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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130664
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/46 20150101AFI20230913BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20230913BHJP
   G08B 29/06 20060101ALI20230913BHJP
   H04H 20/59 20080101ALI20230913BHJP
【FI】
H04B3/46
G08B17/00 L
G08B29/06
H04H20/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035089
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
(72)【発明者】
【氏名】杉山 泰周
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA25
5C087BB06
5C087BB51
5C087BB74
5C087CC22
5C087DD04
5C087DD28
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG11
5C087GG55
5C087GG62
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG84
5G405AA06
5G405AD06
5G405AD07
5G405BA01
5G405CA15
5G405CA22
5G405CA27
5G405CA30
5G405CA31
5G405CA41
5G405CA47
5G405CA53
5G405FA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】信号回線に流れる電流値異常の判定結果や電流値の測定結果を記憶した電流監視の履歴データを遠方の上位設備へ送信して上位設備で電流監視の履歴データを確認可能とする防災システムを提供する。
【解決手段】防災システムは、防災受信盤10と、火災が発生した場合に信号回線を介して防災受信盤10へ火災通報信号を出力する手動通報装置24を含む端末機器と、信号回線に流れる電流線に流れる電流値を測定して測定結果に基づいて電流値異常を判定し、測定結果及び判定結果の履歴データをメモリカード100に記憶する電流監視部70と、を備える。電流監視部70は、汎用外部通信網76を介して接続される電流監視上位局設備78から送信要求を受けた場合に、少なくとも信号回線の電流値異常の判定結果をメモリカード100に記憶された履歴データから抽出して電流監視上位局設備78へ送信する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災受信盤と、
異常が発生した場合に信号回線を介して前記防災受信盤へ異常に関する所定の信号を出力する端末機器と、
前記信号回線に流れる電流値を測定して測定結果の履歴データを記憶すると共に、前記電流値の測定結果に基づいて電流値異常を判定して判定結果の履歴データを記憶する電流監視部と、
が設けられた防災システムであって、
前記電流監視部は、所定の通信網を介して接続される上位設備から送信要求を受けた場合に、少なくとも前記信号回線の前記電流値異常の判定結果を前記記憶された履歴データから抽出して前記上位設備へ送信することを特徴とする防災システム。
【請求項2】
請求項1記載の防災システムに於いて、
前記電流監視部は、前記上位設備から送信要求を受けた場合に、前記信号回線の前記電流値の測定結果を前記記憶された履歴データから抽出して前記上位設備へ送信することを特徴とする防災システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防災システムに於いて、
前記電流監視部は、前記上位設備からの送信要求に含まれる所定の絞り込み条件に応じた前記信号回線の前記電流値異常の判定結果及び又は前記電流値の測定結果を前記記憶された履歴データから抽出して前記上位設備へ送信することを特徴とする防災システム。
【請求項4】
請求項1記載の防災システムに於いて、
前記電流監視部は、
予め設定された所定のタイミングで、全信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、前記全信号回線の各々の前記電流値の測定結果及び前記電流値異常の判定結果の履歴データを記憶するか、
任意のタイミングで前記全信号回線を指定した所定の全指定測定操作を検出した場合に、前記全信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、前記全信号回線の各々の前記電流値の測定結果及び前記電流値異常の判定結果の履歴データを記憶するか、又は、
任意のタイミングで1又は複数の前記信号回線を選択指定した所定の選択指定測定操作を検出した場合に、選択指定された前記信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、選択指定された前記信号回線の各々の前記電流値の測定結果及び前記電流値異常の判定結果の履歴データを記憶することを特徴とする防災システム。
【請求項5】
請求項1記載の防災システムに於いて、
前記電流監視部は、通信機能を備えた電子記録媒体に前記履歴データを記憶し、
前記通信網を介して通信接続される前記上位設備から送信要求を受けた場合に、前記電子記録媒体に記憶している前記履歴データを読み出して前記上位設備へ送信することを特徴とする防災システム。
【請求項6】
請求項1記載の防災システムに於いて、
前記電流監視部は、前記信号回線に流れる電流を入力する一対の電流入力端子を備え、
前記電流値を測定する場合に、前記一対の電流入力端子が前記信号回線の線路中に介挿されていない状態から介挿されている状態に接続を切り替える測定回線切替部が設けられたことを特徴とする防災システム。
【請求項7】
請求項6記載の防災システムに於いて、
前記測定回線切替部は、信号回線ごとに設けられ、
前記電流値を測定する場合に、当該電流値を測定する信号回線に設けられた測定回線切替部により前記一対の電流入力端子が当該電流値を測定する信号回線の線路中に介挿されている状態に接続を切り替えて、前記電流監視部は測定対象とする前記信号回線の各々に流れる電流値を測定することを特徴とする防災システム。
【請求項8】
請求項6又は7記載の防災システムに於いて、
前記測定回線切替部は、
前記信号回線ごとに、通電により作動する第1切替リレー接点と第2切替リレー接点を備えたリレーが設けられ、
前記リレーが非作動の場合、前記一対の電流入力端子の介挿部において前記第1切替リレー接点は前記信号回線の線路の上流側と下流側を接続すると共に、前記第2切替リレー接点は前記信号回線の線路の上流側と前記電流監視部の一対の電流入力端子のうち一方との接続を切り離すことで前記信号回線の線路中に前記電流監視部を介挿せず、
前記リレーが作動した場合、前記一対の電流入力端子の介挿部において前記第1切替リレー接点は前記信号回線の線路の下流側を前記電流監視部の一対の電流入力端子のうち他方に接続すると共に、前記第2切替リレー接点は前記信号回線の線路の上流側を前記電流監視部の一対の電流入力端子うちの一方に接続することで前記信号回線の線路中に前記電流監視部を介挿することを特徴とする防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域内に設置された通報装置や検知器等の端末機器を防災受信盤に接続して監視領域内の異常を監視する防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域となる自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るトンネル防災システムを構築するために、トンネル非常用設備が設置されている。
【0003】
このようなトンネル非常用設備の端末機器として、火災の検知と火災発報のための火災検知器、火災であることを通報するための手動通報装置や非常電話、火災の消火や延焼防止のために消火栓起動装置、及びトンネル躯体やダクト内を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧設備の自動弁装置、ダクト温度検知器などを設置し、これらの非常用設備の端末機器を監視制御する防災受信盤をトンネル電気室に設置している。
【0004】
防災受信盤と端末機器とを備えるトンネル非常用設備は、R型伝送方式とP型直送方式に大別される。R型伝送方式は、伝送回線にアドレスを設定した火災検知器等の端末機器を接続し、伝送制御により端末機器単位に動作と制御を行う個別管理を可能とする方式である。P型直送方式は、端末機器の種別等に応じて所定の区画単位に分け、区画単位に引き出した信号回線に同一区画に属する複数の端末機器を接続し、信号回線単位に動作と制御を行う方式である。
【0005】
ところで、P型直送方式のトンネル防災システムにあっては、手動通報装置、消火栓起動装置、ダクト温度検知器等の端末機器は、操作又は検知による信号出力部を無電圧a接点スイッチとして構成し、防災受信盤から引き出された信号回線に無電圧a接点スイッチを接続している。また、無電圧a接点スイッチは通常監視状態でオフしており、端末機器は操作や検知動作により無電圧a接点スイッチをオンして無電圧接点信号を出力する。また、信号回線の終端には断線監視用の終端抵抗が接続されている。
【0006】
