(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130981
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】配管貫通部の雨仕舞い構造およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
F16L 5/02 20060101AFI20230913BHJP
F16L 5/10 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
F16L5/02 L
F16L5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035607
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 順三
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により施工の手間を低減し得る配管貫通部の雨仕舞い構造およびその施工方法を提供する。
【解決手段】壁1の開口1aを貫通するように設けられる管2と、円筒形の胴部5aの端部に径方向外側へ広がる鍔部5bを設けたカラー材5と、壁1の開口1aの近傍にある建築の構造体に管2を固定する支持体8とを備える。カラー材5は、胴部5aを管2が軸方向に貫通し、且つ壁1に鍔部5bが接するように設けられると共に、管2と胴部5aの間にシール材6aが施され、且つ壁1と鍔部5bの間にシール材6bが施される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の開口を貫通するように設けられる管と、
円筒形の胴部の端部に径方向外側へ広がる鍔部を設けたカラー材と、
前記壁の開口の近傍にある建築の構造体に管を固定する支持体とを備え、
前記カラー材は、前記胴部を前記管が軸方向に貫通し、且つ前記壁に前記鍔部が接するように設けられると共に、
前記管と前記胴部の間にシール材が施され、且つ前記壁と前記鍔部の間にシール材が施されること
を特徴とする配管貫通部の雨仕舞い構造。
【請求項2】
前記管と前記胴部の間に、前記管の外周面と前記胴部の内周面との間で圧縮されるよう隙間支持材が設けられること
を特徴とする請求項1に記載の配管貫通部の雨仕舞い構造。
【請求項3】
前記管は、内部を流体が流通する管本体と、該管本体の外周面を包囲する保温材と、該保温材の表面を覆うラッキングカバーとを備えて構成され、
前記カラー材は、前記管の表面をなすラッキングカバーを前記胴部が覆うように設けられ、
前記管と前記胴部の間のシール材は、前記ラッキングカバーの表面と前記胴部との間に施されること
を特徴とする請求項1に記載の配管貫通部の雨仕舞い構造。
【請求項4】
前記管と前記胴部の間に、前記ラッキングカバーの表面と前記胴部の内周面との間で圧縮されるよう隙間支持材が設けられること
を特徴とする請求項3に記載の配管貫通部の雨仕舞い構造。
【請求項5】
壁の開口に対して直部を貫通させて建築構造体に接合した支持体に固定する管の施工ステップと、
円筒形の胴部の端部に径方向外側へ広がる鍔部を設けたカラー材の前記胴部を施工中の前記直部を含む管の未接続端部から通すステップと、
前記カラー材を、壁の開口に通した前記管の軸方向に沿って前記壁に向かって移動させるステップと、
前記管と前記胴部の間および前記壁と前記鍔部の間にシール材を施すステップと
を実行することを特徴とする配管貫通部の雨仕舞い構造の施工方法。
【請求項6】
前記カラー材を壁の開口に通した前記管の軸方向に沿って前記壁に向かって移動させる前記ステップの前に、
前記管の表面における前記胴部に覆われる位置に隙間支持材を取り付けるステップを実行すること
を特徴とする請求項5に記載の配管貫通部の雨仕舞い構造の施工方法。
【請求項7】
壁の開口に対して直部を貫通させて建築構造体に接合した支持体に固定する管の施工ステップと、
円筒形の胴部の端部に径方向外側へ広がる鍔部を設けたカラー材の前記胴部を、施工中の内部を流体が流通する前記直部を含む管本体の未接続端部から通すステップと、
