(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130861
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】車両用障害物検知方法及び検知システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035404
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】金島 義治
(72)【発明者】
【氏名】上田 章雄
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC12
5H181FF04
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成のシステムを用いて死角にある障害物を検知することのできる、車両用障害物検知方法及び検知システムを提供する。
【解決手段】車両用障害物検知方法では、車両3から死角となる検知対象エリア4に向けて光源6から光7を照射し、車両3に搭載された撮像部を用いて、光源6から照射されて検知対象エリア4を通過した光7によって照らされた路面を撮影し、撮影した映像を車両3において画像処理して、路面上に検知対象エリア4内の障害物5から伸びる影8がある場合に、検知対象エリア4に障害物5があると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用障害物検知方法であって、
車両から死角となる検知対象エリアに向けて光源から光を照射し、
前記車両に搭載された撮像部を用いて、前記光源から照射されて前記検知対象エリアを通過した前記光によって照らされた路面を撮影し、
撮影した映像を前記車両において画像処理して、前記路面上に前記検知対象エリア内から伸びる影がある場合に、前記検知対象エリアに障害物があると判定する、車両用障害物検知方法。
【請求項2】
前記画像処理において、撮影した前記路面上の前記影が前記路面上で移動している際に、前記検知対象エリア内に移動している前記障害物があると判定する、請求項1に記載の車両用障害物検知方法。
【請求項3】
前記画像処理において、予め前記車両の記憶部に保存された前記障害物が存在しないときの前記路面の基準画像と比較することで、前記路面上に前記検知対象エリア内の前記障害物から伸びる前記影の有無を判断する、請求項1に記載の車両用障害物検知方法。
【請求項4】
前記車両に搭載された自己位置検出部により前記検知対象エリアに接近したことを検知した場合に、前記基準画像との比較による障害物検知を行う、請求項3に記載の車両用障害物検知方法。
【請求項5】
前記撮像部によって前記検知対象エリアの近傍に設置されたコード標識を撮影した場合に、前記基準画像との比較による障害物検知を行う、請求項3に記載の車両用障害物検知方法。
【請求項6】
車両用障害物検知システムであって、
車両から死角となる検知対象エリアに向けて光を照射する光源と、
前記車両に搭載された撮像部と、
前記車両に搭載された検知制御部と、を備えており、
前記検知制御部が、前記光源から照射されて前記検知対象エリアを通過した前記光によって照らされた路面を前記撮像部が撮影した映像を画像処理して、前記路面上に前記検知対象エリア内から伸びる影がある場合に、前記検知対象エリアに障害物があると判定するよう構成されている、車両用障害物検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用障害物検知方法及び検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されるADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)及び自動運転に関する技術に関しては進化が著しく、その障害物検知能力も向上している。車両、特に自動運転で走行している車両に関しては、見通しの悪い交差点などでの衝突回避のためには死角となる位置に障害物があるのかどうかが重要である。下記特許文献1は、交差点での障害物検知システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたシステムでは、交差点にカメラ、演算装置及び通信装置を設置する必要があり、車両にもレーダやカメラなどのセンサに加えて通信装置を搭載する必要がある。また、交差点のカメラ演算装置及び通信装置は、交差点ごとに設置する必要がある。このシステムを交差点ではない建屋出入口又は敷地出入口などの死角が生じる場所でも同様の障害物検知をしようとすると、これらの出入口にもカメラなどの装置の設置が必要になる。従って、システムを実用化するには非常にコストがかかる。
【0005】
