(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130863
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】二次電池用負極および二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20230913BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20230913BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20230913BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20230913BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230913BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20230913BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230913BHJP
H01M 10/6572 20140101ALI20230913BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20230913BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20230913BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/38 Z
H01M10/0566
H01M10/613
H01M10/6572
H01M4/02 Z
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035408
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄一
【テーマコード(参考)】
5H029
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ04
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H029HJ02
5H029HJ20
5H031AA00
5H031KK03
5H031KK06
5H050AA08
5H050AA09
5H050BA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB11
5H050DA03
5H050EA02
5H050FA02
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】優れた電池性能を得ることが可能である二次電池用負極を提供する。
【解決手段】二次電池用負極は、負極集電体と、負極集電体と接するように設けられたp型熱電半導体と、負極集電体と接するように設けられたn型熱電半導体と、p型熱電半導体およびn型熱電半導体を挟んで負極集電体と対向すると共にp型熱電半導体およびn型熱電半導体の各々と接するように設けられた介在層と、介在層から見てp型熱電半導体およびn型熱電半導体の反対側に設けられ、p型熱電半導体の抵抗値およびn型熱電半導体の抵抗値よりも高い抵抗値を有する負極活物質層とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、
前記負極集電体と接するように設けられたp型熱電半導体と、
前記負極集電体と接するように設けられたn型熱電半導体と、
前記p型熱電半導体および前記n型熱電半導体を挟んで前記負極集電体と対向すると共に前記p型熱電半導体および前記n型熱電半導体の各々と接するように設けられた介在層と、
前記介在層から見て前記p型熱電半導体および前記n型熱電半導体の反対側に設けられ、前記p型熱電半導体の抵抗値および前記n型熱電半導体の抵抗値よりも高い抵抗値を有する負極活物質層と
を有する
二次電池用負極。
【請求項2】
前記p型熱電半導体および前記n型熱電半導体は、Mg2Siに不純物元素が添加されたものである
請求項1記載の二次電池用負極。
【請求項3】
前記介在層は、β-FeSi2からなる
請求項1または請求項2に記載の二次電池用負極。
【請求項4】
前記負極活物質層はSi(珪素)を含む
請求項1記載の二次電池用負極。
【請求項5】
前記負極活物質層は、結晶Si、非晶質Si、およびSi合金のうちの少なくとも1種を含む
請求項4記載の二次電池用負極。
【請求項6】
正極と、負極と、電解液とを備え、
前記負極は、
負極集電体と、
前記負極集電体と接するように設けられたp型熱電半導体と、
前記負極集電体と接するように設けられたn型熱電半導体と、
前記p型熱電半導体および前記n型熱電半導体を挟んで前記負極集電体と対向すると共に前記p型熱電半導体および前記n型熱電半導体の各々と接するように設けられた介在層と、
前記介在層から見て前記p型熱電半導体および前記n型熱電半導体の反対側に設けられ、前記p型熱電半導体の抵抗値および前記n型熱電半導体の抵抗値よりも高い抵抗値を有する負極活物質層と
を有する
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池用負極および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの多様な電子機器の電源として二次電池が広く普及している。二次電池としては、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度が得られるものが望まれている。二次電池は、正極および負極と共に電解質を備えており、負極は、充放電反応に関与する負極活物質を含んでいる。
【0003】
