(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131018
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】卵様食品、卵様食品の製造方法、及び卵様食品における色調調整方法
(51)【国際特許分類】
A23L 15/00 20160101AFI20230913BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20230913BHJP
A23L 5/44 20160101ALI20230913BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20230913BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
A23J3/00 508
A23L5/44
A23L19/00 Z
A23L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035661
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】514327060
【氏名又は名称】株式会社TWO
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 桂太
(72)【発明者】
【氏名】葛原 大士
【テーマコード(参考)】
4B016
4B018
4B042
【Fターム(参考)】
4B016LC03
4B016LG01
4B016LG02
4B016LG05
4B016LG08
4B016LK01
4B016LK06
4B016LK07
4B016LK08
4B016LK09
4B016LK13
4B016LP04
4B018MA07
4B018MD02
4B018MD04
4B018MD15
4B018MD29
4B018MD34
4B018MD37
4B018MD38
4B018MD52
4B018MD53
4B018MD54
4B018MD57
4B018MF02
4B042AC03
4B042AC05
4B042AD37
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK07
4B042AK08
4B042AK09
4B042AK11
4B042AK13
4B042AP14
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、卵様食品において、植物由来原料を用いて卵
の色合いを生み出すことである。
【解決手段】本発明に係る卵様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合である
。ここで調合されるのは、少なくとも、カロテノイド含有植物の加工品、及び食用油脂で
あり、これによって得られるのは、調合液である。好ましくは、前記調合において、さら
に調合されるのは、さらに穀類の加工品である。また、好ましくは、当該製造方法を構成
するのは、さらに、均質化である。ここで均質化されるのは、前記調合液である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵様食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、カロテノイド含有植物の加工品、及び食
用油脂であり、これによって得られるのは、調合液である。
【請求項2】
請求項1の製造方法であって、前記調合において、さらに調合されるのは、
穀類の加工品である。
【請求項3】
請求項1又は2の製造方法であって、それを構成するのは、さらに、次の工程である:
均質化:ここで均質化されるのは、前記調合液である。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの製造方法であって、
前記調合液のa/b値は、0.3以上、かつ、0.8以下である。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの製造方法であって、
前記調合液のL値は、50以上、かつ、80以下である。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの製造方法であって、前記調合液の
a値は、12以上、かつ、23以下であり、
b値は、25以上、かつ、43以下である。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの製造方法であって、
