(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131022
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、及び、半導体ウエハ
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20230913BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20230913BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G03F9/00 H
H01L21/20
H01L27/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035666
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 仁志
(72)【発明者】
【氏名】小柴 健
(72)【発明者】
【氏名】戸川 勤博
(72)【発明者】
【氏名】荒内 琢士
【テーマコード(参考)】
2H197
5F038
5F152
【Fターム(参考)】
2H197EB08
2H197EB09
2H197EB10
2H197EB23
2H197HA03
5F038CA13
5F038EZ02
5F038EZ13
5F038EZ14
5F038EZ15
5F038EZ19
5F038EZ20
5F152AA07
5F152LM10
5F152MM18
5F152NN05
5F152NN27
5F152NN30
5F152NQ02
5F152NQ17
(57)【要約】
【課題】 エピタキシャル層にファセット面が形成される場合に、アライメントを適切に行う。
【解決手段】 半導体装置の製造方法であって、上面に凹形状のアライメントマークを有するとともに前記上面に立てた垂線が[0001]方向に対して[11-20]方向側に傾斜しているSiC基板を準備する工程と、前記SiC基板の前記上面に前記アライメントマークを覆うようにエピタキシャル層を成長させる工程と、前記SiC基板の前記上面に構造物を形成する工程、を有する。前記構造物が、前記SiC基板の前記上面において前記アライメントマークから[11-20]方向側に間隔Pを開けた位置に形成される。前記アライメントマークの深さD、前記垂線の前記[0001]方向に対する傾斜角度θに対して、前記間隔Pが、D/tanθ<P<10D/tanθの関係を満たす。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
上面に凹形状のアライメントマークを有し、前記上面に立てた垂線が[0001]方向に対して[11-20]方向側に傾斜しているSiC基板を準備する工程と、
前記SiC基板の前記上面に、前記アライメントマークを覆うようにエピタキシャル層を成長させる工程と、
前記SiC基板の前記上面に構造物を形成する工程、
を有し、
前記構造物が、前記SiC基板の前記上面に沿って前記アライメントマークから[11-20]方向側に間隔Pを開けた位置に形成され、
前記アライメントマークの深さD、前記垂線の前記[0001]方向に対する傾斜角度θに対して、前記間隔Pが、D/tanθ<P<10D/tanθの関係を満たす、
製造方法。
【請求項2】
前記構造物を形成する前記工程では、前記エピタキシャル層を形成する前に、前記SiC基板の前記上面に凹形状の前記構造物を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記構造物を形成する前記工程では、前記エピタキシャル層の前記上面に凸形状または凹形状の前記構造物を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記SiC基板の前記上面を上から見たときに、前記アライメントマークの[11-20]方向側の縁部が[11-20]方向に対して垂直である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アライメントマークが第1アライメントマークであり、
前記エピタキシャル層を成長させる前記工程において、前記エピタキシャル層の前記上面に前記第1アライメントマークの形状に応じた凹形状の第2アライメントマークが形成され、
前記第2アライメントマークを用いてアライメントを行う工程をさらに有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
半導体ウエハであって、