本開示の目的は、シンプルな構成のシステムを用いて死角にある障害物を検知することのできる、車両用障害物検知方法及び検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両用障害物検知方法では、車両から死角となる検知対象エリアに向けて光源から光を照射し、前記車両に搭載された撮像部を用いて、前記光源から照射されて前記検知対象エリアを通過した前記光によって照らされた路面を撮影し、撮影した映像を前記車両において画像処理して、前記路面上に前記検知対象エリア内から伸びる影がある場合に、前記検知対象エリアに障害物があると判定する。
【0007】
前記画像処理において、撮影した前記路面上の前記影が前記路面上で移動している際に、前記検知対象エリア内に移動している前記障害物があると判定してもよい。
【0008】
前記画像処理において、予め前記車両の記憶部に保存された前記障害物が存在しないときの前記路面の基準画像と比較することで、前記路面上に前記検知対象エリア内の前記障害物から伸びる前記影の有無を判断してもよい。
【0009】
ここで、前記車両に搭載された自己位置検出部により前記検知対象エリアに接近したことを検知した場合に、前記基準画像との比較による障害物検知を行ってもよい。
【0010】
あるいは、前記撮像部によって前記検知対象エリアの近傍に設置されたコード標識を撮影した場合に、前記基準画像との比較による障害物検知を行ってもよい。
【0011】
本開示に係る車両用障害物検知システムは、車両から死角となる検知対象エリアに向けて光を照射する光源と、前記車両に搭載された撮像部と、前記車両に搭載された検知制御部と、を備えている。前記検知制御部は、前記光源から照射されて前記検知対象エリアを通過した前記光によって照らされた路面を前記撮像部が撮影した映像を画像処理して、前記路面上に前記検知対象エリア内から伸びる影がある場合に、前記検知対象エリアに障害物があると判定するよう構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本開示の車両用障害物検知方法及び検知システムによれば、シンプルな構成のシステムを用いて死角にある障害物を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一実施形態に係る障害物検知方法が行われる建屋出入口近傍の平面図である。
【
図3】第二実施形態に係る障害物検知方法が行われる建屋出入口近傍の平面図である。
【
図5】第三実施形態に係る障害物検知方法が行われる敷地出入口近傍の平面図である。
【
図6】第四実施形態に係る障害物検知方法が行われる敷地出入口近傍の平面図である。
【
図7】第五実施形態に係る障害物検知方法が行われる敷地出入口近傍の平面図である。
【
図8】上記実施形態で用いられる障害物検知システムにおける車両のブロック図である。
【
図9】上記実施形態の障害物検知方法のフローチャートの前半部である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、車両用障害物検知方法及び検知システムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1及び
図2は、第一実施形態を示している。第一実施形態では、建屋1の出入口2において車両3から死角となる建屋1内部の検知対象エリア4内の障害物5を検知する。本実施形態では、障害物5の検知に際して、車両3の自己位置、即ち、検知対象エリア4内の障害物5を車両3が検知する位置に対して検知対象エリア4の向こう側に光源6が設置される。本実施形態の建屋1は例えば工場内の作業棟や倉庫であり、本実施形態では建屋1の内部で作業員が作業していないことを前提として、光源6が低い位置に設置されている。より具体的には、建屋1の出入口2とは反対側の内壁面上の低い位置に光源6が取り付けられている。ただし、作業員は建屋1の内部や出入口2近傍を通行することを禁じられてはいない。光源6からは、やや下方に向けて光7が照射されており、光7の上方境界はほぼ水平である。
【0016】
光源6から光7を照射するのは、検知対象エリア4内の障害物5から影8を伸ばして路面上に影8を形成させるためである。影8は、光源6から検知対象エリア4に向けて照射された光7によって、死角となっている検知対象エリア4内の障害物5から検知対象エリア4外へと、即ち、建屋1の出入口2から外へと伸びるように形成される。本実施形態では、影8を長く形成させるために、光源6が低い位置に設置されている。路面上の光7及び影8のパターンを利用して障害物検知を行うため、周囲環境の明るさの影響を受けるが、路面上に光7のパターンが形成され、障害物5による影8のパターンも形成されれば、障害物検知を行える。なお、本実施形態の車両3は、例えば建屋1に部品などを搬入するトラックであり、工場内の構内道路を自動運転により走行している。
