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特開2023-130923電気掃除機および電気掃除機用消音ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130923
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】電気掃除機および電気掃除機用消音ユニット
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/00 20060101AFI20230913BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A47L9/00 103
A47L9/28 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035514
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河田 宏史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 政志
(72)【発明者】
【氏名】森田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】峰岸 裕一
(72)【発明者】
【氏名】上甲 康之
【テーマコード(参考)】
3B006
3B057
【Fターム(参考)】
3B006LA04
3B006LA06
3B006LA15
3B057DE00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】会話の容易性など利用環境を改善できる電気掃除機を提供する。
【解決手段】塵埃を含む吸入空気を吸入することで掃除を行う電気掃除機において、掃除機本体1と、吸引力に応じて、吸入空気を吸入する吸口と、吸口と接続し、吸入された吸入空気が流れる延長管と、掃除機本体に収納され、吸引力を発生させる電動送風機40と、掃除機本体に収納され、電動送風機40を駆動するモータと、掃除機本体に取り付けられモータに電力を供給する蓄電池30と、掃除機本体に設けられ、延長管と接続して吸入空気が流入する接続口と、接続口から流入された吸入空気が流れる場合に、電気掃除機の騒音を低減する消音部60と、接続口、電動送風機40、蓄電池30および消音部60を、吸入空気の流通方向における上流側から順に配置することで、電気掃除機が発生する騒音の音声了解度の改善を可能とする電気掃除機。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃を含む吸入空気を吸入することで掃除を行う電気掃除機において、
掃除機本体と、
吸引力に応じて、前記吸入空気を吸入する吸口と、
前記吸口と接続し、吸入された前記吸入空気が流れる延長管と、
前記掃除機本体に収納され、前記吸引力を発生させる電動送風機と、
前記掃除機本体に収納され前記電動送風機を駆動するモータと、
前記掃除機本体に取り付けられ前記モータに電力を供給する蓄電池と、
前記掃除機本体に設けられ、前記延長管と接続して前記吸入空気が流入する接続口と、
前記接続口から流入された前記吸入空気が流れる場合に、前記電気掃除機の騒音を低減する消音部と、
前記接続口、前記電動送風機、前記蓄電池および消音部を、前記吸入空気の流通方向における上流側から順に配置することで、前記電気掃除機が発生する騒音の音声了解度の改善を可能とする電気掃除機。
【請求項2】
請求項1に記載の電気掃除機において、
前記消音部は、中空構造であって、流路断面積が異なる複数の部位で構成される電気掃除機。
【請求項3】
請求項2に記載の電気掃除機において、
前記複数の部位は、前記吸入空気が流入する接続口を有する接続部と、前記接続部よりも前記吸入空気の流通方向の下流側の本体部と、前記本体部よりも前記吸入空気の流通方向の下流側の排出部であって、
前記接続部の流路断面積と前記本体部の流路断面積が互いに異なる電気掃除機。
【請求項4】
請求項3に記載の電気掃除機において、
前記複数の部位における断面積比が16倍以上である電気掃除機。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の電気掃除機において、
前記掃除機本体の内部に、シール部材を設けた電気掃除機。
【請求項6】
請求項5に記載の電気掃除機において、
