(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130910
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、ブラックマトリックス
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20230913BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230913BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230913BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20230913BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20230913BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C09D17/00
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/004 504
C09B67/20 L
C09B67/46 B
C09C3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035498
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】平井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】辻 康人
(72)【発明者】
【氏名】戸田 光信
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓也
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
4J037
【Fターム(参考)】
2H148BE23
2H148BE36
2H148BF11
2H148BF15
2H148BF25
2H225AC36
2H225AC53
2H225AD06
2H225AM62P
2H225AM64P
2H225AN39P
2H225AN94P
2H225AP03P
2H225BA35P
2H225CA18
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J037AA02
4J037CB10
4J037CC16
4J037CC26
4J037DD27
4J037EE08
4J037FF11
4J037FF21
(57)【要約】
【課題】ブラックマトリックスを形成する際に現像時間及び線幅を適切な範囲に維持することができ、かつ、細線密着性及び表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供する。
【解決手段】黒色着色剤、顔料分散剤、顔料分散助剤、バインダー樹脂、及び、有機溶剤を含有し、上記顔料分散剤は、バレロラクトン骨格とイソシアヌレート骨格とを有するブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色着色剤、顔料分散剤、顔料分散助剤、バインダー樹脂、及び、有機溶剤を含有し、
前記顔料分散剤は、バレロラクトン骨格とイソシアヌレート骨格とを有するブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項2】
前記黒色着色剤は、平均一次粒子径が20~50nmである請求項1に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項3】
前記黒色着色剤は、pHが3.5以下である請求項1又は2に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項4】
前記黒色着色剤は、DBP吸油量が75ml/100g以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項5】
前記顔料分散剤は、アミン価が5~35mgKOH/gである請求項1~4のいずれか1項に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項6】
前記顔料分散助剤は、銅フタロシアニンのスルホン化物である請求項1~5のいずれか1項に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項7】
前記バインダー樹脂は、アルカリ可溶性カルド樹脂及び/又はアルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂である請求項1~6のいずれか1項に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含有するブラックマトリックス用レジスト組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のブラックマトリックス用レジスト組成物から形成されるブラックマトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、ブラックマトリックスに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶やプラズマ等を用いた画像表示装置においては、画面の表示領域内の着色パターンの間隙や表示領域周辺部分の縁、また、TFTを用いた液晶ディスプレイではTFTの外光側等で遮光膜(ブラックマトリックス)が設けられている。
そして、液晶表示装置では主にバックライトからの漏れ光が、また、プラズマ表示装置では主に各色光の混濁によるにじみが画面に写り込むのを防止して、表示特性(コントラスト及び色純度)を向上させるために役立っている。
【0003】
例えば、液晶表示装置のバックライトの白色光を着色光に変換するために利用されるカラーフィルターでは、通常、ブラックマトリックスを形成したガラスやプラスチックシート等の透明基板表面に、赤、緑、青の異なる色相の画素を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等のパターンで形成する方法で製造されている。
【0004】
また、画像表示装置と位置入力装置を合わせたタッチパネルにおいても、同様に遮光膜としてブラックマトリックスが形成されたカラーフィルターが利用されており、これまでは、カバーガラスを挟んで、センサー基板と反対の側に形成することが一般的になされていた。しかし、タッチパネルの軽量化への要求が高まるにつれて、より軽量化が図れるよう、カバーガラスの同じ側に遮光膜とタッチセンサーを同時に形成する技術の開発が進んでいる。
【0005】
