(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130875
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】旅客搭乗橋
(51)【国際特許分類】
B64F 1/305 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
B64F1/305
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035433
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國武 隆
(57)【要約】
【課題】 自動制御によりキャブを航空機に装着した際に、オペレータがキースイッチをオートレベル状態につつがなく切り替えることができる旅客搭乗橋を提供する。
【解決手段】 本発明の旅客搭乗橋の一例は、昇降装置と走行装置とキャブ回転装置と操作装置30とキースイッチ36と報知部と制御装置50とを備え、制御装置50は、操作装置30の操作に基づく昇降装置、走行装置およびキャブ回転装置の動作を可能にする操作モードと、キャブが航空機の上下動に追従移動するように昇降装置を制御するオートレベルモードとを有し、キースイッチ36が操作状態のときに操作モードとなり、オートレベル状態のときにオートレベルモードとなり、操作モードのときに自動制御を開始した場合に、キャブを航空機に装着した後、オートレベルモードに変更し、報知部にキースイッチ36の状態をオートレベル状態に変更することを促す旨をオペレータへ報知させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターミナルビルに接続されたロタンダと、
基端が前記ロタンダに接続され、長手方向に伸縮自在に構成されたトンネル部と、
前記トンネル部の先端に設けられ、先端部が航空機に装着されるキャブと、
前記トンネル部または前記キャブに取り付けられ、前記トンネル部または前記キャブを昇降させる昇降装置と、
前記昇降装置の下方に取り付けられて地面を走行する走行装置と、
前記キャブの先端部の向きを変更するキャブ回転装置と、
前記キャブの内部に設置された操作盤に設けられ、オペレータが操作を行う操作装置と、
前記操作盤に設けられ、オフ状態と操作状態とオートレベル状態とがキー孔に差し込まれた操作キーによって切り替えられるキースイッチと、
前記キャブの内部に設置された報知部と、
前記昇降装置、前記走行装置及び前記キャブ回転装置の動作を制御するとともに、前記キースイッチの状態を示す信号を入力する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
オペレータによる前記操作装置の操作に基づく前記昇降装置、前記走行装置および前記キャブ回転装置の動作を可能にする操作モードと、前記航空機に装着された前記キャブが前記航空機の上下動に追従移動するように前記昇降装置の動作を制御するオートレベルモードと、からなる2つの制御モードを有し、
前記キースイッチが前記オフ状態のときに制御停止状態であり、
前記キースイッチが前記操作状態のときに前記操作モードとなり、
前記キースイッチが前記オートレベル状態のときに前記オートレベルモードとなり、
前記キースイッチが前記操作状態にされて前記操作モードのときに、オペレータによる前記操作装置の操作に基づいて前記キャブを前記航空機に装着する自動制御を開始した場合に、前記昇降装置、前記走行装置および前記キャブ回転装置を動作させて前記キャブを前記航空機に装着した後、前記オートレベルモードに変更し、前記報知部に前記キースイッチの状態を前記オートレベル状態に変更することを促す旨をオペレータへ報知させるよう構成された、
旅客搭乗橋。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記キースイッチが前記操作状態のときに前記自動制御を開始して前記キャブを前記航空機に装着した後、前記オートレベルモードに変更した場合には、前記キースイッチが前記操作状態から前記オートレベル状態に一旦変化した後、前記操作状態に変化した場合に前記オートレベルモードから前記操作モードに変更するよう構成された、
請求項1に記載の旅客搭乗橋。
【請求項3】
前記キースイッチは、
