(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130818
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】エンジン冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
B60K11/04 K
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035329
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】小竹 亨
(72)【発明者】
【氏名】大倉 潤
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB03
3D038AC07
3D038AC12
3D038AC13
3D038AC16
(57)【要約】
【課題】ラジエータとインタークーラの隙間に浸入した気流によるインタークーラの冷却性能低下を抑制する。
【解決手段】エンジン冷却装置は、車両の前端部に配置されたラジエータ3と、ラジエータの前方に隙間5を隔てて重ねて配置されたインタークーラ2と、隙間に下方から気流F2が浸入するのを抑制するための抑制部材20とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前端部に配置されたラジエータと、
前記ラジエータの前方に隙間を隔てて重ねて配置されたインタークーラと、
前記隙間に下方から気流が浸入するのを抑制するための抑制部材と、
を備えたことを特徴とするエンジン冷却装置。
【請求項2】
前記抑制部材は、前後左右方向に延びる横板部分を有する
請求項1に記載のエンジン冷却装置。
【請求項3】
前記抑制部材は、前記横板部分の後端部から下方に延びる縦板部分を有する
請求項2に記載のエンジン冷却装置。
【請求項4】
前記横板部分の左右長は、前記縦板部分の左右長より短い
請求項3に記載のエンジン冷却装置。
【請求項5】
前記抑制部材は、前記隙間の左右方向の略全長に亘って延びている
請求項1~4のいずれか一項に記載のエンジン冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はエンジン冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両には、エンジンを冷却するためのエンジン冷却装置が装備されている。エンジン冷却装置は、車両の前端部に配置されたラジエータと、ラジエータの前方に隙間を隔てて重ねて配置されたインタークーラとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行中に走行風がラジエータとインタークーラの隙間に下方から浸入することがある。この隙間に入った上向きの気流は、インタークーラを前方から後方に通過する気流を妨げる。そのため、インタークーラの冷却性能が低下するという問題がある。
【0005】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、ラジエータとインタークーラの隙間に浸入した気流によるインタークーラの冷却性能低下を抑制することができるエンジン冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、
車両の前端部に配置されたラジエータと、
前記ラジエータの前方に隙間を隔てて重ねて配置されたインタークーラと、
前記隙間に下方から気流が浸入するのを抑制するための抑制部材と、
を備えたことを特徴とするエンジン冷却装置が提供される。
【0007】
好ましくは、前記抑制部材は、前後左右方向に延びる横板部分を有する。
【0008】
好ましくは、前記抑制部材は、前記横板部分の後端部から下方に延びる縦板部分を有する。
【0009】
好ましくは、前記横板部分の左右長は、前記縦板部分の左右長より短い。
【0010】
好ましくは、前記抑制部材は、前記隙間の左右方向の略全長に亘って延びている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ラジエータとインタークーラの隙間に浸入した気流によるインタークーラの冷却性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る車両の概略側面図である。
【
図3】本実施形態の要部を示す側面断面図であり、
図2のIII-III断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0014】
図1は、本開示の実施形態に係る車両の概略図である。本実施形態において、車両Vはトラックであり、車両Vに搭載されたエンジン(内燃機関)1はディーゼルエンジンである。但し車両およびエンジンの種類等に特に限定はなく、例えば車両は乗用車であってもよいし、エンジンはガソリンエンジンであってもよい。
【0015】
前後左右上下の各方向は図示する通りであり、車両Vの各方向と一致する。
【0016】
エンジン1は車両Vの前端部に縦置き状態で、かつ若干後傾状態で配置されている。エンジン1の前方には、エンジン冷却装置を構成するインタークーラ2、ラジエータ3、およびファンシュラウド4内に配置されたファン(図示せず)が前方から順に配置されている。ラジエータ3も車両Vの前端部に配置され、インタークーラ2はラジエータ3の前方に隙間5(
