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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130820
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230913BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20230913BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230913BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20230913BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01M10/0566
H01M10/0525
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035331
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】高林 裕也
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028BB03
5H028BB04
5H028CC08
5H028CC10
5H028CC11
5H028HH05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AM01
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ03
5H029DJ04
5H029EJ12
5H029HJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】金属異物の混入により電極間に生ずる短絡不良の検査精度を向上させる。
【解決手段】二次電池1は、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35P,35Nを備える。各電極シート35P,35Nは、集電体31となる基材36P,36N上に電極活物質を含んだ電極合材60P,60Nを塗工することにより形成される。正極3を構成する電極シート35Pは、電極合材60Pが塗工されない正極未塗工部70を周縁部65に有する。また、正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5の対向面5sとの間には隙間75が形成される。更に、負極4を構成する電極シート35Nは、正極未塗工部70との間にセパレータ5を挟む位置に、このセパレータ5に当接する負極合材層62Nを有する。そして、二次電池1は、正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5の対向面5sとの間の隙間75に電解液43を確保する保液構造80を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを挟んで積層された正負の電極シートを備え、
前記各電極シートは、集電体となる基材上に電極活物質を含んだ電極合材を塗工してなり、
正極を構成する前記電極シートは、前記電極合材が塗工されない正極未塗工部を周縁部に有し、前記正極未塗工部の未塗工面と該未塗工面に対向する前記セパレータの対向面との間には隙間が形成されるとともに、
負極を構成する前記電極シートは、前記正極未塗工部との間に前記セパレータを挟む位置に該セパレータに当接する負極合材層を有するものであって、
前記隙間に電解液を確保する保液構造を備える二次電池。
【請求項2】
前記保液構造は、前記正極を構成する前記電極シートにおいて前記基材上に形成された正極合材層に対する前記セパレータの正極合材当接部よりも前記対向面を有した前記セパレータの対向部に大きな厚みを設定してなる請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記保液構造は、前記対向面に保液材を塗工してなる
請求項1又は請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記保液構造は、前記正極を構成する前記電極シートにおいて前記基材上に形成された正極合材層の厚みよりも前記未塗工面と前記対向面との間隔を狭めてなる
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記保液構造は、前記各電極シート及び前記セパレータを厚み方向に圧縮する押圧力の印加に基づいて、前記正極を構成する前記電極シートにおいて前記基材上に形成された正極合材層を有する正極合材塗工部から離間した周縁側の位置ほど前記未塗工面が前記対向面に近接するように前記正極未塗工部を折り曲げる押圧部材を備える
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記押圧力に基づき前記各電極シート及び前記セパレータを前記圧縮する位置に設けられたフィルム材を備え、
前記保液構造は、前記フィルム材が前記正極合材塗工部を前記圧縮する位置の厚みよりも、前記フィルム材が前記正極未塗工部を前記圧縮する位置の厚みの方が大きくなるように、前記押圧部材となる前記フィルム材の厚み形状を設定してなる
請求項5に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1等に示すように、リチウムイオン二次電池等、二次電池においては、製造時、その正極に、例えば、銅(Cu)等の金属異物が混入する可能性がある。更に、このような場合、充電の際、その金属異物が電解液中に溶解して負極側に移動する現象が見られる。そして、この負極側に移動した金属異物が局所的に析出することで、その負極と正極とを短絡する可能性がある。
