IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井上商事株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エキスパンションジョイント 図1
  • 特開-エキスパンションジョイント 図2
  • 特開-エキスパンションジョイント 図3
  • 特開-エキスパンションジョイント 図4
  • 特開-エキスパンションジョイント 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130697
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】エキスパンションジョイント
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035140
(22)【出願日】2022-03-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】592131663
【氏名又は名称】井上商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井上 繁
(72)【発明者】
【氏名】正津 弘喜
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001EA01
2E001FA11
2E001FA54
2E001FA71
2E001GA12
2E001HB01
2E001HB03
2E001HB04
2E001LA01
2E001PA05
(57)【要約】
【課題】地震後に床部の間隔を適切に設定することが可能なエキスパンションジョイントを構成する。
【解決手段】2つの躯体の躯体間隙にフロアとして設置されるエキスパンションジョイントであって、2つの躯体の一方に基端側が支持され、2つの躯体の他方に向けて延出する第1床部10と、2つの躯体の他方側に支持され、第1床部10と面一になるように配置される第2床部20とを備えている。第1床部10が、延出方向の先端に第1端縁14を備え、第2床部20が、第1端縁14に隣接配置される第2端縁21を備え、第2端縁21が、位置調節機構Bにより、他方の躯体に対し延出方向に沿って位置調節自在に支持されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の2つの躯体の躯体間隙にフロアとして設置されるエキスパンションジョイントであって、
2つの前記躯体の一方に基端側が支持され、2つの前記躯体の他方に向けて延出する第1床部と、2つの前記躯体の前記他方に支持され、床面が前記第1床部の床面と面一になるように配置される第2床部とを備え、
前記第1床部が延出方向の先端に第1端縁を備え、前記第2床部が前記第1端縁に隣接して配置される第2端縁を備え、
前記第2端縁が、位置調節機構により、前記他方の前記躯体に対し前記延出方向に沿って位置調節自在に支持されているエキスパンションジョイント。
【請求項2】
前記他方の前記躯体に固設された支持プレートの上面に前記第2端縁が配置され、
前記位置調節機構が、前記支持プレートに対し前記延出方向に沿って形成された長孔と、前記長孔に挿通する雄ネジ部と、前記第2端縁を前記支持プレートに固定するために前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有するネジ機構とを有し、
前記雌ネジ部が、前記支持プレートの下側に配置される、又は,前記第2端縁に貫通する前記雄ネジ部の上端に螺合するナットで構成されている請求項1に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項3】
前記第1端縁と前記第2端縁との少なくとも一方が案内面を有し、
前記第1床部は、前記一方の前記躯体に支持される床部本体と、前記床部本体の先端に形成された回転材を介して前記床部本体に対して上方に揺動自在に支持された揺動体とを有しており、
前記第1端縁は、前記揺動体に取り付けられており、
2つの前記躯体が接近した場合に、前記揺動体が揺動することにより前記案内面の案内によって前記第1端縁が前記第2端縁の上面に乗り上がる請求項1又は2に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項4】
前記揺動体が、前記回転材、又は、前記回転材を構成するフレームに対して着脱自在に支持されている請求項3に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項5】