上面に凹形状のアライメントマークを有し、前記上面に立てた垂線が[0001]方向に対して[11-20]方向側に傾斜しており、SiCによって構成されているベース基板と、
前記ベース基板の前記上面に設けられており、前記アライメントマークを覆っているエピタキシャル層と、
前記ベース基板の上面または前記エピタキシャル層の上面に設けられている構造物、
を有し、
前記構造物が、前記ベース基板の前記上面に沿って前記アライメントマークから[11-20]方向側に間隔Pを開けた位置に配置されており、
前記アライメントマークの深さD、前記垂線の前記[0001]方向に対する傾斜角度θに対して、前記間隔Pが、D/tanθ<P<10D/tanθの関係を満たす、
半導体ウエハ。
【請求項7】
前記構造物が、前記ベース基板の前記上面に設けられた凹部である、請求項6に記載の半導体ウエハ。
【請求項8】
前記構造物が、前記エピタキシャル層の前記上面に設けられた凸部または凹部である、請求項6に記載の半導体ウエハ。
【請求項9】
前記ベース基板の前記上面を上から見たときに、前記アライメントマークの[11-20]方向側の縁部が[11-20]方向に対して垂直である、請求項6~8のいずれか一項に記載の半導体ウエハ。
【請求項10】
前記アライメントマークが第1アライメントマークであり、
前記エピタキシャル層の前記上面に前記第1アライメントマークの形状に応じた凹形状の第2アライメントマークが設けられている、
請求項6~9のいずれか一項に記載の半導体ウエハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置の製造方法、及び、半導体ウエハに関する。
【0002】
特許文献1には、上面に凹形状のアライメントマークが形成されたSiC基板が開示されている。このSiC基板では、[11-20]方向がオフ方向となるように上面が(0001)面に対して傾斜している。すなわち、このSiC基板では、SiC基板の上面に立てた垂線が[0001]方向に対して[11-20]方向側に傾斜している。このSiC基板の表面にアライメントマークを覆うようにエピタキシャル層を成長させると、アライメントマークに対して[11-20]方向側に隣接する位置に、SiC基板の上面に対して傾斜したファセット面が形成される。特許文献1の技術では、アライメントマークの形状を所定の形状とすることによって、ファセット面の形成を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術を用いたとしても、ファセット面の形成を防止できない場合がある。また、種々の制約により、特許文献1のようにアライメントマークを形成できず、ファセット面の形成を防止できない場合がある。アライメントマークを覆うようにエピタキシャル層を形成した場合は、その後は、エピタキシャル層の表面の凹部(すなわち、アライメントマークに倣って形成された凹部)を用いてアライメントを行うことになる。このとき、エピタキシャル層に形成されたファセット面が他の構造物と干渉すると、エピタキシャル層の表面の凹部をアライメント装置で正しく認識することができず、アライメントを適切に行うことができない。本明細書では、エピタキシャル層にファセット面が形成される場合でも、アライメントを適切に行うことが可能な技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、上面に凹形状のアライメントマークを有するとともに前記上面に立てた垂線が[0001]方向に対して[11-20]方向側に傾斜しているSiC基板を準備する工程と、前記SiC基板の前記上面に前記アライメントマークを覆うようにエピタキシャル層を成長させる工程と、前記SiC基板の前記上面に構造物を形成する工程、を有する。前記構造物が、前記SiC基板の前記上面に沿って前記アライメントマークから[11-20]方向側に間隔Pを開けた位置に形成される。前記アライメントマークの深さD、前記垂線の前記[0001]方向に対する傾斜角度θに対して、前記間隔Pが、D/tanθ<P<10D/tanθの関係を満たす。
【0006】
なお、アライメントマークを有するSiC基板を準備する前記工程は、アライメントマークを有するSiC基板を製造施設に持ち込む工程であってもよいし、SiC基板にアライメントマークを形成する工程であってもよい。
【0007】
SiC基板の上面に構造物を形成する前記工程は、エピタキシャル層の形成前に実施されてもよいし、エピタキシャル層の形成後に実施されてもよい。すなわち、SiC基板の上面に構造物を形成する前記工程における「SiC基板の上面」は、エピタキシャル層の形成前のSiC基板の上面であってもよいし、エピタキシャル層の形成後のSiC基板の上面(すなわち、エピタキシャル層の上面)であってもよい。
