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特開2023-130868切断装置、切断装置のクリアランス調整方法及び金属板の製造方法
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  • 特開-切断装置、切断装置のクリアランス調整方法及び金属板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130868
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】切断装置、切断装置のクリアランス調整方法及び金属板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 15/08 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
B23D15/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035424
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】成 宗涛
【テーマコード(参考)】
3C039
【Fターム(参考)】
3C039AA25
3C039AA44
(57)【要約】
【課題】刃物同士の噛み合わせ時におけるクリアランスを容易かつ高精度に調整でき、かつ安定的に所望の位置に刃物を固定できる切断装置、切断装置のクリアランス調整方法及び金属板の製造方法を提供する。
【解決手段】
第1刃物及び前記第1刃物に向けた切断方向へ移動する第2刃物からなる一対の刃物により、切断対象材を切断する切断装置であって、回転駆動機構の回転角度に基づくクリアランス調整量により、前記第1刃物又は第2刃物を前記切断方向と直交する調整方向に移動させることで、前記第1刃物と第2刃物との噛み合わせ時におけるクリアランスを調整するクリアランス調整機構を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1刃物及び前記第1刃物に向けた切断方向へ移動する第2刃物からなる一対の刃物により、切断対象材を切断する切断装置であって、
回転駆動機構の回転角度に基づくクリアランス調整量により、前記第1刃物又は前記第2刃物を前記切断方向と直交する調整方向に移動させることで、前記第1刃物と前記第2刃物との噛み合わせ時におけるクリアランスを調整するクリアランス調整機構を有する、切断装置。
【請求項2】
前記第1刃物を有する第1刃物ホルダ、又は、前記第2刃物を有する第2刃物ホルダに前記クリアランス調整機構が設けられている請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記クリアランス調整機構は、
前記第1刃物ホルダ又は前記第2刃物ホルダに固定され、前記調整方向に互いに間隔を有して配置された一対の被押圧部を有する被押圧部材と、
前記一対の被押圧部間に配置され、前記切断方向及び前記調整方向に直交する方向に延在すると共に前記回転駆動機構からの回転駆動力を受ける回転棹と、を有し、
前記回転棹の周囲には、前記回転棹の回転により前記一対の被押圧部の一方を押圧して、前記一対の被押圧部と共に前記第1刃物ホルダ又は前記第2刃物ホルダを前記調整方向に移動させる押圧部材を有する、請求項2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、断面形状が楕円であると共に、前記回転駆動力による前記回転棹の回転により前記被押圧部材に対して回転する、請求項3に記載の切断装置。
【請求項5】
前記被押圧部材は、前記回転棹及び前記押圧部材を囲むように設けられた矩形のフレーム部材であり、前記一対の被押圧部は、前記フレーム部材の対向する一対の内側面である、請求項3または請求項4に記載の切断装置。
【請求項6】
前記被押圧部材は、前記回転棹の回転軸方向に沿って複数設けられている、請求項3~5のいずれか1項に記載の切断装置。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項に記載の切断装置を用いて、前記第1刃物と前記第2刃物との噛み合わせ時におけるクリアランスを調整するクリアランス調整方法であって、
