IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-加熱調理器 図1
  • 特開-加熱調理器 図2
  • 特開-加熱調理器 図3
  • 特開-加熱調理器 図4
  • 特開-加熱調理器 図5
  • 特開-加熱調理器 図6
  • 特開-加熱調理器 図7
  • 特開-加熱調理器 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130965
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
A47J27/00 109P
A47J27/00 109B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035583
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】平川 功
(72)【発明者】
【氏名】井岡 葵
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA36
4B055CD31
4B055GA11
4B055GC34
4B055GC36
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】予約調理において、予約時刻または予約時間の変更を容易に行う。
【解決手段】加熱調理器(101)は、予約調理実行時に、食材を調理する調理工程、調理完了した料理を所定の温度で保温する適温保温工程、保温された料理を再加熱する再加熱工程と、を順に実行する際に、調理工程における食材の加熱調理完了後、且つ、再加熱工程よりも前に、食材の調理が完了している旨を報知する報知部(50)を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収容する容器と、当該容器を加熱する加熱部と、当該加熱部による加熱を制御する加熱制御部と、を備え、
予約調理が可能な加熱調理器であって、
前記予約調理は、食材を調理する調理工程と、前記調理工程によって調理完了した料理を所定の温度で保温する保温工程と、前記保温工程によって保温された料理を再加熱する再加熱工程とを順に実行し、
前記予約調理実行時に、前記調理工程における食材の加熱調理完了後、且つ、前記再加熱工程よりも前に、食材の調理が完了している旨を報知する報知部を備えている、加熱調理器。
【請求項2】
前記報知部は、
前記保温工程よりも前に、食材の調理が完了している旨を報知する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記報知部は、
前記食材の調理が完了している旨を複数回報知する、請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記報知部は、
前記食材の調理完了の報知後、前記再加熱工程が終了したことを報知する、請求項1~3の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記報知部による前記調理完了の報知後、予約時刻または予約時間の変更を受付ける変更部をさらに備えている、請求項1~4の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記容器に蓋をする蓋体と、
前記蓋体の開閉を検知する検知部と、をさらに備え、
前記加熱制御部は、前記検知部によって前記蓋体の開閉を検知したら、実行中の予約調理のメニューに応じて、殺菌工程または再加熱工程を実行する、請求項1~5の何れか1項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内鍋に収容した食材を加熱調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
