(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131028
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230913BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652H
H01L29/78 652J
H01L29/78 652N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035672
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大河
(57)【要約】
【課題】 オン抵抗を低減しながらスイッチング損失を抑制する技術を提供する。
【解決手段】 半導体装置は、素子領域及び周辺領域を有する半導体基板と、半導体基板の上面において第1方向に延びており、第2方向に間隔を空けて配列されている複数のトレンチと、を備えている。素子領域が、n型のソース領域と、p型のコンタクト領域と、p型のボディ領域と、n型のドリフト領域と、p型の底部領域と、p型の複数の接続領域を備えている。底部領域は、トレンチの底面から間隔を空けてトレンチの下部に配置されている。接続領域は、ボディ領域と底部領域とを接続しており、第1方向に延びており、第2方向に間隔を空けて配列されている。素子領域が、第2方向における素子領域の両端部に位置する外側部と、外側部の間に配置された中央部を有している。外側部における接続領域の第2方向の間隔が、中央部における接続領域の第2方向の間隔よりも広い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子領域(62)と前記素子領域の周囲に配置された周辺領域(64)を有する半導体基板(12)と、
前記半導体基板の上面(12a)に設けられており、それぞれが前記上面において第1方向に延びており、前記上面において前記第1方向に直交する第2方向に間隔を空けて配列されている、複数のトレンチ(22)と、
前記各トレンチの内面を覆っているゲート絶縁膜(24)と、
前記各トレンチ内に配置されており、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極(26)、
を備えており、
前記素子領域が、
前記半導体基板の上面に露出しており、前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しているn型のソース領域(30)と、
前記半導体基板の上面に露出しているp型のコンタクト領域(31)と、
前記ソース領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しており、前記コンタクト領域に接しているp型のボディ領域(32)と、
前記ボディ領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しており、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されているn型のドリフト領域(34)と、
前記トレンチの底面から間隔を空けて前記トレンチの下部に配置されており、周囲が前記ドリフト領域に囲まれているp型の底部領域(36)と、
それぞれが前記ボディ領域と前記底部領域とを接続しており、それぞれが前記第1方向に延びており、前記第2方向に間隔を空けて配列されているp型の複数の接続領域(38)と、
を備えており、
前記素子領域が、前記第2方向における前記素子領域の両端部に位置する外側部(62a)と、前記外側部の間に配置された中央部(62b)を有し、
前記外側部における前記接続領域の前記第2方向の間隔が、前記中央部における前記接続領域の前記第2方向の間隔よりも広い、
半導体装置(10、100、200、300)。
【請求項2】
前記外側部における前記接続領域の前記第2方向の間隔が、前記素子領域の前記端部に向かうにつれて広くなっている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記底部領域は、前記第2方向に延びており、前記第1方向に間隔を空けて配列されている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記外側部が、それぞれが前記ボディ領域と前記底部領域とを接続しており、前記第1方向に間隔を空けて配置されている、p型の複数の接続補助領域(39)をさらに有している、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記外側部における前記トレンチの前記第2方向の間隔が、前記中央部における前記トレンチの前記第2方向の間隔よりも狭い、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置に関する。