前記管本体に対して該管本体の外周面を包囲する保温材を巻回したのち、該保温材の表面を覆うラッキングカバーを施工するステップと、
前記管のラッキングカバーと前記胴部の間のシール材のバックアップ材として、前記管のラッキングカバー表面における前記胴部に覆われる位置に隙間支持材を取り付けるステップと、
前記ラッキングカバーの表面に自身の内径が当たらないよう前記胴部を、壁の開口に通したラッキングカバーが施された前記管本体の軸方向に沿って前記壁に向かって移動させるステップと、
前記管のラッキング表面と前記壁と前記鍔部の間にシール材を施すステップとを実行すること
を特徴とする配管貫通部の雨仕舞い構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁等に配管が貫通する部分に設けられる雨仕舞いの構造、およびこれを施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルや工場といった各種の施設においては、塔屋のハト小屋や機械室の外壁などの外部に面する壁において各種の配管が壁を貫通するように設けられる場合がある。そして、その壁が屋外に面している場合には、壁を貫通する配管と、前記壁との間に雨水が侵入することを抑えるための雨仕舞いと称する構造が、前記配管の貫通部における屋外側に設けられる。
【0003】
下記特許文献1には、こうした配管貫通部に設けられる雨仕舞いの構造の一例が記載されている。特許文献1の
図2に記載された雨仕舞いは、建屋外壁に取付けられた鉄板壁(例えば塔屋ハト小屋の垂直開口面の塞ぎ鉄板壁)と、固定部および可動部によって構成されるレインカバーを備えており、固定部は前記鉄板壁に設けられた配管を通すための開口の縁から円筒形をなして屋外側へ突出し、その先端部には径方向外側へ広がるように鍔状の突起が設けられている。可動部は、この固定部を貫通するように設置される配管の外装板に、径方向外側へ突出するように鍔状に設けられ、その外周部は前記固定部の先端部を包み込むように径方向内側へ折り返して前記先端部と係合するようになっている。このような構造により、配管は可動部が該可動部と係合する固定部に吊り下げられて建屋外壁および鉄板壁に保持されると共に、固定部の先端部が可動部に包囲されることにより、固定部と配管の隙間に雨水が侵入することが抑えられる(尚、このような構造では雨水の侵入を完全に防ぐことはできず、固定部と可動部の隙間からいくらかは染み込むことになるが、そのようにして侵入した雨水は可動部の下部に設けられたドレーンホールから排出される)。且つ、配管は建屋外壁および鉄板壁に対しある程度の動きを許容される。特に、例えば配管内を空調のための熱媒が流通しているような場合には、前記配管は熱媒の温度に応じて伸縮するので、建屋外壁に対して完全に固定することなく、動きや変形を許容しつつ保持する必要があり、そのためにこのような構造の雨仕舞いが設けられるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-248043号公報
【特許文献2】特開平10-332053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の如き従来の雨仕舞い構造に用いられる鉄板壁やレインカバーといった部品は、外壁に対する配管の設置状況に合わせて工事毎に製作される特注品である。そして、これらを製作するには、鉄板壁の開口と、レインカバーの固定部および可動部、そして配管、という計4箇所の軸を互いに合わせる必要があり、このための芯出しや各部の寸法取りといった作業に多くの手間と時間がかかる。その結果、配管貫通部の工事費用が高額になってしまうほか、鉄板壁やレインカバーの出来上がりまでに待ち時間が生じて工期が伸びる原因となる場合もあった。
【0006】