このようなブラックマトリックスを形成する方法として、例えば、顔料を用いたフォトリソグラフィー法(顔料法)が利用されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、顔料法で遮光膜を形成する組成物として、無機顔料と、黒色染料と、更に、分散剤を含んでおり、上記分散剤として、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、及びナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等〕、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、及び、顔料誘導体等を用いることが開示されている。
【0007】
近年においては、ブラックマトリックスを形成する際に現像時間及び線幅を適切な範囲に維持することができ、かつ、細線密着性及び表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物が求められている。
従来のブラックマトリックスを形成する組成物では、上記の全てを満足するものは得られておらず、更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、ブラックマトリックスを形成する際に現像時間及び線幅を適切な範囲に維持することができ、かつ、細線密着性及び表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、黒色着色剤と、顔料分散剤と、バインダー樹脂とを含むブラックマトリックス用顔料分散組成物において、バレロラクトン骨格とイソシアヌレート骨格とを有する顔料分散剤を用いることにより、上述した課題を全て解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、黒色着色剤、顔料分散剤、顔料分散助剤、バインダー樹脂、及び、有機溶剤を含有し、上記顔料分散剤は、バレロラクトン骨格とイソシアヌレート骨格とを有するブラックマトリックス用顔料分散組成物である。
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物において、上記黒色着色剤は、黒色着色剤は、平均一次粒子径が20~50nmであることが好ましい。
また、上記黒色着色剤は、pHが3.5以下であることが好ましい。
また、上記黒色着色剤は、DBP吸油量が75ml/100g以下であることが好ましい。
また、上記顔料分散剤は、アミン価が5~35mgKOH/gであることが好ましい。
また、上記顔料分散助剤は、銅フタロシアニンのスルホン化物であることが好ましい。
また、上記バインダー樹脂は、アルカリ可溶性カルド樹脂及び/又はアルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂であることが好ましい。
また、本発明は、上記ブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含有するブラックマトリックス用レジスト組成物でもある。
また、本発明は、上記ブラックマトリックス用レジスト組成物から形成されるブラックマトリックスでもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブラックマトリックスを形成する際に現像時間及び線幅を適切な範囲に維持することができ、かつ、細線密着性及び表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ブラックマトリックス用顔料分散組成物>
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、黒色着色剤、顔料分散剤、顔料分散助剤、バインダー樹脂、及び、有機溶剤を含有し、上記顔料分散剤は、バレロラクトン骨格とイソシアヌレート骨格とを有する。
【0014】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、バレロラクトン骨格とイソシアヌレート骨格とを有する顔料分散剤を含有する。上記顔料分散剤が、少なくとも上記2種類の骨格を有することにより、黒色着色剤への吸着性を損なわずに、バインダー樹脂への親和性を向上させることができる。そのため、成膜後のブラックマトリックス中においても黒色着色剤が良好な分散状態を保つことができる。
上記メカニズムにより、ブラックマトリックスを形成する際に現像時間及び線幅を適切な範囲に維持することができ、かつ、細線密着性及び表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を得ることができる。
ただし、本発明は上記メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0015】
(黒色着色剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、黒色着色剤を含有する。
上記黒色着色剤は、pHが3.5以下であることが好ましい。
上記黒色着色剤のpHが3.5以下とすることにより、形成するブラックマトリックスの線幅を好適に維持し、細線密着性及び表面抵抗値をより好適に向上することができる。
上記黒色着色剤は、pHが3.0以下であることがより好ましい。
【0016】
なお、上記pHは、カーボンブラック1gを、炭酸を除いた蒸留水(pH7.0)20mlに添加してマグネチックスターラーで混合して水性懸濁液を調製し、ガラス電極を使用して25℃で測定することができる(ドイツ工業品標準規格 DIN ISO 787/9)。
【0017】
上記カーボンブラックは、元々あるいは人工的に酸化した炭素質物質であり、蒸留水と混合煮沸した時に酸性を示す酸性カーボンブラックであることが好ましい。
【0018】
上記黒色着色剤としては、平均一次粒子径20~50nmが好ましく、平均一次粒子径25~45nmであることがより好ましい。
上記黒色着色剤の平均一次粒子径を上記範囲とすることにより、形成するブラックマトリックスの線幅を好適に維持し、細線密着性及び表面抵抗値をより好適に向上することができる。また、保存安定性を好適に付与することもできる。
なお、上記平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察による算術平均径の値である。
【0019】
上記黒色着色剤は、DBP吸油量が75ml/100g以下であることが好ましい。
上記黒色着色剤のDBP吸油量が75ml/100g以下であることにより、形成するブラックマトリックスの線幅を好適に維持し、細線密着性及び表面抵抗値をより好適に向上することができる。
上記黒色着色剤は、DBP吸油量が60ml/100g以下であることがより好ましく、50ml/100g以下であることが更に好ましい。
【0020】
なお、DBP吸油量とは、空隙容積を測定することでカーボンブラックのストラクチャーを間接的に定量化するもので、JIS K 6217-4に準拠して測定した数値である。尚、「DBP」とは、Dibutylphtalateの略称である。
