(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130977
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】半導体発光素子、半導体発光装置及び半導体発光装置モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20230913BHJP
H01L 33/36 20100101ALI20230913BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035601
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平間 聡
(72)【発明者】
【氏名】河野 圭真
(72)【発明者】
【氏名】市川 幸治
(72)【発明者】
【氏名】神原 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 直史
【テーマコード(参考)】
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F142AA02
5F142AA13
5F142AA42
5F142CA11
5F142CB15
5F142CB18
5F142CB22
5F142CF13
5F142CG03
5F142CG45
5F142DA14
5F142DB30
5F142EA02
5F142EA08
5F241AA33
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA74
5F241CA88
5F241CB15
5F241CB25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放熱特性に優れ、均一な電流注入及び発光が得られ、発光効率が高い半導体発光素子、半導体発光装置及び半導体発光装置モジュールを提供する。
【解決手段】絶縁性又は半絶縁性の基板と、基板上に第1極性の第1半導体層、発光層、第2極性の第2半導体層が順次積層された発光機能部15Mと、発光機能部を覆う絶縁膜と、絶縁膜上に設けられた、第1半導体層及び第2半導体層にそれぞれ電気的に接続された第1パッド電極28A及び第2パッド電極28B、及び発光機能部とは電気的に絶縁された少なくとも1つの中間パッド29と、第1パッド電極、第2パッド電極及び中間パッドの各々を隔てるとともに、絶縁膜を露出するパッド分離溝GPと、を有している。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性又は半絶縁性の基板と、
前記基板上に第1極性の第1半導体層、発光層、第2極性の第2半導体層が順次積層された発光機能層と、
前記発光機能層を覆う絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられた、前記第1半導体層及び前記第2半導体層にそれぞれ電気的に接続された第1パッド電極及び第2パッド電極、及び前記発光機能層とは電気的に絶縁された少なくとも1つの中間パッドと、
前記第1パッド電極、前記第2パッド電極及び前記中間パッドの各々を隔てるとともに、前記絶縁膜を露出するパッド分離溝と、
を有する半導体発光素子。
【請求項2】
前記パッド分離溝は前記発光機能層の互いに対向する外縁部に至るように延在して設けられている請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記発光機能層は、上面視で矩形形状を有し、前記パッド分離溝は、前記発光機能層の対角線の交点を含む配置で設けられている請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記発光機能層は、互いに対向する一対の辺を有し、前記基板が露出する結晶分離溝によって分離され、前記一対の辺に平行な方向に延在するメサ状の複数の発光機能部を有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1パッド電極、前記第2パッド電極及び前記中間パッドは、前記複数の発光機能部の延在方向に延在してストライプ状に並んで配置されている請求項4に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第1パッド電極、前記第2パッド電極及び前記中間パッドは、マトリクス状に配列されている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記第1パッド電極、前記第2パッド電極及び前記中間パッドは、角部が面取りされた面取り部を有する請求項1ないし6のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
互いに隣接する前記発光機能部を直列に接続するとともに、前記互いに隣接する前記発光機能部の延在方向の一端から他端に渡って設けられている配線層を有する請求項4ないし7のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記第1パッド電極、前記第2パッド電極及び前記中間パッドは同一の層構造を有する請求項1ないし8のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の半導体発光素子と、