前記カロテノイドは、β-カロテンである。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかの製造方法であって、
前記カロテノイド含有植物は、ニンジン、カボチャ、パプリカ、柑橘類、及びマンゴー
のうち、何れか一つ以上である。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかの製造方法であって、前記調合において、さらに調合されるの
は、少なくとも、乳化剤、増粘剤、又は凝固剤の何れかである。
【請求項10】
卵様食品であって、
当該卵様食品が含有するのは、少なくとも、カロテノイド含有植物の加工品、及び食用
油脂である。
【請求項11】
請求項10の卵様食品であって、当該卵様食品がさらに含有するのは、穀類の加工品で
ある。
【請求項12】
請求項10又は11の卵様食品であって、
当該卵様食品のa/b値は、0.3以上、かつ、0.8以下である。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れかの卵様食品であって、
当該卵様食品のL値は、50以上、かつ、80以下である。
【請求項14】
請求項10乃至13の何れかの卵様食品であって、
当該卵様食品のa値は、12以上、かつ、23以下であり、
b値は、25以上、かつ、43以下である。
【請求項15】
請求項10乃至14の何れかの卵様食品であって、
当該卵様食品における食用油脂の含有量は、5%以上、かつ20%以下である。
【請求項16】
請求項10乃至15の何れかの卵様食品であって、
前記カロテノイドは、β-カロテンである。
【請求項17】
請求項10乃至16の何れかの卵様食品であって、
前記カロテノイド含有植物は、ニンジン、カボチャ、パプリカ、柑橘類、及びマンゴー
のうち、何れか一つ以上である。
【請求項18】
請求項10乃至17の何れかの卵様食品であって、
当該卵様食品がさらに含有するのは、少なくとも、乳化剤、増粘剤、又は凝固剤の何れ
かである。
【請求項19】
卵様食品の色調を調整する方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程
である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、カロテノイド含有植物の加工品、及び食
用油脂であり、これによって得られるのは、調合液である。
【請求項20】
請求項19の方法であって、前記調合において、さらに調合されるのは、
穀類の加工品である。
【請求項21】
請求項19又は20の方法であって、それを構成するのは、さらに、次の工程である:
均質化:ここで均質化されるのは、前記調合液である。
【請求項22】
請求項19乃至21の何れかの方法であって、
前記調合液のa/b値は、0.3以上、かつ、0.8以下である。
【請求項23】
請求項19乃至22の何れかの方法であって、
前記調合液のL値は、50以上、かつ、80以下である。
【請求項24】
請求項19乃至23の何れかの方法であって、前記調合液の
a値は、12以上、かつ、23以下であり、
b値は、25以上、かつ、43以下である。
【請求項25】
請求項19乃至24の何れかの製造方法であって、
前記カロテノイドは、β-カロテンである。
【請求項26】
請求項19乃至25の何れかの製造方法であって、
前記カロテノイド含有植物は、ニンジン、カボチャ、パプリカ、柑橘類、及びマンゴー
のうち、何れか一つ以上である。
【請求項27】
請求項19乃至26の何れかの方法であって、前記調合において、さらに調合されるの
は、少なくとも、乳化剤、増粘剤、又は凝固剤の何れかである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、卵様食品、卵様食品の製造方法、及び卵様食品における色調調
整方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、動物由来原料の一部、あるいは全部を植物由来の原料に置き換え、動物性食品様
の食品とした、代替食品が作られてきている。
その背景として、種々の点から、動物性食品の摂取を忌避する人がいるからである。一
つの理由は、動物性食品には、コレステロールが含まれていることである。他の理由は、
菜食主義者やヴィーガンは摂取しないようにしていることである。また他の理由は、動物
の飼育による環境負荷の問題である。このような理由から、植物由来原料を用いた代替食
品には、一定の需要がある。
【0003】
代替食品の具体的な態様は、獣肉を用いず、植物性原料を用いて製造した代替肉である
。また別の具体的な態様は、卵を用いず、植物性原料を用いて製造した代替卵である。こ
れまで、代替卵に関する食品の検討は、種々なされてきた。