【0008】
発明者らの実験により、アライメントマークを覆うようにエピタキシャル層を成長させるときにアライメントマークに隣接して形成されるファセット面の幅を、SiC基板の上面の[0001]方向に対する傾斜角度θ(いわゆる、オフ角)とアライメントマークの深さDから予測できることができることが分かった。一般的に、ファセット面の幅はW=D/tanθの数式により算出される計算幅Wよりも狭くなる。したがって、D/tanθ<Pの関係を満たすように間隔Pを設定することで、ファセット面が構造物と干渉することを抑制できる。また、間隔Pを無駄に広くすると、間隔Pによって占有される領域が広くなり、SiC基板から製造可能な半導体装置の数の減少等に繋がる。上記のように、D/tanθ<P<10D/tanθ(すなわち、W<P<10W)の関係を満たすように間隔Pを設定することで、間隔Pを無駄に広げることなく、ファセット面と構造物の干渉を抑制できる。ファセット面と構造物の干渉を抑制できるので、エピタキシャル層の表面の凹部(すなわち、アライメントマークに倣って形成された凹部)を用いて適切にアライメントを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】SiC基板(すなわち、ベース基板)の上面のアライメントマークの平面図。
【
図12】SiC層の上面のアライメントマークの平面図。
【
図17】実施例2のアライメントマークの拡大断面図。
【
図18】実施例2のエピタキシャル成長工程の説明図。
【
図20】実施例2の変形例の構造物形成工程の説明図。
【
図21】SiC基板(すなわち、ベース基板)の上面のアライメントマークの変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記構造物を形成する前記工程では、前記エピタキシャル層を形成する前に、前記SiC基板の前記上面に凹形状の前記構造物を形成してもよい。また、本明細書が開示する他の例の製造方法においては、前記構造物を形成する前記工程では、前記エピタキシャル層の前記上面に凸形状または凹形状の前記構造物を形成してもよい。
【0011】
これらのように、構造物は、エピタキシャル層が形成される前に形成されてもよいし、エピタキシャル層が形成された後に形成されてもよい。
【0012】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記SiC基板の前記上面を上から見たときに、前記アライメントマークの[11-20]方向側の縁部が[11-20]方向に対して垂直であってもよい。
【0013】
この構成によれば、計算幅Wが実際のファセット面の幅の最大値により高い精度で合致し易い。
【0014】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記アライメントマークが第1アライメントマークであってもよい。前記エピタキシャル層を成長させる前記工程において、前記エピタキシャル層の前記上面に前記第1アライメントマークの形状に応じた凹形状の第2アライメントマークが形成されてもよい。この製造方法は、前記第2アライメントマークを用いてアライメントを行う工程をさらに有していてもよい。
【0015】
また、本明細書は、新たな半導体ウエハを開示する。この半導体ウエハは、ベース基板とエピタキシャル層と構造物を有する。前記ベース基板は、上面に凹形状のアライメントマークを有し、前記上面に立てた垂線が[0001]方向に対して[11-20]方向側に傾斜しており、SiCによって構成されている。前記エピタキシャル層は、前記ベース基板の前記上面に設けられており、前記アライメントマークを覆っている。前記構造物は、前記ベース基板の上面または前記エピタキシャル層の上面に設けられている。前記構造物が、前記ベース基板の前記上面に沿って前記アライメントマークから[11-20]方向側に間隔Pを開けた位置に配置されている。前記アライメントマークの深さD、前記垂線の前記[0001]方向に対する傾斜角度θに対して、前記間隔Pが、D/tanθ<P<10D/tanθの関係を満たす。
【0016】
この半導体ウエハによれば、エピタキシャル層の表面の凹部を用いて適切にアライメントを行うことができる。
【0017】
本明細書が開示する一例の半導体ウエハでは、前記構造物が、前記ベース基板の前記上面に設けられた凹部であってもよい。また、本明細書が開示する他の例の半導体ウエハでは、前記構造物が、前記エピタキシャル層の前記上面に設けられた凸部または凹部であってもよい。
【0018】