前記オフ状態および前記オートレベル状態のときに前記操作キーを前記キー孔に抜き差し可能に構成されるとともに、前記操作状態のときに前記操作キーを前記キー孔から抜き取ることができないよう構成された、
請求項1または2に記載の旅客搭乗橋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客搭乗橋に関する。
【背景技術】
【0002】
旅客搭乗橋は、ターミナルビルに接続されたロタンダと、航空機に装着されるキャブと、ロタンダとキャブとを接続し歩行通路となるトンネル部と、トンネル部を昇降させる昇降装置等を備えている。キャブには、オペレータが旅客搭乗橋を操作するための操作盤が備えられ、操作盤にはキースイッチが設けられている。
【0003】
特許文献1には、上述のような旅客搭乗橋において、キャブを航空機に装着完了後に、キースイッチを用いてオートレベルモードにすると、乗客などの乗降により航空機が上下動した場合に、キャブが航空機の上下動に追従移動するように昇降装置を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなキースイッチには、例えば、「OFF」、「操作」及び「オートレベル」の3つの状態があり、オペレータが操作キーをキースイッチのキー孔に差し込んで回すことによりキースイッチの状態を変更することができる。キースイッチがOFF状態では旅客搭乗橋の操作を行うことができず、キースイッチを操作状態にすることにより操作盤の操作装置を用いて旅客搭乗橋の操作が可能となる。また、キースイッチをオートレベル状態にすると、前述のオートレベルモードとなる。このオートレベルモードでは、上記操作装置を用いたオペレータによる旅客搭乗橋の操作を行うことができないようになっている。また、キースイッチは、OFF状態とオートレベル状態のときに操作キーをキー孔に抜き差しすることができ、操作状態のときには操作キーを抜くことができない構造になっている。
【0006】
旅客搭乗橋を手動制御によって航空機に装着する場合には、オペレータが操作キーを用いてキースイッチを操作状態にして、オペレータの操作によってキャブを航空機に装着した後に、オペレータが操作キーを回してキースイッチをオートレベル状態にして操作キーをキー孔から抜き取る。キースイッチをオートレベル状態にすることで、オートレベルモードになる。この後、旅客搭乗橋を航空機から離脱させる場合には、操作キーをキー孔に差し込んで回してキースイッチをオートレベル状態から操作状態にすることで、オートレベルモードが終了し、オペレータが旅客搭乗橋の操作を行うことができる。
【0007】
一方、旅客搭乗橋を自動制御により航空機に装着する場合においては、キャブが航空機に装着され、オートレベルモードになるまでを自動で行われることが望ましい。この場合、オペレータは、キースイッチを操作状態にして自動装着開始ボタンを押すことにより自動制御が開始され、キャブが待機位置から移動して航空機に装着された後、自動でオートレベルモードになる。この場合、キースイッチは操作状態のままであり、キースイッチの状態(操作状態)と制御モード(オートレベルモード)とが対応していない状態となる。ここで、オペレータが操作キーを回してキースイッチをオートレベル状態に切り替えて操作キーを抜き取ればよいが、自動でオートレベルモードになるので、オペレータがキースイッチをオートレベル状態に切り替えるのを忘れる可能性が高くなる。
【0008】
ここで、オートレベル状態に切り替えるのを忘れると、旅客搭乗橋を航空機から離脱させる場合には、オペレータが操作キーを回してキースイッチを操作状態から一旦オートレベル状態にした後、操作状態に戻さなければならない。離脱時と装着時のオペレータが異なる場合には、離脱時のオペレータが困惑するおそれがある。また、オートレベル状態に切り替えるのを忘れると、操作キーがキースイッチのキー孔に差し込まれた状態のまま放置されることになり、乗客のいたずら等によって操作キーが回されてOFF状態になると、オートレベルモードが停止され、不都合が生じる。