは、2つのNCO基を有する。2つのNCO基のうちの一方が、カルボキシ基含有樹脂が有する複数個のカルボキシ基のうちの1つ(式(1)で表されるカルボキシ基)と架橋反応する。また、2つのNCO基のうちの他方が、カルボキシ基含有樹脂が有する複数個のカルボキシ基のうちの別の1つ(式(1)で表されるカルボキシ基)と架橋反応する。その結果、式(8A)で表される結合構造が形成される。式(8A)中の破線X8で囲まれた構造が、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造である。従って、式(8A)で表される結合構造は、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を含んでいる。
【0066】
式(8)及び式(8A)中のR8が表すアルカンジイル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。R8が表すアルカンジイル基としては、炭素原子数1以上10以下のアルカンジイル基が好ましく、炭素原子数5以上7以下のアルカンジイル基がより好ましく、炭素原子数6のアルカンジイル基が更に好ましい。R8が炭素原子数6のアルカンジイル基を表す場合、式(8)で表される脂肪族ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートとなる。
【0067】
ジイソシアネート架橋剤は、非ブロック型であってもよい。但し、水性媒体との反応性が低く、水性媒体中で架橋前樹脂との架橋反応が好適に進行することから、ジイソシアネート架橋剤は、ブロック型であることが好ましい。ブロック型のジイソシアネート架橋剤は、2つのNCO基の各々がブロック剤により保護された架橋剤である。NCO基がブロック剤により保護されているため、未加熱時には、ブロック型のジイソシアネート架橋剤は、架橋前樹脂と反応しない。加熱により、NCO基からブロック剤が脱離して、NCO基が現れる。そして、ブロック剤が脱離したジイソシアネート架橋剤が、架橋前樹脂と反応する。ブロック型のジイソシアネート架橋剤としては、例えば、三井化学株式会社製「タケネート(登録商標)XWB-F206」及び「タケネート(登録商標)WB-3936」、並びに、旭化成株式会社製「デュラネートMWM44-L70G」が挙げられる。
【0068】
高分子型イソシアネート架橋剤は、複数個のNCO基を有する親水性高分子である。高分子型イソシアネート架橋剤は、分子内のNCO基が互いに分子内結合を形成し、水性媒体中で自己乳化する。このため、高分子型イソシアネート架橋剤のNCO基は、水性媒体と反応し難い。高分子型イソシアネート架橋剤としては、例えば、三井化学株式会社製「タケネート(登録商標)WD-725」及び「タケネート(登録商標)WD-730」、旭化成株式会社製「デュラネートWL70-100」、並びに、東ソー株式会社製「アクアネート105」が挙げられる。
【0069】
[上澄み固形分割合]
上澄み固形分割合は、上澄み液の質量に対する、上澄み液に含まれる固形分の質量の百分率に相当する。既に述べたように、本実施形態のインクの上澄み固形分割合は、2.0質量%以下である。ノズル詰まりの発生を抑制するために、上澄み固形分割合としては、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。上澄み固形分割合の下限は特に限定されないが、例えば、0.0質量%以上である。上澄み固形分割合は、実施例に記載の方法又はこれに準拠した方法により測定できる。
【0070】
[水性媒体]
本実施形態のインクが含有する水性媒体は、水を含む媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水及び水溶性有機溶媒を含む水性媒体が挙げられる。
【0071】
(水)
インクの粘度を好適化する観点から、本実施形態のインクにおいて、水の含有割合としては、20質量%以上80質量%以下が好ましく、40質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0072】
水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、トリオール化合物、グリコールエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、γ-ブチロラクトン、チオジグリコール、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0073】
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-へキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、及び2-エチル-1,2-ヘキサンジオールが挙げられる。グリコール化合物としては、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、又は3-メチル-1,5-ペンタンジオールが好ましい。