前記半導体発光素子上に設けられた導光体と、
を有する半導体発光装置。
【請求項11】
前記導光体は蛍光体プレートである請求項10に記載の半導体発光装置。
【請求項12】
表面に第1配線及び第2配線を有する回路基板と、
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の半導体発光素子と、を有し、
前記半導体発光素子の前記第1パッド電極及び前記第2パッド電極は、それぞれ前記第1配線及び前記第2配線にそれぞれ第1接合部材及び第2接合部材によって接合され、
前記半導体発光素子の前記中間パッドの少なくとも1つは前記第1配線又は前記第2配線に接合されている、半導体発光モジュール。
【請求項13】
表面に第1配線、第2配線及び第3配線を有する回路基板と、
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の半導体発光素子と、を有し、
前記半導体発光素子の前記第1パッド電極及び前記第2パッド電極は、それぞれ前記第1配線及び前記第2配線にそれぞれ第1接合部材及び第2接合部材によって接合され、
前記半導体発光素子の前記中間パッドの少なくとも1つは前記第1配線及び前記第2配線に電気的に絶縁されて前記第3配線に接合されている、半導体発光モジュール。
【請求項14】
表面に第1配線及び第2配線を有する回路基板と、
請求項10又は11に記載の半導体発光装置と、を有し、
前記半導体発光装置の前記第1パッド電極及び前記第2パッド電極は、それぞれ前記第1配線及び前記第2配線にそれぞれ第1接合部材及び第2接合部材によって接合され、
前記半導体発光装置の前記中間パッドの少なくとも1つは前記第1配線又は前記第2配線に接合されている、半導体発光モジュール。
【請求項15】
表面に第1配線、第2配線及び第3配線を有する回路基板と、
請求項10又は11に記載の半導体発光装置と、を有し、
前記半導体発光装置の前記第1パッド電極及び前記第2パッド電極は、それぞれ前記第1配線及び前記第2配線にそれぞれ第1接合部材及び第2接合部材によって接合され、
前記半導体発光装置の前記中間パッドの少なくとも1つは前記第1配線及び前記第2配線に電気的に絶縁されて前記第3配線に接合されている、半導体発光モジュール。
【請求項16】
放熱体を有し、
前記中間パッドの前記少なくとも1つは前記放熱体に熱的に結合されている、請求項13又は15に記載の半導体発光モジュール。
【請求項17】
前記第1配線及び前記第2配線は、それぞれ前記第1パッド電極及び前記第2パッド電極に対応した形状を有するとともに、前記パッド分離溝に対応した間隔で配置されている請求項12又は14に記載の半導体発光モジュール。
【請求項18】
前記第1配線、前記第2配線及び前記第3配線は、それぞれ前記第1パッド電極、前記第2パッド電極及び前記中間パッドに対応した形状を有するとともに、前記パッド分離溝に対応した間隔で配置されている請求項13、15又は16に記載の半導体発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子、半導体発光装置及び半導体発光装置モジュール、特に発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子及び当該半導体発光素子を有する半導体発光装置及び半導体発光装置モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力化や配光制御のため、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子を複数デバイス内に配置して用いることが行われている。
【0003】
例えば、自動車用ヘッドライトにおいて、走行環境に合わせて配光を制御する配光可変型のヘッドランプ(ADB: Adaptive Driving Beam)が知られている。また、高出力の照明用LEDパッケージや、LEDを高密度に配置した情報通信機器用のLEDパッケージなどが知られている。
【0004】
しかし、発光効率が高く、均一な発光が得られる高出力半導体発光素子が一層求められている。また、発光素子の性能低下を防ぎつつ、保護素子等の付加機能を備え、素子破壊が生じ難い半導体発光装置が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、活性層を貫通し、第一半導体層を露出させる複数の孔部と、複数の孔部位置以外の領域に形成された第一はんだパッド及び第二はんだパッドとを有し、ライトフィールド分布を均等化させ、かつ発光デバイスの順電圧を低減せんとする発光デバイスが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、複数の凹溝と、上表面を有する平たい台とを含む複数の半導体積層とを備え、当該複数の凹溝の底部から露出した第1の半導体層上に電極が設けられた発光素子構造が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、同一成膜基板上で電気的に複数分離してなり、それぞれの窒化物半導体層が導電性ワイヤで電気的に接続されている窒化物半導体発光素子が開示されている。特許文献4には、複数のLED1を二次元的にモノリシック形成し、複数のLEDを直列接続したLEDアレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-92477号公報
