(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130897
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ポリプロピレン樹脂組成物、シートおよび熱成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20230913BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035474
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 勝寿
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB032
4J002BB052
4J002BP021
4J002FD010
4J002FD200
4J002GC00
4J002GF00
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】剛性及び耐寒性に優れるシート及び熱成形体を製造することのできるポリプロピレン樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記(a)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を100質量部、および下記(b)を満たすエチレン系重合体(B)を8~50質量部含むポリプロピレン樹脂組成物。(a)MFRが0.1~1.0g/10分、23℃n-デカン不溶部(75~90質量%)のmmmmが94%以上、エチレン含量が6~15質量%、23℃n-デカン可溶部(10~25質量%)のエチレン含量が33~45質量%、極限粘度が4.1~6.0dL/gである(前記不溶部量と不溶部量の合計を100質量%とする)、(b)MFRが0.030~1.0g/10分、密度が945kg/m3以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a1)~(a6)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を100質量部、および下記要件(b1)~(b2)を満たすエチレン系重合体(B)を8~50質量部含む、ポリプロピレン樹脂組成物。
(a1)MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.1~1.0g/10分である。
(a2)23℃n-デカン不溶部量が75~90質量%であり、かつ
23℃n-デカン可溶部量が10~25質量%である。
(前記不溶部量と前記不溶部量との合計を100質量%とする。)。
(a3)23℃n-デカン不溶部のペンタッド分率(mmmm)が94%以上である。
(a4)23℃n-デカン不溶部に占めるエチレン由来の構成単位の割合が6~15質量%である。
(a5)23℃n-デカン可溶部に占めるエチレン由来の構成単位の割合が33~45質量%である。
(a6)23℃n-デカン可溶部の135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が4.1~6.0dL/gである。
(b1)MFR(190℃、2.16kg荷重)が0.030~1.0g/10分である。
(b2)密度が945kg/m3以上である。
【請求項2】
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の23℃デカン可溶部量に対する前記エチレン系重合体(B)の質量比が0.5~2.2である請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂組成物を含むシート。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂組成物を含む熱成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン樹脂組成物およびそれを含むシートまたは熱成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品用樹脂製容器は、食品が収納されたまま電子レンジに入れて加熱されるので、温度100~150℃で変形しないことが要求される。一方、冷凍貯蔵庫内(温度-40~0℃)で冷凍食品が収納された容器が貯蔵または輸送されることから、低温で容器に外部から衝撃が加わった際に容器に割れが生じないことも要求される。このように冷凍食品用容器には、耐熱変形性(剛性)と耐寒性が要求される。
【0003】
電子レンジにて加熱調理する食品を収納する容器としては、ポリプロピレン系樹脂製のシートを熱成形して得られる容器が使用される。ポリプロピレン系樹脂製容器は電子レンジで加熱した際の変形が少なく、耐熱変形性が良好である。しかし、ポリプロピレン系樹脂製容器は耐寒性に劣り、温度-40~0℃の冷凍貯蔵庫内での保管中や冷凍車輌での輸送過程における荷役作業時等に落下、衝突、振動等の外部からの衝撃で割れを生じて、しばしば容器として加熱調理に使用できないという欠点があった。一般にポリプロピレンは、優れた物理的特性を有し、かつ衛生面にも優れているため食品容器として有用である。しかし、ポリプロピレン製容器を低温で使用する場合に耐寒性(低温耐衝撃性)に劣るという課題があった。
【0004】
剛性と耐寒性を改良するためにポリプロピレン系樹脂に高密度ポリエチレンおよび無機充填剤を配合した樹脂組成物からなる熱成形用シートが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
特許文献3には、特定のプロピレン-エチレンブロック共重合体に高密度ポリエチレン及びエラストマーを配合した樹脂組成物が提案されている。
特許文献4には、特定のプロピレンブロック共重合体にエチレン・プロピレン共重合体及びポリエチレンからなる樹脂組成物が提案されている。
このように特許文献1の発明では、-30℃の耐寒性について、特許文献2~4では、-20℃の耐寒性への改良方法を提案しているが、耐寒性が十分高いとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2-80454号公報
【特許文献2】特開2000-239458号公報
【特許文献3】特開2005-29681号公報
【特許文献4】特表2008-542460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、剛性および耐寒性に優れたポリプロピレン樹脂組成物、およびそれからなるシート及び熱成形体を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
下記要件(a1)~(a6)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を100質量部、および下記要件(b1)~(b2)を満たすエチレン系重合体(B)を8~50質量部含む、ポリプロピレン樹脂組成物。
(a1)MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.1~1.0g/10分である。
(a2)23℃n-デカン不溶部量が75~90質量%であり、かつ
23℃n-デカン可溶部量が10~25質量%である。
(前記不溶部量と前記不溶部量との合計を100質量%とする。)。
(a3)23℃n-デカン不溶部のペンタッド分率(mmmm)が94%以上である。
(a4)23℃n-デカン不溶部に占めるエチレン由来の構成単位の割合が6~15質量%である。
(a5)23℃n-デカン可溶部に占めるエチレン由来の構成単位の割合が33~45質量%である。
(a6)23℃n-デカン可溶部の135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が4.1~6.0dL/gである。
(b1)MFR(190℃、2.16kg荷重)が0.030~1.0g/10分である。
(b2)密度が945kg/m3以上である。
【0009】
[2]