【0074】
トリオール化合物としては、例えば、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、及び1,2,6-ヘキサントリオールが挙げられる。トリオール化合物としては、グリセリンが好ましい。
【0075】
グリコールエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。グリコールエーテル化合物としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0076】
ラクタム化合物としては、例えば、2-ピロリドン、及びN-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0077】
含窒素化合物としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0078】
アセテート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0079】
水溶性有機溶媒としては、グリコール化合物、トリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種(例えば、1種以上3種以下)が好ましい。水溶性有機溶媒としては、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、グリセリン、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種(例えば、1種以上3種以下)がより好ましい。水溶性有機溶媒としては、以下の組み合わせで混合された混合溶媒が更に好ましい。
【0080】
組み合わせ(i):3-メチル-1,5-ペンタンジオール、グリセリン、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル
組み合わせ(ii):1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、及びグリセリン
【0081】
本実施形態のインクにおける水溶性有機溶媒の含有割合としては、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0082】
[界面活性剤]
本実施形態のインクは、界面活性剤を更に含有することが好ましい。界面活性剤は、記録媒体に対する本実施形態のインクの浸透性(濡れ性)を最適化できる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0083】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートエーテル、モノデカノイルショ糖、アクリルポリマー、並びに、アセチレングリコール及びそのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、アクリルポリマー、アセチレングリコール、又はアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が好ましい。アクリルポリマー等のアクリル界面活性剤としては、例えば、共栄社化学株式会社「ポリフロー(登録商標)KL-850」が挙げられる。アセチレングリコール及びアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物等のアセチレン界面活性剤としては、例えば、日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」、「サーフィノール(登録商標)104」、「サーフィノール(登録商標)420」、及び「サーフィノール(登録商標)440」が挙げられる。
【0084】
本実施形態のインクにおける界面活性剤の含有割合としては、0.05質量%以上2質量%以下が好ましい。
【0085】
[その他の成分]
本実施形態のインクは、必要に応じて、公知の添加剤(例えば、溶解安定剤、保湿剤、浸透剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
【0086】
[インクの製造方法]
次に、本実施形態のインクを製造する方法の一例について説明する。本実施形態のインクの製造方法は、例えば、分散処理工程と、架橋工程と、混合工程とを備える。
【0087】
(分散処理工程)
