(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131027
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】フラバン類オリゴマの製造システムおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 311/62 20060101AFI20230913BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20230913BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20230913BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230913BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230913BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C07D311/62
C08G61/12
A61K31/352
A61P31/04
A61P35/00
A61P39/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035671
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】595145050
【氏名又は名称】株式会社日立プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 由花子
(72)【発明者】
【氏名】田上 将史
(72)【発明者】
【氏名】大森 建
(72)【発明者】
【氏名】成田 直生
【テーマコード(参考)】
4C086
4J032
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086BA08
4C086GA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZC37
4J032BA07
4J032BB01
4J032BC02
4J032BC10
4J032CG00
(57)【要約】
【課題】フラバン誘導体同士が所望の重合度で結合したフラバン類オリゴマを高収率で効率的に合成できるフラバン類オリゴマの製造システムおよび製造方法を提供する。
【解決手段】フラバン類オリゴマの製造システム1は、一方の入口から導入される第1流体と、他方の入口から導入される第2流体を流路で混合するマイクロリアクタ106と、第1流体が用意された第1容器101と、第2流体が用意された第2容器102と、生成流体を回収するための回収容器103とを有し、第1流体は、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体であり、第2流体は、ルイス酸を含む液体であり、生成流体は、塩基を含む液体中に回収される。フラバン類オリゴマの製造方法は、第1流体と第2流体をマイクロリアクタで混合して、第1流体のフラバン誘導体を第2流体のルイス酸で活性化し、活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用するフラバン誘導体との反応を開始し、反応を塩基で停止させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマの製造システムであって、
前記製造システムは、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される第1流体と、他方の前記入口から導入される第2流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上のマイクロリアクタと、
前記第1流体が用意された第1容器と、
前記第2流体が用意された第2容器と、
前記マイクロリアクタで生成された生成流体を回収するための回収容器と、
を有し、
前記第1流体は、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体であり、
前記第2流体は、ルイス酸を含む液体であり、
前記生成流体は、前記フラバン誘導体同士が結合したオリゴマを含み、前記回収容器内であって塩基を含む液体中に回収されること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造システム。
【請求項2】
フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマの製造システムであって、
前記製造システムは、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される第1流体と、他方の前記入口から導入される第2流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第1マイクロリアクタと、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される前記第1マイクロリアクタで生成された第1生成流体と、他方の前記入口から導入される第3流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第2マイクロリアクタと、
前記第1流体が用意された第1容器と、
前記第2流体が用意された第2容器と、
前記第3流体が用意された第3容器と、
前記第2マイクロリアクタで生成された第2生成流体を回収するための回収容器と、
を有し、
前記第1流体は、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体であり、
前記第2流体は、ルイス酸を含む液体であり、
前記第3流体は、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体であり、
前記第2生成流体は、前記フラバン誘導体同士が結合したオリゴマを含み、前記回収容器内であって塩基を含む液体中に回収されること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造システム。
【請求項3】
フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマの製造システムであって、
前記製造システムは、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される第1流体と、他方の前記入口から導入される第2流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第1マイクロリアクタと、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される前記第1マイクロリアクタで生成された第1生成流体と、他方の前記入口から導入される第3流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第2マイクロリアクタと、
前記第1流体が用意された第1容器と、
前記第2流体が用意された第2容器と、
前記第3流体が用意された第3容器と、
前記第2マイクロリアクタで生成された第2生成流体を回収するための回収容器と、
を有し、
前記第1流体は、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体であり、
前記第2流体は、ルイス酸を含む液体であり、
前記第3流体は、塩基を含む液体であり、
前記第2生成流体は、前記フラバン誘導体同士が結合したオリゴマを含み、前記回収容器内に回収されること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造システム。
【請求項4】
フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマの製造システムであって、
前記製造システムは、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される第1流体と、他方の前記入口から導入される第2流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第1マイクロリアクタと、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される前記第1マイクロリアクタで生成された第1生成流体と、他方の前記入口から導入される第3流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第2マイクロリアクタと、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される前記第2マイクロリアクタで生成された第2生成流体と、他方の前記入口から導入される第4流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第3マイクロリアクタと、
前記第1流体が用意された第1容器と、
前記第2流体が用意された第2容器と、
前記第3流体が用意された第3容器と、
前記第4流体が用意された第4容器と、
前記第3マイクロリアクタで生成された第3生成流体を回収するための回収容器と、
を有し、
前記第1流体は、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体であり、
前記第2流体は、ルイス酸を含む液体であり、
前記第3流体は、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体であり、
前記第4流体は、塩基を含む液体であり、
前記第3生成流体は、前記フラバン誘導体同士が結合したオリゴマを含み、前記回収容器内に回収されること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフラバン類オリゴマの製造システムであって、
前記フラバン誘導体は、1個のフラバン骨格を有するモノマ、または、2個以上のフラバン骨格を有するオリゴマであること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造システム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフラバン類オリゴマの製造システムであって、
前記フラバン誘導体は、下記一般式(1);
【化1】
[一般式(1)中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、または、OR
9で表される置換基を示す。R
6は、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、シリル基、または、ガロイル基を示す。R
7~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、または、R
9で表される置換基を示す。R
9は、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、または、シリル基を示す。Xは、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、または、N、OおよびSからなる群から選択される1種以上のヘテロ原子がC環の環形成原子と結合した置換基を示す。波線は、R体またはS体を形成する単結合である。]で表される化合物であるか、または、下記一般式(2);
【化2】
[一般式(2)中、R
1~R
5、R
11~R
15およびR
21~R
25は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、または、OR
9で表される置換基を示す。R
6、R
16およびR
26は、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、シリル基、または、ガロイル基を示す。R
7~R
8、R
17~R
18およびR
27~R
28は、それぞれ独立して、水素原子、または、R
9で表される置換基を示す。R
9は、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、または、シリル基を示す。Xは、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、または、N、OおよびSからなる群から選択される1種以上のヘテロ原子がC環の環形成原子と結合した置換基を示す。波線は、R体またはS体を形成する単結合である。nは、0以上の整数を示す。]で表される化合物であること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造システム。
【請求項7】
フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマの製造方法であって、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される第1流体と、他方の前記入口から導入される第2流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上のマイクロリアクタと、
前記第1流体が用意された第1容器と、
前記第2流体が用意された第2容器と、
前記マイクロリアクタで生成された生成流体を回収するための回収容器と、
を有するマイクロリアクタシステムにおいて、
前記第1流体として、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体を用意し、
前記第2流体として、ルイス酸を含む液体を用意し、
前記第1流体と前記第2流体を前記マイクロリアクタで混合して、前記第1流体の一部の前記フラバン誘導体を前記第2流体の前記ルイス酸で活性化し、活性化された前記第1流体の一部の前記フラバン誘導体と、求核体として作用する前記第1流体の残部の前記フラバン誘導体との反応を開始し、
反応中の前記生成流体を、塩基を含む液体中に回収して、前記生成流体の反応を前記塩基で停止させて、前記フラバン誘導体同士が結合したオリゴマを生成させること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造方法。
【請求項8】
フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマの製造方法であって、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される第1流体と、他方の前記入口から導入される第2流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第1マイクロリアクタと、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される前記第1マイクロリアクタで生成された第1生成流体と、他方の前記入口から導入される第3流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第2マイクロリアクタと、
前記第1流体が用意された第1容器と、
前記第2流体が用意された第2容器と、
前記第3流体が用意された第3容器と、
前記第2マイクロリアクタで生成された第2生成流体を回収するための回収容器と、
を有するマイクロリアクタシステムにおいて、
前記第1流体として、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体を用意し、
前記第2流体として、ルイス酸を含む液体を用意し、
前記第3流体として、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体を用意し、
前記第1流体と前記第2流体を前記第1マイクロリアクタで混合して、前記第1流体の前記フラバン誘導体を前記第2流体の前記ルイス酸で活性化し、
前記第1生成流体と前記第3流体を前記第2マイクロリアクタで混合して、活性化された前記第1生成流体の前記フラバン誘導体と、求核体として作用する前記第3流体の前記フラバン誘導体との反応を開始し、
反応中の前記第2生成流体を、塩基を含む液体中に回収して、前記第2生成流体の反応を前記塩基で停止させて、前記フラバン誘導体同士が結合したオリゴマを生成させること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造方法。
【請求項9】
フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマの製造方法であって、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される第1流体と、他方の前記入口から導入される第2流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第1マイクロリアクタと、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される前記第1マイクロリアクタで生成された第1生成流体と、他方の前記入口から導入される第3流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第2マイクロリアクタと、
前記第1流体が用意された第1容器と、
前記第2流体が用意された第2容器と、
前記第3流体が用意された第3容器と、
前記第2マイクロリアクタで生成された第2生成流体を回収するための回収容器と、
を有するマイクロリアクタシステムにおいて、
