(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130860
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
B60H1/00 102K
B60H1/00 102P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035401
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末廣 栄二
(72)【発明者】
【氏名】金本 英之
(72)【発明者】
【氏名】木下 由架
(72)【発明者】
【氏名】竹信 豊
(72)【発明者】
【氏名】嘉本 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 忠則
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA02
3L211BA55
3L211DA07
3L211DA10
(57)【要約】
【課題】冷却器及び加熱器が収容される空調ケーシングを小型化しつつ、2列目シートの乗員及び3列目シートの乗員の快適性を向上させる。
【解決手段】空調ケーシング30の車両後側の上部に2列目シート用ベント吹出口30dが形成され、空調ケーシング30の加熱器32よりも車両後側の下部に3列目シート用ベント吹出口30eが形成されている。バッフル50が空調ケーシング30内におけるエアミックス空間R4に配置されている。バッフル50には、温風を2列目シート用ベント吹出口30dへ導く温風案内部51と、加熱器32の上方を車両後側へ流れた冷風を3列目シート用ベント吹出口30eへ導く冷風案内部52とを有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席及び助手席の車両後方に配設された2列目シートと該2列目シートの車両後方に配設された3列目シートとを備えた自動車の車室内に配設される車両用空調装置において、
空調用空気を冷却して冷風を生成する冷却器と、
空調用空気を加熱して温風を生成する加熱器と、
前記冷却器及び前記加熱器を収容するとともに、前記冷風及び前記温風を混合するエアミックス空間が内部に形成された空調ケーシングと、
前記空調ケーシングに収容され、前記冷風と前記温風との前記エアミックス空間における混合割合を変更するエアミックスダンパと、
前記空調ケーシングの車両後側の上部に形成され、2列目シートの乗員の上半身へ供給される空調風が吹き出す2列目シート用ベント吹出口と、
前記空調ケーシングの前記加熱器よりも車両後側の下部に形成され、3列目シートの乗員の上半身へ供給される空調風が吹き出す3列目シート用ベント吹出口と、
前記空調ケーシングに収容され、前記冷風及び前記温風を案内するバッフルとを備え、
前記空調ケーシングの車両前側から後側へ向けて空調用空気が導入され、前記冷却器の空気流れ方向下流側に前記加熱器が配置され、
前記空調ケーシングの内部には、前記冷風が前記加熱器の上方を車両後側へ流れて前記エアミックス空間に流入するように空気通路が形成され、
前記バッフルは、前記空調ケーシングの内部における前記エアミックス空間に配置され、
前記バッフルには、前記温風を前記2列目シート用ベント吹出口へ導く温風案内部と、前記加熱器の上方を車両後側へ流れた前記冷風を前記3列目シート用ベント吹出口へ導く冷風案内部とが設けられている車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記空調ケーシングの車両後側の下部には、2列目シートの乗員及び3列目シートの乗員の足下へ供給される空調風が吹き出すヒート吹出口が形成され、
前記バッフルの前記冷風案内部は、前記加熱器の上方を車両後側へ流れた前記冷風を前記ヒート吹出口へ導く車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
前記ヒート吹出口と前記3列目シート用ベント吹出口とは車両前後方向に並んでいる車両用空調装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用空調装置において、
前記ヒート吹出口は、前記3列目シート用ベント吹出口よりも車両前側に位置している車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記バッフルには、複数の前記温風案内部が車幅方向に互いに間隔をあけて設けられている車両用空調装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記バッフルには、複数の前記冷風案内部が車幅方向に互いに間隔をあけて設けられている車両用空調装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両用空調装置において、
前記温風案内部は、上方へ突出する筒状をなしており、
車幅方向に隣り合う前記温風案内部の間に前記冷風案内部が設けられている車両用空調装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記冷却器は、その空気通過面が上側へ行くほど車両前側に位置するように傾斜配置され、
前記加熱器は、その空気通過面が上側へ行くほど車両前側に位置するように傾斜配置されている車両用空調装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用空調装置において、
前記バッフルは、前記加熱器における車両後側に位置する面と対向するように配置されている車両用空調装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記空調ケーシングの内部には、2列目シートの乗員及び3列目シートの乗員の足下へ供給される空調風が吹き出すヒート吹出口と、前記3列目シート用ベント吹出口とを開閉する吹出方向切替用ダンパが設けられ、