特許文献1が示すのは、卵様焼成凝固食品であって、卵使用量を減らしつつも卵様焼成
凝固食品を製造するため、熱凝固性植物タンパク素材および大豆クリームを原料として使
用し、凝固させたものである。
【0004】
特許文献2が示すのは、液状組成物であって、卵黄の含有量を低めつつ、生卵黄特有の
食感とするため、特定量の卵黄、乳、アルギン酸ナトリウム、及びカルシウムを含有させ
たものである。
特許文献3が示すのは、スクランブルエッグ様食品の製造法であって、卵液を用いずと
もスクランブルエッグ用の食品を得るため、澱粉性野菜と大豆蛋白ペーストと混錬するこ
とである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2017-169488号公報
【特許文献2】特開第2013-39096号公報
【特許文献3】特開第2002‐119260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、卵様食品において、植物由来原料を用いて卵の色合
い(以下、「色調」ともいう。)を生み出すことである。
代替食品を作る上での課題は、味、香り、食感、色合い、栄養成分、機能性成分など、
種々存在する。中でも色合いは、食べる人の食欲を増す、あるいは、食卓に彩りを添える
といった役割がある。卵の使用を減じ、あるいは全く使用せずに、植物由来原料のみで卵
の色合いを生み出すことは、代替卵を作る上での一つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者が検討していたのは、食品添加物として用いられる着色料を極力使用せず、
如何に、植物由来の食品原料で卵の色合いを生み出すかである。上記検討の結果、本願発
明者が見出したのは、(1)植物由来原料と食用油を乳化することで、色相、及び彩度が
変化すること、(2)白色の植物由来原料の使用により、特に明度を変化させられること
、さらには(3)凝固により乳化状態を安定的に保つことができること、である。特にカ
ロテノイド含有物と油脂の乳化、さらには、白色原材料の混合により、卵様の黄色を形成
することができることがわかった。上記機序を応用して、本発明を定義すると、以下のと
おりである。
【0008】
本発明に係る卵様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合である。ここで、
人、又は装置によって調合されるのは、少なくとも、カロテノイド含有植物の加工品、及
び食用油脂である。前記調合においてさらに調合されるのは、好ましくは、穀類の加工品
である。さらに好ましくは、前記調合において、さらに調合されるのは、少なくとも、乳
化剤、増粘剤、又は凝固剤の何れかである。
【0009】
本製法を構成するのは、さらに、均質化である。ここで、人、又は装置によって均質化
されるのは、少なくとも、前記調合により得られた調合液である。本製法において、好ま
しくは、前記調合液のa/b値は、0.3以上、かつ0.8以下である。また好ましくは
、前記調合液のL値は、50以上、かつ80以下である。さらに好ましくは、前記調合液
のa値は、12以上、かつ23以下であり、b値は、25以上、かつ43以下である。
【0010】
あわせて、本製法において、好ましくは、前記カロテノイド含有植物の当該カロテノイ
ドは、少なくとも、β‐カロテンである。また、好ましくは、前記カロテノイド含有植物
は、ニンジン、カボチャ、パプリカ、柑橘類、及びマンゴーのうち、何れか一つ以上であ
る。
本発明に係る卵様食品が含有するのは、少なくとも、カロテノイド含有植物の加工品、
及び食用油脂である。前記卵様食品がさらに含有するのは、好ましくは、穀類の加工品で
ある。また、前記卵様食品がさらに含有するのは、好ましくは、少なくとも、乳化剤、増
粘剤、又は凝固剤の何れかである。あわせて、前記卵様食品が含有しないのは、好ましく
は、卵、及び乳である。
【0011】
本発明に係る卵様食品のa/b値は、好ましくは、0.3以上、かつ、0.8以下であ
る。また、好ましくは、前記卵様食品のL値は、50以上、かつ、80以下である。さら
に好ましくは、前記卵様食品のa値は、12以上、かつ、23以下であり、b値は、25
以上、かつ、43以下である。あわせて、好ましくは、前記卵様食品における食用油脂の
含有量は、好ましくは、5%以上、かつ、20%以下である。
【0012】
本発明に係る卵様食品が含有するカロテノイド含有植物において、当該カロテノイドは
、β‐カロテンであることが好ましい。また、好ましくは、当該カロテノイド含有植物は
、ニンジン、カボチャ、パプリカ、柑橘類、及びマンゴーのうち、何れか一つ以上である
。
本発明に係る卵様食品の色調調整方法を構成するのは、少なくとも、調合である。ここ