前記回転駆動力により前記回転棹を回転させるステップと、
前記回転棹の回転により、前記回転棹の周囲に設けられた前記押圧部材を一対の被押圧部の一方へ押圧させるステップと、
前記押圧部材の押圧により、前記一対の被押圧部と共に前記第1刃物ホルダ又は前記第2刃物ホルダを前記調整方向に移動させるステップと、を有する、
切断装置のクリアランス調整方法。
【請求項8】
請求項7に記載の切断装置のクリアランス調整方法を用いて、前記第1刃物又は前記第2刃物のクリアランスを調整して金属板を切断する、金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の刃物を用いて鋼板等の金属板(切断対象材の一例)を切断する切断装置、切断装置のクリアランス調整方法及び金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板等の金属板を切断する際、シャー切断機等の切断装置が用いられる。シャー切断機は、一対の刃物を構成する第1刃物及び第2刃物を備える。シャー切断機は、一対の刃物のうち一方の刃物を固定すると共に他方の刃物を一方の刃物に向けて移動させて、第1刃物と第2刃物との間の金属板を切断する。
【0003】
シャー切断機は、切断する金属板の板厚みに応じて、第1刃物及び第2刃物の刃物同士の噛み合わせ時におけるクリアランス(第1刃物と第2刃物との間隔)を調整するクリアランス調整機構を有する。
【0004】
クリアランス調整機構としては、例えば刃物(第1刃物及び第2刃物)を保持する刃物ホルダに勾配面を形成すると共に、刃物ホルダに接する部材にも勾配面が形成されている機構が知られている。この機構の場合、これらの勾配面を接触させながら互いに摺動させることで刃物ホルダ及び刃物等を移動して、クリアランスを調整する。
【0005】
特許文献1は、くさび片及び下刃ホルダに傾斜面を設け、互いの傾斜面を接触させながら傾斜面に沿って摺動させることで、下刃ホルダを前進及び後進させて刃物間のクリアランスを調整するクリアランス調整装置を開示する。
【0006】
特許文献2は、固定コッター及び上刃物ホルダに勾配面を形成し、固定コッターの勾配面に沿って上刃物ホルダを移動させることで、刃物同士のクリアランスを調整するクリアランス調整構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62-004507号公報
【特許文献2】特開平08-276313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された構成では、クリアランス調整後の刃物ホルダについて、勾配面(傾斜面)を介した固定作業が容易ではないとの問題がある。そして、クリアランス調整後に刃物ホルダを固定した場合であっても、勾配面(傾斜面)を介した固定であるため、所望の位置に刃物ホルダを安定的に固定させることが難しく、刃物(刃物ホルダ)の位置調整を精度良く行うことが困難との問題がある。
【0009】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたもので、刃物同士の噛み合わせ時におけるクリアランスを容易かつ高精度に調整でき、かつ安定的に所望の位置に刃物を固定できる切断装置、切断装置のクリアランス調整方法及び金属板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]第1刃物及び前記第1刃物に向けた切断方向へ移動する第2刃物からなる一対の刃物により、切断対象材を切断する切断装置であって、回転駆動機構の回転角度に基づくクリアランス調整量により、前記第1刃物又は前記第2刃物を前記切断方向と直交する調整方向に移動させることで、前記第1刃物と前記第2刃物との噛み合わせ時におけるクリアランスを調整するクリアランス調整機構を有する、切断装置。
[2]前記第1刃物を有する第1刃物ホルダ、又は、前記第2刃物を有する第2刃物ホルダに前記クリアランス調整機構が設けられている[1]に記載の切断装置。