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、自動制御によりキャブを航空機に装着した際に、オペレータがキースイッチをオートレベル状態につつがなく切り替えることができる旅客搭乗橋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る旅客搭乗橋は、ターミナルビルに接続されたロタンダと、基端が前記ロタンダに接続され、長手方向に伸縮自在に構成されたトンネル部と、前記トンネル部の先端に設けられ、先端部が航空機に装着されるキャブと、前記トンネル部または前記キャブに取り付けられ、前記トンネル部または前記キャブを昇降させる昇降装置と、前記昇降装置の下方に取り付けられて地面を走行する走行装置と、前記キャブの先端部の向きを変更するキャブ回転装置と、前記キャブの内部に設置された操作盤に設けられ、オペレータが操作を行う操作装置と、前記操作盤に設けられ、オフ状態と操作状態とオートレベル状態とがキー孔に差し込まれた操作キーによって切り替えられるキースイッチと、前記キャブの内部に設置された報知部と、前記昇降装置、前記走行装置及び前記キャブ回転装置の動作を制御するとともに、前記キースイッチの状態を示す信号を入力する制御装置と、を備え、前記制御装置は、オペレータによる前記操作装置の操作に基づく前記昇降装置、前記走行装置および前記キャブ回転装置の動作を可能にする操作モードと、前記航空機に装着された前記キャブが前記航空機の上下動に追従移動するように前記昇降装置の動作を制御するオートレベルモードと、からなる2つの制御モードを有し、前記キースイッチが前記オフ状態のときに制御停止状態であり、前記キースイッチが前記操作状態のときに前記操作モードとなり、前記キースイッチが前記オートレベル状態のときに前記オートレベルモードとなり、前記キースイッチが前記操作状態にされて前記操作モードのときに、オペレータによる前記操作装置の操作に基づいて前記キャブを前記航空機に装着する自動制御を開始した場合に、前記昇降装置、前記走行装置および前記キャブ回転装置を動作させて前記キャブを前記航空機に装着した後、前記オートレベルモードに変更し、前記報知部に前記キースイッチの状態を前記オートレベル状態に変更することを促す旨をオペレータへ報知させるよう構成されている。
【0011】
この構成によれば、自動制御によってキャブを航空機に装着した際には、キースイッチの状態が操作状態のままオートレベルモードに切り替えられるが、キースイッチをオートレベル状態に変更することを促す旨が報知されるので、オペレータはキースイッチをオートレベル状態につつがなく切り替えることができる。よって、航空機からの離脱時において、キースイッチが操作状態であることによるオペレータの困惑を無くすことができる。また、オートレベル状態に切り替えるのを忘れて操作キーがキー孔に差し込まれた状態のまま放置されたときの乗客のいたずらを防止できる。
【0012】
前記制御装置は、前記キースイッチが前記操作状態のときに前記自動制御を開始して前記キャブを前記航空機に装着した後、前記オートレベルモードに変更した場合には、前記キースイッチが前記操作状態から前記オートレベル状態に一旦変化した後、前記操作状態に変化した場合に前記オートレベルモードから前記操作モードに変更するよう構成されていてもよい。
【0013】
前記キースイッチは、前記オフ状態および前記オートレベル状態のときに前記操作キーを前記キー孔に抜き差し可能に構成されるとともに、前記操作状態のときに前記操作キーを前記キー孔から抜き取ることができないよう構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上に説明した構成を有し、自動制御によりキャブを航空機に装着した際に、オペレータがキースイッチをオートレベル状態につつがなく切り替えることができる旅客搭乗橋を提供することができるという効果を奏する。
【0015】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る旅客搭乗橋の一例を示す概略平面図である。
【
図2】
図2は、旅客搭乗橋を側方から視た概略図である。
【
図3】
図3は、キャブを航空機に装着した状態の一例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、航空機に装着されるキャブ先端部分を航空機側から視た図である。
【
図6】
図6は、手動制御によって旅客搭乗橋を航空機に装着する場合のオペレータの操作フローの概略を示す図である。
【
図7】