これらのように、構造物は、ベース基板の上面に設けられていてもよいし、エピタキシャル層の上面に設けられていてもよい。
【0019】
本明細書が開示する一例の半導体ウエハでは、前記ベース基板の前記上面を上から見たときに、前記アライメントマークの[11-20]方向側の縁部が[11-20]方向に対して垂直であってもよい。
【0020】
この構成によれば、計算幅Wが実際のファセット面の幅の最大値により高い精度で合致し易い。
【0021】
本明細書が開示する一例の半導体ウエハでは、前記アライメントマークが第1アライメントマークであってもよい。前記エピタキシャル層の前記上面に前記第1アライメントマークの形状に応じた凹形状の第2アライメントマークが設けられていてもよい。
【実施例0022】
実施例1の製造方法では、
図1、2に示すSiC基板12から半導体装置を製造する。SiC基板12は、4H-SiCにより構成されている。以下では、SiC基板12の厚み方向をz方向といい、z方向に直交する一方向をx方向といい、z方向及びx方向に直交する方向をy方向という。x方向及びy方向は、SiC基板12の上面12aに平行である。
図2に示すように、SiC基板12の[1-100]方向はy方向と一致している。SiC基板12の(0001)面は、SiC基板12の上面12aに対して、[1-100]方向を軸としてオフ角θだけ傾斜している。すなわち、(0001)面は、[11-20]方向と[0001]方向を含む断面において、上面12aに対して傾斜している。
図2の垂線12sは、上面12aに立てた垂線を示している。(0001)面が上面12aに対してオフ角θだけ傾斜していることで、垂線12sが[0001]方向に対して[11-20]方向側にオフ角θだけ傾斜している。なお、オフ角θは、10度以下であってもよく、5度以下であってもよい。例えば、オフ角θを約4度とすることができる。
図1に示すように、SiC基板12の上面12aを平面視した状態では、x方向は[11-20]方向に沿って伸びている。
【0023】
実施例1の製造方法では、まず、アライメントマーク形成工程を実施する。アライメントマーク形成工程では、SiC基板12の上面12aに、
図3に示す複数のアライメントマーク20を形成する。各アライメントマーク20は、SiC基板12の上面12aに設けられた凹形状である。各アライメントマーク20は、上面12aにおいて、y方向に沿って伸びる長辺とx方向に沿って伸びる短辺を有する長方形の形状を有している。したがって、SiC基板12の上面12aを上から見たときに、各アライメントマーク20の[11-20]方向側の側面24(すなわち、縁部)は、[11-20]方向に対して垂直に伸びている。各アライメントマーク20は、x方向に間隔Pを開けて配列されている。
図1には示していないが、SiC基板12の上面12aは、半導体素子構造が形成される素子領域と、素子領域の外部の外部領域を有している。外部領域は、ダイシング等によってSiC基板12を複数の半導体装置に分割するときに除去される領域等である。各アライメントマーク20は、SiC基板12の上面12aのうちの外部領域に形成される。
【0024】
アライメントマーク形成工程では、種々の方法によってアライメントマーク20を形成することができる。
図4は、アライメントマーク20の第1の形成方法を示している。第1の形成方法では、まず、
図4に示すように、SiC基板12の上面12a上に開口部30aを有するレジストマスク30を形成する。次に、開口部30a内でSiC基板12の上面12aを異方性エッチングによりエッチングする。これによって、各開口部30a内に凹形状のアライメントマーク20が形成される。アライメントマーク20の形成後に、レジストマスク30は除去される。
【0025】
図5~7は、アライメントマーク20の第2の形成方法を示している。なお、
図5~7では、素子領域13と外部領域14の断面を示している。第2の形成方法では、まず、
図5に示すように、SiC基板12の上面12a上に、ハードマスク32(例えば、酸化シリコンによって構成されたマスク)を形成する。ハードマスク32は、SiC基板12に対するイオン注入範囲を制御するためのマスクである。次に、ハードマスク32上に、開口部34aを有するレジストマスク34を形成する。次に、
図6に示すように、開口部34a内でハードマスク32を異方性エッチングによりエッチングする。これによって、ハードマスク32に開口部32aを形成する。開口部32aはSiC基板12に達するように形成されるので、開口部32aを形成するときにSiC基板12の上面12aがオーバーエッチングされる。したがって、SiC基板12の上面12aに、凹形状が形成される。外部領域14内に形成された凹形状が、アライメントマーク20となる。ハードマスク32に開口部32aを形成した後に、レジストマスク34を除去する。次に、ハードマスク32を介してSiC基板12の上面12aにn型またはp型の不純物をイオン注入する。したがって、
