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特開2023-130771水中油型乳化クリーム、菓子及びパン、並びに水中油型乳化クリームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130771
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】水中油型乳化クリーム、菓子及びパン、並びに水中油型乳化クリームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20230913BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20230913BHJP
   A21D 13/30 20170101ALI20230913BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20230913BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20230913BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20230913BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20230913BHJP
【FI】
A23D7/00 504
A23L9/20
A21D13/30
A23L29/256
A23L29/219
A23L29/269
A23L29/238
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035251
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 隆志
【テーマコード(参考)】
4B025
4B026
4B032
4B041
【Fターム(参考)】
4B025LB20
4B025LD03
4B025LG14
4B025LG15
4B025LG28
4B025LG29
4B025LG32
4B025LK01
4B025LK02
4B025LP10
4B026DC06
4B026DG02
4B026DH01
4B026DK01
4B026DK03
4B026DL04
4B026DL08
4B026DX04
4B032DB40
4B032DE06
4B032DK10
4B032DK13
4B032DK15
4B032DK17
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK44
4B032DK67
4B032DL03
4B041LC03
4B041LC06
4B041LD01
4B041LH02
4B041LH07
4B041LH10
4B041LH16
4B041LK14
4B041LK37
4B041LP04
(57)【要約】
【課題】極めて口溶けが良く、後残りも無いのに、常温において保形性と離水耐性に優れた水中油型乳化クリームを提供すること。
【解決手段】水中油型乳化クリームであって、前記水中油型乳化クリーム全体中、水20~40重量%、油脂10~20重量%、ホエイタンパク質0.1~2.5重量%、乳化剤0.1~1重量%、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.1~2.5重量%、キサンタンガム、タマリンド、サクシノグリカン、グアガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤0.1~1重量%、糖類(固形分含量)40~55重量%、及び2価陽イオン0.015~0.09重量%を含有し、前記油脂は、10℃のSFCが75~100%、30℃のSFCが25~45%であり、前記2価陽イオン/前記ホエイタンパク質(重量比)が1/99~20/80であり、20℃における比重が0.9~1.2であり、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径が5~20μmである、水中油型乳化クリーム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型乳化クリームであって、
前記水中油型乳化クリーム全体中、水20~40重量%、油脂10~20重量%、ホエイタンパク質0.1~2.5重量%、乳化剤0.1~1重量%、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.1~2.5重量%、キサンタンガム、タマリンド、サクシノグリカン、グアガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤0.1~1重量%、糖類(固形分含量)40~55重量%、及び2価陽イオン0.015~0.09重量%を含有し、
前記油脂は、10℃のSFCが75~100%、30℃のSFCが25~45%であり、
前記2価陽イオン/前記ホエイタンパク質(重量比)が1/99~20/80であり、
20℃における比重が0.9~1.2であり、
脂肪球が結着した凝集体のメジアン径が5~20μmである、水中油型乳化クリーム。
【請求項2】
請求項1に記載の水中油型乳化クリームを含む、菓子及びパン。
【請求項3】
水中油型乳化油脂組成物全体中、ホエイタンパク質0.11~4.1重量%、親水性の乳化剤0~1重量%、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.11~4.1重量%、キサンタンガム、タマリンド、サクシノグリカン、グアガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤0.11~1.6重量%、糖類(固形分含量)41~70重量%、及び水20~50重量%となるように水相の各原料を混合し、40~60℃になるまで加熱して水相を得る工程、及び
水中油型乳化油脂組成物全体中、親油性の乳化剤0~1重量%、及び10℃のSFCが75~100%、30℃のSFCが25~45%である油脂10.1~33.3重量%となるように油相の各原料を混合し、40~80℃になるまで加熱して油相を得る工程を有し、
前記油相を前記水相に添加して混合した後、均質化処理により乳化して、親水性の乳化剤及び親油性の乳化剤の合計含有量が0.11~1.6重量%である水中油型乳化油脂組成物を得、
2価陽イオン/前記ホエイタンパク質(重量比)が1/99~20/80となるように、前記水中油型乳化油脂組成物と、前記2価陽イオンを含む溶液とを0~40℃で攪拌速度0.08~1.7s-1にて1~10分間混合した後、0~25℃で0.5時間以上静置することを特徴とする、水中油型乳化クリームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化クリーム、菓子及びパン、並びに水中油型乳化クリームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製菓又は製パン分野において使用される水中油型乳化形態のフィリングとして、カスタードクリームやホイップドクリームなどが上市されており、それぞれのフィリングは特有の食感と長期間持続する保形性や離水耐性を有している。しかしながら、近年は一般消費者のニーズが多様化しているため、充分な対応はできていない。
【0003】
特許文献1では、水、油脂、リン脂質、乳蛋白質、カルシウム、ならびに、低粘性アルギン酸などからなる群から選ばれた少なくとも1種を含有し、pHが2.5~6であることを特徴とする、良好な風味と滑らかな食感を有し、口溶けが良く、また季節によりその外観、物性および風味に大きな変化が生じにくく、保存性が良好で、使い勝手の良い可塑性水中油型乳化組成物が開示されている。しかしながら、組成物中の脂肪球が凝集ではなく分散した構造を取り、また、全ての実施例で液油を配合しているため、口に入れた瞬間から短時間で消失する食感を十分に満足するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-357699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