前記案内面が、前記第1端縁の前記延出方向の端部側ほど厚みが薄くなるように前記第1端縁の下面に形成された第1傾斜面と、前記第2床部の端部側ほど厚みが薄くなるように前記第2端縁の上面に形成された第2傾斜面と、で構成され、
前記第1傾斜面と、前記第2傾斜面とが、平面視で重複する位置に配置されている請求項3又は4に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項6】
構造物の2つの躯体の躯体間隙にフロアとして設置されるエキスパンションジョイントであって、
2つの前記躯体の一方に基端側が支持され、2つの前記躯体の他方に向けて延出する第1床部と、2つの前記躯体の他方に支持され、床面が前記第1床部の床面と面一になるように配置される第2床部とを備え、
前記第1床部は、前記一方の前記躯体に支持される床部本体と、前記床部本体の先端に形成された回転材を介して前記床部本体に対して上方に揺動自在に支持された揺動体と、前記揺動体の延出端に備えた第1端縁とを有し、前記第2床部が、前記第1端縁に隣接配置される第2端縁を備えており、
前記第1端縁と前記第2端縁との少なくとも一方が案内面を有し、
前記第1端縁は、前記揺動体に取り付けられており、
2つの前記躯体が接近した場合に、前記揺動体が揺動することにより前記案内面に案内され、前記第1端縁が前記第2端縁の上面に乗り上がるように構成され、
前記揺動体が、前記回転材、又は、前記回転材を構成するフレームに対して着脱自在に支持されているエキスパンションジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキスパンションジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、免震構造の躯体と、非免震構造の躯体とのクリアランススペースに跨がるようにパネルを有し、このパネルの揺動を可能にするように、免震構造の躯体がパネル支持材によってパネルの基端側を支持し、パネル先端側を、非免震構造の躯体の上面側に配置したエキスパンションジョイントが示されている。
【0003】
この特許文献1では、パネルの上面を、非免震構造の躯体のパネル周辺モルタルの上面と等しい高さに配置しており、地震発生の際にクリアランススペースが狭くなるように夫々の躯体が相対的に変位した場合には、パネルの先端を非免震構造の躯体の傾斜係止部に接触させ、パネルの先端側の上方への変位を可能にしている。
【0004】
特許文献2には、隣り合う2つの建物の躯体の空隙としての目地空間を塞ぐエキスパンションジョイント(床用伸縮継手装置)が示されている。このエキスパンションジョイントは、第1縁材と、第2縁材と、中間パネル部材と、基端側パネル部材と、遊端側パネル部材とを有している。
【0005】
この特許文献2では、第1縁材は一方の躯体に固定され、第2縁材は他方の躯体に固定され、第2縁材には傾斜姿勢の案内面部(第1、第2案内面部)を備えており、遊端側パネル部材には、第2縁材の近傍には上下に揺動自在に補助カバー部を備えている。
【0006】
この構成では、目地空間の離間距離が小さくなった場合には、補助カバー部が第1、第2案内部に案内されて上方へ回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-197051号公報
【特許文献2】特開2012-167454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
2つの躯体の間の空間を跨ぐように床部を配置したエキスパンションジョイントでは、地震により2つの躯体の間の空間の間隔が狭まった際に、特許文献1、2にも示されるように床部(床部の一部を含め)を上方に揺動させる等の変位により、床部に対する圧力の作用を抑制する構成が必要となる。
【0009】
しかしながら、例えば、2つの躯体の夫々に床部を支持し、夫々の床部の間に適切な間隙を形成したエキスパンションジョイントでは、地震後に2つの躯体の間の距離が変化し、2つの床部の間隔が不適正な状態に固定されることになることが懸念される。また、地震により床部の一部が破損することも懸念される。
【0010】