炊飯器などの加熱調理器には、予約時刻あるいは予約時間に調理が終了する予約調理が可能なものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-223705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、料理は、食材の調理が完了するだけでは食べ頃にならない。つまり、食材の調理完了後、再加熱等の仕上げ工程を実行することで食材に味を染み込ませて料理を食べ頃の状態にしている。従って、予約調理では、一般に、予約時刻または予約時間は料理が食べ頃になる時刻または時間に設定される。
【0005】
一方、予約調理では、上述したように、食材の調理が完了してから、再加熱工程を経て料理を食べ頃の状態にしているため、予約時刻または予約時間を早めることで、料理を食べ頃にする状態を早めることも可能である。
【0006】
しかしながら、通常調理(予約調理でない調理)または予約調理の何れであっても、調理メニューが同じであれば、食材の調理を完了するまでの所要時間は変わらないので、予約時刻または予約時間を早める変更は、食材の調理が完了してからでないと実行できない。このため、料理を食べ頃にする状態を早めるための予約時刻または予約時間の変更は、食材の調理が完了するまでの所要時間を予め把握しておく必要があり、簡単に行うことができなかった。
【0007】
本発明の一態様は、予約調理において、食材の調理が完了したことを報知することで、予約時刻または予約時間の変更を容易に行うことができる加熱調理器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱調理器は、食材を収容する容器と、当該容器を加熱する加熱部と、当該加熱部による加熱を制御する加熱制御部と、を備え、予約調理が可能な加熱調理器であって、前記予約調理は、食材を調理する調理工程と、前記調理工程によって調理完了した料理を所定の温度で保温する保温工程と、前記保温工程によって保温された料理を再加熱する再加熱工程とを順に実行し、前記予約調理実行時に、前記調理工程における食材の加熱調理完了後、且つ、前記再加熱工程よりも前に、食材の調理が完了している旨を報知する報知部を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、予約調理において、食材の調理が完了したことを報知することで、予約時刻または予約時間の変更を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る加熱調理器の蓋体を開けた状態の斜視図である。
図2図1に示す加熱調理器の蓋体を閉じた状態の斜視図である。
図3図1に示す加熱調理器の蓋体を開け、かつ、内蓋を外蓋から外した状態の斜視図である。
図4図1に示す加熱調理器から取り出した内鍋の上からの斜視図である。
図5図1に示す加熱調理器の制御ブロック図である。
図6図1に示す加熱調理器での予約調理における経過時間と温度との関係を示すグラフである。
図7】予約調理における調理完了後の保温工程から仕上げ工程に切り替るタイミグの一例を示す図である。
図8】予約モードにおける調理完了後の保温工程から仕上げ工程に切り替るタイミグの比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
(加熱調理器の概要)
図1は、本実施形態に係る加熱調理器101の内部の概略構成を示している。図2は、加熱調理器101の外観を示している。
【0013】
加熱調理器101は、図1に示すように、加熱調理器本体(本体部)1と、この加熱調理器本体1に開閉可能に取り付けられた蓋体2と、を備えている。
【0014】
(加熱調理器本体1)
加熱調理器本体1は、図1に示すように、調理対象となる被加熱物(野菜、肉、魚、調味料等の食材)を収容する内鍋(容器)3を収納する内鍋収納部11と、内鍋収納部11に内鍋3を収納したときに、上記内鍋3に設けられた把手部31を収納する把手収納部12とを含んでいる。
【0015】
さらに、加熱調理器本体1は、内鍋収納部11の上部外側には、後述の蓋体2の外蓋21に設けられた爪受部23と係合する係合爪13が設けられている。係合爪13が爪受部23と係合することで、蓋体2が加熱調理器本体1に係止される。係合爪13と爪受部23との係合は、図2に示す、外蓋21の表面に設けられた開放スイッチ24で解除することができる。
【0016】