前記第1流体として、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体を用意し、
前記第2流体として、ルイス酸を含む液体を用意し、
前記第3流体として、塩基を含む液体を用意し、
前記第1流体と前記第2流体を前記第1マイクロリアクタで混合して、前記第1流体の一部の前記フラバン誘導体を前記第2流体の前記ルイス酸で活性化し、活性化された前記第1流体の一部の前記フラバン誘導体と、求核体として作用する前記第1流体の残部の前記フラバン誘導体との反応を開始し、
前記第1生成流体と前記第3流体を前記第2マイクロリアクタで混合して、前記第1生成流体の反応を前記塩基で停止させて、前記フラバン誘導体同士が結合したオリゴマを生成させること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造方法。
【請求項10】
フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマの製造方法であって、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される第1流体と、他方の前記入口から導入される第2流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第1マイクロリアクタと、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される前記第1マイクロリアクタで生成された第1生成流体と、他方の前記入口から導入される第3流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第2マイクロリアクタと、
流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される前記第2マイクロリアクタで生成された第2生成流体と、他方の前記入口から導入される第4流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上の第3マイクロリアクタと、
前記第1流体が用意された第1容器と、
前記第2流体が用意された第2容器と、
前記第3流体が用意された第3容器と、
前記第4流体が用意された第4容器と、
前記第3マイクロリアクタで生成された第3生成流体を回収するための回収容器と、
を有するマイクロリアクタシステムにおいて、
前記第1流体として、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体を用意し、
前記第2流体として、ルイス酸を含む液体を用意し、
前記第3流体として、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体を用意し、
前記第4流体として、塩基を含む液体を用意し、
前記第1流体と前記第2流体を前記第1マイクロリアクタで混合して、前記第1流体の前記フラバン誘導体を前記第2流体の前記ルイス酸で活性化し、
前記第1生成流体と前記第3流体を前記第2マイクロリアクタで混合して、活性化された前記第1生成流体の前記フラバン誘導体と、求核体として作用する前記第3流体の前記フラバン誘導体との反応を開始し、
前記第2生成流体と前記第4流体を前記第3マイクロリアクタで混合して、前記第2生成流体の反応を前記塩基で停止させて、前記フラバン誘導体同士が結合したオリゴマを生成させること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造方法。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載のフラバン類オリゴマの製造方法であって、
前記フラバン誘導体は、1個のフラバン骨格を有するモノマ、または、2個以上のフラバン骨格を有するオリゴマであること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造方法。
【請求項12】
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載のフラバン類オリゴマの製造方法であって、
前記フラバン誘導体は、下記一般式(1);
【化3】
[一般式(1)中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、または、OR
9で表される置換基を示す。R
6は、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、シリル基、または、ガロイル基を示す。R
7~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、または、R
9で表される置換基を示す。R
9は、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、または、シリル基を示す。Xは、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、または、N、OおよびSからなる群から選択される1種以上のヘテロ原子がC環の環形成原子と結合した置換基を示す。波線は、R体またはS体を形成する単結合である。]で表される化合物であるか、または、下記一般式(2);
【化4】
[一般式(2)中、R
1~R
5、R
11~R
15およびR
21~R
25は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、または、OR
9で表される置換基を示す。R
6、R
16およびR
26は、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、シリル基、または、ガロイル基を示す。R
7~R
8、R
17~R
18およびR
27~R
28は、それぞれ独立して、水素原子、または、R
9で表される置換基を示す。R
9は、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、または、シリル基を示す。Xは、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、または、N、OおよびSからなる群から選択される1種以上のヘテロ原子がC環の環形成原子と結合した置換基を示す。波線は、R体またはS体を形成する単結合である。nは、0以上の整数を示す。]で表される化合物であること
を特徴とするフラバン類オリゴマの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が縮合したフラバン類オリゴマの製造システム、および、フラバン類オリゴマの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物中には、二次代謝物としてフラボノイドが多く含まれている。フラボノイドは、フラバン骨格を有する化合物群であり、ポリフェノールに属している。フラボノイドとしては、フラバン骨格に対する置換基の結合位置や結合数、糖鎖等の修飾構造、立体構造等が異なる種々の類縁体が見出されている。また、フラバン骨格を有するモノマ同士が縮合したオリゴマが植物中に見出されている。
【0003】
フラボノイドは、フラバノール類、フラバノン類、フラボン類、イソフラボン類、アントシアニン類等に分類されている。フラバノール類としては、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン等がある。フラバノン類としては、ナリンゲニン、ヘスペレチン、エリオジクチオール等がある。フラボン類としては、アピゲニン、ルテオリン等がある。イソフラボン類としては、ゲニステイン、ダイゼイン等がある。アントシアニン類としては、ペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジン等がある。
【0004】
フラボノイドは、抗菌活性、増殖阻害活性、抗酸化作用、抗発癌作用、代謝促進作用等の種々の生理活性を示すことが知られている。また、オリゴマの活性や動態の他に、天然のフラボノイドの構造を基礎としたフラバン誘導体についても研究が進められている。フラバン誘導体や、そのオリゴマは、未開拓のケミカルスペースとして大きな可能性があり、新規医薬品のリード化合物等として期待されている。
【0005】
フラバノール類は、フラバン-3-オールの骨格を有している。カテキン、エピカテキン等のフラバン-3-オールが縮合したフラバン類オリゴマは、プロシアニジンとして知られている。フラバン類オリゴマは、植物中では種々の重合度を有する重合体であり、ダイマ、トリマ、オリゴマ等の混合物として存在している。
【0006】
現在、フラバン類オリゴマの研究や利用にあたり、フラバン類オリゴマを天然物から高純度に分離精製しようとした場合、多大なコストや手間がかかっている。また、商業的に利用可能なフラバン類オリゴマは、種類が限られており、高価な現状がある。このような状況下、所定の重合度で結合したフラバン類オリゴマの効率的な合成法が望まれている。
【0007】
特許文献1には、フラバン-3-オキソ誘導体とフラバン-3-オール誘導体を原料としたフラバン類オリゴマの合成法が記載されている(段落0074~0077参照)。フラバン-3-オキソ誘導体(0.145mmoL)とフラバン-3-オール誘導体(0.435mmoL)を原料として用い、テトラヒドロフラン(THF)中、反応触媒としてテトラフルオロホウ酸銀(AgBF4)(1.1mmoL)を用いて、室温で4時間還流させている。その結果、プロアントシアニジン付加物である目的のダイマが収率70%で生成している。
【0008】
特許文献2には、エピカテキンを原料としたフラバン類オリゴマの合成法が記載されている(段落0052参照)。ヒドロキシ基が保護されたエピカテキン誘導体(1量体、モノマ)を原料として用い、塩化メチレン中、反応触媒として亜鉛トリフラート(Zn(OTf)2)(0.7当量)を用いて、室温下(20℃)で1.5時間反応させている。その結果、2量体縮合物(ダイマ)が収率約58%で生成している。
【0009】
特許文献3には、エピガロカテキンを原料としたフラバン類オリゴマの合成法が記載されている(段落0103参照)。ヒドロキシ基が保護されたエピガロカテキン誘導体(1量体、モノマ)を原料として用い、反応触媒として亜鉛トリフラート(Zn(OTf)2)(0.8当量)を用いて、室温下(20℃)で2時間反応させている。そして、生成された2量体縮合物(ダイマ)を単離・精製し、反応触媒としてイッテルビウムトリフラート(Yb(OTf)3)(5当量)を用いて、室温下(20℃)で20時間反応させている。その結果、4量体縮合物(テトラマ)が収率45%で生成している。
【0010】
一方、近年では、バイオ関連や、医薬品、化成品等の製造の分野において、マイクロリアクタの利用が進められている。マイクロリアクタは、μmオーダーの微小流路を有するフロー型の反応器であり、流体同士の混合や反応に用いられている。マイクロリアクタは、モールド成形、リソグラフィ等のマイクロ加工技術を利用して作製されている。
【0011】
マイクロリアクタを用いた合成反応の特徴として、層流下での分子拡散が優勢になるという点がある。反応場のサイズ低下に伴い、層流下での分子拡散が促進されるため、流体を均一且つ迅速に混合することができる。流体の体積に対する表面積が相対的に大きくなるため、表面効果や熱伝達率が大きくなり、迅速な混合、反応比の制御、精密な温度制御等が可能になる。バッチ法を用いた従来の合成反応と比較して、反応時間の短縮や収率の向上が可能になるため、製造効率の向上が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5550639号
【特許文献2】特開2017-001982号公報
【特許文献3】特開2019-151583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来、フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が縮合したフラバン類オリゴマは、バッチ法で合成されることが多い。しかし、バッチ法を用いる場合、反応物同士の反応比の精密な制御や、反応時間の精密な制御が困難である。従来の合成法では、重合反応が進行し続けるため、フラバン誘導体同士が所望の重合度で結合したフラバン類オリゴマを高収率に合成できないという課題がある。
【0014】
従来の合成法では、反応物同士が意図しない比率で反応したり、触媒で活性化された反応物が生成物と反応したりするため、種々の重合度の混合物が生成される。このような場合、反応後の分離精製にコストや手間がかかる問題がある。また、収率を上げるために過剰量の触媒を用いる方法もあるが、過剰量の触媒を用いると、触媒の損失や精製コストの増大に繋がる。
【0015】
特許文献1に記載された合成法では、フラバン-3-オキソ誘導体に対して、フラバン-3-オール誘導体を、3当量という大過剰で反応させている。また、テトラフルオロホウ酸銀(AgBF4)を、7.5当量という大過剰で加えている。このような合成法の場合、反応後の分離精製にコストや手間がかかり、所望の重合度のオリゴマの製造効率が悪くなる。
【0016】
特許文献2や特許文献3に記載された合成法では、亜鉛トリフラート(Zn(OTf)2)の量は少ないが、室温下においても、1.5時間や2時間という長時間の反応を要している。また、亜鉛トリフラート(Zn(OTf)2)や、イッテルビウムトリフラート(Yb(OTf)3)は、固形物を生じる可能性があり、微小流路を持つマイクロリアクタを用いた場合には流路が閉塞する虞がある。
【0017】
そこで、本発明は、フラバン誘導体同士が所望の重合度で結合したフラバン類オリゴマを高収率で効率的に合成できるフラバン類オリゴマの製造システムおよび製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
前記課題を解決するために本発明に係るフラバン類オリゴマの製造システムは、フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマの製造システムであって、前記製造システムは、流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される第1流体と、他方の前記入口から導入される第2流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上のマイクロリアクタと、前記第1流体が用意された第1容器と、前記第2流体が用意された第2容器と、前記マイクロリアクタで生成された生成流体を回収するための回収容器と、を有し、前記第1流体は、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体であり、前記第2流体は、ルイス酸を含む液体であり、前記生成流体は、前記フラバン誘導体同士が結合したオリゴマを含み、前記回収容器内であって塩基を含む液体中に回収されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るフラバン類オリゴマの製造方法は、フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマの製造方法であって、流体が導入される2つの入口と前記流体同士を合流させる流路を有し、一方の前記入口から導入される第1流体と、他方の前記入口から導入される第2流体を前記流路で混合する、少なくとも1個以上のマイクロリアクタと、前記第1流体が用意された第1容器と、前記第2流体が用意された第2容器と、前記マイクロリアクタで生成された生成流体を回収するための回収容器と、を有するマイクロリアクタシステムにおいて、前記第1流体として、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む液体を用意し、前記第2流体として、ルイス酸を含む液体を用意し、前記第1流体と前記第2流体を前記マイクロリアクタで混合して、前記第1流体の一部の前記フラバン誘導体を前記第2流体の前記ルイス酸で活性化し、活性化された前記第1流体の一部の前記フラバン誘導体と、求核体として作用する前記第1流体の残部の前記フラバン誘導体との反応を開始し、反応中の前記生成流体を、塩基を含む液体中に回収して、前記生成流体の反応を前記塩基で停止させて、前記フラバン誘導体同士が結合したオリゴマを生成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フラバン誘導体同士が所望の重合度で結合したフラバン類オリゴマを高収率で効率的に合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムの模式図である。
【
図3】第2実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムの模式図である。
【
図4】第3実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムの模式図である。
【
図5】第4実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムの模式図である。
【
図6】第5実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム、および、フラバン類オリゴマの製造方法について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0023】
本実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムは、フラバン骨格を有するフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマを合成するシステムである。この製造システムでは、合成反応の出発物質として、所定の分子構造を持つフラバン誘導体を用いる。また、反応触媒としてルイス酸を用いる。