このような理由から、地震後に床部の間隔を適切に設定できるエキスパンションジョイント、及び、地震後に床部の破損に対応できるエキスパンションジョイントが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るエキスパンションジョイントの特徴構成は、構造物の2つの躯体の躯体間隙にフロアとして設置されるエキスパンションジョイントであって、2つの前記躯体の一方に基端側が支持され、2つの前記躯体の他方に向けて延出する第1床部と、2つの前記躯体の前記他方に支持され、床面が前記第1床部の床面と面一になるように配置される第2床部とを備え、前記第1床部が延出方向の先端に第1端縁を備え、前記第2床部が、前記第1端縁に隣接して配置される第2端縁を備え、前記第2端縁が、位置調節機構により、前記他方の前記躯体に対し前記延出方向に沿って位置調節自在に支持されている点にある。
【0012】
この特徴構成によると、地震が発生した場合には一方側の躯体に支持された第1床部と、他方側の躯体に支持された第2床部との相対的な移動が可能であり、第1床部と第2床部とに地震によって直接作用する力を低減できる。また、地震が収まった後に第1端縁と第2端縁との間隔が適正な値から外れた場合には、位置調節機構によって第2端縁の位置を調節し、この第2端縁と第1端縁との間隙を適正な値に再設定することが可能となる。
従って、地震後に床部の間隔を適切に設定できるエキスパンションジョイントが構成された。
【0013】
上記構成に加えた構成として、前記他方の前記躯体に固設された支持プレートの上面に前記第2端縁が配置され、前記位置調節機構が、前記支持プレートに対し前記延出方向に沿って形成された長孔と、前記長孔に挿通する雄ネジ部と、前記第2端縁を前記支持プレートに固定するために前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有するネジ機構とを有し、前記雌ネジ部が、前記支持プレートの下側に配置される、又は,前記第2端縁に貫通する前記雄ネジ部の上端に螺合するナットで構成されても良い。
【0014】
この構成では、通常の場合、ネジ機構によって支持プレートに第2端縁の固定される状態にある。地震の後に、第1端縁と第2端縁との間隔を適正に戻す場合には、ネジ機構の操作により固定状態を解除し、第2端縁を支持プレートの長孔に沿って位置を変更して適正な間隔に設定し、この後、ネジ機構によって支持プレートに第2端縁を固定することにより第1端縁と第2端縁との隙間を適正な状態に調節することが可能となる。
【0015】
上記構成に加えた構成として、前記第1端縁と前記第2端縁との少なくとも一方が案内面を有し、前記第1床部は、前記一方の前記躯体に支持される床部本体と、前記床部本体の先端に形成された回転材を介して前記床部本体に対して上方に揺動自在に支持された揺動体とを有しており、前記第1端縁は、前記揺動体に取り付けられており、2つの前記躯体が接近した場合に、前記揺動体が揺動することにより前記案内面の案内によって前記第1端縁が前記第2端縁の上面に乗り上がっても良い。
【0016】
これによると、地震時に第1端縁と、第2端縁とが接触する方向に変位した場合には、第1端縁と第2端縁との少なくとも一方が案内面に接触することで、第2端縁の上方へ変位させる力を作用させ、回転材が揺動体の上方への揺動を可能にすることにより、第1端縁と第2端縁とが接触して破損する不都合が抑制される。
【0017】
上記構成に加えた構成として、前記揺動体が、前記回転材、又は、前記回転材を構成するフレームに対して着脱自在に支持されても良い。
【0018】
これによると、地震により第1端縁と第2端縁とが接近する方向に変位し、例えば、第1床部が上方に変位する場合に、床部の上面に配置されていた載置物に接触すること等により、上方への変位が充分に行われず、第1床部の揺動体や第1端縁が変形、あるいは、破損した場合には揺動体と第2端縁とを同時に交換することによりフロアを平坦な状態に維持できる。
【0019】
上記構成に加えた構成として、前記案内面が、前記第1端縁の前記延出方向の端部側ほど厚みが薄くなるように前記第1端縁の下面に形成された第1傾斜面と、前記第2床部の端部側ほど厚みが薄くなるように前記第2端縁の上面に形成された第2傾斜面と、で構成され、前記第1傾斜面と、前記第2傾斜面とが、平面視で重複する位置に配置されても良い。
【0020】
これによると、第1傾斜面と第2傾斜面とが平面視で重なるように配置されることにより、地震時に第1端縁と第2端縁とが接近する方向に変位した場合に、第1傾斜面が第2傾斜面に乗り上がり、第1端縁と第2端縁とを破損させることなく、第1床部の揺動を容易に行わせる。
【0021】