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の23℃デカン可溶部量に対する前記エチレン系重合体(B)の質量比が0.5~2.2である前記[1]のポリプロピレン樹脂組成物。
【0010】
[3]
前記[1]または[2]のポリプロピレン樹脂組成物を含むシート。
[4]
前記[1]または[2]のポリプロピレン樹脂組成物を含む熱成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物によれば、剛性および耐寒性のバランスに優れるシート及び熱成形体を得ることができる。また、そのシートまたは熱成形体は剛性及び耐寒性のバランスに優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ポリプロピレン樹脂組成物]
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、後述する要件(a1)~(a6)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)と、下記要件(b1)~(b2)を満たすエチレン系重合体(B)とを含み、前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)100質量部に対してエチレン系重合体(B)が8~50質量部であり、好ましくは10~40質量部、さらに好ましくは10~30質量部であることを満たすことを特徴としている。(B)の配合量が下限未満になると耐寒性が低下するし、上限を超えると耐寒性だけでなく、剛性が低下する。
【0013】
<プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)>
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、以下に説明する要件(a1)~(a6)を満たす。プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン由来の構成単位からなる成分と、主にプロピレンおよびエチレン由来の構成単位からなる成分とを含む。
【0014】
<要件(a1)>
要件(a1)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の、JIS K7210-1に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(以下「MFRA」とも記載する。)が0.1~1.0g/10分である、というものである。前記MFRAは、好ましくは0.2~0.9g/10分であり、さらに好ましくは0.3~0.8g/10分である。
【0015】
MFRAが上記範囲を下回ると、ポリプロピレン樹脂組成物をシート成形時の樹脂温度が高くなって押出状態が不安定になることがある。またMFRAが上記範囲を上回ると、ポリプロピレン樹脂組成物のシート熱成形時にシートに大きなドローダウンを引き起こすことがある。
【0016】
<要件(a2)>
要件(a2)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の、23℃におけるn-デカンに不溶な部分(本発明において「23℃n-デカン不溶部」または「Dinsol」とも記載する。)の量が75~90質量%であり、23℃におけるn-デカンに可溶な部分(本発明において「23℃n-デカン可溶部」または「Dsol」とも記載いう。)の量が10~25質量%である、というものである。好ましくは、Dinsolが77~88質量%であり、Dsolが12~23質量%であり、さらに好ましくはDinsolが79~86質量%であり、Dsolが14~21質量%である。ただし、Dinsolの割合とDsolの割合との合計を100質量%とする。Dinsolが上限を超えると(すなわち、Dsolが下限未満になると)、ポリプロピレン樹脂組成物の耐寒性が低下するし、Dinsolが下限未満になると(すなわち、Dsolが上限を超えると)、ポリプロピレン樹脂組成物の剛性が低下する。
【0017】
<要件(a3)>
要件(a3)は、前記Dinsolのペンタッドに占めるmmmmの分率(本発明において「ペンタッド分率(mmmm)」ともいう。)が94%以上である、というものである。ペンタッド分率(mmmm)は、好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上である。ペンタッド分率(mmmm)の上限は100%である。ペンタッド分率(mmmm)が94%未満であるとポリプロピレン樹脂組成物の剛性が低下したり、融点の低下とともに熱成形体の耐熱性が要求特性を担保しきれず、電子レンジ等での加熱により成形体が変形するなどの不具合が生じ、好ましくない。
【0018】
<要件(a4)>
要件(a4)は、前記Dinsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合が6~15質量%である、というものである。なお、Dinsolの量を100質量%とする。この割合は、好ましくは6~12質量%である。下限未満になると耐寒性が劣る。上限を超えても耐寒性が劣ると考えられる。下限未満または上限を超えると耐寒性が劣る。
【0019】
前記Dinsolは、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)に含まれる結晶性プロピレン重合体とプロピレン・エチレン共重合体に含まれる結晶成分からなる。従って、前記Dinsolに占めるエチレン構成単位は、前記プロピレン・エチレン共重合体に含まれる結晶成分に由来する。従って、下限未満になるとプロピレン・エチレン共重合体の結晶成分が減少し、エチレン系重合体(B)との相溶性が低下する。一方、上限を超えるとプロピレン・エチレン共重合体の結晶成分が増加し、結晶性プロピレン重合体よりも融点、剛性が低いことからポリプロピレン樹脂組成物の剛性、耐熱性が低下することがある。
【0020】
<要件(a5)>
要件(a5)は、前記Dsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合が33~45質量%である、というものである。なおDinsolの量を100質量%とする。この割合は、好ましくは34~44質量%、より好ましくは35~43質量%である。下限未満になるとポリプロピレン樹脂組成物の耐寒性が劣る。上限を超えても耐寒性が劣ると考えられる。上限を超えるとプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)に含まれるプロピレン・エチレン共重合体の分散相とプロピレン重合体であるマトリックスとの相溶性が低下して、分散相サイズが粗大化し、耐寒性が低下すると考えられるからである。
【0021】
<要件(a6)>
要件(a6)は、前記Dsolの135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が4.1~6.0dL/gである、というものである。極限粘度[η]は、好ましくは4.2~5.5dL/gである。下限未満になるとポリプロピレン樹脂組成物の耐寒性が劣り、上限を超えると成形物にフィッシュアイが発生することがある。
【0022】
<プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の23℃デカン可溶部量に対するエチレン系重合体(B)の質量比>
加えて、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の23℃n-デカン可溶部量に対するエチレン系重合体(B)の質量比は、好ましくは0.5~2.2であり、より好ましくは0.6~1.7である。