そして、防災受信盤側から信号回線の信号線にプルアップ抵抗を介して信号回線の信号線とコモン線と間に電源電圧を印加しており、無電圧a接点スイッチがオフした通常監視状態では、信号回線には終端抵抗で決まる微弱な断線監視用の電流が流れているものの、防災受信盤から見た信号回線の信号線とコモン線と間の電圧は略電源電圧に保たれている。また、操作や検知動作により端末機器の無電圧a接点スイッチがオンして無電圧接点信号が出力されると信号回線に所定値を超える電流が流れ、防災受信盤から見た信号回線の信号線とコモン線と間の電圧は略零ボルトに低下し、防災受信盤は信号回線の消費電流の増加、又は信号回線の信号線とコモン線と間の電圧低下から無電圧接点信号の受信を検出して送信された無電圧接点信号に基づき、所定の制御を行う。
【0007】
例えば手動通報装置からの火災通報信号であれば、防災受信盤は、火災表示、手動通報装置側の応答ランプの点灯制御、手動通報区画表示といった制御を行うと共に、遠方監視制御設備、テレビ監視設備、警報表示板設備、換気設備、照明設備等の外部設備に火災通報信号を送信して所定の制御を行わせるようにしている。
【0008】
このような従来のP型直送方式のトンネル防災システムにあっては、端末機器を接続している信号回線(配線ケーブル)の経年劣化等により絶縁低下が進んだ場合に、端末機器を接続している信号回線に通常監視状態で想定以上の電流が流れ、防災受信盤が端末機器の操作や検知動作による無電圧接点信号の受信と誤検出して所定の制御を行うと共に、連動して遠方監視制御設備、テレビ監視設備、警報表示板設備、換気設備、照明設備等の他設備に所定の制御を行わせて、トンネルを通行止めにすることが度々生じている。
【0009】
この問題を解決するため、トンネル電気室に設置している防災受信盤と同じ筐体又は別の筐体に電流監視装置を設置し、電流監視装置が端末機器を接続した信号回線に流れる電流を、例えば1日1回といった所定のタイミングで測定して電流値の測定結果を記憶すると共に、測定した電流が、例えば所定のしきい値を超えた場合には信号回線の電流値異常を判定して判定結果を記憶し、更に防災受信盤で信号回線の電流値異常を警報させるようにしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018-032114号公報
【特許文献2】特開2002-246962号公報
【特許文献3】特開平11-128381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、電流監視装置を備えるトンネル防災システムにあっては、係員がトンネル側の設備に昼夜交代などにより常駐するか、或いは例えば1日1回というように定期的に巡回して、トンネル電気室に出向き、電流監視装置による電流値異常の判定に基づく警報の有無を確認したり、電流値異常が判定されていなくとも、例えば前日の電流値の測定結果の履歴データをモニタ装置に画面表示して電流値の測定結果を確認したりする業務を日常的に行っている。
【0012】
しかしながら、降雪や風水害などの気象条件によっては、山間地などに多いトンネル側の設備に係員が常駐するための交代や定期的な巡回が困難な状況が想定され、トンネル電気室に出向くことができず、電流監視装置で判定された電流値異常に対処することも、電流値の測定結果の履歴データの確認を行うこともできない事態が生じる。特に、降雪地帯のトンネルにあっては、冬場の長期間に亘り当該事態が生じることとなる。
【0013】
本発明は、信号回線に流れる電流値異常の判定結果や電流値の測定結果等を記憶した電流監視の履歴データを遠方の上位設備へ送信して上位設備で電流監視の履歴データを確認可能とする防災システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(防災システム)
本発明は、
防災受信盤と、
異常が発生した場合に信号回線を介して防災受信盤へ異常に関する所定の信号を出力する端末機器と、
信号回線に流れる電流値を測定して測定結果の履歴データを記憶すると共に、電流値の測定結果に基づいて電流値異常を判定して判定結果の履歴データを記憶する電流監視部と、
が設けられた防災システムであって、
電流監視部は、所定の通信網を介して接続される上位設備から送信要求を受けた場合に、少なくとも電流値異常と判定された信号回線の電流値異常の判定結果を、記憶された履歴データから抽出して上位設備へ送信することを特徴とする。
【0015】
(上位設備への測定結果の送信)
電流監視部は、上位設備から送信要求を受けた場合に、信号回線の電流値の測定結果を記憶された履歴データから抽出して遠方監視制御設備へ送信する。
【0016】
(上位設備への絞り込み要求に応じた履歴データの送信)
電流監視部は、上位設備からの送信要求に含まれる所定の絞り込み条件に応じた信号回線の電流値異常の判定結果及び又は電流値の測定結果を記憶された履歴データから抽出して上位設備へ送信する。
【0017】
(自動測定、全指定測定又は選択指定測定)
電流監視部は、
予め設定された所定のタイミングで、全信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、全信号回線の各々の電流値の測定結果及び電流値異常の判定結果の履歴データを記憶するか、
任意のタイミングで全信号回線を指定した所定の全指定測定操作を検出した場合に、全信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、全信号回線の各々の電流値の測定結果及び電流値異常の判定結果の履歴データを記憶するか、又は、
任意のタイミングで1又は複数の信号回線を選択指定した所定の選択指定測定操作を検出した場合に、選択指定された信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、選択指定された信号回線の各々の電流値の測定結果及び電流値異常の判定結果の履歴データを記憶する。
【0018】
(電流監視部と上位設備とを接続する通信網)
電流監視部は、通信機能を備えた電子記録媒体に履歴データを記憶し、
通信網を介して通信接続される上位設備から送信要求を受けた場合に、電子記録媒体に記憶している履歴データを読み出して上位設備へ送信する。
【0019】
(信号回線の電流値を測定するための構成)
電流監視部は、信号回線に流れる電流を入力する一対の電流入力端子を備え、
電流値を測定する場合に、一対の電流入力端子が信号回線の線路中に介挿されていない状態から介挿されている状態に接続を切り替える測定回線切替部が設けられる。
【0020】
(信号回線の各々の電流値を測定する電流監視部)
測定回線切替部は、信号回線ごとに設けられ、
電流値を測定する場合に、当該電流値を測定する信号回線に設けられた測定回線切替部により一対の電流入力端子が当該電流値を測定する信号回線の線路中に介挿されている状態に接続を切り替えて、電流監視部は測定対象とする信号回線の各々に流れる電流値を測定する。
【0021】
(リレーによる測定する信号回線の切替)
測定回線切替部は、
信号回線ごとに、通電により作動する第1切替リレー接点と第2切替リレー接点を備えたリレーが設けられ、
リレーが非作動の場合、一対の電流入力端子の介挿部において第1切替リレー接点は信号回線の線路の上流側と下流側を接続すると共に、第2切替リレー接点は信号回線の線路の上流側と電流監視部の一対の電流入力端子のうち一方との接続を切り離すことで信号回線の線路中に電流監視部を介挿せず、
リレーが作動した場合、一対の電流入力端子の介挿部において第1切替リレー接点は信号回線の線路の下流側を電流監視部の一対の電流入力端子のうち他方に接続すると共に、第2切替リレー接点は信号回線の線路の上流側を電流監視部の一対の電流入力端子のうち一方に接続することで信号回線の線路中に電流監視部を介挿する。
【発明の効果】
【0022】
(基本的な効果)
本発明は、防災受信盤と、異常が発生した場合に信号回線を介して防災受信盤へ異常に関する所定の信号を出力する端末機器と、信号回線に流れる電流値を測定して測定結果の履歴データを記憶すると共に、電流値異常を判定して判定結果の履歴データを記憶する電流監視部とが設けられた防災システムであって、電流監視部は、所定の通信網を介して接続される上位設備から送信要求を受けた場合に、少なくとも電流値異常と判定された信号回線の電流値異常の判定結果を記憶された履歴データから抽出して上位設備へ送信するようにしたため、監視領域となる、例えばトンネル側の設備に係員が常駐するための交代や定期的な巡回が困難な状況にあっては、上位設備から送信要求を行うことで、トンネル側の設備に赴くことなく電流監視部に記憶されている電流値異常の判定結果を履歴データから取得して、例えば上位設備側で画面表示して経年劣化している信号回線を簡単且つ容易に確認して対処可能とする。
【0023】
(上位設備への測定結果の送信の効果)
また、電流監視部は、上位設備から送信要求を受けた場合に、電流値の測定結果を記憶された履歴データから抽出して上位設備へ送信するようにしたため、電流値異常と判定された信号回線について、監視領域側の設備に赴くことなく、例えば上位設備側に過去の電流値の履歴を表示して調べることで、それまでの電流値の変化等から経年劣化の進み具合などを知り、経年劣化に対する適切な対処を可能とする。
【0024】
(上位設備への絞り込み要求に応じた履歴データの送信の効果)
また、電流監視部は、上位設備からの送信要求に含まれる所定の絞り込み条件に応じた信号回線の電流値異常の判定結果及び又は電流値の測定結果を、記憶された履歴データから抽出して上位設備へ送信するようにしたため、例えばトンネル防災システムにあっては、上り線トンネルと下り線トンネルに対応した系統、手動通報装置、消火栓起動装置、ダクト温度検知器といった端末機器、更に区画番号等を絞込み条件として指定することで、上位設備は膨大な履歴データの中から必要とする特定の電流値異常の判定結果や電流値の測定結果を抽出して送信させることができ、特定の信号回線について回線劣化状態などの判断を効率良く行うことを可能とする。