前記バッフルにおける温風流れ方向下流側端部と、前記吹出方向切替用ダンパとの間には、前記ヒート吹出口と前記3列目シート用ベント吹出口とのうち車両後方側に位置する吹出口に温風を流入可能な間隙流路が形成される車両用空調装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記空調ケーシングの内部には、前記加熱器から車両後方に離れた箇所に縦板部が設けられ、
前記縦板部は、前記空調ケーシングの底壁部から上方へ延びるとともに、前記加熱器の車両後側の面と対向するように配置される車両用空調装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記冷風案内部は、前記バッフルの車幅方向中央部及び車幅方向両側にそれぞれ設けられるとともに、上下方向に延びており、
車幅方向中央部の前記冷風案内部は、車幅方向両側の前記冷風案内部の下側部分に比べて車両前側に位置するように形成されている車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車等に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は、冷却器及び加熱器を収容する空調ケーシングを備えており、この空調ケーシング内に導入された空調用空気を冷却器及び加熱器により温度調整するように構成されている。温度調整された空気は、空調ケーシングに設けられている吹出方向切替ダンパにより乗員の上半身、足下等、車室の各部に供給される。
【0003】
特許文献1の空調ケーシングの内部には、温風通路の下流端から流出する温風を後席用通路へ案内するための右側温風案内部と、下側冷風通路の下流端から流出する冷風をヒート通路へ案内するための中央冷風案内部とを備えるバッフルプレートが配設されている。
【0004】
また、特許文献2の空調ケーシングの内部には、温風及び冷風の合流部位にバッフルが配設されている。バッフルには、温風通路からの温風をデフロスト吹出口方向に導く温風ガイド部と、バイパス通路からの冷風をベント吹出口方向に導く冷風ガイド部とが設けられている。
【0005】
また、特許文献3の空調ケーシングには、フェイス開口部とフット開口部とを開閉するフェイスフットダンパが設けられている。フェイスフットダンパの先端には、バイレベルモード時に加熱器からの温風をフェイス開口部に向かって案内する温風ガイド部と、バイパス通路からの冷風をフット開口部に向かって案内する冷風ガイド部とからなるガイド部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-131150号公報
【特許文献2】特開2017-105235号公報
【特許文献3】特開2009-196507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、3列シートの自動車では、2列目シートの乗員と3列目シートの乗員用として、運転席及び助手席用の空調装置(前席用空調装置)とは別に、後席用空調装置が設けられる場合がある。ところが、後席用空調装置は、インストルメントパネルよりも後方の車室内に配設する必要があり、前席用空調装置が配設されるインストルメントパネル内部のような大きな空間を後席用空調装置のために確保するのは困難である。
【0008】
このため、後席用空調装置の空調ケーシングは小型化する必要があり、そのように大きさが限られた空調ケーシングの内部において冷風及び温風を狙い通りに混合可能な広いエアミックス空間を形成することは難しく、また2列目シートの乗員と3列目シートの乗員のそれぞれの上半身及び足下に所望温度の空調風を供給するのは難しい。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、冷却器及び加熱器が収容される空調ケーシングを小型化しつつ、2列目シートの乗員及び3列目シートの乗員の快適性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、運転席及び助手席の車両後方に配設された2列目シートと該2列目シートの車両後方に配設された3列目シートとを備えた自動車の車室内に配設される車両用空調装置を前提とすることができる。車両用空調装置は、空調用空気を冷却して冷風を生成する冷却器と、空調用空気を加熱して温風を生成する加熱器と、前記冷却器及び前記加熱器を収容するとともに、前記冷風及び前記温風を混合するエアミックス空間が内部に形成された空調ケーシングと、前記空調ケーシングに収容され、前記冷風と前記温風との前記エアミックス空間における混合割合を変更するエアミックスダンパとを備えている。前記空調ケーシングの車両後側の上部には、2列目シートの乗員の上半身へ供給される空調風が吹き出す2列目シート用ベント吹出口が形成され、前記空調ケーシングの前記加熱器よりも車両後側の下部には、3列目シートの乗員の上半身へ供給される空調風が吹き出す3列目シート用ベント吹出口が形成されている。車両用空調装置は、前記空調ケーシングに収容され、前記冷風及び前記温風を案内するバッフルも備えている。前記空調ケーシングの車両前側から後側へ向けて空調用空気が導入され、前記冷却器の空気流れ方向下流側に前記加熱器が配置され、前記空調ケーシングの内部には、前記冷風が前記加熱器の上方を車両後側へ流れて前記エアミックス空間に流入するように空気通路が形成されている。前記バッフルは、前記空調ケーシング内における前記エアミックス空間に配置され、前記バッフルには、前記温風を前記2列目シート用ベント吹出口へ導く温風案内部と、前記加熱器の上方を車両後側へ流れた前記冷風を前記3列目シート用ベント吹出口へ導く冷風案内部とが設けられている。
【0011】
この構成によれば、空調ケーシングの前側から導入された空調用空気が冷却器により冷却されて冷風が生成され、加熱器により加熱されて温風が生成される。冷風は加熱器の上方を車両後側へ流れてエアミックス空間に流入して温風と混合し、所望温度の空調風が生成される。このとき、2列目シート用ベント吹出口は空調ケーシングの上部に、3列目シート用ベント吹出口は空調ケーシングの下部にそれぞれ形成されていて、上下方向に大きく離れているので、2列目シート用ベント吹出口から吹き出す空調風の温度と、3列目シート用ベント吹出口から吹き出す空調風の温度との差が大きくなる可能性がある。具体的には、冷風が加熱器の上方を流れているので、2列目シート用ベント吹出口から吹き出す空調風の温度が低く、3列目シート用ベント吹出口から吹き出す空調風の温度が高くなる場合がある。