【0023】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)とは、プロピレン・エチレン共重合体の中で結晶性を示さないか、もしくは結晶性が低い成分であるために優れた耐寒性を有しているが、同時にエチレン系重合体(B)よりもエチレン含量が少ないため、エチレン系重合体(B)の分散相を微細化させることによる低温での耐衝撃性(すなわち、耐寒性)改良の効果を有していると考えられる。前記質量比が前記下限以上であると、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は耐寒性に優れる。前記質量比が前記上限以下であると、すなわちエチレン系重合体(B)に対するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の23℃デカン可溶部量が比較的多いと、エチレン系重合体(B)の分散相が十分に微分散化し、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は耐寒性に優れる、と考えられる。
【0024】
<プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の製造方法>
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の製造方法に特に限定はないが、通常は、チーグラーナッタ触媒存在下、またはメタロセン化合物含有触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
【0025】
なお、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、チーグラーナッタ触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られることが好ましい。分子量分布が広く成形性が良好な樹脂が得られ易い為である。
【0026】
<チーグラーナッタ触媒>
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、高立体規則性チーグラーナッタ触媒を用いることにより製造することができる。前記高立体規則性チーグラーナッタ触媒としては、公知の種々の触媒が使用できる。たとえば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、(b)有機金属化合物触媒成分と、(c)シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する有機ケイ素化合物触媒成分とからなる触媒を用いることができ、この触媒成分は公知の方法、たとえば国際公開第2010/74001号の[0078]~[0094]に記載の方法で製造することができる。
【0027】
上記のような固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、および有機ケイ素化合物触媒成分(c)からなる触媒を用いてプロピレンの重合を行うに際して、予め予備重合を行うこともできる。予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、および必要に応じて有機ケイ素化合物触媒成分(c)の存在下に、オレフィンを重合させる。
【0028】
予備重合するオレフィンとしては、炭素数2~8のα-オレフィンを用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテンなどの直鎖状のオレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの分岐構造を有するオレフィン等を用いることができる。これらは共重合させてもよい。
【0029】
予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)1g当り0.1~1000g程度、好ましくは0.3~500g程度の重合体が生成するように行うことが望ましい。予備重合量が多すぎると、本重合における(共)重合体の生成効率が低下することがある。予備重合では、本重合における系内の触媒濃度よりもかなり高い濃度で触媒を用いることができる。
【0030】
本重合の際には、固体状チタン触媒成分(a)(または予備重合触媒)を重合容積1L当りチタン原子に換算して約0.0001~50ミリモル、好ましくは約0.001~10ミリモルの量で用いることが望ましい。有機金属化合物触媒成分(b)は、金属原子の量に換算して、重合系中のチタン原子1モルに対して約1~2000モル、好ましくは約2~500モル程度の量で用いることが望ましい。有機ケイ素化合物触媒成分(c)は、有機金属化合物触媒成分(b)の金属原子1モル当り約0.001~50モル、好ましくは約0.01~20モル程度の量で用いることが望ましい。
【0031】
<メタロセン化合物含有触媒>
前記メタロセン化合物含有触媒としては、メタロセン化合物、並びに、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、さらに必要に応じて粒子状担体とからなるメタロセン触媒を挙げることができ、好ましくはアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造等の立体規則性重合をすることのできるメタロセン触媒を挙げることができる。前記メタロセン化合物の中では、国際公開第01/27124号に例示されている架橋性メタロセン化合物、国際公開第2010/74001号の[0068]~[0076]に記載のメタロセン化合物などが好ましい。また、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、さらには必要に応じて用いられる粒子状担体としては、国際公開第01/27124号、特開平11-315109号公報等に開示された化合物を制限無く使用することができる。
【0032】
<重合>
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、前述のメタロセン化合物含有触媒存在下、またはチーグラーナッタ触媒存在下でプロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
【0033】
連続多段重合により前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を製造する場合、各段においてはプロピレンを単独重合させるか、またはプロピレンとエチレンとを共重合させる。
【0034】
重合は、気相重合法、バルク重合法あるいはスラリー重合法いずれで行ってもよく、各段を別々の方法で行ってもよい。また連続式、半連続式のいずれの方式で行ってもよく、各段を複数の重合器たとえば2~10器の重合器に分けて行ってもよい。工業的には連続式の方法で重合することが最も好ましく、この場合2段目以降の重合を2器以上の重合器に分けて行うことが好ましく、これによりゲルの発生を抑制することができる。
【0035】
重合媒体として、不活性炭化水素類を用いてもよく、また液状のプロピレンを重合媒体としてもよい。また各段の重合条件は、重合温度が約-50~+200℃、好ましくは約20~100℃の範囲で、また重合圧力が常圧~10MPa(ゲージ圧)、好ましくは約0.2~5MPa(ゲージ圧)の範囲内で適宜選択される。
【0036】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、たとえば、2つ以上の重合器を直列につなげた反応装置で、次の二つの工程([工程1]および[工程2])を連続的に実施することによって得られる。プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の製造の際には、二つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用いそれぞれの重合装置で[工程1]を行ってもよく、また二つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用いそれぞれの重合装置で[工程2]を行ってもよい。
【0037】
また、[工程1]と[工程2]とを別々に行い、それぞれで得られた重合体を単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混練し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を製造してもよい。
【0038】