本発明に係るエキスパンションジョイントの特徴構成は、構造物の2つの躯体の躯体間隙にフロアとして設置されるエキスパンションジョイントであって、2つの前記躯体の一方に基端側が支持され、2つの前記躯体の他方に向けて延出する第1床部と、2つの前記躯体の他方に支持され、床面が前記第1床部の床面と面一になるように配置される第2床部とを備え、前記第1床部は、前記一方の前記躯体に支持される床部本体と、前記床部本体の先端に形成された回転材を介して前記床部本体に対して上方に揺動自在に支持された揺動体と、前記揺動体の延出端に備えた第1端縁とを有し、前記第2床部が、前記第1端縁に隣接配置される第2端縁を備えており、前記第1端縁と前記第2端縁との少なくとも一方が案内面を有し、前記第1端縁は、前記揺動体に取り付けられており、2つの前記躯体が接近した場合に、前記揺動体が揺動することにより前記案内面に案内され、前記第1端縁が前記第2端縁の上面に乗り上がるように構成され、前記揺動体が、前記回転材、又は、前記回転材を構成するフレームに対して着脱自在に支持されている点にある。
【0022】
この特徴構成によると、地震が発生した場合には一方側の躯体に支持された第1床部と、他方側の躯体に支持された第2床部との相対的な移動が可能であり、第1床部と第2床部とに地震によって直接作用する力を低減できる。また、地震時に第1端縁と、第2端縁とが接触する方向に変位した場合には、第1端縁と第2端縁との少なくとも一方が案内面に接触することで、回転材が揺動によって揺動体の上方への変位を可能にする。例えば、第1床部が上方に変位する場合に、床部の上面に配置されていた載置物に接触すること等により、上方への変位が充分に行われず、第1床部の揺動体や第1端縁が変形、あるいは、破損した場合には揺動体と第2端縁とを同時に交換することによりフロアを平坦な状態に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】エキスパンションジョイントの縦断側面図である。
図2】回転材、揺動体、第1エッジ、第2エッジを示す断面図である。
図3】第1エッジが第2エッジに乗り上げた状態を示す断面図である。
図4】地震後に第1エッジと第2エッジとが離間した状態と、第2エッジの位置を調節した状態との断面図である。
図5】回転材の軸部フレームに対して揺動体を着脱する際の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、建造物を構成するRCコンクリートで成る第1躯体1と第2躯体2とが躯体間隙Sを挟んで隣接する位置関係に配置され、第1躯体1と第2躯体2の上面で躯体間隙Sを跨ぐ領域にフロアとして機能するエキスパンションジョイントAが備えられている。
【0025】
このエキスパンションジョイントAは、第1躯体1に基端側が支持され、第2躯体2側の方向に延出する第1床部10と、第2躯体2に支持され、且つ、床面が第1床部10の床面と面一となるように配置された第2床部20とを有している。また、第1床部10の下側に第1躯体1と第2躯体2とに亘って躯体間隙Sを塞ぐシート材3を備えている。
【0026】
エキスパンションジョイントAにおいて、第1床部10と第2床部20とが対向して並ぶ方向(図1図2では左右方向)を、第1床部10、第2床部20の夫々の長さ方向と称し、この長さ方向と直交する方向(図1図2の紙面に対して直交する方向を、第1床部10、第2床部20の夫々の幅方向)と称する。尚、第1床部10と第2床部20とは幅方向で所定の寸法を有している。
【0027】
図1に示すように、第1躯体1のうち躯体間隙Sに露出する側面と、この第1躯体1の上面とが成す角部に支持フレーム5が固設されている。この支持フレーム5は、断面形状が角パイプ状で第1床部10の幅方向に延びる姿勢で配置され、この支持フレーム5に第1床部10の基端部が支持されている。
【0028】
図1図3に示すように、第2躯体2の上面に、鋼材で成るガイドフレーム6が複数のアンカー部材6aによって水平姿勢で固定されている。第2躯体2において、ガイドフレーム6のうち躯体間隙Sから離間する方向の端部側にモルタルで成る載置部7が水平姿勢で形成されている。この載置部7は平滑面に仕上げられ、この載置部7の上面に第2床部20が支持されている。
【0029】
更に、図1図4に示すように、ガイドフレーム6の上面のうち、第1床部10の延出端近傍から、第2床部20に亘る領域にステンレス材等の金属材で成る支持プレート8を備えている。この支持プレート8は、ガイドフレーム6の上面に沿う高さの第1平滑面8aと、第1床部10のうち、本体プレート12a(この構成については後述する)の下面に沿う第2平滑面8bと、これら第1平滑面8aと第2平滑面8bとを結ぶ傾斜姿勢の傾斜面8cとがプレス加工等(曲げ加工を含む)により形成されている。
【0030】