【0025】
(自動測定、全指定測定又は選択指定測定の効果)
また、電流監視部は、予め設定された所定のタイミングで、全信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、全信号回線の各々の電流値の測定結果及び電流値異常の判定結果の履歴データを記憶するか、任意のタイミングで全信号回線を指定した所定の全指定測定操作を検出した場合に、全信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、全信号回線の各々の電流値の測定結果及び電流値異常の判定結果の履歴データを記憶するか、又は、任意のタイミングで1又は複数の信号回線を選択指定した所定の選択指定測定操作を検出した場合に、選択指定された信号回線の各々に流れる電流値を測定しての各々電流値異常を判定し、選択指定された信号回線の電流値の測定結果及び電流値異常の判定結果の履歴データを記憶するようにしたため、通常には、予め設定された所定のタイミング、例えば1日1回といった周期で信号回線の電流値を測定して電流値の測定結果及び電流値異常の判定結果が履歴データとして記憶することで、記憶された履歴データを遠方の上位設備でも利用可能とし、運用中における信号回線の経年劣化の監視を上位設備側で効率的に行うことを可能とする。
【0026】
また、全信号回線を指定した全指定測定、1又は複数の信号回線を選択指定した選択指定測定を行った場合にも、履歴データを監視領域側の設備で利用可能にするだけでなく、遠方の上位設備側でも利用可能にでき、例えば異常に関する所定の信号が受信された信号回線の監視や障害が検出された信号回線の絶縁劣化の進み具合等の確認を上位設備側でも効率的に行うことを可能とする。
【0027】
(電流監視部と上位設備とを接続する通信網の効果)
また、電流監視部は、通信機能を備えた電子記録媒体に履歴データを記憶し、通信網を介して通信接続される上位設備から送信要求を受けた場合に、電子記録媒体に記憶している履歴データを読み出して上位設備へ送信するようにしたため、例えばLAN通信網、インターネット又は携帯電話網等の汎用の通信網により電流監視部と上位設備との間を簡単且つ容易に通信接続し、上位設備からの送信要求に対し監視領域の設備側から電流監視の履歴データを簡単且つ容易に上位設備側に送信可能とするものである。
【0028】
また、汎用の通信網を利用した場合の効果を専用の通信網を利用している従来の防災システムと対比して説明すると次のようになる。従来、トンネルの防災システムについては、遠方監視制御設備が設置されており、当該遠方監視制御設備専用の通信網を利用して、電流監視装置から電流監視の履歴データをトンネルから離れた道路情報システムの道路管理室などに設置した遠方監視制御設備が備える上位設備へ送信することが考えられる。
【0029】
ここで、遠方監視制御設備とは、各トンネルに設置された電力関連設備(受配電設備、自家発電設備、換気設備、照明設備など)及びトンネル非常用設備の運用に関する監視制御等を統括して行うものであり、監視制御の対象とする各トンネル側にIG子局設備(インテリジェント子局設備)が設置され、上位設備として設置された上位局設備に専用の通信網(専用データ伝送回線網)を介して各IG子局設備が接続されている。
【0030】
また、遠方監視制御設備によるトンネル非常用設備の運用に関する監視制御は、IG子局設備に防災受信盤を接続し、各トンネルに設置された防災受信盤による監視に伴う処理結果を、IG子局設備を経由して上位局設備へ送信させると共に、上位局設備から送信された制御信号をIG子局設を経由して防災受信盤に入力して各トンネルに設置された防災受信盤に対応する制御を行わせるものである。
【0031】
しかしながら、従来の遠方監視制御設備専用の通信網を利用して電流監視装置側から上位局設備側へ電流監視の履歴データを送信するためには、トンネル側に設置している電流監視装置とIG子局設備に、電流監視装置で記憶している電流監視の履歴データを送信するためのファイル転送機能を新たに設けるか、電流監視装置を防災受信盤と一体にする必要があり、トンネル側の設備を大幅な変更を必要とし、更に遠方監視制御設備専用の通信網として構築されている上位局設備と複数のIG子局設備との間のデータ伝送方式を電流監視の履歴データが送信できるように見直す必要もあり、相当な労力、時間及び費用が掛かることから実用化が困難な状況にある。
【0032】
これに対しLAN通信網、インターネット又は携帯電話網等の汎用の通信網を利用する場合、これらの汎用の通信網に対応した通信機能を備えた電子記録媒体、例えば無線LAN搭載のメモリカード等を使用して、当該電子記録媒体に電流監視の履歴データを記憶させることで、専用の通信網を用いた遠方監視制御設備に影響を及ぼすことなく、簡単な構成で電流監視装置側から電流監視の履歴データを上位設備側へ送ることを可能とする。
【0033】
(信号回線の電流値を測定する構成による効果)
また、電流監視部は、信号回線に流れる電流を入力する一対の電流入力端子を備え、電流値を測定する場合に、一対の電流入力端子が信号回線の線路中に介挿されていない状態から介挿されている状態に接続を切り替える測定回線切替部が設けられため、電流監視部による電流値の測定が行われるときに信号回線の線路中に電流監視部が介挿され、電流監視部による電流値の測定が行われないときには電流監視部は信号回線と未接続状態にあり、信号回線を介した防災受信盤による通常監視を妨げることなく、電流監視部による信号回線の電流監視を行うことを可能とする。
【0034】
(信号回線の各々の電流値を測定する電流監視部の効果)
測定回線切替部は、信号回線ごとに設けられ、電流値を測定する場合に、当該電流値を測定する信号回線に設けられた測定回線切替部により一対の電流入力端子が当該電流値を測定する信号回線の線路中に介挿されている状態に接続を切り替えて、電流監視部は測定対象とする信号回線の各々に流れる電流値を測定するため、単一の電流監視部により複数の信号回線の電流値を測定することができ、信号回線ごとに電流検出部を設ける場合に比べ回路構成が簡単となり、コストを低減可能とする。
【0035】
(リレーによる測定する信号回線の切替による効果)
また、測定回線切替部は、信号回線ごとに、通電により作動する第1切替リレー接点と第2切替リレー接点を備えたリレーが設けられ、リレーが非作動の場合、一対の電流入力端子の介挿部において第1切替リレー接点は信号回線の線路の上流側と下流側を接続すると共に、第2切替リレー接点は信号回線の線路の上流側と電流監視部の一対の電流入力端子のうち一方との接続を切り離すことで信号回線の線路中に電流監視部を介挿せず、リレーが作動した場合、一対の電流入力端子の介挿部において第1切替リレー接点は信号回線の線路の下流側を電流監視部の一対の電電流入力端子のうち他方に接続すると共に、第2切替リレー接点は信号回線の線路の上流側を電流監視部の一対の電流入力端子のうち一方に接続することで信号回線の線路中に電流監視部を介挿するようにしたため、信号回線の電流値を測定する場合には、測定する信号回線に設けたリレーに通電して作動させることで、第1切替リレー接点及び第2切替リレー接点を切り替えることにより、測定する信号回線の線路中に一対の電流入力端子が介挿されている状態に接続し、電流監視部により各信号回線に流れる電流値を測定可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】トンネル防災システムの構成の概略を示した説明図である。
図2】防災受信盤の電流監視機能の実施形態を示した説明図である。
図3】サブモニタ装置に画面表示される全指定測定画面を示した説明図である。
図4】サブモニタ装置に画面表示される選択指定測定画面を示した説明図である。
図5】防災受信盤の電流監視部による電流監視制御を示したフローチャートである。
図6】専用外部通信網を用いた防災受信盤の電流監視機能を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明に係る防災システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0038】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。本実施形態は、概略的に監視領域内に設置した端末機器を防災受信盤に接続して監視領域内の異常を監視する防災システムに関するものである。ここで、「監視領域」とは、異常を監視する対象となる区域、範囲、構造物内の空間等を含むものであり、具体的にはトンネル内の空間等を含む概念である。また、「トンネル」とは、高速道路や自動車専用道路等の車両が通行する道路を有するトンネルである。
【0039】
また、本実施形態の防災システムは、防災受信盤、端末機器及び電流監視部を備えるものである。
【0040】
ここで、「防災受信盤」とは、主に自己に接続された端末機器を管理又は制御する機器であり、防災受信機、防災監視盤、中央監視盤等と呼ばれる機器を含む概念である。
【0041】
また、「端末機器」とは、防災受信盤により管理又は制御され、異常が発生した場合に信号回線を介して防災受信盤へ異常に関する所定の信号を出力する機器であり、本実施形態が対象とする「端末機器」は、例えば火災に伴う操作や検知動作によって接点を閉じる無電圧a接点スイッチを備える機器であり、具体的にはトンネル非常用設備として設けられる手動通報装置、消火起動装置、ダクト温度検知器等を含む概念である。
【0042】
ここで、「信号回線」とは、防災受信盤と端末機器との間を接続し、防災受信盤により電装機器を管理又は制御可能にするための配線であり、例えば一対の信号線とコモン線で形成される配線ケーブルを含むものである。