さらに、前記音声了解度に関するSII情報を出力する表示画面を有する電気掃除機。
【請求項7】
請求項6に記載の電気掃除機において、
前記表示画面が、前記SII情報として、前記音声了解度自体を出力する電気掃除機。
【請求項8】
塵埃を含む吸入空気を吸入することで掃除を行う電気掃除機に着脱可能な電気掃除機用消音ユニットにおいて、
前記電気掃除機と接続し、前記吸入空気が流入する流入口と、前記流入口から流入された前記吸入空気が流通する本体部を有し、前記電気掃除機の騒音を低減し、
前記電気掃除機は、掃除機本体と、吸引力に応じて、前記吸入空気を吸入する吸口と、前記吸口と接続し、吸入された前記吸入空気が流れる延長管と、前記掃除機本体に収納され、前記吸引力を発生させる電動送風機と、前記掃除機本体に収納され前記電動送風機を駆動するモータと、前記掃除機本体に取り付けられ前記モータに電力を供給する蓄電池と、前記掃除機本体に設けられ、前記延長管と接続して前記吸入空気が流入する接続口を有し、前記接続口、前記電動送風機および前記蓄電池が、前記吸入空気の流通方向における上流側から順に配置され、
当該電気掃除機用消音ユニットは、前記蓄電池に対して前記流通方向における下流側に設置され、前記電気掃除機が発生する騒音の音声了解度の改善を可能とする電気掃除機用消音ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の電気掃除機用消音ユニットにおいて、
当該電気掃除機用消音ユニットは、中空構造であって、流路断面積が異なる複数の部位で構成される電気掃除機用消音ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の電気掃除機用消音ユニットにおいて、
前記複数の部位は、前記吸入空気が流入する接続口を有する接続部と、前記接続部よりも前記吸入空気の流通方向の下流側の本体部と、前記本体部よりも前記吸入空気の流通方向の下流側の排出部であって、
前記接続部の流路断面積と前記本体部の流路断面積が互いに異なる電気掃除機用消音ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の電気掃除機用消音ユニットにおいて、
前記複数の部位における断面積比が16倍以上である電気掃除機用消音ユニット。
【請求項12】
請求項8乃至11の何れかに記載の電気掃除機用消音ユニットにおいて、
前記掃除機本体の内部にシール部材が設けられている電気掃除機用消音ユニット。
【請求項13】
請求項12に記載の電気掃除機用消音ユニットにおいて、
前記電気掃除機は、さらに、前記音声了解度に関するSII情報を出力する表示画面を有する電気掃除機用消音ユニット。
【請求項14】
請求項13に記載の電気掃除機用消音ユニットにおいて、
前記表示画面が、前記SII情報として、前記音声了解度自体を出力する電気掃除機用消音ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機に関し、その中でも特に、電気掃除機の騒音を低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機は、塵埃を含む空気を吸入(吸気)することで床面等の掃除を行っている。この吸入に伴い、電気掃除機は騒音を発生する。これは、電動送風機やモータの稼働音、電動送風機やモータの振動、音が電気掃除機本体に伝わり発する音や吸気や排気における気流の衝突などで発生した乱流起因の気流音などに起因する。このような騒音は、利用者が不快に感じたり会話が困難であったりする他、近隣住民への迷惑をかけることになる。そこで、従来から電気掃除機の騒音に対する対策がなされてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、電動機とファンケースを覆い排気口を有する防音ケースとを備え、防音ケースはその内部に電動機からの排気流を排気口まで導く内面に吸音材を設置した排気通路を有し、排気通路角部を設け、この角部の気流衝突面との間に空気層を形成した状態で吸音材を配置した電動送風機について開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、電動送風機から出た空気を外部に外出する消音パイプを有している掃除機が開示されている。この消音パイプは排出口までの距離が長く、内部に消音材が設けられているため、高速排気流はその消音パイプのマフラー効果によって徐々に減速され、排気の騒音も低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-100840号公報