【0024】
出発物質のフラバン誘導体は、ルイス酸で活性化されてカチオン化して求電子体となる。活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用する活性化されていないフラバン誘導体との反応によって、フラバン誘導体同士が縮合する。このような重合反応によって、フラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマを生成できる。
【0025】
フラバン類オリゴマの製造システムでは、フラバン誘導体とルイス酸との反応や、活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用する活性化されていないフラバン誘導体との反応等に、マイクロリアクタを用いる。マイクロリアクタでは、反応物を含む流体同士をマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合して反応を開始させる。その後、ルイス酸を塩基で中和して反応を停止させる。
【0026】
マイクロリアクタを用いると、フラバン誘導体やルイス酸等の反応物の反応量や、反応の開始時期や、反応の終了時期を精密に制御することができる。反応物同士の反応比の精密な制御や、反応時間の精密な制御が可能である。そのため、フラバン誘導体同士が所望の重合度で結合したフラバン類オリゴマを、高収率で合成することができる。
【0027】
出発物質のフラバン誘導体としては、1個のフラバン骨格を有するフラバン誘導体のモノマ、または、2個以上のフラバン骨格を有するフラバン誘導体のオリゴマを用いることができる。フラバン骨格は、下記式(a)で表される。
【0028】
【0029】
本明細書において、フラバン誘導体のオリゴマとは、2個のフラバン誘導体のモノマが縮合したダイマ、3個のフラバン誘導体のモノマが縮合したトリマ等、複数個のフラバン誘導体のモノマが縮合したi量体(iは、2以上の整数)を意味する。フラバン誘導体のオリゴマには、多数のモノマが縮合した所謂ポリマも含まれる。
【0030】
フラバン誘導体のモノマや、フラバン誘導体のオリゴマは、天然物から分離された天然化合物であってもよいし、化学合成された合成化合物であってもよい。合成化合物であるフラバン誘導体のオリゴマは、例えば、フラバン誘導体のモノマ等を出発物質として、本実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムを用いることによって合成できる。
【0031】
出発物質のフラバン誘導体としては、意図しない反応を防ぐために、ヒドロキシ基等の置換基に対して保護基を導入したものを用いてもよい。また、反応性等によっては、保護基を導入していないものを用いてもよい。フラバン誘導体を含む原料液は、所定の濃度のフラバン誘導体のモノマや、所定の濃度のフラバン誘導体のオリゴマを、反応溶媒となる適宜の溶媒に溶解させることによって調製できる。
【0032】
ヒドロキシ基の保護は、例えば、極性溶媒の下で、塩基や、保護基導入化合物を用いて行うことができる。塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、アルキルアミド、ピリジン等が挙げられる。保護基導入化合物としては、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アシル化合物、ハロゲン化シリル化合物等が挙げられる。
【0033】
出発物質のフラバン誘導体としては、C環の3位の炭素にヒドロキシ基由来の置換基を有するフラバン-3-オール誘導体が好ましい。また、A環の5位および7位の炭素にヒドロキシ基由来の置換基を有する誘導体がより好ましい。例えば、(+)-カテキン、(-)-カテキン、(+)-エピカテキン、(-)-エピカテキンや、これらの誘導体等のフラバノール類を、出発物質として好ましく用いることができる。
【0034】
また、出発物質のフラバン誘導体としては、C環の4位の炭素に脱離基を有する誘導体がより好ましい。また、C環の3位の炭素に電子供与部位を持つ置換基を有する誘導体がより好ましい。このような構造であると、フラバン骨格の4位の炭素を、ルイス酸によって位置選択的に活性化させることができる。
【0035】
また、出発物質のフラバン誘導体としては、A環の5位や7位の炭素に電子供与性基が結合している誘導体がより好ましい。また、A環の6位の炭素に電子供与性基が結合していない誘導体がより好ましい。このような構造であると、フラバン骨格の4位の炭素を活性化して、フラバン骨格の4位と8’位とを縮合させることができる。
【0036】
出発物質のフラバン誘導体のモノマとしては、下記一般式(1)で表される化合物がより好ましい。
【0037】
【0038】
[一般式(1)中、R1~R5は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、または、OR9で表される置換基を示す。R6は、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、シリル基、または、ガロイル基を示す。R7~R8は、それぞれ独立して、水素原子、または、R9で表される置換基を示す。R9は、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、または、シリル基を示す。Xは、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、または、N、OおよびSからなる群から選択される1種以上のヘテロ原子がC環の環形成原子と結合した置換基を示す。波線は、R体またはS体を形成する単結合である。]
【0039】
出発物質のフラバン誘導体のオリゴマとしては、下記一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
【0040】
【0041】
[一般式(2)中、R1~R5、R11~R15およびR21~R25は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、または、OR9で表される置換基を示す。R6、R16およびR26は、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、シリル基、または、ガロイル基を示す。R7~R8、R17~R18およびR27~R28は、それぞれ独立して、水素原子、または、R9で表される置換基を示す。R9は、置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、または、シリル基を示す。Xは、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、または、N、OおよびSからなる群から選択される1種以上のヘテロ原子がC環の環形成原子と結合した置換基を示す。波線は、R体またはS体を形成する単結合である。nは、0以上の整数を示す。]
【0042】
一般式(1)および(2)において、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基が好ましい。
【0043】
炭化水素基としては、環式および非環式のいずれであってもよい。また、飽和および不飽和のいずれであってもよい。炭化水素基には、炭素が直鎖状に結合した直鎖状脂肪族炭化水素基や、炭素が分枝して結合した分枝状脂肪族炭化水素基や、芳香族炭化水素基が、いずれも含まれる。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ジエニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0044】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましく、炭素数1~4が更に好ましい。
【0045】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基としては、炭素数2~10が好ましく、炭素数2~6がより好ましく、炭素数2~4が更に好ましい。
【0046】
アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、炭素数2~10が好ましく、炭素数2~6がより好ましく、炭素数2~4が更に好ましい。
【0047】
ジエニル基としては、1,3-ブタジエニル基、1,3-ペンタジエニル基、2,4-ペンタジエニル基等が挙げられる。ジエニル基としては、炭素数4~10が好ましく、炭素数4~6がより好ましい。
【0048】
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数3~10が好ましく、炭素数4~6がより好ましい。
【0049】
シクロアルケニル基としては、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。シクロアルケニル基としては、炭素数3~10が好ましく、炭素数4~6がより好ましい。
【0050】
アリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、インデニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基、3,4-キシリル基、3,5-キシリル基、o-クメニル基、m-クメニル基、p-クメニル基、メシチル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6~10が好ましい。
【0051】
アリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、トリフェニルメチル基等が挙げられる。アリールアルキル基としては、炭素数7~10が好ましい。
【0052】
アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基等が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、炭素数2~6が好ましく、炭素数2~4がより好ましい。
【0053】
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられる。R6、R16およびR26のアシル基としては、フラバン誘導体を活性化する反応性の観点から、アセチル基が特に好ましい。
【0054】
シリル基としては、メチルシリル基、エチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリiso-プロピルシリル基、トリtert-ブチルシリル基、ジメチルtert-ブチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジフェニルエチルシリル基、ジフェニルiso-プロピルシリル基、ジフェニルtert-ブチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリフェノキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルフェノキシシリル基、メチルメトキシフェニルシリル基等が挙げられる。
【0055】
N、OおよびSからなる群から選択される1種以上のヘテロ原子がC環の環形成原子と結合した置換基としては、C環の環形成原子と結合したヘテロ原子に電子求引性部位が結合した置換基が好ましい。ヘテロ原子の共有電子対のルイス酸に対する配位性により、ヘテロ原子の脱離性が向上する。
【0056】
NがC環の環形成原子と結合した置換基としては、アジド基、ニトロ基、カルバモイル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシアルキルアミノ基、ジアルコキシアルキルアミノ基、アルキルアミノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノアルキルアミノ基、アルキルスルファニルアルキルアミノ基、ジアルキルスルファニルアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アリールアミノアルキルアミノ基、含窒素複素環基等が挙げられる。含窒素複素環基としては、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、アデニル基、チミジル基等が挙げられる。
【0057】
OがC環の環形成原子と結合した置換基としては、カルボキシ基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アルキルアミノアルコキシ基、アルキルスルファニルアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシアルコキシ基等が挙げられる。
【0058】
SがC環の環形成原子と結合した置換基としては、アルキルスルファニル基、アルコキシスルファニル基、アルキルアミノスルファニル基、アルキルスルファニルアルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アルコキシスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アリールオキシスルフィニル基等が挙げられる。
【0059】
炭化水素基、アルコキシアルキル基、アシル基、シリル基、ガロイル基、および、N、OおよびSからなる群から選択される1種以上のヘテロ原子がC環の環形成原子と結合した置換基は、更に置換基を有していてもよい。これらの置換基に導入される置換基は、置換可能な位置に対し、1個が導入されてもよいし、複数個が導入されてもよい。複数個が導入される場合、置換基同士は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0060】
これらの置換基に導入される置換基としては、前記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ジエニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アシル基、シリル基や、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、アジド基、ニトロ基、カルバモイル基、ハロゲン原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0061】
一般式(1)および(2)において、R6、R16およびR26としては、アセチル基が特に好ましい。R7~R8、R17~R18およびR27~R28としては、ベンジル基が特に好ましい。Xとしては、エトキシエチル基が特に好ましい。nとしては、0以上15以下が好ましく、0以上10以下がより好ましく、0以上5以下が更に好ましい。
【0062】
出発物質のフラバン誘導体としては、フラバン-3-オールの骨格に関して(2R,3R)体、(2R,3S)体、(2S,3R)体、および、(2S,3S)体のいずれであってもよい。出発物質のフラバン誘導体としては、反応性の観点からは、Xで表される置換基と、OR6、OR16およびOR26で表される置換基とが、syn(cis)で配置した構造を有する誘導体が好ましい。
【0063】
ルイス酸としては、使用する溶媒に対する溶解性が高いルイス酸や、反応温度において液体であるルイス酸を用いることができる。ルイス酸を含む触媒液は、所定の濃度のルイス酸を、反応溶媒となる適宜の溶媒に溶解させることによって調製できる。
【0064】
ルイス酸としては、例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF3・Et2O)、三塩化ホウ素(BCl3)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル(TESOTf)、トリフルオロメタンスルホン酸トリイソプロピルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチル-tert-ブチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルシリルや、その他のパーフルオロアルキルスルホン酸アルキルシリル等を用いることができる。
【0065】
塩基としては、反応後にルイス酸を中和し、且つ、反応生成物に対する悪影響を生じない限り、適宜の化合物を用いることができる。塩基を含む反応停止液は、所定の濃度の塩基を、適宜の溶媒に溶解させることによって調製できる。
【0066】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン(Et3N)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロオクタン、ピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、テトラメチルグアニジン等を用いることができる。また、特に塩基を含む反応停止液をマイクロリアクタに導入しない場合は、有機溶媒に可溶ではない、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)等の無機塩基を含む水溶液も用いることができる。
【0067】
溶媒としては、フラバン誘導体のモノマや、フラバン誘導体のオリゴマや、ルイス酸を溶解し、且つ、合成反応を阻害せず、反応生成物に対する悪影響を生じない限り、適宜の溶媒を用いることができる。溶媒としては、SN1型の求核置換反応様の重合反応を行う観点から、極性溶媒を用いることが好ましい。