【0043】
また、「電流監視部」とは、防災受信盤と端末機器との間の信号回線に流れる電流値を測定して測定結果の履歴データを記憶すると共に、電流値の測定結果に基づいて電流値異常を判定して判定結果の履歴データを記憶し、所定の通信網を介して接続される上位設備から送信要求を受けた場合に、少なくとも信号回線の電流値異常の判定結果を記憶された履歴データから抽出して上位設備へ送信するものである。
【0044】
ここで、「電流値の測定結果の履歴データ」とは、測定した信号回線の電流値を含むデータであり、電流値以外のデータが含まれた履歴データであっても良く、「電流値異常の判定結果の履歴データ」とは、測定した信号回線が電流値異常であったか否かを示すデータであり、電流値異常を示すデータ以外のデータが含まれた履歴データであっても良い。
【0045】
また、「通信網」とは、監視領域側に設置される電流監視部と監視領域から離れた遠方の上位設備とを通信接続するための通信網であり、上位設備からの送信要求を受けて電流監視部で記憶している履歴データから抽出して電流値異常の判定結果を送信可能とするものである。
【0046】
また、通信網の構成や種類は任意であるが、LAN通信網、インターネット又は携帯電話網等の汎用の通信網や、防災システムが備える専用の通信網等を含むものである。「汎用の通信網」とは、不特定多数の利用者が保有する装置や機器の間で通信事業者との契約で取得したIDとパスワードを使用して通信接続を可能とするものであり、「公衆通信網」、「大衆通信網」、「オープン通信網」を含むものである。
【0047】
これに対して、「専用の通信網」とは、通信事業者と利用者が特定の事業体に限定された通信網であり、例えば事業体内部専用の通信網として知られたイントラネットワークを含むものであり、具体的に従来のトンネル防災システムの場合では、遠方監視制御設備に使用されている通信網(防災受信盤側の子局と上位設備の親局を結ぶデータ伝送回線網)が該当する。
【0048】
また、電流監視部は、上位設備から送信要求を受けた場合に、信号回線の電流値の測定結果を記憶された履歴データから抽出して上位設備へ送信するようにしても良く、上位設備からの送信要求に含まれる所定の絞り込み条件に応じた信号回線の電流値異常の判定結果及び又は電流値の測定結果を記憶された履歴データから抽出して上位設備へ送信するようにしても良い。
【0049】
ここで、「所定の絞り込み条件」や種類は任意であるが、例えば所定の信号回線に対する電流値異常の判定結果及び又は電流値の測定結果を対象とする条件、所定の期間の電流値異常の判定結果及び又は電流値の測定結果を対象とする条件等を含み、具体的にトンネル防災システムの場合では、上り線トンネルと下り線トンネルに対応した系統、手動通報装置、消火栓起動装置、ダクト温度検知器といった端末機器、更に区画番号等を絞り込み条件とする。
【0050】
また、電流監視部は、自動測定、全指定測定、及び選択指定測定を行うようにしても良い。「自動測定」とは、予め設定された所定のタイミングで全信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、全信号回線の各々の電流値の測定結果及び電流値異常の判定結果の履歴データを記憶するものであり、「全指定測定」とは、任意のタイミングで全信号回線を指定した所定の全指定測定操作を検出した場合に、全信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、全信号回線の各々の電流値の測定結果及び電流値異常の判定結果の履歴データを記憶するものであり、「選択指定測定」とは、任意のタイミングで1又は複数の信号回線を選択指定した所定の選択指定測定操作を検出した場合に、選択指定された信号回線の各々に流れる電流値を測定して各々の電流値異常を判定し、選択指定された信号回線の各々の電流値の測定結果及び電流値異常の判定結果の履歴データを記憶するものである。
【0051】
また、自動測定における「予め設定された所定のタイミング」は任意であるが、例えば1日1回といった周期的に測定されるものを含むものである。また、全指定測定における「全指定測定操作」及び選択指定測定における「選択指定測定操作」は、その操作が行われる場所は任意であり、電流監視部での操作、防災受信盤での操作、上位設備での操作等を含むものである。
【0052】
また、電流監視部は、通信機能を備えた電子記録媒体に履歴データを記憶し、通信網を介して通信接続される上位設備から送信要求を受けた場合に、電子記録媒体に記憶している履歴データを読み出して上位設備へ送信するようにしても良い。ここで、「通信機能を備えた電子記録媒体」とは、上位設備と通信接続するための通信網で利用する通信規格に対応した通信機能を備えると共に履歴データを記憶可能とするものであれば任意の電子記録媒体で良く、例えば無線LAN搭載のメモリカード等を含むものである。
【0053】
また、電流監視部は、信号回線に流れる電流を入力する一対の電流入力端子を備え、電流値を測定する場合に、一対の電流入力端子が信号回線の線路中に介挿されていない状態から介挿されている状態に接続を切り替える測定回線切替部が設けられるようにしても良い。ここで、「電流入力端子」とは、測定回線切替部により信号回線の線路中に介挿されている状態に接続された場合の電流監視部に対する入力部である。また、「測定回線切替部」とは、配線接続を切替える、或いは接続と非接続を切替える各種の切替器を備える回路を含むものであり、例えばリレーを備える回路等を含むものである。
【0054】
また、測定回線切替部を信号回線ごとに設け、電流値を測定する場合に、当該電流値を測定する信号回線に設けられた測定回線切替部により一対の電流入力端子が当該電流値を測定する信号回線の線路中に介挿されている状態に接続を切り替えて、電流監視部は測定対象とする信号回線の各々に流れる電流値を測定するようにしても良い。
【0055】
また、測定回線切替部は、信号回線ごとに、通電により作動する第1切替リレー接点と第2切替リレー接点を備えたリレーが設けられ、リレーが非作動の場合、一対の電流入力端子の介挿部において第1切替リレー接点は信号回線の線路の上流側と下流側を接続すると共に、第2切替リレー接点は信号回線の線路の上流側と電流監視部の一対の電流入力端子のうち一方との接続を切り離すことで信号回線の線路中に電流監視部を介挿せず、リレーが作動した場合、一対の電流入力端子の介挿部において第1切替リレー接点は信号回線の線路の下流側を電流監視部の一対の電流入力端子のうち他方に接続すると共に、第2切替リレー接点は信号回線の線路の上流側を電流監視部の一対の電流入力端子のうち一方に接続することで信号回線の線路中に電流監視部を介挿するようにしても良い。ここで、リレーの「切替リレー接点」とは、配線接続を切替えられる、或いは接続と非接続を切替えられる配線の切替点を含むものである。
【0056】
以下に示す具体的な実施形態では、「防災システム」が「トンネル内に設置された端末機器を防災受信盤に接続してトンネル内の火災を監視するトンネル防災システム」であり、「電流監視部」が「防災受信盤に一体に設けられたもの」であり、「端末機器」が「無電圧a接点スイッチを備える『手動通報装置』と『消火ポンプ起動装置』」であり、電流監視部と上位設備との間を通信接続する「通信網」が「無線LANと携帯電話網を組み合わせた汎用外部通信網」又は「遠方監視制御設備の上位局設備とIG子局設備との間を通信接続する専用外部通信網」であり、「測定回線切替部」が「信号回線ごとに2回路の切替リレー接点を備えるリレーを設けたリレー回路」である場合について説明する。
【0057】
[実施形態の具体的内容]
トンネル防災システムについて、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.トンネル防災システムの概要
b.防災受信盤
b1.防災受信盤の構成
b2.防災受信盤の監視制御
c.防災受信盤の電流監視
c1.信号回線の電流監視の概要
c2.信号回線
c3.電流監視部
c4.測定回線切替部
c5.電流値の自動測定
c6.電流値の全指定測定
c7.電流値の選択指定測定
c8.通信機能付きのメモリカード
d.汎用外部通信網
e.電流監視部の制御動作
f.専用外部通信網を用いたトンネル防災システム
g.本発明の変形例
【0058】
[a.トンネル防災システムの概要]
トンネル防災システムの概要について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、トンネル防災システムの構成の概略を示した図1を参照する。
【0059】
図1に示すように、トンネル非常用設備は、防災受信盤10と端末機器群18(18-1)~18(18-n)、20(20-1)~20(20-n)とを備え、トンネル電気室に設置された防災受信盤10からは、自動車専用道路のトンネルとして構築された上り線トンネル12(12-1)と下り線トンネル12(12-2)に対し、車両進行方向の所定距離の区画に分けて設置されたトンネル非常用設備の端末機器群18(18-1)~18(18-n)、20(20-1)~20(20-n)毎に分けてP型の信号回線14,16が引き出され、各信号回線14,16に端末機器群18(18-1)~18(18-n)、20(20-1)~20(20-n)に属する端末機器が接続されている。尚、本実施形態ではP型の信号回線14,16は、信号線とコモン線で構成された配線ケーブルを使用している。
【0060】
トンネル非常用設備の端末機器は、例えば、端末機器群18(18-1)に代表して示すように、4台の消火栓装置22に設けられた手動通報装置24と消火ポンプ起動装置26の群であり、信号回線14に手動通報装置24が接続され、信号回線16に消火ポンプ起動装置26が接続されている。
【0061】