図3参照)を隔てて重ねて配置されている。
【0017】
周知のように、ラジエータ3は、これを前方から後方に通過する気流とエンジン冷却水との間で熱交換を行うことによりエンジン冷却水を冷却する熱交換器である。またインタークーラ2は、これを前方から後方に通過する気流と、ターボチャージャのコンプレッサ通過後の吸気との間で熱交換を行うことにより吸気を冷却する熱交換器である。ラジエータ3およびインタークーラ2を通過する気流は、主に走行風およびファン風に起因する空気流である。
【0018】
次に、
図2および
図3を参照して本実施形態の要部を説明する。
【0019】
図2および
図3に示すように、車両Vの車体(ラダーフレーム)側のブラケットにはラジエータ3およびインタークーラ2がそれぞれボルト7および8により取り付けられている。ラジエータ3は、上端部に位置されて冷却水を導入するアッパータンク(図示せず)と、下端部に位置されて冷却水を排出するロアータンク9と、これらアッパータンクおよびロアータンク9を連結するコア10とを有する。コア10は多数のチューブとフィンを一体化したフィン付きチューブで構成されている。ロアータンク9の前面部には、ドレン水を排出するドレン穴を開閉するためのドレンボルト11が取り付けられている。ドレンボルト11は、車両Vの前方下部からアクセスして手回しで開閉することができる。
【0020】
インタークーラ2は、右端部に位置されて吸気を導入する入口タンク12と、左端部に位置されて吸気を排出する出口タンク13と、これら入口タンク12および出口タンク13を連結する複数のチューブ14とを有する。チューブ14は、水平フィンの如く形成された扁平チューブからなり、上下方向に等間隔で複数設けられている。チューブ14内では矢印a方向に吸気が流れ、このチューブ14内の吸気と、チューブ14外の外気との間で熱交換が行われる。これによりチューブ14内の吸気が冷却される。
【0021】
隣り合うチューブ14同士の隙間15には、前方から後方に向かって気流F1が流れる。この気流F1は、隙間15を通過した後、隙間5を経て、ラジエータ3のコア10を通過し、そのときにコア10内の冷却水を冷却する。その後、気流F1は、作動中または停止中のファン(図示せず)を通過する。
【0022】
インタークーラ2は、
図3に示すように、最下段のチューブ14Aがロアータンク9の上端部と略同一高さとなるように配置されている。より詳細には、インタークーラ2は、最下段のチューブ14Aの下端(後端)が、ロアータンク9の上端面9Aの上端(前端)より僅かに低い位置に位置されるように配置されている。ロアータンク9のうち、前方から見てインタークーラ2と重ならない部分、すなわち最下段のチューブ14Aより下方に位置する部分が存在する。この部分は、仮想線bより下方に位置する部分9Bであり、前方から見たときに、インタークーラ2から下方に突出しているように見える。そこでこの部分9Bを突出部分と称する。
【0023】
隙間5は、ラジエータ3とインタークーラ2の間の前後方向の隙間である。ラジエータ3とインタークーラ2が互いに平行に配置されるため、隙間5の大きさは実質的に高さ方向に一定である。
【0024】
さて、前述したように、車両Vの走行中、走行風がラジエータ3とインタークーラ2の隙間5に下方から浸入することがある。この隙間5に入った上向きの気流は、インタークーラ2を前方から後方に通過する気流F1を妨げる。そのため、インタークーラ2の冷却性能が低下するという問題がある。
【0025】
そこで本実施形態のエンジン冷却装置は、隙間5に下方から気流が浸入するのを抑制するための抑制部材20を備える。
【0026】
抑制部材20は概して、隙間5の真下であって、インタークーラ2の最下段のチューブ14Aより僅かに下方の位置に配置されている。抑制部材20は、左右方向に延びると共に、その左右両端部において、車体側の取付ブラケット6にボルト21により取り付けられている。本実施形態の抑制部材20は、アルミ、鉄等の金属板をプレス加工により折り曲げて一体的に作製されている。
【0027】
抑制部材20は、隙間5の左右方向の略全長に亘って延びている。本実施形態では、ラジエータ3とインタークーラ2の左右方向の全長がほぼ等しく、かつ、これらの左右方向の中心が同一位置に位置されるため、抑制部材20は、ラジエータ3とインタークーラ2の略全長にも亘って延びている。
【0028】
抑制部材20は、前後左右方向に延びる横板部分22を有する。また抑制部材20は、横板部分22の後端部から下方に延びる縦板部分23を有する。本実施形態の場合、横板部分22と縦板部分23は、抑制部材20の素材である板材(金属板)を所定角度(本実施形態では90°)で折り曲げることにより形成される。
【0029】
図3に示すように、横板部分22は、チューブ14(特に最下段チューブ14A)に平行な板状の部分である。横板部分22は、最下段チューブ14Aおよびロアータンク9の間の隙間5の前後長と略等しい前後長A1を有する。但し横板部分22は、最下段チューブ14Aの下面に沿って流れた後にラジエータ3のコア10に浸入する気流を阻害しないよう、最下段チューブ14Aより僅かに後方かつ下方に位置されている。横板部分22の後端部は、前後方向において、ラジエータ10のロアータンク9と部分的に重なっている。なお横板部分22は、必ずしもチューブ14(特に最下段チューブ14A)に平行でなくてもよい。
【0030】
図2および