図7は、自動制御によって旅客搭乗橋を航空機に装着する場合の制御装置の制御フローの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0018】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る旅客搭乗橋の一例を示す概略平面図である。また、
図2は、旅客搭乗橋を側方から視た概略図である。
図3は、キャブを航空機に装着した状態の一例を示す側面図である。
図4は、航空機に装着されるキャブ先端部分を正面(航空機側)から視た図である。
図5は、操作盤等の一例を示す図である。
【0019】
この旅客搭乗橋1は、空港のターミナルビル2の乗降口に接続された水平回転自在なロタンダ(基部円形室)4と、基端がロタンダ4に接続されて長手方向に伸縮自在に構成されたトンネル部5と、トンネル部5の先端に正逆回転自在に設けられたキャブ(先端部円形室)6と、ドライブコラム7とを備えている。
【0020】
ロタンダ4は、支柱70によって回転軸(鉛直軸線)CL1の回りに正逆回転自在に支持されている。
【0021】
トンネル部5は、乗客の歩行通路を形成し、筒状体からなる複数のトンネル5a,5bが入れ子式に嵌合されて長手方向に伸縮自在に構成されている。なお、ここでは、2つのトンネル5a,5bによって構成されたトンネル部5が例示されているが、トンネル部5は2つ以上の複数のトンネルによって構成されていればよい。また、トンネル部5の基端が、ロタンダ4内の水平回転軸CL4(
図2)の回りに揺動自在に接続されることにより、トンネル部5はロタンダ4に俯仰自在に接続されている。
【0022】
また、トンネル部5の先端寄り部分(最も先端側のトンネル5b)には、支持脚としてドライブコラム7が取り付けられている。なお、ドライブコラム7は、キャブ6に取り付けられていてもよい。
【0023】
ドライブコラム7には、キャブ6及びトンネル部5を昇降させる昇降装置8が設けられている。昇降装置8は、例えば、トンネル部5を支持し、伸縮可能に構成された一対の支柱部を有し、この一対の支柱部の伸縮によってトンネル部5を昇降させることができる。これにより、キャブ6及びトンネル部5は、ロタンダ4を基点として上下方向に揺動運動することができる。
【0024】
また、ドライブコラム7には、昇降装置8の下方に、個々に独立して正逆回転駆動可能である2つの走行車輪9(右側走行車輪9R及び左側走行車輪9L)を有する走行装置10が設けられている。走行装置10は、2つの走行車輪9の回転駆動によって前進走行(矢印F方向への走行)および後進走行(矢印B方向への走行)が可能に構成されている。また、走行装置10は、回転軸CL2の回りに正逆回転自在に構成され、走行方向を変更可能である。走行装置10(走行車輪9)がエプロンEP上を走行することにより、トンネル部5をロタンダ4の回転軸CL1を中心にして回転させるとともにトンネル部5を伸縮させることができる。
【0025】
キャブ6は、トンネル部5の先端に設けられており、キャブ回転装置6R(
図5)によってキャブ6の床面に垂直な回転軸CL3の回りに正逆回転可能に構成されている。
【0026】
また、
図3、
図4に示すように、航空機3に装着されるキャブ6の床61の先端にはバンパー62が設けられ、このバンパー62の左右方向に並んで、キャブ6と航空機3との間の距離を計測するための距離センサ23(例えばレーザー距離計)が複数(この例では2つ)取り付けられている。なお、距離センサ23の設置位置は、適宜変更可能であり、例えば、キャブ6の床61の上に配置されていてもよい。
【0027】
また、
図4に示すように、キャブ6の先端部分の奥まった位置に航空機3の乗降部(ドア)3aを撮影するための第1,第2カメラ21,22が設置されている。これらの第1,第2カメラ21,22は、互いに離れて配置されて航空機3の乗降部3aを撮影できれば、設置位置は適宜変更してもよい。
【0028】
また、キャブ6の先端部分には、クロージャ63が設けられている。クロージャ63は、前後方向に展開及び収縮可能な蛇腹部を備え、キャブ6を航空機3に装着して、蛇腹部を前方へ展開することにより、蛇腹部の前端部を航空機3の乗降部(ドア)3aの周囲に当接できる。
【0029】
また、キャブ6の外側の側壁にレベル検出装置64が取り付けられている。レベル検出装置64は、キャブ6を航空機3に装着した後、乗客の乗降や荷物の積み下ろし等によって航空機3が上下動した場合に、キャブ6に対する航空機3の相対的な上下の移動量を検出する機器である。