ここで、消火栓装置22の設置間隔は例えば50メートルであることから、4台の消火栓装置22を含む端末機器群18(18-1)~18(18-n)、20(20-1)~20(20-n)の各区画は約200メートルとなる。
【0062】
手動通報装置24は、消火栓装置22の電装扉に、赤色表示灯及び応答ランプと共に設けられ、押釦操作によりオンする無電圧a接点スイッチを備え、火災が発生した場合に道路利用者が押釦操作を行うと無電圧a接点スイッチがオンして操作された手動通報装置24が接続された信号回線14に回線電流が流れることで、防災受信盤10に火災通報信号を送信する。手動通報装置24からの火災通報信号を受信した防災受信盤10は、火災警報を出力するとともに消火栓装置22に応答信号を送信して、同じ端末機器群に属する区画内の4台の消火栓装置22の赤色表示灯を点滅させると共に応答ランプを点灯させる。
【0063】
消火ポンプ起動装置26は、消火栓装置22に設けられたポンプ起動釦の押釦操作でオンする無電圧a接点スイッチを備え、消防隊員が消火栓装置22の保守扉を開いてポンプ起動釦の押釦操作を行うと、無電圧a接点スイッチがオンして操作された消火ポンプ起動装置26が接続された信号回線16に回線電流が流れることで、防災受信盤10にポンプ起動信号を送信する。消火ポンプ起動装置26からのポンプ起動信号を受信した防災受信盤10は、消火ポンプ設備54を起動して消火用水を加圧供給させる。尚、消火ポンプ起動装置26のポンプ起動釦の押釦操作でオンする無電圧a接点スイッチを構成する箇所は、「消火ポンプ起動スイッチ」と呼ばれる場合がある。
【0064】
また、消火ポンプ起動装置26には、消火栓装置22に設けられた消火栓弁開閉レバーを開閉操作に連動してオン、オフする別の無電圧a接点スイッチを備えており、ポンプ起動釦の押釦操作でオンする無電圧a接点スイッチに並列接続され、火災が発生した場合に利用者が消火栓装置22の消火栓扉を開いてノズル付きのホースを引き出し、放水を開始するために消火栓弁開閉レバーを開位置に操作すると別の無電圧a接点スイッチがオンして操作された消火ポンプ起動装置26が接続された信号回線16に回線電流が流れることで、防災受信盤10にポンプ起動信号を送信し、ポンプ起動釦の押釦操作された場合と同様に防災受信盤10は、消火ポンプ設備54を起動して消火用水を加圧供給させる。尚、消火ポンプ起動装置26の消火栓弁開閉レバーの開閉操作した場合にオン、オフする無電圧a接点スイッチで構成された箇所は、「消火ポンプ起動連動装置」又は「消火ポンプ起動連動スイッチ」と呼ばれる場合がある。
【0065】
トンネル非常設備の端末機器としては、消火栓装置22の手動通報装置24と消火ポンプ起動装置26以外に、火災検知器、自動弁装置、ダクト内温度検知器等が設けられているが、図示は省略している。
【0066】
火災検知器は、車両進行方向の壁面に沿って例えば25メートル又は50メートル間隔で設置され、車両進行方向の25メートル又は50メートルとなる両側を監視エリアに設定し、監視エリアでの火災による炎を検知して火災発報する。
【0067】
自動弁装置は、水噴霧設備が備えるものであり、作動用電動弁の信号回線を介した遠隔開制御により主弁を開駆動し、トンネル壁面上部の車両進行方向に設置した複数の水噴霧ヘッドから消火用水を放水してトンネル躯体を火災から防護する。
【0068】
ダクト内温度検知器は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の内部の配管やケーブルを敷設したダクトに設置されており、ケーブル火災等によるダクト内の温度上昇を検知し、無電圧a接点スイッチのオンにより防災受信盤10に温度検知信号を送信する。
【0069】
また、トンネル側に設置される設備としては、トンネル非常用設備の他に、IG子局設備42、換気設備44、警報表示板設備46、ラジオ再放送設備48、テレビ監視設備50、照明設備52、消火ポンプ設備54及びダクト用の冷却ポンプ設備56等が設置されている。
【0070】
ここで、IG子局設備42をデータ伝送回線で接続する点を除き、それ以外の設備はP型の信号回線により防災受信盤10に個別に接続されている。また、IG子局設備42は、防災受信盤10をトンネル外部の遠方に設置した上位局設備62に専用外部通信網58を経由して通信接続する遠方監視制御設備60の一部を構成するものである。
【0071】
また、換気設備44は、トンネル内の天井側に設置しているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル内の空気にエネルギーを与えて、車両進行方向に換気の流れを起こす設備である。また、警報表示板設備46は、トンネル内の利用者に対して、トンネル内の異常を電光表示板に表示して知らせる設備である。また、ラジオ再放送設備48は、トンネル内で運転者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。テレビ監視設備50は、火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握したりするための設備である。また、照明設備52は、トンネル内の照明機器を駆動して制御する設備である。
【0072】
また、消火ポンプ設備54は、前述した通り消火ポンプ起動装置26からポンプ起動信号を受信した防災受信盤10により消火ポンプを起動して消火栓装置22等に対する給水配管に消火用水を加圧供給する設備である。
【0073】
また、冷却ポンプ設備56は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の内部の配管やケーブルを敷設したダクトに配置されたダクト内温度検知器からの温度検知信号を受信した防災受信盤10により冷却ポンプを起動してダクト内に対する給水配管に冷却用水を加圧供給する設備である。
【0074】
[b.防災受信盤]
(b1.防災受信盤の構成)
防災受信盤の構成について、より詳細に説明する。図1に示すように、防災受信盤10は制御部28を備え、制御部28は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、AD変換ポートを含む各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0075】
制御部28に対しては、トンネル内に設置した端末機器群18(18-1)~18(18-n)、20(20-1)~20(20-n)をP型の信号回線14,16により接続したP型伝送部30が設けられる。
【0076】
また、その他に制御部28に対してメインモニタ装置32、スピーカ、ブザー、警報表示灯等を備えた警報部34、各種表示灯を備えた表示部35、各種スイッチを備えた操作部36、データ伝送部38、P型伝送部40が設けられる。また、データ伝送部38は、IG子局設備42がデータ伝送回線により接続され、P型伝送部40は、換気設備44、警報表示板設備46、ラジオ再放送設備48、テレビ監視設備50、照明設備52、消火ポンプ設備54及び冷却ポンプ設備56がP型の信号回線により個別に接続されている。
【0077】
また、防災受信盤10には、P型の信号回線14、16の電流監視のために電流監視部70、測定回線切替部72、サブモニタ装置74、及び端末通信部75が設けられている。
【0078】
ここで、防災受信盤10に対応する遠方監視制御設備60について説明する。遠方監視制御設備60は、複数のトンネルに設置された電力関連設備(受配電設備、自家発電設備、換気設備、照明設備等)及びトンネル非常用設備の運用に関する監視制御等を統括して行うものである。本実施形態ではトンネル非常用設備の運用に関する監視制御として、遠方監視制御設備60は、防災受信盤10にデータ伝送回線で接続されたIG子局設備42、専用外部通信網58及び上位局設備62を備えている。
【0079】
上位局設備62は、例えば、トンネルからは遠方にあるトンネルを含む高速道路網などの運用と管理を行う道路情報システムの道路管理室などに設置された設備であり、複数のトンネルに設置された防災受信盤10の各々に対して設置されたIG子局設備42の各々をツリー状に通信接続した上位設備にあたる。
【0080】
そして、防災受信盤10は、トンネル内の火災の監視制御に伴う処理結果を、IG子局設備42から専用外部通信網58を経由して上位局設備62へ送信して表示させ、上位局設備62から専用外部通信網58を経由して伝送された制御信号をIG子局設備42から受信して対応する制御等を行う。
【0081】
(b2.防災受信盤の監視制御)
防災受信盤10に設けられた制御部28による監視制御について、より詳細に説明する。
【0082】
制御部28はトンネル内に設置した消火栓装置22に設けられた手動通報装置24、消火ポンプ起動装置26、火災検知器、ダクト内温度検知器、及び自動弁装置等の端末機器からの火災に関する信号に基づき、所定の監視制御を行う。
【0083】
所定の監視制御として、例えば消火栓装置22に設けられた手動通報装置24の操作による火災通報信号を防災受信盤10が受信した場合、警報部34による主音響鳴動、表示部35による火災代表表示、メインモニタ装置32による火災表示と手動通報区画表示等の火災警報を行うと共に、消火栓装置22に応答信号を送信して赤色表示灯を点滅させると共に応答ランプを点灯させる制御を行う。
【0084】
また、例えば消火栓装置22に設けられた消火栓弁開閉レバーの開操作により消火ポンプ起動装置26からポンプ起動信号を防災受信盤10が受信した場合、消火ポンプ設備54にポンプ起動信号を送信して起動させる制御を行う。
【0085】
また、例えばダクト内温度が上昇してダクト内温度検知器から温度検知信号を防災受信盤10が受信した場合、冷却ポンプ設備56にポンプ起動信号を送信し、ダクト内に設置した水噴霧ヘッドから散水させてダクト内を冷却する制御を行う。
【0086】
