IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エクセディの特許一覧

<>
  • 特開-駆動ユニット 図1
  • 特開-駆動ユニット 図2
  • 特開-駆動ユニット 図3
  • 特開-駆動ユニット 図4
  • 特開-駆動ユニット 図5
  • 特開-駆動ユニット 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130807
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/08 20060101AFI20230913BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
F16H3/08
B60L15/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035308
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【テーマコード(参考)】
3J528
5H125
【Fターム(参考)】
3J528EA18
3J528EA30
3J528EB37
3J528EB63
3J528EB77
3J528FB04
3J528FB05
3J528FC32
3J528FC42
3J528FC63
3J528GA08
3J528HA12
5H125AA01
5H125BA00
5H125BE05
5H125CD02
5H125DD14
5H125EE08
5H125EE41
(57)【要約】
【課題】十分な駆動性能を得ることができる駆動ユニットを提供する。
【解決手段】駆動ユニット100は、電気モータ2と、変速機4と、を備える。電気モータ2は、最大トルク(N・m)が最高出力(kW)の2倍以下となる特性を有する。変速機4は、電気モータ2の回転速度を可変の変速比で変速するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大トルク(N・m)が最高出力(kW)の2倍以下となる特性を有する電気モータと、
前記電気モータの回転速度を可変の変速比で変速するように構成される変速機と、
を備える駆動ユニット。
【請求項2】
前記電気モータの動力を前記変速機に遮断可能に伝達するように構成されたクラッチをさらに備える、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記クラッチは、乾式クラッチである、
請求項2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記クラッチは、ソリッドタイプである、
請求項2又は3に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記電気モータは、6000r/min以下の最大回転速度を有する、
請求項1から4のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記変速機は、2以上の変速比幅を有する、
請求項1から5のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記変速機は、3段以上のギヤ列を有する、
請求項1から6のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項8】
電気モータを制御するように構成された制御部をさらに備え、
前記制御部は、後進時において、前記3段以上のギヤ列のうちもっとも変速比が大きいギヤ列が選択されていると判断したときに、前記電気モータを逆回転させる、
請求項7に記載の駆動ユニット。
【請求項9】
前記電気モータの回転速度に応じた音を発生させる電子音発生装置をさらに備える、
請求項1から8のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項10】
前記電気モータの回転によって音を発生させる音出し部材をさらに備える、
請求項1から9のいずれかに記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を排出しない移動手段として、電気モータを駆動源とする電気自動車が近年注目されている。電気自動車は、電気モータのみを駆動源とし、内燃機関を有していない。電気モータは低回転時から最大トルクを発生することができるため、電気自動車はトランスミッションを有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-159306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大型トラックなどにおいて駆動源を電気モータのみとすると、駆動性能が十分ではないという問題がある。そこで、本発明の課題は、十分な駆動性能を得ることができる駆動ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある側面に係る駆動ユニットは、電気モータと、変速機と、を備える。電気モータは、最大トルク(N・m)が最高出力(kW)の2倍以下となる特性を有する。変速機は、電気モータの回転速度を可変の変速比で変速するように構成される。
【0006】