【特許文献2】特開2014-150188号公報
【特許文献3】特開2001-156331号公報
【特許文献4】特開2004-6582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、放熱特性に優れ、均一な電流注入及び発光が得られ、発光効率が高い半導体発光素子、半導体発光装置及び半導体発光装置モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1実施形態による半導体発光素子は、
絶縁性又は半絶縁性の基板と、
前記基板上に第1極性の第1半導体層、発光層、第2極性の第2半導体層が順次積層された発光機能層と、
前記発光機能層を覆う絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられた、前記第1半導体層及び前記第2半導体層にそれぞれ電気的に接続された第1パッド電極及び第2パッド電極、及び前記発光機能層とは電気的に絶縁された少なくとも1つの中間パッドと、
前記第1パッド電極、前記第2パッド電極及び前記中間パッドの各々を隔てるとともに、前記絶縁膜を露出するパッド分離溝と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の第1の実施形態による半導体発光素子10を上面から見た場合を模式的に示す上面図である。
【
図1B】
図1Aの線A-Aに沿った断面を模式的に示す断面図である。
【
図2A】半導体発光素子10の回路基板への実装方法を示す斜視図である。
【
図2B】フラックスガスの排出を説明するための上面透視図である。
【
図2C】フラックスガスの排出を説明するための断面図である。
【
図2D】pパッド電極28A、nパッド電極28B又は中間パッド電極29の上面図である。
【
図3】接合部材中のボイド占有率(%)と熱抵抗(℃/W)の関係を示す図である。
【
図4】第2の実施形態の半導体発光装置50及び半導体発光装置モジュール60を示す斜視図である。
【
図5A】第3の実施形態の半導体発光装置モジュール70の上面を模式的に示す上面図である。
【
図5B】
図5Aの線A-Aに沿った断面を模式的に示す断面図である。
【
図6A】半導体発光装置モジュール70の製造工程を示す上面図である。
【
図6B】半導体発光装置モジュール70の製造工程を示す上面図である。
【
図6C】半導体発光装置モジュール70の製造工程を示す上面図である。
【
図7】第4の実施形態の半半導体発光素子80の上面を模式的に示す上面図である。
【
図8】半導体発光素子80の改変例である半導体発光素子85を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
(1)半導体発光素子の構造
図1Aは、本発明の第1の実施形態による半導体発光素子10を上面から見た場合(上面視ともいう)を模式的に示す上面図である。なお、説明及び理解の容易さのため、電極等の内部構造についても示している。
図1Bは、
図1Aの線A-Aに沿った断面を模式的に示す断面図である。半導体発光素子10の構造について以下に詳細に説明する。
【0014】
図1Aに示すように、半導体発光素子10は、基板11上に形成された発光機能層15を有している。より詳細には、発光機能層15は、メサ状に形成された複数の発光機能部15Mを有している。
【0015】
図1Bに示すように、半導体発光素子10は透光性を有する絶縁性の基板11を有している。本実施形態において、基板11は矩形柱形状を有し、基板11の表面は上面視で矩形状を有している。基板11には、例えば、サファイヤ及び窒化アルミニウム(AlN)などの基板を用いることができる。
【0016】
また、基板11は、絶縁性基板の他、半絶縁性又は高抵抗の材料によって形成されていてもよい。なお、本明細書において、半絶縁性の基板とは、高抵抗のGaNなどの半導体基板を含む。具体的には、比抵抗が1MΩ/□以上の高抵抗を示す材料をいう。
【0017】
図1A及び
図1Bに示すように、複数の発光機能部15Mは、基板11に達する結晶分離溝15Gによって互いに分離された発光領域である。また、複数の発光機能部15Mは、半導体発光素子10の互いに対向する一対の辺に平行な方向(y方向)に延在している。
【0018】
また、複数の発光機能部15Mは、当該延在方向に直交する方向(x方向)に互いに所定の間隔を空けて形成されている。なお、発光機能部15Mの延在方向は、発光機能層15の所定の結晶方向に平行な方向であることが好適である。
【0019】
より詳細には、基板11上には、n型半導体層12(第1極性の第1半導体層)、発光層13及びp型半導体層14(第2極性の第2半導体層)がこの順で積層され、メサ形状を有する発光機能部15Mが形成されている。
【0020】
メサ形状の発光機能部15Mは、GaN系半導体層からなり、例えばMOCVD法(有機金属気相成長法)によって形成した結晶成長層(発光機能層)をエッチングにより分離して形成することができる。なお、結晶成長法はMOCVD法に限らず、MBE法(分子線エピタキシー法)、HVPE法(Hydride Vapor Phase Epitaxy 法)などを用いることもできる。また、半導体層はGaN系半導体層に限らず、発光機能層を形成可能な化合物半導体層を用いることができる。
【0021】
発光機能部15Mの間の結晶分離溝15Gの底面には基板11が露出している。すなわち、複数の発光機能部15Mの各発光機能部(半導体層)は、互いに電気的に分離して形成されている。