【0012】
このことに対して、本態様では、バッフルの温風案内部によって温風を2列目シート用ベント吹出口へ導き、冷風案内部によって冷風を3列目シート用ベント吹出口へ導くので、2列目シート用ベント吹出口から吹き出す空調風の温度と、3列目シート用ベント吹出口から吹き出す空調風の温度との差が小さくなる。
【0013】
本開示の第2の態様では、前記空調ケーシングの車両後側の下部には、2列目シートの乗員及び3列目シートの乗員の足下へ供給される空調風が吹き出すヒート吹出口が形成され、前記バッフルの前記冷風案内部は、前記加熱器の上方を車両後側へ流れた前記冷風を前記ヒート吹出口へ導くものである。
【0014】
この構成によれば、冷風をヒート吹出口へも導くことができるので、ヒート吹出口から吹き出す空調風の温度が過度に上昇してしまうのを抑制できる。
【0015】
本開示の第3の態様では、前記ヒート吹出口と前記3列目シート用ベント吹出口とは車両前後方向に並んでいる。
【0016】
この構成によれば、車両前後方向に並ぶヒート吹出口と3列目シート用ベント吹出口に対して共通の冷風案内部によって冷風を供給できるので、バッフルの構造を簡略化することができる。
【0017】
本開示の第4の態様では、前記ヒート吹出口は、前記3列目シート用ベント吹出口よりも車両前側に位置している。
【0018】
すなわち、足下に供給する空調風の温度は比較的高めに設定される場合が多い。本態様では、足下に供給する空調風が吹き出すヒート吹出口を3列目シート用ベント吹出口よりも加熱器に近づけることができるので、ヒート吹出口から吹き出す空調風の温度を高めやすい。
【0019】
本開示の第5の態様では、前記バッフルには、複数の前記温風案内部が車幅方向に互いに間隔をあけて設けられていてもよい。
【0020】
この構成によれば、車幅方向の複数箇所において温風を下方へ導くことができるので、空調風の温度がより一層均一化する。
【0021】
本開示の第6の態様では、前記バッフルには、複数の前記冷風案内部が車幅方向に互いに間隔をあけて設けられていてもよい。
【0022】
この構成によれば、車幅方向の複数箇所において冷風を上方へ導くことができるので、空調風の温度がより一層均一化する。
【0023】
本開示の第7の態様に係る温風案内部は、上方へ突出する筒状をなしており、車幅方向に隣り合う前記温風案内部の間に前記冷風案内部が設けられていてもよい。
【0024】
この構成によれば、温風案内部が筒状であるため、温風の案内方向を精度よく設定できる。
【0025】
本開示の第8の態様では、前記冷却器は、その空気通過面が上側へ行くほど車両前側に位置するように傾斜配置され、前記加熱器は、その空気通過面が上側へ行くほど車両前側に位置するように傾斜配置されていてもよい。
【0026】
この構成によれば、空調ケーシングの高さを抑えることができ、車室内でのレイアウト性を向上できる。
【0027】
本開示の第9の態様の前記バッフルは、前記加熱器における車両後側に位置する面と対向するように配置されている。
【0028】
この構成によれば、加熱器から車両後方へ向けて流れた温風をバッフルの温風案内部によって効率よく導くことができる。
【0029】
本開示の第10の態様に係る空調ケーシングの内部には、2列目シートの乗員及び3列目シートの乗員の足下へ供給される空調風が吹き出すヒート吹出口と、前記3列目シート用ベント吹出口とを開閉する吹出方向切替用ダンパが設けられていてもよい。前記バッフルにおける温風流れ方向下流側端部と、前記吹出方向切替用ダンパとの間には、前記ヒート吹出口と前記3列目シート用ベント吹出口とのうち車両後方側に位置する吹出口に温風を流入可能な間隙流路を形成することもできる。これにより、例えば2列目に供給される空調風の温度と、3列目に供給される空調風の温度との差を低減するための流路を有する空調ケーシングをコンパクトにすることができる。
【0030】
本開示の第11の態様に係る空調ケーシングの内部には、前記加熱器から車両後方に離れた箇所に縦板部が設けられていてもよい。前記縦板部は、前記空調ケーシングの底壁部から上方へ延びるとともに、前記加熱器の車両後側の面と対向するように配置することができる。すなわち、2列目シート用ベント吹出口から空調風が吹き出すベントモード時に冷風案内部を通過する冷風を縦板部によって上方へ案内して加熱器からの受熱を極力避けることができるので、2列目シート用ベント吹出口から吹き出す空調風の温度上昇を抑制できる。
【0031】
本開示の第12の態様に係る冷風案内部は、前記バッフルの車幅方向中央部及び車幅方向両側にそれぞれ設けられるとともに、上下方向に延びるように形成することができる。この場合、車幅方向中央部の前記冷風案内部は、車幅方向両側の前記冷風案内部の下側部分に比べて車両前側に位置するように形成することが可能である。この構成によれば、ヒート吹出口側に冷風を案内して温風の流れに当てることができるので、エアミックス性が良好になり、過度な温度上昇を抑制できる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、温風を2列目シート用ベント吹出口へ導く温風案内部と、冷風を3列目シート用ベント吹出口へ導く冷風案内部とをバッフルに設けたので、空調ケーシングを小型化しつつ、2列目シートの乗員及び3列目シートの乗員の快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の斜視図である。
【
図2】車両用空調装置が搭載された自動車の内部を示す図である。
【
図5】バイレベルモード時の車両用空調装置の断面図である。
【
図6】ベントモード時の車両用空調装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1を示すものである。この車両用空調装置1は、