【0002】
特許文献1には、半導体基板と、半導体基板の上面に設けられた複数のトレンチと、トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜と、トレンチ内に配置されたゲート電極と、を備える半導体装置が開示されている。この半導体装置では、半導体基板が、n型のソース領域と、p型のコンタクト領域と、p型のボディ領域と、n型のドリフト領域と、p型の底部領域と、p型の複数の接続領域を有している。ソース領域は、半導体基板の上面に露出しており、ゲート絶縁膜に接している。コンタクト領域は、半導体基板の上面に露出している。ボディ領域は、ソース領域の下側でゲート絶縁膜に接しており、コンタクト領域に接している。ドリフト領域は、ボディ領域の下側でゲート絶縁膜に接している。底部領域は、トレンチの底面から間隔を空けてトレンチの下部に配置されている。各接続領域は、ボディ領域と底部領域とを接続しており、トレンチと平行に延びており、トレンチが延びる方向に対して直交する方向に間隔を空けて配置されている。
【0003】
特許文献1の半導体装置がオフするときには、底部領域からドリフト領域内に空乏層が伸びる。底部領域からドリフト領域内に伸びる空乏層によって、トレンチの下端における電界集中が抑制される。
【0004】
特許文献1の半導体装置には、p型のコンタクト領域及びボディ領域と、n型のドリフト領域とにより、寄生的にpnダイオード(以下、ボディダイオードという。)が形成されている。半導体装置の動作において、ボディダイオードへ順方向バイアスの電圧が印加されると、ボディダイオードがオンして、コンタクト領域からボディ領域を介してドリフト領域内にホールが流入する。その後、ボディダイオードに印加される電圧が逆方向バイアスに切り替わると、ボディダイオードがオフする過程で、ドリフト領域内に蓄積されていたホールが、ボディ領域を介してコンタクト領域に流れる。すなわち、リカバリ電流が流れる。
【0005】
特許文献1の半導体装置では、ドリフト領域の内部に、接続領域を介してボディ領域に接続されている底部領域が設けられている。このため、逆方向バイアス時には、ドリフト領域内に蓄積されたホールがドリフト領域から底部領域に流入し易く、大部分のホールが底部領域及び接続領域を介してボディ領域に流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の半導体装置では、半導体装置がオンするときに、接続領域からドリフト領域内に広がっていた空乏層が収縮する。空乏層が完全に収縮するまでの間は、当該空乏層により半導体装置の主電流が流れる経路が制限される。特許文献1の半導体装置では、接続領域が密に配置されているので、半導体装置がオンした直後においてオン抵抗が高い。
【0008】
オン抵抗を低減するために接続領域を疎に配置すると、ボディダイオードに印加される電圧が逆方向バイアスに切り替わったときに、ドリフト領域内に蓄積されたホールがボディ領域に向かって流れるときに各接続領域で電流密度が高くなる。このため、リカバリ電流が流れる際の電気抵抗が高くなり、半導体装置の温度が上昇する。その結果、スイッチング損失が増大する。
【0009】
本明細書では、オン抵抗を低減しながらスイッチング損失を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書が開示する半導体装置(10、100、200、300)は、素子領域(62)と前記素子領域の周囲に配置された周辺領域(64)を有する半導体基板(12)と、前記半導体基板の上面(12a)に設けられており、それぞれが前記上面において第1方向に延びており、前記上面において前記第1方向に直交する第2方向に間隔を空けて配列されている、複数のトレンチ(22)と、前記各トレンチの内面を覆っているゲート絶縁膜(24)と、前記各トレンチ内に配置されており、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極(26)、を備えている。