負極活物質に関して様々な検討がなされている。具体的には、二次電池の負極に付帯効果を及ぼす種々の材料について研究されており、例えば、熱を電圧に変換する取り組みが鋭意検討されている。(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. Shibata, Y. Fukuzumi, W. Kobayashi and Y. Moritomo,Appl. Phys. Express, 11(2018), 017101-1-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二次電池用負極を用いた二次電池の電池特性に関する様々な検討がなされているが、さらなる電池特性の改善の余地がある。
【0007】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた電池性能を得ることが可能である二次電池用負極および二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態の二次電池用負極は、負極集電体と、その負極集電体と接するように設けられたp型熱電半導体と、負極集電体と接するように設けられたn型熱電半導体と、p型熱電半導体およびn型熱電半導体を挟んで負極集電体と対向すると共にp型熱電半導体およびn型熱電半導体の各々と接するように設けられた介在層と、介在層から見てp型熱電半導体およびn型熱電半導体の反対側に設けられ、p型熱電半導体の抵抗値およびn型熱電半導体の抵抗値よりも高い抵抗値を有する負極活物質層とを有する。
【0009】
本開示の一実施形態の二次電池は、上記した本開示の一実施形態の二次電池用負極を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態の二次電池用負極または二次電池によれば、負極活物質層と負極集電体との間に、p型熱電半導体およびn型熱電半導体を設けるようにした。このため、充放電時に負極活物質層において発生する熱がp型熱電半導体およびn型熱電半導体へ伝導し、負極活物質層を冷却することができる。よって、長寿命化を図ることができる。さらに、負極活物質層と負極集電体との間の温度差に起因したゼーベック効果により、起電力を生じさせることができる。そのため、放電容量の向上が期待できる。
なお、本開示の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態における二次電池用負極の構成を模式的に表す説明図である。
【
図2】本開示の一実施形態における二次電池(二次電池用負極を含む。)の構成を表す斜視図である。
【
図3】
図2に示した電池素子の構成を表す断面図である。
【
図4】二次電池の適用例の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池用負極
1-1.構成
1-2.動作
1-3.作用および効果
2.二次電池(ラミネートフィルム型)
2-1.構成
2-2.動作
2-3.製造方法
2-4.作用および効果
3.変形例
4.二次電池の用途
【0013】
<1.二次電池用負極>
まず、本開示の一実施形態の二次電池用負極に関して説明する。
【0014】
本開示の一実施形態の二次電池用負極(以下、単に「負極」ともいう。)は、例えば、二次電池などの電気化学デバイスに適用される。この負極が適用される二次電池の種類は、特に限定されないが、例えば、電極反応物質を吸蔵および放出することにより電池容量が得られる二次電池などである。
【0015】
電極反応物質とは、負極を用いた電極反応に関わる物質であり、その電極反応物質は、負極において吸蔵および放出される。二次電池の種類に関して具体的な例を挙げると、電極反応物質としてリチウム(またはリチウムイオン)を用いた二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。
【0016】
<1-1.構成>
図1は、負極の一例である負極1の断面構成を表している。ただし、
図1では、負極1の一部だけを示している。
【0017】
負極1は、
図1に示したように、負極集電体2と、熱電変換層3と、介在層4と、負極活物質層5とを有している。なお、熱電変換層3、介在層4、および負極活物質層5を含む積層部6は、負極集電体2の片面だけに設けられていてもよいし、負極集電体2の両面に設けられていてもよい。
図1では、積層部6が負極集電体2の両面に設けられている場合を示している。
【0018】
負極集電体2は、1または2種以上の導電性材料からなるフィルム状部材であり、表面2Sを含んでいる。導電性材料の種類は、特に限定されないが、銅、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスなどの金属材料である。この金属材料は、金属の単体であってもよいし、合金であってもよい。なお、負極集電体2は、単層でもよいし、多層でもよい。
【0019】
負極集電体2の表面2Sは、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体2に対する熱電変換層3の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも熱電変換層3と対向する領域において、負極集電体2の表面2Sが粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理を利用して微粒子を形成する方法などである。電解処理では、電解槽中において電解法により負極集電体2の表面に微粒子が形成されるため、その負極集電体2の表面2Sに凹凸が設けられる。電解法により作製された銅箔は、一般的に、電解銅箔と呼ばれている。
【0020】
熱電変換層3は、温度差によるゼーベック効果を利用して,熱を電気に変換する素子であり、p型熱電半導体3pと、n型熱電半導体3nとを含んでいる。p型熱電半導体3pおよびn型熱電半導体3nは、それぞれ負極集電体2の表面2Sと接している。
【0021】