【0021】
上記黒色着色剤としては、具体的には、コロンビアケミカルズ社製のRaven1080(pH2.4、平均一次粒子径28nm、DBP吸油量60ml/100g)、Raven1100U(pH2.9、平均一次粒子径32nm、DBP吸油量72ml/100g)、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のNEROX305(pH2.8、平均一次粒子径28nm、DBP吸油量58ml/100g)、NEROX3500(pH3.0、平均一次粒子径31nm、DBP吸油量43ml/100g)、三菱ケミカル社製のMA14(pH2.8、平均一次粒子径40nm、DBP吸油量73ml/100g)、MA220(pH2.9、平均一次粒子径55nm、DBP吸油量93ml/100g)等が挙げられる。
【0022】
上記黒色着色剤の含有量としては、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物の全固形分に対する質量分率として、5~85質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましい。
上記黒色着色剤の含有量が5質量%未満では、ブラックマトリックスを形成した場合の遮光性が低くなることがあり、85質量%を超えると、顔料分散が困難となることがある。
【0023】
(顔料分散剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、顔料分散剤を含有する。
上記顔料分散剤は、バレロラクトン骨格とイソシアヌレート骨格とを有する。
このような骨格を有することにより、黒色着色剤への吸着性を損なわずに、バインダー樹脂への親和性を向上させることができる。そのため、成膜後のブラックマトリックス中においても、黒色着色剤が良好な分散状態を保つことができ、表面抵抗値を向上させることができる。
【0024】
上記顔料分散剤は、アミン価が5~35mgKOH/gであることが好ましい。
上記顔料分散剤のアミン価が上記範囲であることにより、ブラックマトリックス用顔料分散組成物を低粘度化することができ、形成するブラックマトリックスの線幅を好適に維持し、細線密着性をより好適に向上することができる。
一方で、上記顔料分散剤のアミン価が5mgKOH/g未満の場合には、ブラックマトリックス用顔料分散組成物が分散不良を起こして高粘度化してしまい、上記顔料分散剤のアミン価が35mgKOH/gを超えると、後述するバインダー樹脂との中和反応により高粘度化してしまう。
上記顔料分散剤は、アミン価が10~30mgKOH/gであることがより好ましい。
なお、アミン価とは、遊離塩基及び塩基の総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に対して当量の水酸化カリウムのmg数で表したものである。
【0025】
上記顔料分散剤としては、塩基性基含有顔料分散剤であり、アニオン性界面活性剤、塩基性基含有ポリエステル系顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系顔料分散剤、塩基性基含有ウレタン系顔料分散剤、塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤、酸性基含有高分子顔料分散剤等を用いることができる。
これらの塩基性基含有顔料分散剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上の組み合わせを用いてもよい。中でも、良好な顔料分散性が得られる点から、塩基性基含有高分子顔料分散剤が好ましい。
【0026】
上記顔料分散剤の具体例としては、日本ルーブリゾール社製のソルスパース83500(固形分のアミン価25mgKOH/g、固形分40質量%)、ソルスパース82500(固形分のアミン価26mgKOH/g、固形分50質量%)等が挙げられる。
【0027】
上記顔料分散剤の含有量としては、上記黒色着色剤100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましい。
【0028】
上記顔料分散剤は、バレロラクトン骨格とイソシアヌレート骨格とを有するもの以外の顔料分散剤(以下、他の顔料分散剤ともいう)を含有してもよい。
【0029】
上記他の顔料分散剤は、上記黒色着色剤への吸着性の観点から、ウレタン又はイソシアヌレート骨格を含有することが好ましい。
【0030】
上記他の顔料分散剤は、ブラックマトリックス用顔料分散組成物を低粘度化する観点から、アミン価が5~35mgKOH/gであることが好ましい。
【0031】
上記他の顔料分散剤の含有量は、バレロラクトン骨格とイソシアヌレート骨格とを有する顔料分散剤100質量部に対して、0~150質量部であることが好ましい。
【0032】
(顔料分散助剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、顔料分散助剤を含有することが好ましい。
上記顔料分散助剤を含有することにより、後述する保存安定性とブラックマトリックスの再溶解性を好適に付与することができる。
【0033】
上記顔料分散助剤としては、酸基含有顔料誘導体、酸基含有色素誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
上記酸基含有顔料誘導体、酸基含有色素誘導体としては、銅フタロシアニンのスルホン化物であるフタロシアニン系顔料誘導体、酸基を有するアントラキノン系顔料誘導体、酸基を有するナフタレン系顔料誘導体等が例示できる。
この中でも、銅フタロシアニンのスルホン化物が上記黒色着色剤の分散性の観点から好ましい。
【0035】
上記銅フタロシアニンのスルホン化物の具体例としては、ルーブリゾール社製のソルスパース5000S、ソルスパース12000S、ビックケミー社製のBYK-SYNERGIST2100等が挙げられる。
【0036】
上記顔料分散助剤の含有量は、上記黒色着色剤100質量部に対して、0~20質量部であることが好ましく、0.5~10質量部であることがより好ましい。
【0037】
(バインダー樹脂)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、バインダー樹脂を含有する。
【0038】
上記バインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光重合性化合物、アルカリ可溶性樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0039】
上記熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム、エポキシ樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルド樹脂等が挙げられる。
