(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130661
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】配管支持具
(51)【国際特許分類】
F16L 3/133 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
F16L3/133
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035081
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】392018078
【氏名又は名称】日栄インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】米田 守
(72)【発明者】
【氏名】大野 杏介
【テーマコード(参考)】
3H023
【Fターム(参考)】
3H023AA03
3H023AC09
3H023AD26
(57)【要約】
【課題】 配管の支持部への差込みが容易で施工性が良好な配管支持具を提供する。
【解決手段】 配管支持具10は、構造物に取り付けられ、下方に延在する締着片22,23を有するタンバックル20と、帯状の鋼板の中間部が環状に湾曲してなり、VP管90の周面90aを支持する支持部30、及び、鋼板の両端部がその環状の外側に向けて屈曲してなり、締着片22,23の外側に取り付けられる吊部31,32を有する支持金具30と、締着片22,23の内側に設けられるスペーサー40と、締着片22,23、吊部31,32及びスペーサー40を挿通するボルト50と、ボルト50とともに締着片22,23及び吊部31,32を締結するナット60とを備え、タンバックル20、支持金具30及びスペーサー40は、締結時に変形し、支持部33と吊部31,32との間に形成される屈曲部34,35の間隔は、支持金具30の変形前に9mm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に取り付けられる基部、及び、前記基部から下方に延在する一対の対向片を有する金属製のタンバックルと、
帯状の金属板の中間部が環状に湾曲してなり、配管の周面を支持する支持部、及び、前記金属板の両端部が前記環状の外側に向けて屈曲してなり、前記一対の対向片の外側に取り付けられる一対の取付部を有する支持金具と、
前記一対の対向片の内側に設けられる弾性変形可能なスペーサーと、
前記一対の対向片、前記一対の取付部及び前記スペーサーのそれぞれに形成された挿通孔を挿通するボルトと、
前記ボルトに螺合して前記ボルトとともに前記一対の対向片及び前記一対の取付部を締結するナットとを備え、
前記タンバックル、前記支持金具及び前記スペーサーは、前記ボルト及び前記ナットによる締結時に変形し、前記支持金具の前記支持部と前記一対の取付部との間に形成される一対の屈曲部の間隔は、前記支持金具の変形前に9mm以上であることを特徴とする配管支持具。
【請求項2】
前記スペーサーは、エチレン酢酸ビニル共重合体からなることを特徴とする請求項1に記載の配管支持具。
【請求項3】
前記ボルトには、前記ナットを抜け止めする抜止部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等の構造物に取り付けられて配管を支持する配管支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の構造物(「土木・建築にかかる設計の基本」(国土交通省)に定義されているように、本願では「構造物」を「目的とする機能を持ち、作用に対して抵抗することを意図して人為的に構築されるもの」として用いる。)に取り付けられて配管を支持する配管支持具として、例えば特許文献1に記載の配管支持構造に用いられる配管支持具がある。
【0003】
この配管支持構造は、配管の周面に倣った内周面を有する半割状であってヒンジを介して互いに転回可能に連結された第1保持部及び第2保持部を有する配管支持具(吊下部材)と、配管支持具の第1保持部及び第2保持部に取り付けられる防振ゴムとを備え、防振ゴムを介して第1保持部及び第2保持部で配管を保持して配管を天井から吊り下げて支持するもので、配管支持具を構成するタンバックル(吊下部)の一対の対向片(被取付部)の外側には、第1保持部の取付部片及び第2保持部の取付部片がボルト及びナットにより取り付けられ、一対の対向片の内側には、ボルトが挿通するパッキンが設けられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の配管支持具は、防振ゴムを介して配管を支持するが、配管支持具が、VP管(塩ビ管、硬質ポリ塩化ビニル管)等を環状の支持部(特許文献1では、第1保持部及び第2保持部が支持部を構成する。)で防振ゴムを介することなく直接支持する場合、ボルトからナットを取り外さずに配管を支持部に差し込む工法が主流である。しかし、この際、配管と支持部とが引っ掛かり、配管を差し込みづらく、差込み後に配管を移動させづらく、配管に傷も付くという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、配管の支持部への差込みが容易で施工性が良好な配管支持具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る配管支持具は、構造物に取り付けられる基部、及び、前記基部から下方に延在する一対の対向片を有する金属製のタンバックルと、帯状の金属板の中間部が環状に湾曲してなり、配管の周面を支持する支持部、及び、前記金属板の両端部が前記環状の外側に向けて屈曲してなり、前記一対の対向片の外側に取り付けられる一対の取付部を有する支持金具と、前記一対の対向片の内側に設けられる弾性変形可能なスペーサーと、前記一対の対向片、前記一対の取付部及び前記スペーサーのそれぞれに形成された挿通孔を挿通するボルトと、前記ボルトに螺合して前記ボルトとともに前記一対の対向片及び前記一対の取付部を締結するナットとを備え、前記タンバックル、前記支持金具及び前記スペーサーは、前記ボルト及び前記ナットによる締結時に変形し、前記支持金具の前記支持部と前記一対の取付部との間に形成される一対の屈曲部の間隔は、前記支持金具の変形前に9mm以上であることを特徴とする。
