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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130665
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】梯子/ブーム搭載車
(51)【国際特許分類】
   A62C 27/00 20060101AFI20230913BHJP
   E06C 5/04 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A62C27/00 506
E06C5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035090
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由樹
(72)【発明者】
【氏名】惠土 巧司
【テーマコード(参考)】
2E044
2E189
【Fターム(参考)】
2E044BB09
2E044BC06
2E044BC23
2E044CA04
2E189AA01
(57)【要約】
【課題】ジャイロターンテーブル方式の傾斜矯正装置を備える梯子/ブーム搭載車において、走行時における車両全高の抑制と、傾斜矯正時における梯子又はブームとキャビン等との干渉防止を両立すること。
【解決手段】キャビン10と、車体20と、収納時にキャビン10又は車体20よりも上方において伏臥状態となる梯子30又はブームと、下斜板41と上斜板42を有し傾斜地における梯子30又はブームの傾斜矯正に用いるジャイロターンテーブル40と、ジャイロターンテーブル40に取り付けられ梯子30又はブームの後端を支持する支持フレーム50と、梯子30又はブームの後端と先端との間を受け支える受け装置60とを備え、受け装置60が上方へ伸長することで、伏臥状態の梯子30又はブームが持ち上げられ、キャビン10又は車体20との隙間が広がる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に位置するキャビンと、
前記キャビンよりも後方に位置する車体と、
収納時に前記キャビン又は前記車体よりも上方において伏臥状態となる梯子又はブームと、
下斜板と上斜板を有し傾斜地における前記梯子又は前記ブームの傾斜矯正に用いるジャイロターンテーブルと、
前記ジャイロターンテーブルに取り付けられ前記梯子又は前記ブームの後端を支持する支持フレームと、
前記梯子又は前記ブームの前記後端と先端との間を受け支える受け装置とを備え、
前記受け装置が上方へ伸長することで、前記伏臥状態の前記梯子又は前記ブームが持ち上げられ、前記キャビン又は前記車体との隙間が広がることを特徴とする梯子/ブーム搭載車。
【請求項2】
制御手段を備え、
前記制御手段は、前記受け装置の伸長途上において、前記梯子又は前記ブームに伏方向の力が加わるように制御することを特徴とする請求項1に記載の梯子/ブーム搭載車。
【請求項3】
前記制御手段は、前記受け装置の伸長途上において、前記ジャイロターンテーブルの前記下斜板を前記上斜板と共に回転させ、前記下斜板を所定の回転位置に合わせることを特徴とする請求項2に記載の梯子/ブーム搭載車。
【請求項4】
前記受け装置は、前記伏臥状態の前記梯子又は前記ブームが載る受け部と、
前記受け部を下から保持する受け保持部と、
前記受け保持部の伸縮に用いる受け装置シリンダを備え、
前記受け保持部は、一方の脚部と他方の脚部を有し、
前記受け装置シリンダが、前記一方の脚部と前記他方の脚部のそれぞれに収容されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の梯子/ブーム搭載車。
【請求項5】
前記一方の脚部と前記他方の脚部との間に、油を貯留するオイルタンクが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の梯子/ブーム搭載車。
【請求項6】
前記受け装置は、前記キャビンの後面に近接して設けられていることを特徴とする請求項5に記載の梯子/ブーム搭載車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャイロターンテーブル方式の傾斜矯正装置と、伸縮、起伏又は旋回動作が可能な梯子又はブームとを搭載した梯子/ブーム搭載車に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮、起伏又は旋回動作が可能な梯子又はブームを搭載した消防車や高所作業車等の梯子/ブーム搭載車に関し、傾斜地において自動的に梯子又はブームを水平に保つジャイロターンテーブル方式の傾斜矯正装置を備えたものが知られている。