さらに、[工程1]および[工程2]を連続的に実施することによって得られる重合体(または、前記溶融混錬で得られた溶融混錬物)と、別途準備したプロピレン単独重合体および/またはプロピレン・エチレン共重合体とを、一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混練し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を製造してもよい。
【0039】
[工程1]および[工程2]を連続的に実施することによって得られる重合体は、後述するように公知の触媒を適宜選択し、水素濃度、重合温度、重合時間等の重合条件を調整したり、この溶融混錬に使用する各重合体の物性、割合等を適宜調整することにより、上記要件(a1)~(a6)で表される諸物性を調整することができる。
【0040】
[工程1]は、重合温度0~100℃、重合圧力常圧~5MPaゲージ圧で、プロピレンと任意にエチレンとを重合させる工程であって、エチレンを供給しないか、またはプロピレンのフィード量に比べて少量のエチレンを供給することによって、Dinsolの主成分となるプロピレン系重合体を製造する工程である。また、必要に応じて水素ガスに代表される連鎖移動剤も導入し、[工程1]で生成される重合体の極限粘度[η]を調整してもよい。
【0041】
[工程2]は、重合温度0~100℃、重合圧力常圧~5MPaゲージ圧で、プロピレンとエチレンとを共重合させる工程であって、プロピレンのフィード量に対するエチレンのフィード量の割合を[工程1]のときよりも大きくすることによって、Dsolの主成分となるプロピレン・エチレン共重合ゴムを製造する工程である。必要に応じて水素ガスに代表される連鎖移動剤も導入し、[工程2]で生成される重合体の極限粘度[η]を調整することができる。
【0042】
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)に、少なくとも1種以上のバイオマス由来エチレンおよび/またはプロピレンに由来する構成単位を含んでいてもよい。バイオマス由来エチレン、プロピレンは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料とし、従来から知られている方法により得られる。前記バイオマス由来エチレン、プロピレンは、炭素の同位体14Cを1×10-12程度の割合で含有し、ASTM D6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度は100pMC程度である。
【0043】
要件(a1)におけるMFRAは、[工程1]または[工程2]を行う際のモノマー(すなわち、プロピレンの単独重合の場合にはプロピレン、共重合の場合にはプロピレンおよびエチレン)のフィード量に対する連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の割合を調整することにより調整できる。すなわち、この割合を大きくすることでMFRAを高くすることができ、この割合を小さくすることでMFRAを低くすることができる。
【0044】
また、上記方法以外でも、重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物の存在下で溶融混練処理することによりMFRAを調整することができる。重合で得られたプロピレン系重合体を、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行うことによりMFRAは高くなり、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行う際の有機過酸化物の添加量を増やすことでMFRAはより高くなる。重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物存在下で溶融混練処理する場合、有機過酸化物は、プロピレン系重合体100質量部に対して0.005~0.05質量部使用することが望ましい。また、上記有機過酸化物存在下での溶融混練処理は、下記後処理工程後に行ってもよい。有機過酸化物としては、特に限定はなく、従来公知の有機過酸化物、たとえば2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、および1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン)が挙げられる。
【0045】
要件(a2)における前記Dinsolの割合および前記Dsolの割合は、上記[工程1]および[工程2]の重合時間を調整することにより、調整することが出来る。つまり、全重合時間に占める[工程1]の重合時間の割合を高めることで、Dinsolの割合を大きく、Dsolの割合を小さくすることが出来る。また、全重合時間に占める[工程2]の重合時間の割合を高めることで、Dinsolの割合を小さく、Dsolの割合を大きくすることが出来る。また、プロピレン単独重合体を別途配合することにより調整することもできる。
【0046】
要件(a3)における前記Dinsolのペンタッド分率(mmmm)は、前述した公知の触媒を適宜選択し、ポリプロピレン単独重合体の立体規則性を改良することにより調整できる。
【0047】
要件(a4)における前記Dinsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合は、チーグラーナッタ触媒を用いたときは、[工程1]及び[工程2]を行う際にプロピレンのフィード量に対するエチレンのフィード量の割合を変えることによって通常調整できるが、[工程1]で前記割合を変えるよりも[工程2]で前記割合を変えることが好ましい。[工程2]で得られるプロピレン・エチレン共重合体中の一部の結晶成分(エチレン含有量の高い前記共重合体をいう。)が前記Dinsolに含まれるが、この成分が一定量存在すると耐寒性が優れるからである。従って、前記エチレンのフィード量を変えた多段重合を行うことによっても調整することができる。メタロセン化合物含有触媒を用いたときは、[工程2]で得られるプロピレン・エチレン共重合体の組成分布が狭く、前記結晶成分が少ないため調整することが難しい。この場合は、[工程2]を行う際に前記エチレンのフィード量を変えた多段重合を行うことによって調整することができる。
【0048】
要件(a5)における前記Dsolのエチレン含量は、前述した公知の触媒を適宜選択し、[工程2]を行う際にプロピレンのフィード量に対するエチレンのフィード量の割合を大きくすることによって、大きくすることができる。
【0049】
要件(a6)における前記Dsolの極限粘度[η]は、[工程2]を行う際の連鎖移動剤として用いる水素ガスのフィード量により調整できる。つまり、モノマー(すなわち、プロピレンおよびエチレン)のフィード量に対する水素ガスのフィード量の割合を大きくすることにより極限粘度[η]を小さくすることができ、モノマーのフィード量に対する水素ガスのフィード量の割合を小さくすることにより極限粘度[η]を大きくすることができる。
【0050】
重合終了後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行うことにより、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)が得られる。
また、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)として市販品を使用してもよい。
【0051】
<エチレン系重合体(B)>
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、以下に説明する要件(b1)~(b2)を満たすエチレン系重合体(B)を含む。
【0052】
エチレン系重合体(B)としては、エチレン単独重合体、およびエチレン・α-オレフィン共重合体が挙げられる。前記α-オレフィンとしては炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられ、その例としてはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
【0053】