【0040】
上記光重合性化合物としては、光重合性不飽和結合を分子内に1個又は2個以上有するモノマー、光重合性不飽和結合を有するオリゴマー等が挙げられる。
【0041】
上記光重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーとして、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレート又はアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレート又はアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート又はアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレート又はアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアリールエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、イソボニルメタクリレート又はアクリレート、グリセロールメタクリレート又はアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート又はアクリレート等を用いることができる。
【0042】
上記光重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーとして、例えば、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタアリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、エポキシメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エポキシアクリレート等を用いることができる。
【0043】
上記光重合性不飽和結合を有するオリゴマーとしては、上記モノマーを適宜重合させて得られたものを用いることができる。
上記バインダー樹脂は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
上記アルカリ可溶性樹脂については、後述する。
【0045】
上記バインダー樹脂は、ブラックマトリックスを形成する際に、現像時間を好適に維持する観点から、アルカリ可溶性カルド樹脂及び/又はアルカリ可溶性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
なお、カルド構造とは、炭素原子に4つの芳香環が結合した蝶番(ちょうつがい)の構造を意味する。
【0046】
上記バインダー樹脂は、顔料分散性とアルカリ現像性の観点から、酸価が10~200mgKOH/gであることが好ましく、50~150mgKOH/gであることがより好ましい。
【0047】
なお、バインダー樹脂の酸価は、JIS K5601-2-1:1999により測定した酸価を意味する。
【0048】
上記バインダー樹脂の含有量は、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物の全固形分に対する質量分率として、3~50質量%であることが好ましい。
【0049】
(有機溶剤)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、有機溶剤を含有することが好ましい。
上記有機溶剤としては、従来から液晶ブラックマトリックス用レジストの分野で使用されている有機溶剤が好適に使用できる。
【0050】
上記有機溶剤としては、具体的には、常圧(1.013×102kPa)における沸点が100~250℃のエステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、含窒素系有機溶剤等である。
上記沸点が250℃を超える有機溶剤を多量に含有していると、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物を塗布して形成される塗膜をプレベークする際に、有機溶剤が充分に蒸発せずに乾燥塗膜内に残存し、乾燥塗膜の耐熱性が低下することがある。
また、上記沸点100℃未満の有機溶剤を多量に含有していると、ムラなく均一に塗布することが困難になり、表面平滑性に優れた塗膜が得られなくなることがある。
【0051】
上記有機溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系有機溶剤;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、δ-ブチロラクトン等のケトン系有機溶剤;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、蟻酸n-アミル等のエステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の含窒素系有機溶剤等を例示できる。これらは、単独で又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0052】
上記有機溶剤の中でも、溶解性、分散性、塗布性等の点で、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、蟻酸n-アミル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることがより好ましい。
【0053】
(ブラックマトリックス用顔料分散組成物の製造方法)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、黒色着色剤、顔料分散剤、顔料分散助剤、及び、バインダー樹脂を混合及び練肉することにより製造することができる。
【0054】
上記黒色着色剤、顔料分散剤、顔料分散助剤、及び、バインダー樹脂は、上述した材料を用いることができる。
【0055】
上記混合及び練肉をする方法としては、上述した各種成分を加え、混合及び練肉すればよく、上記練肉をする方法としては特に限定されず、例えば、ビーズミル、レディーミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を用い、公知の方法により混合及び練肉すればよい。
【0056】
(粘度)
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、粘度が12mPa・s以下であることが好ましく、11.5mPa・s以下であることがより好ましく、10.5mPa・s以下であることが更に好ましい。
上記粘度の下限としては、2.5mPa・sであることが好ましい。
粘度が上記範囲であることにより、形成するブラックマトリックスの線幅を好適に維持し、細線密着性をより好適に向上することができる。