で、人、又は装置によって調合されるのは、少なくとも、カロテノイド含有植物の加工品
、及び食用油脂である。前記調合においてさらに調合されるのは、好ましくは、穀類の加
工品である。さらに好ましくは、前記調合において、さらに調合されるのは、少なくとも
、乳化剤、増粘剤、又は凝固剤の何れかである。
【0013】
本方法を構成するのは、さらに、均質化である。ここで、人、又は装置によって均質化
されるのは、少なくとも、前記調合により得られた調合液である。本方法において、好ま
しくは、前記調合液のa/b値は、0.3以上、かつ0.8以下である。また好ましくは
、前記調合液のL値は、50以上、かつ80以下である。さらに好ましくは、前記調合液
のa値は、12以上、かつ23以下であり、b値は、25以上、かつ43以下である。
【0014】
あわせて、本方法において、好ましくは、前記カロテノイド含有植物の当該カロテノイ
ドは、少なくとも、β‐カロテンである。また、好ましくは、前記カロテノイド含有植物
は、ニンジン、カボチャ、パプリカ、柑橘類、及びマンゴーのうち、何れか一つ以上であ
る。
【発明の効果】
【0015】
本発明が可能にするのは、植物由来原料を用いて、卵の色合いが生み出された卵様食品
の提供である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】ゲル化剤を用いて作製した、スクランブルエッグ様食品の写真
【発明を実施するための形態】
【0017】
<卵食品>
本願明細書において、卵食品とは、食品であって、卵白と卵黄を均一に混合した卵原料
を主原料して含有するものである。具体的には、卵焼き、スクランブルエッグ、オムレツ
、炒り卵、等である。卵食品の形態としては、液状、ゲル状(半固体状)、又は固体状な
どが挙げられる。
【0018】
<卵様食品>
本発明に係る卵様食品(以下、「本卵様食品」ともいう。)とは、食品であって、卵食
品における卵原料の一部、あるいは全部を植物由来原料に代替したものである。また、本
卵様食品は、外見上卵食品である、あるいは、その用途において卵食品の代替食品である
ものをいう。
【0019】
<カロテノイド含有植物>
本発明の実施の形態におけるカロテノイド含有植物とは、植物であって、カロテノイド
を含有するものである。カロテノイドとは、動植物に広く存在する黄色、橙色又は赤色の
色素である。本願発明において、カロテノイド含有植物は、β-カロテン含有植物である
ことが好ましい。また、本願発明において、カロテノイド含有植物は、ニンジン、カボチ
ャ、パプリカ、柑橘類、及びマンゴーのうち、何れか1つ以上であることが好ましい。本
願発明において、柑橘類は、特に、オレンジ、又はミカンであることが好ましい。あわせ
て、カロテノイド含有植物の加工品とは、加工品であって、カロテノイド含有植物を原料
とするものである。当該加工品の形態は、特に限定されないが、搾汁液、搾汁パルプ、搾
汁液の濃縮汁、乾燥粉末等が挙げられる。
【0020】
<ニンジン加工品>
本発明の実施の形態におけるニンジン加工品とは、加工されたニンジンであり、例示す
ると、ニンジン搾汁、ニンジン濃縮汁、ニンジンパルプ等である。ニンジン搾汁とは、ニ
ンジンを破砕して搾汁し、若しくは裏ごしし、パルプ分の一部、あるいは全部を除去した
ものをいう。また、ニンジン濃縮汁とは、ニンジン搾汁を濃縮したものをいう。ニンジン
濃縮汁を希釈して搾汁の状態に戻したものもニンジン搾汁という。ここで取り込むのは、
「にんじんジュース及びにんじんミックスジュース品質表示基準」(平成23年9月30
日消費者庁告示第10号)における「にんじんジュース」、「にんじんの搾汁」、及び「
濃縮にんじん」等である。
本発明の実施の形態において、原料として用いられるニンジン加工品は、黄色ニンジン
の加工品、又は橙色ニンジンの加工品であることが好ましい。
【0021】
<食用油脂>
本発明の実施の形態に係る食用油脂とは、油脂であって、食用に用いられるものである
。本発明において使用する食用油脂は、植物由来であることが好ましい。食用油脂の具体
的な例を挙げると、亜麻仁油、エゴマ油、オリーブオイル、グレープシードオイル、コー
ン油、ごま油、米油、大豆油、なたね油、パーム油、ひまわり油、べに花油、綿実油、等
である。
【0022】
本発明において、食用油脂を用いる目的は、色調の調整、特に色相の調整である。ニン
ジン搾汁等の植物由来原料と食用油脂とは、調合され、均質化されることによって、乳化
が起こり、色調が変化する。本発明は、当該作用を利用して、卵食品の色調に近づけるも
のである。
本卵様食品における食用油脂の含有量は、特に限定されない。本卵様食品における食用
油脂の含有量の下限値は、好ましくは、1重量%、より好ましくは、2重量%、さらに好