<要件(b1)>
要件(b1)は、エチレン系重合体(B)の、JIS K7210-1に準拠して、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(以下、単に「MFRB」とも記載する。)が0.030~1.0g/10分である、というものである。前記MFRBは、好ましくは0.040~0.5g/10分である。MFRBが下限未満になると、ポリプロピレン樹脂組成物の流動性が低下し、上限を超えるとポリプロピレン樹脂組成物の耐寒性が低下する。
【0054】
<要件(b2)>
要件(b2)は、エチレン系重合体(B)の密度が945kg/m3以上である、というものである。前記密度は、好ましくは950kg/m3以上である。密度が下限未満になるとポリプロピレン樹脂組成物の剛性が劣る。
【0055】
エチレン系重合体(B)は、従来公知の方法で製造することができる。
要件(b1)におけるMFRBは、エチレンを重合(またはエチレンおよびα-オレフィンを共重合)してエチレン系重合体(B)を製造する際に、モノマー(すなわち、エチレンの単独重合の場合にはエチレン、共重合の場合にはエチレンおよびα-オレフィン)のフィード量に対する連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の割合を調整することにより調整できる。すなわち、この割合を大きくすることでMFRBを高くすることができ、この割合を小さくすることでMFRBを低くすることができる。
【0056】
要件(b2)における密度は、エチレンを重合(またはエチレンおよびα-オレフィンを共重合)してエチレン系重合体(B)を製造する際の、エチレンフィード量に対するα-オレフィンフィード量の割合を調整することにより調整できる。つまり、この割合を大きくすることにより、密度を低くすることができ、この割合を小さくすることにより、密度を高くすることができる。
【0057】
エチレン系重合体(B)に、少なくとも1種以上のバイオマス由来エチレンに由来する構成単位を含んでいてもよい。バイオマス由来エチレンは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料とし、従来から知られている方法により得られる。前記バイオマス由来エチレンには、炭素の同位体14Cを1×10-12程度の割合で含有し、ASTM D6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度は100pMC程度である。
【0058】
<ポリプロピレン樹脂組成物>
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、JIS K7210-1(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定されたMFRが、通常0.1~10g/10分、好ましくは0.3~1.0g/10分である。本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、MFRが前記上限以下であると耐寒性に優れ、前記下限以上であるとシート成形時に表面荒れ、偏肉不良、外観不良が抑制される。
【0059】
<任意成分>
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)およびエチレン系重合体(B)以外の任意成分を含んでいてもよい。
【0060】
前記任意成分の例としては、核剤が挙げられる。核剤は剛性を改良するために使用してもよいが、特に限定されず、当該分野で通常使用されるものを使用してよい。例えば、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤から選択されることが好ましい。ノニトール系核剤として、例えば、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-o-[(4-プロピルフェニル)メチレン]ノニトール(商品名:ミリケン・ジャパン株式会社製ミラッド(Millad) NX8000J)が挙げられる。ソルビトール系核剤として、例えば、1,3:2,4-ビス-o-(ジベンジリデン)-D-ソルビトール(商品名:新日本理化株式会社製ゲルオールD)、1,3:2,4-ビス-o-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール(商品名:新日本理化株式会社製ゲルオールDXR)などが挙げられる。リン酸エステル系核剤として、例えば、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リチウム塩系造核剤が挙げられる。市販のリン酸エステル系核剤として、例えばアデカスタブNA-11、NA-21、NA-71(株式会社ADEKA製)などが挙げられる。
【0061】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物中の核剤の含有量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)およびエチレン系重合体(B)の合計100質量部に対して1.0質量部以下であり、好ましくは0.4質量部以下である。
【0062】
また、前記任意成分の他の例としては、無機フィラーが挙げられる。用途に応じて剛性を改良するためにポリプロピレン樹脂組成物に無機フィラーを添加することができる。また、当該樹脂組成物中での無機フィラーの分散性を改良するために、高濃度の無機フィラーのマスターバッチを作製し、そのマスターバッチを添加、混合することが好ましい。無機フィラーとしてタルク、炭カルなどが挙げられるが、タルクが好ましい。
【0063】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物中が無機フィラーを含む場合、組成物中の無機フィラーの含有量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)およびエチレン系重合体(B)の合計100質量部に対して0.1~100質量部であり、好ましくは5~100質量部、さらに好ましくは10~80質量部である。配合量が前記下限以上であると十分な剛性改良効果が得られ、配合量が前記上限以下であると耐寒性が良好である。
【0064】
前記任意成分の他の例としては、酸化防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の有機および無機顔料などの従来のポリプロピレン樹脂組成物に通常添加されることのある慣用の添加剤が挙げられる。各添加剤の添加量は、従来のポリプロピレン樹脂組成物への添加量と同様の量としてよい。
【0065】
[成形体]
本発明の成形体は、上述した本発明のポリプロピレン樹脂組成物を含むことを特徴としている。その具体例としては、本発明のポリプロピレン樹脂組成物をシート(発泡シートも含む)に成形したもの、およびそのシートから熱成形したものが挙げられる。
【0066】
前記シートの厚さは、好ましくは200~1000μmである。シートの厚さが前記下限以上であると熱成形品の形状が維持でき、前記上限以下であると熱成形する際に加熱が短時間で済み、熱成形体の生産性に優れる。
【0067】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物を積層シートの構成層に用いる場合は、積層シートの全厚さも、好ましくは200~1000μmである。この場合には本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物を含む構成層の厚さは、積層シートの厚さの好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。構成層の厚さが下限未満になると耐寒性が低下する。また、前記構成層が3層以上からなる場合は、本発明のポリプロピレン樹脂組成物を含む構成層は、表面層よりも中間層であることが好ましい。当該ポリプロピレン樹脂組成物を中間層に用いることで、表面層にシール性、透明性、光沢性、印刷性等の機能を付与することができるからである。
【0068】