p型熱電半導体3pおよびn型熱電半導体3nは、Mg2Si(マグネシウムシリサイド)に所定の不純物元素がそれぞれ添加されたものが好適である。なお、p型熱電半導体3pおよびn型熱電半導体3nの構成材料は、温度差を付与することにより、熱起電力を発生させることができる材料であれば特に制限されるものではない。具体的には、p型ビスマステルライドおよびn型ビスマステルライドなどのビスマス-テルル系熱電半導体材料、GeTeおよびPbTeなどのテルライド系熱電半導体材料、アンチモン-テルル系熱電半導体材料、ZnSb、Zn3Sb2、Zn4Sb3などの亜鉛-アンチモン系熱電半導体材料、SiGe等のシリコン-ゲルマニウム系熱電半導体材料、Bi2Se3などのビスマスセレナイド系熱電半導体材料、β―FeSi2、CrSi2、MnSi1.73、Mg2Siなどのシリサイド系熱電半導体材料、酸化物系熱電半導体材料、FeVAl、FeVAlSi、FeVTiAlなどのホイスラー材料、TiS2などの硫化物系熱電半導体材料、が挙げられる。なかでも、ビスマス-テルル系熱電半導体材料、テルライド系熱電半導体材料、アンチモン-テルル系熱電半導体材料、またはビスマスセレナイド系熱電半導体材料が好ましい。さらに、p型ビスマステルライドまたはn型ビスマステルライドなどのビスマス-テルル系熱電半導体材料であることがより好ましい。p型ビスマステルライドは、キャリアが正孔で、ゼーベック係数が正値であり、例えば、BiXTe3Sb2-Xで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Xは、好ましくは0<X≦0.8であり、より好ましくは0.4≦X≦0.6である。Xが0より大きく0.8以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、p型熱電素子としての特性が維持されるので好ましい。また、n型ビスマステルライドは、キャリアが電子で、ゼーベック係数が負値であり、例えば、Bi2Te3-YSeYで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Yは、好ましくは0≦Y≦3(Y=0の時:Bi2Te3)であり、より好ましくは0<Y≦2.7である。Yが0以上3以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、N型熱電素子としての特性が維持されるので好ましい。
【0022】
介在層4は、p型熱電半導体3pおよびn型熱電半導体3nを挟んで負極集電体2と対向すると共にp型熱電半導体3pおよびn型熱電半導体3nの各々と接するように設けられている。介在層4は、p型熱電半導体3pおよびn型熱電半導体3nの酸化を抑制する保護膜でもある。介在層4の構成材料としては、例えばβ-FeSi2が好適である。β-FeSi2は、酸化防止性能が高いうえ、例えば1.2μm以上の赤外線を吸収する性質を有する。β-FeSi2からなる介在層4は、熱電変換層3と負極活物質層5との密着性を高め、負極活物質層5の離脱を防ぐ効果を有する。
【0023】
負極活物質層5は、例えば負極活物質と、負極結着剤とを含んでいる。ただし、負極活物質層5は、さらに、負極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。負極活物質層5は、介在層4から見てp型熱電半導体3pおよびn型熱電半導体3nの反対側に設けられている。負極活物質層5は、p型熱電半導体3pの抵抗値およびn型熱電半導体3nの抵抗値よりも高い抵抗値を有している。
【0024】
なお、負極活物質層5の形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0025】
(負極活物質)
負極活物質は、電極反応物質を吸蔵放出する材料であり、Si(珪素)含有材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。Siは優れた電極反応物質の吸蔵能力を有しているため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0026】
この「Si含有材料」とは、上記したように、Siを構成元素として含む材料の総称である。すなわち、Si含有材料は、Siの単体でもよいし、Siの合金でもよいし、Siの化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよいし、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。なお、Si含有材料の組織は、特に限定されないが、具体的には、固溶体でもよいし、共晶(共融混合物)でもよいし、金属間化合物でもよいし、それらの2種類以上の共存物でもよい。
また、結晶Siであってもよいし、非晶質Siであってもよい。
【0027】
Siの単体は、あくまで一般的な単体を意味しているため、微量の不純物を含んでいてもよい。すなわち、Siの単体の純度は、必ずしも100%に限られない。
【0028】
Siの合金の種類は、特に限定されない。具体的には、Siの合金は、Si以外の元素として、ホウ素、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、金、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどの金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいる。
【0029】
ただし、Siの合金は、1種類または2種類以上の金属元素を構成元素として含んでいる場合に限られず、1種類または2種類以上の金属元素と1種類または2種類以上の半金属元素とを構成元素として含んでいてもよい。なお、Siの合金は、さらに、1種類または2種類以上の非金属元素を構成元素として含んでいてもよい。
【0030】
Siの化合物の種類は、特に限定されない。具体的には、Siの化合物は、Si以外の元素として、酸素および炭素などの非金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいる。なお、Siの化合物は、さらに、上記したSiの合金に構成元素として含まれる一連の金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいてもよい。