ガイドフレーム6の上面には、第1床部10を円滑に滑動させるフッ素樹脂材等を含む低摩擦係数の滑動板6Pを備えている。
【0031】
〔第1床部〕
図1図3に示すように、第1床部10は、支持フレーム5に基端部が支持される床部本体11と、この床部本体11の延出側に配置される揺動体12と、床部本体11に対し揺動体12を上下方向の揺動自在に連結する回転材13とを有し、揺動体12の延出側の端部に第2床部20の方向に延出する第1エッジ14(第1端縁の一例)を備えている。
【0032】
第1エッジ14は、アルミニウム材やステンレス材等で形成され、延出側ほど薄くなるように下面側に第1傾斜面14S(案内面の一例)が形成されている。床部本体11は、アルミ押し出し型材を組み合わせたコアとして構成されている。この床部本体11の上面にタイルカーペットや長尺シートの化粧材を用いたフロア材Fが接着により張り付けられ、この床部本体11の底面にステンレス材が張られている。
【0033】
床部本体11の基端側に基端側ブラケット15が備えられ、この基端側ブラケット15には、支持フレーム5の方向に突出する水平姿勢のブラケットプレート15aが一体的に形成されている。また、支持フレーム5には、ブラケットプレート15aの下側に突出する水平姿勢の支持部5aが一体形成され、この支持部5aの延出端に上方に立ち上がる規制部5bが一体形成されている。
【0034】
図1に示すように、ブラケットプレート15aと支持部5aとの間にローラ16が配置されている。このローラ16は、縦向き姿勢の支軸によってブラケットプレート15aに対して回転自在に支持されている。このローラ16の下面が支持部5aに当接し、外周面が規制部5bに当接している。
【0035】
この構成により、地震時に第1躯体1に対し、第1床部10が幅方向へ相対変位した場合には、基端側ブラケット15に対して床部本体11の幅方向への変位が許容される。
【0036】
尚、このエキスパンションジョイントAでは、ローラ16に代えて、滑動製が良好なスライド部材を用いることも可能である。
【0037】
図2図3に示すように、揺動体12は、金属板で成る本体プレート12aを有し、この本体プレート12aの延出端に第1エッジ14が第1ネジSC1によって着脱自在に備えられている。また、本体プレート12aの上面に、床部本体11の上面と同様のフロア材Fが接着状態で備えられている。
【0038】
図2図3に示すように、床部本体11の先端に先端側ブラケット17を備えている。回転材13は、先端側ブラケット17に支持される軸受部13aと、揺動体12の本体プレート12aに支持される軸状の軸体部13bとで構成されている。
【0039】
具体的な構成として、回転材13は、軸受部13aのフレーム部が先端側ブラケット17に対して第2ネジSC2によって連結固定されている。また、軸体部13bと一体的に形成された軸部フレーム13bfが、本体プレート12aに対して第3ネジSC3によって着脱自在に連結されている。
【0040】
軸受部13aは、断面C字状の挟持構造を有し、軸体部13bは、軸受部13aの断面C字状の挟持構造に対して回動自在に収容されている。軸体部13bを軸受部13aの断面C字状の挟持構造に収容するように夫々を配置することにより、軸体部13bの軸体部分を中心にして、軸受部13aに対し、軸体部13bの回動が可能となり、結果として揺動体12の揺動を実現している。
【0041】
これら軸受部13aと、軸体部13bとは、アルミニウム材や、ステンレス材等の金属材で構成されるものを想定しているが、樹脂で構成されるものでも良い。
【0042】
特に、この第1床部10では、第1エッジ14の上面、本体プレート12aに備えたフロア材Fの上面、先端側ブラケット17の上面、床部本体11に備えたフロア材Fの上面が平坦に連なるように夫々の高さが決められている。
【0043】
図1に示すように、支持フレーム5の上部開口を閉塞するように上部プレート5Tが備えられており、この上部プレート5Tの上面が床部本体11に備えたフロア材Fの上面と等しい高さに設定されている。
【0044】
〔第2床部〕
図2図4に示すように、第2床部20は、第1エッジ14に隣接する位置に配置される第2エッジ21(第2端縁の一例)と、これに連なる位置で載置部7の上面に配置されるフロア材Fと、第2エッジ21に隣接する位置でフロア材Fの下側に配置されるスペーサ25と、位置調節機構Bとを備えている。このフロア材Fは第2エッジ21の上面から載置部7の上面に接着されている。
【0045】
第2エッジ21は、アルミニウム材やステンレス材等で形成され、端部側(第1床部10に向かう側)は、端部側ほど薄くなるように上面側に第2傾斜面21S(案内面の一例)が形成されている。