我々は、一般消費者のニーズの多様化に応えるべく、今までにない良好な口溶けであるにも関わらず、常温でも保形性、離水耐性のあるフィリングを検討してきた。そこで本発明の目的は、極めて口溶けが良く、後残りも無いのに、常温において保形性と離水耐性に優れた水中油型乳化クリームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水と特定の油脂を特定量含み、ホエイタンパク質、乳化剤、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、特定の増粘剤、糖類、及び2価陽イオンをそれぞれ特定量含み、20℃における比重が特定範囲であり、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径が特定範囲である水中油型乳化クリームは、極めて口溶けが良く、後残りも無いのに、常温において保形性と離水耐性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第一は、水中油型乳化クリームであって、前記水中油型乳化クリーム全体中、水20~40重量%、油脂10~20重量%、ホエイタンパク質0.1~2.5重量%、乳化剤0.1~1重量%、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.1~2.5重量%、キサンタンガム、タマリンド、サクシノグリカン、グアガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤0.1~1重量%、糖類(固形分含量)40~55重量%、及び2価陽イオン0.015~0.09重量%を含有し、前記油脂は、10℃のSFCが75~100%、30℃のSFCが25~45%であり、前記2価陽イオン/前記ホエイタンパク質(重量比)が1/99~20/80であり、20℃における比重が0.9~1.2であり、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径が5~20μmである、水中油型乳化クリームに関する。本発明の第二は、前記水中油型乳化クリームを含む、菓子及びパンに関する。本発明の第三は、水中油型乳化油脂組成物全体中、ホエイタンパク質0.11~4.1重量%、親水性の乳化剤0~1重量%、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.11~4.1重量%、キサンタンガム、タマリンド、サクシノグリカン、グアガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤0.11~1.6重量%、糖類(固形分含量)41~70重量%、及び水20~50重量%となるように水相の各原料を混合し、40~60℃になるまで加熱して水相を得る工程、及び水中油型乳化油脂組成物全体中、親油性の乳化剤0~1重量%、及び10℃のSFCが75~100%、30℃のSFCが25~45%である油脂10.1~33.3重量%となるように油相の各原料を混合し、40~80℃になるまで加熱して油相を得る工程を有し、前記油相を前記水相に添加して混合した後、均質化処理により乳化して、親水性の乳化剤及び親油性の乳化剤の合計含有量が0.11~1.6重量%である水中油型乳化油脂組成物を得、2価陽イオン/前記ホエイタンパク質(重量比)が1/99~20/80となるように、前記水中油型乳化油脂組成物と、前記2価陽イオンを含む溶液とを0~40℃で攪拌速度0.08~1.7s-1にて1~10分間混合した後、0~25℃で0.5時間以上静置することを特徴とする、水中油型乳化クリームの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、極めて口溶けが良く、後残りも無いのに、常温において保形性と離水耐性に優れた水中油型乳化クリームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、更に詳細に説明する。本発明の水中油型乳化クリームは、水と特定の油脂を特定量含み、ホエイタンパク質、乳化剤、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、特定の増粘剤、糖類、及び2価陽イオンをそれぞれ特定量含み、20℃における比重が特定範囲であり、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径が特定範囲である。
【0010】
前記水中油型乳化クリームは、水を水中油型乳化クリーム全体中20~40重量%含むことが好ましく、22~39重量%がより好ましく、25~38重量%が更に好ましい。水の含有量が20重量%未満であると、口溶けが悪くなる場合がある。また水の含有量が40重量%を超えると、保形性や離水耐性が悪くなる場合がある。
【0011】
前記水中油型乳化クリームは、油脂を水中油型乳化クリーム全体中10~20重量%含むことが好ましく、12~19重量%がより好ましく、14~17重量%が更に好ましい。油脂含有量が10重量%未満であると保形性や離水耐性が悪くなる場合があり、20重量%を超えると口に入れた瞬間からの溶け始めの良さや消失のし易さが悪くなる場合がある。
【0012】
前記油脂のSFCは、10℃で75~100%、30℃で25~45%であることが好ましく、10℃で85~100%、30℃で28~43%であることがより好ましく、10℃で90~100%、30℃で30~40%であることが更に好ましい。10℃におけるSFCが75%未満であると保形性が低下する場合がある。また、30℃におけるSFCが25%未満であると保形性が低下する場合があり、45%を越えると口に入れた瞬間からの溶け始めの良さが悪くなったりする場合がある。なお、前記SFCは、IUPAC 2.150(a)に準じて測定できる。
【0013】
前記油脂は、食用油脂であれば特に限定されず、例えばパーム系油脂、ラウリン系油脂、牛脂、豚脂、及び魚油等、並びにそれらの油脂の分別油、エステル交換油、及び極度硬化油等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。そして前記油脂は、前記SFCを満たすのであれば、単独の油脂でも良いし、複数種の油脂のブレンドでも構わない。
【0014】
前記パーム系油脂は、パーム油を原料とした油脂であれば特に限定は無いが、例えばパーム油、パーム分別油、パーム極度硬化油及びそれらをエステル交換した油脂等が挙げられる。なお、パーム系油脂をエステル交換した油脂としては、パームステアリンのエステル交換油や、パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部などが挙げられる。
【0015】
前記ラウリン系油脂とは、構成脂肪酸としてラウリン酸を豊富に含む油脂のことであり、例えばヤシ油、パーム核油、及びそれらの分別油、硬化油、及び極度硬化油等が挙げられる。
【0016】
前記ホエイタンパク質は、乳タンパク質の中でも、牛乳からカゼインタンパク質や脂肪を取り除いた液体であるホエイに含まれるタンパク質であり、具体的にはα-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、血清アルブミン、免疫グロブリン、ラクトフェリン、トランスフェリンなどが挙げられる。ホエイタンパク質の供給源としては、特に制限はなく、例えば、バターミルク、濃縮ホエイ、乳清、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、乳飲料、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、発酵乳、及びクリーム等、並びにそれらの粉体、更にはホエイタンパク濃縮物(WPC)及びトータルミルクプロテイン等が挙げられる。
【0017】
前記ホエイタンパク質の含有量は、水中油型乳化クリーム全体中0.1~2.5重量%が好ましく、0.3~2重量%がより好ましく、0.4~1.5重量%が更に好ましい。ホエイタンパク質の含有量が0.1重量%より少ないと乳化が不安定になって、水中油型乳化クリームに離水や油分離が生じたり、保形性が低下する場合がある。また、ホエイタンパク質の含有量が2.5重量%より多いと、保形性は高まるものの、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さや消失のし易さ、後残りの無さが悪くなる場合がある。
【0018】
前記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、シュガーエステル及びレシチンなどが挙げられる。なお、前記有機酸モノグリセリドは、脂肪酸モノグリセリドに更に有機酸がエステル結合したモノグリセリド誘導体のことであり、該有機酸としては、酢酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸、乳酸などが挙げられる。油相に配合する乳化剤はHLB値が10以上、水相に配合する乳化剤はHLB値が10以下であることが好ましい。
【0019】
前記乳化剤の含有量は、水中油型乳化クリーム全体中0.1~1重量%が好ましく、0.11~0.9重量%がより好ましく、0.12~0.8重量%が更に好ましい。乳化剤の含有量が0.1重量%未満であると、離水耐性が悪くなる場合がある。また乳化剤の含有量が1重量%を超えると、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さや消失のし易さが悪くなる場合がある。なお、水中油型乳化クリーム全体中の乳化剤の含有量は、親油性の乳化剤及び親水性の乳化剤の合計含有量である。
【0020】
前記ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉とは、澱粉にトリメタリン酸塩やオキシ塩化リンなどを作用させ、澱粉の分子内又は分子間の水酸基が架橋して、澱粉粒の膨潤や糊化が抑制された澱粉のうち、ヒドロキシプロピル化した加工澱粉のことを言う。
【0021】
前記ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の含有量は、水中油型乳化クリーム全体中0.1~2.5重量%が好ましく、0.2~1.2重量%がより好ましく、0.3~0.9重量%が更に好ましい。ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の含有量が0.1重量%未満であると、離水耐性が悪くなる場合がある。またヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の含有量が2.5重量%を超えると、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さや消失のし易さ、後残りの無さが悪くなる場合がある。