【0003】
この点を踏まえ、二次電池の製造においては、通常、組み立てられた二次電池を一定の環境下で保管する所謂エージング工程の後、その電圧測定が行われる。そして、これにより検出されるエージング後の電圧降下に基づいて、その金属異物の混入による電極間の短絡を含めた二次電池の製造不良を検査する構成が一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/121563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属異物が混入した二次電池であっても、そのエージング後の検査で電圧降下が検出されない場合がある。即ち、正極に混入した金属異物がエージング前の充電時に溶解しなかった場合、エージング後の検査では、その製造不良を検知することができない。そして、このような場合、二次電池の出荷後に、その金属異物が電解液中に溶解することで、上記のような電極間の短絡が生ずる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する二次電池は、セパレータを挟んで積層された正負の電極シートを備え、前記各電極シートは、集電体となる基材上に電極活物質を含んだ電極合材を塗工してなり、正極を構成する前記電極シートは、前記電極合材が塗工されない正極未塗工部を周縁部に有し、前記正極未塗工部の未塗工面と該未塗工面に対向する前記セパレータの対向面との間には隙間が形成されるとともに、負極を構成する前記電極シートは、前記正極未塗工部との間に前記セパレータを挟む位置に該セパレータに当接する負極合材層を有するものであって、前記隙間に電解液を確保する保液構造を備える。
【0007】
上記構成によれば、正極未塗工部の未塗工面とセパレータの対向面との間の隙間に十分な電解液を確保して、その正極未塗工部に混入した金属異物の溶解を促進することができる。その結果、この金属異物が負極側に移動して局所的に析出することにより短絡故障を生じさせる可能性のある場合には、二次電池の組み立て後に行われる最初の充電過程において、その短絡故障の発生に至る金属異物の溶解及び局所的な析出を進行させることができる。つまりは、電圧降下の測定に基づいたエージング後の検査において製造不良が検知されるようにすることができる。そして、これにより、金属異物の混入により正負の電極間に生ずる短絡不良の検査精度を向上させることができる。
【0008】
上記課題を解決する二次電池において、前記保液構造は、前記正極を構成する前記電極シートにおいて前記基材上に形成された正極合材層に対する前記セパレータの正極合材当接部よりも前記対向面を有した前記セパレータの対向部に大きな厚みを設定してなることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、セパレータの対向面が正極未塗工部の未塗工面に近づくことで、その隙間に位置する金属異物が、電解液が含浸されたセパレータの対向面に接触しやすくなる。加えて、隙間自体についてもまた、その表面張力に基づいた保液能力の向上が期待できる。その結果、より効果的に、この隙間に電解液を確保することができる。
【0010】
上記課題を解決する二次電池において、前記保液構造は、前記対向面に保液材を塗工してなることが好ましい。
上記構成によれば、正極未塗工部に混入した金属異物が、電解液が含浸された保液材に接触する態様で、その正極未塗工部の未塗工面とセパレータの対向面との間の隙間に電解液を確保することができる。
【0011】
上記課題を解決する二次電池において、前記保液構造は、前記正極を構成する前記電極シートにおいて前記基材上に形成された正極合材層の厚みよりも前記未塗工面と前記対向面との間隔を狭めてなることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、その未塗工面と対向面との間の隙間に位置する金属異物が、電解液が含浸されたセパレータの対向面に接触しやすくなる。加えて、隙間自体についてもまた、その表面張力に基づいた保液能力の向上が期待できる。そして、これにより、効果的に、この隙間に電解液を確保することができる。
【0013】
上記課題を解決する二次電池は、前記保液構造において、前記各電極シート及び前記セパレータを厚み方向に圧縮する押圧力の印加に基づいて、前記正極を構成する前記電極シートにおいて前記基材上に形成された正極合材層を有する正極合材塗工部から離間した周縁側の位置ほど前記未塗工面が前記対向面に近接するように前記正極未塗工部を折り曲げる押圧部材を備えることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、正極未塗工部の折り曲げにより断面略三角形の封鎖形状に変形した隙間を液溜まりとして、その正負の電極シート及びセパレータが形成する電極体に含浸された電解液の外部流出を抑制することができる。
【0015】
即ち、正極未塗工部の折り曲げにより変形した隙間内に電解液を保持することで、その隙間に位置する金属異物が電解液に触れやすい状態を作り出す。更に、折り曲げられた正極未塗工部の未塗工面がセパレータの対向面に近づくことで、その隙間に位置する金属異物が、電解液が含浸されたセパレータの対向面に接触しやすくなる。そして、これにより、その正極未塗工部の未塗工面とセパレータの対向面との間の隙間に電解液を確保することができる。
【0016】