前記素子領域が、前記半導体基板の上面に露出しており、前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しているn型のソース領域(30)と、前記半導体基板の上面に露出しているp型のコンタクト領域(31)と、前記ソース領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しており、前記コンタクト領域に接しているp型のボディ領域(32)と、前記ボディ領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しており、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されているn型のドリフト領域(34)と、前記トレンチの底面から間隔を空けて前記トレンチの下部に配置されており、周囲が前記ドリフト領域に囲まれているp型の底部領域(36)と、それぞれが前記ボディ領域と前記底部領域とを接続しており、それぞれが前記第1方向に延びており、前記第2方向に間隔を空けて配列されているp型の複数の接続領域(38)と、を備えている。前記素子領域が、前記第2方向における前記素子領域の両端部に位置する外側部(62a)と、前記外側部の間に配置された中央部(62b)を有している。前記外側部における前記接続領域の前記第2方向の間隔が、前記中央部における前記接続領域の前記第2方向の間隔よりも広い。
【0011】
この半導体装置では、素子領域が、トレンチ及び接続領域が配列されている方向において、素子領域の両端部に位置する外側部と、外側部の間に配置された中央部を有している。そして、外側部における接続領域の間隔が、中央部における接続領域の間隔よりも広い。外側部では接続領域の間隔が広いので、オン抵抗が低い。このため、素子領域全体としてのオン抵抗を低減することができる。また、外側部は、周辺領域に隣接している。周辺領域では、ボディダイオードに電圧が印加され難いので、順方向バイアス時にドリフト領域内にホールが蓄積し難い。すなわち、外側部には周辺領域からほとんどホールが流入しないので、外側部では、順方向バイアス時にドリフト領域内に蓄積されるホールの密度が低い。したがって、外側部ではリカバリ電流が小さく、外側部における接続領域の間隔を広くても半導体装置の温度が上昇し難い。このため、素子領域全体としてのスイッチング損失は小さい。以上のように、この半導体装置では、オン抵抗を低減しながら、スイッチング損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施例1の半導体装置の素子領域と周辺領域との境界を含む拡大平面図。
【
図5】実施例2の半導体装置の素子領域と周辺領域との境界を含む拡大平面図。
【
図6】実施例3の半導体装置の素子領域と周辺領域との境界を含む拡大平面図。
【
図8】
図6のVIII-VIII線における断面図。
【
図9】実施例4の半導体装置の素子領域と周辺領域との境界を含む拡大平面図。
【
図11】変形例の半導体装置の
図3に対応する断面図。
【
図12】他の変形例の半導体装置の
図3に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、前記外側部における前記接続領域の前記第2方向の間隔が、前記素子領域の前記端部に向かうにつれて広くなっていてもよい。
【0014】
ボディダイオードへの順方向バイアス時にドリフト領域内に蓄積するホールの量は、素子領域の端部に向かうにつれて少なくなる。上記の構成では、接続領域の間隔を素子領域の端部に向かうにつれて広くすることにより、オン抵抗の低減とスイッチング損失の低減とを、より好適に達成することができる。
【0015】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、前記各底部領域は、前記第2方向に延びており、前記第1方向に間隔を空けて配列されていてもよい。
【0016】
このような構成では、底部領域が延びる方向と接続領域が延びる方向とが交差する。このため、例えば、底部領域と接続領域とが平行に延びている構成と比較して、底部領域と接続領域とをより確実に繋ぐことができる。
【0017】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、前記外側部が、それぞれが前記ボディ領域と前記底部領域とを接続しており、前記第1方向に間隔を空けて配置されている、p型の複数の接続補助領域をさらに有していてもよい。