例えば、特許文献1には、傾斜面駐車時に車体に対する支持部材の旋回軸が上下方向に沿い、支持部材に取り付ける梯子の揺動軸が水平方向に沿うように、支持部材を車体に対して球面に沿い運動させ、梯子と梯子受けとの中の一方から出射されて他方に至った第1、第2探索ビームの中で、旋回軸中心の回転方向において梯子が梯子受けによる支持位置にある時は両方を検知し、支持位置からの回転方向一方への離間量が設定範囲内にある時は第1探索ビームを検知し、支持位置からの回転方向他方への離間距離が設定範囲内にある時は第2探索ビームを検知し、一方の探索ビームのみを検知する時は他方の探索ビームを検知する方向に梯子を旋回させる梯子車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-350791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路や車庫等における高さ制限を考慮して梯子/ブーム搭載車の全高を所定以下にすることを求められる場合がある。しかし、梯子/ブーム搭載車は、キャビンや車体よりも上方に梯子又はブームが横たわっているため、車両全高が大きくなりがちである。また、ジャイロターンテーブル方式の傾斜矯正装置を備える場合は、傾斜矯正時のキャビン等との干渉を考慮して梯子又はブームとキャビン等とのクリアランスを大きく設定するため、収納時における梯子又はブームの位置が上がり、車両全高がより一層大きくなる。
なお、特許文献1は、梯子の収納作業の容易化を図るものであり、車両全高を下げようとするものではない。
そこで、本発明は、ジャイロターンテーブル方式の傾斜矯正装置を備える梯子/ブーム搭載車において、走行時における車両全高の抑制と、傾斜矯正時における梯子又はブームとキャビン等との干渉防止を両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の梯子/ブーム搭載車は、車両前部に位置するキャビン10と、キャビン10よりも後方に位置する車体20と、収納時にキャビン10又は車体20よりも上方において伏臥状態となる梯子30又はブームと、下斜板41と上斜板42を有し傾斜地における梯子30又はブームの傾斜矯正に用いるジャイロターンテーブル40と、ジャイロターンテーブル40に取り付けられ梯子30又はブームの後端を支持する支持フレーム50と、梯子30又はブームの後端と先端との間を受け支える受け装置60とを備え、受け装置60が上方へ伸長することで、伏臥状態の梯子30又はブームが持ち上げられ、キャビン10又は車体20との隙間が広がることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の梯子/ブーム搭載車において、制御手段を備え、制御手段は、受け装置60の伸長途上において、梯子30又はブームに伏方向の力が加わるように制御することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の梯子/ブーム搭載車において、制御手段は、受け装置60の伸長途上において、ジャイロターンテーブル40の下斜板41を上斜板42と共に回転させ、下斜板41を所定の回転位置に合わせることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の梯子/ブーム搭載車において、受け装置60は、伏臥状態の梯子30又はブームが載る受け部61と、受け部61を下から保持する受け保持部62と、受け保持部62の伸縮に用いる受け装置シリンダ63を備え、受け保持部62は、一方の脚部62aと他方の脚部62aを有し、受け装置シリンダ63が、一方の脚部62aと他方の脚部62aのそれぞれに収容されていることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の梯子/ブーム搭載車において、一方の脚部62aと他方の脚部62aとの間に、油を貯留するオイルタンク90が設けられていることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の梯子/ブーム搭載車において、受け装置60は、キャビン10の後面に近接して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ジャイロターンテーブル方式の傾斜矯正装置を備える梯子/ブーム搭載車において、伏臥状態の梯子又はブームとキャビン等との隙間を小さくして走行時の車両全高を下げられると共に、傾斜矯正の際には当該隙間を大きくして梯子又はブームがキャビン等に干渉することなく傾斜矯正を完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例による梯子搭載車を示す図
図2】同受け装置を示す図
図3】同受け保持部とオイルタンクを示す図
図4】同平地での受け装置による梯子の持ち上げを示す図