上記課題を解決する二次電池は、前記押圧力に基づき前記各電極シート及び前記セパレータを前記圧縮する位置に設けられたフィルム材を備え、前記保液構造は、前記フィルム材が前記正極合材塗工部を前記圧縮する位置の厚みよりも、前記フィルム材が前記正極未塗工部を前記圧縮する位置の厚みの方が大きくなるように、前記押圧部材となる前記フィルム材の厚み形状を設定してなることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、フィルム材に設定された厚み形状の差異を利用して、セパレータの対向部との間に形成される隙間内に押し込む態様で、その正極未塗工部を折り曲げることができる。そして、これにより、この正極未塗工部の折り曲げにより変形した断面略三角形の封鎖形状内に保持する態様で、その正極未塗工部の未塗工面とセパレータの対向面との間の隙間に電解液を確保することができる。
【0018】
また、フィルム材に設定された厚み形状によって、その印加された押圧力に基づき正負の電極シート及びセパレータを厚み方向に圧縮する力は、その正極合材塗工部が位置する周縁部側よりも中央側が弱くなる。そして、これにより、正負の電極シート及びセパレータが形成する電極体に含浸された電解液が、この電極体に印加された押圧力に基づいて中央側から周縁側に移動して外部に流出する状況を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属異物の混入により電極間に生ずる短絡不良の検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】二次電池の斜視図である。
図2】電極体の分解図である。
図3】二次電池の側面図である。
図4】電池スタックの斜視図である。
図5】第1の実施形態の保液構造を示す二次電池の断面図である。
図6】従来例の二次電池の断面図である。
図7】第2の実施形態の保液構造を示す二次電池の断面図である。
図8】第3の実施形態の保液構造を示す二次電池の断面図である。
図9】第3の実施形態の保液構造を示す二次電池の断面図である。
図10】第3の実施形態の保液構造の説明図である。
図11】別例の保液構造を示す二次電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
以下、二次電池に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、二次電池1は、正極3、負極4、及びセパレータ5を一体化した電極体10と、この電極体10を収容するケース20と、を備えている。そして、本実施形態の二次電池1は、そのケース20内の電極体10に、図示しない非水性の電解液を含浸させたリチウムイオン二次電池としての構成を有している。
【0022】
詳述すると、本実施形態の二次電池1において、正極3、負極4、及びセパレータ5は、シート状の外形を有して積層される。そして、これら正極3、負極4、及びセパレータ5の積層体を捲回することにより、正極3と負極4との間にセパレータ5を挟み込む状態で、その径方向に正負の電極とセパレータ5とが交互に並ぶ電極体10が形成されている。
【0023】
また、本実施形態のケース20は、扁平略四角箱状のケース本体21と、このケース本体21の開口端21xを閉塞する蓋部材22と、を備えている。そして、本実施形態の電極体10は、このケース20の箱形状に対応する扁平した外形を有するものとなっている。
【0024】
さらに詳述すると、図2に示すように、本実施形態の二次電池1において、正極3及び負極4は、それぞれ、シート状の外形を有した集電体31と、この集電体31上に積層された電極活物質層32とを備えた電極シート35としての構成を有する。
【0025】
具体的には、正極3用の電極シート35Pについては、その正極集電体31Pを構成するアルミニウム等を素材とした基材36P上に、正極活物質となるリチウム遷移金属酸化物を含んだ合材ペースト37Pが塗工される。また、負極4用の電極シート35Nについては、その負極集電体31Nを構成する銅等を素材とした基材36N上に、負極活物質となる炭素系材料を含んだ合材ペースト37Nが塗工される。更に、これらの合材ペースト37P,37Nには、それぞれ、結着材が含まれている。そして、本実施形態の二次電池1においては、これらの合材ペースト37P,37Nが乾燥することで、正負の電極シート35P,35Nに対して、それぞれ、その対応する正極活物質層32P及び負極活物質層32Nが形成される構成となっている。
【0026】
更に、本実施形態の二次電池1において、これら正負の電極シート35P,35Nは、それぞれ、帯状に整形される。そして、本実施形態の電極体10は、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35P,35Nが、その帯形状の幅方向(図2中、左右方向)に延びる捲回軸L周りに捲回された捲回体10Xとしての構成を有している。
【0027】
尚、図2中においては、その正極3を構成する電極シート35Pを内側に捲き込むかたちで、セパレータ5及び各電極シート35が捲回されている。但し、この図は、電極体10の構造を示す一例であり、その負極4を構成する電極シート35Nを内側に捲き込むかたちで、これらのセパレータ5及び各電極シート35が捲回される場合もある。そして、これにより、その電極体10の最外殻に配置される電極シート35が、正極3を構成する電極シート35Pであるか、又は負極4を構成する電極シート35Nであるかが決定される。
【0028】
また、図1図3に示すように、ケース20の蓋部材22には、ケース20の外側に突出する正極端子38P及び負極端子38Nが設けられている。更に、各電極シート35には、それぞれ、その集電体31上に電極活物質層32が形成されていない未塗工部39が形成されている。そして、本実施形態の二次電池1は、その未塗工部39を利用して、正極3を構成する電極シート35Pと正極端子38Pとが電気的に接続され、及び負極4を構成する電極シート35Nと負極端子38Nとが電気的に接続される構成となっている。
