(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130850
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ及びサイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/207 20060101AFI20230913BHJP
B60R 21/231 20110101ALI20230913BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035380
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢二
(72)【発明者】
【氏名】李 潔
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054CC04
3D054CC34
3D054CC42
3D054EE20
(57)【要約】
【課題】安定した展開挙動で乗員の肩部及び頭部を拘束することができ、且つ、生産コストを抑制できるサイドエアバッグ及びサイドエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】サイドエアバッグAは、乗員の側方に膨張展開する第1膨張部1と、第1膨張部1の上下方向途中部分から斜め下方へ膨張展開し、乗員の頭部を拘束する第2膨張部2と、を備える。サイドエアバッグAは、第1パネル10と、第1パネル10より大きい第2パネル20とを縫合して構成される。第1パネル10の上部11の周縁と第2パネル20の上部21の周縁とが縫合され、第1パネル10の下部12の周縁と第2パネル20の下部22の周縁とが縫合される。第2パネル20が上部21と下部22との間の中間部23で折り返され、重なり合った領域の周縁同士が縫合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの車幅方向中央側の側部に搭載されるサイドエアバッグであって、
乗員の側方に膨張展開する第1膨張部と、
前記第1膨張部の上下方向途中部分から斜め下方へ膨張展開し、乗員の頭部を拘束する第2膨張部と、
を備え、
第1パネルと、該第1パネルより大きい第2パネルとを縫合して構成され、
前記第1パネルの上部の周縁と前記第2パネルの上部の周縁とが縫合され、
前記第1パネルの下部の周縁と前記第2パネルの下部の周縁とが縫合され、
前記第2パネルが前記上部と前記下部との間の中間部で折り返され、重なり合った領域の周縁同士が縫合されている、サイドエアバッグ。
【請求項2】
前記第2膨張部は、前記第1パネルの上部及び前記第2パネルの上部により構成されている、請求項1に記載のサイドエアバッグ。
【請求項3】
前記第1膨張部の下部は、前記第1パネルの下部及び前記第2パネルの下部により構成されている、請求項2に記載のサイドエアバッグ。
【請求項4】
前記第1膨張部の上部は、折り返された前記第2パネルの中間部により構成されている、請求項3に記載のサイドエアバッグ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかのエアバッグと、該エアバッグを膨張させるインフレータとを有するエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両乗員の側方に膨張展開するサイドエアバッグ及びサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の側面衝突時等に乗員の側方に膨張展開するサイドエアバッグとして、特許文献1には、頭部チャンバとトルソーチャンバとを縫製で繋ぎ合わせ、縫製部の位置を調整することで頭部チャンバを乗員の肩上・頭部横に設定するサイドエアバッグが記載されている。特許文献1のサイドエアバッグは、頭部チャンバ及びトルソーチャンバが別々のチャンバからなるマルチチャンバ構造であるため、カットパーツ(基布)の枚数が多く、また、チャンバ同士を繋ぎ合わせる縫製部の補強が必要となり、生産工数が増えてコストが高くなっていた。また、トルソーチャンバ側に設置したインフレータからのガスを、チャンバ接合部の開口を介して頭部チャンバへ供給するため、頭部チャンバを所望の展開挙動とすることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0170978号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安定した展開挙動で乗員の肩部及び頭部を拘束することができ、且つ、生産コストを抑制できるサイドエアバッグと、このサイドエアバッグを有するサイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のサイドエアバッグは、シートバックの車幅方向中央側の側部に搭載されるサイドエアバッグであって、乗員の側方に膨張展開する第1膨張部と、前記第1膨張部の上下方向途中部分から斜め下方へ膨張展開し、乗員の頭部を拘束する第2膨張部と、を備える。このサイドエアバッグは、第1パネルと、該第1パネルより大きい第2パネルとを縫合して構成され、前記第1パネルの上部の周縁と前記第2パネルの上部の周縁とが縫合され、前記第1パネルの下部の周縁と前記第2パネルの下部の周縁とが縫合され、前記第2パネルが前記上部と前記下部との間の中間部で折り返され、重なり合った領域の周縁同士が縫合されている。
【0006】
本発明の一態様では、前記第2膨張部は、前記第1パネルの上部及び前記第2パネルの上部により構成されている。
【0007】
本発明の一態様では、前記第1膨張部の下部は、前記第1パネルの下部及び前記第2パネルの下部により構成されている。
【0008】
本発明の一態様では、前記第1膨張部の上部は、折り返された前記第2パネルの中間部により構成されている。
【0009】
本発明のサイドエアバッグは、本発明のエアバッグと、該エアバッグを膨張させるインフレータとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定した展開挙動で乗員の肩部及び頭部を拘束することができる。また、使用する基布の枚数が少ないため、生産コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係るサイドエアバッグの正面図である。
【
図4】サイドエアバッグの縫製途中を示す平面図である。
【
図5】
図5Aはサイドエアバッグの縫製途中を示す平面図であり、
図5Bは