【0068】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、メタノール、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等を用いることができる。溶媒としては、これらのうち、一種を用いてもよいし、複数種を混合した混合溶媒を用いてもよい。
【0069】
一般式(1)で表されるフラバン誘導体のモノマ同士の反応によって、下記一般式(3)で表されるフラバン誘導体のダイマが得られる。反応に用いるモノマの構造や立体電子効果に応じて、C環の4位に結合したフラバン単位がC環の3位に結合した置換基に対してanti(trans)配置またはsyn(cis)配置であるダイマを得ることができる。
【0070】
【0071】
[一般式(3)中、R1~R5、R6、R7~R9、Xは、一般式(1)においてと同義である。波線は、R体またはS体を形成する単結合である。]
【0072】
また、一般式(2)で表されるフラバン誘導体のオリゴマ同士の反応によって、下記一般式(4)で表されるフラバン誘導体のオリゴマが得られる。反応に用いるオリゴマの構造や立体電子効果に応じて、C環の4位に結合したフラバン単位がC環の3位に結合した置換基に対してanti(trans)配置またはsyn(cis)配置であるオリゴマを得ることができる。例えば、ダイマ同士の反応によって、テトラマが得られる。テトラマ同士の反応によって、オクタマが得られる。
【0073】
【0074】
[一般式(4)中、R1~R5、R11~R15、R21~R25、R6、R16、R26、R7~R9、R17~R18、R27~R28、X、nは、一般式(2)においてと同義である。波線は、R体またはS体を形成する単結合である。]
【0075】
フラバン誘導体のオリゴマを生成する反応は、次のメカニズムによると考えられる。ルイス酸は、フラバン誘導体に作用して、C環の4位の炭素に結合している置換基(X)の電子対を引き抜くと共に、C環の3位の炭素に結合している置換基(OR6)による隣接基関与を受ける。C環の3位の炭素と4位の炭素との間には、遷移状態として環状中間体を生じる。そして、C環の4位の炭素から置換基(X)が脱離して、C環の4位の炭素がカチオン化した活性化体のフラバン誘導体が生成される。
【0076】
活性化体のフラバン誘導体は、求核体として作用する活性化されていないフラバン誘導体に攻撃される。電子的な効果により、求核体のA環の8位の炭素が求核部位となる。活性化体に対する求核体の攻撃によって、活性化体のC環の4位の炭素と、求核体のA環の8位の炭素との間に結合が形成される。環状中間体の生成と脱離は、SN1型の位置選択的な反応となり、立体電子効果によって位置選択的なオリゴマが生成される。
【0077】
<第1実施形態>
次に、本発明の第1実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム、および、フラバン類オリゴマの製造方法について、図を参照しながら説明する。
【0078】
図1は、第1実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムの模式図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム1は、原料液用容器(第1容器)101と、触媒液用容器(第2容器)102と、回収容器103と、第1ポンプ104と、第2ポンプ105と、マイクロリアクタ106と、チューブ107と、温度調節装置108と、温度調節装置109と、チューブ107と各構成要素を接続する不図示のフィッティング等を備えている。
【0079】
温度調節装置108および温度調節装置109は、図中に破線で示すように、システム内の所定の領域を、所定の温度に調節するように設けられる。マイクロリアクタ106や、マイクロリアクタ106から回収容器103までのチューブ107は、温度調節装置108による調節範囲に含まれる。回収容器103や、回収容器103内のチューブ107は、温度調節装置109による調節範囲に含まれる。
【0080】
マイクロリアクタ106は、フロー型の反応器であり、個々の流体が外部から導入される二つの入口と、導入された流体同士を合流させる微小流路と、合流によって生成された生成流体を外部に流出させる出口と、を有している。マイクロリアクタ106は、一方の入口から導入される流体と、他方の入口から導入される流体とを、微小流路内において混合する。流体同士の混合によって、所定の反応を開始した生成流体が生成される。
【0081】
マイクロリアクタ106の一方の入口には、原料液用容器101と、第1ポンプ104とが、チューブ107を介して接続される。原料液用容器101は、第1ポンプ104の吸入側に接続される。第1ポンプ104の吐出側は、マイクロリアクタ106の一方の入口に接続される。原料液用容器101には、出発物質であるフラバン誘導体を含む原料液が用意される。第1ポンプ104は、原料液を原料液用容器101からマイクロリアクタ106の一方の入口に送る。
【0082】
マイクロリアクタ106の他方の入口には、触媒液用容器102と、第2ポンプ105とが、チューブ107を介して接続される。触媒液用容器102は、第2ポンプ105の吸入側に接続される。第2ポンプ105の吐出側は、マイクロリアクタ106の他方の入口に接続される。触媒液用容器102には、ルイス酸を含む触媒液が用意される。第2ポンプ105は、触媒液を触媒液用容器102からマイクロリアクタ106の他方の入口に送る。
【0083】
マイクロリアクタ106の出口には、回収容器103がチューブ107を介して接続される。回収容器103は、マイクロリアクタ106、および、その後のチューブ107内で生成された生成流体を回収するための容器である。回収容器103には、生成流体に含まれるルイス酸を中和するために、塩基を含む反応停止液を貯留しておくことができる。
【0084】
第1ポンプ104や、第2ポンプ105としては、例えば、シリンジポンプ、チューブポンプ、プランジャポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクリューポンプや、シリンジによる手動の送液や、水頭差を利用した送液等を用いることができる。なお、第1ポンプ104もしくは第2ポンプ105としてシリンジポンプを用いた場合は、原料液用容器101もしくは触媒液用容器102の機能的な代替として、原料液もしくは触媒液が用意されたシリンジを用いることができる。
【0085】
マイクロリアクタ106の材料や、原料液用容器101、触媒液用容器102、回収容器103の材料や、チューブ107の材料や、ポンプの接液部を構成するチューブ、シリンジ、ダイヤフラム等の材料や、フィッティングの材料としては、原料液、触媒液、生成流体に対する悪影響を生じず、これらによる劣化を生じ難い限り、流体の種類に応じて、適宜の材料を用いることができる。
【0086】
マイクロリアクタ106の材料や、原料液用容器101、触媒液用容器102、回収容器103の材料や、チューブ107の材料や、ポンプの接液部を構成する材料や、フィッティングの材料は、システム内における設置箇所毎に、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。これらの材料は、加工性や柔軟性等に応じて、適宜に選定することができる。
【0087】
マイクロリアクタ106の材料としては、ステンレス鋼、金、ガラス、ハステロイ、セラミック、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、TPX(ポリメチルペンテン)、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PC(ポリカーボネート)や、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0088】
マイクロリアクタ106の材料は、耐食性、耐薬品性等の向上のために、ガラス等によるライニングや、ニッケル、金等によるコーティングや、シリコンの酸化で形成されるような酸化皮膜が形成されてもよい。
【0089】
温度調節装置108,109としては、熱媒体を用いた熱交換器、熱媒体を用いた恒温水槽、ペルチェ式調温装置、マントルヒータ等の適宜の装置を用いることができる。熱媒体としては、水、エチレングリコール、水/エチレングリコール混合溶媒、ドライアイスと水/エタノール混合溶媒、ドライアイスと水/メタノール混合溶媒等を用いることができる。
【0090】
温度調節装置108と、温度調節装置109とは、互いに同じ温度範囲に調節されてもよいし、互いに異なる温度範囲に調節されてもよい。温度調節装置108,109による温度は、合成反応の反応速度、化合物の安定性等に応じて調節できる。なお、合成反応を室温で行う場合等には、温度調節装置108,109を備えなくてもよい。
【0091】
図2は、マイクロリアクタの一例を示す図である。
図2に示すように、フラバン類オリゴマの合成に用いるマイクロリアクタとしては、互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ200を用いることもできる。
【0092】
互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ200は、個々の流体が外部から導入される2つの入口(207,208)と、導入された流体同士を合流させる微小流路(203,204,205)と、合流点206で合流によって生成された生成流体を外部に流出させる流体出口209と、を有している。
【0093】
マイクロリアクタ200は、上側プレート201および下側プレート202によって形成されている。上側プレート201には、溝加工が施されており、溝を蓋するように下側プレート202が重ねられて、微小流路(203,204,205)が形成されている。このような溝は、上側プレート201および下側プレート202のいずれに形成することもできる。
【0094】
下側プレート202には、微小流路(203,204,205)の各末端に重なる位置に貫通孔(207,208,209)が設けられている。貫通孔(207,208,209)としては、高流量側流体入口207、低流量側流体入口208および流体出口209が、微小流路(203,204,205)側から下側プレート202の微小流路(203,204,205)と反対側の面に貫通している。
【0095】
貫通孔(207,208,209)には、不図示の螺子溝を形成することができる。チューブ107は、その螺子溝に螺合可能なフィッティングを介して接続することができる。或いは、チューブ107は、貫通孔(207,208,209)に対して直接的に接続することができる。
【0096】
微小流路(203,204,205)は、高流量側流体入口207から合流点206に至る高流量側流路203と、低流量側流体入口208から合流点206に至る低流量側流路204と、合流点206から流体出口209に至る混合流路205によって構成されている。
【0097】
高流量側流路203は、マイクロリアクタ200で混合される流体のうち、混合比が高く、相対的に高い流量に設定される流体を流すために用いられる。一方、低流量側流路204は、マイクロリアクタ200で混合される流体のうち、混合比が低く、相対的に低い流量に設定される流体を流すために用いられる。
【0098】
マイクロリアクタ200において、高流量側の流体は、高流量側流体入口207から導入され、高流量側流路203を経由して、合流点206に到達する。低流量側の流体は、低流量側流体入口208から導入され、低流量側流路204を経由して、合流点206に到達する。高流量側の流体と低流量側の流体とは、合流点206で合流して混合および反応を開始する。これらの流体は、混合流路205を経由して、流体出口209から外部に排出される。
【0099】
高流量側流路203は、低流量側流路204よりも総流路体積が大きく設けられる。例えば、高流量側流路203の流路長さは、同等の流路幅および流路深さに設けられた低流量側流路204よりも長く設けられる。このような構造によると、混合比が一方の流体の側に偏っており、流体同士が互いに大きく異なる流量に制御される場合において、合流点206に各流体が到達するタイミングのずれを小さくすることができる。
【0100】
高流量側流路203は、中間部で2本の対称な分岐流路203a,203bに分岐し、合流点206で互いに合流している。低流量側流路204は、2本の分岐流路203a,203bの間から合流点206に接続している。合流点206では、上流側から流入する低流量側の流体と高流量側の流体とが、下流側にある混合流路205に流れる。このような構造によると、低流量側の流体が高流量側の流体に挟まれた状態で合流して混合を開始する。低流量側の流体が高流量側の流体に挟まれることにより、流体間の界面の面積が拡大するため、混合の効率を向上させることができる。
【0101】
高流量側流路203、低流量側流路204および混合流路205は、流路径ないし流路幅や流路深さを、2mm以下に設けることが好ましい。このような流路であると、表面効果や熱伝達率の向上等、マイクロ反応場による効果を十分に得ることができる。特に、合流点206の直前の高流量側流路203および低流量側流路204や、合流点206や、混合流路205は、流路径ないし流路幅や流路深さを、10μm以上1mm以下に設けることが好ましい。このような流路であると、流体同士を分子拡散によって均一且つ迅速に混合できる。
【0102】
なお、互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ200は、流体同士の流量比を1:1とする場合にも使用できる。流体同士の混合は、流体同士が均一に混ざり合う形態であってもよいし、流体同士が不均一に混ざり合う形態、例えば、乳化状態等の複数相が形成される形態であってもよい。
【0103】
図2において、マイクロリアクタ200は、所定の形状の高流量側流路203や低流量側流路204を備えている。但し、フラバン類オリゴマの合成に用いるマイクロリアクタは、少なくとも二流体を混合する微小流路を有する限り、適宜の形状に設けることができる。例えば、微小流路は、Y字型、T字型、多層流を形成して合流させる形状等に設けることもできる。
【0104】
フラバン類オリゴマの合成に用いるマイクロリアクタは、二流体が合流するまでの流路体積が、互いに異なっていてもよいし、互いに同等であってもよい。フラバン類オリゴマの合成に用いるマイクロリアクタの流路は、必ずしも全てが微小流路である必要はない。マイクロリアクタの流路は、反応の種類等に応じて、流路径ないし流路幅や流路深さを変更できる。
【0105】
次に、フラバン類オリゴマの製造システム1を用いたフラバン類オリゴマの製造方法について説明する。
【0106】
フラバン類オリゴマの製造システム1では、マイクロリアクタ106で原料液と触媒液とを混合して、触媒液に含まれるルイス酸による、原料液に含まれる一部のフラバン誘導体の活性化を開始する。混合によって、ルイス酸で活性化された一部のフラバン誘導体と、求核体として作用する残部のフラバン誘導体との反応が開始した生成流体が生成される。活性化されたフラバン誘導体と、求核体である活性化されていないフラバン誘導体とのSN1型の反応によって、フラバン誘導体同士を位置選択的に縮合させることができる。
【0107】
製造システム1を用いたフラバン類オリゴマの製造時において、原料液用容器101には、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む原料液を用意する。触媒液用容器102には、ルイス酸を含む触媒液を用意する。回収容器103には、塩基を含む反応停止液を用意する。
【0108】
はじめに、原料液用容器101に用意されたフラバン誘導体を含む原料液を、第1ポンプ104によって、原料液用容器101からマイクロリアクタ106の一方の入口に送る。また、触媒液用容器102に用意されたルイス酸を含む触媒液を、第2ポンプ105によって、触媒液用容器102からマイクロリアクタ106の他方の入口に送る。
【0109】
次いで、フラバン誘導体を含む原料液と、ルイス酸を含む触媒液とを、マイクロリアクタ106で混合する。混合によって、触媒液に含まれるルイス酸による、原料液に含まれる一部のフラバン誘導体の活性化を開始する。そして、活性化された一部のフラバン誘導体と、求核体として作用する活性化されていない残部のフラバン誘導体との反応が開始される。フラバン誘導体同士の反応は、マイクロリアクタ106で生成された生成流体が、下流に向けてその後のチューブ107内を流れる間にさらに進行する。
【0110】
製造システム1のマイクロリアクタ106では、出発物質であるフラバン誘導体と、ルイス酸とを、フラバン誘導体:ルイス酸=1:0.5に近い反応当量比で反応させる。そのため、このような反応当量比となるように、マイクロリアクタ106に導入する原料液と触媒液との流量比や、原料液用容器101に用意する原料液の濃度や、触媒液用容器102に用意する触媒液の濃度を調整する。フラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、流量比のみで調整してもよいし、濃度のみで調整してもよいし、流量比と濃度の両方で調整してもよい。
【0111】
続いて、マイクロリアクタ106、および、その後のチューブ107から排出された生成流体を、回収容器103の塩基を含む反応停止液中に回収する。反応停止液中に回収することによって、生成流体中のルイス酸を塩基で中和して、重合反応を停止させる。マイクロリアクタ106の微小流路内で反応を開始し、その後のチューブ107を経由し、塩基を含む反応停止液中に回収して重合反応を停止させると、所望の重合度でフラバン誘導体同士が結合したオリゴマが得られる。