【0022】
前記増粘剤としては、キサンタンガム、タマリンド、サクシノグリカン、グアガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。その中でも、水中油型乳化クリームの口中での消失のし易さや後残りの無さの観点からはキサンタンガム、タマリンドが好ましい。
【0023】
前記増粘剤の含有量は、水中油型乳化クリーム全体中0.1~1重量%が好ましく、0.12~0.8重量%がより好ましく、0.15~0.5重量%が更に好ましい。増粘剤の含有量が0.1重量%未満であると、離水耐性が悪くなる場合がある。また増粘剤の含有量が1重量%を超えると、消失のし易さが得られにくくなる場合や後残りの無さが悪くなる場合がある。
【0024】
前記糖類としては、ぶどう糖、及び果糖などの単糖類、砂糖、乳糖、及び麦芽糖などの二糖類、オリゴ糖、デキストリン、及びでんぷんなどの三糖類以上の多糖類、並びに還元麦芽糖水飴、エリスリトール、キシリトール、及びマルチトールなどの糖アルコール等が挙げられる。
【0025】
前記糖類の含有量は、固形分換算で、水中油型乳化クリーム全体中40~55重量%が好ましく、42~50重量%がより好ましく、44~48重量%が更に好ましい。糖類の含有量が40重量%未満であると、離水耐性が悪くなる場合がある。また糖類の含有量が55重量%を超えると、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さや消失のし易さが悪くなる場合がある。
【0026】
前記2価陽イオンとしては、カルシウム、マグネシウムなどのイオンが挙げられ、これらの無機塩又は有機酸塩から選ばれる少なくとも1種を原料として用いることができる。その種類は特に限定されないものの、具体的には、乳酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。その中でも、水中油型乳化クリームの口中での後残りの無さの観点からは乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムがより好ましく、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウムが更に好ましい。
【0027】
前記2価陽イオンの含有量は、水中油型乳化クリーム全体中0.015~0.09重量%が好ましく、0.018~0.08重量%がより好ましく、0.021~0.07重量%が更に好ましい。2価陽イオンの含有量が0.015重量%未満であると、保形性や離水耐性が悪くなる場合がある。また2価陽イオンの含有量が0.09重量%を超えると、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さが劣る場合がある。
【0028】
前記水中油型乳化クリームにおいては、前記2価陽イオン/前記ホエイタンパク質(重量比)が、1/99~20/80であることが好ましく、2/98~15/85がより好ましく、3/97~10/90が更に好ましい。2価陽イオンとホエイタンパク質の重量比が1/99よりも小さいと、保形性が悪くなる場合があり、20/80よりも大きいと、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さや消失のし易さ、後残りの無さが悪くなる場合がある。
【0029】
前記水中油型乳化クリームの20℃における比重は、0.9~1.2が好ましく、1.0~1.15がより好ましい。前記比重が0.9より小さいと口に入れた瞬間からの溶け始めの良さが劣る場合があり、1.2より大きいと、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さや消失のし易さが悪い場合がある。なお、前記比重の測定方法は、前記水中油型乳化クリームを計量カップ(100ml)に入れて質量(g)を測定し、容量(ml)で除して算出する。
【0030】
前記脂肪球が結着した凝集体とは、脂肪球内から脂肪球表面に染み出た油脂同士が結着することにより複数の脂肪球が結合した状態をいう。脂肪球が結着した凝集体であるかどうかは、粒径分布を測定することにより推定できる。
【0031】
前記脂肪球が結着した凝集体の形成過程は次のとおりである。脂肪球の界面に存在する特定のタンパク質を2価陽イオンにより架橋させ、脂肪球同士を近距離に保ち、冷却すると脂肪球から染み出た油脂同士の結着が促されることにより脂肪球が結着した凝集体が形成される。冷却の条件としては、例えば、0~25℃まで0.5時間以上冷却することが好ましい。
【0032】
前記水中油型乳化クリーム中においての該凝集体のメジアン径は5~20μmが好ましく、7~15μmがより好ましく、8~12μmが更に好ましい。メジアン径が5μm未満であると、保形性が悪くなる場合がある。またメジアン径が20μmを超えると、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さが劣る場合がある。
【0033】
前記メジアン径の測定は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(株式会社掘場製作所)で測定した体積基準での積算分布曲線の50%に相当する粒子径をもとに算出することができる。
【0034】
前記水中油型乳化クリームの使用方法としては、菓子やパンにフィリング、トッピング、サンド、及びスプレッド等することが挙げられる。
【0035】
本発明の水中油型乳化クリームの製造方法の一実施形態を以下に説明する。まず、油脂に、親油性の乳化剤を添加し、均一になるよう40~80℃で攪拌して混合しながら溶解して油相とする。このとき、水中油型乳化油脂組成物全体中、親油性の乳化剤0~1重量%、及び油脂10.1~33.3重量%となるように配合する。一方、水相の原料(親水性の乳化剤、ホエイタンパク質、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、増粘剤、糖類、水)が均一になるよう40~60℃で攪拌して混合しながら溶解して水相を得る。このとき、水中油型乳化油脂組成物全体中、ホエイタンパク質0.11~4.1重量%、親水性の乳化剤0~1重量%、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.11~4.1重量%、増粘剤0.11~1.6重量%、糖類(固形分含量)41~70重量%、及び水20~50重量%となるように配合する。その後、前記水相を攪拌しているところに前記油相を添加して混合し予備乳化した後、100~140℃で1~3分間保持して殺菌処理し、ホモジナイザーを用いて1段目0~5MPa/2段目0~10MPaの圧力で均質化処理することにより乳化し、その後、プレート式冷却機で0~40℃まで冷却することにより、水中油型乳化油脂組成物が得られる。水中油型乳化油脂組成物における親水性の乳化剤及び親油性の乳化剤の合計含有量は0.11~1.6重量%とする。
【0036】
前記2価陽イオンを含む溶液の製造方法としては、例えば、水に2価陽イオンと必要に応じて添加物を加え、均一になるよう40~60℃で攪拌し混合しながら溶解して2価陽イオンを含む溶液を得る方法が挙げられる。
【0037】
前記2価陽イオンを含む溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、添加物として、ココアパウダー、栗、アーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、マカダミアナッツ、胡桃、ピーナッツ、ココナッツ、ピーカンナッツ、松の実、カシューナッツ、パンプキンシード、胡麻、けしの実、野菜、ハーブ、スパイス、食塩、保存料、ビタミン、アミノ酸、pH調整剤、色素、香料、竹炭、イカスミ、モルトなどの風味材や副材料成分を添加することができる。
【0038】
前記風味材としては、例えばフルーツソース(ストロベリーソース、ラズベリーソース、オレンジソースなど)、チョコレートソース、カラメルソース、緑茶加工品(抹茶ソース、ほうじ茶ソースなど)、コーヒー加工品、紅茶加工品、黒糖ソース、洋酒などが挙げられる。
【0039】
前記風味材を添加する場合、前記風味材の含有量は、水中油型乳化クリーム全体中2~13重量%がより好ましく、6~10重量%が更に好ましい。風味材の含有量が2重量%未満であると風味材の風味が得られない場合がある。13重量%を超えると保形性が損なわれる場合がある。
【0040】
次いで、水中油型乳化油脂組成物と2価陽イオンを含む溶液との混合及び静置の好適な方法について説明する。0~40℃に温調した前記水中油型乳化油脂組成物を0.08~1.7s-1で攪拌しているところに、0~40℃に温調した前記2価陽イオンを含む溶液を、水中油型乳化クリーム全体中、2価陽イオン0.015~0.09重量%及び前記2価陽イオン/前記ホエイタンパク質(重量比)が1/99~20/80となるように添加し、0~40℃で攪拌速度0.08~1.7s-1にて1~10分間混合した後、容器に充填し、0~25℃で0.5~24時間静置することが好ましい。これにより水中油型乳化クリームが得られる。