分散処理工程では、顔料及び架橋前樹脂を水性媒体に分散処理することで顔料粒子分散液を調製する。分散処理に用いる分散装置としては、例えば、メディア型分散機等の湿式分散装置が挙げられる。例えば、メディア型分散機で用いるメディアの粒子径(例えば、ビーズの径)を変えることで、顔料粒子の分散度合、顔料分散液に遊離する樹脂の量、及び顔料粒子の粒子径を調整できる。例えば、メディアの粒子径を小さくするほど、顔料粒子の粒子径が小さくなる傾向がある。
【0088】
本工程に用いる架橋前樹脂は、予め塩基性化合物(例えば、KOH又はNaON)で中和処理しておくことが好ましい。この場合、架橋前樹脂を完全に中和せず、部分的に中和することが好ましい。具体的には、架橋前樹脂の中和率としては、30%以上70%以下が好ましく、40%以上60%以下がより好ましい。なお、中和率とは、架橋前樹脂を完全に中和するために必要な塩基性化合物の量の理論値をMA、本工程での塩基性化合物の実際の使用量をMBとしたときに、理論値MAに対する使用量MBの百分率(100×MB/MA)を示す。分散処理に供する水性媒体には、消泡剤を更に含有することが好ましい。顔料粒子分散液における消泡剤の含有割合は、例えば、0.01質量%以上0.1質量%以下である。本工程では、得られた顔料粒子分散液に対して、フィルター(例えば、孔径5μm)によるろ過で粗大粒子を除去することが好ましい。
【0089】
(架橋工程)
架橋工程では、顔料粒子分散液にイソシアネート架橋剤を添加する。これにより、顔料粒子分散液に含まれる架橋前樹脂と、イソシアネート架橋剤とが架橋反応し、架橋樹脂が生じる。本工程では、イソシアネート架橋剤の添加後、顔料粒子分散液を攪拌しながら加熱することが好ましい。加熱温度は、例えば、70℃以上95℃以下である。加熱時間は、例えば、30分以上2時間以下である。
【0090】
(混合工程)
混合工程では、架橋工程後の顔料粒子分散液と水溶性有機溶媒とを混合する。これにより、インクを得る。なお、本工程では、必要に応じて他の成分(より具体的には、界面活性剤、溶解安定剤、保湿剤、浸透剤、及び粘度調整剤からなる群から選択される少なくとも1つ)を更に添加してもよい。本工程では、水溶性有機溶媒の添加後、得られた混合液を攪拌機で攪拌することが好ましい。得られたインクは、フィルター(例えば孔径5μm以下のフィルター)により異物及び粗大粒子を除去してもよい。
【実施例0091】
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0092】
<樹脂の調製>
[樹脂(R-A)の調製]
スターラー、窒素導入管、コンデンサー、及び滴下漏斗を備える四つ口フラスコに、100.0gのイソプロピルアルコールと、250.0gのメチルエチルケトンとを投入した。別途、37.3gのメタクリル酸メチルと、37.3gのスチレンと、9.7gのアクリル酸n-ブチルと、15.3gのメタクリル酸と、0.3gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤)とを混合し、モノマー溶液を調製した。また、別途、150.0gのメチルエチルケトンと、0.1gのAIBNとを混合し、メチルエチルケトン溶液を調製した。
【0093】
次に、上述のフラスコ内に窒素ガスを導入することで窒素雰囲気とした。次に、フラスコ内容物を70℃で加熱還流しながら、滴下漏斗を用い、上述のモノマー溶液の全量を、2時間かけてフラスコ内へ供給した。モノマー溶液を供給した後、更に6時間にわたってフラスコ内容物を70℃で加熱還流を行った。次に、フラスコ内容物を70℃で加熱還流しながら、滴下漏斗を用い、上述のメチルエチルケトン溶液の全量を、15分かけてフラスコ内へ供給した。メチルエチルケトン溶液を供給した後、更に5時間にわたってフラスコ内容物を70℃で加熱還流を行った。これにより、スチレン-(メタ)アクリル樹脂である樹脂(R-A)を含有する樹脂溶液を得た。樹脂溶液からメチルエチルケトン及びイソプロピルアルコールを減圧留去することにより、樹脂(R-A)を単離した。
【0094】
[樹脂(R-B)~(R-E)の調製]
モノマー溶液の調製において、表1に示すモノマーを表1に示す量で使用した以外は、樹脂(R-A)の調製と同様の方法により、樹脂(R-B)~(R-E)を調製した。
【0095】
表1で用いられている略語を説明する。
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸n-ブチル
130A:メトキシ-ポリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学株式会社製「ライトアクリレート130A」を使用)
BzlMA:メタクリル酸ベンジル
MA:アクリル酸メチル
EHMA:メタクリル酸2-エチルヘキシル
【0096】
【表1】
【0097】
[酸価の測定]
JIS(日本産業規格)K0070:1992(化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法)に記載の方法に準拠し、樹脂(R-A)~(R-E)の酸価を測定した。測定結果を後述する表3及び表4に示す。