図7に示すように、開口部32aの下部でSiC基板12に拡散層40が形成される。素子領域13内では、必要な位置に拡散層40が形成される。また、外部領域14内では、アライメントマーク20の下部に拡散層40が形成される。アライメントマーク20の下部に拡散層40が形成されても、特に問題はない。以上に説明したように、第2の形成方法では、イオン注入用のハードマスク32に開口部32aを形成するときにSiC基板12の上面12aがオーバーエッチングされる現象を利用して、アライメントマーク20を形成する。
【0026】
図8~10は、アライメントマーク20の第3の形成方法を示している。なお、
図8~10では、素子領域13と外部領域14の断面を示している。第3の形成方法では、まず、
図8に示すように、SiC基板12の上面12a上に、開口部36aを有するレジストマスク36を形成する。次に、レジストマスク36を介してSiC基板12の上面12aにn型またはp型の不純物をイオン注入する。したがって、
図9に示すように、開口部36aの下部でSiC基板12に拡散層40が形成される。素子領域13内では、必要な位置に拡散層40が形成される。また、外部領域14内では、アライメントマーク20の形成予定位置に拡散層40が形成される。次に、開口部36a内でSiC基板12を異方性エッチングによってエッチングする。これによって、
図10に示すように、SiC基板12の上面12aに凹形状を形成する。外部領域14内に形成された凹形状が、アライメントマーク20である。アライメントマーク20の形成後に、レジストマスク36は除去される。
【0027】
図11は、
図3のXI-XI線における断面図を示している。すなわち、
図11は、アライメントマーク20のうちのアライメントマーク20a、20bのx方向に沿う断面図を示している。なお、
図11ではアライメントマーク20a、20bを示しているが、他のアライメントマーク20も
図11と同様の形状に形成されている。
図11に示すように、各アライメントマーク20深さDは、x方向における各アライメントマーク20の幅Waよりも小さい。また、x方向において、各アライメントマーク20の間に間隔Pが設けられている。
【0028】
実施例1の製造方法では、アライメントマーク形成工程の次に、エピタキシャル成長工程を実施する。エピタキシャル成長工程では、SiC基板12の上面12aに
図13等に示すSiC層50をエピタキシャル成長させる。SiC層50は、各アライメントマーク20を覆うように形成される。各アライメントマーク20がSiC層50によって覆われると、SiC層50の表面にアライメントマーク20の形状に倣った凹形状が形成される。以下では、SiC層50の表面に形成されるアライメントマーク20の形状に倣った凹形状を、アライメントマーク60という。
図12に示すように、各アライメントマーク60の一部に、ファセット面60Fが形成される。以下に、ファセット面60Fの形成について説明する。
【0029】
図13~16は、エピタキシャル成長工程においてSiC基板12の表面にSiC層50がエピタキシャル成長する様子を示している。なお、以下では、エピタキシャル成長工程前のSiC基板12をベース基板12bといい、ベース基板12bとSiC層50の全体をSiC基板12という。
図13に示すように、ベース基板12b上にSiC層50を成長させると、SiC層50の上面にアライメントマーク20の形状に倣った凹形状であるアライメントマーク60が形成される。なお、以下では、アライメントマーク20aの形状に倣ったアライメントマーク60をアライメントマーク60aといい、アライメントマーク20bの形状に倣ったアライメントマーク60をアライメントマーク60bという場合がある。
図13に示すように、ベース基板12bの上面12a、アライメントマーク20の[-1-120]方向側の側面22、及び、アライメントマーク20の底面23に跨る範囲には、略均一な膜厚でSiC層50が成長する。以下では、ベース基板12bの上面12a上のSiC層50の膜厚(より詳細には、膜厚が均一な部分の膜厚)を、膜厚Tという。アライメントマーク20の[11-20]方向側の側面24には、SiC層50がほとんど成長しない。このため、アライメントマーク20に対して[11-20]方向側で隣接する範囲内の上面12aでは、SiC層50が均一に成長しない。この範囲では、アライメントマーク20から離れるに従ってSiC層50の膜厚が厚くなるようにSiC層50が成長し、SiC層50の表面60Fが(0001)面と平行となる。(0001)面と平行な表面60Fが、ファセット面60Fである。