【0017】
車両3には、
図8に示される撮像部30としてのカメラと、撮像部30によって撮影された映像又は画像を画像処理する検知制御部31とが搭載されている。本実施形態の撮像部30は映像を撮影するが、静止画を撮影するものでもよい。静止画を所定時間間隔で連続撮影すれば映像と同様に画像処理を行える。ここでは、撮像部30は、自動運転のために設けられた車両3の前方を撮影するカメラが利用されている。
【0018】
本実施形態では、車両3は、障害物検知を行う検知対象エリア4に近づいたことを検出する事ができる。この自己位置検出の例を二つ説明する。第一例では、検知対象エリア4に近づいた車両3の撮像部30で撮影される位置に、検知対象エリア4があることを示すコード標識9が設けられる。ここでは、コード標識9は交通標識のような形態のものであり、出入口2の手前に設置されている。コードとしては例えばQRコード(登録商標)などを利用できる。なお、コード標識9は、建屋1の外壁面上に設けられてもよいし、路面上に設けられてもよい。ここでは、撮像部30による撮影は常時行われていて、その映像は常に検知制御部31の画像処理部31aによって画像処理されている。映像中にコード標識9が検出された際には、検知制御部31の検知要否判定部31bが、検知対象エリア4に近づいたと判定する。即ち、検知要否判定部31bは、障害物検知が必要であると判定する。
【0019】
第二例では、車両3が自己位置検出部31cを備えている。自己位置検出部31cとしては、例えばGPS等の衛星測位システムが一般的である。ここでも、自己位置検出部31cは、自動運転のために設けられた車両3の自己位置を検出するGPS等が利用されている。自己位置検出部31cによって車両3の自己位置が検出されており、検知制御部31の検知要否判定部31bが検知対象エリア4に近づいたかどうかを判定する。検知要否判定部31bは、検知対象エリア4に近づいた場合は障害物検知が必要であると判定する。この場合は、障害物検知が必要であると検知要否判定部31bが判定してから、画像処理部31aでの障害物検知のための画像処理が開始されてもよい。障害物検知が必要であると判定されるまでは障害物検知のための画像処理を行わなくてよければ検知制御部31の負荷を低減できる。
【0020】
また、障害物検知の例も二つ説明する。第一例では、障害物5が検知対象エリア4内で移動している場合に障害物5を検知する。光源6は固定されているので、出入口2から路面上に伸びる光7のパターンは変わらない。撮像部30で撮影された映像は、走行する車両3から撮影されるので、光7のパターンは映像フレーム内ではその位置を変える。しかし、画像処理によって、光7のパターンが路面上では動いていないことは検知できる。このとき、検知対象エリア4内で移動している障害物5が存在する場合、路面上で動かない光7のパターンの内部に移動する影8のパターンを検知できる。影8が移動しているか否かは、動かない光7のパターンに基づいて画像処理を通して判定できる。この判定は、検知制御部31の障害物検知部31dによって行われる。光7のパターン内に移動する影8が検出されれば、検知対象エリア4内で移動している障害物5が存在すると判定できる。
【0021】
第二例では、車両3が、障害物5が存在しないときの路面の基準画像が予め保存されている記憶部31eを備えている。基準画像は、障害物5が存在しないときの出入口2の外の路面上の光7のパターンである。即ち、撮像部30によって撮影した映像を画像処理して路面上の光7のパターンを検出し、これを基準画像と比較すれば、障害物5の影8が光7のパターン内にあるか否かを容易に判別できる。基準画像は、検知対象エリア4ごとに保存されており、どの基準画像を比較に用いるかは、上述したコード標識9や自己位置検出部31cにより検出された車両3の位置から判断できる。基準画像と比較の結果、光7のパターン内に影8がある場合は、障害物検知部31dが検知対象エリア4内に障害物5があると判定する。第二例では、障害物5が移動していなくても障害物5を検知できる。なお、この第二例の障害物検知に関しては追って
図9及び
図10のフローチャートを参照して詳しく説明する。
【0022】
図3及び
図4は、第二実施形態を示している。第二実施形態は、第一実施形態とは光源6の設置位置が異なるだけである。建屋1内で作業員が作業を行うような場合、第一実施形態のような光源6の設置位置であると、例えば、作業員が光源6からの光7によって幻惑されてしまい、作業に支障が来すおそれがある。このような場合は、本実施形態のように、光源6を高い位置に設置して、作業員の作業を阻害しないようにする。、このようにすれば、建屋1内での作業と障害物検知のための光源6からの光の照射との両立を図ることができる。
【0023】