更に、制御部28は、他の設備に対する制御として、IG子局設備42を介して遠方監視制御設備60の上位局設備62へ火災通報信号を送信して上位局設備62で警報させる制御、テレビ監視設備50により手動通報区画を表示する制御、警報表示板設備46により手動通報区画の火災通報を表示する制御、換気設備44により手動通報区画を換気する制御、照明設備52により手動通報区画を照明する制御等を行う。
【0087】
また、制御部28は、信号回線14、16の断線障害を監視しており、断線障害を検出すると、警報部34により障害音響鳴動を行うと共に表示部35に障害代表表示を行い、メインモニタ装置32の画面に障害発生と障害区画を表示する制御を行う。制御部28による信号回線14、16の断線障害の監視は、信号回線14、16の終端に終端抵抗を接続して断線監視電流を流し、断線監視電流が断たれた場合に断線障害を検出することで行われる。
【0088】
[c.防災受信盤の電流監視]
防災受信盤の電流監視について、より詳細に説明する。
【0089】
(c1.信号回線の電流監視の概要)
まず、信号回線の電流監視の概要について説明する。図1に示すように、防災受信盤10には、信号回線14,16に流れる電流を監視するため、電流監視部70、測定回線切替部72、サブモニタ装置74及び端末通信部75が設けられ、端末通信部75は汎用外部通信網76を経由して遠方監視制御設備60の上位局設備62側に設置された電流監視上位局設備78に通信接続されている。
【0090】
電流監視部70は、手動通報装置24が接続された信号回線14及び消火ポンプ装置26が接続された信号回線16に流れる電流値を測定して電流値の測定結果を履歴データとして記憶すると共に、電流値の測定結果に基づいて電流値異常を判定して判定結果を履歴データとして記憶するものである。電流値を測定する場合、電流監視部70は測定回線切替部72の切替制御により、各信号回線14,16の電流値が測定できるように信号回線14,16を回線単位に切替接続して電流値を測定する。
【0091】
また、電流監視部70は、電流監視において上位設備として機能する電流監視上位局設備78から汎用外部通信網76を経由して送信要求を受けた場合に、信号回線14,16の電流値の測定結果及び又は電流値異常の判定結果を記憶された履歴データから抽出して電流監視上位局設備78へ送信して表示させる。
【0092】
電流監視の機能構成について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、防災受信盤の電流監視機能の実施形態を示した図2を参照する。
【0093】
(c2.信号回線)
まず、電流値の測定対象となる信号回線について、より詳細に説明する。尚、図2図1の端末機器群18(18-1)の手動通報装置24を接続している信号回線14を代表として示して説明する。
【0094】
図2に示すように、防災受信盤10のP型伝送部30には信号回線ごとに受信回路300が設けられている。P型伝送部30の受信回路300からは信号回線14として信号線14(14-1)とコモン線14(14-2)が引き出され、4台の消火栓装置22に設けている手動通報装置24の無電圧a接点スイッチ240が信号線14(14-1)とコモン線14(14-2)との間に並列に接続され、終端には断線監視用の終端抵抗25が接続されている。受信回路300は、信号線14(14-1)を所定の電源電圧+Vにプルアップすることで信号線14(14-1)とコモン線14(14-2)との間に所定の回線電圧+Vを印加している。
【0095】
(c3.電流監視部)
次に、電流監視部70について、より詳細に説明する。図2に示す電流監視部70の構成や種類は任意であるが、例えば電流測定機能を備えたプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)が使用される。
【0096】
電流監視部70は、自動測定、全指定測定又は選択指定測定等により信号回線の電流値を測定して、電流値の測定結果に基づいて電流値異常を判定するものであり、例えば所定の電流測定のタイミングで、電流監視部70の電流入力端子84、86が信号回線14の線路中に介挿されている状態で接続されるように外部のリレーユニット88により測定回線切替部72を切替え制御することで、信号回線14に流れる電流値を測定し、電流値の測定結果に基づいて電流値異常を判定する。なお、制御部28で何れかの信号回線14、16から火災に関する信号を受信して所定の監視制御が行われた場合には、電流監視部70による信号回線14、16の電流監視は停止又は中止される。
【0097】
また、リレーユニット88には信号回線14、16毎に対応してリレー90が設けられている。電流監視部70は、所定の電流測定のタイミングでリレー90を順次作動させ、測定対象とする信号回線に電流入力端子84,86が介挿されるように測定回線切替部72を切り替える。このため信号回線の切り替えに使用するリレー90は2回路の切替リレー接点を備える。また、各リレー90は、所定の電圧が加えられた場合に(+)側となる信号線にリレー90が備えるコイルの一端が共通に接続され、コイルの他端が(-)側となる信号線に個別に接続されており、電流監視部70内で(-)側となる信号線毎に設けたスイッチング素子の何れかをオンすることで対応するリレー90のコイルに通電して作動する。
【0098】
(c4.測定回線切替部)
測定回線切替部72について、より詳細に説明する。図2に示すように、P型伝送部30の受信回路300から引き出された信号線14(14-1)には、測定回線切替部72を構成する切替回路が設けられ、信号回線14の信号線14(14-1)を途中で切り離した部分にリレーユニット88に設けたリレー90の第1切替リレー接点92と第2切替リレー接点94が介挿接続され、測定回線切替部72は、信号回線14に流れる電流値を測定する場合に、信号回線14の信号線14(14-1)を途中で切り離した部分に、電流監視部70の一対の電流入力端子84,86が介挿接続されるように、リレー90の第1切替リレー接点92と第2切替リレー接点94を切り替えるものである。
【0099】
具体的には、リレー90の第1切替リレー接点92は、固定端子aが信号線14(14-1)の切り離し部分のP型伝送部30の受信回路300側(上流側)の信号線14(14-1)に接続され、固定端子bが電流入力端子84からの信号線に接続され、切替端子(共通端子)cが信号線14(14-1)の切り離し部分の端末機器群18(18-1)の手動通報装置24側(下流側)の信号線14(14-1)に接続されている。
【0100】
また、リレー90の第2切替リレー接点92は、固定端子aが信号線14(14-1)の切り離し部分から分離された未接続であり、固定端子bが信号線14(14-1)の切り離し部分の上流側に接続され、切替端子(共通端子)cが電流入力端子86からの信号線に接続されている。
【0101】
このためリレー90が非作動状態である非測定時には、図示のように、第1切替リレー接点92は、切替端子cが固定端子aと接続するように切り替わり信号線14(14-1)の切り離し部分の上流側と下流側を接続し、第2切替リレー接点94は、切替端子cが固定端子aと接続するように切り替わり信号線14(14-1)の切り離し部分の上流側と電流入力端子86との接続を切り離している。このため、電流監視部70の電流入力端子84,86を経由することなく信号線14(14-1)からコモン線14(14-2)に、回線電圧+V、終端抵抗25、及び信号回線14を構成する配線ケーブルの絶縁抵抗で決まる回線電流iが流れている。
【0102】
回線電流iを測定するためにリレー90が作動した場合には、第1切替リレー接点92の切替端子cが固定端子aとの接続から固定端子bと接続するように切り替わり、信号回線14(14-1)の切り離し部分の下流側を電流入力端子84に接続し、第2切替リレー接点94の切替端子cが固定端子aとの接続から固定端子bに切り替わり、信号線14(14-1)の切り離し部分の上流側を電流入力端子86に接続する。このため、信号線14(14-1)の切り離し部分に電流監視部70の電流入力端子84,86が介挿接続された状態となり、電流監視部70内の電流検出抵抗により発生した電圧値をAD変換ポートによりデジタルデータとして読み込み電流値を測定することになる。
【0103】
(c5.電流値の自動測定)
電流監視部70による電流値の自動測定について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、全指定測定に使用されるサブモニタ装置の全指定測定画面を示した図3を参照する。
【0104】
図3に示すモニタ画面120は、画面下側に全指定測定釦122、選択指定測定釦124、測定記録釦126、異常履歴釦128及びブザー停止釦130が配置されており、ハッチングで示すように全指定測定釦122を操作すると、全指定測定画面132に切り替わる。
【0105】
モニタ画面120の右上部には、自動測定に設定をするための入釦134と切釦136が配置されている。初期設定として入釦134がオン状態に設定されており、これにより電流監視部70は、自動測定として、例えば1日1回の周期のように所定周期で全ての信号回線の電流値を順次測定し、測定した電流値が、例えば所定のしきい値範囲を外れた場合に電流値異常と判定し、電流値の測定結果と電流値異常の判定結果を履歴データとして端末通信部75に設けたメモリカード100に記憶させる自動測定を行う。
【0106】
ここで、電流値異常と判定するしきい値には、例えばしきい値範囲に対応した上限値と下限値があり、電流監視部70は、電流値がしきい値上限値以上又は超えた場合に上限電流値異常と判定し、電流値がしきい値下限値以下又は下回った場合に下限電流値異常と判定する。
【0107】