【0112】
生成されたフラバン誘導体のオリゴマは、必要に応じて、分離精製した後に、保護基を脱保護することができる。フラバン誘導体のオリゴマは、脱保護前または脱保護後に、新規の置換基を導入する工程や、糖鎖等の修飾構造を導入する工程や、立体構造、骨格、官能基等を変換する他の反応工程等に供することができる。
【0113】
以上のフラバン類オリゴマの製造システム1、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、原料液に含まれるフラバン誘導体と、触媒液に含まれるルイス酸とが、マイクロリアクタ106の微小流路、および、その後のチューブ107内において、効率よく反応できる。そのため、所定の反応当量比のルイス酸によって、原料液に含まれる一部のフラバン誘導体のみを活性化させることができる。活性化された一部のフラバン誘導体と、求核体として作用する残部のフラバン誘導体とを、所定の反応当量比で反応させることができる。マイクロリアクタを用いると、流体同士の流量比、反応物同士の反応比や、反応の開始時期、反応の停止時期を、精密に制御することが可能である。よって、所望の重合度でフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマを高収率で効率的に合成することができる。
【0114】
また、以上のフラバン類オリゴマの製造システム1、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、所望の重合度のオリゴマの収率が向上するため、合成後の混合物から所望の重合度のオリゴマを分離精製するコストや手間を削減できる。また、過剰量の触媒が不要になり、触媒のコストや精製コストが削減される。
【0115】
製造システム1のマイクロリアクタ106、および、その後のチューブ107内で反応させるフラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、1当量のフラバン誘導体に対して、ルイス酸が0.5当量以上である限り、特に限定されるものではない。フラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、フラバン誘導体やルイス酸の種類にもよるが、フラバン誘導体およびルイス酸の使用量を節約する観点からは、フラバン誘導体:ルイス酸=1:0.5~1:1とすることが好ましい。ルイス酸の反応当量比は、1当量のフラバン誘導体に対して、1当量以下が好ましく、0.5当量以上0.9当量以下が好ましく、0.5当量以上0.8当量以下がより好ましく、0.5当量以上0.7当量以下が更に好ましく、0.5当量以上0.6当量以下が更に好ましい。
【0116】
このような反応当量比であると、ルイス酸で活性化された一部のフラバン誘導体と、求核体として作用する残部のフラバン誘導体とが、1:1の反応当量比に近くなる。フラバン誘導体同士を1:1で反応させることができるため、未反応のフラバン誘導体(モノマ等) を低減できるとともに、マイクロリアクタ106を用いて、反応条件にバラつきがなくなることにより、所望の重合度以上のオリゴマを低減できる。すなわち、フラバン誘導体のモノマ、または、フラバン誘導体のオリゴマを出発物質として、所望の重合度のダイマ、または、所望の重合度のオリゴマを高収率で得ることができる。
【0117】
回収容器103内で反応させるルイス酸と塩基との反応当量比は、フラバン誘導体の多量化反応が停止する限り、適宜の反応当量比とすることができる。塩基の反応当量比は、マイクロリアクタ106で反応させる1当量のルイス酸に対して、1当量以上が好ましく、1当量を超える過剰量がより好ましい。このような量であると、ルイス酸が適切に反応しなかった場合であっても、反応を安全に停止できる。塩基の反応当量比は、反応停止液を回収容器103に貯留しておく場合や、分離精製を予定している場合等には、大過剰量としてもよい。
【0118】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム、および、フラバン類オリゴマの製造方法について、図を参照しながら説明する。
【0119】
図3は、第2実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムの模式図である。
図3に示すように、第2実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム2は、原料液用容器(第1容器)101と、触媒液用容器(第2容器)102と、回収容器103と、原料液用容器(第3容器)301と、第1ポンプ104と、第2ポンプ105と、第3ポンプ302と、第1マイクロリアクタ106と、第2マイクロリアクタ303と、チューブ107と、温度調節装置108と、温度調節装置109と、チューブ107と各構成要素を接続する不図示のフィッティング等を備えている。
【0120】
製造システム2が、前記の製造システム1と異なる点は、互いに直列に接続された複数段のマイクロリアクタ106,303を備えており、フラバン類オリゴマの合成反応を段階的に行う点である。
【0121】
製造システム2において、第1マイクロリアクタ106の後段には、第2マイクロリアクタ303が接続されている。また、第2マイクロリアクタ303には、原料液用容器301や第3ポンプ302が接続されている。
【0122】
温度調節装置108および温度調節装置109は、図中に破線で示すように、システム内の所定の領域を、所定の温度に調節するように設けられる。第1マイクロリアクタ106や、第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303までのチューブ107や、第2マイクロリアクタ303や、第2マイクロリアクタ303から回収容器103までのチューブ107は、温度調節装置108による調節範囲に含まれる。回収容器103や、回収容器103内のチューブ107は、温度調節装置109による調節範囲に含まれる。
【0123】
第1マイクロリアクタ106および第2マイクロリアクタ303は、フロー型の反応器であり、個々の流体が外部から導入される二つの入口と、導入された流体同士を合流させる微小流路と、合流によって生成された生成流体を外部に流出させる出口と、を有している。これらのマイクロリアクタ106,303は、一方の入口から導入される流体と、他方の入口から導入される流体とを、微小流路内において混合する。流体同士の混合によって、所定の反応を開始した生成流体が生成される。
【0124】
製造システム2において、第1マイクロリアクタ106の一方の入口には、製造システム1と同様に、原料液用容器101と、第1ポンプ104とが、チューブ107を介して接続される。第1マイクロリアクタ106の他方の入口には、製造システム1と同様に、触媒液用容器102と、第2ポンプ105とが、チューブ107を介して接続される。
【0125】
第1マイクロリアクタ106の出口には、第2マイクロリアクタ303の一方の入口がチューブ107を介して接続される。第2マイクロリアクタ303には、第1マイクロリアクタ106、および、その後のチューブ107内で生成された第1生成流体が送られる。
【0126】
第2マイクロリアクタ303の他方の入口には、原料液用容器301と、第3ポンプ302とが、チューブ107を介して接続される。原料液用容器301は、第3ポンプ302の吸入側に接続される。第3ポンプ302の吐出側は、第2マイクロリアクタ303の他方の入口に接続される。原料液用容器301には、出発物質であるフラバン誘導体を含む原料液が用意される。第3ポンプ302は、原料液を原料液用容器301から第2マイクロリアクタ303の他方の入口に送る。
【0127】
第2マイクロリアクタ303の出口には、回収容器103がチューブ107を介して接続される。回収容器103は、第2マイクロリアクタ303、および、その後のチューブ107内で生成された第2生成流体を回収するための容器である。回収容器103には、第2生成流体に含まれるルイス酸を中和するために、塩基を含む反応停止液を貯留しておくことができる。
【0128】
第1ポンプ104や、第2ポンプ105としては、製造システム1と同様に、適宜のポンプを用いることができる。第3ポンプ302としては、第1ポンプ104や第2ポンプ105と同様に、適宜のポンプを用いることができる。なお、第1ポンプ104、第2ポンプ105もしくは第3ポンプ302としてシリンジポンプを用いた場合は、原料液用容器101、触媒液用容器102もしくは原料液用容器301の機能的な代替として、原料液もしくは触媒液が用意されたシリンジを用いることができる。
【0129】
第1マイクロリアクタ106の材料や、第2マイクロリアクタ303の材料や、原料液用容器101、触媒液用容器102、回収容器103、原料液用容器301の材料や、チューブ107の材料や、ポンプの接液部を構成するチューブ、シリンジ、ダイヤフラム等の材料や、フィッティングの材料としては、製造システム1と同様に、適宜の材料を用いることができる。
【0130】
第1マイクロリアクタ106や、第2マイクロリアクタ303としては、互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ200(
図2参照)を用いることができる。互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ200は、第1マイクロリアクタ106のみに用いてもよいし、第2マイクロリアクタ303のみに用いてもよいが、第1マイクロリアクタ106および第2マイクロリアクタ303の両方に用いることが好ましい。
【0131】
次に、フラバン類オリゴマの製造システム2を用いたフラバン類オリゴマの製造方法について説明する。
【0132】
フラバン類オリゴマの製造システム2では、第1マイクロリアクタ106で原料液と触媒液とを混合して、触媒液に含まれるルイス酸による、原料液に含まれるフラバン誘導体の活性化を開始する。1段目の混合によって、ルイス酸で活性化されたフラバン誘導体を含む第1生成流体が生成される。そして、第2マイクロリアクタ303で第1生成流体と原料液とを混合して、ルイス酸で活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用する活性化されていないフラバン誘導体との反応を開始する。2段目の混合によって、フラバン誘導体同士の反応が開始した第2生成流体が生成される。活性化されたフラバン誘導体と、求核体である活性化されていないフラバン誘導体とのSN1型の反応によって、フラバン誘導体同士を位置選択的に縮合させることができる。
【0133】
製造システム2を用いたフラバン類オリゴマの製造時において、原料液用容器101には、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む原料液を用意する。触媒液用容器102には、ルイス酸を含む触媒液を用意する。原料液用容器301には、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む原料液を用意する。回収容器103には、塩基を含む反応停止液を用意する。
【0134】
はじめに、原料液用容器101に用意されたフラバン誘導体を含む原料液を、第1ポンプ104によって、原料液用容器101から第1マイクロリアクタ106の一方の入口に送る。また、触媒液用容器102に用意されたルイス酸を含む触媒液を、第2ポンプ105によって、触媒液用容器102から第1マイクロリアクタ106の他方の入口に送る。
【0135】
次いで、フラバン誘導体を含む原料液と、ルイス酸を含む触媒液とを、第1マイクロリアクタ106で混合する。混合によって、触媒液に含まれるルイス酸による、原料液に含まれるフラバン誘導体の活性化を開始する。フラバン誘導体の活性化は、第1マイクロリアクタ106で生成された第1生成流体が、下流に向けてその後のチューブ107内を流れる間にさらに進行する。第1生成流体は、第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303の一方の入口に送られる。
【0136】
製造システム2の第1マイクロリアクタ106では、出発物質であるフラバン誘導体と、ルイス酸とを、フラバン誘導体:ルイス酸=1:1に近い反応当量比で反応させる。そのため、このような反応当量比となるように、第1マイクロリアクタ106に導入する原料液と触媒液との流量比や、原料液用容器101に用意する原料液の濃度や、触媒液用容器102に用意する触媒液の濃度を調整する。フラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、流量比のみで調整してもよいし、濃度のみで調整してもよいし、流量比と濃度の両方で調整してもよい。
【0137】
続いて、原料液用容器301に用意されたフラバン誘導体を含む原料液を、第3ポンプ302によって、原料液用容器301から第2マイクロリアクタ303の他方の入口に送る。
【0138】
次いで、活性化されたフラバン誘導体を含む第1生成流体と、求核体として作用する活性化されていないフラバン誘導体を含む原料液とを、第2マイクロリアクタ303で混合する。混合によって、活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用する活性化されていないフラバン誘導体との反応が開始される。フラバン誘導体同士の反応は、第2マイクロリアクタ303で生成された第2生成流体が、下流に向けてその後のチューブ107内を流れる間にさらに進行する。
【0139】
製造システム2の第2マイクロリアクタ303では、第1マイクロリアクタ106、および、その後のチューブ107内で活性化されたフラバン誘導体と、原料液用容器301に用意された活性化されていないフラバン誘導体とを、活性化体:非活性化体=1:1に近い反応当量比で反応させる。そのため、このような反応当量比となるように、第2マイクロリアクタ303に導入する第1生成流体と原料液との流量比や、原料液用容器301に用意する原料液の濃度を調整する。活性化されたフラバン誘導体と活性化されていないフラバン誘導体との反応当量比は、流量比のみで調整してもよいし、濃度のみで調整してもよいし、流量比と濃度の両方で調整してもよい。
【0140】
続いて、第2マイクロリアクタ303、および、その後のチューブ107から排出された反応中の第2生成流体を、回収容器103の塩基を含む反応停止液中に回収する。反応停止液中に回収することによって、第2生成流体中のルイス酸を塩基で中和して、重合反応を停止させる。第2マイクロリアクタ303の微小流路内で重合反応を開始し、その後のチューブ107を経由し、塩基を含む反応停止液中に回収して重合反応を停止させると、所望の重合度でフラバン誘導体同士が結合したオリゴマが得られる。
【0141】
生成されたフラバン誘導体のオリゴマは、必要に応じて、分離精製した後に、保護基を脱保護することができる。フラバン誘導体のオリゴマは、脱保護前または脱保護後に、新規の置換基を導入する工程や、糖鎖等の修飾構造を導入する工程や、立体構造、骨格、官能基等を変換する他の反応工程等に供することができる。
【0142】
以上のフラバン類オリゴマの製造システム2、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、原料液に含まれるフラバン誘導体と、触媒液に含まれるルイス酸とが、第1マイクロリアクタ106の微小流路、および、その後のチューブ107内において、効率よく反応でき、第1生成流体が生成する。また、第1生成流体に含まれる活性化されたフラバン誘導体と、原料液に含まれるフラバン誘導体とが、第2マイクロリアクタ303の微小流路、および、その後のチューブ107内において、効率よく反応できる。そのため、活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用するフラバン誘導体とを、所定の反応当量比で反応させることができる。マイクロリアクタを用いると、流体同士の流量比、反応物同士の反応比や、反応の開始時期、反応の停止時期を、精密に制御することが可能である。よって、所望の重合度でフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマを高収率で効率的に合成することができる。
【0143】
また、以上のフラバン類オリゴマの製造システム2、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、所望の重合度のオリゴマの収率が向上するため、合成後の混合物から所望の重合度のオリゴマを分離精製するコストや手間を削減できる。また、過剰量の触媒が不要になり、触媒のコストや精製コストが削減される。フラバン類オリゴマの製造システム2、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、前記の製造システム1と比較して、反応条件の制御が容易になる。
【0144】
製造システム2の第1マイクロリアクタ106、および、第1マイクロリアクタ106の下流側のチューブ107内で反応させるフラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、1当量のフラバン誘導体に対して、ルイス酸が1当量以上である限り、特に限定されるものではない。フラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、フラバン誘導体やルイス酸の種類にもよるが、ルイス酸の使用量を節約する観点からは、フラバン誘導体:ルイス酸=1:1~1:2とすることが好ましい。ルイス酸の反応当量比は、1当量のフラバン誘導体に対して、2当量以下が好ましく、1.0当量以上1.8当量以下が好ましく、1.0当量以上1.6当量以下がより好ましく、1.0当量以上1.4当量以下が更に好ましく、1.0当量以上1.2当量以下が更に好ましい。