【0018】
このような構成では、外側部において、ボディダイオードへの逆方向バイアス時に、接続領域に加えて、底部領域から接続補助領域を介してボディ領域にホールが流れる。ホールが多くの経路に分岐して流れることができるため、スイッチング損失をより低減することができる。また、接続補助領域は、第1方向に間隔を空けて配置されているので、接続補助領域からドリフト領域内に広がる空乏層の範囲が狭く、半導体装置がオンするときに主電流の経路が制限され難い。このため、オン抵抗が増大することを抑制することができる。
【0019】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、前記外側部における前記トレンチの前記第2方向の間隔が、前記中央部における前記トレンチの前記第2方向の間隔よりも狭くてもよい。
【0020】
このような構成では、外側部におけるチャネル密度が高くなるため、チャネル抵抗(すなわち、オン抵抗)を低減することができる。
【0021】
(実施例1)
図1~4は、実施例1の半導体装置10を示している。半導体装置10は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
図1に示すように、半導体装置10は、半導体基板12を有している。半導体基板12は、素子領域62と、周辺領域64を有している。素子領域62の半導体基板12内には、MOSFETの構造が形成されている。周辺領域64は、素子領域62の周囲に配置されている。図示していないが、周辺領域64の半導体基板12内には、ガードリング等の周辺耐圧構造が形成されている。半導体基板12は、SiC(炭化シリコン)により構成されている。ただし、半導体基板12の材料は特に限定されず、例えば、Si(シリコン)やGaN(窒化ガリウム)等の他の半導体材料であってもよい。以下では、半導体基板12の上面12aに平行な一方向をx方向といい、半導体基板12に平行で方向に直交する方向をy方向といい、半導体基板12の厚み方向をz方向という。
【0022】
図1に示すように、素子領域62内には、半導体基板12の上面12aに複数のトレンチ22が設けられている。各トレンチ22は、y方向に沿って長く延びている。各トレンチ22は、互いに平行に延びている。各トレンチ22は、x方向に間隔を空けて配列されている。
図2は、
図1の素子領域62と周辺領域64との間のx方向の境界を含む拡大図である。なお、
図1及び
図2では、半導体基板12の上面12a上の構成(絶縁膜、電極等)の図示を省略している。
図2~4に示すように、各トレンチ22内には、ゲート絶縁膜24とゲート電極26が配置されている。ゲート絶縁膜24は、各トレンチ22の内面を覆っている。ゲート電極26は、各トレンチ22の内部に配置されている。各ゲート電極26は、ゲート絶縁膜24によって半導体基板12から絶縁されている。
【0023】
図3及び
図4に示すように、各ゲート電極26の上面は、層間絶縁膜28によって覆われている。また、周辺領域64では、半導体基板12の上面12aの略全域が絶縁膜65によって覆われている。半導体基板12の上面12aには、上部電極70が配置されている。上部電極70は、素子領域62内において、層間絶縁膜28が設けられていな部分で半導体基板12の上面12aに接している。上部電極70は、層間絶縁膜28によってゲート電極26から絶縁されている。半導体基板12の下面12bには、下部電極72が配置されている。下部電極72は、半導体基板12の下面12bの略全域に接している。
【0024】
素子領域62には、複数のソース領域30、複数のコンタクト領域31、ボディ領域32、ドリフト領域34、ドレイン領域35、複数の底部領域36、及び複数の接続領域38が設けられている。
【0025】
各ソース領域30は、n型領域である。各ソース領域30は、半導体基板12の上面12aに露出する位置に設けられている。各ソース領域30は、上部電極70にオーミック接触している。各ソース領域30は、トレンチ22の側面においてトレンチ22内のゲート絶縁膜24に接している。
【0026】
各コンタクト領域31は、p型領域である。各コンタクト領域31は、半導体基板12の上面12aに露出する位置に設けられている。各コンタクト領域31は、2つのソース領域30に挟まれた位置に配置されている。各コンタクト領域31は、上部電極70にオーミック接触している。
