(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131038
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】船舶、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B63H 25/46 20060101AFI20230913BHJP
B63H 11/11 20060101ALI20230913BHJP
B63H 25/42 20060101ALI20230913BHJP
B63B 79/40 20200101ALI20230913BHJP
【FI】
B63H25/46
B63H11/11
B63H25/42 Z
B63B79/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035690
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆史
(72)【発明者】
【氏名】徳重 潤
(72)【発明者】
【氏名】津田 悠登
(72)【発明者】
【氏名】秋田 まり乃
(57)【要約】
【課題】船舶を係留したり操船したりする必要なく、船尾または船首が船舶押し当て対象に押し当てられた状態に船舶を維持することができる船舶、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】船舶制御装置は、船舶押し当てモードになる前に、操作部が受け付けた入力操作に応じて、船尾または船首を船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、船舶を船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行し、船舶押し当てモードになった後に、操作部が入力操作を受け付ける必要なく、船尾または船首を船舶押し当て対象に押し当てた状態で、船尾または船首を船舶押し当て対象に押し当てる向きの船舶の推力を発生し続ける制御を実行すると共に、船舶の実船首方位を船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、
前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部と、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有する船舶制御装置とを備え、
前記船舶制御装置は、前記船舶の船尾を船舶押し当て対象に押し当てる船舶押し当てモードを有し、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、
前記船舶制御装置は、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船尾を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行し、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記船舶制御装置は、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、
前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の後進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、
前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する、
船舶。
【請求項2】
前記船舶制御装置は、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行する時の前記船舶の後進推力の値を、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後に、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の後進推力を発生し続ける制御を実行する時の前記船舶の後進推力の値として用いる、
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記船舶制御装置は、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、予め設定された値の前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させる、
請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記船舶制御装置は、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の後進推力の値を調整する制御を実行する、
請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記船舶の推力を発生するジェット推進装置を備え、
前記ジェット推進装置は、
ジェット噴流を噴出するノズルと、
前記ノズルから噴出されたジェット噴流の向きを変更するバケットとを備え、
前記船舶制御装置は、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記バケット及び/または前記ノズルの位置を変更することによって前記船舶を船首トリム状態にするトリム制御を実行する、
請求項1に記載の船舶。
【請求項6】
前記船舶の前後方向の傾斜を検出する傾斜検出部を備え、
前記船舶制御装置は、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記傾斜検出部によって検出された前記船舶の前後方向の傾斜に基づいて、前記アクチュエータに発生させる前記船尾の浮力の大きさを制御する、
請求項5に記載の船舶。
【請求項7】
船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、
前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部と、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有する船舶制御装置とを備え、
前記船舶制御装置は、前記船舶の船首を船舶押し当て対象に押し当てる船舶押し当てモードを有し、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、
前記船舶制御装置は、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船首を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行し、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記船舶制御装置は、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、
前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の前進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、
前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する、
船舶。
【請求項8】
前記船舶制御装置は、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行する時の前記船舶の前進推力の値を、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後に、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の前進推力を発生し続ける制御を実行する時の前記船舶の前進推力の値として用いる、
請求項7に記載の船舶。
【請求項9】
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記船舶制御装置は、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、予め設定された値の前記船舶の前進推力を前記アクチュエータに発生させる、
請求項7に記載の船舶。
【請求項10】
前記船舶制御装置は、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の前進推力の値を調整する制御を実行する、
請求項7に記載の船舶。
【請求項11】
前記アクチュエータは、前記船舶の推力を発生するジェット推進装置を備え、
前記ジェット推進装置は、
ジェット噴流を噴出するノズルと、
前記ノズルから噴出されたジェット噴流の向きを変更するバケットとを備え、
前記船舶制御装置は、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記バケット及び/または前記ノズルの位置を変更することによって前記船舶を船尾トリム状態にするトリム制御を実行する、
請求項7に記載の船舶。
【請求項12】
前記船舶の前後方向の傾斜を検出する傾斜検出部を備え、
前記船舶制御装置は、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記傾斜検出部によって検出された前記船舶の前後方向の傾斜に基づいて、前記アクチュエータに発生させる船尾を押し下げる力の大きさを制御する、
請求項11に記載の船舶。
【請求項13】
前記船舶制御装置は、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶押し当てモード中の目標船首方位を変更する制御を実行する、
請求項1または請求項7に記載の船舶。
【請求項14】
前記船舶制御装置は、
前記船舶制御装置が前記船舶押し当てモードになった瞬間の前記実船首方位を、前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に設定する、
請求項1または請求項7に記載の船舶。
【請求項15】
前記船舶制御装置は、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶押し当てモード中の目標船首方位を設定する、