図2に一部を示す自動車100の車室R内に配設され、車室R内を空調する装置である。この実施形態の説明では、車両前側を単に前といい、車両後側を単に後といい、車両左側を単に左といい、車両右側を単に右というものとする。
【0036】
自動車100の車室R内の車両前部には、車幅方向(左右方向)に離間した運転席及び助手席からなる前席シート101が配設されている。自動車100の車室R内における前席シート(1列目シート)101の後方には、2列目シート102が配設され、さらに2列目シート102の後方には3列目シート103が配設されている。つまり、この自動車100は、前席シート101、2列目シート102及び3列目シート103を備えた車両である。
【0037】
自動車100の車室R内には、前席シート101の前方にインストルメントパネルPが配設されている。このインストルメントパネルPの内部には、上記車両用空調装置1とは別の前席用空調装置200が配設されている。前席用空調装置200は、主に前席シート101の乗員へ供給する空調風及びフロントウインドガラスGの内面に供給する空調風を生成する。図示しないが、前席用空調装置200は、冷却器や加熱器、エアミックスダンパ、吹出方向切替ダンパ等を有している。尚、
図2ではダクト類を省略している。
【0038】
車両用空調装置1は、2列目及び3列目シート102、103の乗員へ供給する後席用空調装置であり、前席用空調装置200から後方に離れた場所に配設される。車両用空調装置1を配設する場所の一例としては、例えば運転席と助手席との間を挙げることができる。車両用空調装置1を覆うカバー(図示せず)が車室Rに設けられている。車両用空調装置1は、送風ユニット2と空調ユニット3とを備えている。
【0039】
図1に示すように、送風ユニット2は、空調用空気を空調ユニット3へ送風するためのユニットであり、送風ケーシング20と、ファン21と、ファン21を回転駆動するためのモータ(図示せず)とを備えている。送風ケーシング20の左側壁部には、空調用空気を吸い込む吸込口20aが形成されている。吸込口20aは車室内に開口しており、車室内の空気(内気)を吸い込むものである。ファン21は、送風ケーシング20の内部に収容されたシロッコファンであり、その回転軸は左右方向に延びている。送風ケーシング20の右側壁部に上記モータが固定されており、このモータの出力軸にファン21が固定されている。ファン21の回転により、吸込口20aから送風ケーシング20の内部に吸い込まれた空調用空気が後方へ向けて送風されるようになっている。
【0040】
図3にも示すように、空調ユニット3は送風ユニット2の後方に配置されている。空調ユニット3は、空調ケーシング30を備えている。
図1に示すように、空調ケーシング30は、当該空調ケーシング30の左側部分を構成する左側部材30aと、当該空調ケーシング30の右側部分を構成する右側部材30bとを有している。左側部材30aと右側部材30bは、樹脂製であり、互いに締結部材により締結されて一体化されている。空調ケーシング30の前部に送風ケーシング20の後部が接続されて一体化されている。
【0041】
空調ケーシング30は前後方向の寸法が上下方向の寸法よりも長く設定されており、全体として送風ケーシング20よりも前後方向に長い形状を有している。
図5に示すように、空調ケーシング30の前壁部の上下方向中間部には、空調用空気を当該空調ケーシング30の内部に導入するための空気導入口30cが形成されている。空気導入口30cには、送風ケーシング20の後部に設けられている空気吐出部20b(
図1及び
図3に示す)が接続されており、送風ユニット2から送風された空調用空気は、空調ケーシング30の前側から導入されて後側へ向かう流れを形成する。
【0042】
図5に示すように、空調ユニット3は、送風ユニット2により導入された空調用空気を冷却して冷風を生成する冷却器31と、空調用空気を加熱して温風を生成する加熱器32とを備えている。冷却器31及び加熱器32は、空調ケーシング30に収容されており、加熱器32は冷却器31の空気流れ方向下流側に配置されている。
【0043】
冷却器31は、例えばエバポレータ等で構成されている。冷却器31がエバポレータで構成されている場合、図示しないが、自動車100には、冷媒を圧縮するコンプレッサ、凝縮器、膨張弁等が搭載されている。これら機器により冷凍サイクルが構成されている。
【0044】
加熱器32は、例えばヒータコア等で構成されている。加熱器32がヒータコアで構成されている場合、発熱源であるエンジンやモータ、インバータ等を冷却するための冷却水が加熱器32に流入するようになっている。また、加熱器32は、例えば上記凝縮器等で構成されていてもよいし、通電によって発熱する電気式ヒータ等で構成されていてもよい。加熱器32の上下方向の寸法は、冷却器31の上下方向の寸法よりも短く設定されている。また、加熱器32の空気通過方向の寸法は、冷却器31の空気通過方向の寸法よりも短く設定されている。
【0045】
空調ユニット3の内部には、冷風生成通路R1と、温風生成通路R2と、バイパス通路R3と、エアミックス空間R4とが形成されている。冷風生成通路R1は、空調ユニット3の内部において前側部分に形成されている。冷風生成通路R1の上流端は、空気導入口30cに接続されている。冷風生成通路R1は、空気導入口30cへの接続部分から後方へ向けて延びている。冷風生成通路R1の上下方向の寸法は、後側へ行くほど長くなっており、冷風生成通路R1の断面積が後側に向かって次第に拡大している。
【0046】
冷風生成通路R1における空気導入口30cへの接続部分から後方に離れた部分には、冷却器31が配置されている。冷却器31は、空調用空気が通過する空気通過面31aを有している。この空気通過面31aが上側へ行くほど前側に位置するように、冷却器31が傾斜配置されている。冷風生成通路R1を流通する空調用空気は、冷却器31の前方から当該冷却器31を通過して後方へ流れ、冷却器31を通過する間に冷媒等と熱交換することによって冷却される。
【0047】