この構成によれば、電気モータからの駆動力を変速機によって変速して出力するため、十分な駆動性能を得ることができる。なお、通常の電気自動車に用いられる電気モータは、最大トルク(N・m)が最高出力(kW)の3倍以上となる特性を有しているため、変速機に大きな負担が掛かる。これに対して、本願発明の電気モータは、最大トルク(N・m)が最高出力(kW)の2倍以下となる特性を有している。このため、変速機に掛かる負担を低減することができ、従来の内燃機関自動車に用いられる変速機を流用することができる。
【0007】
好ましくは、駆動ユニットは、クラッチをさらに備える。クラッチは、電気モータの動力を変速機に遮断可能に伝達するように構成されている。
【0008】
好ましくは、クラッチは、乾式クラッチである。
【0009】
好ましくは、クラッチは、ソリッドタイプである。
【0010】
好ましくは、電気モータは、6000r/min以下の最大回転速度を有する。
【0011】
好ましくは、変速機は、2以上の変速比幅を有する。
【0012】
好ましくは、変速機は、3段以上のギヤ列を有する。
【0013】
好ましくは、駆動ユニットは、制御部をさらに備える。制御部は、電気モータを制御するように構成される。制御部は、後進時において、3段以上のギヤ列のうちもっとも変速比が大きいギヤ列が選択されていると判断したときに、電気モータを逆回転させる。
【0014】
好ましくは、駆動ユニットは、電気モータの回転速度に応じた音を発生させる電子音発生装置をさらに備える。
【0015】
好ましくは、駆動ユニットは、電気モータの回転によって音を発生させる音出し部材をさらに備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、最大トルクが小さい電気モータであっても十分な駆動性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】駆動ユニットのブロック図。
図2】変速機の概略図。
図3】後進時の制御方法を示すフローチャート。
図4】電気モータのトルクと回転速度との関係を示すグラフ。
図5】駆動ユニットのトルクと回転速度との関係を示すグラフ。
図6】変形例に係る変速機の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態に係る駆動ユニットについて図面を参照しつつ説明する。
【0019】
[駆動ユニット]
図1に示すように、駆動ユニット100は、電気モータ2、クラッチ3、変速機4、制御部5、及び電子音発生装置6を有している。駆動ユニット100は、出力ユニット101にトルクを出力するように構成されている。駆動ユニット100は、例えば、電気自動車に搭載される。
【0020】
[電気モータ]
電気モータ2は、駆動源として用いられる。なお、駆動ユニット100は、駆動源として、エンジンを有していない。すなわち、電気モータ2は、駆動ユニット100の唯一の駆動源である。電気モータ2は、図示しないバッテリからの電力が供給されることによって駆動する。
【0021】
電気モータ2は、正回転及び逆回転する。電気モータ2が正回転することによって、駆動ユニット100は、電気自動車を前進走行させる。一方、電気モータ2が逆回転することによって、駆動ユニット100は、電気自動車を後進走行させる。
【0022】
電気モータ2は、最大トルク(N・m)が最高出力(kW)の2倍以下となる特性を有している。例えば、電気モータ2の最高出力が100kWの時、電気モータ2の最大トルクは150Nm以上200Nm以下となる特性が好ましい。電気モータ2は、6000r/min以下の最大回転速度を有する。
【0023】
[クラッチ]
クラッチ3は、電気モータ2の動力を変速機4に遮断可能に伝達するように構成されている。クラッチ3をクラッチオン状態とすることにより、電気モータ2の動力を変速機4に伝達する。また、クラッチ3をクラッチオフ状態とすることにより、クラッチ3は、電気モータ2の動力を変速機4に伝達しない。クラッチ3は、例えば、乾式クラッチである。また、クラッチ3は、ソリッドタイプである。すなわち、クラッチ3は、回転方向に捩れないよういに構成されている。具体的には、クラッチ3は、ダンパ機能を有していない。
【0024】
[変速機]
変速機4は、電気モータ2の回転速度を可変の変速比で変速するように構成されている。例えば、変速機4は、マニュアルトランスミッションである。
【0025】
図2に示すように、変速機4は、入力シャフト40a、出力シャフト40bを有している。入力シャフト40aには、電気モータ2からの動力が入力される。出力シャフト40bは、出力ユニット101へ動力を出力する。
【0026】
また、変速機4は、3段以上のギヤ列を有する。なお、本実施形態では、変速機4は、5段のギヤ列を有する。すなわち、変速機4は、第1~第5ギヤ列41~45を有する。第1~第5ギヤ列41~45のそれぞれは、複数のギヤ(例えば1対のギヤ)を有している。
【0027】
変速機4は、第1~第5ギヤ列41~45のいずれかによって電気モータ2からの動力を出力ユニット101に伝達する。このように、変速機4は、第1~第5ギヤ列41~45のいずれかを選択できるため、変速比が可変である。
【0028】