【0022】
また、発光機能部15Mの横方向(短手方向)の一端側(-x側)にはn型半導体層12が露出する段差である電極形成部15Cが設けられている。電極形成部15Cは、発光機能部15Mの延在方向(長手方向)に延在している。
【0023】
すなわち、n型半導体層12上に設けられたn電極22は、発光機能部15Mの延在方向に延在している。複数の発光機能部15Mのうち、半導体発光素子10の外縁部にある発光機能部15Mのn電極22は後述する第1パッド電極(nパッド電極)28Bに接続され、nパッド接続部22Bを構成している。
【0024】
n型半導体層12の電極形成部15C上には、オーミック電極であるn電極22(第1電極)が形成されている。n電極22は、n型半導体層12上にTi、Alをこの順で形成したオーミック電極として形成されている。なお、Ti/Al層に限らず、Ti/Rh、又はTi/Au等のn型半導体層12とオーミック接触が形成される材料によって形成してもよい。
【0025】
発光機能部15Mのメサ上層のp型半導体層14上には、オーミック電極、反射層及び保護層からなるp電極23(第2電極)が形成されている。具体的には、オーミック電極としてインジウム錫酸化物(ITO)膜が、当該ITO膜上に反射層及び保護層としてNi/Ag/Ti/Au層が形成されている。
【0026】
nパッド接続部22Bが形成された半導体発光素子10の一端側とは反対側の他端の外縁部のp電極23は後述する第2パッド電極(pパッド電極)28Aに接続され、pパッド接続部23Aを構成している。
【0027】
メサ形状の発光機能部15M及びp電極23は、SiO2からなる第1絶縁膜25Aによって側壁及び上面が覆われ保護されている。第1絶縁膜25A上には、渡り配線である配線層26が形成されている。
【0028】
配線層26は、光反射性の金属配線層であり、第1絶縁膜25Aを介して発光機能部15Mの側壁及び上面の一部を覆うように形成されている。第1絶縁膜25Aは、発光機能部15Mの頂面上の一部においてp電極23が露出する開口部を有している。
【0029】
第1絶縁膜25Aの当該開口部において配線層26の一端がp電極23に接続され、p電極接続部23Cが形成されている。また、配線層26の他端はn電極22に接続されている。すなわち、配線層26は互いに隣接する発光機能部15Mのn電極22及びp電極23を接続する渡り配線として機能する。
【0030】
したがって、
図1A及び
図1Bに示す複数の発光機能部15Mは直列に接続されている。また、結晶分離溝15Gによって分離された複数の発光機能部15Mの全体が発光機能層として機能し、上面視で矩形形状を有している。したがって、本明細書においては、複数の発光機能部15M及び結晶分離溝15Gの全体を発光機能層15と称して説明する。
【0031】
なお、
図1Aに示すように、p電極接続部23C及びn電極22は、発光機能部15Mの延在方向(y方向)の一端から他端に渡って形成されていることが好ましい。また、配線層26は、互いに隣接する発光機能部15Mの延在方向の一端から他端に渡って形成されていることが反射性能及び電流均一性の点で好ましい。
【0032】
配線層26は、具体的には、Ni/Al/Ti/Pt層又はTi/Al/Ti/Pt層などによって形成されているが、層構造はこれらに限らない。例えば、Ptに代えて、Pd又はRhなどを用いることができる。
【0033】
配線層26は、配線層26上に形成されたSiO2からなる第2絶縁膜25Bによって覆われ絶縁及び保護されている。すなわち、第1絶縁膜25A及び第2絶縁膜25Bは、nパッド接続部22B及びpパッド接続部23Aを除く半導体発光素子10の表面全体を覆うように形成されている。
【0034】
なお、以下において、第1絶縁膜25A及び第2絶縁膜25Bからなり、半導体発光素子10の表面全体を覆う絶縁膜を素子絶縁膜25と称して説明する。
【0035】
また、第1絶縁膜25A及び第2絶縁膜25Bは、SiO2に限定されない。例えば、SiN膜等の絶縁性誘電体を好適に用いることができる。
【0036】
図1Aに示すように、半導体発光素子10の素子絶縁膜25の表面上には、発光機能部15Mの延在方向(y方向)に沿って延在し、当該延在方向に垂直な方向(x方向)に、間隙(パッド分離溝GP)によって互いに離間したpパッド電極28A、nパッド電極28B及び2つの中間パッド29が形成されている。
【0037】
すなわち、発光機能部15Mの延在方向に沿って延在するpパッド電極28A、nパッド電極28B、2つの中間パッド29の各々の間はパッド分離溝(以下、単に溝ともいう。)GPによって分離され、ストライプ状に並んで配置されている。
【0038】
なお、溝GPは、発光機能部15Mの延在方向に一定間隔で直線状に形成されていることが好ましい。また、溝GPは、結晶成長層15の互いに対向する外縁部(すなわち、x方向に平行な外縁部)に至るように延在して設けられていることが好ましい。さらに、隣接するパッド電極及び中間パッド間の溝GPは等幅でなくてもよい。
【0039】
なお、nパッド電極28B及びpパッド電極28Aは導電体であればよいが、表面層が金属であることが好適である。中間パッド29は、半導体発光素子10の半導体層、すなわち発光機能部15Mとは絶縁された絶縁パッドとして形成されている。
【0040】