尚、上記特許文献2にも、特許文献1に記載のものとはやや異なる配管貫通部の雨仕舞い構造が記載されているが、これもカバープレートである鉄板壁の開口が特別に現地合わせした特注品で部品も多いという、特許文献1と同様の問題を抱えている。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な構成により施工の手間を低減し得る配管貫通部の雨仕舞い構造およびその施工方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、壁の開口を貫通するように設けられる管と、円筒形の胴部の端部に径方向外側へ広がる鍔部を設けたカラー材と、前記壁の開口の近傍にある建築の構造体に管を固定する支持体と、を備え、前記カラー材は、前記胴部を前記管が軸方向に貫通し、且つ前記壁に前記鍔部が接するように設けられると共に、前記管と前記胴部の間にシール材が施され、且つ前記壁と前記鍔部の間にシール材が施されることを特徴とする配管貫通部の雨仕舞い構造に係るものである。
【0009】
本発明の配管貫通部の雨仕舞い構造においては、前記管と前記胴部の間に、前記管の外周面と前記胴部の内周面との間で圧縮されるよう隙間支持材を設けることができる。
【0010】
本発明の配管貫通部の雨仕舞い構造において、前記管は、内部を流体が流通する管本体と、該管本体の外周面を包囲する保温材と、該保温材の表面を覆うラッキングカバーとを備えて構成し、前記カラー材は、前記管の表面をなすラッキングカバーを前記胴部が覆うように設け、前記管と前記胴部の間のシール材は、前記ラッキングカバーの表面と前記胴部との間に施すことができる。
【0011】
本発明の配管貫通部の雨仕舞い構造においては、前記管と前記胴部の間に、前記ラッキングカバーの表面と前記胴部の内周面との間で圧縮されるよう隙間支持材を設けることができる。
【0012】
また、本発明は、壁の開口に対して直部を貫通させて建築構造体に接合した支持体に固定する管の施工ステップと、円筒形の胴部の端部に径方向外側へ広がる鍔部を設けたカラー材の前記胴部を施工中の前記直部を含む管の未接続端部から通すステップと、前記カラー材を、壁の開口に通した前記管の軸方向に沿って前記壁に向かって移動させるステップと、前記管と前記胴部の間および前記壁と前記鍔部の間にシール材を施すステップとを実行することを特徴とする配管貫通部の雨仕舞い構造の施工方法にかかるものである。
【0013】
本発明の配管貫通部の雨仕舞い構造の施工方法においては、前記カラー材を壁の開口に通した前記管の軸方向に沿って前記壁に向かって移動させる前記ステップの前に、前記管の表面における前記胴部に覆われる位置に隙間支持材を取り付けるステップを実行することができる。
【0014】
本発明の配管貫通部の雨仕舞い構造の施工方法においては、壁の開口に対して直部を貫通させて建築構造体に接合した支持体に固定する管の施工ステップと、円筒形の胴部の端部に径方向外側へ広がる鍔部を設けたカラー材の前記胴部を、施工中の内部を流体が流通する前記直部を含む管本体の未接続端部から通すステップと、前記管本体に対して該管本体の外周面を包囲する保温材を巻回したのち、該保温材の表面を覆うラッキングカバーを施工するステップと、前記管のラッキングカバーと前記胴部の間のシール材のバックアップ材として、前記管のラッキングカバー表面における前記胴部に覆われる位置に隙間支持材を取り付けるステップと、前記ラッキングカバーの表面に自身の内径が当たらないよう前記胴部を、壁の開口に通したラッキングカバーが施された前記管本体の軸方向に沿って前記壁に向かって移動させるステップと、前記管のラッキング表面と前記壁と前記鍔部の間にシール材を施すステップとを実行することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の配管貫通部の雨仕舞い構造およびその施工方法によれば、簡単な構成により施工の手間を低減するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施による配管貫通部の雨仕舞い構造の一例を示す正断面図である。
【
図2】