【0041】
前記混合時の温度は、0~40℃が好ましく、10~35℃がより好ましく、20~30℃が更に好ましい。混合時の温度が0℃よりも低いと口に入れた瞬間からの溶け始めの良さが劣る場合や保形性が劣る場合がある。40℃よりも高いと保形性が劣る場合がある。
【0042】
前記混合時の攪拌速度は、0.08~1.7s-1が好ましく、0.1~1.5s-1がより好ましく、0.15~1s-1が更に好ましい。攪拌速度が0.08s-1よりも遅いと保形性や離水耐性が劣る場合がある。1.7s-1よりも早いと保形性を損なう場合がある。
【0043】
前記混合の時間は、1~10分が好ましく、2~8分がより好ましく、3~6分が更に好ましい。時間が1分よりも短いと混合が不十分な場合がある。10分よりも長いと保形性が劣る場合がある。
【0044】
前記静置時の温度は、0~25℃が好ましく、0~20℃がより好ましく、1~15℃が更に好ましい。静置時の温度が0℃よりも低いと短時間で消失感が得られにくくなる場合や保形性が劣る場合がある。25℃よりも高いと保形性が劣る場合がある。
【0045】
前記静置の時間は、0.5時間以上が好ましく、0.5~24時間がより好ましく、1~20時間が更に好ましく、2~10時間が特に好ましい。静置の時間が0.5時間よりも短いと保形性が劣る場合がある。
【実施例0046】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0047】
<脂肪球が結着した凝集体のメジアン径>
実施例や比較例で得られた水中油型乳化クリームに含まれる脂肪球が結着した凝集体のメジアン径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(株式会社掘場製作所)で測定した体積基準での積算分布曲線の50%に相当する粒子径である。
【0048】
<口溶けの良さ>
各実施例及び比較例で得られた水中油型乳化クリーム口溶けの良さは、熟練した10名のパネラーが各項目の評価を行い、各パネラーの評価点の平均値を官能評価として示した。
【0049】
(口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ)
5点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも非常に良く、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さが極めて良好である。
4点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも良く、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さが良好である。
3点:実施例5の水中油型乳化クリームと同等で、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さがやや劣るが、品質上問題ないレベルである。
2点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも悪く、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さが悪い。
1点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも非常に悪く、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さが極めて悪い。
【0050】
(消失のし易さ)
5点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも非常に良く、消失のし易さが非常に強く感じられる。
4点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも良く、消失のし易さが強く感じられる。
3点:実施例5の水中油型乳化クリームと同等で、消失のし易さが感じられる。
2点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも悪く、消失のし易さが感じられ難い。
1点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも非常に悪く、消失のし易さが感じられない。
【0051】
(後残りの無さ)
5点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも非常に良く、後残りが全くない。
4点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも良く、後残りが無い。
3点:実施例5の水中油型乳化クリームと同等で、若干の後残りを感じるが、品質上問題ないレベルである。
2点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも悪く、後残りを感じる。
1点:実施例5の水中油型乳化クリームよりも非常に悪く、明らかに後残りを感じる。
【0052】
<保存性評価方法>
(保形性)
保形性については、水中油型乳化クリームを造花し、25℃で24時間放置した後、高さを観察した。造花時の最上部の高さH1(cm)及び25℃で24時間放置した後の最上部の高さH2(cm)を測定し、保形率(%)=H2/H1×100を算出し、以下の基準で保形性の評価値とした。
5点:保形率が95%以上であり、保形性が非常に高い。
4点:保形率が85%以上95%未満であり、保形性が高い。
3点:保形率が75%以上85%未満であり、保形性が良好である。
2点:保形率が65%以上75%未満であり、保形性がやや劣る。
1点:保形率が65%未満であり、保形性が劣る。又は、保形性が無い。
【0053】
(離水耐性)
離水耐性については、水中油型乳化クリーム10gを25℃で24時間放置し、分離した水分の重量(Xg)を測定し、離水耐性(%)=(X/10)×100を算出し、以下の基準で離水耐性を判定した。
5点:離水率が5%未満であり、離水耐性が非常に高い。
4点:離水率が5%以上10%未満であり、離水耐性が高い。
3点:離水率が10%以上15%未満であり、離水耐性が良好である。
2点:離水率が15以上20%未満であり、離水耐性がやや劣る。
1点:離水率が20%以上であり、離水耐性がない。
【0054】
(総合評価)
口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、後残りの無さ、保形性、離水耐性の各評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、後残りの無さ、保形性、離水耐性が全て4.5点以上且つ5.0点以下を満たすもの。
B:口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、後残りの無さ、保形性、離水耐性が全て4.0点以上且つ5.0点以下であって、且つ4.0点以上且つ4.5点未満が少なくとも一つあるもの。
C:口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、後残りの無さ、保形性、離水耐性が全て3.0点以上且つ5.0点以下であって、且つ3.0点以上且つ4.0点未満が少なくとも一つあるもの。
D:口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、後残りの無さ、保形性、離水耐性が全て2.0点以上且つ5.0点以下であって、且つ2.0点以上且つ3.0点未満が少なくとも一つあるもの。
E:口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、後残りの無さ、保形性、離水耐性において、2.0点未満が少なくとも一つあるもの。
【0055】
<製造例、実施例及び比較例で使用した原料>
1)大豆レシチン:ADM社製「Yelkin TS」
2)ポリグリセリン脂肪酸エステル:阪本薬品工業株式会社製「SYグリスターMO-3S」(HLB:8.8)
3)ポリグリセリン脂肪酸エステル:太陽化学株式会社製「サンファットPS-66」(HLB:4.0)
4)ポリグリセリン脂肪酸エステル:阪本薬品工業株式会社製「SYグリスターMS-5S」(HLB:11.6)
5)シュガーエステル:三菱化学フーズ株式会社製「リョートーシュガーエステル P-1670」(HLB:16)
6)ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉:日澱化学株式会社製「SQ-260C」(コーン由来)
7)ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉:松谷化学工業株式会社製「ファリネックスVA70TJ」(タピオカ由来)
8)酸処理澱粉:松谷化学工業株式会社製「エリアンGEL100」(馬鈴薯由来)
9)ホエイパウダー:Warrnambool Cheese and Butter社製「WPC80」
10)カゼインタンパク質:日本新薬株式会社製「ハプロ」
11)液糖:三和澱粉工業株式会社製「オリゴトース」(固形分含量:75.5重量%)
12)グラニュー糖:東洋精糖株式会社製「グラニュー糖」(固形分含量:94.7重量%)
13)キサンタンガム:DSP五協フード&ケミカル株式会社製「K-OB」