【0030】
このレベル検出装置64は、前進可能なホイル64Aと、ホイル64Aが前進する際に最適な位置で停止させるための接触リミットスイッチ(図示せず)等を有する。この接触リミットスイッチは、航空機3の機体表面へのホイル64Aの圧力が最適となるように予め調整されていて、ホイル64Aが前進移動する場合に、接触リミットスイッチがオンすることで、この前進移動を所望の移動量で停止できる。これにより、レベル検出装置64は、航空機3の機体表面にホイル64Aを最適な圧力で押すことが可能となる。
【0031】
レベル検出装置64を作動させると、ホイル64Aが前進し、接触リミットスイッチがオンすることでホイル64Aの前進が停止し、ホイル64Aが航空機3の機体表面へ最適な圧力で当接する。そして航空機3が上下動するとホイル64Aが回転する。レベル検出装置64は、ホイル64Aの回転方向及び回転角度に基づいて、航空機3の上下の移動量を検出し、この移動量が所定量以上になると、この移動量を制御装置50へ出力する。制御装置50は、上記移動量に基づき、キャブ6が航空機3の上下動に追従移動するようにドライブコラム7の昇降装置8を制御する。なお。レベル検出装置64は、キャブ6に対する航空機3の相対的な上下の移動量を検出することができればよく、上記構成に限られるものではない。
【0032】
さらに、
図5に示すように、旅客搭乗橋1には、ロタンダ4の回転角度φr(
図1)を検出するロタンダ用角度センサ24と、トンネル部5の中心線Edに対するキャブ6の回転角度φc(
図1)を検出するキャブ用角度センサ25と、平面視においてトンネル部5の中心線Edに対する走行装置10の回転角度(走行方向を示す角度)φw(
図1)を検出する走行用角度センサ26と、昇降装置8の昇降量を検出する昇降センサ27と、距離計等で構成されトンネル部5の長さ(例えば
図2の長さLF)を検出するトンネル長さセンサ28とが、適宜な位置に設けられている。
【0033】
なお、
図2では、トンネル部5が傾斜した状態で、キャブ6の先端部6aがトンネル部5の伸長方向と同方向を向いた状態(キャブ6の回転角度φc=0の場合)が示されている。
図2に示すように、トンネル部5の伸縮方向と昇降装置8の伸縮方向(昇降方向)とが直交するように、トンネル部5に昇降装置8が取り付けられている。
【0034】
そして、キャブ6の内部には、
図5に示すような操作盤31が設けられている。操作盤31には、昇降装置8によるトンネル部5及びキャブ6の昇降や、キャブ回転装置6Rによるキャブ6の回転等を操作するための各種操作スイッチ33の他、走行装置10を操作するための操作レバー32及び表示装置34等が設けられている。操作レバー32は、多方向の自由度をもったレバー状入力装置(ジョイスティック)によって構成されている。操作レバー32及び各種操作スイッチ33によって操作装置30が構成されている。なお、操作装置30の構成は、適宜変更可能である。また、操作盤31には、オペレータに所定の情報を報知するためのスピーカ等の音声出力部35が設けられている。
【0035】
また、操作盤31には、キースイッチ36が設けられている。オペレータが操作キー37をキースイッチ36のキー孔36aに差し込んで回すことにより、キースイッチ36の状態を、OFF(オフ)状態、第1のオン状態である操作状態、第2のオン状態であるオートレベル状態のいずれかの状態に設定することができる。このキースイッチ36は、OFF状態およびオートレベル状態のときに操作キー37をキー孔36aに抜き差し可能に構成されるとともに、操作状態のときには操作キー37をキー孔36aから抜き取ることができないよう構成されている。
【0036】
また、制御装置50は、操作盤31と相互に電気回路で接続され、操作装置30の操作に基づく動作指令等の情報が入力されるとともに、各センサ23~28の出力信号等が入力されて、旅客搭乗橋1の動作を制御するとともに、表示装置34に表示される情報や音声出力部35に出力させる情報等を出力する。また、制御装置50には、キースイッチ36の状態を示す信号が入力される。
【0037】