【0098】
<インクの調製>
以下の方法により、実施例に係るインク(A-1)~(A-8)、及び比較例に係るインク(B-1)~(B-5)を調製した。これらのインクの詳細を、後述する表3及び表4に示す。
【0099】
[インク(A-1)の調製]
(中和処理)
樹脂(R-A)30gと、水酸化カリウムと、水とを混合し、樹脂濃度30質量%の樹脂水溶液を調製した。水酸化カリウムの添加量は、樹脂(R-A)の中和当量の50質量%に相当する量とした。即ち、樹脂(R-A)の中和率が50%であった。水の添加量は、樹脂(R-A)、水酸化カリウム及び水の合計が100gとなる量とした。
【0100】
(分散処理)
顔料(オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社「Printex(登録商標)80」、カーボンブラック)15.0gと、上述の中和処理で得られた樹脂水溶液15.0g(4.5gの樹脂を含有)と、消泡剤(サンノプコ株式会社製「SNデフォーマー1340」、アマイドワックス界面活性剤)0.1gと、イオン交換水とを混合し、混合物を得た。イオン交換水の添加量は、混合物が100.0gとなる量とした。
【0101】
メディア型分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン社(WAB社)製「ダイノ(登録商標)ミル」)を用いて、上述の混合物に対して4時間の分散処理を行った。分散処理においては、メディアとして、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いた。メディアの充填率は、ベッセルの容量に対して60体積%とした。分散処理の処理速度は、8m/秒に設定した。分散処理における処理温度(チラー温度)は、10℃に設定した。分散処理後、メディア型分散機のベッセルの内容物からメディアを除去することにより、顔料粒子分散液を得た。次に、顔料粒子分散液を孔径5μmのフィルターでろ過することにより、異物及び粗大粒子を除去した。
【0102】
(架橋処理)
温度計及び攪拌羽根を備える3つ口フラスコを反応容器として用いた。ろ過後の顔料粒子分散液100.0gを反応容器内に投入した。ウォーターバスを用い、反応容器の内容物の温度を30℃に維持した。次に、反応容器に、架橋剤(旭化成株式会社製「デュラネートWM44-L70G」)4.5g(イソシアネート架橋剤3.15gを含有)を投入した。次に、反応容器の内容物を150rpmで1時間攪拌した。次に、反応容器の内容物を250rpmで攪拌しながら、昇温速度0.5℃/分で80℃まで反応容器の内容物を昇温させた。次に、反応容器の内容物の温度を80℃に維持しつつ、反応容器の内容物を250rpmで1時間攪拌した。これにより、反応容器の内容物を反応させた。反応により、樹脂(R-A)は架橋剤(WM44-L70G)で架橋され、架橋樹脂を形成した。次に、反応容器の内容物の温度が室温になるまで放冷した。これにより、架橋処理後の顔料粒子分散液を得た。
【0103】
(混合処理)
後述する表5に示す処方aに従って、架橋処理後の顔料粒子分散液50.0質量部と、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)420」、アセチレングリコール界面活性剤、有効成分濃度:100質量%、HLB値:4)0.5質量部と、グリセリン2.0質量部と、3-メチル-1,5-ペンタンジオール6.0質量部と、トリエチレングリコールモノブチルエーテル3.0質量部と、残量のイオン交換水とを容器に投入した。攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL-600」)を用いて、容器の内容物を攪拌し、混合液を得た。なお、イオン交換水の添加量である残量は、得られる混合液が100.0質量部となる量を意味する。得られた混合液を、フィルター(孔径:5μm)を用いて濾過した。これにより、インク(A-1)を得た。
【0104】
[インク(A-2)~(A-8)及び(B-1)~(B-5)の調製]
中和処理で使用する樹脂の種類と、架橋処理で使用する架橋剤の種類及び量と、混合処理における処方とを、後述する表3及び表4に示す通りに設定したこと以外は、インク(A-1)の調製と同様の方法により、インク(A-2)~(A-8)及び(B-1)~(B-5)を調製した。
【0105】
<上澄み固形分割合の測定>
以下の方法により、インク(A-1)~(A-8)及び(B-1)~(B-5)の各々を遠心分離した。そして、得られた各上澄み液について、上澄み固形分割合を測定した。
【0106】