【0145】
製造システム2の第2マイクロリアクタ303、および、第2マイクロリアクタ303の下流側のチューブ107内で反応させる活性化されたフラバン誘導体と求核体として作用するフラバン誘導体との反応当量比は、1当量の活性化されたフラバン誘導体に対して、求核体として作用するフラバン誘導体が1当量以上である限り、特に限定されるものではない。活性化されたフラバン誘導体と求核体として作用するフラバン誘導体との反応当量比は、フラバン誘導体やルイス酸の種類にもよるが、フラバン誘導体の使用量を節約する観点からは、活性化されたフラバン誘導体:求核体として作用するフラバン誘導体=1:1~1:2とすることが好ましい。求核体として作用するフラバン誘導体の反応当量比は、1当量の活性化されたフラバン誘導体に対して、2当量以下が好ましく、1.0当量以上1.8当量以下が好ましく、1.0当量以上1.6当量以下がより好ましく、1.0当量以上1.4当量以下が更に好ましく、1.0当量以上1.2当量以下が更に好ましい。
【0146】
求核体として作用するフラバン誘導体が過剰量となるような反応当量比であると、ルイス酸で活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用するフラバン誘導体とが、確実に反応することができるが、未反応のフラバン誘導体が残る。活性化されたフラバン誘導体と求核体として作用するフラバン誘導体の反応当量比が1:1に近くなると、フラバン誘導体(モノマ等)を低減できるとともに、マイクロリアクタ106,303を用いているため、反応条件にバラつきがなくなることにより、所望の重合度以上のオリゴマを低減できる。すなわち、フラバン誘導体のモノマ、または、フラバン誘導体のオリゴマを出発物質として、所望の重合度のダイマ、または、所望の重合度のオリゴマを高収率で得ることができる。
【0147】
回収容器103内で反応させるルイス酸と塩基との反応当量比は、前記の製造システム1と同様の条件とすることができる。
【0148】
製造システム2において、第1マイクロリアクタ106や、第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303までのチューブ107や、第2マイクロリアクタ303や、第2マイクロリアクタ303から回収容器103までのチューブ107は、温度調節装置108による調節範囲に含まれている。このような構成であると、第2マイクロリアクタ303の上流側と下流側とを、互いに同程度の温度に調節することができる。そのため、コストの削減や、制御の簡略化が可能である。
【0149】
しかし、第1マイクロリアクタ106、および、第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303までのチューブ107と、第2マイクロリアクタ303、および、第2マイクロリアクタ303から回収容器103までのチューブ107とは、互いに異なる温度調節装置で調節することもできる。より厳密に、第2マイクロリアクタ303の上流側と下流側とを、互いに異なる温度に調節することも可能である。なお、迅速に重合反応を停止させるために、回収容器103には、過剰量の塩基を含む反応停止液を用意することが可能であるとともに、回収容器103や回収容器103内のチューブ107の温度を調節する温度調節装置109を、これらの区間よりも高温に調節することができる。
【0150】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム、および、フラバン類オリゴマの製造方法について、図を参照しながら説明する。
【0151】
図4は、第3実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムの模式図である。
図4に示すように、第3実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム3は、原料液用容器(第1容器)101と、触媒液用容器(第2容器)102と、回収容器103と、反応停止液用容器(第4容器)401と、第1ポンプ104と、第2ポンプ105と、第3ポンプ302と、第1マイクロリアクタ106と、第2マイクロリアクタ303と、チューブ107と、温度調節装置108と、温度調節装置109と、チューブ107と各構成要素を接続する不図示のフィッティング等を備えている。
【0152】
製造システム3が、前記の製造システム1と異なる点は、互いに直列に接続された複数段のマイクロリアクタ106,303を備えており、フラバン類オリゴマの合成反応を、マイクロリアクタにおける塩基の混合によって停止させる点である。
【0153】
製造システム3において、第1マイクロリアクタ106の後段には、第2マイクロリアクタ303が接続されている。第2マイクロリアクタ303には、反応停止液用容器401や第3ポンプ302が接続されている。
【0154】
温度調節装置108および温度調節装置109は、図中に破線で示すように、システム内の所定の領域を、所定の温度に調節するように設けられる。第1マイクロリアクタ106や、第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303までのチューブ107や、第2マイクロリアクタ303や、第2マイクロリアクタ303から回収容器103までのチューブ107は、温度調節装置108による調節範囲に含まれる。回収容器103や、回収容器103内のチューブ107は、温度調節装置109による調節範囲に含まれる。
【0155】
製造システム3において、第1マイクロリアクタ106の一方の入口には、製造システム1と同様に、原料液用容器101と、第1ポンプ104とが、チューブ107を介して接続される。第1マイクロリアクタ106の他方の入口には、製造システム1と同様に、触媒液用容器102と、第2ポンプ105とが、チューブ107を介して接続される。
【0156】
第1マイクロリアクタ106の出口には、第2マイクロリアクタ303の一方の入口がチューブ107を介して接続される。第2マイクロリアクタ303には、第1マイクロリアクタ106、および、その後のチューブ107内で生成された第1生成流体が送られる。
【0157】
第2マイクロリアクタ303の他方の入口には、反応停止液用容器401と、第3ポンプ302とが、チューブ107を介して接続される。反応停止液用容器401は、第3ポンプ302の吸入側に接続される。第3ポンプ302の吐出側は、第2マイクロリアクタ303の他方の入口に接続される。反応停止液用容器401には、塩基を含む反応停止液が用意される。第3ポンプ302は、反応停止液を反応停止液用容器401から第2マイクロリアクタ303の他方の入口に送る。
【0158】
第2マイクロリアクタ303の出口には、回収容器103がチューブ107を介して接続される。回収容器103は、第2マイクロリアクタ303、および、その後のチューブ107内で生成された第2生成流体を回収するための容器である。回収容器103には、第2生成流体に含まれるルイス酸を中和するために、塩基を含む反応停止液を貯留しておいてもよいし、貯留しておかなくてもよい。
【0159】
第1ポンプ104や、第2ポンプ105としては、製造システム1と同様に、適宜のポンプを用いることができる。第3ポンプ302としては、第1ポンプ104や第2ポンプ105と同様に、適宜のポンプを用いることができる。なお、第1ポンプ104、第2ポンプ105もしくは第3ポンプ302としてシリンジポンプを用いた場合は、原料液用容器101、触媒液用容器102もしくは反応停止液用容器401の機能的な代替として、原料液、触媒液もしくは反応停止液が用意されたシリンジを用いることができる。
【0160】
第1マイクロリアクタ106の材料や、第2マイクロリアクタ303の材料や、原料液用容器101、触媒液用容器102、回収容器103、反応停止液用容器401の材料や、チューブ107の材料や、ポンプの接液部を構成するチューブ、シリンジ、ダイヤフラム等の材料や、フィッティングの材料としては、製造システム1と同様に、適宜の材料を用いることができる。
【0161】
第1マイクロリアクタ106や、第2マイクロリアクタ303としては、互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ200(
図2参照)を用いることができる。互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ200は、第1マイクロリアクタ106のみに用いてもよいし、第2マイクロリアクタ303のみに用いてもよいが、第1マイクロリアクタ106および第2マイクロリアクタ303の両方に用いることが好ましい。
【0162】
次に、フラバン類オリゴマの製造システム3を用いたフラバン類オリゴマの製造方法について説明する。
【0163】
フラバン類オリゴマの製造システム3では、第1マイクロリアクタ106で原料液と触媒液とを混合して、触媒液に含まれるルイス酸による、原料液に含まれる一部のフラバン誘導体の活性化を開始する。1段目の混合によって、ルイス酸で活性化された一部のフラバン誘導体と、求核体として作用する残部のフラバン誘導体との反応が開始した第1生成流体が生成される。そして、第2マイクロリアクタ303で第1生成流体と反応停止液とを混合して、ルイス酸と塩基との中和反応を開始する。2段目の混合によって、フラバン誘導体同士の反応停止を開始した第2生成流体が生成される。活性化されたフラバン誘導体と、求核体である活性化されていないフラバン誘導体とのSN1型の反応によって、フラバン誘導体同士を位置選択的に縮合させることができる。その後、ルイス酸と塩基との反応によって、意図しない重合反応を強制的に停止させることができる。
【0164】
製造システム3を用いたフラバン類オリゴマの製造時において、原料液用容器101には、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む原料液を用意する。触媒液用容器102には、ルイス酸を含む触媒液を用意する。反応停止液用容器401には、塩基を含む反応停止液を用意する。回収容器103には、塩基を含む反応停止液を用意してもよいし、用意しなくてもよい。
【0165】
はじめに、原料液用容器101に用意されたフラバン誘導体を含む原料液を、第1ポンプ104によって、原料液用容器101から第1マイクロリアクタ106の一方の入口に送る。また、触媒液用容器102に用意されたルイス酸を含む触媒液を、第2ポンプ105によって、触媒液用容器102から第1マイクロリアクタ106の他方の入口に送る。
【0166】
次いで、フラバン誘導体を含む原料液と、ルイス酸を含む触媒液とを、第1マイクロリアクタ106で混合する。混合によって、触媒液に含まれるルイス酸による、原料液に含まれる一部のフラバン誘導体の活性化を開始する。そして、活性化された一部のフラバン誘導体と、求核体として作用する残部のフラバン誘導体との反応が開始される。フラバン誘導体同士の反応は、第1マイクロリアクタ106で生成された第1生成流体が、下流に向けてその後のチューブ107内を流れる間にさらに進行する。第1生成流体は、第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303の一方の入口に送られる。
【0167】
製造システム3の第1マイクロリアクタ106では、出発物質であるフラバン誘導体と、ルイス酸とを、フラバン誘導体:ルイス酸=1:0.5に近い反応当量比で反応させる。そのため、このような反応当量比となるように、第1マイクロリアクタ106に導入する原料液と触媒液との流量比や、原料液用容器101に用意する原料液の濃度や、触媒液用容器102に用意する触媒液の濃度を調整する。フラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、流量比のみで調整してもよいし、濃度のみで調整してもよいし、流量比と濃度の両方で調整してもよい。
【0168】
続いて、反応停止液用容器401に用意された塩基を含む反応停止液を、第3ポンプ302によって、反応停止液用容器401から第2マイクロリアクタ303の他方の入口に送る。
【0169】
次いで、重合反応中の第1生成流体と、塩基を含む反応停止液とを、第2マイクロリアクタ303で混合する。混合によって、ルイス酸と塩基との中和反応が開始される。中和反応は、第2マイクロリアクタ303で生成された第2生成流体が、下流に向けてその後のチューブ107内を流れる間にさらに進行する。中和によって、活性化されていないフラバン誘導体とルイス酸との反応や、重合反応で生成されたフラバン誘導体のオリゴマとルイス酸との反応が停止する。
【0170】
製造システム3の第2マイクロリアクタ303では、第1マイクロリアクタ106、および、その後のチューブ107内で生成された第1生成流体中のルイス酸と、反応停止液用容器401に用意された塩基とを、1当量のルイス酸に対して、塩基が1当量以上となるように反応させる。そのため、このような反応当量比となるように、第2マイクロリアクタ303に導入する第1生成流体と反応停止液との流量比や、反応停止液用容器401に用意する反応停止液の濃度を調整する。ルイス酸と塩基との反応当量比は、流量比のみで調整してもよいし、濃度のみで調整してもよいし、流量比と濃度の両方で調整してもよい。
【0171】
続いて、第2マイクロリアクタ303、および、その後のチューブ107から排出された第2生成流体を、回収容器103に回収する。第1マイクロリアクタ106の微小流路内で重合反応を開始し、その後のチューブ107を経由し、第2マイクロリアクタ303の微小流路内で重合反応停止を開始し、その後のチューブ107を経由させると、所望の重合度でフラバン誘導体同士が結合したオリゴマが得られる。
【0172】
生成されたフラバン誘導体のオリゴマは、必要に応じて、分離精製した後に、保護基を脱保護することができる。フラバン誘導体のオリゴマは、脱保護前または脱保護後に、新規の置換基を導入する工程や、糖鎖等の修飾構造を導入する工程や、立体構造、骨格、官能基等を変換する他の反応工程等に供することができる。
【0173】
以上のフラバン類オリゴマの製造システム3、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、原料液に含まれるフラバン誘導体と、触媒液に含まれるルイス酸とが、第1マイクロリアクタ106の微小流路、および、その後のチューブ107内において、効率よく反応でき、第1生成流体が生成する。また、第1生成流体に含まれるルイス酸と、反応停止液に含まれる塩基とが、第2マイクロリアクタ303の微小流路、および、その後のチューブ107内において、効率よく反応できる。そのため、活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用するフラバン誘導体とを、所定の反応当量比で反応させた後、ルイス酸を中和して、フラバン誘導体の多量化反応を停止させることができる。マイクロリアクタを用いると、流体同士の流量比、反応物同士の反応比や、反応の開始時期、反応の停止時期を、精密に制御することが可能である。よって、所望の重合度でフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマを高収率で効率的に合成することができる。
【0174】
また、以上のフラバン類オリゴマの製造システム3、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、所望の重合度のオリゴマの収率が向上するため、合成後の混合物から所望の重合度のオリゴマを分離精製するコストや手間を削減できる。また、過剰量の触媒が不要になり、触媒のコストや精製コストが削減される。フラバン類オリゴマの製造システム3、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、前記の製造システム1と比較して、反応の停止を迅速且つ確実に行うことができる。
【0175】
製造システム3の第1マイクロリアクタ106、および、第1マイクロリアクタ106の下流側のチューブ107内で反応させるフラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、前記の製造システム1と同様の条件とすることができる。フラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、フラバン誘導体やルイス酸の種類にもよるが、フラバン誘導体:ルイス酸=1:0.5~1:1とすることが好ましい。
【0176】
製造システム3の第2マイクロリアクタ303、および、第2マイクロリアクタ303の下流側のチューブ107内で反応させるルイス酸と塩基との反応当量比は、フラバン誘導体の多量化反応が停止する限り、適宜の反応当量比とすることができる。塩基の反応当量比は、第1マイクロリアクタ106で反応させる1当量のルイス酸に対して、1当量以上が好ましく、1当量を超える過剰量がより好ましい。このような量であると、ルイス酸が適切に反応しなかった場合であっても、反応を安全に停止できる。塩基の反応当量比は、反応停止液を回収容器103に貯留しておく場合には、回収容器103内の反応停止液の量を考慮した量とすることが可能であり、分離精製を予定している場合等には、大過剰量としてもよい。
【0177】
製造システム3において、第1マイクロリアクタ106や、第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303までのチューブ107や、第2マイクロリアクタ303や、第2マイクロリアクタ303から回収容器103までのチューブ107は、温度調節装置108による調節範囲に含まれている。このような構成であると、第2マイクロリアクタ303の上流側と下流側とを、互いに同程度の温度に調節することができる。そのため、コストの削減や、制御の簡略化が可能である。