【0057】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、ガラス瓶に採り、密栓して60℃で1週間保存した後の粘度変化率[(1週間保存後の粘度-保存前の粘度)/(保存前の粘度)]が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
上記粘度変化率が10%以下であれば、保存安定性に優れており、長期間保存したとしても劣化が生じにくい。
【0058】
なお、本明細書において、粘度とは、E型粘度計(東機産業株式会社製、R100型粘度計 型式RE100L)を用いて、25℃における粘度を意味する。
【0059】
<ブラックマトリックス用レジスト組成物>
本発明は、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物でもある。
【0060】
(ブラックマトリックス用顔料分散組成物)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、上述した本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を含有する。
上記ブラックマトリックス用顔料分散組成物の含有量としては、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全質量を基準として、30~80質量%であることが好ましく、40~75質量%であることがより好ましい。
【0061】
(光重合開始剤)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射されることにより、ラジカルやカチオンを発生することのできるものであれば特に限定されず、例えば、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)エタノン、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のベンゾフェノン系、チオキサントン系、アントラキノン系、トリアジン系等の光重合開始剤等が挙げられる。
上記光重合開始剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
上記光重合開始剤の含有量は、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全固形分に対する質量分率として、1~20質量%であることが好ましい。
【0063】
(光重合性化合物)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、光重合性化合物を含有することが好ましい。
上記光重合性化合物としては、上述したブラックマトリックス用顔料分散組成物において記載したものを適宜選択して用いることができる。
【0064】
上記光重合性化合物の含有量は、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全固形分に対する質量分率として、0.1~50質量%であることが好ましい。
【0065】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
上記アルカリ可溶性樹脂としては、上記黒色着色剤に対してバインダーとして作用し、かつ、ブラックマトリックスを製造する際の現像処理において用いられる現像液、特にアルカリ現像液に対して可溶性を有するものであることが好ましい。
【0066】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、ブロック共重合体としても良い。ブロック共重合体を採用することにより、他の共重合体よりも、顔料分散能が向上し、PGMEAやアルカリ現像液への溶解性を付与することができる。
そのブロック共重合体のなかでも、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体からなるブロックと、他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックを有するブロック共重合体が好ましい。
【0067】
上記ブロック共重合体としては、特に限定されるものではなく、従来から使用されているものが使用できる。なかでも、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なスチレン、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールモノアクリレート、グリセロールメタクリレート、N-フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、カルボエポキシジアクリレート等のモノマー、オリゴマー類の群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との共重合体を挙げることができる。
ただし、N-ビニルピロリドン、硫黄元素含有モノマーは使用しない方が望ましい。
上記ブロック共重合体としては、リビングラジカル重合、アニオン重合にて合成されたブロック樹脂を採用できる。
上記ブロック共重合体の一部のブロック部分は、ランダム共重合体から構成されていても良い。
【0068】
上記アルカリ可溶性樹脂として、アルカリ可溶性カルド樹脂を採用することもできる。
上記アルカリ可溶性カルド樹脂としては、フルオレンエポキシ(メタ)アクリル酸誘導体とジカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物との付加生成物であるフルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物等を挙げることができる。
また、本アルカリ可溶性樹脂は、光重合性の官能基を有していても良い。
【0069】
上記アルカリ可溶性樹脂の酸価としては、現像特性の観点から5~300mgKOH/gが好ましく、5~250mgKOH/gがより好ましく、10~200mgKOH/gがさらに好ましく、60~150mgKOH/gが特に好ましい。
なお、本明細書において、上記酸価は理論酸価であり、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とその含有量に基づいて算術的に求めた値である。
【0070】
上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、現像特性や有機溶剤への溶解性の観点から1,000~100,000が好ましく、3,000~50,000がより好ましく、5,000~30,000がさらに好ましい。