【0008】
前記スペーサーは、エチレン酢酸ビニル共重合体からなることが好ましく、また、前記ボルトには、前記ナットを抜け止めする抜止部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配管の支持部材への差込みが容易になり施工性を良好化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】発明を実施するための形態に係る配管支持具を示す説明図である。
【
図2】(a)は配管支持具の試験装置を示す斜視図、(b)は(a)の試験装置によるは配管支持具の試験方法を示す説明図である。
【
図3】
図2の試験装置による試験結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態に係る配管支持具10は、建築物の設備用のVP管90の吊下げに供するもので、建築物の天井スラブ等に上端が固定された吊ボルト(図示略)に取り付けられるタンバックル20と、タンバックル20に取り付けられる支持金具30と、後述するタンバックル20の一対の締着片22,23の間に設けられるスペーサー40と、タンバックル20、支持金具30及びスペーサー40を締着(締結)するボルト50及びナット60を備える。
【0013】
タンバックル20は、帯状の鋼板をプレス加工してなり、平面視矩形状の基部21と、基部21から下方に延在し、基部21に対して弾性変形可能な一対の締着片22,23とを有する。基部21の中央部には、吊ボルトに螺着する回転ナット24が挿篏される挿篏孔21aが形成されている。回転ナット24の下部には、挿篏孔21aより大径のフランジ部24aが形成され、回転ナット24が吊ボルトに螺着すると、フランジ部24aが基部21の挿篏孔21aの周囲を下方から支持し、基部21が吊ボルトを介して構造物に取り付けられる。
【0014】
締着片22は、基部21の左縁部から基部21と略垂直をなすように下方に延在する第一節間部22aと、第一節間部22aの下縁部から締着片23の側に傾斜して延在する第二節間部22bと、第二節間部22bの下縁部からさらに下方に延在し、後述する支持金具30の吊部31と重なり合う重合部22cとを有する。
【0015】
締着片23は、基部21の右縁部から基部21と略垂直をなすように下方に延在する第一節間部23aと、第一節間部23aの下縁部から締着片22の側に傾斜して延在する第二節間部23bと、第二節間部23bの下縁部からさらに下方に延在し、後述する支持金具30の吊部32と重なり合う重合部23cとを有する。
【0016】
第一節間部22a及び第一節間部23aには、回転ナット24が挿嵌孔21aから抜け落ちないように、回転ナット24の下方で起立する抜止部22d及び抜止部23dが形成されている。また、重合部22c及び重合部23cには、後述するボルト50の軸部51が挿通する円形の挿通孔22e及び挿通孔23eが形成されている。
【0017】
支持金具30は、帯状の鋼板をプレス加工してなり、一対の締着片22,23の重合部22c,23cに重なり合い当接して取り付けられる一対の吊部31,32と、吊部31,32の下方に設けられ、VP管90の周面90aを支持する環状の支持部33とを有する。
【0018】
吊部31及び吊部32は、鋼板の両端部が支持部33の環状の外側に向けて屈曲してなり、それぞれ側面視略矩形の平板状を呈する。吊部31及び吊部32には、ボルト50の軸部51が挿通する円形の挿通孔31a及び挿通孔32aが形成されている。吊部31と吊部32との間隔は、ボルト50及びナット60が締め付けられていない状態で、締着片22,23の弾性力が吊部31,32の内側から作用するときは、その弾性力に応じて保たれる。
【0019】
支持部33は、鋼板の中間部が環状に湾曲してなり、ボルト50及びナット60によるタンバックル20及び支持金具30の締結時には、VP管90の外径と同一又は略同一の径の円環状に変形するように形成されている。ただし、ボルト50及びナット60が締め付けられていない変形前の状態では、支持部33は、吊部31と吊部32との間隔に応じて円環が広がった形状を呈し、支持部33と一対の吊部31,32との間に形成される一対の屈曲部34,35の間隔は9mm以上で、支持部33に差し込まれるVP管90の周面90aとの間に隙間80が確保される。
【0020】
スペーサー40は、円板状ないし円柱状のEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)からなり、その円形の中央には、ボルト50の軸部51が挿通する円形の挿通孔40aが形成されている。スペーサー40は、ボルト50及びナット60によるタンバックル20及び支持金具30の締結前に、締着片22及び締着片23の接近を阻止してVP管90の周面90aと支持部33との間に十分な隙間を形成するように、締着片22,23の対向方向に9mm以上の厚さ(ただし、一対の屈曲部34,35の間隔以下の厚さ)を有する。一方、スペーサー40は、ボルト50及びナット60によるタンバックル20及び支持金具30の締結時には、締着片22及び締着片23に左右から圧迫されて厚みが減少するように変形する。
【0021】