本発明のシートは、食品、化粧品、日用品等の容器に用いることができるが、剛性と耐寒性に極めて優れていることから、冷凍食品の容器、トレーに最適である。
また、本発明のシートから作製した熱成形体としては、容器形状に熱成形してなる包装用容器が好ましい。包装用容器の形状や大きさは特に限定されず、平面形状が四辺形、円形、楕円形などの種々の形状の包装用容器の成形可能であり、その立体形状も、箱形(特に弁当箱状)、トレー状、丼状などの種々の形状とすることができる。さらに、包装用容器として、蓋と容器本体とが別個のタイプのものも好ましい。
【0069】
シートの製造方法を例示する。
ます、上記のポリプロピレン樹脂組成物のペレット又は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)及びエチレン系重合体(B)のペレットを予め混合(ドライブレンド)したものをシート成形機のホッパーに投入する。前記成形機のシリンダー内では、樹脂組成物などは温度180~280℃程度に制御されてTダイ、サーキュラーダイ等のダイスの口金部に送られる。口金部では、材料温度210~280℃程度にてシートが押出される。Tダイを用いた場合、ロール温度は30~80℃が好ましい。
【0070】
次に熱成形体(容器など)の製造方法を例示する。
得られたシートの外周をシート熱成形機内部に固定し、シートの上方および下方に備えた加熱ヒーターでシートを170~200℃程度に加熱する。加熱後、シートを25~100℃程度の一定温度に制御された成形用金型に押し当てて所定の形状の熱成形体(容器など)を作製することができる。
【実施例0071】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
1.測定方法
(1)引張弾性率
JIS K7161-1に準拠し、試験温度23℃、試験速度1mm/分の条件で引張弾性率(単位はMPa)を測定した。試験片は、プレス成形機を用い、JIS K6921-2 「3.4 圧縮成形」に準拠し、成形温度210℃、金型温度40℃で平板(厚さ4mm 幅130mm 長さ130mm)を成形し、機械加工により作製した。
【0073】
(2)衝撃エネルギー
JIS K7211-2に準拠し、試験温度-40℃、試験速度3.0m/秒でパンクチャーエネルギー(以下「衝撃エネルギー」とも記載する。)(単位はJ)を測定した。試験片は、プレス成形機を用い、JIS K6921-2 「3.4 圧縮成形」に準拠し、成形温度210℃、金型温度40℃で平板(厚さ1mm 幅130mm 長さ130mm)を成形して作製した。
【0074】
(3)メルトフローレート(MFR)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)及びポリプロピレン樹脂組成物のMFRは、JIS K7210-1に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した(単位はg/10分)。
エチレン系重合体(B)のMFRは、JIS K7210-1に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定した(単位はg/10分)。
【0075】
(4)23℃におけるn-デカン不溶部量とn-デカン可溶部量
23℃におけるn-デカン不溶部量とn-デカン可溶部量は以下の方法により求めた。
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)5gにn-デカン200mLを加え、145℃、30分間加熱溶解を行い、次に約2時間かけて、溶液を23℃まで冷却を行い、23℃で30分間放置した。その溶液を目開き約15μmの濾布でろ別したものを乾燥させ、23℃n-デカン不溶部(以下「Dinsol-1」とも記載する。)を得た。
【0076】
また、23℃n-デカン不溶部をろ別した後の溶液を、その溶液の約3倍量のアセトン中に入れ、n-デカン中に溶解していた成分を析出させ、23℃n-デカン可溶部(以下「Dsol-1」とも記載する。)を得た。その後、23℃n-デカン可溶部をガラスフィルター(G2、目開き約100~160μm)でろ別し、乾燥させた後、23℃n-デカン可溶部の質量を測定した。23℃n-デカン可溶部をろ別したろ液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかったことから、n-デカン不溶部量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)5gから23℃n-デカン不溶部の質量を除して算出した。前記23℃n-デカン可溶部と不溶部量の合計を100質量%としたときの各成分割合を各々23℃n-デカン可溶部量と不溶部量と定義した。
【0077】
(5)23℃n-デカン不溶部のmmmm
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べたペンタド分率(mmmm,%)は、プロピレン重合体においてMacromolecules 8,687(1975)に基づいて帰属した13C-NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。13C-NMRスペクトルは、前記のDinsol-1を試料として日本電子製EX-400の装置を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o-ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。
【0078】
(6)23℃n-デカン不溶部及び可溶部のエチレン含有量
23℃におけるn-デカン不溶部及び可溶部中のエチレン含有量は13C-NMRの測定に基づき下記のようにして測定・算出し決定した。前記のDinsol-1およびDsol-1を試料として、下記条件にてそれぞれ13C-NMRの測定を行った。
13C-NMR測定条件測定装置:日本電子製LA400型核磁気共鳴装置
測定モード:BCM(Bilevel Complete decoupling)
観測周波数:100.4MHz
観測範囲:17006.8Hz
パルス幅:C核45°(7.8μ秒)
パルス繰り返し時間:5秒
試料管:5mmφ
試料管回転数:12Hz
積算回数:20000回
測定温度:125℃
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン:0.35ml/重ベンゼン:0.2ml
試料量:約40mg
【0079】
測定で得られたスペクトルより、下記文献(1)に準じて、モノマー連鎖分布(トリアッド分布)の比率を決定し、エチレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下E(mol%)と記す)およびプロピレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下P(mol%)と記す)を算出した。求められたE(mol%)およびP(mol%)から下記(式1)に従い質量%に換算しプロピレン系重合体の23℃におけるn-デカン不溶部及び可溶部中のエチレン含有量(質量%)(以下E(質量%)と記す)を算出した。
文献(1):Kakugo,M.; Naito,Y.; Mizunuma,K.; Miyatake,T., Carbon-13 NMR determination of monomer sequence distribution in ethylene-propylenecopolymers prepared with delta-titanium trichloride-diethylaluminumchloride. Macromolecules 1982, 15, (4), 1150-1152
E(質量%)=E(mol%)×28×100/[P(mol%)×42+E(mol%)×28](式1)
【0080】
(7)23℃n-デカン可溶部の極限粘度[η]
23℃n-デカン可溶部の極限粘度[η](単位はdL/g)は下記のようにして決定した。
【0081】
約25mgの前記Dsol-1をデカリン25mLに溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求め、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]とした。