なお、本発明において、上記重量平均分子量は、GPCに基づいて得られるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本明細書において、上記重量平均分子量を測定する装置としては、Water2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてはPLgel 5μm MIXED-D(Agilent Technologies社製)を用いる。
【0071】
上記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、上記黒色着色剤100質量部に対して、1~200質量部が好ましく、10~150質量部がさらに好ましい。
この場合、上記アルカリ可溶性樹脂の含有量が1質量部未満では、現像特性が低下することがあり、上記アルカリ可溶性樹脂の含有量が200質量部を超えると、上記黒色着色剤の濃度が相対的に低下するため、薄膜として目的とする色濃度を達成することが困難となることがある。
【0072】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、1級、2級、及び3級の何れのアミノ基も含有せず、さらに4級アンモニウム基も含有しないことが好ましい。さらに、塩基性基を有しないことがより好ましい。
なお、本発明による効果を毀損しない範囲において、ブロック共重合体以外の構造を有するアルカリ可溶性樹脂を配合してもよい。
【0073】
(有機溶剤)
上記有機溶剤としては、上述したブラックマトリックス用顔料分散組成物で記載した有機溶剤を適宜選択して用いることができる。
【0074】
上記有機溶剤の含有量としては、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の全質量を基準として、1~40質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましい。
【0075】
(その他の添加剤)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物は、必要に応じて、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0076】
(ブラックマトリックス用レジスト組成物の製造方法)
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物の製造方法としては、例えば、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物を作製し、その後、残りの材料を加えて攪拌装置等を用いて攪拌混合することにより作製することができる。
上記攪拌、混合する方法としては特に限定されず、超音波分散機、高圧乳化機、ビーズミル、3本ロール、サンドミル、ニーダー等、公知の方法を用いることができる。
また、上記攪拌、混合後にフィルターで濾過を行ってもよい。
なお、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物を作製する際に、必要に応じて、本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物で記載した上記黒色着色剤、上記エポキシ樹脂、上記オキサジン化合物等を添加してもよい。
【0077】
<ブラックマトリックス>
本発明のブラックマトリックスは、本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物から形成される。
【0078】
本発明のブラックマトリックスの形成方法としては特に限定されず、例えば、透明基板上に本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物を塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、上記塗膜上にフォトマスクを置き、該フォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて光硬化等の方法によりブラックマトリックスを形成することができる。
【0079】
本発明のブラックマトリックス用レジスト組成物を塗布、乾燥、露光及び現像する方法等は、公知の方法を適宜選択することができる。
また、上記透明基板としては、ガラス基板、プラスチック基板等、公知の透明基板を適宜選択して用いることができる。
【0080】
上記塗膜の厚みとしては、乾燥後の膜厚として、0.2~10μmが好ましく、0.5~6μmがより好ましく、1~4μmがさらに好ましい。
上記厚みの範囲とすることにより、所定のパターンを好適に現像することができ、所定の光学濃度を好適に付与することができる。
【0081】
本発明のブラックマトリックスは、ブラックマトリックスを形成する際に現像時間を適切な範囲に維持することができる。
具体的には、本発明のブラックマトリックスは、下記方法により現像した際の現像時間が20秒~45秒の範囲である。
現像時間が20秒未満であると、硬化部が過剰に現像液に侵されてしまい、細線の密着不良を起こす原因となり、45秒を超えると未硬化部の溶解が不十分となり、ガラス基板上に現像残渣が発生する原因となることがある。
そのため現像時間が20秒~45秒の範囲であれば、適切な現像時間を維持することができたと判断することができる。
上記現像時間は、30秒~40秒の範囲であることが好ましい。
【0082】
上記現像時間を測定する方法は以下の通りである。
ブラックマトリックス用レジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(製品名:EAGLE XG、Corning社製)上に塗布し、100℃で3分間プレベークする。
次いで、1μm間隔のラインパターンを有するフォトマスク(1~20μm 1μm毎20種、30~100μm 10μm毎の線幅8種)を用いて、高圧水銀灯で露光(UV積算光量80mJ/cm2)する。
その後、露光後のガラス基板に対し、23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液、0.5kgf/cm2圧の条件にてシャワー現像を行い、3.0kgf/cm2圧にてスプレー水洗を行う。
シャワー現像の開始から、ガラス基板の中心部のブラックマトリクス組成物が完全に溶解するまでの時間を測定したものである。
【0083】
本発明のブラックマトリックスは、ブラックマトリックスを形成する際に線幅を適切な範囲に維持することができる。
具体的には、下記方法により測定した線幅は、16.5μm~21.0μmである。
このような線幅であれば、適切な範囲に維持できたと判断することができる。
上記方法により測定された線幅は、18.5μm以上であることが好ましく、19.0μm以上であることがより好ましく、19.5μm以上であることが更に好ましい。
また、21μm以下であることが好ましく、20.5μm以下であることがより好ましく、20.3μm以下であることが更に好ましい。
【0084】
上記線幅は、以下の方法により測定したものである。