【特許文献2】特開2002-34861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、生活を営む際には、会話が行われる。騒音が発生すると会話が困難になる。そこで、会話の容易性を維持、向上させるには、騒音の音声了解度(SII:Speech Intelligibility Index, 以降SII)を考慮する必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1および2では、ある一定の周波数帯の音を抑制することによって、SIIについては考慮されていない。このため、特許文献1や2では、電気掃除機の運転音自体の音は下がっていても、利用者にとって会話が聞き取りにくいような音には変わりがなかった。また、特許文献2においては、モータ起因の騒音と気流音の2つの音の対策として2つの消音構造を有しており、家電本体が大型化してしまう可能性がある。さらに、特許文献2においては、キャミスター型であり、消音パイプの長さ方向が十分に長すぎるため、モータ音などの消音に効く周波数帯域外になってしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本発明では、会話の容易性など利用環境を改善するために、電気掃除機の騒音の低減を図り、利用者の利便性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明では、掃除機本体の接続口、電動送風機、蓄電池を、吸入空気の流れる方向に配置する電気掃除機において、蓄電池の流れ方向の下流側に消音部ないし消音ユニットを設けることで、電気掃除機により生じる騒音の音声了解度(SII)を改善する。
【0010】
より具体的な本発明の一態様は、塵埃を含む吸入空気を吸入することで掃除を行う電気掃除機において、掃除機本体と、吸引力に応じて、前記吸入空気を吸入する吸口と、前記吸口と接続し、吸入された前記吸入空気が流れる延長管と、前記掃除機本体に収納され、前記吸引力を発生させる電動送風機と、前記掃除機本体に収納され前記電動送風機を駆動するモータと、前記掃除機本体に取り付けられ前記モータに電力を供給する蓄電池と、前記掃除機本体に設けられ、前記延長管と接続して前記吸入空気が流入する接続口と、前記接続口から流入された前記吸入空気が流れる場合に、前記電気掃除機の騒音を低減する消音部と、前記接続口、前記電動送風機、前記蓄電池および消音部を、前記吸入空気の流通方向における上流側から順に配置することで、前記電気掃除機が発生する騒音の音声了解度(SII)の改善を可能とする電気掃除機である。
【0011】
また、本発明の他の態様は、塵埃を含む吸入空気を吸入することで掃除を行う電気掃除機に着脱可能な電気掃除機用消音ユニットにおいて、前記電気掃除機と接続し、前記吸入空気が流入する流入口と、前記流入口から流入された前記吸入空気が流通する本体部を有し、前記電気掃除機の騒音を低減し、前記電気掃除機は、掃除機本体と、前記吸引力に応じて、前記吸入空気を吸入する吸口と、前記吸口と接続し、吸入された前記吸入空気が流れる延長管と、前記掃除機本体に収納され吸引力を発生させる電動送風機と、前記掃除機本体に収納され前記電動送風機を駆動するモータと、前記掃除機本体に取り付けられ前記モータに電力を供給する蓄電池と、前記掃除機本体に設けられ、前記延長管と接続して前記吸入空気が流入する接続口を有し、前記接続口、前記電動送風機および前記蓄電池が、前記吸入空気の流通方向における上流側から順に配置され、当該電気掃除機用消音ユニットは、前記蓄電池に対して前記流通方向における下流側に設置され、前記電気掃除機が発生する騒音の音声了解度(SII)の改善を可能とする電気掃除機用消音ユニットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電気掃除機の利用環境を改善可能である騒音低減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の対象となる電気掃除機をスティック状態で充電台に収納した状態を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態の対象となる掃除機本体の斜視図である。
図3】本発明の一実施形態の対象となる掃除機本体の側面断面図である。