図5は、第三実施形態を示している。上述した第一及び第二実施形態は、検知対象エリア4が建屋1の内部であった。本実施形態では、検知対象エリア4が屋外であり、より具体的には、例えば工場の正門などの出入口2近傍の敷地内にある。出入口2は、工場の外壁1Xの一部が途切れている位置に設けられている。このため、車両3からは、外壁1Xによって検知対象エリア4が死角となっている。そして、光源6は、検知対象エリア4の出入口2に対して反対側の構内道路上方に設置されている。具体的には、構内道路上にゲートを設けて、このゲートに光源6が取り付けられている。
【0024】
あるいは、公道上の信号のように、構内道路脇から片持ち状に伸ばしたポールに光源6が取り付けられる。工場では構内道路用に信号が設けられるので、この信号用ポールを利用することもできる。また、工場では納入業者用に行き先を示す標識が掲げられることもあるので、この標識のためのゲートやポールを利用することもできる。また、工場内には、各種配管を建屋間に取り回すための配管ラックが構内道路上に架け渡されることもあるので、このようなラックを利用して光源6を取り付けることもできる。
図5では、障害物5から伸びる影8は、工場の出入口2前の一般道路上に達している。なお、その他の構成は上述した第一及び第二実施形態と同様である。
【0025】
図6は、第四実施形態を示している。本実施形態は、検知システムの構成自体は上述した第三実施形態と同じである。また、検知対象エリア4内で移動する障害物5を検知すること自体は、第一実施形態において説明した障害物検知の第一例や第二例と同様である。本実施形態では、障害物5がどのように移動しているかも検出できることを示している。本実施形態では、障害物5は、検知対象エリア4内で光源6との距離をほぼ変えずに移動する。言い換えれば、光源6からの光7の照射方向に対してほぼ垂直に障害物5は移動する。
【0026】
この場合、出入口2より外側の路面上には、移動しない光7のパターンが形成され、影8がその中で位置を変えるが、その大きさはほぼ変わらない。このような影8の移動は、画像処理部31aによる画像処理の結果、障害物検知部31dが、検知対象エリア4内の障害物5がどのように移動しているかも検知する。本実施形態の場合は、障害物5は車両3の進行方向の前方に位置する可能性が低いため、車両3と障害物5の出会い頭の衝突の危険性は低いと判定できる。
【0027】
図7は、第五実施形態を示している。本実施形態も、検知システムの構成自体は上述した第三及び第四実施形態と同じである。本実施形態では、障害物5が出入口2に向けて移動している。言い換えれば、光源6からの光7の照射方向に沿って光源6から離れるように障害物5は移動する。この場合、出入口2より外側の路面に形成される影8は、その位置をほぼ変えないが、その大きさが小さくなる。このような影8の移動も、画像処理部31aによる画像処理の結果、障害物検知部31dが、障害物5が出入口2に近づいて来ていることを検知する。本実施形態の場合は、車両3と障害物5の出会い頭の衝突の危険性が高いと判定できる。一方、影8の位置がほぼ変わらないが、その大きさが大きくなる場合は、障害物5は遠ざかる移動をしており、車両3と障害物5の出会い頭の衝突の危険性が低いと判定できる。
【0028】
次に、
図8のブロック図を参照しつつ、車両3側のシステムの構成について説明する。なお、その一部については、上述した第一~第五実施形態で言及しているが、それらについても改めて説明する。車両には、撮像部30としてのカメラが搭載されている。上述したように、障害物検知は撮像部30によって撮影された映像に基づいて行われる。そして、車両3には、撮像部30によって撮影された映像に基づいて障害物検知を行う検知制御部31も搭載されている。検知制御部31は、CPU、ROM、RAM、SSD又はHDDなどのストレージ、I/Oデバイスなどからなる電子デバイスである。
【0029】
検知制御部31は、撮像部30によって撮影された映像を画像処理する画像処理部31aを備えている。従って、撮像部30は画像処理部31aに接続されており、撮像部30によって撮影された映像は画像処理部31aに送出される。検知制御部31は、画像処理部31aに接続された検知要否判定部31bも備えている。検知要否判定部31bは、障害物検知が必要な状況であるかを判定する。例えば、画像処理部31aによる画像処理の結果、上述したコード標識9が検出された場合は、検知要否判定部31bは障害物検知が必要であると判断する。
【0030】
検知制御部31は、検知要否判定部31bと接続された自己位置検出部31cも備えている。例えば、上述したように、自己位置検出部31cとしての衛星測位システムによって検知対象エリア4に近づいたことが検出された場合、検知要否判定部31bは障害物検知が必要であると判断する。なお、検知要否判定部31bが上述したコード標識9のみで要否判定する場合、自己位置検出部31cは設けられなくてもよい。
【0031】