温風生成通路R2は、空調ユニット3の内部において冷風生成通路R1の後方に形成されている。温風生成通路R2の上流端は、冷風生成通路R1の下流端の下側部分に連通している。したがって、温風生成通路R2には、冷風生成通路R1を流通した空調用空気が流入する。温風生成通路R2は後側へ向けて延びており、温風生成通路R2の前後方向の長さは、冷風生成通路R1の前後方向の長さよりも短く設定されている。温風生成通路R2の上下方向の寸法は、冷風生成通路R1の上下方向の寸法よりも短く設定されている。
【0048】
温風生成通路R2には、加熱器32が配置されている。加熱器32は、空調用空気が通過する空気通過面32aを有している。この空気通過面32aが上側へ行くほど前側に位置するように、加熱器32が傾斜配置されている。温風生成通路R2を流通する空調用空気は、加熱器32の前方から当該加熱器32を通過して後方へ流れ、加熱器32を通過する間に冷却水等と熱交換することによって加熱される。
【0049】
加熱器32の空気通過面32aは、2列目シート用ベント吹出口30dよりも後下方、且つ3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fよりも上方を指向する方向に傾斜して設けられる。これにより、3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fへの流通抵抗を低減することができるとともに、2列目シート用ベント吹出口30dを前方に配置することによって空調ケーシング30を小型化できる。
【0050】
バイパス通路R3は、空調ユニット3の内部において冷風生成通路R1の後方に形成され、温風生成通路R2の上方に位置している。バイパス通路R3の上流端は、冷風生成通路R1の下流端の上側部分に連通している。したがって、バイパス通路R3には、冷風生成通路R1を流通した空調用空気が流入する。バイパス通路R3は加熱器32の上方を後側へ向けて延びている。バイパス通路R3の前後方向の長さは、冷風生成通路R1の前後方向の長さよりも短く設定されている。また、バイパス通路R3の上下方向の寸法は、温風生成通路R2の上下方向の寸法よりも短く設定されている。
【0051】
エアミックス空間R4は、冷風及び温風を混合するための空間であり、空調ユニット3の内部において後側かつ上部に形成されている。バイパス通路R3の下流端は、エアミックス空間R4に対して前側から接続されており、バイパス通路R3を流通した空調用空気は温風生成通路R2をバイパスし、エアミックス空間R4の前方から当該エアミックス空間R4に後方へ向けて流入する。したがって、空調ケーシング30の内部には、冷風が加熱器32の上方を後側へ流れてエアミックス空間R4に流入するようにバイパス通路(空気通路)R3が形成されている。
【0052】
このエアミックス空間R4は、温風生成通路R2の上方に位置しているので、温風生成通路R2の下流端は、エアミックス空間R4に対して下側から接続されている。したがって、温風生成通路R2を流通した空調用空気はエアミックス空間R4の下方から当該エアミックス空間R4に上方へ向けて流入する。
【0053】
エアミックス空間R4に流入した冷風と温風とを衝突させて混合することで所望温度の空調風が生成される。空調風の温度は、エアミックス空間R4における冷風と温風との混合割合によって調整できる。エアミックス空間R4に流入した冷風の割合が増えれば、空調風の温度が低下し、一方、エアミックス空間R4に流入した温風の割合が増えれば、空調風の温度が上昇する。
【0054】
空調ユニット3は、冷風と温風とのエアミックス空間R4における混合割合を変更するためのエアミックスダンパ33を備えている。エアミックスダンパ33は、空調ケーシング30に収容されている。エアミックスダンパ33として使用可能なダンパは、どのような形式であってもよく、例えばバタフライタイプ、ロータリタイプ、ルーバタイプ等を挙げることができるが、本実施形態では、スライドダンパを使用している。
【0055】
すなわち、エアミックスダンパ33は、冷風生成通路R1の下流端の上側部分(バイパス通路R3に連通する部分)と、冷風生成通路R1の下流端の下側部分(温風生成通路R2に連通する部分)との開度を変更可能に構成されている。より具体的には、エアミックスダンパ33は、上下方向にスライド可能に、空調ケーシング30の内面に支持されている。駆動装置34によってエアミックスダンパ33が上下方向に駆動される。
【0056】
エアミックスダンパ33は、例えば板状をなしており、その一部に開口が形成されている。エアミックスダンパ33の動作は特に限定されるものではないが、エアミックスダンパ33を上方へスライドさせると、冷風生成通路R1の下流端の上側部分の開口面積が小さくなる一方、冷風生成通路R1の下流端の下側部分の開口面積が大きくなるように動作させることができる。反対に、エアミックスダンパ33を下方へスライドさせると、冷風生成通路R1の下流端の上側部分の開口面積が大きくなる一方、冷風生成通路R1の下流端の下側部分の開口面積が小さくなる。この場合、エアミックスダンパ33を上端位置までスライドさせると、冷風生成通路R1の下流端の上側部分が全閉になる一方、冷風生成通路R1の下流端の下側部分が全開になり、また、エアミックスダンパ33を下端位置までスライドさせると、冷風生成通路R1の下流端の上側部分が全開になる一方、冷風生成通路R1の下流端の下側部分が全閉になる。つまり、エアミックスダンパ33の動作により、エアミックス空間R4に流入する冷風の量及び温風の量を変更できる。
【0057】
図示しないが、エアミックスダンパがバタフライタイプやルーバタイプのものであれば、エアミックスダンパの回動角度によってエアミックス空間R4に流入する冷風の量及び温風の量を変更できる。エアミックスダンパがロータリタイプのものであれば、エアミックスダンパの回動角度によってエアミックス空間R4に流入する冷風の量及び温風の量を変更できる。
【0058】
空調ケーシング30の後側の上部には、2列目シート102の乗員の上半身へ供給される空調風が吹き出す2列目シート用ベント吹出口30dが形成されている。2列目シート用ベント吹出口30dは上方に向けて開口している。2列目シート用ベント吹出口30dの形状は、左右方向に長い形状となっている。エアミックス空間R4の上部に2列目シート用ベント吹出口30dが連通しており、エアミックス空間R4の空気が2列目シート用ベント吹出口30dへ向けて流通可能になっている。2列目シート用ベント吹出口30dには、図示しないダクトが接続されており、このダクトにより空調風を所望の方向へ導くようにしている。