図4】本発明の一実施形態における消音機能の原理を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態における消音部/ユニットの消音効果を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態におけるL2=70mmの場合における周波数と挿入損失ILの関係を示すグラフである。
図7】本発明の一実施形態におけるL2=18mmの場合における周波数と挿入損失ILの関係を示すグラフである。
図8】実施例1における掃除機本体の断面図である。
図9】実施例2における掃除機本体の断面図である。
図10】実施例3における掃除機本体の側面断面図である。
図11】実施例5における掃除システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態では、電気掃除機を対象とし、これに消音機能を設けることで、SIIを改善ないし向上させる。この消音機能を実現するために、本実施形態では、電気掃除機に設けた消音部もしくは電気掃除機と着脱可能な掃除機用消音ユニット(以下、消音部/ユニットと記載)が用いられる。
【0015】
図1は、実施形態の対象となる電気掃除機100をスティック状態で充電台に収納した状態を示す斜視図である。そして、電気掃除機100は、掃除機本体1、掃除機ヘッド10、ハンドル部12および延長管20を備えて構成されている。また、電気掃除機100は、ハンディ状態、スティック状態など各種の使用状態に変更して掃除を行うことができるものである。電気掃除機100が収納される充電台70は、電気掃除機100をスティック状態で収納するものであり、ベース部材71と3つのスタンド部材72とホルダ部材73を備えて構成されている。
【0016】
また、電気掃除機100において、掃除機本体1は、ハンドル部12とスイッチ部12aを前方に向けるようにホルダ部材73の上に設置されている。また、充電台70において、ホルダ部材73には、電気掃除機100に装着されている蓄電池30を充電するためのACアダプタの出力プラグが取り付けられるようになっている。そして、電気掃除機100を充電台70にセットすると、出力プラグが電気掃除機100の入力ジャックに接続されて、充電できるようになっている。
【0017】
更に、ホルダ部材73は延長管20が有する係合部と係合する保持部(凹部)を有する。これによって、図1に示すように、延長管20をコンパクトに収納することができる。このようにすることで充電台70自体には電気部品を設けることなく構成することができコストを抑える事や生産性の向上を図ることができる。また、スタンド部材72の有無で電気的な接続の変化が無いため、製品の信頼性を確保することができる。
【0018】
また、電気掃除機100の稼働の際、つまり、掃除を実行する際には、塵埃を含む空気が掃除機ヘッド10の吸口から延長管20を経由して掃除機本体1に流通する。そして、掃除機本体1に設けられたダストケース11に塵埃が集積される。このために、掃除機本体1には、電動送風機40などの吸引機構が設けられている。本実施形態では、この掃除機本体1に対して消音機能が設けられる。以下、掃除機本体1について説明する。
【0019】
図2は、本実施形態の対象となる掃除機本体1の斜視図である。図2において、掃除機本体1は、ダストケース11、ハンドル部12、本体部13および格納部14を有する。ここで、本体部13は、延長管20と接続し、吸入された空気を流入する接続口13aを有する。また、ダストケース11は、空気の流通経路上に設けられ、接続口13aを経由して吸入された空気に含まれる塵埃を集積する。また、ハンドル部12は、利用者により把持され、電気掃除機100を操作するためのスイッチ部12aを有する。さらに、格納部14は、空気に対する吸引力を発生するための各種機構と排気口15を有する。格納部14の各種機構は、具体的には、電源となる蓄電池30および蓄電池30から電力が供給されるモータとフィンで構成される電動送風機40(図示なし)を有する。
【0020】
ここで、掃除機本体1の空気の流通経路および内部構造について説明する。図3は、本実施形態の対象となる掃除機本体1の側面断面図である。ここで、側面とは、図2の左右方向を意味する。図3において、接続口13aを経由して吸入された吸入空気が、矢印に示す方向に流れる。つまり、吸入空気が接続口13a-ダストケース11-格納部14を流れ、排気口15から排気される。そして、格納部14においては、吸入空気が、フィルタ50を経由して、電動送風機40を介して流通する。そして排気口15より排気される。このため、接続口13a、電動送風機40および蓄電池30が、吸入空気の流通方向における上流側から順に配置されている。