【0030】
図13の状態からさらにSiC層50の膜厚Tが厚くなると、
図14に示す状態となる。なお、
図14において、仮想線50xは
図13の状態におけるSiC層50の表面を表しており、膜厚増加量ΔT1は
図13の状態から増加した膜厚を示している。
図14に示すように、膜厚Tが増加しても、元のファセット面60F上にはSiC層50は成長しない。また、膜厚Tが増加すると、元のファセット面60Fに対して[11-20]方向側で隣接する位置でSiC層50の表面が(0001)面と平行となるようにSiC層50が成長する。すなわち、ファセット面60Fが[11-20]方向側に拡大する。
図13、14の幅Wfは、ファセット面60Fのx方向における幅を示している。
図13、14から明らかなように、膜厚Tが増加すると、ファセット面60Fの幅Wfが広くなる。このように、膜厚Tがアライメントマーク20の深さDよりも小さい場合は、膜厚Tが増加するのに伴ってファセット面60Fの幅Wfが増加する。この場合、ファセット面60Fの幅Wfは、Wf=T/tanθの関係を比較的正確に満たす。
【0031】
図14の状態からさらに膜厚Tが増加すると、
図15に示すように、膜厚Tがアライメントマーク20の深さDに達する。すると、アライメントマーク20がSiC層50によって埋め込まれる。この状態(すなわち、T=Dの状態)では、ファセット面60Fの幅Wfは、Wf=D/tanθの関係を比較的正確に満たす。
【0032】
図15の状態からさらに膜厚Tが増加すると、SiC層50は
図16に示すように成長する。なお、
図16において、仮想線50yは
図15の状態(すなわち、T=Dの状態)におけるSiC層50の表面を表しており、膜厚増加量ΔT2は
図15の状態から増加した膜厚を示している。
図16において膜厚増加量ΔT2に示すように、アライメントマーク20が埋め込まれた後では、SiC層50は全ての表面で略均一に成長する。すなわち、ファセット面60F上に、その他の表面上と同様の均一な膜厚でSiC層50が成長する。このようにSiC層50が成長すると、SiC層50の膜厚Tが増加してもファセット面60Fの幅Wfがほとんど変化しない。したがって、膜厚Tが深さDよりも厚い場合は、膜厚Tが増加しても、ファセット面60Fの幅Wfはほとんど変化しない。このため、膜厚Tが深さDよりも大きい場合は、ファセット面60Fの幅Wfは、Wf=D/tanθの関係を比較的正確に満たす。
【0033】
以上に説明したように、膜厚Tが深さDよりも小さい場合(すなわち、
図13、14の場合)には、ファセット面60Fの幅Wfは、Wf=T/tanθの関係を比較的正確に満たす。この場合、T<Dであるので、幅WfはWf<D/tanθの関係を比較的正確に満たす。また、膜厚Tが深さD以上の場合(すなわち、
図15、16の場合)には、幅Wfは、Wf=D/tanθの関係を比較的正確に満たす。したがって、通常は、膜厚Tにかかわらず、幅Wfは、W=D/tanθの数式により算出される計算幅Wよりも大きくならない。したがって、アライメントマーク20aとアライメントマーク20bの間のx方向における間隔Pを上記数式により算出される計算幅Wよりも大きくすることで、アライメントマーク60aのファセット面60Fがアライメントマーク60bと干渉することを抑制できる。
【0034】
なお、ファセット面60Fの実際の幅Wfは、製造条件等の影響によって、計算幅Wよりも大きくなる場合がある。したがって、計算幅Wに対してマージンを設けて間隔Pを設けることが好ましい。但し、間隔Pを計算幅Wに対して必要以上に大きくすると、複数のアライメントマーク20によって占有される面積が大きくなり、SiC基板12から製造される半導体装置の数の減少につながる。また、複数のアライメントマーク20によって占有される面積が大きくなると、アライメント用カメラで複数のアライメントマークを撮影するときの撮影倍率が小さくなり、アライメント精度が低下する。種々の実験により、ファセット面60Fの実際の幅Wfが計算幅Wの10倍にまで達することは無いことが分かった。したがって、間隔PをW<P<10Wの関係(すなわち、D/tanθ<P<10D/tanθの関係)を満たすように設定すれば、アライメントマーク60のファセット面60Fが隣のアライメントマーク60に干渉することを抑制できるとともに、複数のアライメントマーク20によって占有される面積の拡大を防止できる。実施例1の製造方法では、間隔PがW<P<10Wの関係を満たすので、アライメントマーク60のファセット面60Fが隣のアライメントマーク60に干渉することを抑制できるとともに、複数のアライメントマーク20によって占有される面積の拡大を防止できる。