図5】同傾斜地で梯子の傾斜矯正を行う状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施の形態による梯子/ブーム搭載車は、車両前部に位置するキャビンと、キャビンよりも後方に位置する車体と、収納時にキャビン又は車体よりも上方において伏臥状態となる梯子又はブームと、下斜板と上斜板を有し傾斜地における梯子又はブームの傾斜矯正に用いるジャイロターンテーブルと、ジャイロターンテーブルに取り付けられ梯子又はブームの後端を支持する支持フレームと、梯子又はブームの後端と先端との間を受け支える受け装置とを備え、受け装置が上方へ伸長することで、伏臥状態の梯子又はブームが持ち上げられ、キャビン又は車体との隙間が広がるものである。
本実施の形態によれば、走行時は受け装置を伸長させないことで車両全高を抑えることができるため、高さ制限のある道路や車庫等についても通行しやすくなる。また、傾斜地でジャイロターンテーブルによる傾斜矯正を行う場合は、受け装置を伸長させて隙間を広げることで梯子又はブームとキャビン又は車体が干渉することなく傾斜矯正を完了させることができる。
【0009】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による梯子/ブーム搭載車において、制御手段を備え、制御手段は、受け装置の伸長途上において、梯子又はブームに伏方向の力が加わるように制御するものである。
本実施の形態によれば、梯子又はブームが、受け装置によって持ち上げられていく途中に受け部から浮いてしまうことを確実に防止できる。また、伏方向の力を制御手段で適正に制御し、受け装置の上昇する力とバランスさせることで受け装置を上昇させることができる。
【0010】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による梯子/ブーム搭載車において、制御手段は、受け装置の伸長途上において、ジャイロターンテーブルの下斜板を上斜板と共に回転させ、下斜板を所定の回転位置に合わせるものである。
本実施の形態によれば、傾斜矯正にかかる時間を短縮することができる。
【0011】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれか一つの実施の形態による梯子/ブーム搭載車において、受け装置は、伏臥状態の梯子又はブームが載る受け部と、受け部を下から保持する受け保持部と、受け保持部の伸縮に用いる受け装置シリンダを備え、受け保持部は、一方の脚部と他方の脚部を有し、受け装置シリンダが、一方の脚部と他方の脚部のそれぞれに収容されているものである。
本実施の形態によれば、受け装置シリンダを分散配置することで、受け装置シリンダを一つとする場合に比べて一つあたりのシリンダ径及び受け保持部の脚部径を細くできる。また、梯子又はブームが載った受け部をスムーズに上昇させやすくなる。
【0012】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による梯子/ブーム搭載車において、一方の脚部と他方の脚部との間に、油を貯留するオイルタンクが設けられているものである。
本実施の形態によれば、比較的大きい設置スペースを要するオイルタンクを脚部間に設けることで、オイルタンクを他の場所に設けるよりも他の機器等の設置スペースを確保しやすくなりレイアウトの自由度が増す。また、受け装置とオイルタンクをユニット化して一体的に取り扱えるため、受け装置やオイルタンクユニットの取り付け作業を従来よりも効率的に行うことができる。
【0013】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による梯子/ブーム搭載車において、受け装置は、キャビンの後面に近接して設けられているものである。
本実施の形態によれば、受け装置とオイルタンクを、キャビンの後面すなわち車体の前部側に配置することで、車体の後部側には他の機器等を配置しやすくなる。
【実施例0014】
以下、本発明の一実施例による梯子/ブーム搭載車について説明する。なお、本実施例では梯子を搭載した梯子搭載車として説明するが、ブームを搭載したブーム搭載車の場合も基本的に同様である。
図1は本実施例による梯子搭載車を示す図である。
梯子搭載車(消防用梯子車)は、車両前部に位置し運転席を有するキャビン10と、キャビン10よりも後方に位置する車体20と、キャビン10及び車体20よりも上方において伏臥した状態で収納される梯子30と、車体20の後部に位置するジャイロターンテーブル40と、ジャイロターンテーブル40の上に位置し梯子30の後端を支持する支持フレーム50と、キャビン10の後面に近接した位置において梯子30を下から受け支える受け装置60と、梯子30の先端に取り付けられたバスケット70と、アウトリガ80を備える。