【0027】
ボディ領域32は、p型領域である。ボディ領域32は、コンタクト領域31よりも低いp型不純物濃度を有している。ボディ領域32は、ソース領域30及びコンタクト領域31に対して下側から接している。ボディ領域32は、ソース領域30の下側で各トレンチ22内のゲート絶縁膜24に接している。ボディ領域32は、素子領域62から周辺領域64内に跨って配置されている。
【0028】
ドリフト領域34は、n型領域である。ドリフト領域34は、ボディ領域32の下側に配置されている。ドリフト領域34は、ボディ領域32に対して下側から接している。ドリフト領域34は、ボディ領域32の下側で各トレンチ22内のゲート絶縁膜24に接している。ドリフト領域34は、ボディ領域32によってソース領域30から分離されている。ドリフト領域34は、素子領域62から周辺領域64内に跨って配置されている。
【0029】
ドレイン領域35は、n型領域である。ドレイン領域35は、ドリフト領域34の下側に配置されている。ドレイン領域35は、ドリフト領域34よりも高いn型不純物濃度を有している。ドレイン領域35は、ドリフト領域34に対して下側から接している。ドレイン領域35は、半導体基板12の下面12bに露出している。ドレイン領域35は、半導体基板12の下面12bにおいて下部電極72にオーミック接触している。ドレイン領域35は、素子領域62から周辺領域64内に跨って配置されている。
【0030】
各底部領域36は、p型領域である。各底部領域36は、トレンチ22に直交する方向(x方向)に延びている。
図2に示すように、各底部領域36は、y方向に間隔を空けて配列されている。各底部領域36は、トレンチ22の下面から間隔を空けてトレンチ22の下部に配置されている。各底部領域36は、その周囲がドリフト領域34に囲まれている。各底部領域36は、素子領域62から周辺領域64内まで延びている。
【0031】
各接続領域38は、p型領域である。
図2に示すように、各接続領域38は、各トレンチ22と平行に(すなわち、y方向に)延びている。各接続領域38は、各トレンチ22に直交する方向に間隔を空けて配列されている。各接続領域38は、上から見たときに、2つのトレンチ22の間の範囲に配置されている。
図3に示すように、各接続領域38は、ボディ領域32と底部領域36とを接続している。接続領域38は、周辺領域64内にも配置されている。
【0032】
上述したように、各底部領域36は、各接続領域38を介してボディ領域32に接続されている。このため、各底部領域36は、接続領域38、ボディ領域32、及びコンタクト領域31を介して、上部電極70に接続されている。したがって、各底部領域36の電位は、上部電極70の電位と略等しい。
【0033】
図1に示すように、素子領域62は、2つの外側部62aと中央部62bを有している。外側部62aは、x方向における素子領域62の両端部に位置している。
図2~4では、x方向における素子領域62の一方の端部のみを図示しているが、x方向における素子領域62の他方の端部にも外側部62aが位置している。中央部62bは、2つの外側部62aの間に配置されている。
【0034】
図3に示すように、中央部62bでは、接続領域38が複数のトレンチ22の間の範囲のそれぞれに設けられている。すなわち、中央部62bでは、接続領域38とトレンチ22が、x方向に沿って交互に配置されている。一方、外側部62aでは、2つのトレンチ22の間の範囲には、接続領域38が設けられていない。周辺領域64内には、中央部62bと同じ間隔で接続領域38が設けられている。したがって、外側部62aにおける接続領域38の間隔d1が、中央部62bにおける接続領域38の間隔d2よりも広くなっている。図示していないが、他方の外側部62aにおいても、同様に接続領域38の間隔が広くなっている。2つの隣接するトレンチ22の間隔は、外側部62a及び中央部62bにおいて略等しい。
【0035】
半導体装置10の使用時には、下部電極72に上部電極70よりも高い電位が印加される。ゲート電極26にゲート閾値以上の電圧を印加すると、ゲート絶縁膜24に接する範囲のボディ領域32にチャネルが形成され、半導体装置10がオンする。ゲート電極26に印加する電圧をゲート閾値未満まで低下させると、チャネルが消失し、半導体装置10がオフする。
【0036】