まず、1.2gの測定対象(インク(A-1)~(A-8)及び(B-1)~(B-5)の何れか)に対して、超遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製「himac(登録商標)CS150FNX」、ローター:S140AT)を用いて、回転数140,000rpm(遠心力1,050,000Gに相当)で3時間遠心処理した。これにより測定対象に含まれる顔料粒子を沈殿させた。
【0107】
次に、遠心処理後の測定対象に含まれる上澄み液30μLを熱質量測定用アルミ容器に移した。次に、上澄み液30μLの質量(A)を測定した。次に、熱質量分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製「TG/DTA7200」)を用いて、下記表2に示すスキームに沿って熱質量分析を行った。そして、温度200℃~500℃の間(表2のNo.3で示すスキームの間)での測定対象の減質量(B)を測定した。減質量(B)を、上澄み液中の固形分(主に遊離樹脂)の質量と見做した。上澄み固形分割合は、下記式に沿って算出した。測定結果を後述する表3及び表4に示す。
上澄み固形分割合[質量%]=100×B/A
【0108】
【表2】
【0109】
<架橋率>
以下の方法により、インク(A-1)~(A-8)及び(B-1)~(B-5)の各々に含まれる樹脂の架橋率を計算した。まず、各インクの調製時の架橋処理において、使用した架橋剤に含まれる架橋官能基(NCО基又はエポキシ基)のモル当量数をX、使用した架橋処理前の樹脂に含まれるカルボキシ基のモル当量数をYとした。そして、下記式に沿って各インクに含まれる樹脂の架橋率を計算した。計算結果を後述する表3及び表4に示す。
架橋率[%]=100×X/Y
【0110】
なお、架橋官能基(NCО基)のモル当量数Xは、計算式「X=[架橋剤の質量×(架橋剤の質量に対するNCO基の含有率/100)]/NCO基の式量」から計算した。この計算式において、架橋剤の質量の単位はgであり、架橋剤の質量に対するNCO基の含有率の単位は質量%であった。後述する架橋剤含有溶液を使用する場合は、架橋剤の質量、及び架橋剤の質量に対するNCO基の含有率を、各々、架橋剤含有溶液の質量、及び架橋剤含有溶液の質量に対するNCO基の含有率に読み替えた。
【0111】
架橋官能基(エポキシ基)のモル当量数Xは、計算式「X=架橋剤の質量/エポキシ等量」から計算した。架橋剤の質量の単位はgであり、エポキシ等量の単位はg/eqであった。
【0112】
使用した樹脂に含まれるカルボキシ基のモル当量数Yは、計算式「Y=[(樹脂の質量×樹脂の酸価)/1000]/KOHの式量」から計算した。計算式において、樹脂の質量の単位はgであり、樹脂の酸価の単位はmgKOH/gであった。
【0113】
<評価>
インク(A-1)~(A-8)及び(B-1)~(B-5)の各々について、以下の方法により、ノズル詰まり及び保存安定性を評価した。なお、評価は、特に断りのない限り、温度28℃、湿度30%RHの環境下において行った。評価結果を後述する表3及び表4に示す。
【0114】
[ノズル詰まり]
ノズル詰まりの評価においては、評価機として、インクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製試験機)を用いた。評価機には、記録ヘッド(京セラ株式会社製のラインヘッド「KJ4B-QA」)が搭載されていた。評価対象となるインクを、評価機のブラック用記録ヘッドに充填した。1画素あたりのインクの吐出量が10.5pLになるように設定した。
【0115】
評価機を用いて、マット紙(セイコーエプソン株式会社製「スーパーファイン紙」)100枚に対して連続してソリッド画像(150mm×200mm)を形成した。次に、評価機の記録ヘッドからインクをパージするパージ処理を行った。次に、評価機の記録ヘッドにおけるインク吐出面をクリーニングワイパーでワイプするワイプ処理を行った。次に、評価機を用いて、上述のマット紙に対してノズルチェックパターンの形成を行った。その結果、何れの評価対象においても、全てのノズル(7968本)からインクが吐出されていることが確認された。即ち、ノズル詰まりが発生したノズルの本数は0本であった。次に、評価機の記録ヘッドについて、パージ処理及びワイプ処理を行った。次に、評価機の記録ヘッドにキャップを付けない状態で、評価機を7日間静置した。次に、評価機の記録ヘッドについて、上述のパージ処理及びワイプ処理を行った。次に、評価機を用いて、上述のマット紙に対してノズルチェックパターンの形成を行った。そして、形成されたノズルチェックパターンを観察し、ノズル詰まりが発生したノズルの本数を確認した。評価機の記録ヘッドの全ノズル本数に対するノズル詰まりが発生したノズルの本数の割合を、ノズル詰まりの評価値とした。ノズル詰まりは、下記基準に沿って判定した。
【0116】
(ノズル詰まりの基準)
A(良好):評価値が10%未満である。
B(不良):評価値が10%以上である。
【0117】
[保存安定性]