ましくは、3重量%である。本卵様食品における食用油脂の含有量の上限値は、好ましく
は、20重量%、より好ましくは、15重量%、さらに好ましくは、10重量%である。
【0023】
<穀類加工品>
本発明の実施の形態に係る穀類加工品とは、加工された穀類である。本発明の実施の形
態における穀類は、イネ科の植物、及びマメ科の植物を含むものである。穀類を例示する
と、米、小麦、大麦、オーツ麦、大豆、エンドウ豆、インゲン豆、ソラマメ、ひよこ豆、
レンズマメ、アワ、ヒエ、キビ、などが挙げられる。
【0024】
本発明の実施の形態に係る穀類加工品は、好ましくは、穀類の搾汁、又はピューレであ
ることが好ましい。穀類加工品を例示すると、ライスミルク、豆乳、オーツミルク、等で
ある。
本発明において穀類加工品を用いる目的は、色調の調整、特に明度の調整である。穀類
加工品であって、その色相が白色に近いものは、他の食品原料と調合されることによって
、調合液の明度や彩度を変化させ、明るい色調とすることが可能となる。当該観点から、
本発明に用いられる穀類加工品の穀類は、米、小麦、オーツ麦、大豆、白インゲン豆、と
いった、加工品の色調が白色であるものが好ましい。
本卵様食品における穀類加工品の含有量の下限値は、好ましくは、2重量%、より好ま
しくは、3重量%である。本卵様食品における穀類加工品の含有量の上限値は、好ましく
は、20重量%、より好ましくは、10重量%である。
【0025】
<動物性原材料>
本発明の実施の形態に係る動物性原材料とは、食品の原材料であって、その由来が動物
であるものである。動物性原材料を例示すると、牛、豚、鶏、鶏卵、羊、馬、魚、由来の
原材料が挙げられる。本卵様食品において、使用を排除しないのは、鶏卵である。ただし
、動物性原材料を極力使用しない観点から、本卵様食品に含有される卵の重量割合は、好
ましくは、50重量%以下である。より好ましくは、20重量%以下であり、さらに好ま
しくは、10重量%以下であり、最も好ましくは、0重量%である。
【0026】
<その他の植物加工品>
本卵様食品で使用できるのは、前記ニンジン加工品以外の野菜又は果実の加工品である
。この野菜の種類は、不問であるが、例示すると、トマト、カブ、大根、ホウレンソウ、
ピーマン、アスパラガス、大麦若葉、春菊、カラシ菜、サラダ菜、小松菜、明日葉、甘藷
、馬鈴薯、モロヘイヤ、パプリカ、パセリ、セロリ、三つ葉、レタス、ラディッシュ、紫
蘇、茄子、インゲン、カボチャ、牛蒡、ネギ、生姜、大蒜、ニラ、トウモロコシ、さやえ
んどう、オクラ、かぶ、きゅうり、ウリ、ズッキーニ、へちま、もやし等である。果実の
種類も、不問であるが、例示すると、レモン、オレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフ
ルーツ、ミカン、ライム、スダチ、柚子、シイクワシャー、タンカン等の柑橘類、リンゴ
、ウメ、モモ、サクランボ、アンズ、プラム、プルーン、カムカム、ナシ、洋ナシ、ビワ
、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、カシス、クランベリー、ブルーベリー、メロン
、スイカ、キウイフルーツ、ザクロ、ブドウ、バナナ、グァバ、アセロラ、パインアップ
ル、マンゴー、パッションフルーツ、レイシ等である。本卵様食品の色調調整の観点から
、ニンジン以外に使用に適した野菜、又は果実は、カボチャ、パプリカ、オレンジ、又は
マンゴーである。
【0027】
<その他の調味料>
本卵様食品の原材料として、本発明が排除しないのは、調味料の使用である。調味料と
は、材料であって、料理の味を調えるものである。調味料を例示すると、砂糖、食用酢、
みりん、しょうゆ、ウスターソース、塩、うま味調味料、酵母エキス、畜肉エキス等であ
る。動物性原材料不使用の観点から、畜肉エキス、魚エキス等の動物性原料を使用しない
ことが好ましい。また、人工的な呈味を避けることから、うま味調味料、酵母エキスを使
用しないことが好ましい。
【0028】
<添加剤>
本卵様食品は、各種添加剤が適宜添加されていてもよい。当該添加剤は、通常、飲食品
に添加されるものであり、例示すると、甘味料、酸味料、着色料、pH調整剤、酸化防止
剤、香料、増粘剤、凝固剤、乳化剤等である。
一方で、前記、ニンジン加工品と食用油脂の乳化により調整された色調の安定性向上の
観点から、増粘剤、凝固剤、又は乳化剤を使用することが好ましい。増粘剤とは、対象物
の粘度を増加させるために用いられる剤である。凝固剤とは、対象物を凝固させるために
用いられる剤である。本卵様食品で使用可能な増粘剤、又は凝固剤は、特に限定されない
が、例示すると、ペクチン、寒天、澱粉、加工澱粉、カラギーナン、グァーガム、ローカ