内鍋収納部11は、内鍋3を収納し、当該内鍋3を加熱する。内鍋収納部11には、内鍋3を加熱する加熱部15が、内鍋収納部11に内鍋3を収納したときに内鍋3に接触する位置に配置されている。加熱部15として、例えば、誘導加熱コイル等が挙げられるがこれに限定さない。ここで、内鍋収納部11に内鍋3を収納したときに内鍋3に接触する位置とは、例えば、内鍋収納部11における、内鍋3の底壁3a(図4参照)と対向する位置、あるいは、内鍋3の底壁3aおよび周壁3b(図4参照)と対向する位置を示す。
【0017】
また、内鍋収納部11における、内鍋3を収納したときに内鍋3に接触する位置には、当該内鍋3の温度を検知する温度センサ16、及び内鍋3に格納された食材の重さを計量する重量センサ18が設けられている。なお、温度センサ16の検知信号及び重量センサの検知信号は後述の制御部(加熱制御部)17に送信される。温度センサ16の検知信号及び重量センサ18の検知信号の利用については後述する。
【0018】
また、図示はしないが、加熱調理器本体1には、電源回路やインバータ回路等を含む電源部等が配置されている。
【0019】
(蓋体2)
蓋体2は、外蓋21と内蓋22とを備えている。外蓋21は、ヒンジバネ4を介して加熱調理器本体1に組み付けられている。これにより、蓋体2は、加熱調理器本体1に収納された内鍋3の開口を開閉するように、加熱調理器本体1に回動可能に支持されている。
【0020】
図3は、加熱調理器101の蓋体2を開けた状態の斜視図であり、さらに、外蓋21から内蓋22を外した状態を示している。外蓋21は、図3に示すように、内蓋22が嵌め込まれる凹みが設けられた底部211と、底部211を覆う上部212とから成る。底部211と上部212との間の空間(外蓋21内部)には、図示しない制御基板が設けられ、この制御基板には、加熱調理器101における各種動作の制御を実行する制御部17が配置されている。
【0021】
制御部17は、図示しない演算部や記憶部、並びに、その他の電子部品等で構成され、記憶部に記憶されたプログラムや入力データ等に基づいて加熱部15等を制御して一連の調理動作を実現する。制御部17の詳細について後述する。なお、本実施形態では、制御部17は外蓋21の内部に配置されているが、配置場所は限定されず、例えば、加熱調理器本体1に配置されていてもよい。
【0022】
外蓋21は、図2に示すように、加熱調理器本体1の把手収納部12までを覆うような形状であって、外蓋21の上部212に、蓋体2を開放するための開放スイッチ24、当該開放スイッチ24の近傍に形成された開口である窓部21a、複数の操作ボタン25aや表示ランプ等の表示部25b等が設けられた操作部25が設けられている。
【0023】
また、外蓋21には、操作部25を挟んで窓部21aと反対側に、蒸気口26bが形成された蒸気ダクトユニット26が取り外し可能に設置されている。蒸気ダクトユニット26は、内部にて内鍋3で生じた蒸気を結露させて内鍋3に戻すことで蒸気を循環させるとともに、蒸気の排出量をコントロールする。これにより、加熱調理器101は、食材から出る水分だけで調理を行うことができ、食材の栄養素や風味を活かした調理が可能となっている。蒸気ダクトユニット26は、後述する内蓋22の蒸気案内用開口(通気孔)40dに接続しており、内鍋3で生じた蒸気を取り込む。
【0024】
蒸気ダクトユニット26は、外蓋21から取り外し可能に設けられている。詳細は実施形態2で説明するが、さらに、蒸気ダクトユニット26は覆部と水溜部との上下2つに分解することができる。よって、蒸気ダクトユニット26内部の清掃が行い易すく、清潔に保つことができる。
【0025】
また、外蓋21には、図3に示すように、内鍋3内に発生する蒸気を検知する水蒸気センサ27が備えられている。この水蒸気センサ27の検知信号も、加熱調理器101の制御部17に送られる。水蒸気センサ27の検知信号の利用については後述する。
【0026】
なお、図2では、外蓋21の上部212において、操作部25を挟んで窓部21aと反対側に蒸気ダクトユニット26が設けられている場合を例に挙げて示しているが、これら操作部25、窓部21a、蒸気ダクトユニット26の配置は、一例であって、特に限定されるものではない。
【0027】