図3に示すように、縦板部分23は、上下左右方向に延びる。縦板部分23の左右長B2は、横板部分22の左右長B1より長くされる。逆に言えば、横板部分22の左右長B1は、縦板部分23の左右長B2より短い。
【0031】
横板部分22は、縦板部分23の左右一方側に偏って配置される。本実施形態の場合、横板部分22は、縦板部分23の左側に偏って配置され、縦板部分23の左半部のみに配置される。縦板部分23の右半部には配置されない。
【0032】
縦板部分23の左右長B2は、抑制部材20の左右長をなす。縦板部分23の左右両端部がボルト21により取付ブラケット6に取り付けられる。
【0033】
縦板部分23は、その左半部に、横板部分22と連結すべく上方に向かって延びる連結部24を有する。連結部24は、その上下方向の中間部に、略クランク状に折曲された折曲部25を有する。この折曲部25により連結部24の剛性を向上することができる。
【0034】
一方、縦板部分23の右半部には、横板部分22が無いため、連結部24も存在しない。代わりに、縦板部分23の右半部には、ドレンボルト11への前方からのアクセスを許容するためのドレンボルト穴26が設けられている。このドレンボルト穴26の形状に合わせて、縦板部分23の右半部の上端縁は山状に盛り上がっている。ドレンボルト穴26の周囲において素材が後方に向かってアール状に曲げられている。これにより剛性向上と、シャープエッジによる怪我の防止とを図ることができる。
【0035】
縦板部分23は、その左右全長において、ラジエータ10のロアータンク9より下方の位置まで延びる。そのため、ロアータンク9の下側を素通りしようとする前方からの気流F3を、縦板部分23によって上方に曲げ、ラジエータ10のコア10に案内することができる。これにより、ラジエータ10の通過風量を増大すると共に、ラジエータ10に入る気流の温度を低下させることができ、ラジエータ10の冷却性能を向上することができる。
【0036】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0037】
抑制部材20が無いと仮定した比較例の場合、
図3に示すように、車両Vが前方に向かって走行している最中、走行風による前方からの気流F1がインタークーラ2とラジエータ3を順次通過する。一方、前方から見てインタークーラ2より下方に突出するロアータンク9の突出部分9Bにも、前方からの気流F2が衝突する。この気流F2は衝突後、上方に曲げられ、隙間5に下方から浸入する。するとこの隙間5内の上向き気流F2によって、インタークーラ2を通過する気流F1が妨げられる。すなわち、インタークーラ2を通過する気流F1の流量が減少される。
【0038】
しかし、抑制部材20がある本実施形態の場合には、図中×印で示すように、抑制部材20、特にその横板部分22によって、気流F2の隙間5への浸入を抑制することができる。よって気流F1への妨害を抑制でき、インタークーラ2の冷却性能低下を抑制することができる。
【0039】
一方、本実施形態の場合、縦板部分23によって、ロアータンク9の下側の気流F3をラジエータ10のコア10に案内するようにしている。この気流F3の隙間5への浸入も、横板部分22によって妨げられてしまう。よって縦板部分23によるラジエータ10の冷却性能向上効果が減殺されてしまう。
【0040】
しかし、本実施形態では、横板部分22の左右長B1が縦板部分23の左右長B2より短くされている。よって抑制部材20のうち、横板部分22が無い右半部において、気流F3を縦板部分23によってラジエータ10のコア10に案内し、縦板部分23によるラジエータ10の冷却性能向上効果を確保できる。
【0041】
特に、インタークーラ2を通過した直後の気流F1は、吸気との熱交換により加熱された直後の気流であり、温度が上昇している。よってこの温度上昇した気流F1をラジエータ10のコア10に供給すると、ラジエータ10の冷却性能が低下してしまう。
【0042】
しかし本実施形態では、縦板部分23によって、比較的低温の気流F3をコア10に案内することができる。そのため、コア10に供給する気流の温度を低下させ、ラジエータ10の冷却性能を向上できる。よって、横板部分22が無く縦板部分23のみがある右半部では、ラジエータ10の冷却性能を向上できる。
【0043】
よって、本実施形態によれば、横板部分22によるインタークーラ2の冷却性能向上効果と、縦板部分23によるラジエータ10の冷却性能向上効果とを最大限バランスさせることができ、全体として最適な冷却性能を獲得することが可能となる。
【0044】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。
【0045】
(1)例えばラジエータ3は、本実施形態ではダウンフロー式であったが、サイドクロスフロー式であってもよい。
【0046】
(2)抑制部材20は、金属板等の板材以外でも作製可能であり、例えば棒状の部材によっても作製可能である。
【0047】
(3)縦板部分23は省略可能である。
【0048】
(4)横板部分22の左右長B1と縦板部分23の左右長B2は任意に設定でき、前者を後者と等しくしてもよいし、前者を後者より長く設定してもよい。
【0049】
本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
2 インタークーラ
3 ラジエータ
5 隙間
20 抑制部材
22 横板部分
23 縦板部分
B1,B2 左右長
F1,F2,F3 気流
V 車両