検知制御部31は、検知要否判定部31bと接続された障害物検知部31dも備えている。障害物検知部31dは、障害物検知が必要であると検知要否判定部31bが判定した場合に、画像処理部31aによる画像処理結果を利用して検知対象エリア4内の障害物5を検知する。より具体的には、上述したように、障害物検知部31dは、路面上の光7及び影8のパターンに基づいて障害物検知を行う。なお、上述した第四及び第五実施形態のように、障害物検知部31dは、障害物5がどのような状態であるかも検知する。障害物検知部31dは、画像処理部31aによる画像処理結果を利用するので、画像処理部31aとも接続されている。
【0032】
第一実施形態において説明した障害物検知の第二例の場合は、障害物5が存在しないときの路面の基準画像を保存する記憶部31eが車両3に必要となる。このため、検知制御部31は、基準画像を利用する障害物検知部31dと接続された記憶部31eも備えている。ただし、第一実施形態において説明した障害物検知の第一例のみで障害物検知を行う場合は、記憶部31eは設けられなくてもよい。記憶部31eは、上述したように複数の基準画像を保存しており、車両3の自己位置に基づいてどの基準画像を用いるかを選択する。このため、記憶部31eは自己位置検出部31cとも接続されている。
【0033】
上述した実施形態では説明していないが、障害物5が検知された場合、何らかの対処を行う必要が生じる。自動運転されている車両3に搭乗している乗員に単に報知するだけでもよいし、障害物5との衝突を自動運転で回避してもよい。このため、検知制御部31は、障害物検知部31dと接続された対処判定部31fも備えている。対処判定部31fには、報知を行うためのディスプレイモニタなどの表示部31gが接続されている。表示部31gをタッチスクリーンなどにして、検知制御部31への入力デバイスとして利用してもよい。
【0034】
上述したように、上記実施形態の車両3は自動運転により走行されるので、車両3は自動運転制御部32も備えている。そして、対処判定部31fによって障害物5が検知された場合に自動運転で車両3を操作して障害物5との衝突を回避するために、自動運転制御部32は検知制御部31の対処判定部31fと接続されている。自動運転では、車両3の加減速を含む走行及び旋回を制御可能であり、これらの制御を行うために、自動運転制御部32は車両3の駆動部33とも接続されている。
【0035】
次に、
図9及び
図10のフローチャートを参照しつつ、障害物検知制御についてより具体的に説明する。ここでは、工場内の構内道路を自動運転で走行している車両3は自己位置検出部31cによって自己位置を検出し、障害物検知は上述した基準画像を利用する第二例であるものとして説明する。なお、車両3は自動運転で走行しているため、撮像部30としてのカメラによる撮影は常時行われている。
【0036】
車両3は、ステップS1において自己位置検出部31cによって自己位置を検出している。ステップS1を受けてステップS2において、検知要否判定部31bは、検知対象エリア4近傍の検知処理対象エリア内に車両3が位置している否かを判定する。検知処理対象エリアとは、上記実施形態での具体例では障害物検知制御を行うべき出入口2に接近したエリアのことである。ステップS2が肯定されるまで、即ち、障害物検知が必要であると検知要否判定部31bによって判定されるまで、ステップS1及びステップS2の処理はループされる。
【0037】
ステップS2が肯定されると、ステップS3において、障害物検知のために、撮像部30で撮影された映像の画像処理が画像処理部31aによって開始される。ここでの画像処理は、上述したように、具体的には路面上の光7及び影8のパターンの解析である。ステップS3の結果、ステップS4において、まず、路面上に光7のパターン、即ち、露光パターンが検出できるか否かが障害物検知部31dによって判断される。
【0038】
ステップS4が否定される場合、ステップS10において、障害物検知が不要の状況であるか否かが判断される。例えば、画像処理の結果、建屋1の出入口2にシャッターが閉まっている場合は、シャッターを開く必要があるため障害物検知は不要であると判断する。シャッターを開いた際に障害物5への対処を行うことになるからである。なお、出入口2にシャッターが閉まっているか否かは画像処理の結果から判断される。シャッターの表面にコード標識を付すなどして画像処理に基づく判断を向上させることも可能である。あるいは、単純に日付や時刻から障害物検知が不要であると判断可能な状況も考えられる。
【0039】
ステップS10が肯定される場合、即ち、障害物検知が不要な状況であると判断された場合、対処判定部31fは、ステップS11において検知不要であると判断し、ステップS12において車両3に搭載された表示部31gに検知不要である旨の情報を表示する。なお、自動運転されている車両3に搭乗者がいないような場合は、ステップS12は省略されてもよい。