第1ギヤ列41、第2ギヤ列42、第3ギヤ列43、第4ギヤ列44、第5ギヤ列45の順に変速比が大きい。すなわち、第1ギヤ列41の変速比が最も大きく、第5ギヤ列45の変速比が最も小さい。変速機4の変速比幅は、2以上である。すなわち、第1ギヤ列41の変速比を第5ギヤ列45の変速比で除した値は2以上である。なお、第1~第5ギヤ列41~45は正転ギヤ列である。電気モータ2が正回転して、第1~第5ギヤ列41~45のいずれかを介して出力された駆動力により、車両は前進走行する。
【0029】
[制御部]
制御部5は、電気モータ2を制御するように構成されている。制御部5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びROM(Read Only Memory)等を備えるコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ)によって構成されている。ROMには、種々の演算をするためのプログラムが記憶されている。CPUは、ROMに記憶されたプログラムを実行する。
【0030】
制御部5は、後進時において、電気モータ2を逆回転させる。そして、制御部5は、第1~第5ギヤ列41~45のうち、もっとも変速比が大きいギヤ列である第1ギヤ列41を介して動力を伝達させる。
【0031】
図3は、制御部5による制御方法の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、制御部5は、まず、運転者によって後進スイッチが操作されたか否かを判断する(ステップS1)。なお、後進スイッチは、例えば、ボタンスイッチや、タッチパネルなどによって構成することができる。
【0032】
制御部5は、後進スイッチが操作されたと判断すると(ステップS1のYes)、次に、変速機4の第1~第5ギヤ列41~45のうち、最も変速比が大きい第1ギヤ列41が選択されているか否か判断する(ステップS2)。
【0033】
制御部5は、第1ギヤ列41が選択されている判断すると(ステップS2のYes)、次に、アクセルが踏まれているか否か判断する(ステップS3)。例えば、制御部5は、アクセル開度などに基づいて、アクセルが踏まれているか否かを判断する。
【0034】
制御部5は、アクセルが踏まれていると判断したとき(ステップS3のYes)、電気モータ2を逆回転させる(ステップS4)。この結果、車両は後進走行する。
【0035】
[電子音発生装置]
電子音発生装置6は、電気モータ2の回転速度に応じた音を発生させる。例えば、制御部5が電気モータ2の回転速度に応じた音を発生させるように、電子音発生装置6を制御する。電子音発生装置6は、電気モータ2の回転速度が高くなるにつれて、高い音を発生させたり、大きい音を発生させたりすることができる。なお、電子音発生装置6は、運転者に聞こえるように、車内に向けて音を出す。
【0036】
[各種特性]
図4は、電気モータのトルクと回転速度との関係を示すグラフである。図4において、破線は従来の電気自動車に用いられる電気モータの特性を示し、実線は本実施形態の駆動ユニットに用いられる電気モータ2の特性を示す。図4に示すように、駆動ユニット100の電気モータ2は、従来の電気自動車に用いられる電気モータよりも作動範囲が狭い。すなわち、電気モータ2は、従来の電気モータに比べて、最大回転速度が小さい。また、電気モータ2は、同じ出力の従来モータに比べて、最大トルクが小さい。
【0037】
図5は、電気モータ2と変速機4とを組み合わせた駆動ユニット100が出力するトルクと回転速度との関係を示すグラフである。図5において、線Aは第1ギヤ列41を選択した場合の特性、線Bは第2ギヤ列42を選択した場合の特性、線Cは第3ギヤ列43を選択した場合の特性、線Dは第4ギヤ列44を選択した場合の特性、線Eは第5ギヤ列45を選択した場合の特性を示す。また、線Fは、従来の電気自動車に用いられる電気モータの特性を示す。
【0038】
図5に示すように、駆動ユニット100の電気モータ2は、変速機4と組み合わせることによって、従来の電気モータよりも最大トルク及び最大回転速度を大きくすることができる。
【0039】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0040】
(a)上記実施形態では、変速機4は、正転ギヤ列のみを有しており、反転ギヤ列を有していないが、変速機4の構成はこれに限定されない。例えば、図6に示すように、変速機4は、反転ギヤ列46を有していてもよい。反転ギヤ列46は、第1~第5ギヤ列41~45よりも変速比が大きい。すなわち、反転ギヤ列46の変速比は、第1ギヤ列41の変速比よりも大きい。この反転ギヤ列46を介して、電気モータ2の正回転の駆動力が出力されると、車両は後進する。
【0041】
(b)駆動ユニット100は、音出し部材をさらに備えていてもよい。音出し部材は、電気モータ2の回転によって音を発生させる。例えば、音出し部材は、電気モータ2とともに回転し、固定されている部材と衝突することによって、衝突音を発生させる。
【符号の説明】
【0042】
2 :電気モータ
3 :クラッチ
4 :変速機
5 :制御部
6 :電子音発生装置
41 :第1ギヤ列
42 :第2ギヤ列
43 :第3ギヤ列
44 :第4ギヤ列
45 :第5ギヤ列
46 :反転ギヤ列
100 :駆動ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6