【0082】
(8)密度
エチレン系重合体(B)の密度は、JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
【0083】
2.原材料
実施例、比較例において、原材料として、以下のものを使用した。
(A)プロピレン・エチレンブロック共重合体
(A1)(株)プライムポリマー製、プライムポリプロ(登録商標)E701G(2段重合で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体)
(A2)後述の製造方法1に記載した方法で製造したもの。
(A3)後述の製造方法2に記載した方法で製造したもの。
(A4)後述の製造方法3に記載した方法で製造したもの。
(A5)後述の製造方法4に記載した方法で製造したもの。
(A6)後述の製造方法5に記載した方法で製造したもの。
(B)エチレン系重合体
(B1)(株)プライムポリマー、ハイゼックス(登録商標)8000J(MFR(190℃、2.16kg)=0.026g/10分、密度947kg/m3)
(B2)(株)プライムポリマー、ハイゼックス(登録商標)7000J(MFR(190℃、2.16kg)=0.043g/10分、密度952kg/m3)
(B3)(株)プライムポリマー、ハイゼックス(登録商標)7000J(MFR(190℃、2.16kg)=0.074g/10分、密度952kg/m3)
(B4)(株)プライムポリマー、ハイゼックス(登録商標)5000H(MFR(190℃、2.16kg)=0.1g/10分、密度958kg/m3)
(B5)(株)プライムポリマー、ハイゼックス(登録商標)1700J(MFR(190℃、2.16kg)=17g/10分、密度968kg/m3)
(B6)(株)プライムポリマー、ハイゼックス(登録商標)1810J(MFR(190℃、2.16kg)=34g/10分、密度968kg/m3)
【0084】
[製造方法1]
<固体状チタン触媒成分(a-1)の調製>
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mLおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0085】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200mL中に、この均一溶液の75mLを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。
【0086】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mLの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0087】
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2.3質量%、塩素を61質量%、マグネシウムを19質量%およびDIBPを12.5質量%の量で含有していた。
【0088】
<予備重合触媒(b-1)の製造>
固体状チタン触媒成分(a-1)0.81g、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.16mL、トリエチルアルミニウム0.48mL、ヘプタン130mLを200mLフラスコに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを4.86g挿入し、90分間攪拌しながら反応させた。その後、残留プロピレンを反応させるため60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた予重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、総ヘプタン質量が140mLとなるように調整を行った。
【0089】
[プロピレン・エチレンブロック共重合体(A2)の製造]
充分に窒素置換した内容量5.0LのSUS製オートクレーブに、水素を2.0NL、プロピレンを1.5kg装入した。その後十分に攪拌しながら、温度を50℃まで昇温し、上記の通り調製した予備重合触媒成分(b-1)を12.8mg、トリエチルアルミニウムを0.126mL、ジシクロペンチルジメトキシシランを0.043mL装入し、充分に攪拌しながら70℃で60分間重合を行った。その後、オートクレーブ内のプロピレンを脱圧し、系内を十分に窒素置換した。窒素置換後、水素を0.3NL、プロピレンを1.5kg装入し、十分に攪拌しながら、温度を50℃まで昇温を行った。その後、全圧2.88MPa/Gとなるようにエチレンを供給し、50℃、16分間にてエチレンとプロピレンの共重合を行った。なお、この時のガス相は、プロピレン分圧2.00MPa/G、水素分圧0.08MPa/G、エチレン分圧0.8MPa/Gであった。その後、系内を脱圧し、ポリマーを回収した。
【0090】
得られたポリマーは80℃で6時間、減圧乾燥を行い、パウダー状のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A2)を得た。得られたプロピレン重合体(A2)の物性を、表1に示す。
【0091】
<添加剤の配合・造粒>
次に、得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A2)100質量部に対して、酸化防止剤としてトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトを0.1質量部、6-tert-ブチル-4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]プロピル]-2-メチルフェノールを0.1質量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.1質量部配合してドライブレンドした。その後、造粒機として株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミル単軸押出機D2025型(L/D=25)を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練してペレット化を行った。
【0092】
〔製造方法2〕
<プロピレン・エチレンブロック共重合体(A3)の製造>
充分に窒素置換した内容量5.0LのSUS製オートクレーブに、水素を2.0NL、プロピレンを1.5kg装入した。その後十分に攪拌しながら、温度を50℃まで昇温し、上記の通り調製した予備重合触媒成分(b-1)を12.8mg、トリエチルアルミニウムを0.126mL、ジシクロペンチルジメトキシシランを0.043mL装入し、充分に攪拌しながら70℃で60分間重合を行った。その後、オートクレーブ内のプロピレンを脱圧し、系内を十分に窒素置換した。窒素置換後、水素を0.4NL、プロピレンを1.5kg装入し、十分に攪拌しながら、温度を50℃まで昇温を行った。その後、全圧3.14MPa/Gとなるようにエチレンを供給し、50℃、13.5分間にてエチレンとプロピレンの共重合を行った。なお、この時のガス相は、プロピレン分圧2.00MPa/G、水素分圧0.11MPa/G、エチレン分圧1.03MPa/Gであった。その後、系内を脱圧し、ポリマーを回収した。
【0093】
得られたポリマーは80℃で6時間、減圧乾燥を行い、パウダー状のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A3)を得た。得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A3)の物性を、表1に示す。
添加剤の配合と造粒は、製造方法1と同じ方法で実施した。
【0094】
〔製造方法3〕
<プロピレン・エチレンブロック共重合体(A4)の製造>