ストビーンガム、ガラクトマンナン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、セルロース
、ゼラチン、カードラン等である。また、増粘促進、或いは、凝固促進を目的として、カ
ルシウムを使用することもできる。カルシウムを具体的に例示すると、乳酸カルシウム、
塩化カルシウム、卵殻カルシウム、等である。
【0029】
本卵様食品として、スクランブルエッグ様食品を想定した場合、好ましい凝固剤、及び
凝固促進剤は、それぞれ、アルギン酸ナトリウム、及びカルシウムである。当該凝固剤、
及び凝固促進剤を用いることで、本物の卵を用いてスクランブルエッグを作ったときと同
様の食感を得ることができる。
【0030】
<本卵様食品の製造方法の概念的構成>
本卵様食品の製造方法(以下、この欄では、「本製法」ということもある。)を概念的
に構成するのは、少なくとも、調合である。
図1が示すのは、本製法の流れである。この製法を構成するのは、調合(S10)、均
質化(S20)、加熱(S30)及び充填(S40)である。
【0031】
<調合(S10)>
調合工程で調合されるのは、少なくとも、カロテノイド含有植物の加工品、及び食用油
脂である。カロテノイド含有植物の加工品、及び食用油脂を調合する目的は、香味の調整
、及び後述する均質化工程における色調の調整である。調合される原材料として排除しな
いのは、前記カロテノイド含有植物の加工品、及び食用油脂以外に、前記穀類加工品、そ
の他の植物加工品、その他の調味料、及び添加剤、等である。色調調整の観点から、好ま
しくは、穀類加工品をさらに使用することが好ましい。また、後述する乳化状態の安定の
観点から、好ましくは、さらに乳化剤、増粘剤、又は凝固剤を使用することが好ましい。
当該調合によって、調整される調合液のBrixは、4以上、かつ20以下であることが
好ましい。
【0032】
<均質化(S20)>
調合液を均質化する目的は、色調の調整、並びに、性状及び香味の均質化である。調合
液を均質化することによって、カロテノイド含有植物の加工品と食用油脂は乳化され、こ
れにより調合液の色調が変化する。また、油脂と植物原料由来の香味をムラなく感じるこ
とができる。乳化状態は、好ましくは、オイルインウォーター型(以下、「O/W型」と
もいう。)である。均質化の手段は、不問である。乳化の手段を例示すると、高圧処理、
磨砕処理、ミキシング処理、ミル処理、等である。
【0033】
<加熱(S30)>
本製法が適宜採用するのは、加熱である。加熱の目的の一つは、調合液の殺菌である。
加熱のもう一つの目的は、調合液の凝固の促進である。前記調合において、凝固剤を使用
した場合、凝固剤の種類によっては、当該加熱工程により、凝固が促進される。加熱の方
法は、公知の方法で良く、例えば、プレート式殺菌、及びチューブラー式殺菌方法、等が
ある。
【0034】
<充填(S40)>
以上に加えて、本製法が適宜採用するのは、充填である。充填方法は、公知の方法でよ
い。本卵様食品が充填される(詰められる)容器は、公知の物で良く、例示すると、ビニ
ル製容器、缶、瓶、紙容器、及びペット製容器、等である。
【0035】
<色調>
本発明の実施の形態に係る、色調とは、色の特徴を表すものであって、明度、色相、及
び彩度を含めたものである。色調を一般的に表すのは、L*a*b*(エル・スター、エ
ー・スター、ビー・スター)表色系である。L*a*b*表色系の指標は、明度(L*値
)、色度(色相及び彩度)(a*値、b*値)である。色調の測定方法は、公知の方法で
良い。測定する機器は、市販されている。測定手段を例示すると、色差計SPECTRO
PHOTOMETER CM-5(コニカミノルタ社製)である。
【0036】
<色相、及び彩度>
本発明の実施の形態に係る、色相、及び彩度とは、色の特徴を表す要素の一つである。
色相の違いにより、色の特徴が異なる。彩度が高いほど、鮮やかな色となる。本発明の実
施の形態において、色相、及び彩度を卵の黄色に近づけることを目的としている。黄色の
色相、及び彩度は、L*a*b*表色系において、b値で表される。b値が高い程、黄色
の色相、及び彩度が高いことを示す。また、赤色の色相、及び彩度はa値で表される。a
値が高い程、赤色の色相、及び彩度が高い。そのため、本発明の実施の形態においてa値
が高い場合、b値が高くても、橙色に近い色となるため、好ましくは、「a値/b値」の
絶対値も同時に低いことが好ましい。当該観点から、本卵様食品のa値は、好ましくは、
12以上、かつ23以下であり、より好ましくは、14以上、かつ20以下である。また
、本卵様食品のb値は、好ましくは、25以上、かつ43以下であり、より好ましくは、
30以上、かつ38以下である。あわせて、本卵様食品のa/b値は、好ましくは、0.