【0046】
また、第1エッジ14と第2エッジ21とは、第1傾斜面14Sと第2傾斜面21Sとが、互いに向かい合う位置関係で、平面視で一部が重複する位置に配置される。スペーサ25は、ゴムや樹脂のように柔軟に変形し得る材料が用いられている。このスペーサ25は、支持プレート8の第2平滑面8bの上面とフロア材Fの下面とに挟まれる位置に配置され、フロア材Fの弛みを抑制する。
【0047】
位置調節機構Bは、地震の後に図4の(a)に示すように、第1エッジ14と第2エッジ21との間の間隙が変化した場合に、第2床部20の長さ方向に第2エッジ21を移動させる位置調節により、第1エッジ14と第2エッジ21との間隙を図4の(b)に示す適正な値に設定できるように構成されている。
【0048】
この位置調節機構Bでは、雄ネジ部としての調節ネジ23と、雌ネジ部22とでネジ機構が構成されている。
【0049】
具体的な構成として、位置調節機構Bは、支持プレート8の第2平滑面8bに対し、第1床部10の延出方向に沿う方向に延びる長孔8hと、第2平滑面8bの下側に配置され、長孔8hが延びる方向(長さ方向)に沿って移動自在な雌ネジ部22と、第2エッジ21から長孔8hを上下方向に挿通し、雌ネジ部22に螺合する調節ネジ23(雄ネジ部の一例)とで構成されている。
【0050】
第1エッジ14と第2エッジ21とは、所定の幅を有する金属や樹脂の板材で構成されている。第2エッジ21は、調節ネジ23が挿通する貫通孔が幅方向において設定間隔で形成されている。このような貫通孔の間隔と等間隔で複数の長孔8hが形成され、これと同様に、貫通孔の間隔と等間隔で複数の雌ネジ部(ネジ孔)が雌ネジ部22に形成されている。
【0051】
この位置調節機構Bでは、雌ネジ部22が幅方向に延びる姿勢で配置された金属製のチャンネル材を用いており、この雌ネジ部22の移動可能な空間を確保するために、上方に開放する樋状の空間フレーム24を、支持プレート8の下側で、ガイドフレーム6の上面に接する位置に配置している。なお、雌ネジ部22は、1つのネジ孔に形成されたものが、貫通孔の数と同数有するように構成されてもよい。
【0052】
〔地震後の対応〕
このようにエキスパンションジョイントAが構成されることにより、地震により躯体間隙Sの間隔が拡大する際には、第1躯体1と第2躯体2との移動に伴い、第1エッジ14と第2エッジ21とが離間する。
【0053】
このように躯体間隙Sの間隔が拡大する際には、第1エッジ14が支持プレート8の第2平滑面8bから傾斜面8cの上面を通過し、第1平滑面8aの上面に達することもある。
【0054】
この後に、躯体間隙Sの間隔が縮小する際には、第1エッジ14が支持プレート8の第1平滑面8aから傾斜面8cの上面を通過し、第2平滑面8bの上面に達する。このように第1エッジ14が第1平滑面8aと第2平滑面8bとの間で移動する際に、第1エッジ14の上下方向への変位を回転材13が揺動体12可能にしている。
【0055】
また、地震により躯体間隙Sの間隔が縮小する際には、第1躯体1と第2躯体2との移動に伴い、第1エッジ14と第2エッジ21とが接近し、図3に示すように、第1エッジ14の第1傾斜面14Sが、第2エッジ21の第2傾斜面21Sに接触して乗り上がることもある。このように乗り上がる際に、第1エッジ14の上方への変位を回転材13が可能にする。
【0056】
特に、地震による揺れが収まった後に、図4の(a)に示すように、第1エッジ14と第2エッジ21との間隔が適正な値から外れた状態に達することもあっても、位置調節機構Bが、図4(b)に示すように、第1エッジ14と第2エッジ21との間隔を適正な値に調節(再設定)できる。
【0057】
具体的には、第2エッジ21の上面のフロア材Fを人為的に剥がし、人為操作によって調節ネジ23を緩め、第2エッジ21と雌ネジ部22とを一体的に移動させ、第1エッジ14と第2エッジ21との間隔を適正に設定する。この後、調節ネジ23の人為操作によって第2エッジ21と雌ネジ部22との間に支持プレート8の第2平滑面8bを挟み込む状態で締結する。尚、このように操作した状態において、必要な場合、第2床部20のフロア材Fを交換することや、端部を切断する等、延出方向でのフロア材Fの長さの調節が行われる。また、必要な場合、図4(b)に示すように、スペーサ25は、第2エッジ21の位置に対応したサイズのものに交換される。
【0058】
このような対応のほかに、地震により躯体間隙Sの間隔が縮小した際に、第1エッジ14と第2エッジ21とが強く接触し、揺動体12の本体プレート12aが変形することや、第1エッジ14が破損することも考えられる。