半導体装置10がオフしている状態では、下部電極72の電位が上部電極70の電位よりも遥かに高い。この状態では、ドリフト領域34は、下部電極72に近い電位を有する。また、上述したように、底部領域36は、上部電極70と略等しい電位を有する。このため、ドリフト領域34と底部領域36の界面のpn接合に高い逆電圧が印加される。したがって、各底部領域36からドリフト領域34内に、空乏層が広範囲に広がる。これにより、トレンチ22の下端近傍での電界集中が抑制され、半導体装置10の耐圧が確保される。また、接続領域38とドリフト領域34の界面のpn接合にも逆電圧が印加される。このため、接続領域38からも、ドリフト領域34内に空乏層が広がる。
【0037】
半導体装置10がオンするときには、上部電極70からコンタクト領域31、ボディ領域32、及び接続領域38を介して、各底部領域36にホールが供給される。これにより、接続領域38及び底部領域36からドリフト領域34内に広がっていた空乏層が収縮する。ホールが接続領域38及び底部領域36に供給されるまでの間は、接続領域38及び底部領域36からドリフト領域34内に空乏層が広がっている。このため、半導体装置10がオンした直後は、当該空乏層により主電流の経路が制限される。しかしながら、本実施例では、素子領域62の外側部62aにおいて、接続領域38の間隔d1が広くなっている。このため、外側部62aではドリフト領域34内に空乏化されない範囲が比較的広く存在し、半導体装置10がオンした直後も、ドリフト領域34の広範囲(特に、トレンチ22間に位置するドリフト領域34)を主電流の経路として利用することができる。このため、本実施例の半導体装置10では、素子領域62全体としてのオン抵抗を低減することができる。
【0038】
ここで、半導体基板12の内部には、p型のコンタクト領域31及びボディ領域32と、n型のドリフト領域34及びドレイン領域35によって、寄生的にpnダイオード(以下、ボディダイオードという。)が形成されている。半導体装置10の動作において、上部電極70に下部電極72よりも高い電位が印加される場合がある。上部電極70が下部電極72よりも高電位(順方向バイアス)になると、ボディダイオードがオンする。すなわち、上部電極70から、コンタクト領域31及びボディ領域32を介して、ドリフト領域34内にホールが流入する。
【0039】
その後、下部電極72が上部電極70よりも高電位(逆方向バイアス)に切り替わると、ボディダイオードがオフする過程で、ドリフト領域34内に蓄積されていたホールが、ボディ領域32及びコンタクト領域31を介して、上部電極70に流れる。すなわち、リカバリ電流が流れる。半導体装置10では、ドリフト領域34の内部に、接続領域38を介してボディ領域32に接続されている複数の底部領域36が設けられている。このため、逆方向バイアス時には、ドリフト領域34内に蓄積されたホールがドリフト領域34から底部領域36に流入し易く、大部分のホールが底部領域36及び接続領域38を介してボディ領域32に流れる。
【0040】
本実施例では、素子領域62の中央部62bにおける接続領域38の間隔d2が狭い。すなわち、中央部62bでは、接続領域38が密に配置されている。このため、ホールが底部領域36からボディ領域32に流れる経路が多く、ホールが素早く上部電極70に排出される。したがって、中央部62bで生じるスイッチング損失は小さく、中央部62bの温度上昇が抑制される。一方、素子領域62の外側部62aにおける接続領域38の間隔d1は広い。このため、ホールが底部領域36からボディ領域32に流れる経路が少ない。しかしながら、外側部62aは周辺領域64に隣接している。周辺領域64にはコンタクト領域31が存在しないので、順方向バイアス時に周辺領域64のドリフト領域34内にホールが蓄積し難い。このため、外側部62aでは、中央部62bと比較して、順方向バイアス時にドリフト領域34内に蓄積されるホールの密度が低い。したがって、外側部62aにおけるリカバリ電流は小さく、外側部62aにおける接続領域38の間隔d1が広くても、各接続領域38に流れるリカバリ電流の密度はそれほど高くならない。このため、外側部62aで生じるスイッチング損失は小さく、外側部62aの温度上昇が抑制される。このように、本実施例では、リカバリ電流が流れるときに素子領域62全体における温度上昇が抑制され、スイッチング損失が抑制される。
【0041】