【0059】
2列目シート用ベント吹出口30dの下方には、加熱器32が位置している。この加熱器32と2列目シート用ベント吹出口30dとは、上下方向に離れており、加熱器32と2列目シート用ベント吹出口30dとの間に後述するバッフル50の一部が位置付けられている。
【0060】
空調ケーシング30の後側の下部には、3列目シート103の乗員の上半身へ供給される空調風が吹き出す3列目シート用ベント吹出口30eが形成されている。また、空調ケーシング30の後側の下部には、2列目シート102の乗員及び3列目シート103の乗員の足下へ供給される空調風が吹き出すヒート吹出口30fが形成されている。また、空調ケーシング30の後側には、後方へ向けて膨出する膨出部30Aが形成されている。膨出部30Aの内部における上側には、エアミックス空間R4の下側部分が形成されている。したがって、膨出部30Aの内部における上側において冷風と温風との混合が可能になっている。
【0061】
膨出部30Aの内部における下側には、3列目シート用ベント通路R5と、後席用ヒート通路R6とが形成されるとともに、3列目シート用ベント通路R5及び後席用ヒート通路R6を仕切るための仕切部38が形成されている。3列目シート用ベント通路R5は、膨出部30Aの内部の後側を上下方向に延びており、3列目シート用ベント通路R5の上端部(上流端)は、エアミックス空間R4の下部に連通している。後席用ヒート通路R6は、膨出部30Aの内部の前側を上下方向に延びており、後席用ヒート通路R6の上端部(上流端)は、エアミックス空間R4の下部において3列目シート用ベント通路R5よりも前側部分に連通している。
【0062】
3列目シート用ベント通路R5の下端部(下流端)に3列目シート用ベント吹出口30eが連通している。また、後席用ヒート通路R6の下端部(下流端)にヒート吹出口30fが連通している。ヒート吹出口30fと3列目シート用ベント吹出口30eとは前後方向に並んでおり、具体的には、ヒート吹出口30fが3列目シート用ベント吹出口30eよりも前側に位置している。
【0063】
3列目シート用ベント吹出口30eの位置は、加熱器32の下部よりも後方とされている。ヒート吹出口30f及び3列目シート用ベント吹出口30eは下方に向けて開口している。ヒート吹出口30f及び3列目シート用ベント吹出口30eの形状は、左右方向に長い形状となっている。3列目シート用ベント吹出口30eは、ヒート吹出口30fよりも高い位置に開口しており、この3列目シート用ベント吹出口30eには3列目シート103の近傍まで延びるダクト(図示せず)が接続されている。また、ヒート吹出口30fには、2列目シート102の乗員の足下近傍及び3列目シート103の乗員の足下近傍まで延びる足下ダクト(図示せず)が接続されている。
【0064】
空調ケーシング30の内部には、加熱器32から後方に離れた箇所に縦板部35が設けられている。縦板部35は、空調ケーシング30の底壁部から上方へ延びており、加熱器32の後側の面と対向するように配置される。加熱器32を通過した空調用空気は、縦板部35によって上方、即ちエアミックス空間R4へ向けて案内される。
【0065】
縦壁部35が加熱器32の後側の面と対向するように配置されているので、ベントモード時に冷風案内部52を通過する冷風を縦板部35によって上方へ案内して加熱器32からの受熱を極力避けることができる。これにより、2列目シート用ベント吹出口30dから吹き出す空調風の温度上昇を抑制できる。
【0066】
空調ユニット3は、上側ダンパ36と下側ダンパ37とを備えている。上側ダンパ36と下側ダンパ37とは、空調風の吹出方向を切り替えるための吹出方向切替用ダンパである。上側ダンパ36は、空調ケーシング30の内部において後側かつ上部に収容され、また、下側ダンパ37は、空調ケーシング30の内部において後側かつ下部に収容されている。上側ダンパ36及び下側ダンパ37は、図示しない駆動機構によって駆動される。上側ダンパ36と下側ダンパ37を連動させてもよいし、別々に駆動してもよい。上側ダンパ36及び下側ダンパ37の駆動制御は、従来から周知の手法を用いることができ、乗員の操作によって乗員が所望する吹出モードとなるように上側ダンパ36及び下側ダンパ37を駆動してもよいし、オートエアコン制御のロジックに従って上側ダンパ36及び下側ダンパ37を駆動してもよい。
【0067】
上側ダンパ36は、2列目シート用ベント吹出口30dを開閉するためのダンパであり、2列目シート用ベントダンパである。すなわち、上側ダンパ36は、左右方向に延びる回動軸36aと、当該回動軸36aから径方向へ延びる2枚の閉塞板部36bとを備えたバタフライタイプのダンパである。回動軸36aは空調ケーシング30の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。
図5及び
図6に示す状態では、上側ダンパ36が2列目シート用ベント吹出口30dを開放している。
図5に示すバイレベルモードでは、
図6に示すベントモードに比べて上側ダンパ36による2列目シート用ベント吹出口30dの開度が小さくなる。図示しないが、上側ダンパ36後へ向けて回動させることで、2列目シート用ベント吹出口30dを全閉状態にすることもできる。
【0068】
下側ダンパ37は、3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fを開閉するためのダンパであり、3列目シート用ダンパである。下側ダンパ37の配設位置は、膨出部30Aの内部であり、3列目シート用ベント通路R5の上流端を開閉することにより、間接的に、3列目シート用ベント吹出口30eを開閉することができ、また、後席用ヒート通路R6の上流端を開閉することにより、間接的に、ヒート吹出口30fを開閉することができる。
【0069】