また、中間パッド29は導電体である必要はなく、絶縁体であってもよいが、接合及び実装の点では少なくとも表面層が金属でできていることが好適である。また、pパッド電極28A及びnパッド電極28Bは同一の層構造を有することが好適であり、pパッド電極28A、nパッド電極28B及び中間パッド29は同一の層構造を有することがさらに好適である。
【0041】
なお、中間パッド29が金属等の導電体からなり、pパッド電極28A又はnパッド電極28Bに電気的に接続されて実装される場合には、中間パッド29は電極として機能する。以下においては、中間パッド29が金属等の導電体からなる場合について説明し、また、中間パッド29を中間パッド電極29と称して説明する。
【0042】
具体的には、
図1Bに示すように、半導体発光素子10の一辺の端部に形成された最も外側のn電極22に、素子絶縁膜25の開口部を介して電気的に接続されたnパッド電極28B(カソード)が設けられている。すなわち、nパッド電極28Bとn電極22との接続部がnパッド接続部22Bである(
図1Aを参照)。
【0043】
また、半導体発光素子10の他方の端部に形成された最も外側のp電極接続部23Cに、素子絶縁膜25の開口部を介して電気的に接続されたpパッド電極28A(アノード)が設けられている。すなわち、pパッド電極28Aとp電極23との接続部がpパッド接続部23Aである(
図1Aを参照)。
【0044】
さらに、nパッド電極28B(カソード)及びpパッド電極28A(アノード)の間には、素子絶縁膜25上に形成され、発光機能部15Mと電気的に絶縁された2つの中間パッド電極29(絶縁パッド電極)が設けられている。
【0045】
より具体的には、パッド電極28B、28A及び2つの中間パッド電極29は、光反射層としてAl層を有し、例えばNi/Al/Ti/Au層(Au層が最表面層)によって形成されているが、これらに限らない。例えば、Al層に代えて、Ag層等の光反射性の層を用いることができる。
【0046】
図1Bに示すように、パッド電極28B、28A及び2つの中間パッド電極29の各々の間の溝GP内には、半導体発光素子10の表面を覆う素子絶縁膜25(すなわち、第1絶縁膜25A及び第2絶縁膜25B)が露出している。
【0047】
なお、nパッド電極28B及びpパッド電極28A間に2つの中間パッド電極29を配した場合を例に説明するが、中間パッド電極29の数はこれに限定されない。例えば、中間パッド電極29は少なくとも1つ設けられていればよい。中間パッド電極29は、実装時にnパッド電極28B及びpパッド電極28Aに適宜振り分けて回路基板等のカソード配線及びアノード配線上に接続して実装することができる。
【0048】
発光機能部15Mから放射された光は、一部は直接光Ldとして透光性の基板11の裏面である光出射面11Eから出射され、一部はp電極23による反射光Lrとして光出射面11Eから出射される。また、発光機能部15Mの側面方向に放射された光などは、配線層26及びパッド電極28A、29、28Bによっても反射され、光出射面11Eから出射される。
【0049】
なお、上記においては、発光機能層15が複数の発光機能部15Mに分離された場合について説明したが、結晶分離溝15Gを有さず、発光機能層15が1つの台地形状の発光機能部15Mとして構成されていてもよい。
【0050】
(2)半導体発光素子の回路基板への実装
半導体発光素子10の回路基板への実装について以下に説明する。
図2Aは、半導体発光素子10の回路基板への実装方法を示す斜視図である。
【0051】
半導体発光素子10のpパッド電極28A、nパッド電極28B、及び2つの中間パッド電極29を下向きにして半導体発光素子10を回路基板のアノード配線43A及びカソード配線43Bにそれぞれ接合部材41A及び41Bを用いて接合する。
【0052】
具体的には、例えばpパッド電極28Aとpパッド電極28Aに隣接する中間パッド電極29とがアノード配線43Aに接合され、nパッド電極28Bとnパッド電極28Bに隣接する中間パッド電極29とがカソード配線43Bに接合される。
【0053】
より詳細には、まず、回路基板配線であるアノード配線43A及びカソード配線43B上に接合部材となるソルダーペーストはんだ(接合部材41A及び41B)を印刷する。次に、半導体発光素子10をソルダーペースト上にマウントする。次に、リフロー炉で加熱して接合する。
【0054】
図2B及び
図2Cは、リフローの際に揮発したフラックスガスの排出を説明するための、上面透視図及び
図2Aの線D-Dに沿った断面を示す断面図である。
【0055】
接合部材41A及び41Bであるソルダーペーストはんだは、揮発性のフラックスを含んでおり、リフローの際に揮発する。このとき、
図2Bに示すように、pパッド電極28A、2つの中間パッド電極29、及びnパッド電極28Bの隣接するパッド電極間の溝GPがガス排出路(通気路)として機能する。
【0056】
すなわち、アノード配線43A及びカソード配線43Bは、pパッド電極28A、nパッド電極28B、及び2つの中間パッド電極29の接合形態に対応した形状を有するとともに、溝GPに対応した間隔で配置されている。したがって、アノード配線43A及びカソード配線43B間の溝GPがリフロー時の通気路として機能する。
【0057】
上記したように、短冊状のパッド電極間の溝GPにおいては、溶融金属状態の接合部材又ははんだに対して濡れ性の低い絶縁膜(SiO2膜)が露出しており、当該溝GPが良好に形成され、ガス排出が効果的に行われる。
【0058】