図1の配管貫通部の雨仕舞い構造の外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施による配管貫通部の雨仕舞い構造の施工方法の手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】配管貫通部の雨仕舞い構造の施工における一段階を示す正面図であり、壁は断面にて示している。
【
図5】配管貫通部の雨仕舞い構造の施工における別の段階を示す正面図である。
【
図6】配管貫通部の雨仕舞い構造の施工におけるさらに別の段階を示す正面図であり、壁を断面にて示すほか、管の一部を切り欠いて示している。
【
図7】配管貫通部の雨仕舞い構造の施工におけるさらに別の段階を示す正面図であり、壁は断面にて示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1、
図2は本発明の実施による配管貫通部の雨仕舞い構造の形態の一例を示している。建物の外壁等である壁1には開口1aが設けられ、この開口1aを貫通するように管2が設置される。壁1は平滑な表面の軽量気泡コンクリートや鋼板仕上げのような巣の無い平滑な表面の外壁であることが望ましい。
【0019】
本実施例の場合、管2としては空調設備の熱媒を運搬するための管を想定しており、管2は、内部に熱媒等の流体が流通する管本体2aの外周面を保温材3が包囲し、さらに該保温材3の外壁外部の表面を中心にラッキングカバー4が覆う構造をなしている。
【0020】
そして本実施例の場合、雨仕舞い構造として、
図1、
図2に示す如きカラー材5を備えた構造を採用している。カラー材5は、円筒形の胴部5aと、該胴部5aの軸方向に関する端部に設けられた鍔部5bを備えて構成される部品である。鍔部5bは、胴部5aの一端に設けられた板状の部分であり、円形をなす胴部5aの縁から、径方向外側へ広がるように形成され、全体として円盤状をなしている。尚、カラー材5としては、例えばスパイラルダクト用のカラーとして販売されている製品を使用することができる。
【0021】
カラー材5は、円筒形の胴部5aを管2が軸方向に貫通するように設置され、且つ、一端に設けられた鍔部5bが壁1に対し(次に述べるシール材6aを挟んで)接するように配置される。胴部5aと管2の外周面の間、および鍔部5bと壁1の間には、それぞれシール材6a,6bが施される。管2とカラー材5およびシール材6aの位置的な関係をより詳しく述べれば、カラー材5は、外壁外部に施工される管2の表面をなすラッキングカバー4を胴部5aがさらに覆うように設けられており、管2と胴部5aの間のシール材6aは、ラッキングカバー4の表面と胴部5aとの間に施されている。シール材6a,6bは、管2やカラー材5、壁1の構成部材(金属や樹脂、木材などの固体)に対して付着力を有すると共にある程度の伸縮性を備えた軟質のパテ状の素材であり、例えばコーキング用のパテとして販売されている素材を使用することができる。
【0022】
こうして、カラー材5とシール材6a,6bによって管2が壁1に対して保持されると共に、このシール材6a,6bにより、胴部5aと管2の外周面の間、および鍔部5bと壁1の間の隙間が閉塞される。そして、シール材6a,6bが必要に応じて変形し、各部材に対し隙間の閉塞を保ったまま追従することにより、管2の壁1に対する動きを許容しながら、壁1、管2およびカラー材5といった部材間への雨水の侵入が抑えられる。
【0023】
また、胴部5aと管2の間には、隙間支持材7が挟み込まれる。この隙間支持材7は、軟質で弾力性のある発泡樹脂等により形成された紐状の素材であり、例えばバックアップ材などの用途あるいは名称にて販売されている素材を使用することができる。このような隙間支持材7を、管2の表面に施されたラッキングカバー4の外周面に巻きつけ、ここに胴部5aが隙間支持材7を覆うようにカラー材5を配置すると、隙間支持材7が胴部5aの内周面と管2の外周面(ラッキングカバー4の表面)の間で圧縮され、その弾発力によって管2をカラー材5に対し適当な位置に保持する。
【0024】