ボルト50は、周囲にネジが形成された軸部51が、吊部31の挿通孔31a、締着片22の挿通孔22e、スペーサー40の挿通孔40a、締着片23の挿通孔23e及び吊部32の挿通孔32aをこの順に挿通し、頭部52が吊部31に当接する。ナット60は、軸部51の挿通孔32aから突出した部分に螺合している。ボルト50の軸部51には、ナット60を抜け止めするようにネジ面が不規則に加工された抜止部(図示略)が設けられている。
【0022】
VP管90は、ボルト50及びナット60が締め付けられていない状態で円環が広がった形状の支持部33に差し込まれ、その後、ボルト50及びナット60を規定のトルクで締め付けることにより、タンバックル20及び支持金具30(締着片22,23及び吊部31,32)が締結され、締結完了時に、スペーサー40は、その存在が一見してわからい程にまで薄くなるように変形する。
【0023】
本実施の形態に係る配管支持具10は、構造物に取り付けられる基部21、及び、基部21から下方に延在する一対の締着片22,23を有する金属製のタンバックル20と、帯状の鋼板の中間部が環状に湾曲してなり、VP管90の周面90aを支持する支持部30、及び、鋼板の両端部がその環状の外側に向けて屈曲してなり、一対の締着片22,23の外側に取り付けられる一対の吊部31,32を有する支持金具30と、一対の締着片22,23の内側に設けられる弾性変形可能なスペーサー40と、締着片22,23、吊部31,32及びスペーサー40に形成された挿通孔22e,23e、挿通孔31a,32a及び挿通孔40aを挿通するボルト50と、ボルト50に螺合してボルト50とともに締着片22,23及び吊部31,32を締結するナット60とを備え、タンバックル20、支持金具30及びスペーサー40は、ボルト50及びナット60による締結時に変形し、支持金具30の支持部33と一対の吊部31,32との間に形成される一対の屈曲部34,35の間隔は、支持金具30の変形前に9mmであるので、VP管90の周面90aと支持部30との間に隙間80が形成され、作業者がVP管90を支持部30に差し込む際に引っ掛かりが生じにくく、その差込みが容易で施工性が良好である。
【0024】
また、たとえ配管支持具10に輸送時等に外力が作用しても、9mm以上の厚さを有するスペーサー40が、一対の締着片22,23が9mm未満の対向間隔となるような接近を阻止し(ひいては、一対の吊部31,32の接近と支持部33の縮径を阻止し)、VP管90の周面90aと支持部30との間の隙間80を確保するので、作業者がVP管90を支持部30に差し込む際にやはり引っ掛かりが生じにくく、良好な施工性が維持される。
【0025】
この効果は、
図2に示す試験装置100により確認することができる。試験装置100は、試験機台座101と、試験機台座101に固着された長尺状の支持梁102と、試験機台座101に立設されて円筒部材103を支持する治具104と、支持梁102に立設されて配管支持具110(一対の吊部31,32の間隔及びスペーサー40の厚さが9mm以上の配管支持具10と、一対の吊部の間隔及びスペーサーの厚さが9mm未満で、他の構成は配管支持具10と同様の配管支持具とを含む。)が吊り下げられるフレーム105,106とを有し、フレーム105,106に吊り下げられた配管支持具110,110には、直径32mmのVP管90が差し込まれる。このVP管90は、釣糸107により試験機108(株式会社島津製作所製オートグラフAG-50knI)につながれ、試験機108により分速20mmの速さで引っ張られる。
【0026】
図3は、試験装置100による試験結果を示す。すなわち、同図は、配管支持具110について、一対の吊部の間隔を5mm、7mm、9mm、11mm、13mmとして引張試験したときのVP管90の変位と引張荷重の変動を示し、VP管90と支持部33とが引っ掛かると、引張荷重が大きくなる。この試験結果によると、締着片22,23の間隔が5mm、7mmの場合には最大荷重が0.016kN程度に達し、VP管90が支持部33に強く引っ掛かっていることがわかり、締着片22,23の間隔が9mm以上の場合には最大荷重は0.001kN程度に止まり、引っ掛かりが生じにくいことがわかる。
【0027】
また、本実施の形態では、スペーサー40がEVAからなることにより、輸送時等に外力が作用しても好適に締着片22,23の間隔を維持することができ、施工時にはスペーサー40が大きく変形して(一見してわからなくなるほどに)薄くなるので、作業者がボルト50及びナット60の締結完了を容易に認識することができる。
【0028】
さらに、本実施の形態では、ボルト50にナット60を抜け止めする抜止部が設けらているので、施工時にナット60が脱落して作業者がナットを紛失したり、代わりのナットを調達しなければならなかったりする事態が回避され、施工性の悪化を防止することができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について例示したが、本発明の実施形態は上述したものに限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更等してもよい。
【0030】
例えば、上述した実施の形態では、タンバックル及び支持金具が帯状の鋼板からなるとしたが、これらは他の金属により形状も変えて構成されてもよく、スペーサーの材質もEVAに限られない。
【符号の説明】
【0031】
10 配管支持具
20 タンバックル
21 基部
22 締着片(対向片)
22e 挿通孔
23 締着片(対向片)
23e 挿通孔
30 支持金具
31 吊部(取付部)
31a 挿通孔
32 吊部(取付部)
32a 挿通孔
33 支持部
34 屈曲部
35 屈曲部
40 スペーサー
40a 挿通孔
50 ボルト
60 ナット
90 VP管(配管)
90a 周面