【0040】
一方、ステップS10が否定される場合は、何らかの理由により路面上に光7のパターン、即ち、露光パターンが検出できない状況であるので、対処判定部31fは、ステップS13において検知失敗であると判断する。そして、ステップS14において、対処判定部31fは、表示部31gに検知失敗である旨を表示すると共に、自動運転制御部32に車両3を停止させる旨の信号を送る。自動運転制御部32は、受信した停止信号に基づいて駆動部33を制御して車両3を停止させる。上述したように、障害物検知は周囲環境の明るさの影響を受けるため、周囲環境の明るさが原因で障害物検知を行えない場合がある。雨天時で路面が濡れているような場合は、路面反射により路面上のパターンの検出が正確に行えないことも考えられる。雪が降っていて路面上の積雪状態によるコントラストのほうが、光7及び影8のコントラストよりも支配的となる事も考えられる。
【0041】
ステップS4が肯定される場合は、ステップS5において、障害物検知部31dは、ステップS1で検出した車両3の自己位置に基づいて記憶部31eから上述した基準画像、即ち、障害物5がない場合の露光パターンを読み込む。そして、障害物検知部31dは、記憶部31eから読み込んだ露光パターンとステップS3及びS4で検出した露光パターンとを比較する。ステップS6において、上述した比較の結果、露光パターンが一致するか否かを判定する。
【0042】
ステップS6が肯定される場合、即ち、比較した露光パターンが一致する場合は、路面上の光7のパターン中に影8が存在しないので、検知対象エリア4内に障害物5がないと判断できる。従って、対処判定部31fは、ステップS15において障害物5がないと判断し、ステップS16において表示部31gに障害物5がない旨の情報を表示する。なお、自動運転されている車両3に搭乗者がいないような場合は、ステップS16は省略されてもよい。
【0043】
一方、ステップS6が否定される場合は、路面上の光7のパターン中に影8が存在しており、検知対象エリア4内に障害物5があると判断できる。この場合、ステップS7において、障害物検知部31dは、現在の露光パターンを1フレーム~数フレーム前の露光パターンと比較して、影8の動きを解析する。即ち、ステップS8において、障害物検知部31dは、露光パターン内の影8が変化しているか否かを判断する。ステップS8が否定される場合、即ち、影8が変化していない場合は、障害物5は移動していないと判断できる。従って、対処判定部31fは、ステップS17において衝突する可能性の低い障害物5であると判断し、ステップS18において表示部31gに注意喚起の情報を表示すると共に、自動運転制御部32に車両3を減速させる旨の信号を送る。自動運転制御部32は、受信した減速信号に基づいて駆動部33を制御して車両3を減速させる。
【0044】
ステップS8が肯定される場合は、ステップS9において、障害物検知部31dは、影8の変化が、影8が車両3に近づいているか、あるいは、影8の幅が小さくなっているかを判定する。これは、上述した
図7を参照して説明した障害物検知である。ここで、「影8が車両3に近づいている」とは、
図3に示されているように、影8のアウトラインが路面上で閉じている場合について説明している。この場合は、影8自体の移動によって障害物5の接近を把握しやすい。一方、「影8の幅が小さくなっている」とは、
図1に示されるように、影8のアウトラインが路面上で閉じていない場合について説明している。この場合は、影8自体の移動によって障害物5の接近を把握しにくく、影8の幅の変化に基づいて障害物5の移動が判定される。
【0045】
ステップS9が否定される場合は、障害物5は移動しているが衝突の可能性は低いと判断できる。従って、対処判定部31fは、ステップS17において衝突する可能性の低い障害物5であると判断し、ステップS18において表示部31gに注意喚起の情報を表示すると共に、自動運転制御部32に車両3を減速させる旨の信号を送る。自動運転制御部32は、受信した減速信号に基づいて駆動部33を制御して車両3を減速させる。
【0046】
一方、ステップS9が肯定される場合は、障害物5が車両3の進行方向前方に移動しており、衝突の可能性が高いと判断できる。従って、対処判定部31fは、ステップS19において衝突する可能性の高い障害物5であると判断し、ステップS20において表示部31gに警告の情報を表示すると共に、自動運転制御部32に車両3を停止させる旨の信号を送る。自動運転制御部32は、受信した停止信号に基づいて駆動部33を制御して車両3を停止させる。
【0047】