【0031】
Siの合金およびSiの化合物の具体例は、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、NbSi2、TaSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2、SiC、Si3N4、Si2N2O、SiOx(0<x<1.5)およびLiSiOなどである。ただし、Siの合金およびSiの化合物のそれぞれの具体例の組成は、ここで説明した組成に限られず、任意に変更可能である。
【0032】
なお、Si含有材料の結晶状態は、特に限定されないが、中でも、アモルファスであることが好ましい。より具体的には、X線回折法(XRD)を用いたケイ素含有材料の分析において、回折角度2θが28°~29°の付近に結晶性ピークは検出されないことが好ましい。電極反応に関与しにくい副反応物の形成が抑制されるからである。
【0033】
(負極結着剤)
負極結着剤は、負極活物質などを結着させる材料である。負極結着剤は、例えばポリフッ化ビニリデンおよびその誘導体のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0034】
<1-2.動作>
負極1では、電極反応時において、負極活物質層5に含まれている負極活物質に電極反応物質が吸蔵されると共に、その負極活物質から電極反応物質が放出される。この場合には、電極反応物質がイオン状態で吸蔵放出される。電極反応物質の吸蔵放出に伴い、負極活物質層5は発熱を伴う。
【0035】
<1-3.作用および効果>
本開示の負極1によれば、負極集電体2と負極活物質層5との間に、熱電変換層3を設けるようにしている。このため、負極1における電極反応時において負極活物質層5が発生した熱が介在層4を介して熱電変換層3に速やかに吸収される。熱電変換層3では、相対的に高い温度である負極活物質層5と、相対的に低い温度である負極集電体2との温度差によるゼーベック効果を利用して電力を発生することができる。よって、負極1を二次電池に用いた場合に、例えば放電容量の向上が期待できる。また、二次電池に用いた場合に、負極活物質層5の温度上昇が抑制され、負極活物質と電解質との化学反応による自己放電を緩和する効果が期待でき、負極1の長寿命化を図ることができる。
【0036】
さらに介在層4を設けるようにしたので、熱電変換層3と負極活物質層5との密着性を向上させることができる。よって、長期信頼性が向上し、充放電サイクル特性の向上も期待できる。また、介在層4としてβ-FeSi2を用いるようにすれば、熱電変換層3の酸化を防止する効果が得られる。熱電変換層3は酸化により熱電変換性能が低下する場合があるので、介在層4により熱電変換層3の酸化を防止することで、より高い長期信頼性が得られる。また、β-FeSi2は1.2μm以上の赤外線を吸収する性質を有するので、高い冷却効果が得られる。さらに、β-FeSi2は高温下においても安定した熱電性能が得られることから、介在層4においても負極活物質層5と負極集電体2との温度差によるゼーベック効果を利用した起電力が得られる。
【0037】
<2.二次電池>
次に、本開示の一実施形態の二次電池に関して説明する。なお、本開示の一実施形態の二次電池用負極(以下、単に「負極」と呼称する。)は、二次電池の一部(一構成要素)を構成するものであるため、以下に二次電池の説明と併せて説明する。
【0038】
ここで説明する二次電池は、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池であり、正極および負極と共に、液状の電解質である電解液を備えている。この二次電池では、充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを防止するために、その負極の充電容量が正極の放電容量よりも大きくなっている。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなるように設定されている。
【0039】
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。
【0040】
<2-1.構成>
図2は、二次電池の斜視構成を表していると共に、
図3は、
図2に示した電池素子20の断面構成を表している。ただし、
図2では、外装フィルム10と電池素子20とが互いに分離された状態を示していると共に、
図3では、電池素子20の一部だけを示している。
【0041】
二次電池は、
図2に示したように、外装フィルム10と、電池素子20と、正極リード31および負極リード32と、封止フィルム41,42とを備えている。ここで説明する二次電池は、電池素子20を収納するための外装部材として可撓性(または柔軟性)の外装フィルム10を用いたラミネートフィルム型の二次電池である。
【0042】
[外装フィルムおよび封止フィルム]
外装フィルム10は、
図1に示したように、電池素子20を収納する可撓性の外装部材であり、その電池素子20が内部に収納された状態において封止された袋状の構造を有している。このため、外装フィルム10は、後述する正極21および負極22と共に電解液を収納している。
【0043】
外装フィルム10の立体的形状は、特に限定されないが、具体的には、電池素子20の立体的形状に対応している。ここでは、外装フィルム10の立体的形状は、後述する扁平状の電池素子20の立体的形状に応じて、扁平な略直方体である。
【0044】
外装フィルム10の構成(材質および層数など)は、特に限定されず、単層フィルムでもよいし、多層フィルムでもよい。外装フィルム10は、1枚のフィルムであり、矢印F(一点鎖線)の方向に折り畳み可能である。外装フィルム10には、電池素子20を収容するための、いわゆる深絞り部としての窪み部10Uが設けられている。
【0045】