[3]前記クリアランス調整機構は、前記第1刃物ホルダ又は前記第2刃物ホルダに固定され、前記調整方向に互いに間隔を有して配置された一対の被押圧部を有する被押圧部材と、前記一対の被押圧部間に配置され、前記切断方向及び前記調整方向に直交する方向に延在すると共に前記回転駆動機構からの回転駆動力を受ける回転棹と、を有し、前記回転棹の周囲には、前記回転棹の回転により前記一対の被押圧部の一方を押圧して、前記一対の被押圧部と共に前記第1刃物ホルダ又は前記第2刃物ホルダを前記調整方向に移動させる押圧部材を有する、[2]に記載の切断装置。
[4]前記押圧部材は、断面形状が楕円であると共に、前記回転駆動力による前記回転棹の回転により前記被押圧部材に対して回転する、[3]に記載の切断装置。
[5]前記被押圧部材は、前記回転棹及び前記押圧部材を囲むように設けられた矩形のフレーム部材であり、前記一対の被押圧部は、前記フレーム部材の対向する一対の内側面である、[3]または[4]に記載の切断装置。
[6]前記被押圧部材は、前記回転棹の回転軸方向に沿って複数設けられている、[3]~[5]のいずれか1つに記載の切断装置。
[7][3]~[6]のいずれか1つに記載の切断装置を用いて、前記第1刃物と前記第2刃物との噛み合わせ時におけるクリアランスを調整するクリアランス調整方法であって、前記回転駆動力により前記回転棹を回転させるステップと、前記回転棹の回転により、前記回転棹の周囲に設けられた前記押圧部材を一対の被押圧部の一方へ押圧させるステップと、前記押圧部材の押圧により、前記一対の被押圧部と共に前記第1刃物ホルダ又は前記第2刃物ホルダを前記調整方向に移動させるステップと、を有する、切断装置のクリアランス調整方法。
[8][7]に記載の切断装置のクリアランス調整方法を用いて、前記第1刃物又は前記第2刃物のクリアランスを調整して金属板を切断する、金属板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、刃物同士の噛み合わせ時におけるクリアランスを容易かつ高精度に調整でき、かつ安定的に所望の位置に刃物を固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】切断装置の一例を示す斜視模式図である。
図2】切断装置の一例を示す正面模式図及び側面模式図である。
図3】被押圧部材及び押圧部材の正面模式図である。
図4】被押圧部材に対して押圧部材が回動した状態を示す図である。
図5】被押圧部材及び押圧部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を通じて本発明を説明する。ここで、図1を参照して、本発明の一実施形態である切断装置10の構成について説明する。図1は、切断装置10の斜視模式図を示す。
【0014】
<切断装置の構成>
図1に示す通り、切断装置10は、下刃物ホルダ1と、上刃物ホルダ2と、クリアランス調整機構3とを有する。下刃物ホルダ1は、下刃物1aを有する。上刃物ホルダ2は、上刃物2aを有する。上刃物ホルダ2は、平面視で矩形状である。下刃物ホルダ1は、矩形状の上刃物ホルダ2と噛み合う矩形状の切欠部を有する。
【0015】
切断装置10は、上刃物ホルダ2を下刃物ホルダ1に向けた方向である切断方向(図中矢印M)へ移動させて、下刃物ホルダ1の矩形状の切欠部に矩形状の上刃物ホルダ2を噛み合わせることで、上刃物ホルダ2と下刃物ホルダ1との間に位置する金属板等の切断対象材(図示省略)を切断する。なお、下刃物ホルダ1についても、切断方向Mに向けて、微調整できるように移動可能な構成としても良い。
【0016】
上刃物ホルダ2は、下刃物ホルダ1の矩形状の切欠部と噛み合う位置に、上刃物2aが固定又は形成されている。同様に、下刃物ホルダ1は、上刃物ホルダ2と噛み合う矩形状の切欠部の位置に、下刃物1aが固定又は形成されている。つまり、切断装置10は、一対の刃物(下刃物1a及び上刃物2a)を有する。切断装置10は、上刃物2aを下刃物1aに向けた方向である切断方向Mへ移動させて、上刃物2aと下刃物1aとの間に位置する切断対象材を切断する。
【0017】