管2は、建物の内側の位置にて固定管(構造物に対して固定された別の管)に対し接続されており、その外壁側でさらに貫通管の固定として固定部10によって建物の構造体(躯体である梁や壁、さらにそこに強固に固定される鋼材など)に固定されている。固定部10は間に接合する部分はスチールバンドの固定用であってもよく、熱による収縮をこの固定部の両側に逃がすこととなる。今回の壁の開口の近傍に固定部10があることで、開口1aでの熱収縮変異は小さくなる。これにより管2が壁1、ないし該壁1の設けられた建物等の構造物に対し固定されている(このように管2が固定される部分を便宜上、支持部8と称する)。この支持体8の位置は、管2が壁1を貫通する位置のなるべく近傍(好ましくは、管2の軸方向に沿って壁1から10m以内、より好ましくは10cm以上7m以下程度)とすると良い。カラー材5やシール材6a,6bを用いた上述の如き構造により管2を壁1に対して設置する場合、上記特許文献1に記載の如き構造と比較すると、雨仕舞い構造による管2の支持力が弱いためであり、また、壁1に対して許容される管2の移動量が小さいためである。
【0025】
特許文献1に記載の雨仕舞い構造では、金属製の部材同士(レインカバーを構成する可動部と固定部)が係合することで貫通部において配管が建屋外壁に対し支持されていたが、本実施例の構造では、軟質のシール材6a,6bや隙間支持材7によって管2を壁1に対し支持することになる。このため、管2の貫通部における支持強度は低くなりがちである。
【0026】
また、管2の素材は温度に応じて伸縮し、これによって壁1に対し移動・変形することになる。特に、管2の内部を空調用の熱媒等が流通する場合、管2の伸縮量は大きい。配管貫通部に設けられる雨仕舞いでは、この管2の動きを許容する必要があるが、本実施例の如き構造の場合、金属製の部材同士の動きによって管の動きを許容する特許文献1に記載の如き構造と比べると、シール材6a,6bの変形によって管2の動きを許容するため、動きを許容し得る絶対量が小さくなる。
【0027】
そこで、貫通部のなるべく近傍に支持体8を設け、管2をより強固に支持するほか、その位置で管2を固定して貫通部における管2の移動量を許容範囲内に抑えるのである。
【0028】
具体的には、例えば管2がステンレス鋼で構成されているとすると、線膨張係数は1.2×10-5/℃程度である。管2の内部を空調用の熱媒が流通するとした場合、時季による熱媒の温度差は通常、せいぜい50℃程度であり、100℃を超えることはない。つまり、管2は時季により、1mあたりおよそ1.2×10-5×50=6.0×10-4[m]、すなわち0.6mm程度伸縮する可能性がある。壁1と建屋内縦管との間の配管長さが例えば5mとすると、壁1における貫通部では、管2の位置は時季によって約3mm程度、軸方向にずれることになる。さらに縦管の伸縮もあり、壁1の開口近傍に固定部10で押さえれば管2の伸縮による移動量は、シール材6a,6bの変形による許容量以内であり、シール材6a,6bは管2とカラー材5の間、および壁1とカラー材5の間で伸縮することにより、これらの部材に追従して部材間の隙間を塞ぎ、雨水の侵入を十分に抑えることができる。
【0029】
このような配管貫通部の雨仕舞い構造を施工する手順の一例を、
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0030】
まず
図4に示す如く、壁1の開口に挿通された管2の管本体2a(直部)について、建屋内の施工済み管(ここでは、壁1の屋内側に設けられた縦管との接続部)に接続し、その後、固定部10で建築の構造体に対して強固に固定する(ステップS1)。続いて
図5に示す如く、ラッキングを施す前の施工途上の管2(すなわち、管本体2a)に対し、壁1近傍の管2の未接続端部からカラー材5の胴部5aを通す(ステップS2)。このとき、管2に対するカラー材5の向きは、胴部5aの一端に設けられた鍔部5bが壁1側に向くようにする。カラー材5の胴部5aの内径は、この状態の管2(管本体2a)の外径より大きい。続いて、ここから
図6に示す如く、管本体2aに保温材3を巻き付け、建屋内の保温仕上げを固定部側では行い、壁1の外部側では開口1aを貫通しながらラッキングカバー4を巻きつけ、管2にラッキングを施す(ステップS3;尚、