【0021】
そして、本実施形態では、掃除機本体1の吸入空気の流通方向の下流方向に、消音部/ユニットを設けることで、SIIを改善させる。つまり、図3における右側に消音部/ユニットが設けられる。また、消音部/ユニットは、電動送風機40よりも吸入空気の流通経路において下流側、排気側に設けることにもなる。
【0022】
ここで、SIIについて説明する。一般に、騒音の大きさはA特性音圧レベル(dBA)で評価されている。しかし、電気掃除機の運転音はそれ自体の大きさを評価するだけでなく、騒音環境下での会話などの音声に、その騒音がどのように影響するかを評価する必要がある。そこで、それらを考慮可能なSIIによって騒音の大きさを評価することが求められる。SIIは0から1の値をとり、その数値が高いほど音声の了解度が高いとされる。また、SIIが0.45以下はPoor、0.75以上はGoodとされる。
【0023】
次に、消音部/ユニットの原理や構造について説明する。図4は、本実施形態における消音機能の原理を説明するための図である。図4において、中空構造における吸入空気の流通方向が図面上左右方向である。このため、吸入空気の流通方向において、流路断面積が異なっている(S1とS2)。図4に示すように、一般的に、断面積変化が生じる箇所では、入射音に対して、透過音の他、反射音が生じることで、騒音における減衰が起きる。断面積比m=S2/S1の値が大きくなるほど、音の減衰効果も大きくなる。つまり、消音効果も大きくなる。なお、この断面積比mは、消音部/ユニットにおけるS1として最小断面積を、S2として最大断面積を用いることが望ましい。但し、各部位の平均断面積など代表値を用いてもよい。
【0024】
本実施形態では、この原理を利用した構造を有する消音部/ユニットを用いる。図5は、本実施形態における消音部/ユニットの消音効果を説明する図である。このうち、図5(a)は、消音部/ユニットを用いない場合の騒音計測を模式的に示す図である。つまり、図5(a)においては、音源であるスピーカ200から直接音(騒音)が伝わるようにマイク300が設置されている。また、図5(b)は、消音部/ユニットの模式的な構造およびこれを用いた場合の騒音計測を模式的に示す図である。つまり、図5(b)においては、スピーカ200から、消音部60を経由して音(騒音)が伝わるようにマイク300が設置されている。
【0025】
ここで、消音部60は、中空構造を有し、吸入空気が流入する接続口を有する接続部60-1、これより下流側の流路断面積が比較的大きな本体部60-2およびさらに下流側の吸入空気を排出する排出口を有する排出部60-3を有する。つまり、消音部60は、中空構造で、流路断面積が異なる複数の部位で構成される。本実施形態では、接続部60-1と排出部60-3の断面積をS1、S3と異なる値としたが、同じ値としてもよい。つまり、接続部60-1の断面積と本体部60-2の断面積を異なる値とすればよい。
【0026】
また、接続部60-1と排出部60-3の少なくとも一方を省略してもよい。特に、双方を省略した場合、掃除機本体1に接続部60-1および/または排出部60-3に該当する構成を設けることが望ましい。特に、消音部/ユニットとして、掃除機本体1と着脱可能な消音ユニットを用いた場合、これを本体部60-2単独で構成できる。なお、消音ユニットは、基本的には消音部60と同様の構造を有するが、掃除機本体1と着脱するための着脱機構を有することが望ましい。断面積比mはS2/S1であるが、S2/S3とてもよい。
【0027】
本実施形態における減衰効果(消音効果)は、図5(a)(b)のように消音部/ユニットの有無での騒音の大きさを測定することで評価できる。図5(a)に示すように消音部/ユニットがないの場合の音圧をLA0、図5(b)に示すように消音部/ユニットがある場合の音圧をLA1とすると、消音構造の効果を表す挿入損失ILはLA0-LA1で表せる。ここで、本体部60-2の流路長さL2を変化させることで、挿入損失が大きくなる周波数が変化する。
【0028】
ここで、この変化について説明する。図6は、L2=70mmの場合における周波数と挿入損失ILの関係を示すグラフである。また、図7は、L2=18mmの場合における周波数と挿入損失ILの関係を示すグラフである。例えば、図6では1200Hz程度で挿入損失ILがピークを示すことに対し、図7では1500Hz程度で挿入損失ILがピークを示している。