【0029】
具体的には、本実施形態の電極体10は、その捲回軸Lが長尺略矩形板状をなす蓋部材22の長手方向(図1中、左右方向)に沿う状態で、ケース20内に収容される。更に、この状態で、その正極3を構成する電極シート35Pの未塗工部39Pと正極端子38Pとが接続部材40Pを介して接続される。そして、同じく、その負極4を構成する電極シート35Nの未塗工部39Nと負極端子38Nとが接続部材40Nを介して接続される構成となっている。
【0030】
また、図3に示すように、二次電池1は、その電極体10とともにケース20内に収容される絶縁フィルム41を備えている。更に、この絶縁フィルム41は、ケース本体21の開口端21x側に開口する袋形状を有してケース20内に収容される。そして、本実施形態の二次電池1は、この絶縁フィルム41の袋形状内に電極体10を配置することで、その電極体10とケース20とが絶縁される構成になっている。
【0031】
図1及び図3に示すように、本実施形態の二次電池1においては、蓋部材22に設けられた注入口42を介して、そのケース20内に電解液43が注入される。即ち、リチウムイオン二次電池としての構成を有する二次電池1の電解液43には、有機溶媒中に支持塩となるリチウム塩を溶解させたものが用いられる。そして、本実施形態の二次電池1は、これにより、そのケース20内に封缶された電極体10に対して電解液43が含浸される構成になっている。
【0032】
尚、本実施形態の二次電池1において、注入口42は、長尺略矩形板状をなす蓋部材22の長手方向略中央部分に形成された安全弁44の近傍に設けられている。そして、本実施形態の二次電池1は、電解液43の注入後、例えば、レーザー溶接等によって、その注入口42が封止される構成となっている。
【0033】
このように、本実施形態の二次電池1は、ケース20内に電極体10及び電解液43を封入することで、その構成単位、つまりは一つのセル50が形成される。更に、本実施形態の二次電池1においては、このようなセル50が複数組み合わされる。そして、本実施形態の二次電池1は、これにより、その充放電容量及び出力電圧が高められた状態で、例えば、電動車両の電源等に用いられる構成となっている。
【0034】
(電池スタック)
図4に示すように、本実施形態の二次電池1は、一列に配列された複数のセル50を拘束してなる集電池としての電池スタック51を形成する。
【0035】
詳述すると、本実施形態の電池スタック51は、予め設定された所定数のセル50を有している。尚、図4中の電池スタック51については、説明の便宜上、実際よりも、そのセル数が少なく記載されている。また、本実施形態の電池スタック51において、これら各セル50のケース20は、上記のような互いに共通する扁平略四角箱状の外形を有している。そして、本実施形態の電池スタック51は、これらの各セル50を、そのケース20の厚み方向(図3参照、同図中、紙面に直交する方向)に並べた構成となっている。
【0036】
尚、本実施形態の電池スタック51は、これら各セル50の間に介在された略平板状のスペーサ52を有している。また、この電池スタック51は、その各セル50の整列方向両端位置に配置された一対のエンドプレート53,53を備えている。更に、この電池スタック51は、これら一対のエンドプレート53,53間に架け渡された拘束部材54,54を備えている。そして、本実施形態の電池スタック51は、これら拘束部材54,54の拘束力に基づいて、その一列に配列された各セル50が、これら各セル50の配列方向両端に設けられた一対のエンドプレート53,53に挟まれる状態で一体化される構成となっている。
【0037】
(保液構造)
次に、本実施形態の二次電池1に実装された保液構造について説明する。
図5に示すように、本実施形態の二次電池1において、正負の電極シート35P,35Nは、その正極活物質層32P及び負極活物質層32N間にセパレータ5を挟み込む状態で、上記のような電極体10を形成する。
【0038】
即ち、これらの各電極シート35P,35Nは、それぞれ、集電体31となる基材36P,36N上に、それぞれ、電極合材60P,60Nとしての合材ペースト37P,37Nを塗工することにより形成される(図2参照)。このため、これらの電極シート35P,35Nにおいて、その基材36P,36Nは、それぞれ、正極芯材61P及び負極芯材61Nと呼称される。更に、これらの各基材36P,36N上に形成される正極活物質層32P及び負極活物質層32Nは、それぞれ、正極合材層62P及び負極合材層62Nと呼称される。そして、本実施形態の二次電池1は、これらの正極合材層62P及び負極合材層62Nの間にセパレータ5を挟み込む状態で、その正負の各電極シート35P,35Nが電極体10を形成する構成となっている。
【0039】
尚、本実施形態の電極体10は、上記のように、これらの各電極シート35P,35N及びセパレータ5が捲回された捲回体10Xとしての構成を有している(図2参照)。このため、本実施形態の二次電池1は、このような積層配置された正極芯材61P、正極合材層62P、セパレータ5、負極合材層62N、及び負極芯材61Nが、複数段、その捲回体10Xの径方向に並ぶ構成となっている。しかしながら、説明の便宜上、図5及び以下に示す各図中には、その構成単位となる一段分のみを記載するものとする。
【0040】