一方、内蓋22は、外蓋21の底部211における内鍋3との対向面側に、底部211に対して着脱可能に取り付けられた内蓋本体40を有している。内蓋本体40の外周縁部には、当該内蓋本体40の外周縁部を取り囲むように、外周縁部全周に亘って大径パッキン41が設けられている。大径パッキン41は、蓋体2を閉めたときに、内鍋3の開口上縁に設けられたフランジ部3cの上面に密着する。これにより、大径パッキン41は、内蓋22と内鍋3との隙間を塞ぎ、内鍋3からの食材の流出を防止するとともに、食材から出た水分を効率良く蒸気に変換して循環させる。
【0028】
内蓋本体40の一部には、開口40aが形成されており、耐熱性のガラスあるいは透明樹脂等の耐熱性の透明材料40eが嵌め込まれている。この開口40aは、内蓋22を外蓋21に取り付けたときに、上述した外蓋21の窓部21aと重畳する位置に形成されている。これにより、外蓋21の窓部21a及び透明材料40eを介して内鍋3の内部を確認することができるようになっている。開口40aに嵌め込まれた透明材料40eは、外蓋21の窓部21aが開口していることにより外部に露出しているため、外気に晒される。よって、透明材料40eの内鍋3との対向面に付着した蒸気は、透明材料40eの反対面(露出面)が外気により冷却されることで、水滴として内鍋3に戻される。よって、内蓋本体40と内鍋3とによって形成される空間内で蒸気を効率良く循環させることができる。なお、透明材料40eは、樹脂よりもガラスで形成さている方がより効果的に冷却を行える。
【0029】
内蓋本体40は、開口40aの他に、内蓋本体40における内鍋3との対向面の一部には、複数の小さな凸部40bが設けられている。凸部40bは、内蓋本体40に付着した蒸気を水滴として内鍋3に戻す。内蓋本体40に凸部40bが設けられていることで、当該内蓋本体40と内鍋3とによって形成される空間内で蒸気を効率良く循環させることができる。
【0030】
内蓋本体40における凸部40bの形成部分の材質は特に限定されるものではないが、内蓋本体40に付着した蒸気を水滴として内鍋3に戻すために、例えば金属等、結露し易い材質であることが望ましい。
【0031】
さらに、内蓋本体40には、外蓋21に形成された水蒸気センサ27を貫通させるためのセンサ用開口40cと、内鍋3で生じた蒸気を外蓋21の蒸気ダクトユニット26に案内するための蒸気案内用開口40dとが形成されている。
【0032】
蓋体2は、加熱調理器本体1を閉塞状態にしたときに、加熱調理器本体1の内鍋収納部11に収納された内鍋3を内蓋22により密閉し、把手収納部12を外蓋21にて覆うようになっている。つまり、蓋体2は、加熱調理器本体1を閉塞状態にしたときに、加熱調理器本体1の内鍋収納部11及び把手収納部12を覆うようになっている。
【0033】
(内鍋3)
図4は、内鍋3の上部からの斜視図であり、加熱調理器本体1から取り出した状態を示す。内鍋3は、図3に示すように、底壁3a及び底壁3aから上方に立設された周壁3bを有し、上方が開口した凹形状の加熱容器である。内鍋3における、底壁3aおよび周壁3bで囲まれた内部空間は、調理空間であり、加熱部15により加熱されることで、加熱室として機能する。
【0034】
また、内鍋3の周壁3bの上端部には、内鍋3の外方側に向かって水平方向に延設されたフランジ部3cが、周壁3bの全周に亘って形成されている。このように内鍋3の周壁3bの上端部にフランジ部3cが設けられていることで、内鍋3の上面に蓋体2の内蓋22に形成された大径パッキン41を当接する面積が増加し、内蓋22による内鍋3の密閉性を向上させることができる。
【0035】
なお、図1~4に示す内鍋3では、内鍋3の内部空間を形成する開口部が、平面視で円形状に形成されている場合を例に挙げて示しているが、内鍋3の開口形状は、これに限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0036】
内鍋3は、例えばアルミニウム等の高熱伝導部材で形成されている。なお、内鍋3の外面には、加熱効率を向上させる例えばステンレス等の磁性体が貼り付けられていてもよく、内鍋3の内面には、食材の付着を防ぐためのフッ素樹脂等がコーティングされていてもよい。