【0029】
以上のように、本体部60-2の流路長さL2を変化させることで、所定の周波数の音圧を下げることができる。そのため、一般的に会話の明瞭性にも影響を及ぼす周波数帯域でもある1000Hz~5000Hzの音を抑制するように流路長さL2を設定する。具体的にはL2は100mm以内の間にする必要がある。また、減衰効果によりSIIを改善させるため、消音部/ユニット(部位ごとの比)における断面積比mは16倍以上にすることが望ましい。このことで、SIIをpoorから脱出させることが可能になる。
【0030】
以上で、本実施形態の説明を終わり、以下、本実施形態のより具体的な態様である各実施例について説明する。
【実施例0031】
図8は、実施例1における掃除機本体1の断面図である。このうち、図8(a)は、実施例1における掃除機本体1の側面の一部断面図であり、図8(b)は、実施例1における掃除機本体1のA-A断面図である。
【0032】
図8(a)は、図3に示す掃除機本体に対して、消音部60が追加されている。消音部60の構造は、図5(b)に示すように、接続部60-1、本体部60-2および排出部60-3を有する。そして、消音部60は、掃除機本体1の排気口15を入り口として、蓄電池30の後方、つまり、吸入空気の流通経路における下流側に設けられている。また、ダストケース11の後方にはフィルタ50が設けられている。
【0033】
なお、本実施例では、掃除機本体1の排気口15と入口としているが、本実施例はこれに限らず、消音部60の排出口を掃除機本体1の排気口15としてもよい。このように消音部60を配置することで、電気掃除機100ないし掃除機本体1の幅方向への拡大を抑えつつ、運転音を抑制し、SIIを改善させることができる。また、本実施例では、消音部60を掃除機本体1のケース体の外側に設けたが、その内部に設けてもよいし、一部がケース体の外側に設けてもよい。さらに消音部60を掃除機本体1と一体化して構成してもよい。
【0034】
また、図8(b)において、掃除機本体1の排気口15は、ケース体外側に向けられており(図中下方矢印)、接続部60-1の接続口もケース体に向けられることになる。そして、これに接続するように、本体部60-2が設けられている。但し、掃除機本体1の排気口15は後方に向けて設けてもよい。この場合、接続部60-1は空気の流通方向の下流側に向けられることになる。これらの構成は、後述の実施例2や3でも同様である。なお、接続部60-1や排出部60-3の記載は省略した。これは後述する図9(b)でも同様である。
【0035】
さらに、本実施例では、掃除機本体1のケース体の部品間の隙間を埋め、掃除機本体1の気密性を向上させている。以下、その内容を説明する。掃除機本体1のケース体は複数部品から構成されており、多数の隙間を有している。このため、それらの隙間から運転音などの騒音が漏れてしまう。これらの騒音の漏れを低減ないし防止のために、隙間を塞ぎ、掃除機本体1の気密性を確保する構成とすることが望ましい。このため、本実施例では、シール部材を、モータや蓄電池30等の掃除機本体1内の隙間にはめ込むことが望ましい。あるいは部品数を極力少なくして製作することが望ましい。
【0036】
騒音のさらなる低下のために、消音部60内に吸音材を組み込んでもよい。ただし、吸音材は繊維タイプあるいは連続気泡タイプで空気が侵入できるタイプである必要がある。吸音材によって吸入空気が消音部60の端に衝突することを防止でき、整流の効果が期待できる。繊維タイプあるいは連続気泡タイプであれば、排気口15から侵入する吸入空気は圧損を起こすことなく、吸引性能への影響も抑止できる。
【0037】
以上で、本実施例の説明を終わるが、上述のように消音部60は、着脱可能な消音ユニットに置換可能である。このことは後述する各実施例でも同様である。
【実施例0038】
実施例2は、消音部60を、掃除機本体1のケース体全体を覆うように設けた事例である。図9は、実施例2における掃除機本体1の断面図である。このうち、図9(a)は、実施例1における掃除機本体1の側面の一部断面図であり、図9(b)は、実施例2における掃除機本体1のB-B断面図である。この構成において、実施例1との相違は、ケース体を外側から覆うようにして排気口15から蓄電池30(図示なし)後方付近に消音部60(特に、本体部60-2)を設けている点である。このような構成を採用することで、掃除機本体1の前後方向を従来よりも極力拡大することなく、本体部60-2の流路断面積を設けることができる。以上で、実施例2の説明を終わる。