梯子30には、多段の梯体31と、梯体31の伸縮に用いる伸縮シリンダ32と、梯体31の起伏に用いる起伏シリンダ33と、屈折段の屈折角度の調節に用いる屈折シリンダ34が設けられている。
【0015】
図2は受け装置を示す図であり、図2(a)は伸長していない状態、図2(b)は伸長した状態を示している。図2(a)、(b)において、中央は正面図、左端は左側面図、右端は右側面図である。
受け装置60は、伏臥状態とした梯子30の一部が載る載置面が車両幅方向を長手方向として設けられている受け部61と、受け部61を下から保持する受け保持部62を備える。
受け部61は、上方へ突出した凸部61aを両端に有している。
受け保持部62は、一対の脚部62aと、一対の腕部62bを有する。脚部62aは鉛直に立設し、一方の脚部62aと他方の脚部62aは車両幅方向に並んでおり、その間隔は受け部61の全長よりも小さい。
腕部62bは、一方の脚部62aと他方の脚部62aのそれぞれの上面から受け部61の長手方向中心に向けて斜めに立設しており、一方の腕部62bの上端と他方の腕部62bの上端は受け部61との接続箇所で合流している。
受け部61は、受け保持部62の伸長によって上昇する。受け部61の最大上昇位置は、車両全高や傾斜矯正時における梯子30とキャビン10等との干渉度合い等を考慮して定め、例えば最大下降位置からの距離を200mmとする。
一方の脚部62aと他方の脚部62aのそれぞれには、受け保持部62の伸縮に用いる油圧シリンダとして受け装置シリンダ63が収容されている。受け装置シリンダ63として脚部62a間に一つの油圧シリンダを設けることも可能であるが、本実施例のように受け装置シリンダ63を二つ設けて左右に分散配置することで、受け装置シリンダ63を一つとする場合に比べて一つあたりの受け装置シリンダ63の径及び脚部62aの径を比較的細くできる。また、梯子30が載った受け部61をスムーズに上昇させやすくなる。
【0016】
図3は受け保持部とオイルタンクを示す図である。
一方の脚部62aと他方の脚部62aとの間に生じるスペースには、伸縮シリンダ32、起伏シリンダ33、屈折シリンダ34、及び受け装置シリンダ63等の油圧機器に供給する油が貯留されるオイルタンク90を設けている。比較的大きい設置スペースを要するオイルタンク90を脚部62a間に設けることで、オイルタンク90を他の場所に設けるよりも他の機器等の設置スペースを確保しやすくなりレイアウトの自由度が増す。また、受け装置60とオイルタンク90をユニット化して一体的に取り扱えるため、受け装置60やオイルタンク90の取り付け作業を従来よりも効率的に行うことができる。
また、受け装置60とオイルタンク90をキャビン10の後面に近接して車体20の前部側に配置することで、車体20の後部側には他の機器等を配置しやすくなる。
【0017】
図4は平地での受け装置による梯子の持ち上げを示す図であり、図4(a)は梯子を上昇させていない状態、図4(b)は梯子を上昇させた状態を示している。
収納状態にある梯子30は、後端と先端との間の中間部分が受け部61に載っており、受け保持部62を伸ばしていないときは図4(a)に示すように略水平である。この状態は、受け保持部62を伸ばすことにより梯子30が前上がりとなった状態よりも車両全高が低いため、走行中など梯子30の非使用時は、受け保持部62を伸ばさずに梯子30を略水平とすることで、車両全高を所定の高さ以内に抑え、高さ制限のある道路や車庫等についても通行しやすくなる。
【0018】
車体20に取り付けられたジャイロターンテーブル40は、くさび状の下斜板41と、下斜板41の上に位置するくさび状の上斜板42と、上斜板42の上に位置する円板状の上円板43を有し、傾斜地における梯子30の傾斜矯正に用いられる。下斜板41は上面が斜面、上斜板42は下面が斜面となっており、互いの斜面が接している。上円板43の上には支持フレーム50が取り付けられている。
下斜板41と上斜板42はそれぞれ回転可能であり、下斜板41の回転位置と上斜板42の回転位置の組合せにより上円板43の水平度合いが調整される。傾斜矯正の際は、下斜板41を下斜板41に対して設定された所定の回転位置まで回転させ、下斜板41をその所定の回転位置に固定した状態で、上斜板42を上斜板42に対して設定された所定の回転位置まで回転させる。
なお、下斜板41と上斜板42のそれぞれに与えられる所定の回転位置は、センサによって取得される車体20の傾斜量に基づいて決定される。
【0019】
図5は傾斜地で梯子の傾斜矯正を行う状態を示す図である。図5(a)は、本実施例として、受け保持部の伸長により梯子を持ち上げて傾斜矯正を行った状態を示し、図5(b)は、比較例として、梯子を持ち上げずに傾斜矯正を行いキャビンとの干渉が発生した状態を示している。