図5AのVB-VB線に沿う概略断面図である。
【
図7】膨張展開したサイドエアバッグの縦断面図である。
【
図9】膨張展開したサイドエアバッグの縦断面図である。
【
図10】実施の形態に係るサイドエアバッグの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両の前後・上下・左右の方向と一致するものである。
図1のUP、CENTERは、それぞれ、車両の上方向、車幅方向の中央側を示す。
【0013】
図1、
図7、
図10は、本発明の実施形態に係るサイドエアバッグAの膨張状態を概略的に示すものであり、
図2~6はサイドエアバッグの製作方法の説明図である。
【0014】
本実施形態に係るサイドエアバッグ装置は、車両用シートの車幅方向中央側の側部に搭載される。本実施形態では、シートは自動車の左側シートであり、エアバッグ装置はシートの右側部に搭載されている。
【0015】
シートは、シートクッション、シートバック及びヘッドレストを備えている。シートバックは、その骨格となるシートバックフレームを有する。
【0016】
本実施形態では、シートバックフレームにエアバッグ装置が取り付けられる。
【0017】
エアバッグ装置は、シートバック内に折り畳まれて収納されるサイドエアバッグAと、サイドエアバッグAに膨張用ガスを供給するインフレータ5(
図7参照)とを備えている。
【0018】
サイドエアバッグAは、乗員Pの側方に膨張展開する第1膨張部1と、第1膨張部1の上下方向途中部分から乗員Pに向かって斜め下方へ膨張展開する第2膨張部2とを有する。
【0019】
膨張展開した第1膨張部1は上下方向に延在し、乗員Pのトルソー部(肩部から腰部まで)を拘束する。第1膨張部1の下部は乗員Pの腰部とコンソールボックスC(
図10参照)との間に位置する。第1膨張部1の上端部は、乗員Pの頭部又は頭部よりも高い位置にある。
【0020】
第2膨張部2は、乗員Pの肩部上方・頭部横に膨張展開し、先端部は乗員Pの首横に位置し、
図10に示すように、車両の側面衝突等により回転する頭部を受け止め、頭部移動量を低減し、首部の衝撃を緩和する。
【0021】
サイドエアバッグAは、
図2に示す第1パネル10と、
図3に示す第2パネル20とを縫合することで作製される。
【0022】
第1パネル10及び第2パネル20は略々長方形であり、第1パネル10よりも第2パネル20の方が上下方向の長さが長くなっている。
【0023】
第1パネル10の上部11と第2パネル20の上部21とは同一形状・同一サイズとなっている。また、第1パネル10の下部12と第2パネル20の下部22とは同一形状・同一サイズとなっている。
【0024】
第2パネル20の上部21と下部22との間の中間部23は、折り返し線Lを挟んで対称な形状となっている。後述するように、サイドエアバッグAの作製にあたり第2パネル20は折り返し線Lで折り返される。
図3における折り返し線Lの延在方向は、膨張展開したサイドエアバッグAの前後方向に相当する。
【0025】
中間部23のうち、折り返し線Lよりも上側の領域23aと、折り返し線23bの領域とは、折り返し線Lで第2パネル20を折り返したときに側縁部が一致するように重なる。
【0026】
サイドエアバッグAの作製では、まず、
図4に示すように、第2パネル20上に第1パネル10を配置し、第1パネル10の上部11と、第2パネル20の上部21とを重ね合わせ、上部11の周縁(上縁及び側縁)と上部21の周縁(上縁及び側縁)とを縫合糸31で縫合する。
【0027】
次に、
図5A及び
図5Bに示すように、第2パネル20を折り返し線Lに沿って第1パネル側に折り返す。第2パネル20を折り返すことで、第1パネル10の位置が下がり、第1パネル10の下部12と第2パネル20の下部22とが重なり合う。
図5A及び
図5Bに示す例では、第1パネル10も上部11と下部12との間で折り返されている。
【0028】
次に、
図6A及び
図6Bに示すように、第1パネル10の下部12の周縁(下縁及び側縁)と第2パネル20の下部22の周縁(下縁及び側縁)とを縫合糸32で縫合する。また、折り返し線Lで折り返して重なった第2パネル20の中間部23の領域23aの側縁と領域23bの側縁とを縫合糸32で縫合する。これにより、袋状のエアバッグAが作製される。
【0029】
その後、第1パネル10のインフレータ挿入口(図示略)を介してインフレータ5をサイドエアバッグA内に挿入する。インフレータ5にはスタッドボルトが設けられており、第1パネル10に形成された小孔(図示略)を通って突出したスタッドボルトによって、サイドエアバッグAがシートバックフレームに固定される。
【0030】
このように構成されたサイドエアバッグAを有するエアバッグ装置を備えた車両が右側から側面衝突された場合、インフレータ5が作動し、ガスを発生させる。このガスは、第1膨張部1を膨張させると共に、上方へ流れて第2膨張部2を膨張させる。
【0031】
図7に示すように、第1膨張部1の下部は、乗員P側に位置する第1パネル10の下部12、及び反乗員側に位置する第2パネル20の下部22で構成される。第1膨張部1の上部は、折り返し線Lで折り返した第2パネル20の中間部23(乗員P側に位置する領域23a、及び反乗員側に位置する領域23b)で構成される。第2膨張部2は、第1パネル10の上部11及び第2パネル20の上部21で構成される。
【0032】
サイドエアバッグAは、1チャンバ構造となっているため、マルチチャンバ構造と比較して、安定した展開挙動で乗員Pの肩部及び頭部を拘束できる。また、第1パネル10及び第2パネル20の2枚のパネルで作製可能であるため、工数を削減し、生産コストを抑制できる。
【0033】
図8A、
図8Bに示すように、第1パネル10の下部12の中央部と、第2パネル20の下部22の中央部とを縫合糸34で周回するように縫合し、縫合糸34で囲まれた領域が非膨張部50となるようにしてもよい。これにより、サイドエアバッグAのストロークや容量を調整できる。
図8Bは、
図8Aの矢印で示すように、第1パネル10の上部11及び第2パネル20の上部21を捲りあげた状態を示す。
【0034】
図9に示すように、サイドエアバッグA内において、第2パネル20の中間部23の領域23aと領域23bとを連結するテザー4を設け、サイドエアバッグAのストロークや容量を調整してもよい。
【0035】
上記実施の形態は、本発明の一形態を示すものであり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 第1膨張部
2 第2膨張部
4 テザー
5 インフレータ
10 第1パネル
20 第2パネル