すなわち、下側ダンパ37は、左右方向に延びる回動軸37aと、当該回動軸37aから径方向に離れた所に位置する閉塞板部37bとを備えたロータリタイプのダンパである。回動軸37aは空調ケーシング30の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。閉塞板部37bは、回動軸37aに対して支持板部37cを介して支持される。支持板部37cは、回動軸37aから径方向に突出している。支持板部37cの突出方向先端部が閉塞板部37bに接続されている。
【0070】
図5に示すバイレベルモードでは、3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fの両方を開く回動位置となるまで、下側ダンパ37が回動する。一方、
図6に示すベントモードでは、ヒート吹出口30fを全閉にし、3列目シート用ベント吹出口30eを全開にする回動位置となるまで、下側ダンパ37が回動する。図示しないが、ヒート吹出口30fを全開にし、3列目シート用ベント吹出口30eを全閉にする回動位置となるまで、下側ダンパ37を回動させることもできる。
【0071】
図5及び
図6に示すように、空調ユニット3は、冷風及び温風を案内するバッフル50を備えている。バッフル50は、例えば樹脂材で構成されており、空調ケーシング30の内部においてエアミックス空間R4に収容されている。バッフル50の左側部が空調ケーシング30の左側壁部の内面に固定され、またバッフル50の右側部が空調ケーシング30の右側壁部の内面に固定されている。
【0072】
より具体的には、バッフル50は、下側ダンパ37の上方において加熱器32の後側の面と対向するように配置される。また、縦板部35から上方に離れたところにバッフル50が位置しており、縦板部35によって上方へ案内された温風がバッフル50へ向けて流れるようになっている。
【0073】
図7~
図9に示すように、バッフル50は全体として左右方向に長い形状をなしており、空調ケーシング30の内部において左端部近傍から右端部近傍に亘って配設される。バッフル50には、温風を2列目シート用ベント吹出口30dへ導く複数の温風案内部51と、加熱器32の上方を後側へ流れた冷風(バイパス通路R3を流れた冷風)を3列目シート用ベント吹出口30eへ導く複数の冷風案内部52とが設けられている。冷風案内部52は、加熱器32の上方を後側へ流れた冷風を同時にヒート吹出口30fへも導く部分である。
【0074】
この実施形態では、4つの温風案内部51が車幅方向に互いに間隔をあけてバッフル50に設けられており、また、5つの冷風案内部52が車幅方向に互いに間隔をあけてバッフル50に設けられている。図示しないが、温風案内部51の数は4つに限られるものではなく、3つ以下、5つ以上の任意の数であってもよい。また、冷風案内部52の数は5つに限られるものではなく、4つ以下、6つ以上の任意の数であってもよい。
【0075】
4つの温風案内部51のうち、2つがバッフル50の左右方向中央部よりも左側に配置され、残りの2つがバッフル50の左右方向中央部よりも右側に配置されている。バッフル50の左側の2つの温風案内部51の間隔と、バッフル50の右側の2つの温風案内部51の間隔とは等しくなっている。また、バッフル50の中央部寄りで隣合う2つの温風案内部51の間隔は、左側の2つの温風案内部51の間隔よりも広く設定されている。
【0076】
図10に示すように、温風案内部51は、上方へ突出する筒状をなしており、その上端部には温風が流出する温風流出口51aが上方に向けて開口している。温風流出口51aは、上側ダンパ36の回動軸36aの後方に位置している。上側ダンパ36が2列目シート用ベント吹出口30dを全閉にする位置まで回動すると、上側ダンパ36の後側に位置する閉塞板部36bによって温風流出口51aが閉塞されるようになっている。
【0077】
一方、温風案内部51を構成している筒状部分の下端部は、下方に向けて開口している。温風案内部51の前後方向の寸法は、下側へ行くほど長くなるように設定されており、温風流出口51aの前後方向の寸法が最も短くなっている。このように、温風案内部51を構成している筒状部分の断面積が下側へ行くほど拡大しているので、温風を温風案内部51の下方から当該温風案内部51の内部へ導入し易くなる。
【0078】
左端に位置する温風案内部51及び右端に位置する温風案内部51には、後方へ突出する突出部51bが形成されている。突出部51bは、左右方向に延びる板状をなしている。
図5に示すように、突出部51bの先端部は、膨出部30Aの内面に当接するようになっている。
【0079】
図7及び
図8に示すように、5つの冷風案内部52のうち、3つの冷風案内部52は車幅方向に隣り合う温風案内部51の間に設けられており、残りの2つの冷風案内部52はバッフル50の左端部及び右端部にそれぞれ設けられている。冷風案内部52は上下方向に延びる板状をなしており、後方へ向けて湾曲している。バッフル50の左右方向中央部(車幅方向中央部)に位置する冷風案内部52の幅(左右方向の寸法)は、他の冷風案内部52(車幅方向両側に位置する冷風案内部)の幅に比べて広くなっている。バッフル50の左右方向中央部に位置する冷風案内部52の下側部分は、他の冷風案内部52の下側部分に比べて前側に位置するように形成されている。これにより、左右方向中央部に位置する冷風案内部52によって冷風をヒート吹出口30f側に案内して温風の流れに当てることができるので、エアミックス性が良好になり、過度な温度上昇を抑制できる。
【0080】
冷風案内部52の下端部は、縦板部35の上端部よりも上方かつ後方に位置している。また、冷風案内部52の上端部は、加熱器32の上端部まで延びるように形成されており、上側ダンパ36の回動軸36aから前方に離れている。従って、冷風案内部52は、加熱器32の上端部から、縦板部35の上端部と下側ダンパ37の回動軸37aとの間に向かって延びることになる。また、冷風案内部52は、加熱器32の後側の面の上側部分と所定の間隔をあけて対向するように配置される。冷風案内部52の上端部と、温風案内部51の上端部との高さを比較すると、温風案内部51の上端部の方が上に位置している。
【0081】