なお、図1に示す切断装置10は、上刃物ホルダ2を下刃物ホルダ1に向けて移動させる構成とするものの、下刃物ホルダ1を上刃物ホルダ2に向けて移動させて、上刃物ホルダ2と下刃物ホルダ1との間に位置する切断対象材を切断しても良い。
【0018】
図1において、上刃物ホルダ2は矩形状であるものの、平面視にて半円形状等の矩形状以外の形状であっても良い。そして、平面視にて半円形状である上刃物ホルダ2に合わせるため、下刃物ホルダ1に形成された矩形状の切欠部についても半円形状の切欠部として良い。この場合、切断装置10は、平面視にて半円形状である上刃物ホルダ2と、半円形状の切欠部を設けた下刃物ホルダ1とを有することで、上刃物ホルダ2と下刃物ホルダ1との間に位置する金属板等の切断対象材の幅端部に、円弧形状の切欠きを形成しても良い。
【0019】
<クリアランス調整機構>
次に、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態であるクリアランス調整機構3の構成について説明する。図2(a)は、切断装置10の正面模式図を示す。図2(b)は、切断装置10の側面模式図を示す。なお、図1においては、後述する回転駆動機構6の図示を省略する。
【0020】
図1及び図2に示す通り、クリアランス調整機構3は、フレーム部材である被押圧部材4と、回転棹5と、回転駆動機構6とを有する。クリアランス調整機構3は、後述する通り、切断装置10のクリアランス調整のため、回転駆動機構6の駆動及び回転棹5の回転により、被押圧部材4及び下刃物ホルダ1(下刃物1a)を、切断方向Mと直交する調整方向(図中矢印N)に移動させる。
【0021】
被押圧部材4は、フレーム部材の内側面として、調整方向Nに互いに間隔を有して配置された対向する一対の被押圧部4aを有する。被押圧部材4は、下刃物ホルダ1の表面に固定されている。回転棹5は、断面形状が楕円である押圧部材5aを周囲に有する。回転駆動機構6は、モーター等の回転駆動源6aと、回転駆動伝達部6bと、プーリ6cと、チェーン6dとを有する。
【0022】
回転棹5は、チェーン6dからの回転駆動力を受けるため、チェーン6dに係合している。回転棹5は、周囲に有する押圧部材5aと共に、フレーム部材である被押圧部材4の一対の被押圧部4aの間であって、フレーム部材に囲まれるように配置されている。回転棹5は、図1に示す通り、切断方向M及び調整方向Nに直交する方向(回転軸方向P)に延在する。被押圧部材4は、図1に示す通り、回転棹5の回転軸方向Pに沿って複数(図1では2つ)設けられる。
【0023】
回転駆動機構6は、回転駆動伝達部6bを介して、回転駆動源6aにて発生した回転駆動力をプーリ6cに伝達する。回転駆動機構6は、チェーン6dを介して、プーリ6cの回転駆動力を回転棹5に伝達する。回転棹5は、チェーン6dを介して得た回転駆動力に基づき、回転方向A(図2(a)参照)に向けて自ら回転すると共に周囲に有する押圧部材5aを回転させる。回転棹5は、押圧部材5aを回転させることで、被押圧部材4の一対の被押圧部4aのいずれか一方を押圧する。被押圧部4aは、押圧部材5aからの押圧力の方向(調整方向N)に向けて、下刃物ホルダ1(下刃物1a)と共に移動する。なお、回転駆動機構6は、回転駆動伝達部6bと、プーリ6cと、チェーン6dとを設けず、回転駆動源6aを回転棹5に接続し、回転駆動源6aにて発生した回転駆動力を回転棹5に直接伝達する構成としても良い。
【0024】
<被押圧部材及び押圧部材の構成>
次に、図3を参照して、本発明の一実施形態である被押圧部材4及び押圧部材5aの構成について説明する。図3は、被押圧部材4及び押圧部材5aの正面模式図を示す。図3に示す通り、被押圧部材4は、下刃物ホルダ1の表面に固定されている。回転棹5は、周囲に有する押圧部材5aと共に、フレーム形状の被押圧部材4の内側に延在する。
【0025】
回転棹5は、チェーン6d(図2(a)参照)を介して受けた回転駆動力に起因して、図3にて点線で示す通り、回転方向A1に向けて、断面形状が楕円である押圧部材5aを被押圧部材4に対して回転させる。そして、押圧部材5aの回転量が大きくなるに従い、押圧部材5aが一対の被押圧部4aのいずれか一方に当接し、この当接が被押圧部4aに対する押圧力となる。その後、被押圧部4aに付与される押圧力は、被押圧部4aを有する被押圧部材4における調整方向Nに向けた移動駆動力となる。被押圧部材4は、移動駆動力に起因して、下刃物ホルダ1と共に調整方向Nに向けて移動する。