具体的には、外装フィルム10は、融着層、金属層および表面保護層が内側からこの順に積層された3層の多層フィルム、すなわちラミネートフィルムである。外装フィルム10が折り畳まれた状態では、互いに対向する融着層のうちの外周縁部同士が互いに接合されている。融着層は、ポリプロピレンなどの高分子化合物を含んでいる。金属層は、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。表面保護層は、ナイロンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0046】
封止フィルム41は、外装フィルム10と正極リード31との間に挿入されていると共に、封止フィルム42は、外装フィルム10と負極リード32との間に挿入されている。ただし、封止フィルム41,42のうちの一方または双方は省略されてもよい。
【0047】
封止フィルム41は、外装フィルム10の内部に外気などが侵入することを防止する封止部材である。また、封止フィルム41は、正極リード31に対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物を含んでいる。そのポリオレフィンの具体例は、ポリプロピレンなどである。
【0048】
封止フィルム42の構成は、負極リード32に対して密着性を有する封止部材であることを除いて、封止フィルム41の構成と同様である。すなわち、封止フィルム42は、負極リード32に対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0049】
[電池素子]
電池素子20は、
図1および
図2に示したように、外装フィルム10の内部に収納されており、正極21と、負極22と、セパレータ23と、電解液とを備えている。
【0050】
電池素子20は、いわゆる巻回電極体である。すなわち、電池素子20では、正極21および負極22がセパレータ23を介して互いに積層されていると共に、Y軸方向に延在する仮想軸である巻回軸Pを中心として正極21、負極22およびセパレータ23が巻回されている。正極21および負極22は、セパレータ23を介して互いに対向しながら巻回されている。
【0051】
電池素子20の立体的形状は、扁平な略円筒体である。すなわち、巻回軸Pと交差する電池素子20の断面(XZ面に沿った断面)の形状は、長軸J1および短軸J2により規定される扁平形状であり、より具体的には、扁平な略楕円形である。長軸J1は、X軸方向に延在すると共に相対的に大きい長さを有する仮想軸であると共に、短軸J2は、X軸方向と交差するZ軸方向に延在すると共に相対的に小さい長さを有する仮想軸である。
【0052】
(正極)
正極21は、
図3に示したように、正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bを含んでいる。
【0053】
正極集電体21Aは、正極活物質層21Bが設けられる一対の面を有している。正極集電体21Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、アルミニウムなどである。
【0054】
ここでは、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出する正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、正極21が負極22に対向する側において正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。また、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などを含んでいてもよい。正極活物質層21Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法などである。
【0055】
正極活物質は、リチウム化合物を含んでいる。このリチウム化合物は、リチウムを構成元素として含む化合物であり、より具体的には、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を構成元素として含む化合物などである。高いエネルギー密度が得られるからである。ただし、リチウム化合物は、さらに、他元素(リチウムおよび遷移金属元素のそれぞれ以外の元素)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。リチウム化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸化物、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などである。酸化物の具体例は、LiNiO2、LiCoO2およびLiMn2O4などであると共に、リン酸化合物の具体例は、LiFePO4およびLiMnPO4などである。
【0056】
正極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴムなどであると共に、高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどである。正極導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その炭素材料は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、導電性材料は、金属材料および高分子化合物などでもよい。
【0057】
(負極)
負極22は、
図3に示したように、負極集電体22Aと、積層部22Bとを含んでいる。負極22としては、先に説明した負極1(
図1)を用いることができる。すなわち、負極集電体22Aは負極集電体2(
図1)と同様の構成を有し、積層部22Bは積層部6と同様の構成を有する。
図3に示した例では、積層部22Bは、負極集電体22Aの両面に設けられており、上記した負極活物質を含んでいる。ただし、積層部22Bは、負極22が正極21に対向する側において負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0058】