また、電流監視部70がメモリカード100に記憶する履歴データの形式は任意であるが、例えば「測定日、回線番号、しきい値上限値、しきい値下限値、測定値、上限電流値異常フラグ、下限電流値異常フラグ」となるテキスト形式のファイルデータとして履歴データを生成し、電流値異常が判定された場合は「上限電流値異常フラグ」又は「下限電流値異常フラグ」を「1」にセットし、メモリカード100に記憶する。
【0108】
(c6.電流値の全指定測定)
電流監視部70による電流値の全指定測定について、より詳細に説明する。図3の全指定測定画面132に切り替えられたモニタ画面120を使用して電流値の全指定測定を行う場合には、まず右上の自動測定の欄に配置された切釦136を操作して自動測定を解除させる。続いて、種別選択部140の中の例えば上り線トンネル12(12-1)に設置された手動通報装置24が接続された信号回線14を示す「上り線手動通報」を試験対象に選択し、全指定測定の欄に配置されている開始釦142を操作する。
【0109】
このモニタ画面120を使用した電流値の全指定測定操作は電流監視部70で検出され、選択された上り線トンネル12(12-1)に設置された手動通報装置24に対する全信号回線14の電流値が順次測定され、測定詳細情報146に、測定された電流値を含む測定結果が表示される。また、測定された信号回線毎に右下の測定値枠148に測定された電流値が表示されると共に、測定時間枠150に測定時間が表示される。また、全指定測定中には画面右上の測定中表示152が「測定中」に変化し、全指定測定が行われていることを知らせる。
【0110】
全指定測定画面132の画面中央には測定詳細情報146として、回線番号(No.)、しきい値下限値、しきい値上限値及び測定値の各項目に分けて、信号回線毎に測定結果が一覧表示される。ここで、例えば回線番号002にあっては、測定値が1.85mAであり、しきい値上限値1.00mAを超えていることから上限電流値異常と判定され、ハッチングで示すように回線番号002の表示が変化して電流値異常を知らせる。また、回線番号027にあっては、測定値が0.00mAであり、しきい値下限値0.01mAを下回っていることから下限電流値異常と判定され、ハッチングで示すように回線番号027の表示が変化して電流値異常を知らせる。また、何れかの信号回線で電流値異常が判定された場合には、電流異常値発生表示154が変化して電流値異常が判定されたことを表示している。
【0111】
全指定測定が終了すると、電流監視部70は電流値の測定結果と電流値異常の判定結果を、履歴データとして端末通信部75に設けたメモリカード100に記憶させる。また、電流値の全指定測定が終了した場合には、自動測定の入釦134を操作することで、電流値の自動測定に復帰させることができ、全指定測定が終了する前に全指定測定を停止させたい場合には全指定測定の欄に配置されている停止釦144を操作することで全指定測定を中断させることができる。
【0112】
(c7.電流値の選択指定測定)
電流監視部70による電流値の選択指定測定について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、選択指定測定に使用されるサブモニタ装置の選択指定測定画面を示した図4を参照する。
【0113】
図4に示すように、モニタ画面120の下側に配置された選択指定測定釦124を操作すると、図示の選択指定測定画面160に切り替わる。選択指定測定画面160に切り替わったモニタ画面120を使用して電流値の選択指定測定を行う場合には、まず、右上の自動測定の欄に配置された切釦136を操作して自動測定を解除させる。続いて、種別選択部140の中の、例えば「上り線手動通報」を試験対象に選択し、更に選択指定測定の欄に配置されている選択釦162,164の操作により測定対象とする信号回線を選択する。
【0114】
ここで、測定詳細情報146中のハッチングで示す回線番号004の表示のように表示が変化することで現在選択されている信号回線を示し、選択釦162,164を操作すると変化した表示が上又は下に移動し任意の回線番号が選択できる。選択指定測定を行う回線番号が選択できたら、選択指定測定の欄に配置されている開始釦166を操作する。尚、図4では、回線番号004が選択されている。
【0115】
このモニタ画面120を使用した電流値の選択指定測定操作は電流監視部70で検出され、上り線トンネル12(12-1)に配置された手動通報装置24に対する回線番号004の信号回線14の電流値が測定され、測定詳細情報146に測定された電流値を含む測定結果が表示される。また、選択指定測定が開始されると、測定中表示152が「測定中」に変化し選択指定測定が行われていることを知らせる。
【0116】
ここで、選択指定測定を行った回線番号004の測定値が1.25mAであり、しきい値上限値1.00mAを超えていることから上限電流値異常と判定され、回線番号004の表示がハッチングで示すように変化すると共に、電流値異常発生表示154が変化して電流値異常が判定されたことを表示している。
【0117】
電流値の選択指定測定が終了したい場合には、選択指定測定の欄の停止釦168を操作し、続いて自動測定の欄の入釦134を操作することで、電流値の自動測定に復帰させることができる。なお、電流監視部70は、選択指定測定の終了に伴い選択指定測定による電流値の測定結果と電流値異常の判定結果を履歴データとして端末通信部75に設けたメモリカード100に記憶させるようにしても良い。
【0118】
(c8.通信機能付きのメモリカード)
通信機能付きのメモリカードについて、より詳細に説明する。図2に示す端末通信部75に設けられたメモリカード100は、例えば機器や装置に対し着脱自在な電子記憶媒体であり、データの読み書きができるフラッシュメモリとその入出力インタフェースを備えており、記憶したデータは機器や装置の電源を切ってもそのまま消えずに残るものであり、SDメモリカードなどを含むものである。
【0119】
また、本実施形態で使用する端末通信部75のメモリカード100は通信部を備える。通信部の機能や構成は任意であるが、例えば本実施形態では図2に示すように無線LANクライアント102が設けられ、無線LANクライアント102として、例えばWi-Fi(登録商標)クライアントが設けられている。無線LANクライアント102は、外部の無線LANアクセスポイントを備える通信網を経由して、外部の機器や設備にメモリカード100に記憶している電流監視の履歴データを送信可能とするものである。
【0120】
[d.汎用外部通信網]
汎用外部通信網について、より詳細に説明する。図2に示すように、汎用外部通信網76は、防災受信盤10に設けられた電流監視部70と上位設備として設けられた電流監視上位局設備78とを通信接続するものであり、防災受信盤10と電流監視上位局設備78とを運用管理する事業体を含む一般利用者が利用可能に公開された汎用の通信網を利用したものである。
【0121】
汎用外部通信網76の機能や構成は任意であるが、例えば防災受信盤10が設置されたトンネル側に設置された端末通信設備104と電流監視上位局設備78との間を、携帯電話網112を経由して接続するように構成する。尚、携帯電話網112に代えてインターネット回線としても良く、携帯電話網112とインターネット回線を組み合わせた通信網としても良い。
【0122】
また、端末通信設備104及び電流監視上位局設備78の構成や機能は任意であるが、例えば端末通信設備104は、無線LANアクセスポイント106、ルータ108及びメール処理部110を備え、電流監視上位局設備78は、ルータ114、メール処理部116及びモニタ装置118を備える。
【0123】
無線LANアクセスポイント106は、端末通信設備104と防災受信盤10の端末通信部75と通信接続するものであり、無線LANアクセスポイント106と端末通信部75のメモリカード100に一体化された無線LANクライアント102との間で所定の無線LAN通信プロトコルに従って通信接続される。より具体的には、無線LANアクセスポイント106と無線LANクライアント102は、Wi-Fi(登録商標)アクセスポイントとWiFi(登録商標)クライアントであり、Wi-Fi(登録商標)通信プロトコルに従って通信接続される。
【0124】
ルータ108,114は、携帯電話網112を経由してメール処理部110,116の間でメール通信を行うものであり、ルータ108,114の構成や機能は任意であるが、例えばLTE-SIMカードを装着したルータが使用される。SIMカード(Subscriber Identity Module Card)とは、電話番号を特定するための固有の識別番号(ID)が記録された携帯電話網112を経由して通信するために必要なICカードである。
【0125】
また、LTE(Long Term Evolution)とは、携帯電話における通信規格で、第3世代携帯電話(3G)と第4世代携帯電話(4G)の中間に位置する規格であり、最高通信速度はダウンロードで100Mbps以上、アップロードで50Mbps以上の高速データ通信を可能とする。尚、携帯電話網112を利用した通信規格はLTEに限らず、4G、5G等適宜の通信規格を選択すれば良い。
【0126】
本実施形態は、電流監視上位局設備78の係員の操作等に基づき、防災受信盤10へ電流監視の履歴データの送信要求があった場合に、メモリカード100に記憶されている要求対象となった電流監視の履歴データを読み出し、電流監視上位局設備78へ送信してモニタ装置118に表示させるものである。
【0127】
このため、防災受信盤10のメモリカード100は、無線LANクライアント102により受信した上位設備からの送信要求に対応して、例えばテキスト形式のファイルデータとして記憶されている履歴データを読み出し、読み出した履歴データを無線LANクライアント102から端末通信設備104の無線LANアクセスポイント106に送信する。
【0128】