上記現像時間を測定したガラス基板を230℃で30分ポストベークした後、上記ガラス基板上の20μmパターン線幅について、デジタルマイクロスコープ(製品名:VHX-500、キーエンス社製)により測定する。
【0085】
本発明のブラックマトリックスは、細線密着性に優れる。
具体的には、下記方法により測定した細線密着性が、15μm以下である。
このような細線密着性を有するものであれば、細線密着性に優れる判断することができる。
上記細線密着性は、14μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0086】
上記細線密着性は、以下の方法により測定したものである。
上記ブラックマトリックス用レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(製品名:EAGLE XG、Corning社製)上に塗布し、100℃で3分間プレベークする。
次いで、1μm間隔のラインパターンを有するフォトマスク(1~20μm 1μm毎20種、30~100μm 10μm毎の線幅8種)を用いて、高圧水銀灯で露光(UV積算光量80mJ/cm2)する。
23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液中、1kgf/cm2のシャワー現像にて現像パターンが現れ始める時間(ブレイクタイム)から現像を開始し、現像時間の30秒後になったところで現像を終了する。
現像終了後、1kgf/cm2圧のスプレー水洗を行う。上記ガラス基板上に残存する最小のラインパターンの幅(μm)を評価する。
【0087】
本発明のブラックマトリックスは、表面抵抗値に優れる。
具体的には、下記方法により測定した表面抵抗値が5.0E+11Ω以上であれば表面抵抗値に優れると評価することができる。
上記表面抵抗値は、1.0E+12Ω以上であることが好ましく、3.0E+12Ω以上μm以下であることがより好ましく、5.0E+12Ω以上であることが更に好ましい。
【0088】
上記表面抵抗値は、以下の方法により測定したものである。
ブラックマトリックス用レジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(製品名:EAGLE XG、Corning社製)上に塗布し、100℃で3分間プレベークする。
次いで、高圧水銀灯で露光(UV積算光量80mJ/cm2)し、更に230℃で180分間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジストパターン(ブラックマトリックス)を作製する。
その後、作製したブラックマトリックスの表面抵抗値を本体:微小電流計 R8340、オプション:シールドボックス R12702A(いずれもアドバンス社製)にて測定する。
【0089】
本発明のブラックマトリックスは、再溶解性に優れることが好ましい。
上記再溶解性は、下記のOD値の測定により評価し、OD値が0.5以下であれば再溶解性に優れると判断できる。
ブラックマトリックス用レジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(製品名:EAGLE XG、Corning社製)上に塗布し、100℃で3分間プレベークする。
次いで、ガラス基板上に製膜した未露光の塗膜をPGMEAへ2分間浸漬させる。浸漬させた部分を乾燥後、マクベス濃度計(TD-931、マクベス社製)でOD値を測定する。
上記OD値は0.3以下であることがより好ましい。
【0090】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物、ブラックマトリックス用レジスト組成物、及び、ブラックマトリックスは、上述した特性を有するため、画像表示装置やタッチパネル等のブラックマトリックスとして好適に用いることができる。
【実施例0091】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はその主旨と適用範囲を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、本実施例において、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0092】
以下の実施例、比較例で使用する各種材料は以下のとおりである。
<黒色着色剤>
NEROX3500(カーボンブラック、平均一次粒子径31nm、pH3.0、DBP吸油量43ml/100g、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製)
<顔料分散剤>
ソルスパース83500(固形分のアミン価25mgKOH/g、固形分40質量%、バレロラクトン骨格及びイソシアヌレート骨格含有、日本ルーブリゾール社製)
ソルスパース82500(固形分のアミン価26mgKOH/g、固形分50質量%、バレロラクトン骨格及びイソシアヌレート骨格含有、日本ルーブリゾール社製)
DISPERBYK-167(固形分のアミン価24mgKOH/g、固形分52質量%、バレロラクトン骨格非含有、カプロラクトン骨格及びイソシアヌレート骨格含有、ビックケミー社製)
DISPERBYK-2163(固形分のアミン価23mgKOH/g、固形分45質量%、バレロラクトン骨格非含有、イソシアヌレート骨格含有、ビックケミー社製)
DISPERBYK-161(固形分のアミン価36.7mgKOH/g、固形分30質量%、バレロラクトン骨格非含有、カプロラクトン骨格及びイソシアヌレート骨格含有、ビックケミー社製)
AFCONA-4067(固形分のアミン価27mgKOH/g、バレロラクトン骨格又はイソシアヌレート骨格非含有、ウレタン骨格含有、固形分45質量%、BASF社製)
LPN21324(固形分のアミン価0mgKOH/g、固形分40質量%、バレロラクトン骨格又はイソシアヌレート骨格非含有、アクリル骨格含有、ビックケミー社製)
<顔料分散助剤>
ソルスパース5000S(銅フタロシアニンのスルホン化物の第4級アンモニウム塩、ルーブリゾール社製)
<バインダー樹脂>
ZCR-1569H(エポキシアクリレート樹脂、酸価100mgKOH/g、固形分70質量%、日本化薬社製)
<有機溶剤>
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
<光重合開始剤>
OXE02(製品名「イルガキュアOXE02」、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)エタノン、BASF社製)
<光重合性化合物>
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
<アルカリ可溶性樹脂>
WR-301(製品名「WR-301」、カルド樹脂、酸価100mgKOH/g、固形分45質量%、ADEKA社製)
【0093】
<ブラックマトリックス用顔料分散組成物>