図2Bに示すように、半導体発光素子10の外側から加熱する場合、はんだは外側から内側方向に溶融進行する(図中、熱伝播曲線)。したがって、溝GPが最終溶融点MP(黒丸、発光機能層15の中心)を通るように溝GPを設けることで、フラックスガスのより効率的な排出が可能となり、ボイドの少ない接合層の形成が可能になる。
【0059】
したがって、放熱性の高い実装が可能となる。なお、上記のように発光機能層15が矩形形状を有する場合、発光機能層15の対角線の交点が溝GP内に含まれる配置で溝GPが設けられていることが好ましい。
【0060】
また、特に、
図2Cに示すように、実装時に接合部材が分離されているアノード配線43A及びカソード配線43B間(すなわち接合部材41A及び41B間)の溝であって、最終溶融点MPを通る溝GP0においてガスの排出効果がより大きい。すなわち、
図2Cに示す場合では、2つの中間パッド電極29間の溝GP0の排出効果がより大きい。このようにガス排出路GP0を設けることで、フラックスガスの排出が特に効果的となり、ボイドの発生が極めて抑制された接合層の形成が可能になり、放熱性も高い実装が可能となる。なお、当該パッド分離溝GP0の幅を他の分離溝GPの幅よりも大きくすることが好ましい。
【0061】
図2Dは、pパッド電極28A、nパッド電極28B又は中間パッド電極29の上面図である。隣接するパッド電極の間からフラックスの揮発ガスを排出するには、面積Sを一定とした場合、周囲長Lを長くすることが有効である。例えば、パッド電極を細分化することで周囲長Lを長くすることができる。
【0062】
具体的には、パッド電極の短辺(又は幅)Wに対する長辺(又は長さ)Lの比R=L/Wが、2≦Rであることが好ましい。また、Rが大きくなり過ぎるとアライメントずれなどの点で形成及び実装が困難になるのでR≦10が好ましい。したがって、2≦R≦10が好ましい。さらに、揮発ガスの排出性及び形成及び実装の容易性を考慮すると、3≦R≦8範囲がより好ましい。
【0063】
図3は、接合部材(はんだ)が縦横1mmの場合におけるボイド占有率(%)と熱抵抗(℃/W)の関係を示す図である。なお、シミュレーション値(SIM:破線)及び実測値(EX:黒丸)をプロットして示している。
【0064】
半導体発光素子を回路基板の配線(ランド)上に接合部材(はんだ)を介して接合するとき、接合部材にボイド(空孔)が形成され得る。半導体発光素子は通電により発熱するので、接合部材に形成されたボイドの占有率(上面視においてボイドが占める面積)が大きくなると熱抵抗が高くなり、回路基板または回路基板に設けられたヒートシンク(放熱体)への放熱特性が低下し、半導体発光素子の信頼性(例えば寿命)を損なう。
【0065】
図3に示すように、例えば、発光素子の底面の全面に形成された従来の電極の場合、ボイド占有率は通常20%~40%となり、ボイドが形成されない場合より熱抵抗が10%から20%程度上昇する。
【0066】
本発明の半導体発光素子10のパッド電極は、ボイド形成の要因となるペーストはんだから揮発するガスを排出できる構造を有している。従って、ボイド占有率を0%~15%以下にすることができる。
図3に示すように、本発明の半導体発光素子10においては、実際に0%~5%のボイド占有率を得ることができる。
【0067】
したがって、熱抵抗が低い実装が可能なので、高電流注入においても光出力の低下が少なく、信頼性の高い半導体発光素子を提供することができる。
【0068】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態の半導体発光装置50及び半導体発光装置モジュール60を示す斜視図である。
【0069】
本実施形態の半導体発光装置50は、第1の実施形態の半導体発光素子10及び導光体51を有している。以下においては、導光体51が蛍光体プレートである場合を例に説明する。すなわち、本実施形態の半導体発光装置50は、混色光を出射する発光装置として構成されている。
【0070】
半導体発光装置50は、半導体発光素子10と、半導体発光素子10上に設けられた導光体を有している。より詳細には、蛍光体プレート51が半導体発光素子10の光出射面11E上に接着層52によって接着されている(
図1Bを参照)。
【0071】
半導体発光素子10は、例えば青色光を放射する発光素子(LED)であり、蛍光体プレート51は、例えばYAG:Ceであって、波長変換光として黄色光を出射する。したがって、白色の混色光LMが蛍光体プレート51の上面から出射される。接着層52には透光性の接着剤、例えば透光性シリコーン樹脂が用いられる。
【0072】
半導体発光素子10及び蛍光体プレート51は外形形状及び外形サイズが同一であり、例えば矩形板形状を有している。すなわち、半導体発光素子10及び蛍光体プレート51は、共通の外側面を有している。なお、蛍光体プレート51の外形形状は、半導体発光素子10の外形形状より5~10%程度小さくても大きくても良い。
【0073】
本実施形態の半導体発光装置モジュール60は、回路基板上に実装された半導体発光装置50を有している。より具体的には、半導体発光装置モジュール60において、半導体発光装置50は、pパッド電極28A、nパッド電極28B及び2つの中間パッド電極29を下向きにして回路基板のアノード配線43A及びカソード配線43Bにそれぞれ接合部材41A及び接合部材41Bにより接合して実装されている。
【0074】