3以上、かつ0.8以下であり、より好ましくは、0.35以上、かつ0.6以下である
。
【0037】
<明度>
本発明の実施の形態に係る、明度とは、色の特徴を表す要素の一つである。明度が高い
ほど、明るい色となる。本発明の実施の形態において、明度を卵の黄色に近づけることを
目的としている。明度は、L*a*b*表色系において、L値であらわされる。L値が高
いほど、明るいことを示す。当該観点から、本卵様食品のL値は、好ましくは、50以上
、かつ80以下であり、より好ましくは、60以上、かつ75以下である。
【0038】
<粘度>
本卵様食品の粘度は、特に限定されない。本卵様食品が液状である場合、本卵様食品の
粘度は、を1,000~5,000mPa・sであることが好ましい。B型粘度の測定方
法は、公知の方法で良い。測定手段を例示すると、TVB-10型粘度計(東機産業株式
会社製)を用いて、20℃、回転数を12rpmとし、開始後60秒後の条件である。
【0039】
<コレステロール含量>
本卵様食品のコレステロール含量は、特に限定されないが、好ましくは、3.0重量%
以下である。より好ましくは、1重量%以下である。さらに好ましくは、0重量%である
。コレステロール含量の測定方法は、公知の方法でよい。
【0040】
<可溶性固形分量>
本卵様食品の可溶性固形分量(以下、「Brix」ともいう。)は、特に限定されない
が、好ましくは、4以上、かつ20以下である。また、Brixの測定方法は、公知の方
法でよい。測定手段を例示すると、光学屈折率計(NAR-3T ATAGO社製)であ
る。
【0041】
<pH>
本実施の形態に係る卵様食品のpHは、特に限定されないが、呈味の観点から、好まし
くは、5.0以上7.0以下であり、より好ましくは5.5以上6.5以下である。
【実施例0042】
[試験1]カロテノイド含有植物の加工品と、食用油を用いた卵様食品の製造
カロテノイド含有植物の加工品として、ニンジン汁を、食用油として植物油を使用し、
これらを混合後、均質化度合いを変えて混合液を作製した。均質化度合いの違いによる色
調の変化を確認した。
【0043】
<比較例1>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)と、植物油、その他原料を、表1に記載の
割合で混合した。
【0044】
<実施例1-1>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)と、植物油、その他原料を、表1の割合で
混合した。その後、コミトロール(アーシェル社製:型番1700、刃数212枚)を用
いて、1回パス処理を行うことで均質化処理を行った。
【0045】
<実施例1-2>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)と、植物油、その他原料を、表1の割合で
混合した。その後、コミトロール(アーシェル社製:型番1700、刃数212枚)を用
いて、2回パス処理を行うことで均質化処理を行った。
【0046】
<実施例1-3>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)と、植物油、その他原料を、表1の割合で
混合した。その後、コミトロール(アーシェル社製:型番1700、刃数212枚)を用
いて、3回パス処理を行うことで均質化処理を行った。
【0047】
<実施例1-4>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)と、植物油、その他原料を、表1の割合で
混合した。その後、フードプロセッサー(National社製:型番MKK77)を用
いて、120秒間均質化処理を行った。
【0048】
【0049】
<色調測定、及び評価>
各試験区分の色調について、色差計SPECTROPHOTOMETER CM-5(
コニカミノルタ社製)を用いて測定を行った。あわせて、各試験区分の色調について、卵
様食品としての色合いの適性を確認した。
【0050】
<結果>
比較例1、並びに実施例1-1乃至実施例1-4の色調を測定した結果は、表2に示し
たとおりである。
【0051】
【0052】
均質化処理を行うことによって、混合液の色調は、橙色から黄色へと変化した(
図2)
。均質化処理を行うことにより、L値(明るさの指標)は上昇し、均質化の度合いが高ま
るに従いL値は上昇した。均質化処理を行うことにより、a値(赤色の指標)は低下し、
均質化度合い高まるに従い、a値は低下した。乳化処理により、b値(黄色の指標)は増大し