【0035】
実施例1の製造方法では、エピタキシャル成長工程の次に、複数のアライメントマーク60を用いたアライメント工程を実施する。例えば、複数のアライメントマーク60を用いてアライメントを行って、SiC層50、SiC層50以外の半導体層、または、その他の層(例えば、電極層、絶縁層など)に対するエッチング、イオン注入等を行ってもよい。例えば、成長させたSiC層50にイオン注入する際に、アライメントマーク60を用いてアライメントを実施してイオン注入用マスクに正確に開口部を形成し、そのイオン注入用マスクを介してSiC層50にイオン注入を実施してもよい。アライメントマーク60のファセット面60Fが他のアライメントマーク60に干渉していないので、アライメントマーク60を用いたアライメントを適切に行うことができる。また、アライメントマーク60の間の間隔Pが比較的狭いので、アライメント用カメラで複数のアライメントマーク60を撮影するときの倍率を高くすることができる。したがって、高精度でアライメントを実施することができる。
【0036】
その後、SiC基板12をダイシングして複数に分割することで、半導体装置が製造される。
【0037】
なお、
図16に示す半導体ウエハ(すなわち、SiC基板12)は、以下の構成を有する。半導体ウエハ(すなわち、SiC基板12)は、ベース基板12bとエピタキシャル層(すなわち、SiC層50)を有する。ベース基板12bは、上面12aに凹形状のアライメントマーク20aを有する。
図2に示すように、上面12aに立てた垂線が[0001]方向に対して[11-20]方向側に傾斜している。
図16に示すように、エピタキシャル層(すなわち、SiC層50)は、ベース基板12bの上面12aに設けられており、アライメントマーク20aを覆っている。ベース基板12bの上面12aに、構造物として、凹形状のアライメントマーク20bが設けられている。構造物(すなわち、アライメントマーク20b)が、ベース基板12bの上面12aに沿ってアライメントマーク20aから[11-20]方向側に間隔Pを開けた位置に配置されている。アライメントマーク20aの深さD、上面12aに立てた垂線の[0001]方向に対する傾斜角度θ(すなわち、オフ角θ)に対して、間隔Pが、D/tanθ<P<10D/tanθの関係を満たす。したって、この半導体ウエハにおいては、アライメントマーク60aのファセット面60Fがアライメントマーク60bと干渉せず、アライメントマーク60aを用いて適切にアライメントを行うことができる。すなわち、この半導体ウエハを用いることで、適切に半導体装置を製造することができる。
その後、アライメントマーク60を用いたアライメント工程を実施する。アライメントマーク60のファセット面60Fが構造物80に干渉していないので、アライメントマーク60を用いたアライメントを適切に行うことができる。
また、上述した実施例1、2では、SiC層50の膜厚Tがアライメントマーク20の深さDよりも厚くなるまでSiC層50を成長させた。しかしながら、SiC層50の膜厚Tがアライメントマーク20の深さDより薄くなるようにSiC層50を成長させてもよい。この場合でも、D/tanθ<P<10D/tanθの関係を満たすように間隔Pを設定することで、間隔Pを必要以上に広くすることなくファセット面60Fが他の構造物に干渉することを抑制できる。
また、上述した実施例1、2では、アライメントマーク20を形成した。しかしながら、D/tanθ<P<10D/tanθの関係を満たすようにアライメントマーク20が形成されているSiC基板12を購入等することで製造施設に持ち込んでもよい。あらかじめアライメントマーク20が形成されているSiC基板12に対して実施例1、2と同様のエピタキシャル成長工程、アライメント工程を実施しても、実施例1、2と同様の効果を得ることができる。
実施例1、2のSiC層50は、エピタキシャル層の一例である。実施例1、2のアライメントマーク20a、20は、第1アライメントマークの一例である。実施例1のアライメントマーク20bは、エピタキシャル層を形成する前にSiC基板の上面に形成された凹形状の構造物の一例である。実施例2の構造物80は、エピタキシャル層の上面に形成された凸形状または凹形状の構造物の一例である。実施例1、2のアライメントマーク60a、60は、第2アライメントマークの一例である。
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。