なお、上述したように、半導体装置10がオフすると、ボディ領域32、接続領域38、及び底部領域36からドリフト領域34に空乏層が広がる。これにより、ドリフト領域34の略全域が空乏化される。半導体素子10がオフしている状態で下部電極72に高電圧が印加されると、ドリフト領域34から底部領域36、接続領域38、ボディ領域32及びコンタクト領域31を介して上部電極70へアバランシェ電流が流れる。中央部62bでは、接続領域38の間隔が狭いので、各接続領域38に流れるアバランシェ電流の密度が低くなる。これによって、中央部62bの温度上昇が抑制される。また、外側部62aでは、接続領域38の間隔が広いので、各接続領域38に流れるアバランシェ電流の密度が高くなる。しかしながら、外側部62aは外周部64に隣接しているので、外周部62aは高い放熱性を有する。したがって、外側部62aの温度上昇が抑制される。このように、アバランシェ電流が流れるときに、中央部62bと外側部62aのそれぞれの温度上昇が抑制される。このように、本実施例では、アバランシェ電流が流れるときに素子領域62全体における温度上昇が抑制される。したがって、半導体装置10は高いアバランシェ耐量を有する。
【0042】
また、半導体装置10の動作時には、半導体基板12が発熱するが、素子領域62の外側部62aは、中央部62bと比較して熱が逃げ易い。また、外側部62aは、主電流が流れない周辺領域64に隣接している。このため、外側部62aは中央部62bと比較して昇温し難く、外側部62aの温度は、中央部62bの温度よりも低い。したがって、外側部62aにおいて仮に温度が上昇しても、その影響は小さい。以上のように、この半導体装置10では、オン抵抗を低減しながら、スイッチング損失の増大やアバランシェ耐量の低下を抑制することができる。
【0043】
また、本実施例では、底部領域36が延びる方向(x方向)と接続領域38が延びる方向(y方向)とが交差するため、例えば、底部領域36と接続領域38とが平行に延びている構成と比較して、底部領域36と接続領域38とをより確実に繋ぐことができる。
【0044】
(実施例2)
実施例2の半導体装置100では、実施例1と比較して、接続領域38の構成が異なっている。実施例2では、外側部62aにおける接続領域38の間隔が、素子領域62の端部に向かうにつれて広くなっている。
図5に示すように、本実施例では、外側部62aに9つのトレンチ22が配置されている。また、外側部62aに4つの接続領域38が配置されている。実施例2では、実施例1よりもx方向における外側部62aの幅が広い。以下では、便宜的に、最も外側に配置されている(すなわち、最も周辺領域64に近接している)接続領域38から中央部62b側に向かって順に、接続領域38a、38b、38c、38dと称して説明する。
図5に示すように、接続領域38aと接続領域38bの間隔d3は、接続領域38bと接続領域38cの間隔d4よりも広い。間隔d4は、接続領域38cと接続領域38dの間隔d5よりも広い。また、間隔d3、d4、d5は、中央部62bにおける接続領域38の間隔d6よりも広い。
【0045】
接続領域38aと接続領域38bの間には4つのトレンチ22が配置されており、接続領域38bと接続領域38cの間には、3つのトレンチ22が配置されており、接続領域38cと接続領域38dの間には、2つのトレンチ22が配置されている。2つの隣接するトレンチ22の間隔は、外側部62a及び中央部62bにおいて略等しい。
【0046】
ボディダイオードへ順方向バイアスの電圧を印加したときにドリフト領域34内に蓄積するホールの量は、素子領域62の端部に向かうにつれて少なくなる。実施例2の半導体装置100では、外側部62aにおいて、中央部62bから周辺領域64に向かって、段階的に接続領域38の間隔が広くなっている。実施例2では、実施例1よりも接続領域38が疎に配置されているため、オン抵抗をより低減することができる。また、ドリフト領域34内に蓄積するホールの量の分布に応じて接続領域38の間隔d3~d5が調節されているため、スイッチング損失を効率良く低減することができる。
【0047】
(実施例3)
実施例3の半導体装置200では、実施例1と比較して、外側部62aにp型の複数の接続補助領域39がさらに設けられている点が異なっている。
図6及び
図7に示すように、各接続補助領域39は、外側部62aにおいて、2つのトレンチ22の間の範囲に配置されている。
図6に示すように、接続補助領域39は、y方向に間隔を空けて配置されている。
図7に示すように、各接続補助領域39は、ボディ領域32と底部領域36とを接続している。
