(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130882
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】非直交多元接続のための無線装置
(51)【国際特許分類】
H04J 99/00 20090101AFI20230913BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04L27/26 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035441
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利則
(57)【要約】
【課題】NOMAを行う無線装置が送信する無線信号のPAPRを低減させる
【解決手段】第1キャリアから第Nキャリア(Nは2以上の整数)を含む無線信号を送信する無線装置は、第1無線デバイスに送信するデータに対応するシンボルを示す1番目からN番目のN個の第1複素値を生成する第1生成手段と、第2無線デバイスに送信するデータに対応するシンボルを示す1番目からN番目のN個の第2複素値を生成する第2生成手段と、前記N個の第2複素値をフーリエ変換することで1番目からN番目のN個の第3複素値を生成する生成手段と、K番目の第1複素値(Kは1からNまでの整数)とK番目の第3複素値を加算して1番目からN番目のN個の第4複素値を出力する出力手段と、前記N個の第4複素値を逆フーリエ変換する変換手段と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1キャリアから第Nキャリア(Nは2以上の整数)を含む無線信号を送信する無線装置であって、
第1無線デバイスに送信するデータに対応するシンボルを示す1番目からN番目のN個の第1複素値を生成する第1生成手段と、
第2無線デバイスに送信するデータに対応するシンボルを示す1番目からN番目のN個の第2複素値を生成する第2生成手段と、
前記N個の第2複素値をフーリエ変換することで1番目からN番目のN個の第3複素値を生成する生成手段と、
K番目の第1複素値(Kは1からNまでの整数)とK番目の第3複素値を加算して1番目からN番目のN個の第4複素値を出力する出力手段と、
前記N個の第4複素値を逆フーリエ変換する変換手段と、
を備えている、無線装置。
【請求項2】
前記N個の第1複素値それぞれに第1係数を乗ずる第1乗算手段と、
前記N個の第2複素値それぞれに第2係数を乗ずる第2乗算手段と、
をさらに備え、
前記第2係数は前記第1係数より大きい、請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記N個の第1複素値それぞれに第1係数を乗ずる第1乗算手段と、
前記N個の第3複素値それぞれに第2係数を乗ずる第2乗算手段と、
をさらに備え、
前記第2係数は前記第1係数より大きい、請求項1に記載の無線装置。
【請求項4】
第1無線デバイスに送信する複数のキャリアを含む第1無線信号と、第2無線デバイスに送信する前記複数のキャリアを含む第2無線信号とを加算した無線信号を送信する無線装置であって、
前記複数のキャリアを含む第2無線信号は、離散フーリエ変換拡散信号である、無線装置。
【請求項5】
前記第2無線信号のパワーは、前記第1無線信号のパワーより高い、請求項4に記載の無線装置。
【請求項6】
前記無線装置と前記第2無線デバイスとの距離は、前記無線装置と前記第1無線デバイスとの距離より大きい、請求項1から5のいずれか1項に記載の無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非直交多元接続(NOMA)技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非直交多元接続(NOMA)は、異なる無線デバイス(WD)への無線信号を同じ無線リソースに多重する方式である。異なる無線デバイス(WD)への無線信号は、例えば、電力軸方向で多重される。
図1は、2つのWD宛の無線信号を電力軸方向で多重する基地局装置の機能ブロック図である。なお、2つのWDの内の基地局装置との距離が近い方のWDを近距離WDと表記し、基地局装置との距離が遠い方のWDを遠距離WDと表記する。
【0003】
また、基地局装置は、マルチキャリアの無線信号を送信するものとし、2つのWDへの無線信号は、N個(Nは2以上の整数)のサブキャリア#1~サブキャリア#Nを含むものとする。変調器11は、近距離WDに送信するデータ値に基づき、近距離WDとの間で使用する変調方式のシンボルを示すN個の複素値#1-1~#1-Nを出力する。なお、複素値#1-K(Kは1からNまでの整数)は、サブキャリア#Kに対応する。変調器21は、遠距離WDに送信するデータ値に基づき、遠距離WDとの間で使用する変調方式のシンボルを示すN個の複素値#2-1~#2-Nを出力する。なお、複素値#2-K(Kは1からNまでの整数)は、サブキャリア#Kに対応する。
【0004】
乗算部12は、変調器11が出力する複素値#1-1~#1-Nそれぞれをα倍し、乗算部22は、変調器21が出力する複素値#2-1~#2-Nそれぞれをβ倍する。ここで、α<βである。つまり、遠距離WDに送信する無線信号のレベルを、近距離WDに送信する無線信号のレベルより大きくする。
【0005】
加算部3は、乗算部12からの複素値#1-Kと乗算部22からの複素値#2-Kとを加算して、加算後の複素値#3-Kを逆離散フーリエ変換部(IDFT)部4に出力する。IDFT部4は、加算部3からの複素値#3-1~#3-Nを、図示しない他のWD宛の複素値と共に逆離散フーリエ変換することで時間サンプルを出力する。その後、時間サンプルにはサイクリックプレフィクス(CP)が付加される。CPが付加された時間サンプルは、無線周波数帯のアナログ信号に変換され、アンテナから無線信号として送信される。
【0006】
遠距離WDが受信する無線信号の減衰量は大きいため、受信する無線信号に含まれる近距離WD宛の無線信号の受信レベルは十分に小さい。よって、遠距離WDは、受信した無線信号を復調することで自装置宛のデータを判定することができる。一方、近距離WDは、遠距離WD宛のレベルの高い無線信号と、自装置宛のレベルの低い無線信号と、が加算された無線信号を受信する。近距離WDは、受信した無線信号を復調することで、遠距離WD宛の無線信号を推定し、受信した無線信号から推定した遠距離WD宛の無線信号を減ずることで、自装置宛の無線信号を復元して復調する。