【実施例0039】
次に、実施例3は、排出部60-3の形状を変更した事例である。図10は、実施例3における掃除機本体1の側面の一部断面図である。
実施例1および2では、排出部60-3の排出方向は、図中右向き(吸入空気の流通方向)である。この場合、電気掃除機100の利用者に排出される排気が直接当たる恐れがある。そこで、実施例3では、排出部60-3を屈折させている。なお、この屈折方向やその角度は、図示した方向に限定されず、様々な方向、角度に設定できる。また、蛇腹や排出部60-3に回転機能を設ける等により、フレキシブルに屈折方向や角度を変更できるように構成してもよい。実施例3によれば、利用者が掃除を行う際に、電気掃除機100の排気を避けて掃除することが可能になる。なお、本実施例では、接続部60-1や本体部60-2を実施例2の構造と同様なものとしたが、実施例1のそれらを用いてもよい。以上で、実施例3の説明を終わる。
【実施例0040】
実施例1~3では、消音部60を用いて消音しているが、実施例4ではこれ以外の消音を実現する。このために、実施例4では、掃除機ヘッド10の運転音を抑制する。ここで、本実施例の電気掃除機100における掃除機ヘッド10は、回転清掃体と、回転清掃体を回転駆動する回転モータを有する。さらに、掃除機ヘッド10は、回転モータの回転力を回転清掃体に伝達するベルトと、ケーシングも有する。
【0041】
ここで、電気掃除機100を用いた床面の清掃の際、回転清掃体が回転することによって、回転清掃体と床面やケーシングが擦れる音やベルトの回転清掃体や回転モータとの接触による音、ベルト自体の振動音など、多くの騒音が発生する。
【0042】
そこで、本実施例では、標準運転等での流量が所定量より少ない(つまり、流速が所定速度以下)場合に、掃除機ヘッド10の回転清掃体を回転させない構成としている。本構成によって、掃除機ヘッド10からの騒音を抑制することができ、掃除機運転の際におけるS11を改善することができる。なお、実施例の構成は、上述の各実施例に適用できる。つまり、掃除機ヘッド10の運転抑制と消音部60を併用してもよいし、一方のみを用いてもよい。
【実施例0043】
実施例5は、電気掃除機100におけるSIIの見える化を行う事例である。実施例5では、SIIに関するSII情報が出力される。このSII情報としては、SIIそのものの他、指標(goodやpoor)や会話の了解性の判定、運転音レベルなどといった関連情報が含まれる。また、SII情報の出力先は、電気掃除機100のスイッチ部12aの有する表示画面の他、利用者の利用者端末400が想定される。以下、利用者端末400が出力先となる例について説明する。
【0044】
現在、電気掃除機100を始めとする家電機器については、スマートフォンで代表される利用者端末400との連携することがなされている。いわゆるスマート家電がそれである。以下、電気掃除機100がスマート家電を例として説明する。
【0045】
図11は、実施例5における掃除システムのシステム構成図である。図11において、電気掃除機100は、通信機能を有し、利用者端末400の他、サーバ装置500と通信可能である。また、利用者端末400と電気掃除機100は、ルータ600やネットワーク700を介して通信してもよいし、近距離無線通信機能などを利用して接続してもよい。この通信により、利用者端末400は、電気掃除機100に対して、制御指示を送信することが可能となる。また、利用者端末400は、ネットワーク700を介して、サーバ装置500と接続される。
【0046】
以下、電気掃除機100を除く図11に示す各装置の概要について説明する。図11において、利用者端末400は、利用者により操作され、スマートフォン、タブレット、PC(Personal Computer)といった各種コンピュータで実現できる。そして、利用者端末400は、通信部401、SII判定部402、マイク403、入力部404、出力部405および記憶部606を有する。なお、SII判定部402は、同様の機能をサーバ装置500に設ければ、省略可能である。さらに、利用者端末400は、電気掃除機100の操作を行うための制御部を設けてもよい。なお、SII判定部402や制御部は、いわゆるアプリ(コンピュータプログラム)で実現してもよい。
【0047】