【0037】
また、内鍋3には、上部の外周縁部の一部に、2つの把手部31が互いに対向して設けられている。把手部31は、例えばプラスチック等、耐熱性および電気絶縁性を有する材料で形成される。
【0038】
(加熱調理)
加熱調理器101は、メニュー毎の加熱による調理を実行する調理モード(例えば、カレーモード、肉じゃがモード、ケーキモード等)を有している。それぞれの調理モードには、調理モードの開始と同時に調理が開始される通常モードと、予約調理を行う予約モードが付随している。予約調理とは、設定時刻に、または設定時間後に内鍋3に収容された食材の調理を完了させて、料理を食べ頃にするまでの調理である。各モードは、操作部25からユーザにより選択されるように構成されている。
【0039】
(制御部17)
図5は、加熱調理器101の制御ブロック図である。制御部17には、加熱部15、操作部(変更部)25、報知部50、温度センサ16、重量センサ18、水蒸気センサ27、水蒸気センサ27、蓋開閉検知センサ(検知部)51が接続されている。
【0040】
制御部17は、操作部25によって選択された調理モードに応じて、加熱部15の加熱制御、報知部50の報知制御を行う。また、制御部17は、温度センサ16、重量センサ18、水蒸気センサ27、および蓋開閉検知センサ51の検知結果(検知値)を基に加熱部15の加熱の制御を行う。
【0041】
具体的には、制御部17は、加熱部15への通電のONとOFFとを切り換える制御により、加熱の制御を行う。制御部17は、温度センサ16、重量センサ18、及び水蒸気センサ27による検知結果を基に加熱部15の加熱を制御しているので、より正確な制御をすることができる。このように加熱を制御することで、加熱調理器101は、選択された調理モードに応じた調理を実行する。さらに、制御部17は、調理完了後、食材が腐敗し易い温度帯よりも高い温度で保温を行うよう加熱部15の加熱を制御する。
【0042】
さらに、制御部17は、図示しないタイマ部を備え、調理時間の管理を行うとともに、予約調理が可能となっている。また、制御部17は、報知部50に加熱調理器101を使用するユーザに対して種々の情報を必要に応じて報知させる。この報知の内容、報知の方法についての詳細は後述する。
【0043】
(予約調理)
図6は、予約モードを選択した場合の予約調理における経過時間と温度との関係を示すグラフである。この経過時間と温度との関係を示すグラフは、料理のメニューによって変わる。ここで、グラフの縦軸の温度は、温度センサ16によって検知された内鍋3の温度(内鍋3内の料理の温度)を示している。
【0044】
また、図6に示すグラフの横軸の経過時間毎に予約調理の工程が切り替る。具体的には、予約調理では、予約調理開始時(加熱スタート)から、(I)調理工程、(II)適温保温工程(保温工程)、(III)再加熱工程の順に切り替る。最後の(III)再加熱工程において所定の温度で維持された期間に、予約調理の終了時間である、予約設定時間が設定されている。予約設定時間は、時刻で設定してもよいし、時間で設定しれもよい。予約設定時間を時刻で設定する場合、具体的な時刻(例えば18時等)を予約設定時間として設定する。また、予約設定時間を時間で設定する場合、具体的な時間(例えば3時間後等)を予約設定時間として設定する。
【0045】
(I)調理工程は、食材を加熱して調理を完成させるまでの工程である。ここでは、加熱部15による加熱をスタートさせ、温度センサ16によって内鍋3の温度が100℃であると検知されると、所定時間経過後に、加熱部15による加熱を停止させる。その後、温度センサ16によって検知された内鍋3の温度が55℃になる時点(X)までの工程である。
【0046】
(II)適温保温工程は、(I)調理工程によって調理完了した料理を、加熱部15によって再加熱して、適温まで内鍋3の温度を上げて、その温度を所定時間維持する工程である。適温とは、食品が腐敗しやすい温度帯よりも高い温度を示す。ここでは、グラフの経過時間(1)における内鍋3の温度70℃を適温としている。適温を維持する所定時間は、予約設定時間を考慮して設定される。
【0047】