、乳化度合いが高まるに従い、b値は増大した。乳化処理により、a/b値(赤色の指標)は低
下し、乳化度合いが高まるに従い、a/b値は低下した。
【0053】
比較例、及び実施例の色調の定性評価は、以下のとおりである。
比較例1:橙色(オレンジ)がかっており、やや卵らしさが弱い
実施例1-1:比較例1と比較して黄色みが強くなり、卵らしい色調である。
実施例1-2:実施例1-1と同様、卵らしい色調である。
実施例1-3:実施例1-1,実施例1-2と同様、卵らしい色調である。
実施例1-4:実施例1-1乃至実施例1-3と同様、卵らしい色調である。
【0054】
[試験2]カロテノイド含有植物の加工品と、穀類加工品と、食用油を用いた卵様食品
の製造
カロテノイド含有植物の加工品として橙色ニンジン汁を、穀類加工品として白いんげん
豆ピューレ(株式会社新進社製)を、食用油として植物油を使用し、これらを混合後、均
質化度合いを変えて混合液を作製した。穀類加工品の有無、及び均質化度合いの違いによ
る色調の変化を確認した。
【0055】
<比較例2>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)と、植物油、その他原材料を、表3に記載
の割合で混合した。
【0056】
<実施例2-1>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)と、植物油、その他原材料を、表3に記載
の割合で混合した。その後、フードプロセッサー(National社製:型番MKK7
7)を用いて、30秒間均質化処理を行った。
【0057】
<実施例2-2>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)と、植物油、その他原材料を、表3に記載
の割合で混合した。その後、フードプロセッサー(National社製:型番MKK7
7)を用いて、120秒間均質化処理を行った。
【0058】
<比較例3>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)、白いんげん豆ピューレ、植物油、その他
原材料を、表3に記載の割合で混合した。
【0059】
<実施例3-1>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)、白いんげん豆ピューレ、植物油、その他
原材料を、表3に記載の割合で混合した。その後、フードプロセッサー(Nationa
l社製:型番MKK77)を用いて、30秒間均質化処理を行った。
【0060】
<実施例3-2>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)、白いんげん豆ピューレ、植物油、その他
原材料を、表3に記載の割合で混合した。その後、フードプロセッサー(Nationa
l社製:型番MKK77)を用いて、120秒間均質化処理を行った。
【0061】
<参考例>
参考例として、市販の卵食品(キユーピー社製、スノーマン とろっとスクランブル)
を準備した。
【0062】
【0063】
<色調測定、及び評価>
各試験区分の色調について、色差計SPECTROPHOTOMETER CM-5(
コニカミノルタ社製)を用いて測定を行った。あわせて、各試験区分の色調について、卵
様食品としての色合いの適性を確認した。
【0064】
<結果>
比較例2、比較例3、実施例2-1、実施例2-2、実施例3-1、及び実施例3-2
の色調を測定した結果は、表4に示したとおりである。
均質化前においては、橙色を示しており、卵らしい色合いを呈していなかった。均質化
度合いが大きくなるに従い、橙色から黄色へと変化し、卵らしい色合いを呈することとな
った。(
図3、
図4)また、白いんげん豆ピューレを配合することにより、L値、及びb
値が上昇し、より明るく鮮やかな黄色に調整することができ、卵らしい色合いとなった。
【0065】
【0066】
[試験3]ゲル化剤を用いた焼成卵様食品の製造
カロテノイド含有植物の加工品と、食用油の混合液について、ゲル化剤によりゲル化す
ることにより、スクランブルエッグ様の卵様食品を製造した。
【0067】
<実施例4>
実施例2-1と同様の処理を行った試料と、2%の乳酸カルシウム溶液を混合、攪拌す
ることでゲルを形成させた。
【0068】
<結果>
実施例4の処理により、色調、形状、及び食感面から、スクランブルエッグ様の食品を
製造することができた(
図5)。