傾斜矯正装置は、方式により複数の種類がある。その内、ジャイロターンテーブル方式の傾斜矯正装置は、火災現場等に駐車した梯子搭載車が地面の傾斜によって前後方向又は左右方向に傾いている場合において、消火作業や救出作業等を開始するにあたり、支持フレーム50が取り付けられているジャイロターンテーブル40の上円板43が水平となるように動作する。
ジャイロターンテーブル方式の傾斜矯正装置は、上斜板42と下斜板41を回転させ相対的な回転位置を変えることで傾斜矯正を行うが、傾斜矯正の際の梯子30とキャビン10等との干渉を避けるために、梯子30の下面がキャビン10等の上面から所定以上離れている必要がある。
本実施例において、走行時は、図4(a)に示すように、車両全高をできるだけ低くするべく受け保持部62を伸長させずに受け部61を最大下降位置としているため、梯子30の下面とキャビン10の上面との隙間(クリアランス)は比較的小さくなっている。傾斜矯正の際は、ジャイロターンテーブル40の下斜板41に対する上斜板42の回転により、梯子30の先端側が揺動したり、梯子30が受け部61のローラー上を滑って梯子30と受け部61との接触位置がずれたりするため、傾斜地において走行中における狭い隙間のまま傾斜矯正を行うと、図5(b)に示すように梯子30がキャビン10と干渉してしまう。なお、図5(b)では前上がりの傾斜地での場合を示しているが、前下がりの傾斜地や、左右どちらかに傾斜した傾斜地において傾斜矯正を行う場合も同様の問題が生じる。
【0020】
そこで、ジャイロターンテーブル40による傾斜矯正を行う際は、傾斜地において図4(b)に示すように受け保持部62を伸ばして受け部61を最大上昇位置まで上昇させることにより梯子30の先端側を持ち上げ、梯子30の下面をキャビン10等の上面から十分に離す。
この状態で傾斜矯正を行うことで、ジャイロターンテーブル40の回転によって梯子30の先端側が揺動したり梯子30と受け部61との接触位置がずれたりしても、図5(a)に示すように梯子30とキャビン10等は干渉せず傾斜矯正を完了させることができる。
【0021】
梯子搭載車には制御手段(図示無し)が設けられている。制御手段は、受け保持部62の伸長によって梯子30が持ち上げられている途上においては、起伏シリンダ33によって梯子30に伏方向の力が加わるように制御する。これにより、受け装置60によって持ち上げられていく途中に梯子30が受け部61から浮いてしまうことを確実に防止できる。さらに、梯子30が受け装置60によって持ち上げられていく途中に、伏方向の力を制御手段で適正に制御し、受け装置60の上昇する力とバランスさせることで受け装置60を上昇させることができる。
また、制御手段は、ジャイロターンテーブル40を回転させて傾斜矯正を行っている最中と、作業完了後に梯子30を下げるため受け保持部62を下降させている最中においても、起伏シリンダ33によって梯子30に伏方向の力が加わるように制御する。
【0022】
また、従来のように受け装置が固定であり、梯子30の下面をキャビン10等の上面から十分離した状態で走行する場合は、傾斜地に駐車したときにそのまま傾斜矯正に移行することができた。一方、本発明の梯子搭載車においては、ジャイロターンテーブル40による傾斜矯正を行う前に受け保持部62を伸長させて梯子30を持ち上げる必要があるため、そのままでは従来よりも傾斜矯正にかかる時間が増えてしまう。
そこで、制御部は、受け保持部62の伸長途上において、それと並行して下斜板41を所定の回転位置まで回転させる。制御部は、受け部61が最大上昇位置に到達し、かつ下斜板41が所定の回転位置まで回転したことをセンサにより検知すると、上斜板42を所定の回転位置まで回転させる。これにより、受け部61の上昇が完了するのを待ってジャイロターンテーブル40による傾斜矯正を開始する場合と比べて、傾斜矯正にかかる時間を短縮することができる。
なお、下斜板41が所定の回転位置まで回転するときは、上斜板42も共連れ的に回転するため、下斜板41と上斜板42との相対的な回転位置は変わらず、上円板43の俯仰角は一定である。よって、受け部61の上昇途中に下斜板41を回転させても梯子30がキャビン10と干渉することはない。
【0023】
消火作業等が終了して梯子30が収納位置に戻り梯子30が受け部61に載ると、制御部は、上斜板42を傾斜矯正前の回転位置まで回転させた後、下斜板41を傾斜矯正前の回転位置まで回転させるが、下斜板41を回転させる途上においては、それと並行して受け保持部62を縮める。これにより、下斜板41の回転が完了するのを待って受け保持部62を縮める場合と比べて、撤収作業にかかる時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 キャビン
20 車体
30 梯子
40 ジャイロターンテーブル
41 下斜板
42 上斜板
50 支持フレーム
60 受け装置
61 受け部
62 受け保持部
62a 脚部
63 受け装置シリンダ
90 オイルタンク
図1
図2
図3
図4
図5