(III)再加熱工程は、(II)適温保温工程によって適温に保温された料理を再加熱して、所定温度(ここでは、100℃)まで内鍋3の温度を上げて、予約設定時間(2)まで維持する工程である。なお、(III)再加熱工程では、加熱だけでなく、料理の撹拌を同時に行っているメニューもある。
【0048】
(I)調理工程、(II)適温保温工程、(III)再加熱工程は、温度センサ16の検知温度およびタイマ部による経過時間に応じた、制御部17による加熱部15の制御によって実行される。具体的には、制御部17は、温度センサ16による検知温度が100℃を示し、タイマ部による経過時間が所定時間経過した後、加熱部15の加熱を停止させ、温度センサ16による検知温度が55℃を示した時点(X)で、加熱部15の加熱を再開する。さらに、制御部17は、温度センサ16による検知温度が70℃を示せば、所定時間70℃を維持し、タイマ部による経過時間が所定時間経過後に温度センサ16による検知温度が100℃を示すように、加熱部15の加熱を制御する。
【0049】
(調理完了報知)
ここで、(I)調理工程が終了してから、(II)適温保温工程に移行する時点(X)で食材の調理は完了している。具体的には、制御部17が、(I)調理工程が終了した時点(X)、すなわち温度センサ16が55℃を示したとき、食材の調理が完了したと判断する。制御部17は、食材の調理が完了したと判断した場合に、報知部50によって食材の調理が完了していることを報知する。報知部50による報知は、加熱調理器101が備えているスピーカから音を発する、あるいは加熱調理器101が備える操作部25の表示部25bをランプのように光らせる、加熱調理器101が備える操作部25の表示部25bにメッセージを表示させる、あるいは、加熱調理器101とは別の機器、例えばスマートフォン等のユーザが使用する携帯端末に通知すること等が考えられる。
【0050】
ここで、報知部50による食材の調理が完了している旨を報知するタイミングとしては、(I)調理工程が終了した時点(X)、すなわち温度センサ16が55℃を示したときが好ましいが、(I)調理工程における食材の加熱調理完了した時点、すなわち内鍋3の温度が加熱され100℃に達して最初に加熱部15による加熱が停止した時点後、且つ、(III)再加熱工程よりも前であればよい。さらに、(I)調理工程における食材の加熱調理完了した時点、且つ、(II)適温保温工程よりも前であればよい。
【0051】
予約調理では、上述した通り、上記(I)~(III)の工程を経て、予約調理が完了する。そして、予約調理の完了は、料理が食べ頃になった状態を示す。つまり、報知部50によって調理完了が報知された時点では、料理は食べ頃になっていない。料理を食べ頃にするためには、再加熱調理を所定時間行う必要がある。このため、通常の予約調理では、(I)調理工程が完了してから、予約設定時間(2)まで、(II)適温保温工程および(III)再加熱工程を実行している。
【0052】
ここで、報知部50は、食材の調理が完了している旨を複数回報知するようにしてもよい。このように、食材の調理が完了している旨を複数回報知することで、ユーザが1回目の報知を聞き逃しても、2回目以降の報知によって食材の調理が完了していることを知ることができる。
【0053】
通常の加熱調理器では、予約調理を行う場合、予約時刻より前に蓋体が開放されるとエラー音がなる仕様となっている。(I)調理工程において内鍋3の温度が100℃になって所定時間経過後に、加熱部15の加熱が停止した後であれば、食材の加熱は完了しているため、蓋体2を開けても影響がない。従って、(I)調理工程において加熱部15の加熱が停止した後であれば、蓋体2が開放されてもエラー音をならさない仕様となっている。これにより、ユーザは、報知部50によって調理完了が報知された後であれば、何時でも蓋体2を開放することができる。
【0054】
なお、ユーザによっては、予約調理の途中で調理完了の報知を不要とする場合もあるため、報知部50による調理完了の報知は、常に行うのではなく、必要に応じて設定できるようにしてもよい。
【0055】
また、報知部50は、食材の調理完了の報知後、(III)再加熱工程が終了したことを報知してもよい。これにより、ユーザに料理が食べ頃の状態になったことを知らせることができる。