【0178】
しかし、第1マイクロリアクタ106、および、第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303までのチューブ107と、第2マイクロリアクタ303、および、第2マイクロリアクタ303から回収容器103までのチューブ107とは、互いに異なる温度調節装置で調節することもできる。より厳密に、第2マイクロリアクタ303の上流側と下流側とを、互いに異なる温度に調節することも可能である。なお、確実に重合反応を停止させるために、回収容器103には、過剰量の塩基を含む反応停止液を用意することが可能であるとともに、回収容器103や回収容器103内のチューブ107の温度を調節する温度調節装置109を、これらの区間よりも高温に調節することができる。
【0179】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム、および、フラバン類オリゴマの製造方法について、図を参照しながら説明する。
【0180】
図5は、第4実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムの模式図である。
図5に示すように、第4実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム4は、原料液用容器(第1容器)101と、触媒液用容器(第2容器)102と、回収容器103と、原料液用容器(第3容器)301と、反応停止液用容器(第4容器)401と、第1ポンプ104と、第2ポンプ105と、第3ポンプ302と、第4ポンプ402と、第1マイクロリアクタ106と、第2マイクロリアクタ303と、第3マイクロリアクタ403と、チューブ107と、温度調節装置108と、温度調節装置109と、チューブ107と各構成要素を接続する不図示のフィッティング等を備えている。
【0181】
製造システム4が、前記の製造システム1と異なる点は、互いに直列に接続された複数段のマイクロリアクタ106,303,403を備えており、フラバン類オリゴマの合成反応を段階的に行うと共に、フラバン類オリゴマの合成反応を、マイクロリアクタにおける塩基の混合によって停止させる点である。
【0182】
製造システム4において、第1マイクロリアクタ106の後段には、第2マイクロリアクタ303が接続されている。第2マイクロリアクタ303の後段には、第3マイクロリアクタ403が接続されている。第2マイクロリアクタ303には、原料液用容器301や第3ポンプ302が接続されている。第3マイクロリアクタ403には、反応停止液用容器401や第4ポンプ402が接続されている。
【0183】
温度調節装置108および温度調節装置109は、図中に破線で示すように、システム内の所定の領域を、所定の温度に調節するように設けられる。第1マイクロリアクタ106や、第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303までのチューブ107や、第2マイクロリアクタ303や、第2マイクロリアクタ303から第3マイクロリアクタ403までのチューブ107や、第3マイクロリアクタ403や、第3マイクロリアクタ403から回収容器103までのチューブ107は、温度調節装置108による調節範囲に含まれる。回収容器103や、回収容器103内のチューブ107は、温度調節装置109による調節範囲に含まれる。
【0184】
第1マイクロリアクタ106、第2マイクロリアクタ303および第3マイクロリアクタ403は、フロー型の反応器であり、個々の流体が外部から導入される二つの入口と、導入された流体同士を合流させる微小流路と、合流によって生成された生成流体を外部に流出させる出口と、を有している。これらのマイクロリアクタ106,303,403は、一方の入口から導入される流体と、他方の入口から導入される流体とを、微小流路において混合する。流体同士の混合によって、所定の反応を開始した生成流体が生成される。
【0185】
製造システム4において、第1マイクロリアクタ106の一方の入口には、製造システム1と同様に、原料液用容器101と、第1ポンプ104とが、チューブ107を介して接続される。第1マイクロリアクタ106の他方の入口には、製造システム1と同様に、触媒液用容器102と、第2ポンプ105とが、チューブ107を介して接続される。
【0186】
第1マイクロリアクタ106の出口には、第2マイクロリアクタ303の一方の入口がチューブ107を介して接続される。第2マイクロリアクタ303には、第1マイクロリアクタ106、および、その後のチューブ107内で生成された第1生成流体が送られる。
【0187】
第2マイクロリアクタ303の他方の入口には、原料液用容器301と、第3ポンプ302とが、チューブ107を介して接続される。原料液用容器301は、第3ポンプ302の吸入側に接続される。第3ポンプ302の吐出側は、第2マイクロリアクタ303の他方の入口に接続される。原料液用容器301には、出発物質であるフラバン誘導体を含む原料液が用意される。第3ポンプ302は、原料液を原料液用容器301から第2マイクロリアクタ303の他方の入口に送る。
【0188】
第2マイクロリアクタ303の出口には、第3マイクロリアクタ403の一方の入口がチューブ107を介して接続される。第3マイクロリアクタ403には、第2マイクロリアクタ303、および、その後のチューブ107内で生成された第2生成流体が送られる。
【0189】
第3マイクロリアクタ403の他方の入口には、反応停止液用容器401と、第4ポンプ402とが、チューブ107を介して接続される。反応停止液用容器401は、第4ポンプ402の吸入側に接続される。第4ポンプ402の吐出側は、第3マイクロリアクタ403の他方の入口に接続される。反応停止液用容器401には、塩基を含む反応停止液が用意される。第4ポンプ402は、反応停止液を反応停止液用容器401から第3マイクロリアクタ403の他方の入口に送る。
【0190】
第3マイクロリアクタ403の出口には、回収容器103がチューブ107を介して接続される。回収容器103は、第3マイクロリアクタ403、および、その後のチューブ107内で生成された第3生成流体を回収するための容器である。回収容器103には、第3生成流体に含まれるルイス酸を中和するために、塩基を含む反応停止液を貯留しておいてもよいし、貯留しておかなくてもよい。
【0191】
第1ポンプ104や、第2ポンプ105としては、製造システム1と同様に、適宜のポンプを用いることができる。第3ポンプ302や、第4ポンプ402としては、第1ポンプ104や第2ポンプ105と同様に、適宜のポンプを用いることができる。なお、第1ポンプ104、第2ポンプ105、第3ポンプ302もしくは第4ポンプ402としてシリンジポンプを用いた場合は、原料液用容器101、触媒液用容器102、原料液用容器301もしくは反応停止液用容器401の機能的な代替として、原料液、触媒液、原料液もしくは反応停止液が用意されたシリンジを用いることができる。
【0192】
第1マイクロリアクタ106の材料や、第2マイクロリアクタ303の材料や、第3マイクロリアクタ403の材料や、原料液用容器101、触媒液用容器102、回収容器103、原料液用容器301、反応停止液用容器401の材料や、チューブ107の材料や、ポンプの接液部を構成するチューブ、シリンジ、ダイヤフラム等の材料や、フィッティングの材料としては、製造システム1と同様に、適宜の材料を用いることができる。
【0193】
第1マイクロリアクタ106や、第2マイクロリアクタ303や、第3マイクロリアクタ403としては、互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ200(
図2参照)を用いることができる。互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ200は、第1マイクロリアクタ106、第2マイクロリアクタ303および第3マイクロリアクタ403のうち、少なくとも一つに用いてもよいし、そのうちの二つに用いてもよいが、全部に用いることが好ましい。
【0194】
次に、フラバン類オリゴマの製造システム4を用いたフラバン類オリゴマの製造方法について説明する。
【0195】
フラバン類オリゴマの製造システム4では、第1マイクロリアクタ106で原料液と触媒液とを混合して、触媒液に含まれるルイス酸による、原料液に含まれるフラバン誘導体の活性化を開始する。1段目の混合によって、ルイス酸で活性化されたフラバン誘導体を含む第1生成流体が生成される。そして、第2マイクロリアクタ303で第1生成流体と原料液とを混合して、ルイス酸で活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用する活性化されていないフラバン誘導体との反応を開始する。2段目の混合によって、フラバン誘導体同士の反応が開始した第2生成流体が生成される。そして、第3マイクロリアクタ403で第2生成流体と反応停止液とを混合して、ルイス酸と塩基との中和反応を開始する。3段目の混合によって、フラバン誘導体同士の反応停止を開始した第2生成流体が生成される。活性化されたフラバン誘導体と、求核体である活性化されていないフラバン誘導体とのSN1型の反応によって、フラバン誘導体同士を位置選択的に縮合させることができる。その後、ルイス酸と塩基との反応によって、意図しない重合反応を強制的に停止させることができる。
【0196】
製造システム4を用いたフラバン類オリゴマの製造時において、原料液用容器101には、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む原料液を用意する。触媒液用容器102には、ルイス酸を含む触媒液を用意する。原料液用容器301には、フラバン骨格を有するフラバン誘導体を含む原料液を用意する。反応停止液用容器401には、塩基を含む反応停止液を用意する。回収容器103には、塩基を含む反応停止液を用意してもよいし、用意しなくてもよい。
【0197】
はじめに、原料液用容器101に用意されたフラバン誘導体を含む原料液を、第1ポンプ104によって、原料液用容器101から第1マイクロリアクタ106の一方の入口に送る。また、触媒液用容器102に用意されたルイス酸を含む触媒液を、第2ポンプ105によって、触媒液用容器102から第1マイクロリアクタ106の他方の入口に送る。
【0198】
次いで、フラバン誘導体を含む原料液と、ルイス酸を含む触媒液とを、第1マイクロリアクタ106で混合する。混合によって、触媒液に含まれるルイス酸による、原料液に含まれるフラバン誘導体の活性化を開始する。フラバン誘導体の活性化は、第1マイクロリアクタ106で生成された第1生成流体が、下流に向けてその後のチューブ107内を流れる間にさらに進行する。第1生成流体は、第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303の一方の入口に送られる。
【0199】
製造システム4の第1マイクロリアクタ106では、出発物質であるフラバン誘導体と、ルイス酸とを、フラバン誘導体:ルイス酸=1:1に近い反応当量比で反応させる。そのため、このような反応当量比となるように、第1マイクロリアクタ106に導入する原料液と触媒液との流量比や、原料液用容器101に用意する原料液の濃度や、触媒液用容器102に用意する触媒液の濃度を調整する。フラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、流量比のみで調整してもよいし、濃度のみで調整してもよいし、流量比と濃度の両方で調整してもよい。
【0200】
続いて、原料液用容器301に用意されたフラバン誘導体を含む原料液を、第3ポンプ302によって、原料液用容器301から第2マイクロリアクタ303の他方の入口に送る。
【0201】
次いで、活性化されたフラバン誘導体を含む第1生成流体と、求核体として作用する活性化されていないフラバン誘導体を含む原料液とを、第2マイクロリアクタ303で混合する。混合によって、活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用する活性化されていないフラバン誘導体との反応が開始される。フラバン誘導体同士の反応は、第2マイクロリアクタ303で生成された第2生成流体が、下流に向けてその後のチューブ107を流れる間にさらに進行する。第2生成流体は、第2マイクロリアクタ303から第3マイクロリアクタ403の一方の入口に送られる。
【0202】
製造システム4の第2マイクロリアクタ303では、第1マイクロリアクタ106、および、その後のチューブ107内で活性化されたフラバン誘導体と、原料液用容器301に用意された活性化されていないフラバン誘導体とを、活性化体:非活性化体=1:1に近い反応当量比で反応させる。そのため、このような反応当量比となるように、第2マイクロリアクタ303に導入する第1生成流体と原料液との流量比や、原料液用容器301に用意する原料液の濃度を調整する。活性化されたフラバン誘導体と活性化されていないフラバン誘導体との反応当量比は、流量比のみで調整してもよいし、濃度のみで調整してもよいし、流量比と濃度の両方で調整してもよい。
【0203】
続いて、反応停止液用容器401に用意された塩基を含む反応停止液を、第4ポンプ402によって、反応停止液用容器401から第3マイクロリアクタ403の他方の入口に送る。
【0204】
次いで、重合反応中の第2生成流体と、塩基を含む反応停止液とを、第3マイクロリアクタ403で混合する。混合によって、ルイス酸と塩基との中和反応が開始される。中和反応は、第3マイクロリアクタ403で生成された第3生成流体が、下流に向けてその後のチューブ107内を流れる間にさらに進行する。中和によって、活性化されていないフラバン誘導体とルイス酸との反応や、重合反応で生成されたフラバン誘導体のオリゴマとルイス酸との反応が停止する。
【0205】
製造システム4の第3マイクロリアクタ403では、第2マイクロリアクタ303、および、その後のチューブ107内で生成された第2生成流体中のルイス酸と、反応停止液用容器401に用意された塩基とを、1当量のルイス酸に対して、塩基が1当量以上となるように反応させる。そのため、このような反応当量比となるように、第3マイクロリアクタ403に導入する第2生成流体と反応停止液との流量比や、反応停止液用容器401に用意する反応停止液の濃度を調整する。ルイス酸と塩基との反応当量比は、流量比のみで調整してもよいし、濃度のみで調整してもよいし、流量比と濃度の両方で調整してもよい。
【0206】
続いて、第3マイクロリアクタ403、および、その後のチューブ107から排出された第3生成流体を、回収容器103に回収する。第2マイクロリアクタ303の微小流路内で重合反応を開始し、その後のチューブ107を経由し、第3マイクロリアクタ403の微小流路内で重合反応停止を開始し、その後のチューブ107を経由させると、所望の重合度でフラバン誘導体同士が結合したオリゴマが得られる。
【0207】
生成されたフラバン誘導体のオリゴマは、必要に応じて、分離精製した後に、保護基を脱保護することができる。フラバン誘導体のオリゴマは、脱保護前または脱保護後に、新規の置換基を導入する工程や、糖鎖等の修飾構造を導入する工程や、立体構造、骨格、官能基等を変換する他の反応工程等に供することができる。
【0208】
以上のフラバン類オリゴマの製造システム4、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、原料液に含まれるフラバン誘導体と、触媒液に含まれるルイス酸とが、第1マイクロリアクタ106の微小流路、および、その後のチューブ107内において、効率よく反応でき、第1生成流体が生成する。また、第1生成流体に含まれる活性化されたフラバン誘導体と、原料液に含まれるフラバン誘導体とが、第2マイクロリアクタ303の微小流路、および、その後のチューブ107内において、効率よく反応でき、第2生成流体が生成する。そして、第2生成流体に含まれるルイス酸と、反応停止液に含まれる塩基とが、第3マイクロリアクタ403、および、その後のチューブ107内において、効率よく反応できる。そのため、フラバン誘導体と、ルイス酸とを、所定の反応当量比で反応させ、生成した活性化されたフラバン誘導体と、求核体として作用するフラバン誘導体とを、所定の反応当量比で反応させた後、ルイス酸を中和して、フラバン誘導体の多量化反応を停止させることができる。マイクロリアクタを用いると、流体同士の流量比、反応物同士の反応比や、反応の開始時期、反応の停止時期を、精密に制御することが可能である。よって、所望の重合度でフラバン誘導体同士が結合したフラバン類オリゴマを高収率で効率的に合成することができる。
【0209】
また、以上のフラバン類オリゴマの製造システム4、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、所望の重合度のオリゴマの収率が向上するため、合成後の混合物から所望の重合度のオリゴマを分離精製するコストや手間を削減できる。また、過剰量の触媒が不要になり、触媒のコストや精製コストが削減される。フラバン類オリゴマの製造システム4、および、フラバン類オリゴマの製造方法によると、前記の製造システム1と比較して、反応条件の制御が容易になるとともに、反応の停止を迅速且つ確実に行うことができる。
【0210】
製造システム4の第1マイクロリアクタ106、および、第1マイクロリアクタ106の下流側のチューブ107内で反応させるフラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、前記の製造システム2と同様の条件とすることができる。フラバン誘導体とルイス酸との反応当量比は、フラバン誘導体やルイス酸の種類にもよるが、ルイス酸の使用量を節約する観点からは、フラバン誘導体:ルイス酸=1:1~1:2とすることが好ましい。