評価対象となるインクを、透過率測定用セル(測定光の透過方向のインクの厚さ:1mm)に入れた。透過率測定用セルを分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「U-3000」)にセットし、インクの透過スペクトルを測定した。得られた透過スペクトルから、波長610nmにおけるインクの透過率(初期透過率)を求めた。次いで、50mLのポリエチレン製容器に30gのインクを入れて密封し、設定温度が60℃である恒温槽内で1週間保存した。保存後、初期透過率の測定方法と同様の方法により、波長610nmにおけるインクの透過率(保存後透過率)を求めた。下記式に沿って保存の前後での透過率の変化率を算出した。透過率の変化率の絶対値を、保存安定性の評価値とした。保存安定性は、以下の基準に沿って判定した。
透過率の変化率[%]=100×(初期透過率-保存後透過率)/初期透過率
【0118】
(保存安定性の基準)
A(良好):評価値が5%未満である。
B(不良):評価値が5%以上である。
【0119】
なお、下記表3及び表4で使用される用語は、以下を意味する。また、表3及び表4の混合処理欄に記載の処方a及び処方bを、表5に示す。
【0120】
WM44:イソシアネート架橋剤含有溶液(旭化成株式会社製「デュラネートWM44-L70G」、架橋剤の内容:ブロック型のヘキサメチレンジイソシアネート、固形分濃度:70質量%、架橋剤含有溶液の質量に対するNCO基の含有率:5.3質量%、溶媒:ジプロピレングリコールジメチルエーテル)
WL70:イソシアネート架橋剤(旭化成株式会社製「デュラネートWL70-100」、架橋剤の内容:ヘキサメチレンジイソシアネート構造を含む親水性高分子化合物、固形分濃度:100質量%、架橋剤の質量に対するNCO基の含有率:15.5質量%)
WB:イソシアネート架橋剤含有溶液(三井化学株式会社製「タケネート(登録商標)WB-3936」、架橋剤の内容:ブロック型のキシレンジイソシアネート、固形分濃度:40質量%、架橋剤含有溶液の質量に対するNCO基の含有率:5.3質量%)
エポキシ:エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-810」、架橋剤の内容:エチレングリコールジグリシジルエーテル、固形分濃度:100質量%、エポキシ当量:113g/eq)
NCO率:架橋剤の質量(架橋剤含有用液の場合は、架橋剤含有溶液の質量)に対するNCO基の含有率(単位:質量%)
架橋処理欄に示す量:固形分濃度が100質量%でない場合は、架橋剤含有溶液の量(単位:質量部)を示す。固形分濃度が100質量%である場合は、架橋剤の量(単位:質量部)を示す。
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【0124】
表4に示す通り、インク(B-1)及び(B-4)の上澄み固形分割合は、2.0質量%超であった。インク(B-1)及び(B-4)は、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
【0125】
表4に示す通り、インク(B-2)に含有される架橋樹脂の架橋率は、80%超であった。インク(B-2)の保存安定性は、不良であった。
【0126】
表4に示す通り、インク(B-3)に含有される架橋樹脂の架橋率は、50%未満であった。インク(B-3)は、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
【0127】
表4に示す通り、インク(B-5)に含有される架橋樹脂は、エポキシ架橋剤に由来する架橋構造を有し、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を有していなかった。インク(B-5)は、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
【0128】
一方、表3に示す通り、インク(A-1)~(A-8)は、水性媒体と、水性媒体に分散する顔料粒子とを含有していた。顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含んでいた。架橋樹脂は、イソシアネート架橋剤に由来する架橋構造を有していた。架橋樹脂の架橋率は、50%以上80%以下であった。上澄み固形分割合は、2.0質量%以下であった。インク(A-1)~(A-8)は、ノズル詰まりの発生を抑制できた。また、インク(A-1)~(A-8)の保存安定性は、良好であった。以上のことから、インク(A-1)~(A-8)を包含する本発明に係るインクは、ノズル詰まりの発生を抑制でき、且つ保存安定性に優れると判断される。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のインクは、画像を形成するために用いることができる。