各材料を表1の組成となるように混合し、ビーズミルで一昼夜混練してブラックマトリックス用顔料分散組成物を作製した。
【0094】
【0095】
<ブラックマトリックス用レジスト組成物>
高速撹拌機を用いて、上記ブラックマトリックス用顔料分散組成物と他の材料(光重合開始剤、光重合性化合物、アルカリ可溶性樹脂及び有機溶剤)とを表2の組成になるように均一に混合した。
その後、孔径3μmのフィルターで濾過し、実施例及び比較例のブラックマトリックス用レジスト組成物を作製した。
なお、表2において、光重合開始剤、光重合性化合物、アルカリ可溶性樹脂及び有機溶剤の各材料の右欄の数値が配合量を表す。
【0096】
<評価試験>
(粘度)
作製したブラックマトリックス用顔料分散組成物について、E型粘度計(東機産業株式会社製、R100型粘度計 型式RE100L)を用いて、25℃における粘度を測定した。その結果を表2に示した。
【0097】
(粘度安定性)
作製したブラックマトリックス用顔料分散組成物をガラス瓶に採り、密栓して60℃で1週間保存した。
上記保存の前後において、E型粘度計(東機産業株式会社製、R100型粘度計 型式RE100L)を用いて25℃における粘度を測定し、粘度変化率[(1週間保存後の粘度-保存前の粘度)/(保存前の粘度)]を求め、下記評価基準で評価した。その結果を表2に示した。
(評価基準)
○:粘度変化率が5%以下であった。
△:粘度変化率が5%を超えたが、10%以下であった。
×:粘度変化率が10%を超えた。
【0098】
(現像時間)
作製したブラックマトリックス用レジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(製品名:EAGLE XG、Corning社製)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。
次いで、1μm間隔のラインパターンを有するフォトマスク(1~20μm 1μm毎20種、30~100μm 10μm毎の線幅8種)を用いて、高圧水銀灯で露光(UV積算光量80mJ/cm2)した。
その後、露光後のガラス基板に対し、23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液、0.5kgf/cm2圧の条件にてシャワー現像を行い、3.0kgf/cm2圧にてスプレー水洗を行った。
シャワー現像の開始から、ガラス基板の中心部のブラックマトリクス組成物が完全に溶解するまでの時間を測定し、これを現像時間とした。その結果を表2に示した。
【0099】
(線幅)
上記現像時間を測定したガラス基板を230℃で30分ポストベークした後、上記ガラス基板上の20μmパターン線幅について、デジタルマイクロスコープ(製品名:VHX-500、キーエンス社製)により測定した。その結果を表2に示した。
【0100】
(細線密着性)
作製したブラックマトリックス用レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(製品名:EAGLE XG、Corning社製)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。
次いで、1μm間隔のラインパターンを有するフォトマスク(1~20μm 1μm毎20種、30~100μm 10μm毎の線幅8種)を用いて、高圧水銀灯で露光(UV積算光量80mJ/cm2)した。
その後、23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液、1kgf/cm2圧の条件でのシャワー現像にて、現像パターンが現れ始める時間(ブレイクタイム)から現像を開始し、現像時間の30秒後になったところで現像を終了した。
現像終了後、1kgf/cm2圧のスプレー水洗を行い、上記ガラス基板上に残存する最小のラインパターンの幅(μm)を評価した。その結果を表2に示した。
【0101】
(表面抵抗値)
作製したブラックマトリックス用レジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(製品名:EAGLE XG、Corning社製)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。
次いで、高圧水銀灯で露光(UV積算光量80mJ/cm2)し、更に230℃で180分間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジストパターン(ブラックマトリックス)を作製した。
その後、作製したブラックマトリックスの表面抵抗値を本体:微小電流計 R8340、オプション:シールドボックス R12702A(いずれもアドバンス社製)にて測定した。その結果を表2に示した。
【0102】
(再溶解性)
作製したブラックマトリックス用レジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(製品名:EAGLE XG、Corning社製)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。
次いで、ガラス基板上に製膜した未露光の塗膜をPGMEAへ2分間浸漬させた。浸漬させた部分を乾燥後、マクベス濃度計(TD-931、マクベス社製)でOD値を測定し、以下の評価基準で評価した。その結果を表2に示した。
(評価基準)
◎:0.3以下であった。
〇:0.3を超えたが、0.5以下であった。
△:0.5を超えたが、1.0以下であった。
×:1.0より大きかった。
【0103】
【0104】
黒色着色剤、顔料分散剤、顔料分散助剤、バインダー樹脂、及び、有機溶剤を含有するブラックマトリックス用顔料分散組成物において、上記顔料分散剤が特定の骨格を有する実施例では、ブラックマトリックスを形成する際に現像時間及び線幅を適切な範囲に維持することができ、かつ、細線密着性及び表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができることが確認された。
一方で、特定の骨格を有する顔料分散剤を用いていない比較例では、ブラックマトリックスを形成する際に現像時間及び線幅、或いは、ブラックマトリックスの細線密着性及び表面抵抗値の何れかの評価に劣るものであった。
なお、比較例3のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、分散しなかったので「分散不良」と記載し、ブラックマトリックスにおける評価試験を行わなかった。
また、比較例7、9では、線幅評価に用いる20μmの細線が基板上に残らなかったため、線幅の評価を行うことができなかった。
本発明によれば、ブラックマトリックスを形成する際に現像時間及び線幅を適切な範囲に維持することができ、かつ、細線密着性及び表面抵抗値に優れるブラックマトリックスを形成することができるブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することができる。