【0211】
製造システム4の第2マイクロリアクタ303、および、第2マイクロリアクタ303の下流側チューブ107内で反応させる活性化されたフラバン誘導体と求核体として作用するフラバン誘導体との反応当量比は、前記の製造システム2と同様の条件とすることができる。活性化されたフラバン誘導体と求核体として作用するフラバン誘導体との反応当量比は、フラバン誘導体やルイス酸の種類にもよるが、フラバン誘導体の使用量を節約する観点からは、活性化されたフラバン誘導体:求核体として作用するフラバン誘導体=1:1~1:2とすることが好ましい。
【0212】
製造システム4の第3マイクロリアクタ403、および、第3マイクロリアクタ403の下流側のチューブ107内で反応させるルイス酸と塩基との反応当量比は、前記の製造システム3と同様の条件とすることができる。塩基の反応当量比は、第1マイクロリアクタ106で反応させる1当量のルイス酸に対して、1当量以上が好ましく、1当量を超える過剰量がより好ましい。
【0213】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム、および、フラバン類オリゴマの製造方法について、図を参照しながら説明する。
【0214】
図6は、第5実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システムの模式図である。
図6に示すように、第5実施形態に係るフラバン類オリゴマの製造システム5は、前記の製造システム3と同様に、原料液用容器(第1容器)101と、触媒液用容器(第2容器)102と、回収容器103と、反応停止液用容器(第4容器)401と、第1ポンプ104と、第2ポンプ105と、第3ポンプ302と、第1マイクロリアクタ106と、第2マイクロリアクタ303と、チューブ107と、温度調節装置108と、温度調節装置109と、チューブ107と各構成要素を接続する不図示のフィッティング等を備えている。
【0215】
製造システム5が、前記の製造システム3と異なる点は、互いに直列に接続された複数段のマイクロリアクタ106,303を備えており、各段において複数のマイクロリアクタ106,303が並列化されている点である。
【0216】
製造システム5において、第1マイクロリアクタ106としては、3個のマイクロリアクタが並列化されている。第2マイクロリアクタ303としては、3個のマイクロリアクタが並列化されている。
【0217】
製造システム5において、並列化された各第1マイクロリアクタ106の一方の入口には、第1分岐ヘッダが接続される。第1分岐ヘッダには、製造システム3と同様に、原料液用容器101と、第1ポンプ104とが、チューブ107を介して接続される。並列化された各第1マイクロリアクタ106の他方の入口には、第2分岐ヘッダが接続される。第2分岐ヘッダには、製造システム3と同様に、触媒液用容器102と、第2ポンプ105とが、チューブ107を介して接続される。
【0218】
並列化された各第1マイクロリアクタ106の出口には、第1合流ヘッダが接続される。第1合流ヘッダには、第3分岐ヘッダがチューブ107を介して接続される。第3分岐ヘッダには、第1マイクロリアクタ106、および、その後のチューブ107内で生成された第1生成流体が第1合流ヘッダで合流して送られる。
【0219】
並列化された各第2マイクロリアクタ303の一方の入口には、第3分岐ヘッダが接続される。並列化された各第2マイクロリアクタ303の他方の入口には、第4分岐ヘッダが接続される。第4分岐ヘッダには、反応停止液用容器401と、第3ポンプ302とが、チューブ107を介して接続される。
【0220】
並列化された各第2マイクロリアクタ303の出口には、第2合流ヘッダが接続される。第2合流ヘッダには、回収容器103がチューブ107を介して接続される。回収容器103は、第2マイクロリアクタ303、および、その後のチューブ107内で生成された第2生成流体を回収するための容器である。回収容器103には、第2生成流体に含まれるルイス酸を中和するために、塩基を含む反応停止液を貯留しておいてもよいし、貯留しておかなくてもよい。
【0221】
フラバン類オリゴマの製造システム5では、並列化された各第1マイクロリアクタ106で原料液と触媒液との混合を開始し、第1生成流体が生成される。そして、並列化された各第2マイクロリアクタ303で第1生成流体と反応停止液との混合を開始し、第2生成流体が生成される。
【0222】
並列化された第1マイクロリアクタ106に導入する各流体の流量は、互いに同等の流量に制御することが好ましい。また、並列化された第2マイクロリアクタ303に導入する各流体の流量は、互いに同等の流量に制御することが好ましい。このような制御であると、並列化されたマイクロリアクタ同士に関して、反応時間を正確且つ安定的に管理することができる。
【0223】
並列化された第1マイクロリアクタ106における混合のタイミングは、互いに同時期になるように制御することが好ましい。また、並列化された第2マイクロリアクタ303における混合のタイミングは、互いに同時期になるように制御することが好ましい。このような制御であると、並列化されたマイクロリアクタ同士に関して、反応時間を適切に揃えることができる。
【0224】
以上のフラバン類オリゴマの製造システム5およびフラバン類オリゴマの製造方法によると、各段において複数のマイクロリアクタ106,303が並列化されているため、流体同士の混合にマイクロ反応場を利用しつつ、全体としての流体の処理量を増大させることができる。全体として大容量の流体を混合できるため、原料液、触媒液、反応停止液等の濃度によらず、所望の重合度であるフラバン誘導体のオリゴマを高収率で大量に合成することができる。
【0225】
なお、前記の製造システム5は、3個に並列化されたマイクロリアクタ106,303を備えているが、マイクロリアクタを並列化する個数は、2以上の適宜の数とすることができる。マイクロリアクタの並列化によるナンバリングアップによって、所定の重合度のオリゴマの収率を維持しつつ、全体としての生産量を簡単に増大させることができる。
【0226】
マイクロリアクタを並列化する個数は、各段について、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。マイクロリアクタを並列化する個数は、マイクロリアクタの種類や、所定の重合度のオリゴマの目標生産量等に応じて、適宜の個数に変更することができる。
【0227】
マイクロリアクタを並列化する個数が、各段について、互いに同一である場合は、前段のマイクロリアクタで生成された流体を、合流や分割をせずに、次段のマイクロリアクタに送ることもできる。マイクロリアクタを並列化する個数が、各段について、互いに同一である場合や、互いに異なっている場合は、前段のマイクロリアクタで生成された流体を、部分的に合流や分割をして、次段のマイクロリアクタに送ることもできる。合流時もしくは分割時に用いる合流ヘッダもしくは分岐ヘッダは、複数の合流ヘッダを組み合わせても、複数の分岐ヘッダを組み合わせてもよい。
【0228】
また、前記の製造システム5は、前記の製造システム3のマイクロリアクタ106,303を並列化させているが、前記の製造システム1のマイクロリアクタ106や、前記の製造システム2のマイクロリアクタ106,303や、前記の製造システム4のマイクロリアクタ106,303,403を並列化させてもよい。
【0229】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態が備える全ての構成を備えるものに限定されない。或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成の一部を他の形態に追加したり、或る実施形態の構成の一部を省略したりすることができる。
【0230】
例えば、前記のフラバン類オリゴマの製造システムは、4段以上のマイクロリアクタを直列に接続した構成としてもよい。前記の製造システム1~5のいずれかの構成を、重合させるフラバン誘導体の種類毎に、繰り返し直列に接続することもできる。前段のマイクロリアクタで生成された混合流体と、容器に用意された被混合流体と、を混合する第k段目(kは、2以上の整数)のマイクロリアクタを、第1マイクロリアクタよりも後段側に直列に接続し、最終段に回収容器を設けることができる。このような構成によると、フラバン誘導体同士が所望の重合度で結合した2m量体(mは、1以上の整数)を合成できる。
【0231】
また、前記のフラバン類オリゴマの製造システムは、段階的な合成反応を行う構成の場合(
図3等参照)、互いに異なる重合度のフラバン誘導体を各原料液用容器に用意して、これらを互いに重合させてもよい。例えば、全部が活性化されたフラバン誘導体のモノマと、活性化されていないフラバン誘導体のダイマとの組み合わせや、全部が活性化されたフラバン誘導体のダイマと、活性化されていないフラバン誘導体のモノマとの組み合わせ等を反応させることができる。このような構成によると、フラバン誘導体同士が所望の重合度で結合した2m+1量体(mは、1以上の整数)を合成できる。
【0232】
また、前記のフラバン類オリゴマの製造システムは、マイクロリアクタへの流体の到達を検知する流体検知センサを備えてもよい。流体検知センサを用いると、流体のチューブを通じたマイクロリアクタへの到達を検知できるため、流体同士をマイクロリアクタの合流点に対して、同時期に導入させることができる。このような制御を行うと、用意した流体同士を過不足なく混合できるため、用意した流体の全量を所定の反応当量比で反応させることができる。所望の反応当量比で反応しなかった反応分の廃棄を省略することも可能になる。
【実施例0233】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0234】
フラバン誘導体のオリゴマの製造を、前記の製造システム3(
図4参照)を用いて行った。また、比較対象として、バッチ法によるフラバン誘導体のオリゴマの製造を行った。
【0235】
<実施例1>
実施例1は、製造システム3(
図4参照)の構成で、マイクロリアクタを用いて行った。第1マイクロリアクタ106としては、互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ200(
図2参照)を用いた。マイクロリアクタ200は、石英ガラス製(日立プラントサービス社製)とした。マイクロリアクタ200の混合流路205の流路幅および流路深さは、0.2mmとした。
【0236】
第2マイクロリアクタ303としては、PEEK製T字リアクタ YMC-P-0021(ワイエムシィ社製)を用いた。
【0237】
第1ポンプ104、第2ポンプ105および第3ポンプ302としては、シリンジポンプ Model11 Single Syringe Pump 55-1199(Harvard Apparatus社製)と、シリンジ Model11 Single Syringe 70-2208(Harvard Apparatus社製)を用いた。
【0238】
チューブ107としては、外径1/16インチ、内径0.5mmのPTFE製チューブ(GLサイエンス社製)を用いた。第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303までのチューブ107の長さは、0.3mまたは0.9mとした。第2マイクロリアクタ303から回収容器103までのチューブ107の長さは、0.2mとした。
【0239】
温度調節装置108は、ドライアイスと水/メタノール混合溶媒を用いた混合バスを用いて、-70℃に調節した。温度調節装置109は、氷浴を用いて、0℃に調節した。
【0240】
出発物質であるフラバン誘導体のモノマとしては、下記一般式(5)で表される化合物を用いた。一般式(5)中、Bn*は、重水素で標識されたベンジル基を示す。
【0241】
【0242】
ルイス酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)を用いた。塩基としては、トリエチルアミン(Et3N)を用いた。溶媒としては、ジクロロメタンを用いた。
【0243】
原料液用容器101には、0.05Mのフラバン誘導体のモノマを含む原料液を用意した。触媒液用容器102には、0.05Mのルイス酸を含む触媒液を用意した。反応停止液用容器401には、0.3Mの塩基を含む反応停止液を用意した。
【0244】
フラバン誘導体のモノマを含む原料液と、ルイス酸を含む触媒液とを、第1マイクロリアクタ106で混合した後、フラバン誘導体同士が反応している第1生成流体と、塩基を含む反応停止液とを、第2マイクロリアクタ303で混合した。第1マイクロリアクタ106において、フラバン誘導体のモノマを含む原料液は高流量側流体入口207から、ルイス酸を含む触媒液は低流量側流体入口208から導入した。原料液の流量は、1mL/minとした。触媒液の流量は、1mL/minとした。反応停止液の流量は、1mL/minとした。従って、フラバン誘導体のモノマとルイス酸との当量比は、1:1となり、導入したルイス酸と塩基との当量比は1:6となる。
【0245】
なお、フラバン誘導体の反応時間は、チューブ107の長さによって調節した。第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303までのチューブ107の長さが0.3mである場合、反応時間が1.77sに相当する。第1マイクロリアクタ106から第2マイクロリアクタ303までのチューブ107の長さが0.9mである場合、反応時間が5.30sに相当する。
【0246】
回収容器103には、反応を完全に停止させるために、1mLのトリエチルアミン(Et3N)を2mLのジクロロメタンに溶解させた反応停止液を入れておいた。
【0247】
<比較例1>
比較例1は、バッチ法によって行った。容積5mLの二口フラスコに、フラバン誘導体のモノマを入れた。フラスコ内を減圧し、アルゴンガスでパージした後に、セプタムキャップで蓋をした。シリンジをセプタムに貫通させて、フラスコ内にジクロロメタンを加え、0.05Mのフラバン誘導体のモノマを含む原料液を0.4mL調製した。この二口フラスコを-70℃のドライアイスと水/メタノール混合溶媒を用いた混合バスに浸漬させた。
【0248】
そして、400~500rpmで攪拌しながら、0.05Mのルイス酸を含む触媒液をシリンジで内壁を伝わらせて0.4mL添加した。反応時間は、5sまたは5minとした。所定の反応時間の経過後に、塩基を含む反応停止液を0.3mL添加して反応を停止させた。
【0249】
出発物質であるフラバン誘導体のモノマとしては、一般式(5)で表される化合物を用いた。ルイス酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)を用いた。塩基としては、トリエチルアミン(Et3N)を用いた。溶媒としては、ジクロロメタンを用いた。フラバン誘導体のモノマとルイス酸との当量比は、1:1となる。
【0250】
<実験結果>
実施例1および比較例1において、フラバン誘導体のモノマの反応後には、フラバン誘導体のオリゴマを含む混合物が得られた。混合物は、フラバン誘導体のダイマや、トリマ以上の高次オリゴマや、未反応のモノマ等を含んでいた。フラバン誘導体のダイマは、下記一般式(6)で表される。一般式(6)中、Bn*は、重水素で標識されたベンジル基を示す。
【0251】
【0252】
表1は、合成反応の反応時間、フラバン誘導体のダイマの収率、フラバン誘導体のトリマの収率、フラバン誘導体のテトラマ以上の高次オリゴマの重量収率、未反応のフラバン誘導体のモノマの割合を示す。収率は、出発物質から生成される最大収量(理論収量)を100%とした実収量の割合である。
【0253】
【0254】
表1に示すように、マイクロリアクタを用いた場合、反応時間1.77sでは、ダイマの収率が43%であり、トリマは生成せず、テトラマ以上の高次オリゴマの重量収率が10wt%であり、未反応のモノマの割合は30%であった。反応時間5.30sでは、ダイマの収率が62%に向上し、トリマは生成せず、テトラマ以上の高次オリゴマの重量収率が5wt%に低減し、未反応のモノマの割合は19%に低減した。いずれの反応時間においても、トリマ以上の高次オリゴマの生成は抑制された。
【0255】
一方、バッチ法を用いた場合、反応時間5sでは、ダイマの収率が56%であり、トリマは生成せず、テトラマ以上の高次オリゴマの重量収率が4wt%であり、未反応のモノマの割合は5%であった。反応時間5minでは、ダイマの収率が20%であり、トリマの収率が10%であり、テトラマ以上の高次オリゴマの重量収率が29wt%であった。反応時間の経過に伴って、トリマや、テトラマ以上の高次オリゴマが急速に生成し、重合度の制御が困難になった。
【0256】
バッチ法を用いる場合、反応容器が小さいときは、反応時間を精密に制御できる可能性がある。しかし、生成量を増大させるためには、反応容器を大きくする必要がある。反応容器が大きくなると、均一な混合や反応時間の制御が困難になるため、重合反応にバラつきを生じる。反応時間が短いと、反応が進行せず、反応時間が長いと、ダイマ(所定の重合度のオリゴマ)の収率が低下することになる。そのため、反応容器を大きくして生成量を増大させると、同じ反応時間当たりのダイマ(所定の重合度のオリゴマ)の収率は低下するといえる。
【0257】
これに対し、マイクロリアクタを用いる場合、反応時間の精密な制御が可能であるため、ダイマ(所定の重合度のオリゴマ)の収率が向上するといえる。マイクロリアクタを用いる場合、並列化によるナンバリングアップが容易であるため、収率を維持しつつ、生成量を増大させることも可能になるといえる。