【0056】
操作部(変更部)25は、報知部50による調理完了の報知後、予約モード時における予約時刻または予約時間の変更を受付ける。従って、報知部50による調理完了が報知されれば、操作部25を操作して手軽に予約設定時間(予約時刻または予約時間)を変更することができる。これにより、ユーザが料理を食したいタイミングで料理を食べ頃の状態にすることが可能となる。しかも、食事時間が異なるグループ(家族など)内で、それぞれのタイミグで予約設定時間を自由に変更し、加熱調理器101の蓋体2の開閉を行うことができる。
【0057】
予約設定時間の変更は、(III)再加熱工程を開始するタイミングの変更を意味する。従って、予約設定時間を短くする場合には、(III)再加熱工程を開始するタイミングも早まるように、制御部17は加熱部15を制御する。
【0058】
従って、予約調理において調理完了が報知されれば、ユーザは、好きなタイミングで料理を食べ頃の状態にすることができる。例えば、調理完了が報知された時点で、直ぐに料理を食べ頃にしたければ、直ぐに(III)再加熱工程に移行できるように、既に設定した予約設定時間を短くなるように変更する。
【0059】
なお、上記実施形態1では、予約調理において調理完了を報知した後、(III)再加熱工程への移行は、予約設定時間を変更することによって実行しているが、これに限定されるものではない。以下の実施形態2では、(III)再加熱工程への移行のタイミングの他の例について説明する。
【0060】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態では、前記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、その説明を省略する。
【0061】
(再加熱工程への移行タイミング)
図7は、本実施形態における再加熱工程への移行のタイミングを説明するための図である。図8は、比較例における再加熱工程への移行のタイミングを説明するための図である。
【0062】
予約調理において、調理メニューによっては、(III)再加熱工程前に食材や調味料等を投入する必要がある。この場合、(II)適温保温工程中に食材や調味料等を加熱調理器101の蓋体2を開けて投入し、再度、蓋体2を閉じることになる。通常、図8に示すように、(II)適温保温工程中に食材や調味料等を加熱調理器101の蓋体2を開けて投入し、再度、蓋体2を閉じた場合、(III)再加熱工程が開始されるまで、再加熱されない。このため、料理が食べ頃になる時間(4)は、予め設定された予約設定時間(2)から変更されない。
【0063】
しかしながら、本実施形態では、制御部17が、(II)適温保温工程中に、蓋開閉検知センサ51によって蓋体2の開閉が検知されると、加熱部15によって内鍋3を再加熱させて(III)再加熱工程に移行させるようになっている。従って、図7に示すように、(II)適温保温工程中に食材や調味料等を加熱調理器101の蓋体2を開けて投入し、再度、蓋体2を閉じた時点で、(III)再加熱工程が開始される。このため、料理が食べ頃になる時間(4)は、予め設定された予約設定時間(2)よりも早めることができる。
【0064】
このように、(II)適温保温工程中に蓋体2を開閉することにより、直ぐに(III)再加熱工程に移行させることができるので、ユーザは料理を食したいタイミングで、蓋体2を開閉すればよい。
【0065】
また、(II)適温保温工程中で蓋体2が誤って開放された場合、蓋体2が閉じられるタイミングで殺菌工程(70℃加熱を1分間継続)に移行して内鍋3を再加熱することで、雑菌の繁殖を防ぐことができる。
【0066】
以上のように、本実施形態では、制御部17は、蓋開閉検知センサ51によって蓋体2の開閉を検知したら、実行中の予約調理のメニューに応じて、殺菌工程または再加熱工程を実行するように加熱部15を制御する。これにより、ユーザは所望するタイミングで、蓋体2を開閉すればよいし、蓋体2を誤って開放した場合であっても、雑菌の繁殖を防ぐことができる。