【0059】
このエキスパンションジョイントAは、このような場合には、第3ネジSC3の操作によって、図5に示すように回転材13の軸部フレーム13bfから揺動体12を取り外し、揺動体12の交換を行うことも可能に構成されている。
【0060】
このように揺動体12の交換により、変形のない揺動体12の利用が可能となる。
【0061】
〔実施形態の作用効果〕
このように、エキスパンションジョイントAは、地震によって第1エッジ14(第1端縁)と第2エッジ21(第2端縁)とが相対的に接近する場合には、回転材13が第1床部10の揺動体12の揺動を許すことにより、第2エッジ21に対し第1エッジ14の乗り上がりを許し、第1端縁と第2端縁とを破損させることがなく、第1床部10と第2床部20との間での強い力が作用する不都合も抑制する。
【0062】
また、地震によって第1エッジ14と第2エッジ21と離間した場合には、第1エッジ14が支持プレート8の第2平滑面8bから傾斜面8cの上面を通過し、第1平滑面8aの上面に達することにより、第1床部10と第2床部20との相対変位を可能にしており、このように変位する際には、回転材13が第1床部10の揺動体12の揺動を許する。
【0063】
また、地震が収まった後に、第1エッジ14と第2エッジ21との間隔が変化した場合には、位置調節機構Bによって長さ方向に第2エッジ21の位置を調節することにより第1エッジ14と第2エッジ21とを適切な位置関係に配置し、これらの間隔を設定された値にする。
【0064】
更に、地震によって揺動体12や第1エッジ14が変形した場合には、地震が収まった後に揺動体12を交換することにより平坦なフロア面を維持することが可能となる。
【0065】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0066】
(a)第2床部20を、第1床部10の床部本体11と同様の本体構造を備え、この本体構造の端部に第2エッジ21(第2端縁)を備えて構成することも可能である。
【0067】
(b)位置調節機構Bを、実施形態の雌ネジ部22の位置にスライド部材を備え、このスライド部材から上方に突出する雄ネジ部を備え、この雄ネジ部を、支持プレート8の長孔8hと、第2エッジ21の貫通孔に挿通し、このように貫通した雄ネジ部に螺合するナットを第2エッジ21の上面に配置するようにネジ機構を構成しても良い。
【0068】
この別実施形態(b)の構成では、第2エッジ21の上面に雄ネジ部の端部や、ナットが突出しないように、第2エッジ21の上面に凹状部を形成する等の構造を必要とするものの、ナットの操作により実施形態に記載した位置調節機構Bと同様に第2エッジ21の位置調節が可能となる。
【0069】
(c)位置調節機構Bを構成する、支持プレート8として、実施形態では傾斜面8cが形成された部材の一部を用いていたが、これに代えて第2エッジ21(第2端縁)の下側に位置調節機構Bの専用の板材を支持プレートとして配置しても良い。
【0070】
(d)第1エッジ14(第1端縁)と第2エッジ21(第2端縁)との一方にだけ傾斜姿勢の案内面を形成しても良い。このように一方にだけ案内面を形成する構成であっても、第1エッジ14と第2エッジ21と乗り上がりを可能にする。
【0071】
(e)第1床部10の揺動体12の交換を容易にするため、回転材13の軸部フレーム13bfにボルトを設け、このボルトが挿通する孔部を本体プレート12aに形成し、この本体プレート12aを挿通したボルトにナットを螺合させるように構成しても良い。
【0072】
(f)第1床部10の揺動体12の交換を可能にするため、例えば、軸体部13bを断面C字状の軸受部13aから分離する等の構成により、回転材13の一部と本体プレート12aとを一体的に取り外し、交換する場合には、回転材13の一部を予め備えた本体プレート12aに装着するように構成することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、構造物の2つの躯体の躯体間隙にフロアとして設置されるエキスパンションジョイントに利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 躯体
2 躯体
8 支持プレート
8h 長孔
10 第1床部
12 揺動体
13 回転材
14 第1エッジ(第1端縁)
14S 第1傾斜面(案内面)
20 第2床部
21 第2エッジ(第2端縁)
21S 第2傾斜面(案内面)
22 雌ネジ部
23 調節ねじ(雄ネジ部)
A エキスパンションジョイント
B 位置調節機構