上記実施形態の車両用障害物検知方法では、車両3から死角となる検知対象エリア4に向けて光源6から光7が照射される。車両3に搭載された撮像部30を用いて、光源6から照射されて検知対象エリア4を通過した光7によって照らされた路面が撮影される。撮影された映像を車両3において画像処理して、路面上に検知対象エリア4内から伸びる影8がある場合に、検知対象エリア4に障害物5があると判定される。このため、検知判定処理自体は車両3側のみで完結する。また、検知対象エリア4には光源6のみを設置するだけでよく、通信装置などは必要ない。従って、シンプルな構成のシステムを用いて死角にある障害物5を検知することができる。また、検知対象エリア4が多数箇所に存在する場合でも、各検知対象エリア4に設置する必要があるのは光源6のみであり、その他は車両3側で完結しているため、システムの構築を容易にすることもできる。
【0048】
ここで、画像処理において、撮影した路面上の障害物5から伸びた影8が路面上で移動している際に、検知対象エリア4内に移動している障害物5があると判定してもよい。この場合は、後述する基準画像を車両3側で保存しておく必要なく、障害物5を検知できる。ただし、障害物5が移動していないと検知できない。
【0049】
あるいは、画像処理において、予め車両3の記憶部31eに保存された障害物5が存在しないときの路面の基準画像と比較することで、路面上に検知対象エリア4内の障害物5から伸びる影8の有無を判断する。この場合は、基準画像を車両3側で保存しておく必要はあるが、移動している障害物5だけでなく、静止している障害物5も検知できる。
【0050】
さらに、ここで、車両3に搭載された自己位置検出部31cにより検知対象エリア4に接近したことを検知した場合に、基準画像との比較による障害物検知を行ってもよい。この場合、自己位置検出部31cは必要になるが、障害物検知を行う検知対象エリア4に接近するまでは障害物検知を行わなくて済むため、制御負荷を低減できる。それだけでなく、自己位置検出部31cの検出結果に基づいて、適切な基準画像を記憶部31eから呼び出すことができる。
【0051】
あるいは、撮像部30によって検知対象エリア4の近傍に設置されたコード標識9を撮影した場合に、基準画像との比較による障害物検知を行ってもよい。この場合、検知対象エリア4近傍に光源6に加えてコード標識9を設置する必要が生じるが、光7や影8を検出する撮像部30を利用することで自己位置検出部31cは障害物検知には必要ない。そして、この場合も、障害物検知を行う検知対象エリア4に接近するまでは障害物検知を行わなくて済むため、制御負荷を低減できる。また、コード標識9に基づいて車両3の自己位置を把握できるので、やはり、適切な基準画像を記憶部31eから呼び出すことができる。
【0052】
上記実施形態の車両用障害物検知システムは、車両3から死角となる検知対象エリア4に向けて光7を照射する光源6と、車両3に搭載された撮像部30と、車両3に搭載された検知制御部31と、を備えている。検知制御部31は、光源6から照射されて検知対象エリア4を通過した光7によって照らされた路面を撮像部が撮影した映像を画像処理する。検知制御部31は、画像処理の結果、路面上に検知対象エリア4内から伸びる影8がある場合に、検知対象エリア4に障害物5があると判定するよう構成されている。このため、検知判定処理自体は車両3側の撮像部30及び検知制御部31のみで完結する。また、検知対象エリア4には光源6のみを設置するだけでよく、通信装置などは必要ない。従って、シンプルな構成のシステムを用いて死角にある障害物5を検知することができる。また、検知対象エリア4が多数箇所に存在する場合でも、各検知対象エリア4に設置する必要があるのは光源6のみであり、その他は車両3側で完結しているため、システムの構築を容易にすることもできる。
【0053】
本開示は上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態では、撮像部30としてのカメラは、車両3の前方を撮影した。しかし、トラックなどの車両3は、後方の荷台から建屋の出入口2に進入することもある。この場合、車両3の後方を撮影するバックカメラの映像に基づいて、障害物検知を行ってもよい。また、上記実施形態の車両3は自動運転で走行していることを前提として説明したが、運転者によって運転されている車両において上述した障害物検知が行われてももちろんよい。
【0054】
また、本開示の利点は、通信装置などを備えて外部と通信しなくても車両3側のみで障害物検知処理が完結することが利点であるが、障害物検知にさらに通信装置を利用することを妨げるものではない。例えば、上述したステップS10において障害物検知が不要な状況であるか否かどうかを判断する際に、通信装置により外部から得た情報を利用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
3 車両
30 撮像部
31 検知制御部
31e 記憶部
4 検知対象エリア
5 障害物
6 光源
7 光
8 影
9 コード標識