なお、制御装置50には、CPU等の演算処理部と、ROM、RAM等の記憶部とを有している。記憶部には、旅客搭乗橋1を動作させるための制御プログラム及び当該動作に必要な情報が予め記憶されており、演算処理部が制御プログラムを実行することにより、制御装置50は、キャブ回転装置6R、昇降装置8、走行装置10、クロージャ63及びレベル検出装置64等の動作の制御を行う。制御装置50は、集中制御する単独の制御装置によって構成されていてもよいし、通信手段を介して互いに協働して分散制御する複数の制御装置によって構成されていてもよい。制御装置50は、例えば、キャブ6または最も先端側のトンネル5b等に設けられている。
【0038】
また、制御装置50は、例えば、ロタンダ4の回転軸CL1とエプロンEPの平面との交点を原点とする3次元直交座標系(XYZ直交座標系)を用いて、リアルタイムで旅客搭乗橋1の所定部位の位置(位置座標)、例えば、キャブ6の先端部6aの所定位置、走行装置10の中心位置などの位置(位置座標)を算出し、表示装置34に表示させることができる。ここで、制御装置50は、旅客搭乗橋1の所定部位の現在の位置を、ロタンダ用角度センサ24、キャブ用角度センサ25、トンネル長さセンサ28及び昇降センサ27の検出値等に基づいて算出するよう構成されている。
【0039】
また、制御装置50は、第1の制御モードである操作モードと、第2の制御モードであるオートレベルモードとからなる2つの制御モードを有する。操作モードは、オペレータによる操作装置30の操作に基づくキャブ回転装置6R,昇降装置8、走行装置10およびクロージャ63の動作を可能にするモードである。オートレベルモードは、レベル検出装置64を作動させて、航空機3に装着されたキャブ6が航空機3の上下動に追従移動するように昇降装置8の動作を制御するモードである。制御装置50は、基本的には、キースイッチ36が操作状態のときに操作モードとなり、キースイッチ36がオートレベル状態のときにオートレベルモードとなる。また、制御装置50は、キースイッチ36がOFF状態のときには制御停止状態であり、このときには操作装置30を用いたキャブ回転装置6R,昇降装置8、走行装置10およびクロージャ63の操作をすることができない。
【0040】
なお、本例の旅客搭乗橋1では、ロタンダ4がトンネル部5とともに回転するように構成されているが、ロタンダ4が固定された状態で、トンネル部5が回転軸CL1を中心としてロタンダ4のまわりに回転するよう構成されてあってもよい。また、本例の旅客搭乗橋1では、トンネル部5に対してキャブ6全体が回転するよう構成されているが、航空機3に装着されるクロージャ63及びキャブ6の先端部6aを含む先端部分のみが回転軸CL3を中心として回転するよう構成されてあってもよい。この場合、キャブ回転装置6Rは、クロージャ63及びキャブ6の先端部6aを含む先端部分のみを回転させるように構成される。いずれの場合も、キャブ回転装置6Rは、航空機3に装着されるキャブ6の先端部6aを回転させて先端部6aの向きを変更することができる。
【0041】
次に、旅客搭乗橋1の動作の一例について説明する。この旅客搭乗橋1の動作は、制御装置50の制御によって実現される。
【0042】
航空機3がエプロンに到着していないときには、旅客搭乗橋1は
図1の二点鎖線で示される所定の待機位置で待機している。航空機3は、航空機3の機軸がエプロン上に描かれた機体誘導ラインAL上で、かつ、機体誘導ラインALの延伸方向において定められた所定の停止位置を目標にして停止される。
【0043】
この後のキャブ6の移動の概略について説明すると、キャブ6が待機位置から装着位置へ移動することによりキャブ6の先端部6aが航空機3の乗降部3aに装着される。このキャブ6が航空機3に装着された状態には、キャブ6の先端部6aのバンパー62が航空機3に接触した状態の場合もあるし、バンパー62と航空機3との間に歩行に支障がない程度の若干の隙間が設けられた状態の場合もある。
【0044】
この後、キャブ6が航空機3から離脱するときには待機位置に戻って停止し、次の航空機の乗降部への装着動作が開始されるまで、待機位置で待機している。なお、キャブ6が航空機3から離脱して待機位置へ戻る際に、キャブ6が待機位置となる走行装置10の目標とする位置(位置座標)は、予め制御装置50に記憶されている。
【0045】
〔手動制御〕
まず、手動制御によって旅客搭乗橋1を航空機3に装着する場合について説明する。手動制御の場合、オペレータが操作装置30を操作することにより、走行装置10の走行動作、昇降装置8の昇降動作、及びキャブ回転装置6Rの回転動作を行うことができる。