14)タマリンド:DSP五協フード&ケミカル株式会社製 「グリロイド2A」
15)サクシノグリカン:デュポン社製「サクシノグリカンJ」
16)グアガム:星和株式会社製「XS-5000」
17)カラギーナン:三菱商事ライフサイエンス式会社製「KC-200S」
18)乳酸カルシウム塩:ピューラック・ジャパン株式会社製「発酵乳酸カルシウム塩」(Ca含量:13.8%)
19)硫酸マグネシウム塩:富田製薬株式会社製「硫酸マグネシウム塩」(Mg含量:14.5%)
20)池田糖化工業株式会社製「チョコソース80」
21)池田糖化工業株式会社製「ストロベリーソース100」
【0056】
(製造例1) パーム核混合油の作製
パーム核硬化油(株式会社カネカ製):75重量部、パーム油(株式会社カネカ製)25重量部を混合し、パーム核混合油を得た。
【0057】
(製造例2) エステル交換油脂Aの作製
パームステアリン(株式会社カネカ製):100重量部を90℃に加熱し、真空下で脱水を行った。そこへナトリウムメチラート(日本曹達株式会社製):0.20重量部を加え、90℃、窒素気流下で30分間ランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応停止後、水洗した。次に、活性白土(水澤化学工業株式会社製):3.0重量部を加え、減圧下で攪拌して20分後に全量濾過してエステル交換油脂Aを得た。
【0058】
(製造例3) エステル交換油脂Bの作製
パーム核オレイン(株式会社カネカ製):26重量部、パーム油(株式会社カネカ製)69重量部、パームステアリン(株式会社カネカ製):5重量部を混合し、90℃、真空下で脱水を行った。そこへナトリウムメチラート(日本曹達株式会社製):0.20重量部を加え、90℃、窒素気流下で30分間ランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応停止後、水洗した。次に、活性白土(水澤化学工業株式会社製):3.0重量部を加え、減圧下で攪拌して20分後に全量濾過してエステル交換油脂Bを得た。
【0059】
(製造例4) 水中油型乳化油脂組成物の作製
表1に示す配合に従い、水中油型乳化油脂組成物を作製した。即ち、パーム核混合油((株)カネカ製「パーム核混合油」:10℃のSFCが93%、30℃のSFCが34%)18.5重量部に、大豆レシチン0.04重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:4.0)0.15重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:8.8)0.07重量部を添加し、60℃で溶解して油相とした。
【0060】
一方、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:11.6)0.15重量部、シュガーエステル0.01重量部、ホエイタンパク質としてホエイパウダー0.6重量部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.3重量部、キサンタンガム0.12重量部、タマリンド0.01重量部、液糖51.1重量部、グラニュー糖6.8重量部を、60℃の温水22.12重量部に溶解して水相を作製した。
【0061】
前記水相を攪拌しているところに前記油相を添加し、混合することにより予備乳化した後、140℃で3分間保持して殺菌処理し、ホモジナイザーを用いて1段目5MPa/2段目10MPaの圧力で処理(均質化処理)し、その後、プレート式冷却機で30℃まで冷却して、水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物中の糖類(固形分含量)、水の含有量、及び使用した油脂のSFCの値を表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
(製造例5~8) 水中油型乳化油脂組成物の作製
表1の配合に従い、パーム核混合油:18.5重量部を、18.75重量部(製造例5)、12.5重量部(製造例6)、34.0重量部(製造例7)、又は、9.4重量部(製造例8)に変更し、水で全体量を調整した以外は、製造例4と同様にして水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物中の糖類(固形分含量)、水の含有量、及び使用した油脂のSFCの値を表1に示した。
【0064】
(製造例9及び10) 水中油型乳化油脂組成物の作製
表1の配合に従い、パーム核混合油を、製造例2のエステル交換油脂A(製造例9)、又は、製造例3のエステル交換油脂B(製造例10)に変更した以外は、製造例4と同様にして水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物中の糖類(固形分含量)、水の含有量、及び使用した油脂のSFCの値を表1に示した。
【0065】
(製造例11) 2価陽イオンを含む溶液の作製
水:94.75重量部に、乳酸カルシウム塩:5.25重量部を溶解し、2価陽イオンを含む溶液を得た。得られた2価陽イオンを含む溶液中の2価陽イオンの含有量は、0.72重量部であった。
【0066】
(実施例1) 水中油型乳化クリームの作製
表2に示す配合に従い、製造例4の水中油型乳化油脂組成物:96重量部を30℃に温調し、0.17s-1で攪拌している所に、30℃に温調した製造例11の2価陽イオンを含む溶液:4.0重量部を添加し、0.17s-1で5分間撹拌して混合した後、容器に充填し、10℃で3時間静置して、水中油型乳化クリームを得た。得られた水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径、官能評価、及び保存性評価の結果を表2に示した。
【0067】
【表2】
【0068】
(実施例2~3、及び、比較例1~4) 水中油型乳化クリームの作製
表2に示す配合に従い、製造例4の水中油型乳化油脂組成物を、製造例5の水中油型乳化油脂組成物(実施例2)、製造例6の水中油型乳化油脂組成物(実施例3)、製造例7の水中油型乳化油脂組成物(比較例1)、製造例8の水中油型乳化油脂組成物(比較例2)、製造例9の水中油型乳化油脂組成物(比較例3)、又は、製造例10の水中油型乳化油脂組成物(比較例4)に変更した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化クリームを得た。得られた各水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径、官能評価、及び保存性評価の結果を表2に示した。
【0069】
表2から明らかなように、水中油型乳化油脂組成物全体中、10℃のSFCが75~100%、30℃のSFCが25~45%である油脂を10.1~33.3重量%配合した水中油型乳化油脂組成物(製造例4~6)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(実施例1~3)は何れも油脂の含有量が10~20重量%であり、官能評価は良好で、常温における保形性と離水耐性にも優れた評価結果であった。
【0070】
一方、水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂が34.0重量%と多い水中油型乳化油脂組成物(製造例7)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例1)は油脂の含有量が33.0重量%であり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さと消失のし易さが劣り、総合評価はEであった。また、水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂が9.4重量%と少ない水中油型乳化油脂組成物(製造例8)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例2)は油脂の含有量が9.0重量%であり、保形性と離水耐性が劣り、総合評価はDであった。更に、30℃のSFCが53.9%と高い油脂を配合した水中油型乳化油脂組成物(製造例9)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例3)は、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、及び、離水耐性が劣り、総合評価はEであった。加えて、10℃のSFCが54.0%と低く、且つ、30℃のSFCも11.3%と低い油脂を配合した水中油型乳化油脂組成物(製造例10)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例4)は、保形性と離水耐性が劣り、総合評価はEであった。
【0071】
(製造例12~16) 水中油型乳化油脂組成物の作製
表3の配合に従い、ホエイタンパク質:0.59重量部を、2.50重量部(製造例12)、0.21重量部(製造例13)、4.20重量部(製造例14)、0.01重量部(製造例15)、又はカゼインタンパク質:0.59重量部(製造例16)に変更し、水で全体量を調整した以外は、製造例4と同様にして水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物中の糖類(固形分含量)、水の含有量、及び使用した油脂のSFCの値を表3に示した。