端末通信設備104のメール処理部110は、電流監視上位局設備78のメール処理部116を宛先とする電子メールを作成し、これに無線LANアクセスポイント106で受信した履歴データをファイルとして添付し、ルータ108を経由して履歴データのファイルが添付された電子メールを送信する。
【0129】
端末通信設備104から送信された電子メールは、携帯電話網112から電流監視上位局設備78のルータ114を経由してメール処理部116で受信される。メール処理部116は、受信した電子メールに添付されているファイルを開いて電流監視の履歴データをメモリに記憶し、例えば図3、4に示したサブモニタ装置74の表示と同様にしてモニタ装置118に表示し、電流監視上位局設備78の係員による確認を可能とする。
【0130】
ここで、電流監視上位局設備78の係員による防災受信盤10への電流監視の履歴データの送信要求は、所定の絞り込み条件の指定を可能とする。指定可能な絞り込み条件は任意であるが、例えば上り線トンネルと下り線トンネルに対応した系統、手動通報装置、消火栓起動装置、ダクト温度検知器といった端末機器、更に区画番号等を絞込み条件として指定することを可能とする。また、例えば信号回線の電流値異常の判定結果、電流値の測定結果等の任意の履歴データを抽出して送信するように送信要求することを可能とする。
【0131】
このため、電流監視上位局設備78の係員は、防災受信盤10のメモリカード100に記憶している膨大な履歴データの中から必要とする特定の履歴データを抽出して表示することができ、履歴データに基づく特定の回線劣化状態などの判断を効率良く行うことを可能とする。
【0132】
[e.電流監視部の制御動作]
電流監視部の制御動作について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、防災受信盤の電流監視部による電流監視制御の一例を示した図5のフローチャートを参照する。
【0133】
図5に示すように、電流監視部70は電流値の自動測定を初期設定としており、所定の測定タイミング、例えば1日1回の測定タイミングへの到達を判別すると(ステップS1)、全信号回線14、16の電流値を順次測定する電流値測定処理を行い(ステップS2)、続いて、測定された電流値が、例えば所定のしきい値範囲外にあれば電流値異常と判定する電流値異常の判定処理を行い(ステップS3)、電流値の測定結果と電流値異常の判定結果を含む履歴データを生成してメモリカード100に記憶させる履歴データ記憶処理を行う(ステップS4)。
【0134】
また、上位設備となる電流監視上位局設備78から履歴データの送信要求があった場合には(ステップS5)、要求された履歴データをメモリカード100から読み出し、電流監視上位局設備78へ送信する処理を行う(ステップS6)。
【0135】
また、電流監視部70は、全指定測定や選択指定測定が設定された場合にも、それぞれの測定開始操作に対応した測定タイミングを判別して電流値測定処理、電流値異常の判定処理及び履歴データ記憶処理を行うことになる(ステップS1~S4)。また、電流監視上位局設備78から履歴データの送信要求があった場合に、自動測定や手動測定の履歴データについても送信可能としても良い。
【0136】
[f.専用外部通信網を用いたトンネル防災システム]
専用外部通信網を用いたトンネル防災システムについて、より詳細に説明する。当該説明にあっては、専用外部通信網を用いた防災受信盤の電流監視機能を示した図6を参照する。
【0137】
図6に示すように、防災受信盤10に設けられたP型伝送部30、電流監視部70、測定回線切替部72及びリレーユニット88は図2の実施形態と同様であり、信号回線14、16に流れる電流値を測定すると共に電流値異常を判定し、電流値の測定結果と電流値異常の判定結果を履歴データとしてメモリカード200に記憶している。
【0138】
メモリカード200に記憶された履歴データは表示制御部202によりサブモニタ装置74に表示される。また、メモリカード200に記憶された履歴データは、電流監視において上位設備となる電流監視上位局設備78から履歴データの送信要求を受けた場合に、メモリカード200から読み出されて電流監視上位局設備78に送信される。
【0139】
防災受信盤10と電流監視上位局設備78との間は、専用外部通信網58により通信接続されている。専用外部通信網58は、図1に示した遠方監視制御設備60の上位局設備62とIG子局設備42との間に使用している外部通信網であり、専用外部通信網58の種類や構成は任意であるが、例えば防災受信盤10が設置されたトンネル側にLAN通信部206とルータ208が設けられ、電流監視上位局設備78側にLAN通信部214とルータ212が設けられ、ルータ208とルータ212との間を所定のイントラネットワーク210で通信接続されている。また、LAN通信部206,214の構成や機能は任意であるが、例えばイーサネットユニットが使用され、イーサネット通信プロトコルに従った通信接続が行われる。
【0140】
このように構成された専用外部通信網58は、公開されていないID及びパスワードを使用し、トンネル防災システムを保有して運用管理する事業体に所属する機器や装置間においてのみ通信接続を可能とするものであり、一般の利用者が利用できない専用の通信網を利用したものとなっている。
【0141】
また、防災受信盤10にはファイル転送通信部204が設けられ、専用外部通信網58のLAN通信部206に通信接続されている。ファイル転送通信部204とLAN通信部206との間の通信接続は任意であるが、電流監視部70を構成しているブログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)の通信接続に対応した公知のフィールドネットワーク又はPLCリンクが使用される。また、電流監視上位局設備78には、処理装置216とモニタ装置218が設けられている。尚、処理装置216に代えてサーバとしてもよい。
【0142】
防災受信盤10のファイル転送通信部204は、電流監視上位局設備78の処理装置216から専用外部通信網58を経由して電流監視の履歴データの送信要求を受信した場合、メモリカード200に記憶されている要求された履歴データを読み出し、専用外部通信網58を経由して電流監視上位局設備78へ送信し、電流監視上位局設備78の処理装置216は受信した履歴データをモニタ装置218に表示させる。
【0143】
このような専用外部通信網58を用いたトンネル防災システムにあっても、トンネル側に係員が常駐するための交代や定期的な巡回が困難な状況の際に、電流監視上位局設備78から履歴データの送信要求を行うと、防災受信盤10のメモリカード200に記憶されている電流値の測定結果や電流値異常の判定結果の履歴データを取得して、例えばモニタ装置218の画面に表示し、上位設備となる電流監視上位局設備78側で経年劣化している信号回線を確認して対処可能とする。
【0144】
[g.本発明の変形例]
本発明による防災システムの変形例について説明する。本発明の通信システムは、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0145】
(メモリカード)
上記の実施形態は、メモリカードを使用して電流監視の履歴データを記憶しているが、これに限定されず、履歴データを記憶できる電子記録媒体であれば良い。
【0146】
(筐体構造)
上記の実施形態では、防災受信盤と同じ筐体に電流監視部を設けているが、電流監視部を別筐体とすることを妨げない。
【0147】
(防災受信盤のモニタ装置)
上記の実施形態では、防災受信盤による非常用設備の監視制御に対してメインモニタ装置を設け、電流監視部の電流監視制御に対してサブモニタ装置を設けているが、非常用設備の監視制御と電流監視部の電流監視制御に対して単一のモニタ装置を設けるようにしてもよい。
【0148】
(上位設備による電流測定制御)
上記の実施形態は、防災受信盤に設けた電流監視部の操作で、自動測定、全指定測定又は選択指定測定を切り替えて行っているが、上位設備として設けた電流監視上位局設備からの遠隔操作により、防災受信盤の電流監視部による自動測定、全指定測定又は選択指定測定を切り替えて行うようしてもよい。
【0149】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0150】
10:防災受信盤
12(12-1):上り線トンネル
12(12-2):下り線トンネル
14,16:信号回線
18(18-1)-18(18-n),20(20-1)-20(20-n):端末機器群
22:消火栓装置
24:手動通報装置
25:終端抵抗
26:消火ポンプ起動装置
28:制御部
30,40:P型伝送部
32:メインモニタ装置
34:警報部
35:表示部
36:操作部
38:データ伝送部
42:IG子局設備
44:換気設備
46:警報表示板設備
48:ラジオ再放送設備
50:テレビ監視設備
52:照明設備
54:消火ポンプ設備
56:冷却ポンプ設備
58:専用外部通信網
60:遠方監視制御設備
62:上位局設備
70:電流監視部
72:測定回線切替部
74:サブモニタ装置
75:端末外部通信部
76:汎用通信網
78:電流監視上位局設備
84,86:電流入力端子
88:リレーユニット
90:リレー
92:第1切替リレー接点
94:第2切替リレー接点
100,200:メモリカード
102:無線LANクライアント
104:端末通信設備
106:無線LANアクセスポイント
108,114,208,212:ルータ
110,116:メール処理部
112:携帯電話網
118,218:モニタ装置
202:表示制御部
204:ファイル転送通信部
206,214:LAN通信部
210:イントラネットワーク
216:処理装置
300:受信回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6