【0007】
直交周波数分割多重(OFDM)等のマルチキャリア伝送方式は、無線信号のレベルのピーク値に対する平均値の比、つまり、PAPRが高くなり、無線信号の増幅の際の電力効率が劣化する。このため、非特許文献1は、PAPRを低減するためのPTS(Partial Transmission Scheme)やSLM(Selective Mapping)と呼ばれる方法を開示している。PTSは、無線信号波形のピークをクリップするなどして、部分的に一致する波形を送信するものである。SLMは、信号波形をPAPRの低い別の波形に置き換えるものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.K.Sharma,A.Kumar,"PAPR Reduction in NOMA by Using Hybrid Algorithms",Computers,Materials&Continua(CMC),vol.69,no.1,2021年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PTSでは、送信する無線信号の波形を歪ませるため、通信品質を劣化させ得る。また、SLMでは、無線信号のレベルの急激な変化を抑えた波形を複数用意する必要があり、通信速度を保つために広い周波数帯域幅を必要とする。したがって、SLMでは周波数帯域の利用効率が低下する。
【0010】
本発明は、NOMAを行う無線装置が送信する無線信号のPAPRを低減させる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によると、第1キャリアから第Nキャリア(Nは2以上の整数)を含む無線信号を送信する無線装置は、第1無線デバイスに送信するデータに対応するシンボルを示す1番目からN番目のN個の第1複素値を生成する第1生成手段と、第2無線デバイスに送信するデータに対応するシンボルを示す1番目からN番目のN個の第2複素値を生成する第2生成手段と、前記N個の第2複素値をフーリエ変換することで1番目からN番目のN個の第3複素値を生成する生成手段と、K番目の第1複素値(Kは1からNまでの整数)とK番目の第3複素値を加算して1番目からN番目のN個の第4複素値を出力する出力手段と、前記N個の第4複素値を逆フーリエ変換する変換手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、NOMAを行う無線装置が送信する無線信号のPAPRを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
図2は、近距離WDと遠距離WD宛の無線信号を電力軸方向で多重する、本実施形態による無線装置の機能ブロック図である。本実施形態において、無線装置は、移動通信ネットワークの基地局装置であるものとする。なお、2つのWDへの無線信号は、N個(Nは2以上の整数)のサブキャリア#1~サブキャリア#Nを含むものとする。なお、本実施形態では、例えば、直交周波数分割多重(ОFDM)システム等で通常使用される"サブキャリア"との用語を使用するが、本説明における"サブキャリア"との用語は"キャリア"との用語に置換可能である。変調器11は、近距離WDに送信するデータ値に基づき、近距離WDとの間で使用する変調方式のシンボルを示すN個の複素値#1-1~#1-Nを出力する。なお、複素値#1-K(Kは1からNまでの整数)は、サブキャリア#Kに対応する。変調器21は、遠距離WDに送信するデータ値に基づき、遠距離WDとの間で使用する変調方式のシンボルを示すN個の複素値#2-1~#2-Nを出力する。
【0016】
離散フーリエ変換(DFT)部5は、変調器21が出力するN個の複素値#2-1~#2-Nの離散フーリエ変換を行い、N個の複素値#4-1~#4-Nを出力する。DFT部5による処理は、所謂、DFT拡散である。
【0017】
乗算部12は、変調器11が出力する複素値#1-1~#1-Nそれぞれをα倍し、乗算部22は、DFT部22が出力する複素値#4-1~#4-Nそれぞれをβ倍する。ここで、α<βである。つまり、遠距離WDに送信する無線信号のレベルを、近距離WDに送信する無線信号のレベルより大きくする。
【0018】
加算部3は、乗算部12からの複素値#1-Kと乗算部22からの複素値#4-Kとを加算して、加算後の複素値#3-KをIDFT部4に出力する。IDFT部4は、加算部3からの複素値#3-1~#3-Nを、図示しない他のWD宛の複素値と共に逆離散フーリエ変換することで時間サンプルを出力する。その後、時間サンプルにはサイクリックプレフィクス(CP)が付加される。CPが付加された時間サンプルは、無線周波数帯のアナログ信号に変換され、アンテナから無線信号として送信される。
【0019】
図2に示す様に、本実施形態では、遠距離WDに送信する無線信号は、DFT拡散される。DFT拡散により遠距離WD宛の無線信号のPAPRは低くなる。なお、近距離WDに送信する無線信号は、DFT拡散されないため、近距離離WD宛の無線信号のPAPRは高くなり得る。しかしながら、基地局装置が送信する無線信号は、レベルの高い遠距離WD宛の無線信号と、レベルの低い近距離WD宛の無線信号とを加算したものであり、基地局装置が送信する無線信号に対して近距離WD宛の無線信号のレベルは低いため、基地局装置が送信する無線信号のPAPRが高くなることを抑えることができる。
【0020】
なお、DFT拡散された無線信号では、伝搬路の周波数選択性によって自局干渉が生じてSN特性が劣化し得る。しかしながら、遠距離WDに送信する無線信号のレベルは高いが、伝搬損失も大きいため、一般的には、多値度の低い変調方式が使用される。多値度の低い変調方式では、信号対雑音比が低くても精度良く復調できるため自局干渉の影響を無視できる程度に抑えることができる。一方、DFT拡散が適用されない近距離WDには、自局干渉による信号対雑音比の劣化はない。
【0021】
なお、本実施形態では、DFT部5の下流側に乗算部22を設けていたが、DFT部5の上流側に乗算部22を設ける構成とすることができる。
【0022】
以上の構成により、NOMAを行う無線装置が送信する無線信号のPAPRを低減させることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
11、21:変調器、12、22:乗算部。3:加算部、4:IFFT部、5:DFT部