【0072】
【表3】
【0073】
(実施例4~5、比較例5~7) 水中油型乳化クリームの作製
表4に示す配合に従い、製造例4の水中油型乳化油脂組成物を、製造例12の水中油型乳化油脂組成物(実施例4)、製造例13の水中油型乳化油脂組成物(実施例5)、製造例14の水中油型乳化油脂組成物(比較例5)、製造例15の水中油型乳化油脂組成物(比較例6)、製造例16の水中油型乳化油脂組成物(比較例7)に変更した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化クリームを得た。得られた各水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径、官能評価、及び保存性評価の結果を表4に示した。
【0074】
【表4】
【0075】
表4から明らかなように、水中油型乳化油脂組成物全体中、ホエイタンパク質0.11~4.1重量%配合して得た水中油型乳化油脂組成物(製造例12、13)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(実施例4、5)は何れもホエイタンパク質の含有量が0.1~2.5重量%であり、官能評価は良好で、常温における保形性と離水耐性にも優れた評価結果であった。
【0076】
一方、水中油型乳化油脂組成物全体中、ホエイタンパク質が4.20重量%と多い水中油型乳化油脂組成物(製造例14)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例5)はホエイタンパク質の含有量が4.0重量%であり、総合評価がEであった。また、水中油型乳化油脂組成物全体中、ホエイタンパク質が0.01重量%と少ない水中油型乳化油脂組成物(製造例15)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例6)はホエイタンパク質の含有量が0.01重量%であり、何れの評価項目も劣り、総合評価はEであった。更に、ホエイタンパク質を配合せず、カゼインタンパク質を0.59重量%配合した水中油型乳化油脂組成物(製造例16)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例7)はホエイタンパク質の含有量が0重量%であり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さが劣り、総合評価はDであった。
【0077】
(製造例17~24) 水中油型乳化油脂組成物の作製
表5の配合に従い、油相中の親油性の乳化剤:0.26重量部を、0.77重量部(製造例17)、0.03重量部(製造例18)、1.02重量部(製造例21)、無添加(製造例22)に変更し、水で全体量を調整した以外は、製造例4と同様にして水中油型乳化油脂組成物を得た。また、表5の配合に従い、水相中の親水性の乳化剤:0.16重量部を、0.66重量部(製造例19)、0.02重量部(製造例20)、1.12重量部(製造例23)、無添加(製造例24)に変更し、水で全体量を調整した以外は、製造例4と同様にして水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物中の糖類(固形分含量)、水の含有量、及び使用した油脂のSFCの値を表5に示した。
【0078】
【表5】
【0079】
(実施例6~9、比較例8~11) 水中油型乳化クリームの作製
表6に示す配合に従い、製造例4の水中油型乳化油脂組成物を、製造例17の水中油型乳化油脂組成物(実施例6)、製造例18の水中油型乳化油脂組成物(実施例7)、製造例19の水中油型乳化油脂組成物(実施例8)、製造例20の水中油型乳化油脂組成物(実施例9)、製造例21の水中油型乳化油脂組成物(比較例8)、製造例22の水中油型乳化油脂組成物(比較例9)、製造例23の水中油型乳化油脂組成物(比較例10)、製造例24の水中油型乳化油脂組成物(比較例11)に変更した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化クリームを得た。得られた各水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径、官能評価、及び保存性評価の結果を表6に示した。
【0080】
【表6】
【0081】
表5及び6から明らかなように、水中油型乳化油脂組成物全体中、親油性の乳化剤及び親水性の乳化剤の合計含有量が0.11~1.6重量%であり、親油性の乳化剤0~1重量%、及び、親水性の乳化剤0~1重量%を配合した水中油型乳化油脂組成物(製造例17~20)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(実施例6~9)は何れも、官能評価は良好で、常温における保形性と離水耐性にも優れた評価結果であった。
【0082】
一方、水中油型乳化油脂組成物全体中、親油性の乳化剤が1.02重量%と多い水中油型乳化油脂組成物(製造例21)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例8)は乳化剤の含有量が1.10重量%であり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さが劣り、総合評価がDであった。また、水中油型乳化油脂組成物全体中、親油性の乳化剤を添加しなかった水中油型乳化油脂組成物(製造例22)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例9)は乳化剤の含有量が0.08重量%であり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、離水耐性が劣り、総合評価はEであった。更に、親水性の乳化剤を1.12重量%配合した水中油型乳化油脂組成物(製造例23)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例10)は乳化剤の含有量が1.20重量%であり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、保形性、離水耐性が劣り、総合評価はEであった。また、親水性の乳化剤を添加しなかった水中油型乳化油脂組成物(製造例24)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例11)は乳化剤の含有量が0.08重量%であり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、離水耐性が劣り、総合評価はDであった。
【0083】
(製造例25~30) 水中油型乳化油脂組成物の作製
表7の配合に従い、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(コーン):0.3重量部を、2.5重量部(製造例25)、0.2重量部(製造例26)、4.2重量部(製造例28)、0.01重量部(製造例29)に変更し、水で全体量を調整した以外は、製造例4と同様にして水中油型乳化油脂組成物を得た。また、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(コーン):0.3重量部を、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(タピオカ):0.3重量部(製造例27)、酸処理澱粉(馬鈴薯):0.3重量部(製造例30)、に変更し、水で全体量を調整した以外は、製造例4と同様にして水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物中の糖類(固形分含量)、水の含有量、及び使用した油脂のSFCの値を表7に示した。
【0084】
【表7】
【0085】
(実施例10~12、比較例12~14) 水中油型乳化クリームの作製
表8に示す配合に従い、製造例4の水中油型乳化油脂組成物を、製造例25の水中油型乳化油脂組成物(実施例10)、製造例26の水中油型乳化油脂組成物(実施例11)、製造例27の水中油型乳化油脂組成物(実施例12)、製造例28の水中油型乳化油脂組成物(比較例12)、製造例29の水中油型乳化油脂組成物(比較例13)、製造例30の水中油型乳化油脂組成物(比較例14)に変更した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化クリームを得た。得られた各水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径、官能評価、及び保存性評価の結果を表8に示した。
【0086】
【表8】
【0087】
表7及び8から明らかなように、水中油型乳化油脂組成物全体中、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.11~4.1重量%配合した水中油型乳化油脂組成物(製造例25、26、27)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(実施例10、11、12)は何れもヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の含有量が0.1~2.5重量%であり、官能評価は良好で、常温における保形性と離水耐性にも優れた評価結果であった。