図6では説明の便宜上、管2のラッキング(保温材3およびラッキングカバー4)の一部を切り欠いた状態を図示している)。
【0031】
管2の表面の壁1近傍、完成状態(
図1、
図2参照)においてカラー材5の胴部5aに覆われる位置に、隙間支持材7をラッキングカバー4の上から環状に巻きつけるようにして取り付ける(ステップS4;
図6参照)。ここで隙間支持材7は、管2のラッキングカバー4と胴部5aの間のシール材のバックアップ材となっている。次に
図6中に矢印で示すごとく、ラッキングカバー4の表面に自身の内径が当たらないよう胴部5aの位置を調整しつつ、カラー材5を管2の軸に沿って鍔部5bが壁1に接する位置まで壁1に向かって移動させる(ステップS5;
図7参照)。このとき、隙間支持材7はカラー材5の胴部5aの内周面と、ラッキングカバー4の表面との間で圧縮され、その弾発力により、管2とカラー材5の相互間の位置が適度な力で互いに拘束される。管2と胴部5aの間、および壁1と鍔部5bの間にシール材6a,6bをそれぞれ施し(ステップS6)、施工は完了する(
図1、
図2参照)。
【0032】
このような本実施例の如き配管貫通部の雨仕舞い構造では、例えば上記特許文献1に記載の如き雨仕舞いにおけるレインカバーの代わりに簡単な構造のカラー材5を用い、該カラー材5とシール材6a,6bおよび隙間支持材7によって管2を支持すると共に、雨水の侵入を抑えるようにしている。
【0033】
特許文献1に記載の如きレインカバーやこれの取付けられた鉄板壁は、複雑な構造の特注品であり、芯出しや寸法出し、鉄板壁への取付けといった工程に多大な手間と時間がかかるが、本実施例ではこのレインカバーに概ね相当する役割を、カラー材5とシール材6a,6bおよび隙間支持材7が果たす。また、鉄板壁に相当する部材は必要なく、建物を構成する壁1に直接開口1aを設け、ここにカラー材5による雨仕舞い構造を取り付けることができる。カラー材5は、単純な構造の部品であり、特にカラー材5としてスパイラルダクト用のカラーを用いる場合、様々な径の管に対応する寸法の製品が安価で販売されている。つまり、管2の寸法に合ったカラー材5を、特注品として製作することなく、安価かつ容易に入手することができる。しかも、壁1に設けられた開口1aと管2、カラー材5の間に多少の位置ずれがあったとしても、軟質のシール材6a,6bにより部材間の隙間を埋めることで雨水の侵入は十分に防ぐことができるので、厳密な寸法出しや芯出しの必要がなく、施工も容易である。したがって、レインカバーの製作にかかる時間と費用を大幅に節減し、工期を短縮することができる。
【0034】
尚、ここに説明した実施例はあくまで一例であって、本発明の実施にあたり、各部の構成は現場の状況等に応じて適宜変更してよい。例えば、管2の貫通する開口1aについて、ここでは壁1に直接設けた場合を例示したが、その代わりに、例えば上記特許文献1における鉄板壁にあたるような部材を壁に取り付け、これに開口を設けるようにしてもよい。管2に関しても、ここでは保温材3とラッキングカバー4を備えた空調用の熱媒の配管を想定したが、管の用途や構造等にも適宜の形態が想定できる。また、管2を壁1への貫通位置と別に固定する支持体8に関しても、ここでは固定管に接続された場合を説明したが、これ以外に例えば壁1や床等の構造材に管2を固定するための固定具等を備えるようにしてもよい。
【0035】
また、
図3に示した各工程に関しても、施工を支障なく実行し得る範囲において適宜順序を入れ替えたり、一部の工程を省きあるいは別の工程を付け足してもよいし、また、工程の内容を適宜変更してもよい。
【0036】
以上のように、上記本実施例の配管貫通部の雨仕舞い構造は、壁1の開口1aを貫通するように設けられる管2と、円筒形の胴部5aの端部に径方向外側へ広がる鍔部5bを設けたカラー材5と、壁1の開口1aの近傍にある建築の構造体に管2を固定する支持体8とを備え、カラー材5は、胴部5aを管2が軸方向に貫通し、且つ壁1に鍔部5bが接するように設けられると共に、管2と胴部5aの間にシール材6aが施され、且つ壁1と鍔部5bの間にシール材6bが施されている。