図6は、手動制御によって旅客搭乗橋1を航空機3に装着する場合のオペレータの操作フローの概略を示す図である。
【0046】
オペレータは、
図1に二点鎖線で示された待機位置で待機している旅客搭乗橋1のキャブ6に乗り込んで、操作キー37をキースイッチ36のキー孔36aに差し込んで回し、キースイッチ36の状態をOFF状態から操作状態に切り替える(ステップS1)。ここで、制御装置50は、キースイッチ36の状態を示す信号を入力しており、キースイッチ36の状態が操作状態になると、操作モードになる。操作モードになると、制御装置50は操作装置30からの操作信号を受け付ける。
【0047】
続いて、オペレータは、操作装置30を操作して、旅客搭乗橋1を
図1に実線で示された位置まで移動させてキャブ6の先端部6aを航空機3の乗降部3aに装着する(ステップS2)。すなわち、オペレータは、操作装置30によりキャブ回転装置6R、昇降装置8及び走行装置10を操作する。ここで、オペレータは、旅客搭乗橋1を
図1に実線で示された位置の手前まで移動させるために、操作装置30を操作して装着対象の航空機3の機種情報を入力し、プリセットボタンを押すようにしてもよい。この場合、制御装置50は、入力された機種情報に応じて予め定められた走行装置10の目標とする位置(キャブ装着時の手前の位置)となるように走行装置10を走行動作させる。また、制御装置50は、入力された機種情報に応じて予め定められたキャブ装着時の所定の昇降量となるように昇降装置8を昇降動作させる。さらに、制御装置50は、入力された機種情報に応じて予め定められたキャブ装着時の所定の回転角度となるようにキャブ回転装置6Rを回転動作させるようにしてもよい。
【0048】
そして、キャブ6を航空機3に装着した後、オペレータは、操作装置30を操作して、クロージャ63を伸長動作させて蛇腹部を展開させる(ステップS3)。
【0049】
続いて、オペレータは、操作キー37を右に回してキースイッチ36の状態を操作状態からオートレベル状態に切り替えて操作キー37を抜き取る(ステップS4)。ここで、キースイッチ36の状態がオートレベル状態になると、制御装置50はオートレベルモードを開始し、レベル検出装置64を作動させる。すると、レベル検出装置64は、ホイル64Aを前進させて航空機3の機体表面へ当接し、航空機3の上下の移動量の検出を開始する。制御装置50は、レベル検出装置64から入力される航空機3の上下の移動量に基づいて、キャブ6が航空機3の上下動に追従移動するように昇降装置8を制御する。
【0050】
この後、航空機3の乗降部3aのドアが開けられて乗降客の乗降が終了し、旅客搭乗橋1を待機位置へ戻す場合には、オペレータは、まず、操作キー37をオートレベル状態のキースイッチ36のキー孔36aに差し込んで、左に回してキースイッチ36を操作状態に切り替える。制御装置50は、キースイッチ36の状態がオートレベル状態から操作状態に切り替わると、レベル検出装置64の動作を終了させる。これにより、レベル検出装置64は、ホイル64Aを所定の位置まで後退させる。
【0051】
続いて、オペレータは、操作装置30を操作して、クロージャ63を収縮させてから、走行装置10を後進走行させてキャブ6を待機位置へ戻す。ここで、オペレータは、操作装置30に備えられた自動離脱開始ボタンを押すことにより、自動制御によってクロージャ63を収縮させてからキャブ6を待機位置へ戻すようにしてもよい。
【0052】
〔自動制御〕
次に、自動制御によって旅客搭乗橋1を航空機3に装着する場合について説明する。
図7は、自動制御によって旅客搭乗橋1を航空機3に装着する場合の制御装置50の制御フローの概略を示す図である。
【0053】
オペレータは、待機位置で待機している旅客搭乗橋1のキャブ6に乗り込んで、操作キー37をキースイッチ36のキー孔36aに差し込んで回し、キースイッチ36の状態をOFF状態から操作状態に切り替える。制御装置50は、キースイッチ36の状態を示す信号を入力しており、キースイッチ36の状態が操作状態になると(ステップS21でYes)、操作モードを開始する(ステップS22)。操作モードになると、制御装置50は操作装置30からの操作信号を受け付ける。
【0054】
次に、オペレータが操作装置30に備えられた自動装着開始ボタンを押すと、その操作信号が制御装置50に入力され、制御装置50は自動装着を開始する(ステップS23でYes)。