(セパレータ)
セパレータ23は、
図3に示したように、正極21と負極22との間に介在している絶縁性の多孔質膜であり、その正極21と負極22との接触(短絡)を防止しながらリチウムイオンを通過させる。このセパレータ23は、ポリエチレンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0059】
(電解液)
電解液は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに含浸されており、溶媒および電解質塩を含んでいる。
【0060】
溶媒は、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などの非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0061】
[正極リードおよび負極リード]
正極リード31は、
図2に示したように、電池素子20(正極21)に接続された正極端子であり、より具体的には、正極集電体21Aに接続されている。この正極リード31は、外装フィルム10の外部に導出されており、アルミニウムなどの導電性材料を含んでいる。正極リード31の形状は、特に限定されないが、具体的には、薄板状および網目状などのうちのいずれかである。
【0062】
負極リード32は、
図2に示したように、電池素子20(負極22)に接続された負極端子であり、より具体的には、負極集電体22Aに接続されている。この負極リード32は、外装フィルム10の外部に導出されており、銅などの導電性材料を含んでいる。ここでは、負極リード32の導出方向は、正極リード31の導出方向と同様である。負極リード32の形状に関する詳細は、正極リード31の形状に関する詳細と同様である。
【0063】
<2-2.動作>
二次電池の充電時には、電池素子20において、正極21からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、二次電池の放電時には、電池素子20において、負極22からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極21に吸蔵される。これらの充放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵および放出される。
【0064】
<2-3.製造方法>
以下で説明する手順により、正極21および負極22のそれぞれを作製すると共に電解液を調製したのち、その正極21、負極22および電解液を用いて二次電池を作製する。
【0065】
[正極の作製]
最初に、正極活物質、正極結着剤および正極導電剤を互いに混合させることにより、正極合剤とする。続いて、溶媒に正極合剤を投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。溶媒の種類は、特に限定されないが、具体的には、水性溶媒でもよいし、非水性溶媒(有機溶剤)でもよい。この水性溶媒は、純水などであり、ここで説明した水性溶媒の種類に関する詳細は、以降においても同様である。最後に、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層21Bを形成する。こののち、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型してもよい。この場合には、正極活物質層21Bを加熱してもよいし、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。これにより、正極21が作製される。
【0066】
[負極の作製]
上記した負極活物質を用いて、正極21の作製手順と同様の手順により、負極集電体22Aの両面に積層部22Bを形成する。具体的には、負極集電体22Aの両面にp型熱電半導体材料およびn型熱電半導体材料を選択的に形成することで熱電変換層を形成したのち、熱電変換層を覆うように介在層と負極活物質層とを順に形成する。負極活物質層の形成は、例えば負極活物質、負極結着剤および負極導電剤を互いに混合させることにより、負極合剤としたのち、溶媒(水性溶媒)に負極合剤を投入することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製する。続いて、負極集電体22Aの両面に設けられた介在層に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層を形成する。これにより、負極22が作製される。
【0067】
[電解液の調製]
溶媒に電解質塩を投入する。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されるため、電解液が調製される。
【0068】
[二次電池の組み立て]
最初に、溶接法などを用いて、正極21(正極集電体21A)に正極リード31を接続させると共に、負極22(負極集電体22A)に負極リード32を接続させる。
【0069】
続いて、セパレータ23を介して正極21および負極22を互いに積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、巻回体(図示せず)を作製する。この巻回体は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに電解液が含浸されていないことを除いて、電池素子20の構成と同様の構成を有している。続いて、プレス機などを用いて巻回体を押圧することにより、扁平形状となるように巻回体を成型する。
【0070】
続いて、窪み部10Uの内部に巻回体を収容したのち、外装フィルム10(融着層/金属層/表面保護層)を折り畳むことにより、その外装フィルム10同士を互いに対向させる。続いて、熱融着法などを用いて互いに対向する外装フィルム10(融着層)のうちの2辺の外周縁部同士を互いに接合させることにより、袋状の外装フィルム10の内部に巻回体を収納する。
【0071】