【0088】
一方、水中油型乳化油脂組成物全体中、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉が4.2重量%と多い水中油型乳化油脂組成物(製造例28)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例12)はヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の含有量が4.0重量%であり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、後残りの無さが劣り、総合評価がEであった。また、水中油型乳化油脂組成物全体中、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉が0.01重量%と少ない水中油型乳化油脂組成物(製造例29)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例13)はヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の含有量が0.01重量%であり、離水耐性が劣り、総合評価はDであった。更に、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉ではなく酸処理澱粉を配合した水中油型乳化油脂組成物(製造例30)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例14)は、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さが劣り、総合評価はEであった。
【0089】
(製造例31~35) 水中油型乳化油脂組成物の作製
表9の配合に従い、キサンタンガム、タマリンド、サクシノグリカン、グアガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤:0.16重量部を、0.60重量部(製造例31)、0.11重量部(製造例32)、0.16重量部(製造例33)、1.95重量部(製造例34)、0.05重量部(製造例35)に変更し、水で全体量を調整した以外は、製造例4と同様にして水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物中の糖類(固形分含量)、水の含有量、及び使用した油脂のSFCの値を表9に示した。
【0090】
【表9】
【0091】
(実施例13~15、比較例15~16) 水中油型乳化クリームの作製
表10に示す配合に従い、製造例4の水中油型乳化油脂組成物を、製造例31の水中油型乳化油脂組成物(実施例13)、製造例32の水中油型乳化油脂組成物(実施例14)、製造例33の水中油型乳化油脂組成物(実施例15)、製造例34の水中油型乳化油脂組成物(比較例15)、製造例35の水中油型乳化油脂組成物(比較例16)に変更した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化クリームを得た。得られた各水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径、官能評価、及び保存性評価の結果を表10に示した。
【0092】
【表10】
【0093】
表9及び10から明らかなように、水中油型乳化油脂組成物全体中、キサンタンガム、タマリンド、サクシノグリカン、グアガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤0.11~1.6重量%配合した水中油型乳化油脂組成物(製造例31、32、33)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(実施例13、14、15)は何れも増粘剤の含有量が0.1~1重量%であり、官能評価は良好で、常温における保形性と離水耐性にも優れた評価結果であった。
【0094】
一方、水中油型乳化油脂組成物全体中、キサンタンガム、タマリンド、サクシノグリカン、グアガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤が1.95重量%と多い水中油型乳化油脂組成物(製造例34)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例15)は増粘剤の含有量が1.90重量%であり、消失のし易さ、後残りの無さが劣り、総合評価がDであった。また、水中油型乳化油脂組成物全体中、キサンタンガム、タマリンド、サクシノグリカン、グアガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤が0.05重量%と少ない水中油型乳化油脂組成物(製造例35)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例16)は増粘剤の含有量が0.05重量%であり、離水耐性が劣り、総合評価はDであった。
【0095】
(製造例36~39) 水中油型乳化油脂組成物の作製
表11の配合に従い、糖類(固形分含量):48.1重量%を、56.3重量部(製造例36)、41.7重量部(製造例37)、70.5重量部(製造例38)、39.6重量部(製造例39)に変更し、水で全体量を調整した以外は、製造例4と同様にして水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物中の糖類(固形分含量)、水の含有量、及び使用した油脂のSFCの値を表11に示した。
【0096】
【表11】
【0097】
(実施例16~17、比較例17~18) 水中油型乳化クリームの作製
表12に示す配合に従い、製造例4の水中油型乳化油脂組成物を、製造例36の水中油型乳化油脂組成物(実施例16)、製造例37の水中油型乳化油脂組成物(実施例17)、製造例38の水中油型乳化油脂組成物(比較例17)、製造例39の水中油型乳化油脂組成物(比較例18)に変更した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化クリームを得た。得られた各水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径、官能評価、及び保存性評価の結果を表12に示した。
【0098】
【表12】
【0099】
表11及び12から明らかなように、水中油型乳化油脂組成物全体中、糖類(固形分含量)を41~70重量%配合した水中油型乳化油脂組成物(製造例36、37)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(実施例16、17)は何れも糖類の含有量(固形分含量)が40~55重量%であり、官能評価は良好で、常温における保形性と離水耐性にも優れた評価結果であった。
【0100】
一方、水中油型乳化油脂組成物全体中、糖類(固形分含量)が70.5重量%と多い水中油型乳化油脂組成物(製造例38)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例17)は糖類の含有量(固形分含量)が68.0重量%であり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さが劣り、総合評価がDであった。また、水中油型乳化油脂組成物全体中、糖類(固形分含量)が39.6重量%と少ない水中油型乳化油脂組成物(製造例39)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例18)は糖類の含有量(固形分含量)が38.0重量%であり、保形性、離水耐性が劣り、総合評価はDであった。
【0101】
(製造例40~44) 2価陽イオン含有溶液の作製
表13の配合に従い、製造例11の2価陽イオン含有溶液中の乳酸カルシウム塩:5.25重量部を、16.3重量部(製造例40)、3.50重量部(製造例41)、29.0重量部(製造例43)、1.81重量部(製造例44)に変更し、水で全体量を調整した以外は、製造例4と同様にして2価陽イオン含有溶液を得た。また、乳酸カルシウム塩:5.25重量%を硫酸マグネシウム塩:5.25重量部(製造例42)に変更した以外は、製造例4と同様にして2価陽イオン含有溶液を得た。得られた2価陽イオン含有溶液中の2価陽イオンの含有量を表13に示した。
【0102】
【表13】
【0103】
(実施例18~20、比較例19~20) 水中油型乳化クリームの作製
表14に示す配合に従い、製造例4の水中油型乳化油脂組成物を、製造例40の水中油型乳化油脂組成物(実施例18)、製造例41の水中油型乳化油脂組成物(実施例19)、製造例42の水中油型乳化油脂組成物(実施例20)、製造例43の水中油型乳化油脂組成物(比較例19)、製造例44の水中油型乳化油脂組成物(比較例20)に変更した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化クリームを得た。得られた各水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径、官能評価、及び保存性評価の結果を表14に示した。
【0104】
【表14】
【0105】