【0026】
ここで、図4を参照して、押圧部材5aの回転に起因する被押圧部材4の移動について詳細に説明する。図4(a)及び図4(b)は、被押圧部材4に対して押圧部材5aがそれぞれ反対方向に回転した状態を示す。図4(a)及び図4(b)においては、図面向かって左側が被押圧部材4及び下刃物ホルダ1の移動が可能な第1方向であり、図面向かって右側が被押圧部材4及び下刃物ホルダ1の移動が可能な第2方向である。第1方向及び第2方向は、図1に示す調整方向Nに相当する。
【0027】
図4(a)は、回転方向A2に押圧部材5aが回転した状態を示す。図4(a)は、回転棹5を回転方向A2へ回転させることで、押圧部材5aも同方向へ回転させた状態を示す。ここで、図4(a)に示す一実施形態においては、回転棹5の回転中心Oを基準として、押圧部材5aの最外縁部Bまでの距離は、24.5mmである。そして、最外縁部Bと回転中心Oとを結んだ直線の延長線上に位置する押圧部材5aの他方の他縁部Cと回転中心Oとの距離は、24mmである。
【0028】
図4(b)は、回転方向A1に押圧部材5aが回転した状態を示す。図4(b)は、回転棹5を回転方向A1へ回転させることで、押圧部材5aも同方向へ回転させた状態を示す。図4(b)は、図4(a)に対して、最外縁部Bと他方の他縁部Cとが調整方向Nにおいて方向が逆転した状態を示す。具体的に、図4(b)に示す状態は、図4(a)に示す状態に対して、被押圧部材4を第2方向に0.5mm移動させた状態を示す。
【0029】
ここで、図4(a)に示す状態から、調整方向Nにおける第2方向に向けて、クリアランスを調整するためのクリアランス調整量を0.5mmとする場合について、以下に説明する。
【0030】
図4(a)に示す状態において、回転駆動機構6(図2(b)参照)における回転方向A1の回転角度を180°とする回転駆動力を、回転棹5を介して押圧部材5aに伝達することで、押圧部材5aを同方向へ180°回転させることができる。そして、押圧部材5aによって被押圧部材4を調整方向Nにおける第2方向に0.5mm移動させることができる。この結果、被押圧部材4が固定されている下刃物ホルダ1(図3参照)についても、調整方向Nにおける第2方向に0.5mm移動させることができる。よって、回転駆動機構6の回転角度に基づくクリアランス調整量により、被押圧部材4及び下刃物ホルダ1(下刃物1a)を調整方向Nに向けて移動させることができる。
【0031】
ここで、図4(a)及び図4(b)に示す通り、回転棹5及び押圧部材5aの断面形状について、予め、回転棹5の回転中心Oと、回転中心Oを基準とした最外縁部Bと、最外縁部Bと回転中心Oとを結んだ直線の延長線上に位置する押圧部材5aの他方の他縁部Cとを決めておく。そして、回転中心Oと最外縁部Bとの距離、及び、回転中心Oと他方の他縁部Cとの距離を設定すると共に、互いの距離の差分距離(本実施形態においては0.5mm)を最大クリアランス調整量として設定しておく。
【0032】
そして、切断装置10におけるクリアランス調整の際に、下刃物ホルダ1及び下刃物1aを調整方向Nに向けて、所望の距離分移動させることで、最大クリアランス調整量の範囲内でクリアランスの調整が可能となる。つまり、クリアランス調整の際に必要となる調整方向Nへの移動の距離を予め設定しておくことで、容易かつ高精度にクリアランスを調整できる。
【0033】
また、回転棹5を回転させた後、モーター等の回転駆動源6aにおけるブレーキ等の操作により、回転棹5の回転を固定することで、安定的に所望の位置に下刃物ホルダ1及び下刃物1aを固定できる。
【0034】
さらに、図4(b)に示す状態から図4(a)に示す状態にする際には、図4(b)に示す状態において、回転駆動機構6(図2(b)参照)における回転方向A2の回転角度を180°とする回転駆動力を、回転棹5を介して押圧部材5aに伝達することで、押圧部材5aを同方向へ180°回転させることができる。そして、押圧部材5aによって被押圧部材4及び下刃物ホルダ1を調整方向Nにおける第1方向に0.5mm移動させることが可能となる。よって、クリアランスを調整するため、調整方向Nにおける第1方向及び第2方向のいずれの方向であっても、下刃物ホルダ1及び下刃物1aを容易かつ高精度に移動させることができる。