また、本実施形態の二次電池1においては、このような捲回体10Xとしての構成を有する電極体10の軸方向端部10eに、その正極3を構成する電極シート35Pの未塗工部39Pが配置される。換言すると、正極3側の電極シート35Pは、その帯形状の幅方向端部に形成された未塗工部39Pを捲回軸Lの軸方向一端側に配置する状態で捲回される(図2参照)。また、本実施形態の二次電池1においては、これにより、この電極シート35Pの周縁部65に形成された正極未塗工部70の未塗工面70sと、この未塗工面70sに対向するセパレータ5の対向面5sとの間には隙間75が形成される。更に、負極4を構成する電極シート35Nは、この正極未塗工部70との間にセパレータ5を挟む位置に、そのセパレータ5に当接する負極合材層62Nを有している。そして、本実施形態の二次電池1は、その正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5の対向面5sとの間の隙間75に、電解液43を確保する保液構造80を備えている。
【0041】
具体的には、本実施形態の二次電池1において、この保液構造80は、未塗工面70sに対向するセパレータ5の対向面5sに塗工された保液材81としてのバインダー82により構成されている。即ち、このバインダー82は、例えば、SBR(スチレンブタジエンゴム)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、アクリル酸エステル等、電解液43と親和性の高い樹脂材料を素材とする。そして、本実施形態の二次電池1は、このセパレータ5の対向面5sに塗工されたバインダー82に電解液43を含浸させることで、その正極未塗工部70の未塗工面70sが形成する隙間75に電解液43を確保する構成となっている。
【0042】
即ち、図6に示すように、保液構造80を有しない従来例の二次電池85においては、その正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5の対向面5sとの間の隙間75に十分な電解液43の保液量を確保することが難しい。このため、製造時、その正極未塗工部70に対して、例えば、銅(Cu)等の金属異物Mが混入した場合であっても、一般的なエージング後の検査では、この金属異物Mの混入を要因とする製造不良を検知することができない可能性がある。
【0043】
つまり、正極芯材61P上に形成された正極合材層62Pを有する正極合材塗工部90に混入した金属異物M1は、二次電池85の組み立て後に行われる最初の充電過程において、その電解液43中に溶解する。また、この電解液43に溶解した金属異物M1は、負極4側に移動して、その負極4を構成する電極シート35Nの表面に析出する。更に、局所的に析出した金属異物M1が、その負極4を構成する電極シート35Nと正極3を構成する電極シート35Pを短絡する。そして、これにより生ずる電圧降下に基づいて、そのエージング後の検査により二次電池85の製造不良が検知される。
【0044】
しかしながら、正極合材層62Pを有しない正極未塗工部70に混入した金属異物M2については、この金属異物M2に接触する電解液43の不足から、その溶解が進み難い傾向がある。このため、二次電池85の組み立て後に行われる最初の充電過程では、上記のような電解液43中を負極4側に移動した金属異物M2の析出、及びその局所的に析出した金属異物M2による短絡故障が生じない場合がある。そして、これにより、本来、このような短絡故障を生じさせる可能性のある金属異物M2が混入している場合であっても、その電圧降下の測定に基づいたエージング後の検査を通過してしまうおそれがある。
【0045】
この点を踏まえ、図5に示すように、本実施形態の二次電池1においては、その保液構造80によって、正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5の対向面5sとの間の隙間75に電解液43を確保する。即ち、この隙間75に十分な電解液43を確保することで、その正極未塗工部70に混入した金属異物Mの溶解が促進される。その結果、この金属異物Mが負極4側に移動して局所的に析出することにより短絡故障を生じさせる可能性のある場合には、二次電池1の組み立て後に行われる最初の充電過程において、その短絡故障の発生に至る局所的な析出が進行する。そして、本実施形態の二次電池1は、これにより、その電圧降下の測定に基づいたエージング後の検査において製造不良が検知されるようにすることで、金属異物Mの混入により正負の電極間に生ずる短絡不良の検査精度を向上させる構成になっている。
【0046】
さらに詳述すると、本実施形態の二次電池1において、正極合材層62Pの厚みd0に対し、保液構造80を構成する保液材81としてセパレータ5の対向面5sに塗工されるバインダー82の厚みd2は、例えば、60%以上、100%以下に設定される。即ち、正極合材層62Pの厚みd0は、保液材81となるバインダー82を塗布しない状態において、その正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5の対向面5sとの間に形成される隙間75の間隔αとなる。そして、この場合における各厚みd0,d2は、電解液43が含浸された膨潤状態の値となっている。
【0047】
即ち、セパレータ5の対向面5sにバインダー82を塗工することで、この対向面5sを有したセパレータ5の対向部91については、その実質的な厚みd1´が、塗工されたバインダー82の厚みd2の分だけ、本来の厚みd1よりも厚くなる(d1´>d1)。また、これにより、その塗工されたバインダー82が形成する新たな対向面5s´が正極未塗工部70の未塗工面70sに近づく。つまりは、正極合材層62Pの厚みd0よりも、その対向面5s´と未塗工面70sとの間隔αが狭まることで(α´<α)、その隙間75に位置する金属異物Mが、電解液43が含浸されたバインダー82に接触しやすくなる。そして、本実施形態の二次電池1は、これにより、この保液材81としてのバインダー82が形成する保液構造80によって、その隙間75に電解液43を確保する構成となっている。