表14から明らかなように、2価陽イオン/前記ホエイタンパク質(重量比)が1/99~20/80となるように調整した2価陽イオン含有溶液(製造例40、41、42)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(実施例18、19、20)は何れも、官能評価は良好で、常温における保形性と離水耐性にも優れた評価結果であった。
【0106】
一方、2価陽イオンの含有量が4.0重量%と多い2価陽イオン含有溶液(製造例43)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例19)は2価陽イオン/前記ホエイタンパク質(重量比)が22/78であり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さが劣り、総合評価がEであった。また、2価陽イオンの含有量が0.25重量%と少ない2価陽イオン含有溶液(製造例44)を使用して作製した水中油型乳化クリーム(比較例20)は2価陽イオン/前記ホエイタンパク質(重量比)が1/99であり、保形性、離水耐性が劣り、総合評価はDであった。
【0107】
(実施例21、比較例21) 水中油型乳化クリームの作製
表15に示す配合に従い、製造例4の水中油型乳化油脂組成物を、含気することで20℃における比重を1.0(実施例21)に、更に含気することで20℃における比重を0.8(比較例21)に調整した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化クリームを得た。得られた各水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径、官能評価、及び保存性評価の結果を表15に示した。
【0108】
【表15】
【0109】
表15から明らかなように、比重1.0の水中油型乳化クリーム(実施例21)は、官能評価、保形性及び離水耐性が何れも良好な評価結果であった。
【0110】
一方、比重0.8の水中油型乳化クリーム(比較例21)は、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、後残りの無さが劣り、総合評価がEであった。
【0111】
(比較例22~26) 水中油型乳化クリームの作製
表16に示す製造条件に従い、水中油型乳化油脂組成物と2価陽イオンを含む溶液との混合時の温度(比較例22)、前記混合時の撹拌速度(比較例23)、及び前記混合の時間(比較例24)、並びに水中油型乳化油脂組成物と2価陽イオンを含む溶液とを混合した後の静置時の温度(比較例25)、及び前記静置の時間(比較例26)を調整した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化クリームを得た。得られた各水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径、官能評価及び保存性評価の結果を表16に示した。
【0112】
【表16】
【0113】
表16から明らかなように、水中油型乳化クリーム(実施例1)は、官能評価は良好で、常温における保形性に優れた評価結果であった。
【0114】
一方、混合時の温度が45℃である水中油型乳化クリーム(比較例22)は、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径が25.3μmであり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、保形性が劣り、総合評価がDであった。混合時の撹拌速度が2.0s-1の水中油型乳化クリーム(比較例23)は、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径が3.2μmであり、保形性が劣り、総合評価がEであった。混合の時間が15分の水中油型乳化クリーム(比較例24)は、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径が4.1μmであり、保形性が劣り、総合評価がEであった。静置時の温度が30℃の水中油型乳化クリーム(比較例25)は、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径が23.0μmであり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さ、保形性が劣り、総合評価がDであった。静置時の時間が0.1時間の水中油型乳化クリーム(比較例26)は、脂肪球が結着した凝集体のメジアン径が28.0μmであり、口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、保形性が劣り、総合評価がEであった。
【0115】
(実施例22) 水中油型乳化クリームを使用した食品(パンケーキ)
以下の手順でパンケーキを作製した。即ち、グラニュー糖:26重量部、全卵(キューピータマゴ株式会社製「液全卵(殺菌)」):23重量部、牛乳(株式会社カネカ製「パン好きの牛乳」):9重量部、及び水:110重量部を混合して均一な液状にした後、篩を通した薄力粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」):100重量部及びベーキングパウダー(大宮糧食工業株式会社製「アイコク ベーキングパウダー(赤缶)」):6重量部を混合し、最後に液状ショートニング(株式会社カネカ製「マリーパート」):20重量部を加えて軽く混合して、流動性の生地を製造した。180℃に熱した銅板に油をひき、上記生地を、1枚が約50gになるように鉄板上に流して、片面を約100秒間かけて焼成した後、裏返して80秒間焼成して、直径が約100mm、厚さが約8mmのパンケーキを得た。
【0116】
得られたパンケーキに、実施例1の水中油型乳化クリーム40gをサンドし、パンケーキと一緒に食したところ、水中油型乳化クリームの口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さが得られ、且つ水中油型乳化クリームの後残りの無さが無いために、非常にマッチしていて美味であった。
【0117】
得られたパンケーキに、実施例1の水中油型乳化クリーム20gをトッピングし、パンケーキと一緒に食したところ、水中油型乳化クリームの口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さが得られ、且つ水中油型乳化クリームの後残りの無さが無いために、非常にマッチしていて美味であった。
【0118】
得られたパンケーキに、実施例1の水中油型乳化クリーム20gをスプレッドし、パンケーキと一緒に食したところ、水中油型乳化クリームの口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さが得られ、且つ水中油型乳化クリームの後残りの無さが無いために、非常にマッチしていて美味であった。
【0119】
(実施例23) 水中油型乳化クリームを使用した食品(シュー)
以下の手順でシューを作製した。即ち、マーガリン(株式会社カネカ製「コンセブール」):130重量部と水:130重量部をミキサーボールに入れ、ミキサーボールを直火で加熱、沸騰させ、沸騰により液面が上昇し始めたら火から下ろし、ミキサーにボールをセット後、ふるいにかけた薄力粉:50重量部(日清製粉株式会社製「バイオレット」)、強力粉:50重量部(日清製粉株式会社製「カメリヤ」)を加えた。中速で二分間攪拌した後、攪拌しながら全卵:190重量部を添加した。最後に全卵:10重量部でベーキングパウダー:0.5重量部と炭酸水素アンモニウム:1.0重量部を溶解して添加し高速で一分ミキシングを行った。得られたシュー生地は、生地安定性の観点から、表面が乾燥しないように留意し、40℃温浴下で20分間静置後、天板に絞り(約30g)オーブンで焼成してシューを得た。
【0120】
得られたシューに、実施例1の水中油型乳化クリーム80gをフィリングし、シューと一緒に食したところ、水中油型乳化クリームの口に入れた瞬間からの溶け始めの良さ、消失のし易さが得られ、且つ水中油型乳化クリームの後残りの無さが無いために、非常にマッチしていて美味であった。
【0121】
(製造例49、50) 2価陽イオン含有溶液の作製
表17の配合に従い、チョコレートソース 50.0重量部(製造例49)、ストロベリーソース 50.0重量部(製造例50)を追加し、水で全体量を調整した以外は、製造例11と同様にして2価陽イオン含有溶液を得た。得られた2価陽イオン含有溶液中のチョコレートソース又はストロベリーソースの含有量を表17に示した。
【0122】
【表17】
【0123】
(実施例24、25) 水中油型乳化クリームの作製
表18に示す配合に従い、製造例11の2価陽イオン含有溶液を、製造例49の2価陽イオン含有溶液(実施例24)、製造例50の2価陽イオン含有溶液(実施例25)に変更し、水中油型乳化油脂組成物と2価陽イオン含有溶液の混合比率を変更した以外は、実施例1と同様にして水中油型乳化クリームを得た。得られた各水中油型乳化クリームの成分の含有量、20℃における比重、凝集体のメジアン径、及び、官能評価を表18に示した。
【0124】
【表18】
【0125】
表18から明らかなように、チョコレート風味の水中油型乳化クリーム(実施例24)、ストロベリー風味の水中油型乳化クリーム(実施例25)は、官能評価は良好で、常温における保形性、離水耐性も優れた評価結果であった。