また、バッフル50における温風流れ方向下流側端部(バッフル50の下端部)と、下側ダンパ37との間には、ヒート吹出口30fと3列目シート用ベント吹出口30eとのうち車両後方側に位置する吹出口に温風を流入可能な間隙流路R7が形成される。すなわち、バッフル50における温風流れ方向下流側端部は、下側ダンパ37の回動軸37aの外周面に対して上下方向に所定の隙間をあけた状態で対向するように配置されている。これにより、バッフル50の下端部と、下側ダンパ37の回動軸37aの外周面との間には隙間流路R7が形成される。この隙間流路R7を利用して温風を3列目シート用ベント吹出口30e側へ流入させることができるので、2列目に供給される空調風の温度と、3列目に供給される空調風の温度との差を低減可能な空調ケーシング30をコンパクトにすることができる。
【0082】
また、バッフル50の左右方向中央部に位置する冷風案内部52の下流側端部は、下側ダンパ37の回動軸37aよりも前方に位置している。これにより、ヒート吹出口30f側に冷風を案内することが可能になる。
【0083】
(バッフルの作用)
上記のように構成された空調ユニット3では、2列目シート用ベント吹出口30dが空調ケーシング30の上部に、3列目シート用ベント吹出口30eが空調ケーシング30の下部にそれぞれ形成されていて、2列目シート用ベント吹出口30dと3列目シート用ベント吹出口30eとが上下方向に大きく離れているので、2列目シート用ベント吹出口30dから吹き出す空調風の温度と、3列目シート用ベント吹出口30eから吹き出す空調風の温度との差が大きくなる可能性がある。具体的には、冷却器31を通過した冷風が加熱器32の上方を後方へ向けて流れているので、2列目シート用ベント吹出口30dから吹き出す空調風の温度が低くなり、また加熱器32を通過した温風が下側を流れているので、3列目シート用ベント吹出口30eから吹き出す空調風の温度が高くなる場合がある。
【0084】
本実施形態では、バッフル50を設けることにより、2列目シート用ベント吹出口30dから吹き出す空調風の温度と、3列目シート用ベント吹出口30eから吹き出す空調風の温度との差を小さくするとともに、ヒート吹出口30fから吹き出す空調風の極端な温度上昇を抑制している。
【0085】
まず、
図5に示すバイレベルモードについて説明する。バイレベルモードでは、空調風が2列目シート用ベント吹出口30d、3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fから吹き出す。このバイレベルモード時には、温風生成通路R2からエアミックス空間R4に流入した温風が、バッフル50の温風案内部51を構成している筒状部分の下端部から当該筒状部分に流入する。温風案内部51が上方へ向けて2列目シート用ベント吹出口30dへ向けて延びているので、温風流出口51aから吹き出した温風は2列目シート用ベント吹出口30dへ供給される。
【0086】
また、膨出部30Aの後壁部の内面と、バッフル50の冷風案内部52との間には下方へ延びる通路が形成されることになり、冷却器31からエアミックス空間R4に流入した冷風が、膨出部30Aの後壁部の内面と、バッフル50の冷風案内部52との間に流入する。冷風案内部52は下方へ向けて延びているので、冷風が3列目シート用ベント吹出口30e及びヒート吹出口30fへ供給される。よって、2列目シート用ベント吹出口30dから吹き出す空調風の温度と、3列目シート用ベント吹出口30eから吹き出す空調風の温度との差が小さくなるとともに、ヒート吹出口30fから吹き出す空調風の極端な温度上昇が抑制される。
【0087】
次に、
図6に示すベントモードについて説明する。ベントモードでは、空調風が2列目シート用ベント吹出口30d及び3列目シート用ベント吹出口30eから吹き出す。このベントモード時には、温風案内部51が上方へ向けて2列目シート用ベント吹出口30dへ向けて延びているので、温風流出口51aから吹き出した温風は2列目シート用ベント吹出口30dへ供給される。
【0088】
また、冷却器31からエアミックス空間R4に流入した冷風は、冷風案内部52は下方へ向けて延びているので、冷風が3列目シート用ベント吹出口30eへ供給されるとともに、ヒート吹出口30fが下に位置しているので、このヒート吹出口30fにも供給される。このとき、ヒート吹出口30fは下側ダンパ37により閉塞されているので、ヒート吹出口30fに向けて流れた冷風は上方へ向きを変えて流れようとする。ヒート吹出口30fの上方には、加熱器32を通過した温風が流れているので、向きを変えた冷風が温風に当たり、当該温風を押し上げる。これにより、2列目シート用ベント吹出口30dへ向けて温風を確実に供給することができるので、2列目シート用ベント吹出口30dから吹き出す空調風の温度と、3列目シート用ベント吹出口30eから吹き出す空調風の温度との差が小さくなる。
【0089】
(実施形態の効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、温風を2列目シート用ベント吹出口30dへ導く温風案内部51と、冷風を3列目シート用ベント吹出口30eへ導く冷風案内部52とをバッフル50に設けたので、空調ケーシング30を小型化しつつ、2列目シートの乗員及び3列目シートの乗員の快適性を向上させることができる。
【0090】
また、冷風案内部52により、冷風をヒート吹出口30fへも案内することができるので、ヒート吹出口30fから吹き出す空調風の極端な温度上昇を抑制でき、乗員の快適性がより一層向上する。
【0091】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置は、例えば2列目シート及び3列目シートを備えた自動車に適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 車両用空調装置
30 空調ケーシング
30d 2列目シート用ベント吹出口
30e 3列目シート用ベント吹出口
30f ヒート吹出口
31 冷却器
32 加熱器
33 エアミックスダンパ
50 バッフル
51 温風案内部
52 冷風案内部
R4 エアミックス空間
R7 隙間流路
100 自動車
102 2列目シート
103 3列目シート