最後に、袋状の外装フィルム10の内部に電解液を注入したのち、熱融着法などを用いて外装フィルム10(融着層)のうちの残りの1辺の外周縁部同士を互いに接合させる。この場合には、外装フィルム10と正極リード31との間に封止フィルム41を挿入すると共に、外装フィルム10と負極リード32との間に封止フィルム42を挿入する。これにより、巻回体に電解液が含浸されるため、巻回電極体である電池素子20が作製されると共に、袋状の外装フィルム10の内部に電池素子20が封入されるため、二次電池が組み立てられる。
【0072】
[二次電池の安定化]
組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの各種条件は、任意に設定可能である。これにより、負極22などの表面に被膜が形成されるため、二次電池の状態が電気化学的に安定化する。よって、ラミネートフィルム型の二次電池が完成する。
【0073】
<2-4.作用および効果>
本開示の二次電池によれば、上記した負極1と同様の構成の負極22を備えている。よって、負極22において、相対的に高い温度である負極活物質層と、相対的に低い温度である負極集電体22Aとの温度差によるゼーベック効果を利用して電力を発生することができる。このため、放電容量の向上が期待できる。負極活物質層の温度上昇が抑制され、負極活物質と電解質との化学反応による自己放電を緩和する効果が期待でき、負極22の長寿命化を図ることができる。したがって、優れた電池性能を長期に亘って維持することができる。
【0074】
<3.変形例>
二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例のうちの任意の2種類以上は、互いに組み合わされてもよい。
【0075】
[変形例1]
多孔質膜であるセパレータ23を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、多孔質膜であるセパレータ23の代わりに、高分子化合物層を含む積層型のセパレータを用いてもよい。
【0076】
具体的には、積層型のセパレータは、一対の面を有する多孔質膜と、その多孔質膜の片面または両面に配置された高分子化合物層とを含んでいる。正極21および負極22のそれぞれに対するセパレータの密着性が向上するため、電池素子20の位置ずれ(巻きずれ)が発生しにくくなるからである。これにより、電解液の分解反応などが発生しても、二次電池が膨れにくくなる。高分子化合物層は、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。ポリフッ化ビニリデンなどは、物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。
【0077】
なお、多孔質膜および高分子化合物層のうちの一方または双方は、複数の絶縁性粒子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。二次電池の発熱時において複数の絶縁性粒子が放熱するため、その二次電池の安全性(耐熱性)が向上するからである。絶縁性粒子は、無機粒子および樹脂粒子などである。無機粒子の具体例は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ベーマイト、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムなどの粒子である。樹脂粒子の具体例は、アクリル樹脂およびスチレン樹脂などの粒子である。
【0078】
積層型のセパレータを作製する場合には、高分子化合物および有機溶剤などを含む前駆溶液を調製したのち、多孔質膜の片面または両面に前駆溶液を塗布する。この場合には、必要に応じて前駆溶液に複数の絶縁性粒子を添加してもよい。
【0079】
この積層型のセパレータを用いた場合においても、正極21と負極22との間においてリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。
【0080】
[変形例2]
液状の電解質である電解液を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、電解液の代わりに、ゲル状の電解質である電解質層を用いてもよい。
【0081】
電解質層を用いた電池素子20では、セパレータ23および電解質層を介して正極21および負極22が互いに積層されていると共に、正極21、負極22、セパレータ23および電解質層が巻回されている。この電解質層は、正極21とセパレータ23との間に介在していると共に、負極22とセパレータ23との間に介在している。
【0082】
具体的には、電解質層は、電解液と共に高分子化合物を含んでおり、その電解液は、高分子化合物により保持されている。電解液の漏液が防止されるからである。電解液の構成は、上記した通りである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどを含んでいる。電解質層を形成する場合には、電解液、高分子化合物および有機溶剤などを含む前駆溶液を調製したのち、正極21および負極22のそれぞれの片面または両面に前駆溶液を塗布する。
【0083】
この電解質層を用いた場合においても、正極21と負極22との間において電解質層を介してリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。
【0084】
<4.二次電池の用途>
二次電池の用途(適用例)は、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、電子機器および電動車両などの主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、主電源の代わりに用いられる電源、または主電源から切り替えられる電源である。
【0085】