また、利用者の操作等の所定条件に応じて、利用者端末400のマイク403が取得した電気掃除機100の騒音の音データを取得する。次に、SII判定部402が、取得した音データからSIIを特定する。そして、SII判定部402が、このSIIに応じたSII情報を、出力部405に出力する。なお、SII判定部402は、SIIが所定値以上ないし未満など条件を満たした場合に出力を行ってもよい。
【0048】
さらに、SIIの特定は、サーバ装置500が実行してもよい。この場合、利用者端末400の通信部401が、マイク403で取得した音データを、サーバ装置500に送信する。次に、サーバ装置500の通信部501が、送信された音データを受信する。そして、SII判定部502が、音データを用いてSIIを特定し、これに基づいてSIIに関する情報であるSII情報を特定する。また、SII判定部502は、このSII情報を、通信部501を介して利用者端末400に送信する。この結果、利用者端末400の通信部401がこれを受信し、出力部405においてSII情報を出力する。また、SII判定部502は、特定されたSII情報504を記憶装置503に格納することが望ましい。
【0049】
なお、上述のマイク403やSII判定部402やSII判定部502の機能を、電気掃除機100に設けて、これらでSII情報を特定してもよい。この場合、電気掃除機100に設けられたMPU(Micro-Processing Unit)で実現可能な制御部でこの特定を行う。また、電気掃除機100でSII情報を特定した場合の他、利用者端末400やサーバ装置500を用いた場合においても、SII情報を電気掃除機100で出力してもよい。この場合、上述の表示画面がSII情報を出力することが望ましい。また、電気掃除機100に設けられたマイクで取得した音データを利用者端末400に送信し、利用者端末400ないしサーバ装置500のいずれかでSII情報を特定してもよい。また、SII情報は、利用者端末400と電気掃除機100の双方で出力されてもよい。さらに、SII情報はリアルタイムで特定され、その変動に合わせて特定、出力してもよいし、所定タイミングで特定、出力されてもよい。
【0050】
なお、本実施例の消音部60は、上述の各実施例の構成を用いることができる。本実施例の構成によって、利用者は、運転音レベルを客観的な指標によって認知可能となり、電気掃除機の使用時間帯や使用環境に合わせた運転音レベルの運転モードを選択することが可能となる。
【0051】
また、具体的には、SIIを用いて運転音レベルが表示される構成となっている。ここで、騒音がある中での会話やテレビなどの音声の通りやすさを示した音声了解度によって、各運転モードにおける運転音が評価・表示される。このため、利用者は運転音レベルを具体的に想像しやすくなり、運転モードを使用時間や使用環境などに応じて選択しやすく、利用者における利便性向上につながる。また、出力される運転音レベルは、ユーザが認知しやすい指標であればこれに限られない。さらに、コンテンツ等にSIIを出力する際には、音声了解度の測定条件を併記してもよい。これによって、ユーザは、具体的な測定環境を認識でき、運転音レベルを想像しやすくなる。
【0052】
なお、SII情報といったコンテンツについては、電気掃除機100と供される取扱説明書や製品カタログ、POPなどに製品使用の際の各運転モードでの標準的な運転音レベルとして表示されてもよい。
【0053】
以上で、本発明の各実施例の説明を終わる。なお、以上の実施形態や各実施例では、対象となる電気掃除機100は、いわゆるスティック型の形状であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、ハンディ型、ロボット型等その形状は問わない。また、さらに、本発明は、電気掃除機以外の吸引機能を有するふとん乾燥機などにも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
100…電気掃除機、1…掃除機本体、10…掃除機ヘッド、11…ダストケース、12…ハンドル部、13…本体部、14…格納部、15…排気口、20…延長管、30…蓄電池、40…電動送風機、50…フィルタ、60…消音部、60-1…接続部、60-2…本体部、60-3…排出部、70…充電台、200…スピーカ、300…マイク、400…利用者端末、500…サーバ装置、600…ルータ、700…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11