図8に示すように、接続補助領域39は、底部領域36が設けられていない断面には配置されていない。
【0048】
実施例3では、外側部62aにおいて、ボディダイオードへ逆方向バイアスの電圧が印加されたときに、接続領域38に加えて、底部領域36から接続補助領域39を介してボディ領域32にホールが流れる。実施例3では、実施例1よりもホールが多くの経路に分岐して流れることができるため、スイッチング損失をより低減することができる。また、接続補助領域39は、y方向に間隔を空けて配置されている。具体的には、
図8及び
図9に示す通り、接続補助領域39は、底部領域36の直上の範囲のみに配置されている。このため、半導体装置200がオフしている状態では、接続補助領域39からドリフト領域34に伸びる空乏層は、ドリフト領域34内の広範囲には広がらない。したがって、接続補助領域39が存在しても、半導体装置200がオンするときに主電流の経路が制限され難い。また、接続補助領域39は、半導体装置200がオンしたときに、主電流の経路として機能しない底部領域36の直上の範囲のみに配置されている。したがって、接続補助領域39が存在しても、オン抵抗はほとんど増大しない。以上のように、実施例3の半導体装置200では、オン抵抗の増大を抑制しつつ、スイッチング損失をより低減することができる。
【0049】
(実施例4)
実施例4の半導体装置300では、実施例1と比較して、外側部62aにおけるトレンチ22の間隔が異なっている。
図9に示すように、実施例4では、外側部62aにおいて、2つの接続領域38の間の範囲に3つのトレンチ22が配置されている。外側部62aにおけるトレンチ22の間隔D1が、中央部62bにおけるトレンチ22の間隔D2よりも狭い。
図10に示すように、外側部62aにおける2つの隣接するトレンチ22の間の半導体領域には、ソース領域30、コンタクト領域31、ボディ領域32、及びドリフト領域34がそれぞれ設けられている。
【0050】
実施例4では、外側部62aにおけるトレンチ22の間隔D1が狭い(すなわち、トレンチ22が密に配置されている)ので、実施例1よりも外側部62aのチャネル密度が高い。したがって、実施例4では、チャネル抵抗(すなわち、オン抵抗)をより低減することができる。なお、本実施例においても、外側部62aの接続領域38の間隔が、中央部62bの接続領域38の間隔より広いため、外側部62aでは主電流の経路が制限され難い。このため、外側部62aにおいてトレンチ22の間隔D1を狭くしても、接続領域38の存在に起因するオン抵抗はほとんど増大しない。
【0051】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。以下に、上述した実施例の変形例を説明する。
【0052】
(変形例)
上述した各実施例では、接続領域38が、トレンチ22の間の範囲に配置されていた。すなわち、接続領域38が、トレンチ22から間隔を空けて配置されていた。しかしながら、例えば、
図11に示すように、接続領域38がトレンチ22の側面に接する位置に配置されてもよい。接続領域38は、ボディ領域32の下側でトレンチ22内のゲート絶縁膜24に接してもよい。接続領域38は、トレンチ22の側面に沿ってy方向に延びていてもよい。また、本変形例では、コンタクト領域31がトレンチ22の側面に接する位置に配置されてもよい。コンタクト領域31は、トレンチ22の側面においてトレンチ22内のゲート絶縁膜24に接してもよい。
【0053】
また、上述した実施例では、底部領域36がトレンチ22に直交する方向に延びていたが、
図12に示すように、底部領域36は、トレンチ22に対して平行(y方向)に延びていてもよい。底部領域36は、トレンチ22の底面から間隔を空けてトレンチの底面に沿って延びてもよい。底部領域36は、トレンチ22に直交する方向(x方向)に間隔を空けて配置されてもよい。
【0054】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0055】
10、100、200、300:半導体装置
12:半導体基板
12a:上面
12b:下面
22:トレンチ
24:ゲート絶縁膜
26:ゲート電極
30:ソース領域
31:コンタクト領域
32:ボディ領域
34:ドリフト領域
35:ドレイン領域
36:底部領域
38:接続領域
39:接続補助領域
62:素子領域
62a:外側部
62b:中央部
64:周辺領域