二次電池の用途の具体例は、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオおよび携帯用情報端末などの電子機器(携帯用電子機器を含む。)である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。電子機器などに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用または産業用のバッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。これらの用途では、1個の二次電池が用いられてもよいし、複数個の二次電池が用いられてもよい。
【0086】
電池パックは、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として用いて作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源を併せて備えたハイブリッド自動車でもよい。家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に蓄積された電力を利用して家庭用の電気製品などを使用可能である。
【0087】
ここで、二次電池の適用例の一例に関して具体的に説明する。以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、適宜、変更可能である。
【0088】
図4は、電池パックのブロック構成を表している。ここで説明する電池パックは、1個の二次電池を用いた電池パック(いわゆるソフトパック)であり、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。
【0089】
この電池パックは、
図4に示したように、電源51と、回路基板52とを備えている。この回路基板52は、電源51に接続されていると共に、正極端子53、負極端子54および温度検出端子55を含んでいる。
【0090】
電源51は、1個の二次電池を含んでいる。この二次電池では、正極リードが正極端子53に接続されていると共に、負極リードが負極端子54に接続されている。この電源51は、正極端子53および負極端子54を介して外部と接続可能であるため、充放電可能である。回路基板52は、制御部56と、スイッチ57と、熱感抵抗素子(PTC素子)58と、温度検出部59とを含んでいる。ただし、PTC素子58は省略されてもよい。
【0091】
制御部56は、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでおり、電池パック全体の動作を制御する。この制御部56は、必要に応じて電源51の使用状態の検出および制御を行う。
【0092】
なお、制御部56は、電源51(二次電池)の電圧が過充電検出電圧または過放電検出電圧に到達すると、スイッチ57を切断することにより、電源51の電流経路に充電電流が流れないようにする。過充電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、4.2V±0.05Vである。過放電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、2.4V±0.1Vである。
【0093】
スイッチ57は、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでおり、制御部56の指示に応じて電源51と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ57は、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などを含んでおり、充放電電流は、スイッチ57のON抵抗に基づいて検出される。
【0094】
温度検出部59は、サーミスタなどの温度検出素子を含んでおり、温度検出端子55を用いて電源51の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部56に出力する。温度検出部59により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部56が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部56が補正処理を行う場合などに用いられる。
【0095】
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本開示に関して説明したが、その本開示の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されず、種々に変形可能である。
【0096】
二次電池の電池構造がラミネートフィルム型である場合に関して説明したが、その電池構造は、特に限定されない。具体的には、電池構造は、円筒型、角型、コイン型およびボタン型などでもよい。
【0097】
また、電池素子の素子構造が巻回型である場合に関して説明したが、その電池素子の素子構造は、特に限定されない。具体的には、素子構造は、電極(正極および負極)が積層された積層型および電極がジグザグに折り畳まれた九十九折り型などでもよい。
【0098】
さらに、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。具体的には、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
【0099】
なお、二次電池用負極活物質および二次電池用負極のそれぞれの用途は、二次電池に限定されず、キャパシタなどの他の電気化学デバイスに適用されてもよい。
【0100】
本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であるため、本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本技術に関して、他の効果が得られてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…負極、2…負極集電体、3…熱電変換層、4…介在層、5…負極活物質層、6…積層部、21…正極、22…負極。