【0048】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
例えば、正極合材層62Pの厚みd0が「22.5μm」であり、正極未塗工部70に混入する金属異物Mの粒径(厚み方向)を「10μm」と想定した場合、セパレータ5の対向面5sに塗工すべきバインダー82の厚みd2は「13.5μm以上」となる。更に、これにより、そのバインダー82が形成する新たな対向面5s´と正極未塗工部70の未塗工面70sとの間隔α´が「9.0μm以下」となり、正極未塗工部70に混入した金属異物Mの粒径よりも小さくなる。尚、正極合材層62Pの厚みd0が、例えば「24.9μm」であるとした場合にも、同様にバインダー82の厚みd2を計算することで、その間隔α´を金属異物Mの粒径よりも小さく設定することができる。そして、これにより、電解液43が含浸された保液材81としてのバインダー82に対して金属異物Mに接触する態様で、その正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5の対向面5sとの間に形成される隙間75に電解液43を確保することが可能になる。
【0049】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)二次電池1は、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35P,35Nを備える。これらの電極シート35P,35Nは、それぞれ、集電体31となる基材36P,36N上に、それぞれ、電極活物質を含んだ電極合材60P,60Nを塗工することにより形成される。正極3を構成する電極シート35Pは、電極合材60Pが塗工されない正極未塗工部70を周縁部65に有する。また、この正極未塗工部70の未塗工面70sと、この未塗工面70sに対向するセパレータ5の対向面5sとの間には隙間75が形成される。更に、負極4を構成する電極シート35Nは、その正極未塗工部70との間にセパレータ5を挟む位置に、このセパレータ5に当接する負極合材層62Nを有する。そして、二次電池1は、その正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5の対向面5sとの間の隙間75に、電解液43を確保する保液構造80を備える。
【0050】
上記構成によれば、その正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5の対向面5sとの間の隙間75に十分な電解液43を確保して、その正極未塗工部70に混入した金属異物Mの溶解を促進することができる。その結果、この金属異物Mが負極4側に移動して局所的に析出することにより短絡故障を生じさせる可能性のある場合には、二次電池1の組み立て後に行われる最初の充電過程において、その短絡故障の発生に至る局所的な析出を進行させることができる。つまりは、電圧降下の測定に基づいたエージング後の検査において製造不良が検知されるようにすることができる。そして、これにより、金属異物Mの混入により正負の電極間に生ずる短絡不良の検査精度を向上させることができる。
【0051】
(2)保液構造80は、セパレータ5の対向面5sに保液材81となるバインダー82を塗工することにより構成される。
上記構成によれば、正極未塗工部70に混入した金属異物Mが、電解液43が含浸されたバインダー82に接触する態様で、その正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5の対向面5sとの間の隙間75に電解液43を確保することができる。
【0052】
(3)特に、対向面5sにバインダー82が塗工されたセパレータ5の対向部91については、その実質的な厚みd1´が、塗工されたバインダー82の厚みd2の分だけ、本来の厚みd1よりも厚くなる。そして、これにより、その塗工されたバインダー82が形成する新たな対向面5s´が正極未塗工部70の未塗工面70sに近づく。つまりは、正極合材層62Pの厚みd0よりも、その対向面5s´と未塗工面70sとの間隔αが狭まることで、その隙間75に位置する金属異物Mが、電解液43が含浸されたバインダー82に接触しやすくなる。加えて、隙間75自体についてもまた、その表面張力に基づいた保液能力の向上が期待できる。その結果、より効果的に、この隙間75に電解液43を確保することができる。
【0053】
(4)保液構造80を構成する保液材81としてセパレータ5の対向面5sに塗工されるバインダー82の厚みd2は、正極合材層62Pの厚みd0に対して60%以上、100%以下に設定される。これにより、その隙間75に位置する金属異物Mが、保液材81としてのバインダー82に接触しやすい好適な間隔αを設定することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
以下、二次電池に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0055】
図7に示すように、本実施形態の二次電池1Bは、その保液構造80Bの構成が上記第1の実施形態と相違する。
詳述すると、本実施形態の二次電池1Bにおいて、セパレータ5Bは、その正極芯材61P上に形成された正極合材層62Pに当接する正極合材当接部92の厚みd3よりも、対向面5sを有した対向部91Bの厚みd4の方が厚くなっている(d4>d3)。そして、本実施形態の二次電池1Bは、これにより、その正極未塗工部70の未塗工面70sとセパレータ5Bの対向面5sとの間の隙間75Bに、電解液43を確保する保液構造80Bが形成される構成となっている。
【0056】