【0035】
ここで、図4(a)及び図4(b)を用いて説明した調整方向Nへの移動は、回転駆動機構6における回転方向A1及び回転方向A2の回転角度を180°とするものの、回転角度を180°に限定するものではない。つまり、回転方向A1及び回転方向A2の回転角度を更に細かく設定し、回転駆動機構6による細かな回転角度ごとに、下刃物ホルダ1及び下刃物1aを調整方向Nにおいて容易かつ高精度に移動させることも可能である。
【0036】
<被押圧部材及び押圧部材の変形例>
次に、図5を参照して、被押圧部材4及び押圧部材5aの変形例について説明する。図5(a)は、先の実施形態における被押圧部材4の変形例として、一対の壁状突起とした構成の被押圧部材41の正面模式図を示す。図5(b)は、先の実施形態における被押圧部材4の変形例として、下刃物ホルダ1に形成された凹部とした構成の被押圧部材42の正面模式図を示す。また、図5(a)及び図5(b)は、先の実施形態における押圧部材5aの変形例として、回転棹5の表面において円形部材5bを設けると共に、円形部材5bの表面であって回転棹5の周囲に突起状の押圧部材5cを設けた構成を示す。
【0037】
図5(a)に示す通り、本発明に係る被押圧部材4は、一対の壁状突起とした構成の被押圧部材41であっても良い。この場合、押圧部材5aは、回転棹5の表面において、円形部材5bを介して一本の押圧部材5cとして設けた構成であっても良い。そして、図5(a)の回転方向A1に円形部材5b及び押圧部材5cを回転させることで、押圧部材5cが一対の壁状突起(被押圧部材41)の内側面である被押圧部41aのいずれか一方を押圧し、下刃物ホルダ1及び下刃物1aを調整方向Nに移動できる。
【0038】
また、図5(b)に示す通り、本発明に係る被押圧部材4は、下刃物ホルダ1に形成された凹部とした構成の被押圧部材42であっても良い。この場合、押圧部材5aは、回転棹5の表面において、円形部材5bを介して複数本(図5(b)では2本)の押圧部材5cとして設けた構成であっても良い。そして、図5(b)の回転方向A1に円形部材5b及び押圧部材5cを回転させることで、押圧部材5cの先端部が凹部(被押圧部材42)の内側面である被押圧部42aのいずれか一方を押圧し、下刃物ホルダ1及び下刃物1aを調整方向Nに移動できる。
【0039】
さらに、図5(a)及び図5(b)に示す実施形態においては、回転棹5の回転中心Oを基準として、押圧部材5cの先端部を最外縁部Bとしても良い。また、最外縁部Bと回転中心Oとを結んだ直線の延長線上に位置する円形部材5bの円周上の位置を他方の他縁部Cとしても良い。そして、回転中心Oと最外縁部Bとの距離、及び、回転中心Oと他方の他縁部Cとの距離を設定すると共に、互いの距離の差分距離を最大クリアランス調整量として設定しておいて良い。
【0040】
これにより、切断装置10におけるクリアランス調整の際に、下刃物ホルダ1及び下刃物1aを調整方向Nに向けて、所望の距離分移動させることで、最大クリアランス調整量の範囲内でクリアランスの調整が可能となる。つまり、クリアランス調整の際に必要となる調整方向Nへの移動の距離を予め設定しておくことで、容易かつ高精度にクリアランスを調整できる。加えて、回転棹5を回転させた後、回転棹5の回転を固定することで、安定的に所望の位置に下刃物ホルダ1及び下刃物1aを固定できる。
【0041】
<クリアランス調整方法>
本発明の一実施形態である切断装置10のクリアランス調整方法について説明する。切断装置10のクリアランス調整方法は、先ず、回転駆動機構6にて発生させた回転駆動力により、回転棹5を回転させるステップを有する。次に、回転棹5の回転により、回転棹5の周囲に設けられた押圧部材5a(5c)を一対の被押圧部4a(41a、42a)の一方へ押圧させるステップを有する。その後、押圧部材5a(5c)の押圧により、一対の被押圧部4a(41a、42a)と共に下刃物ホルダ1を調整方向Nに移動させるステップを有する。
【0042】