より詳細には、例えばアノード配線43Aは、その幅WAがカソード配線43Bの幅WBよりも広いランドとして形成され、半導体発光装置50のpパッド電極28Aと2つの中間パッド電極29とがアノード配線43Aに接合され、nパッド電極28Bがカソード配線43Bに接合されている。
【0075】
このように、中間パッド電極29は発光機能部15Mとは絶縁されているので、放熱性を高めたい方の電極(例えば、アノード)として中間パッド電極29を用いることができ、したがって、接合面積を広くすることができるので、放熱性を向上することができる。
【0076】
以上、説明したように、本実施形態によれば、半導体発光装置及び半導体発光装置モジュールの放熱性が高いので、高電流注入においても光出力の低下が少なく、高出力で信頼性の高い半導体発光装置及び半導体発光装置モジュールを提供することができる。
【0077】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態の半導体発光装置モジュール70について、図面を参照して、以下に詳細に説明する。
図5Aは、半導体発光装置モジュール70の上面を模式的に示す上面図である。
図5Bは、
図5Aの線A-Aに沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0078】
本実施形態の半導体発光装置モジュール70は、回路基板71上に立設された枠体72内に配置された複数の半導体発光装置50を有している。枠体72は、例えば樹脂からなる樹脂ダムとして形成され、枠体72内に4つの半導体発光装置50が一列に配列されている場合を例に説明する。
【0079】
複数の半導体発光装置50と枠体72との間、及び隣接する半導体発光装置50の間は封止樹脂72Fによって封止され、複数の半導体発光装置50に接続されたアノード端子78A、カソード端子78B及び短絡検出端子78Cが設けられている。また、半導体発光装置モジュール70を固定するための固定穴71Hが設けられている。
【0080】
図5Bに示すように、複数の半導体発光装置50は回路基板71の回路配線73によって直列に接続されている。より詳細には、一方の配列端部(図において左端)の半導体発光装置50のnパッド電極28Bは回路配線73のカソード配線73Bに接続されている。また、他方の配列端部(右端)の半導体発光装置50のpパッド電極28Aは回路配線73のアノード配線73Aに接続されている。
【0081】
半導体発光装置50のpパッド電極28A及び隣接する半導体発光装置50のnパッド電極28Bは回路配線73の接続配線73Cに接合され、電気的に接続されている。かかる接続により互いに隣接する半導体発光装置50間の直列接続がなされている。
【0082】
また、全ての半導体発光装置50の中間パッド電極29は中間配線73Iに接続されている。中間配線73Iは、回路基板71を貫通する金属からなるビア配線71Vを介して回路基板71の裏面の裏面金属層75に接続されている。
【0083】
ここで、アノード配線73Aはアノード端子78Aに接続され、カソード配線73Bはカソード端子78Bに接続されている。また、中間配線73Iは短絡検出端子78Cに接続されている。
【0084】
裏面金属層75は、ヒーシンク接合層76によってヒーシンク77に接合されている。したがって、半導体発光装置50により発生した熱は、中間パッド電極29、中間配線73I、ビア配線71V、裏面金属層75及びヒーシンク77を経て放熱される。
【0085】
より詳細には、半導体発光装置50で発生した熱は、半導体発光素子10に設けられた中間電極29よって、熱伝導率の高い金属(例えば銅、銀、金)を介して直接ヒートシンク77へ放熱される。したがって放熱効率が高く、発光効率を高く維持することができる。
【0086】
次に、半導体発光装置モジュール70の製造工程について
図6A~
図6Cに示す上面図を参照して説明する。まず、
図6Aに示すように、アノード配線73A、カソード配線73B、中間配線73I及び接続配線73Cを含む回路配線73と、枠体72とを有する回路基板71を準備する。なお、図には、半導体発光素子10が実装される実装領域10Rが破線で示されている。
【0087】
例えば、回路基板71としては、ガラス繊維強化エポキシ樹脂基板、絶縁層/銅コア等の金属コア基板、窒化アルミやアルミナ等のセラミック基板などを用いることができる。
【0088】
続いて、
図6Bに示すように、実装領域10Rに半導体発光素子10が接合部材74によって接合されて実装される。また、この際、ツェナーダイオードなどの保護素子79が回路配線73上に、各半導体発光素子10に対して並列に実装される。なお、接合部材74としては、錫銅系の鉛フリーはんだなどが好ましい。
【0089】
続いて、
図6Cに示すように、半導体発光素子10上に蛍光体プレート51が透光性の接着層52によって接着される。
【0090】
最後に、枠体72の内側に封止樹脂72Fを注入し、半導体発光装置50と枠体72との間、及び隣接する半導体発光装置50の間を充填して、
図5Aに示した半導体発光装置モジュール70が完成する。
【0091】
なお、半導体発光素子10を回路基板71上に接合した後に半導体発光素子10上に導光体である蛍光体プレート51を接着する場合を例に説明したが、半導体発光素子10上に導光体が接着された半導体発光装置、例えば第2の実施形態の半導体発光装置50が回路基板71上に実装されてもよい。
【0092】