【0067】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る加熱調理器は、食材を収容する容器(内鍋3)と、当該容器(内鍋3)を加熱する加熱部15と、当該加熱部15による加熱を制御する加熱制御部(制御部17)と、を備え、予約調理が可能な加熱調理器101であって、前記予約調理は、食材を調理する調理工程と、前記調理工程によって調理完了した料理を所定の温度で保温する保温工程と、前記保温工程によって保温された料理を再加熱する再加熱工程とを順に実行し、前記予約調理実行時に、前記調理工程における食材の加熱調理完了後、且つ、前記再加熱工程よりも前に、食材の調理が完了している旨を報知する報知部50を備えている。
【0068】
上記構成によれば、調理工程における食材の加熱調理完了後、且つ、前記再加熱工程よりも前に、報知部によって食材の調理が完了している旨が報知されることで、予め食材の調理完了の時間を把握する必要がない。このため、報知部による報知があれば、ユーザが好むタイミングで、予約時刻または予約時間の変更を容易に行うことができる。
【0069】
本発明の態様2に係る加熱調理器は、上記態様1において、前記報知部50は、前記保温工程よりも前に、食材の調理が完了している旨を報知してもよい。
【0070】
上記の構成によれば、保温工程よりも前に、食材の調理が完了している旨が報知されることで、ユーザはより早く料理を食べ頃にすることが可能となる。
【0071】
本発明の態様3に係る加熱調理器は、上記態様1または2において、前記報知部50は、前記食材の調理が完了している旨を複数回報知してもよい。
【0072】
上記構成によれば、複数回報知することで、ユーザが1回目の報知を聞き逃しても、2回目以降の報知によって食材の調理が完了していることを知ることができる。
【0073】
本発明の態様4に係る加熱調理器は、上記態様1~3の何れか一態様において、前記報知部50は、前記食材の調理完了の報知後、前記再加熱工程が終了したことを報知してもよい。
【0074】
上記構成によれば、食材の調理完了の報知後に実行された再加熱工程が終了したことを報知することで、ユーザに料理が食べ頃の状態になったことを知らせることができる。
【0075】
本発明の態様5に係る加熱調理器は、上記態様1~4の何れか1態様において、前記報知部50による前記調理完了の報知後、予約時刻または予約時間の変更を受付ける変更部(操作部25)をさらに備えていてもよい。
【0076】
上記構成によれば、ユーザが料理を食したいタイミングで料理を食べ頃の状態にすることが可能となる。
【0077】
本発明の態様6に係る加熱調理器は、上記態様1~5の何れか1態様において、前記容器(内鍋3)に蓋をする蓋体2と、前記蓋体2の開閉を検知する検知部(蓋開閉検知センサ51)と、をさらに備え、前記加熱制御部(制御部17)は、前記検知部(蓋開閉検知センサ51)によって前記蓋体2の開閉を検知したら、実行中の予約調理のメニューに応じて、殺菌工程または再加熱工程を実行してもよい。
【0078】
上記構成によれば、保温工程中に蓋体を開閉することにより、直ぐに殺菌工程または再加熱工程に移行させることができる。これにより、ユーザは所望するタイミングで、蓋体を開閉すればよいし、蓋体を誤って開放した場合であっても、雑菌の繁殖を防ぐことができる。
【0079】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 加熱調理器本体
2 蓋体
3 内鍋(容器)
3a 底壁
3b 周壁
3c フランジ部
4 ヒンジバネ
11 内鍋収納部
12 把手収納部
13 係合爪
15 加熱部
16 温度センサ
17 制御部(加熱制御部)
18 重量センサ
21 外蓋
21a 窓部
22 内蓋
23 爪受部
24 開放スイッチ
25 操作部(変更部)
25a 操作ボタン
25b 表示部
26 蒸気ダクトユニット
26b 蒸気口
27 水蒸気センサ
31 把手部
40 内蓋本体
40a 開口
40b 凸部
40c センサ用開口
40d 蒸気案内用開口
40e 透明材料
41 大径パッキン
50 報知部
51 蓋開閉検知センサ(検知部)
101 加熱調理器
211 底部
212 上部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8