【0055】
制御装置50は、自動装着を開始してキャブ6を航空機3に装着する(ステップS24)。ここで、自動装着、すなわち自動制御によってキャブ6を待機位置から移動させて、キャブ6の先端部6aを航空機3の乗降部3aに装着する場合、例えば、制御装置50は、キャブ6に設置されたカメラ21,22で航空機3の乗降部3aを撮影し、これらの撮影画像等から乗降部3aの3次元位置を把握し、キャブ6の先端部6aが乗降部3aに装着される位置(装着位置)を算出する。そして、制御装置50は、走行装置10,昇降装置8及びキャブ回転装置6Rを制御して、上記の装着位置へキャブ6の先端部6aを移動させることにより、キャブ6を航空機3の乗降部3aに装着する。なお、装着位置の算出はキャブ6の移動開始前および移動途中において複数回行うようにしてもよい。また、さらに距離センサ23の検出値を用いて乗降部3aの位置を算出するようにしてもよい。
【0056】
次に、制御装置50は、クロージャ63を伸長動作させて蛇腹部を展開させる(ステップS25)。続いて、制御装置50は、操作モードを終了してオートレベルモードを開始し(ステップS26)、キースイッチ36をオートレベル状態に変更することを促す旨をオペレータへ報知する(ステップS27)。この報知は、表示装置34の表示によって報知させるようにしてもよいし、音声出力部35の音声出力によって報知させるようにしてもよい。ここで、キースイッチ36をオートレベル状態に変更して操作キー37を抜き取るようにすることを報知させるようにしてもよい。ここで、報知部として、操作盤31に設けられた表示装置34や音声出力部35を用いるようにしたが、キャブ6の内部に設置されていれば操作盤31とは別個に設けられていてもよい。
【0057】
オペレータは、上記報知に基づいて、操作キー37を右に回してキースイッチ36の状態を操作状態からオートレベル状態に変更して操作キー37を抜き取る。これにより、キースイッチ36の状態と、制御装置50の制御モードであるオートレベルモードとが対応した状態になる。
【0058】
旅客搭乗橋1を待機位置へ戻す場合には、手動制御の場合同様、オペレータは、まず、操作キー37をオートレベル状態のキースイッチ36のキー孔36aに差し込んで、左に回してキースイッチ36を操作状態に切り替えると、操作キー37の状態がオートレベル状態から操作状態に切り替わるので、制御装置50は、レベル検出装置64の動作を終了させる。
【0059】
続いて、オペレータは、操作装置30に備えられた自動離脱開始ボタンを押すことにより、制御装置50は、クロージャ63を収縮させてからキャブ6を待機位置へ戻す。
【0060】
本実施形態では、自動制御によってキャブ6を航空機3の乗降部3aに装着した際には、キースイッチ36の状態が操作状態のままオートレベルモードに切り替えられるが、キースイッチ36をオートレベル状態に変更することを促す旨が報知されるので、オペレータはキースイッチ36をオートレベル状態につつがなく切り替えることができる。よって、航空機3からの離脱時において、キースイッチ36が操作状態であることによるオペレータの困惑を無くすことができる。また、オートレベル状態に切り替えるのを忘れて操作キー37がキー孔36aに差し込まれた状態のまま放置されたときの乗客のいたずらを防止できる。
【0061】
なお、旅客搭乗橋1が航空機3に対して自動制御による装着および離脱を可能に構成されていても、装着および離脱の際に異常が発生した際や、旅客搭乗橋1のメンテナンス等を行う際には、手動制御によって旅客搭乗橋1を動作させる場合がある。
【0062】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、自動制御によりキャブを航空機に装着した際に、オペレータがキースイッチをオートレベル状態につつがなく切り替えることができる旅客搭乗橋等として有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 旅客搭乗橋
3 航空機
3a 航空機の乗降部
4 ロタンダ
5 トンネル部
6 キャブ
6R キャブ回転装置
8 昇降装置
10 走行装置
30 操作装置
31 操作盤
34 表示部
35 音声出力部
36 キースイッチ
37 操作キー
50 制御装置