以上、説明したように、本実施形態によれば、複数の半導体発光装置を配列した場合であっても、放熱性が高く、高電流注入においても光出力の低下が少なく、高出力で信頼性の高い半導体発光装置モジュールを提供することができる。
【0093】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態の半導体発光素子80について、図面を参照して、以下に詳細に説明する。
図7は、半導体発光素子80の上面を模式的に示す上面図である。
【0094】
本実施形態の半導体発光素子80は、pパッド電極28A、nパッド電極28Bパ及び中間パッド電極29(1)、29(2)がm行×n列(2≦m、2≦n)のマトリクス状に配列されている点で第1の実施形態の半導体発光素子10と異なる。
【0095】
より詳細には、矩形形状のpパッド電極28A、nパッド電極28B及び2つの中間パッド電極29(1)、29(2)が2行2列で、溝GP1(y方向)及び溝GP2(x方向)によって隔てられて配列されている。また、これらの4つのパッド電極は、半導体発光素子80の互いに直交する中心線CL1及びCL2に対して対称に配置されている。
【0096】
また、発光機能部15Mの延在方向の溝GP1及び当該延在方向に直交する方向の溝GP2は、最終溶融点MPを通るように、すなわち最終溶融点MPが溝GP1及びGP2内に位置するように設けられている。
【0097】
例えば、溝GP1及び溝GP2は、半導体発光素子80の中心線CL1及びCL2の交点を通るように形成されている。あるいは、溝GP1及び溝GP2は、4つのパッド電極全体の外縁(矩形形状)の中心を通るように形成されていてもよい。
【0098】
上記したようにパッド電極をm行×n列で配置する場合において、当該パッド電極間の溝GPのうち、最終溶融点MPを通る溝GP1及びGP2を設けることがガス排出の点で効果的である。
図7に示す場合では、溝GP1及びGP2は、特にガス排出効果の高い分離溝GP1、GP2として機能する。
【0099】
さらに、pパッド電極28A及びnパッド電極28Bは対角位置に配されている。この場合、pパッド電極28A及び中間パッド電極29(1)を回路基板のアノード配線に、nパッド電極28B及び中間パッド電極29(2)をカソード配線に接続する、すなわち行方向(x方向)に中間パッド電極を組み合わせる形態をとることができる。あるいは、列方向(y方向)に中間パッド電極とpパッド電極28A又はnパッド電極28Bを組み合わせる形態をとることができる。あるいは、pパッド電極28Aと2つの中間パッド電極29(1)及び29(2)を組み合わせ、nパッド電極28Bを単独で用いるなど、放熱設計に応じて組み合わせることができる。従って、放熱性の高い半導体発光装置モジュールを提供することができる。また、90°回転させて実装可能であるなど、マウント性も高い。
【0100】
特に、複数の半導体発光素子80を配列した半導体発光装置モジュールの場合においては、各半導体発光素子80の配置位置などに応じてパッド電極を組み合わせることによって、放熱性が高く、かつ放熱均一性及び光出力均一性が高い半導体発光装置モジュールを提供することができる。
【0101】
図8は、半導体発光素子80の改変例である半導体発光素子85を模式的に示す上面図である。
図7に示した半導体発光素子80とは、矩形形状のpパッド電極28A、nパッド電極28B及び2つの中間パッド電極29(1)、29(2)の角部が面取りされた面取り部CCを有する点が異なっており、その他の構成は同一である。
【0102】
かかる構成によれば、ガス排出路となる溝GP1及びGP2の端部が拡がっているため、フラックスガスの排出性が向上する。なお、面取り部CCの形状は曲線状でも、直線状であってもよい。また、pパッド電極28A、nパッド電極28B及び2つの中間パッド電極29(1)、29(2)の4隅が面取りされていることが好ましい。
【0103】
なお、パッド電極をマトリクス配置した半導体発光素子80について説明したが、これに限定されない。本実施形態のパッド電極の構成は、半導体発光素子80上に蛍光体プレート等の導光体が接着された半導体発光装置、及び当該半導体発光装置の複数を配置して実装した半導体発光装置モジュールについても適用が可能であり、上記したのと同様な効果が得られる。
【0104】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、放熱性能が高く、高電流注入においても光出力の低下が少なく、高出力で信頼性の高い半導体発光素子、半導体発光装置及び半導体発光装置モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0105】
10,80,85:半導体発光素子,11:基板、12:第1半導体層、13:発光層、14:第2半導体層、15:発光機能層、15M:発光機能結晶部、15G:結晶分離溝15G、22:n電極(第1電極)、22B:nパッド接続部、23:p電極(第2電極)、23A:pパッド接続部、25:素子絶縁膜、25A:第1絶縁膜、25B:第2絶縁膜、26:配線層、28A:第2パッド電極(pパッド電極)、28B:第1パッド電極(nパッド電極)、29:中間パッド、43A、アノード配線、43B:カソード配線、50:半導体発光装置、51:導光体(蛍光体プレート)、60,70:半導体発光装置モジュール、71:回路基板、72:枠体、72F:封止樹脂、GP:パッド分離溝、MP:最終溶融点、77:ヒーシンク