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の2つの躯体の躯体間隙にフロアとして設置されるエキスパンションジョイントであって、
2つの前記躯体の一方に基端側が支持され、2つの前記躯体の他方に向けて延出する第1床部と、2つの前記躯体の前記他方に支持され、床面が前記第1床部の床面と面一になるように配置される第2床部とを備え、
前記第1床部が延出方向の先端に第1端縁を備え、前記第2床部が前記第1端縁に隣接して配置される第2端縁を備え、
前記第2端縁が、位置調節機構により、前記第2床部に対し前記延出方向に沿って位置調節自在に支持されているエキスパンションジョイント。
【請求項2】
前記他方の前記躯体に固設された支持プレートの上面に前記第2端縁が配置され、
前記位置調節機構が、前記支持プレートに対し前記延出方向に沿って形成された長孔と、前記長孔に挿通する雄ネジ部と、前記第2端縁を前記支持プレートに固定するために前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有するネジ機構とを有し、
前記雌ネジ部が、前記支持プレートの下側に配置される、又は,前記第2端縁に貫通する前記雄ネジ部の上端に螺合するナットで構成されている請求項1に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項3】
前記第1端縁と前記第2端縁との少なくとも一方が案内面を有し、
前記第1床部は、前記一方の前記躯体に支持される床部本体と、前記床部本体の先端に形成された回転材を介して前記床部本体に対して上方に揺動自在に支持された揺動体とを有しており、
前記第1端縁は、前記揺動体に取り付けられており、
2つの前記躯体が接近した場合に、前記揺動体が揺動することにより前記案内面の案内によって前記第1端縁が前記第2端縁の上面に乗り上がる請求項1又は2に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項4】
前記揺動体が、前記回転材、又は、前記回転材を構成するフレームに対して着脱自在に支持されている請求項3に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項5】
前記案内面が、前記第1端縁の前記延出方向の端部側ほど厚みが薄くなるように前記第1端縁の下面に形成された第1傾斜面と、前記第2床部の端部側ほど厚みが薄くなるように前記第2端縁の上面に形成された第2傾斜面と、で構成され、
前記第1傾斜面と、前記第2傾斜面とが、平面視で重複する位置に配置されている請求項3又は4に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項6】
構造物の2つの躯体の躯体間隙にフロアとして設置されるエキスパンションジョイントであって、
2つの前記躯体の一方に基端側が支持され、2つの前記躯体の他方に向けて延出する第1床部と、2つの前記躯体の他方に支持され、床面が前記第1床部の床面と面一になるように配置される第2床部とを備え、
前記第1床部は、前記一方の前記躯体に支持される床部本体と、前記床部本体の先端に形成された回転材を介して前記床部本体に対して上方に揺動自在に支持された揺動体と、前記揺動体の延出端に備えた第1端縁とを有し、前記第2床部が、前記第1端縁に隣接配置される第2端縁を備えており、
前記第1端縁と前記第2端縁との少なくとも一方が案内面を有し、
前記第1端縁は、前記揺動体に取り付けられており、
2つの前記躯体が接近した場合に、前記揺動体が揺動することにより前記案内面に案内され、前記第1端縁が前記第2端縁の上面に乗り上がるように構成され、
前記揺動体が、前記回転材、又は、前記回転材を構成するフレームに対して着脱自在に支持されているエキスパンションジョイント。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明に係るエキスパンションジョイントの特徴構成は、構造物の2つの躯体の躯体間隙にフロアとして設置されるエキスパンションジョイントであって、2つの前記躯体の一方に基端側が支持され、2つの前記躯体の他方に向けて延出する第1床部と、2つの前記躯体の前記他方に支持され、床面が前記第1床部の床面と面一になるように配置される第2床部とを備え、前記第1床部が延出方向の先端に第1端縁を備え、前記第2床部が、前記第1端縁に隣接して配置される第2端縁を備え、前記第2端縁が、位置調節機構により、前記第2床部に対し前記延出方向に沿って位置調節自在に支持されている点にある。