充分に窒素置換した内容量5.0LのSUS製オートクレーブに、水素を2.0NL、プロピレンを1.5kg装入した。その後十分に攪拌しながら、温度を50℃まで昇温し、上記の通り調製した予備重合触媒成分(b-1)を12.8mg、トリエチルアルミニウムを0.126mL、ジシクロペンチルジメトキシシランを0.043mL装入し、充分に攪拌しながら70℃で60分間重合を行った。その後、オートクレーブ内のプロピレンを脱圧し、系内を十分に窒素置換した。窒素置換後、水素を0.6NL、プロピレンを1.5kg装入し、十分に攪拌しながら、温度を50℃まで昇温を行った。その後、全圧3.36MPa/Gとなるようにエチレンを供給し、50℃、17.0分間にてエチレンとプロピレンの共重合を行った。なお、この時のガス相は、プロピレン分圧2.00MPa/G、水素分圧0.13MPa/G、エチレン分圧1.23MPa/Gであった。その後、系内を脱圧し、ポリマーを回収した。
【0095】
得られたポリマーは80℃で6時間、減圧乾燥を行い、パウダー状のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A4)を得た。得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A4)の物性を、表1に示す。
添加剤の配合と造粒は、製造方法1と同じ方法で実施した。
【0096】
〔製造方法4〕
<プロピレン・エチレンブロック共重合体(A5)の製造>
充分に窒素置換した内容量5.0LのSUS製オートクレーブに、水素を2.0NL、プロピレンを1.5kg装入した。その後十分に攪拌しながら、温度を50℃まで昇温し、上記の通り調製した予備重合触媒成分(b-1)を12.8mg、トリエチルアルミニウムを0.126mL、ジシクロペンチルジメトキシシランを0.043mL装入し、充分に攪拌しながら70℃で60分間重合を行った。その後、オートクレーブ内のプロピレンを脱圧し、系内を十分に窒素置換した。窒素置換後、水素を3.2NL、プロピレンを1.5kg装入し、十分に攪拌しながら、温度を50℃まで昇温を行った。その後、全圧3.36MPa/Gとなるようにエチレンを供給し、50℃、13.5分間にてエチレンとプロピレンの共重合を行った。なお、この時のガス相は、プロピレン分圧2.00MPa/G、水素分圧0.22MPa/G、エチレン分圧1.14MPa/Gであった。その後、系内を脱圧し、ポリマーを回収した。
【0097】
得られたポリマーは80℃で6時間、減圧乾燥を行い、パウダー状のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A5)を得た。得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A5)の物性を、表1に示す。
添加剤の配合と造粒は、製造方法1と同じ方法で実施した。
【0098】
〔製造方法5〕
[予備重合触媒(b-2)の製造]
固体状チタン触媒成分(a-1)0.81g、ジイソプロピルジメトキシシラン0.21mL、トリエチルアルミニウム0.96mL、ヘプタン130mLを200mLフラスコに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを4.86g挿入し、90分間攪拌しながら反応させた。その後、残留プロピレンを反応させるため60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた予重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、総ヘプタン質量が140mLとなるように調整を行った。
【0099】
<プロピレン・エチレンブロック共重合体(A6)の製造>
充分に窒素置換した内容量5.0LのSUS製オートクレーブに、水素を1.0NL、プロピレンを1.5kg装入した。その後十分に攪拌しながら、温度を50℃まで昇温し、上記の通り調製した予備重合触媒成分(b-2)を13.6mg、トリエチルアルミニウムを0.134mL、ジイソプロピルジメトキシシランを0.039mL装入し、充分に攪拌しながら70℃で60分間重合を行った。
【0100】
その後、オートクレーブ内のプロピレンを脱圧し、系内を十分に窒素置換した。窒素置換後、水素を0.37NL、プロピレンを1.5kg装入し、十分に攪拌しながら、温度を50℃まで昇温を行った。その後、全圧4.02MPa/Gとなるようにエチレンを供給し、50℃、13.0分間にてエチレンとプロピレンの共重合を行った。なお、この時のガス相は、プロピレン分圧2.00MPa/G、水素分圧0.09MPa/G、エチレン分圧1.93MPa/Gであった。その後、系内を脱圧し、ポリマーを回収した。
【0101】
得られたポリマーは80℃で6時間、減圧乾燥を行い、パウダー状のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A6)を得た。得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A6)の物性を、表1に示す。
添加剤の配合と造粒は、製造方法1と同じ方法で実施した。
【0102】
【0103】
[実施例1~3および比較例1~3]
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A4)とエチレン系重合体(B)を表2に示す質量割合で配合し、ドライブレンドの後、以下の混錬装置及び条件を用いて混錬、造粒した。
・混錬装置:2軸押出機(スクリュー外径15mm、L/D45、株式会社テクノベル製 型式KZW15TW-45MG-NH(-700))
・スクリュー回転数:500rpm
・ダイス設定温度:230℃
【0104】
このようにして得られた造粒物を、210℃の条件にてプレス成形した。得られたプレス成形体を打ち抜き、各試験に適した試験片を得た。評価結果を表2に示す。
上述の「2.原材料」および表2に示すように、エチレン系重合体(B)のMFRを所定の範囲内に調整することによってポリプロピレン樹脂組成物が耐寒性に優れるという結果を得た。
【0105】
【0106】
[実施例3~6および比較例4~5]
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A4)とエチレン系重合体(B4)との配合比を表3のとおりに変更し、それ以外は実施例1と同様の方法により、組成物を得た。物性を表3に示す。
【0107】
表3に示すようにエチレン系重合体(B4)の配合量を所定の範囲内に調整することによって、剛性が若干低下しているが、それよりもポリプロピレン樹脂組成物が耐寒性に著しく優れるという結果を得た。また、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の23℃デカン可溶部量に対するエチレン系重合体(B)の質量比を所定の範囲に調整することによりさらに耐寒性が優れるという結果を得た。
【0108】
【0109】
[実施例3、7、8および比較例6~8]
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)およびエチレン系重合体(B)として、表4に記載の重合体および配合比を採用し、それ以外は実施例1と同様の方法により、組成物を得た。物性を表4に示す。
【0110】
実施例7と比較例8とを比べると実施例7で用いたプロピレン・エチレン共重合体(A3)のデカン可溶部の[η]は、比較例8で用いたプロピレン・エチレン共重合体(A5)のデカン可溶部の[η]よりも高く、実施例7の組成物は耐寒性に優れていた。
【0111】
実施例3,7と比較例7とを比べると実施例3,7で用いたプロピレン・エチレン共重合体(A3、A4)の23℃デカン可溶部のエチレン含量は、比較例7で用いたプロピレン・エチレン共重合体(A2)のデカン可溶部のエチレン含量よりも高く、実施例3,7の組成物は耐寒性に優れていた。
【0112】
比較例6と比較例8とを比較すると、比較例6で用いたプロピレン・エチレン共重合体(A1)の23℃デカン不溶部のエチレン含量は、比較例8で用いたプロピレン・エチレン共重合体(A5)の23℃デカン不溶部のエチレン含量より低く、比較例6の組成物は耐寒性に劣っていた。これはプロピレン・エチレン共重合体(A1)の23℃デカン不溶部のエチレン含量が、耐寒性に影響を与えていることを示している。
【0113】