即ち、このような構成を採用することで、そのセパレータ5Bの対向面5sを正極未塗工部70の未塗工面70sに近づける、つまりは、正極合材層62Pの厚みd0よりも、その対向面5sと未塗工面70sとの間隔αを狭めることができる。その結果、隙間75Bに位置する金属異物Mが、電解液43が含浸されたセパレータ5Bの対向面5sに接触しやすくなる。また、併せて、隙間75B自体についてもまた、その表面張力に基づいた保液能力の向上が期待できる。そして、これにより、効果的に、その正極未塗工部70が形成する隙間75Bに電解液43を確保することができる。
【0057】
従って、本実施形態の二次電池1Bもまた、上記第1の実施形態における二次電池1と同様、金属異物Mの混入により正負の電極間に生ずる短絡不良の検査精度を向上させることができる。加えて、上記第1の実施形態のように、そのセパレータ5の対向面5sに遅対して保液材81となるバインダー82を塗工する工程が不要という利点がある。
【0058】
[第3の実施形態]
以下、二次電池に関する第3の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0059】
図8及び図9に示すように、本実施形態の二次電池1Cについてもまた、その保液構造80Cの構成が上記第1の実施形態と相違する。
詳述すると、本実施形態の二次電池1Cもまた、上記第1の実施形態における二次電池1と同様、複数のセル50が拘束された電池スタック51を形成する(図4参照)。即ち、この二次電池1Cには、扁平略四角箱状をなすケース20の形状に合わせて扁平した捲回体10Xとしての構成を有する電極体10を、そのケース20の外側から厚み方向(図3中、紙面に直交する方向)に押圧するような拘束圧F0が印加される。更に、本実施形態の二次電池1Cにおいては、この拘束圧F0が、その電極体10を形成する正負の電極シート35P,35N及びセパレータ5を厚み方向(図9中、上下方向)に圧縮する押圧力Fとして作用する。そして、本実施形態の二次電池1Cは、この押圧力Fの印加に基づいて、その正極未塗工部70Cを折り曲げる押圧部材100を備えている。
【0060】
具体的には、本実施形態の二次電池1Cにおいては、上記のように電極体10とともにケース20内に収容された絶縁フィルム41が、その押圧部材100として機能する(図3参照)。即ち、この絶縁フィルム41は、袋形状を有してケース20内に収容されることにより、その袋形状の内側に電極体10を配置する。そして、本実施形態の二次電池1Cは、この電極体10の軸方向端部10e近傍に配置された絶縁フィルム41の一部が、その押圧力Fの印加により正負の電極シート35P,35N及びセパレータ5を圧縮する位置に設けられたフィルム材101を構成する。
【0061】
さらに詳述すると、本実施形態の二次電池1Cにおいて、その押圧部材100となるフィルム材101は、正極3を構成する電極シート35Pの正極芯材61Pに沿う位置(図8及び図9中、下側)に配置される。そして、本実施形態のフィルム材101は、このフィルム材101が正極合材塗工部90を圧縮する位置の厚みd5よりも、このフィルム材101が正極未塗工部70Cを圧縮する位置の厚みd6の方が大きくなるように、その厚み形状が設定されている。
【0062】
即ち、本実施形態の二次電池1Cにおける保液構造80Cは、このフィルム材101に設定された厚み形状の差異を利用することにより、セパレータ5の対向部91との間に形成される隙間75内に押し込む態様で、その正極未塗工部70Cを折り曲げる。具体的には、本実施形態の二次電池1Cは、このフィルム材101に折り曲げられた正極未塗工部70Cの未塗工面70sが、その正極合材塗工部90から離間した周縁側(各図中、左側)の位置ほど、セパレータ5の対向面5sに近接するように構成されている。そして、本実施形態の保液構造80Cは、この断面略三角形の封鎖形状に変形した隙間75Cを液溜まり105として、その電極体10に含浸された電解液43の外部流出を抑制する構成となっている。
【0063】
つまり、本実施形態の保液構造80Cは、正極未塗工部70Cの折り曲げにより変形した隙間75C内に電解液43を保持することで、その隙間75Cに位置する金属異物Mが電解液43に触れやすい状態を作り出す。加えて、折り曲げられた正極未塗工部70Cの未塗工面70sがセパレータ5の対向面5sに近づくことで、その隙間75Cに位置する金属異物Mが、電解液43が含浸されたセパレータ5の対向面5sに接触しやすくなる。
【0064】
尚、図10に示すように、本実施形態の二次電池1Cにおいて、フィルム材101が正極未塗工部70Cを圧縮する位置におけるフィルム材101の厚みd6は、例えば、正極合材層62Pの厚みd0以上に設定するとよい(d6≧d0)。これにより、その変形した隙間75Cが液溜まり105として有効に機能する封鎖形状を形成することができる。
【0065】
即ち、極めて薄い箔状の正極芯材61Pについては、便宜上、その厚みを無視して計算を単純化する。この場合、上記のように封鎖形状に変形した隙間75Cの三角形状δ0は、正極芯材61Pを変形前の隙間75内に押し込むフィルム材101の厚みd6、及び、その封鎖形状を形成する正極芯材61Pの押し込み量x1を二辺とする三角形状δ1と相似関係にある。更に、正極合材塗工部90から離間する方向において、そのセパレータ5の対向面5sが延在する長さx0は、この対向面5sと未塗工面70sとの間隔αの最大値となる正極合材層62Pの厚みd0よりも絶対的に大きい。そして、これにより、その変形した隙間75Cが封鎖形状を形成するために必要な押し込み量x1を確保するためのフィルム材101の厚みd6は、正極合材層62Pの厚みd0によって近似することができる。
【0066】