【0037】
また、本実施例の配管貫通部の雨仕舞い構造の施工方法においては、壁1の開口に挿通された管2の管本体2a(直部)について、建屋内の施工済み管(ここでは、壁1の屋内側に設けられた縦管との接続部)に接続し、その後、固定部10で建築の構造体に対して強固に固定する施工ステップS1と、続いて円筒形の胴部5aの端部に径方向外側へ広がる鍔部5bを設けたカラー材5の胴部5aを施工中の管2の未接続端部から通すステップS2と、カラー材5を、壁1の開口1aに通した管2の軸方向に沿って壁1に向かって移動させるステップS5と、管2と胴部5aの間および壁1と鍔部5bの間にシール材6a,6bを施すステップS6とを実行している。
【0038】
このようにすれば、簡単な構造のカラー材5と、シール材6a,6bによって管2を支持すると共に、シール材6a,6bの変形によって壁1に対する管2の動きを許容しつつ、雨水の侵入を抑えることができる。
【0039】
本実施例の配管貫通部の雨仕舞い構造においては、管2と胴部5aの間に、管2の外周面と胴部5aの内周面との間で圧縮されるよう隙間支持材7を設けている。
【0040】
また、本実施例の配管貫通部の雨仕舞い構造の施工方法においては、カラー材5を壁1の開口1aに通した管2の軸方向に沿って壁1に向かって移動させるステップS5の前に、管2の表面における胴部5aに覆われる位置に隙間支持材7を取り付けるステップS4を実行している。
【0041】
このようにすれば、隙間支持材7の弾発力によって管2をカラー材5に対し適当な位置に保持することができる。
【0042】
本実施例の配管貫通部の雨仕舞い構造において、管2は、内部を流体が流通する管本体2aと、該管本体2aの外周面を包囲する保温材3と、該保温材3の表面を覆うラッキングカバー4とを備えて構成され、カラー材5は、管2の表面をなすラッキングカバー4を胴部5aが覆うように設け、管2と胴部5aの間のシール材6aは、ラッキングカバー4の表面と胴部5aとの間に施されている。このようにすれば、ラッキングを施した管2に関し、上述の作用効果を奏することができる。
【0043】
また、本実施例の配管貫通部の雨仕舞い構造においては、管2と胴部5aの間に、ラッキングカバー4の表面と胴部5aの内周面との間で圧縮されるよう隙間支持材7が設けられている。このようにすれば、ラッキングを施した管2を、隙間支持材7の弾発力によってカラー材5に対し適当な位置に保持することができる。
【0044】
また、本実施例の配管貫通部の雨仕舞い構造の施工方法においては、壁1の開口1aに対して管本体2a(直部)を貫通させて建築構造体に接合した支持体8に固定する管の施工ステップS1と、円筒形の胴部5aの端部に径方向外側へ広がる鍔部5bを設けたカラー材5の胴部5aを、施工中の内部を流体が流通する直部を含む管本体2aの未接続端部から通すステップS2と、管本体2aに対して管本体2aの外周面を包囲する保温材3を巻回したのち、保温材3の表面を覆うラッキングカバー4を施工するステップS3と、管2のラッキングカバー4と胴部5aの間のシール材のバックアップ材として、管2のラッキングカバー表面における胴部5に覆われる位置に隙間支持材7を取り付けるステップS4と、ラッキングカバー4の表面に自身の内径が当たらないよう胴部5aを、壁1の開口1aに通したラッキングカバー4が施された管本体2aの軸方向に沿って壁1に向かって移動させるステップS5と、管3のラッキング表面と壁1と鍔部5bの間にシール材6a,6bを施すステップS6とを実行している。
【0045】
したがって、上記本実施例によれば、簡単な構成により施工の手間を好適に低減し得る。
【0046】
尚、本発明の配管貫通部の雨仕舞い構造およびその施工方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 壁
1a 開口
2 管
2a 管本体
3 保温材
4 ラッキングカバー
5 カラー材
5a 胴部
5b 鍔部
6a シール材
6b シール材
7 隙間支持材
8 支持体