さらに、本発明においては、金属板の製造方法として、切断装置10のクリアランス調整方法により、切断装置10における一対の刃物(下刃物1a及び上刃物2a)のクリアランスを調整した後、切断対象材としての金属板を切断処理して金属板を製造しても良い。
【0043】
以上の実施形態にて述べた通り、本発明によれば、切断装置10における刃物同士(下刃物1a及び上刃物2a)の噛み合わせ時におけるクリアランスを容易かつ高精度に調整でき、かつ安定的に所望の位置に固定できる。さらに、回転駆動機構6の回転角度に基づくクリアランス調整量により下刃物ホルダ1の調整方向Nへの移動が可能となるため、遠隔操作による回転駆動機構6の操作により、クリアランスの調整が可能となる。このため、金属板を製造するための連続ラインに適用した際には、遠隔操作により、板厚に応じたクリアランスの調整をスムーズに実施できる。
【0044】
上記した実施形態は、図1~5において、下刃物1aを有する下刃物ホルダ1にクリアランス調整機構3を設け、下刃物ホルダ1(下刃物1a)を調整方向Nへ移動させて、クリアランスを調整する構成とするものの、本発明においては、当該構成に限定するものではない。つまり、上刃物2aを有する上刃物ホルダ2にクリアランス調整機構3を設け、上刃物ホルダ2(上刃物2a)を調整方向Nへ移動させて、クリアランスを調整する構成としても良い。
【0045】
また、上記した実施形態は、上刃物2aを有する上刃物ホルダ2を、下刃物1aを有する下刃物ホルダ1に向けて移動させることで、上刃物ホルダ2と下刃物ホルダ1との間に位置する切断対象材を切断する構成とするものの、本発明においては、当該構成に限定するものではない。つまり、下刃物ホルダ1(下刃物1a)を上刃物ホルダ2(上刃物2a)に向けて移動させて、上刃物ホルダ2と下刃物ホルダ1との間に位置する切断対象材を切断する構成としても良い。
【0046】
さらに、上記した実施形態は、上刃物2aを有する上刃物ホルダ2を切断方向Mに向けて移動可能とすると共に、下刃物1aを有する下刃物ホルダ1を調整方向Nに向けて移動可能とする構成とするものの、本発明においては、当該構成に限定するものではない。つまり、下刃物1aを有する下刃物ホルダ1を切断方向Mに向けて移動可能とすると共に、上刃物2aを有する上刃物ホルダ2を調整方向Nに向けて移動可能とする構成としても良い。
【0047】
そして、本発明に係る切断装置10のクリアランスの調整が可能である限り、本発明においては、下刃物1aを有する下刃物ホルダ1を切断方向M及び調整方向Nに移動可能とする構成としても良く、または、上刃物2aを有する上刃物ホルダ2を切断方向M及び調整方向Nに移動可能とする構成としても良い。
【0048】
また、上記した実施形態は、押圧部材5a(5c)によって一対の被押圧部4a(41a、42a)の一方を押圧することで、被押圧部4a(41a、42a)と共に下刃物ホルダ1を調整方向Nに移動させてクリアランスを調整する構成とするものの、本発明においては、当該構成に限定するものではない。つまり、回転駆動機構6の回転角度に基づくクリアランス調整量により、下刃物ホルダ1を調整方向Nに移動させてクリアランスを調整する構成であれば良い。この場合、例えば、回転棹5の回転運動を下刃物ホルダ1の調整方向Nへの直線運動に変換するギア機構等の公知の機構の適用も可能である。
【0049】
ここで、本発明に係る第1刃物は上記した実施形態における下刃物1a又は上刃物2aに相当し、本発明に係る第2刃物は上記した実施形態における下刃物1a又は上刃物2aに相当する。また、本発明に係る第1刃物ホルダは上記した実施形態における下刃物ホルダ1又は上刃物ホルダ2に相当し、本発明に係る第2刃物ホルダは上記した実施形態における下刃物ホルダ1又は上刃物ホルダ2に相当する。
【符号の説明】
【0050】
1 下刃物ホルダ
1a 下刃物
2 上刃物ホルダ
2a 上刃物
3 クリアランス調整機構
4、41、42 被押圧部材
4a 被押圧部
5 回転棹
5a、5c 押圧部材
5b 円形部材
6 回転駆動機構
6a 回転駆動源
6b 回転駆動伝達部
6c プーリ
6d チェーン
10 切断装置
A 回転方向
B 最外縁部
C 他縁部
M 切断方向
N 調整方向
O 回転中心
P 回転軸方向
図1
図2
図3
図4
図5