以上、本実施形態の二次電池1Cもまた、効果的に、その正極未塗工部70Cが形成する隙間75Cに電解液43を確保することができる。そして、これにより、上記第1の実施形態における二次電池1と同様、金属異物Mの混入により正負の電極間に生ずる短絡不良の検査精度を向上させることができる。
【0067】
また、フィルム材101に設定された厚み形状によって、その印加された押圧力Fに基づき正負の電極シート35P,35N及びセパレータ5を厚み方向に圧縮する力は、その正極合材塗工部90が位置する周縁部65側よりも中央側が弱くなる。つまり、捲回体10Xとしての外形を有する電極体10の場合、この電極体10を押し潰す圧縮力は、その軸方向端部10eよりも軸方向中央部10cの方が弱くなる(図2及び図3参照)。そして、本実施形態の二次電池1Cは、これにより、この電極体10に含浸された電解液43が、その軸方向中央部10c側から軸方向端部10e側に移動して外部に流出する状況を抑制することのできる構成となっている。
【0068】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
・上記第1の実施形態では、保液材81としてセパレータ5の対向面5sに塗工されるバインダー82として、SBR(スチレンブタジエンゴム)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、アクリル酸エステル等を用いることとした。しかし、これに限らず、セパレータ5と同様の保持機能を有する電解液43と親和性の高い素材であれば、保液材81は、必ずしも「バインダー」と呼称されるものでなくともよい。
【0070】
・上記第2の実施形態では、セパレータ5Bは、その正極芯材61P上に形成された正極合材層62Pに当接する正極合材当接部92の厚みd3よりも、対向面5sを有した対向部91の厚みd4の方が厚い。これにより、その正極合材層62Pの厚みd0よりも、そのセパレータ5Bの対向面5sと未塗工面70sとの間隔αが狭くなるように構成されることとした。しかし、これに限らず、正極未塗工部70Cを構成する位置の正極芯材61Pを厚くすることにより、そのセパレータ5の対向面5sと未塗工面70sとの間隔αを狭める構成としてもよい。このような構成を採用しても、その隙間75に電解液43を確保する保液構造80を形成することができる。
【0071】
・上記第3の実施形態では、押圧部材100としてのフィルム材101は、正極合材塗工部90を圧縮する位置の厚みd5よりも、この正極未塗工部70Cを圧縮する位置の厚みd6の方が大きくなるような段差状の厚み形状を有することとした(図8参照)。
【0072】
しかし、これに限らず、図11に示す二次電池1Dの保液構造80Dのように、正極3を構成する電極シート35Pの周縁部65側(図11中、左側に)に向かって、徐々に、フィルム材101Dの厚みd7が厚くなるように、その厚み形状を設定してもよい。このような構成を採用しても、このフィルム材101Dを押圧部材100Dとして、その変形した隙間75Dが液溜まり105として有効に機能する封鎖形状を形成することができる。
【0073】
このように、本実施形態の保液構造80Dもまた、その変形した隙間75Dが形成する液溜まり105に保持された電解液43が正極未塗工部70Dに混入した金属異物Mに接触する態様で、その隙間75Dに電解液43を確保する。加えて、その正極未塗工部70Dの折り曲げにより未塗工面70sがセパレータ5の対向面5sに近づくことで、その隙間75Dに位置する金属異物Mが、電解液43が含浸されたセパレータ5の対向面5sに接触しやすくなる。その結果、効果的に、その正極未塗工部70Dが形成する隙間75Dに電解液43を確保することができる。そして、これにより、上記各実施形態と同様、金属異物Mの混入により正負の電極間に生ずる短絡不良の検査精度を向上させることができる。
【0074】
・上記第3の実施形態では、電極体10とともにケース20内に収容された絶縁フィルム41を、その押圧部材100として機能するフィルム材101に利用することとした。しかし、これに限らず、絶縁フィルム41とは別体のフィルム材101を押圧部材100に用いる構成としてもよい。そして、フィルム材101以外の押圧部材100を備える構成であってもよい。
【0075】
・正極端子38P及び負極端子38Nの端子形状については、図1中に示す形状に限らず任意に変更してもよい。そして、二次電池1の外形となるケース20の形状についてもまた、必ずしも扁平四角箱状に限らず、例えば円筒形状等、任意に変更してもよい。
【0076】
・上記各実施形態では、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35P,35Nが、その帯形状の幅方向(図2中、左右方向)に延びる捲回軸L周りに捲回された捲回体10Xとしての電極体10を形成する構成に具体化した。しかし、これに限らず、例えば、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35P,35Nが捲回体10Xを形成しない平面積層状の電極体10を備える構成に適用してもよい。
【0077】
・また、上記各実施形態では、リチウムイオン二次電池としての構成を有した二次電池1に具体化した。しかし、これに限らず、リチウムイオン二次電池以外の二次電池1に適用してもよい。そして、必ずしも、複数のセル50が拘束された電池スタック51を形成するものでなくともよい。
【符号の説明】
【0078】
1…二次電池
3…正極
4…負極
5…セパレータ
5s…対向面
31…集電体
35P,35N…電極シート
36P,36N…基材
43…電解液
60P,60N…電極合材
62N…負極合材層
65…周縁部
70…正極未塗工部
70s…未塗工面
75…隙間
80…保液構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11