請求項1または請求項7に記載の船舶。
【請求項16】
前記船舶押し当て対象が桟橋である、
請求項1または請求項7に記載の船舶。
【請求項17】
前記船舶押し当て対象が他の船舶である、
請求項1または請求項7に記載の船舶。
【請求項18】
前記船舶が前記他の船舶に押し当てられている前記船舶制御装置の前記船舶押し当てモード中における前記船舶の船速がゼロより大きい、
請求項17に記載の船舶。
【請求項19】
船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、
前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置であって、
前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、
前記船舶制御装置は、前記船舶の船尾を船舶押し当て対象に押し当てる船舶押し当てモードを有し、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、
前記船舶制御装置は、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船尾を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行し、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記船舶制御装置は、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、
前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の後進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、
前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する、
船舶制御装置。
【請求項20】
船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、
前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置であって、
前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、
前記船舶制御装置は、前記船舶の船首を船舶押し当て対象に押し当てる船舶押し当てモードを有し、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、
前記船舶制御装置は、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船首を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行し、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、
前記船舶制御装置は、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、
前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の前進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、
前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する、
船舶制御装置。
【請求項21】
船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、
前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置の船舶制御方法であって、
前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、
前記船舶制御装置は、前記船舶の船尾を船舶押し当て対象に押し当てるモードである船舶押し当てモードを有し、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて、前記船舶制御装置が、前記船尾を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行する第1ステップと、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶制御装置が、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の後進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する第2ステップとを備える、
船舶制御方法。
【請求項22】
船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、
前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置の船舶制御方法であって、
前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、
前記船舶制御装置は、前記船舶の船首を船舶押し当て対象に押し当てるモードである船舶押し当てモードを有し、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて、前記船舶制御装置が、前記船首を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行する第1ステップと、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶制御装置が、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の前進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する第2ステップとを備える、
船舶制御方法。
【請求項23】
船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、
前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置であって、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、かつ、
前記船舶の船尾を船舶押し当て対象に押し当てるモードである船舶押し当てモードを有する前記船舶制御装置を構成するコンピュータに、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて、前記船尾を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行する第1ステップと、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の後進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する第2ステップとを実行させるためのプログラム。
【請求項24】
船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、
前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置であって、
前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、かつ、
前記船舶の船首を船舶押し当て対象に押し当てるモードである船舶押し当てモードを有する前記船舶制御装置を構成するコンピュータに、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて、前記船首を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行する第1ステップと、
前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の前進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する第2ステップとを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、船体が桟橋等の着岸場所に押し付けられた状態を維持するように、コントローラが船舶推進機を制御する技術について記載されている。詳細には、特許文献1には、左押付けモードにおいて、船体が左方向に桟橋等の着岸場所に押し付けられた状態が維持されるように、コントローラが船舶推進機を制御する技術、および、右押付けモードにおいて、船体が右方向に桟橋等の着岸場所に押し付けられた状態が維持されるように、コントローラが船舶推進機を制御する技術について記載されている。特許文献1に記載された技術では、上述した左押付けモードが、船舶の左横移動中に開始され、上述した右押付けモードが、船舶の右横移動中に開始される。
【0003】
ところで、船舶の中には、横移動することができない船舶(具体的には、複数の推力発生装置を備えておらず、1つの推力発生装置のみを備えている船舶)が存在する。横移動することができない船舶には、特許文献1に記載された技術を適用できないため、特許文献1に記載された技術によっては、横移動することができない船舶の船体の側面を桟橋等に押し付けることができない。
また、特許文献1に記載された技術のようなコントローラが船舶を桟橋等に押し付けた状態に維持する機能を有さない船舶においては、操船者が船舶を操船することによって船舶が桟橋等に押し付けられた状態に維持されるか、あるいは、船舶が桟橋等に係留されなければ、波、風、潮流などによって船舶が桟橋等から流されてしまう。そのため、そのような船舶においては、操船者が船舶を操船することによって船舶を桟橋等に押し付けた状態に維持することが行われず、かつ、船舶を桟橋等に係留することも行われない場合に、乗船者が乗り降りを速やかに行わなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した点に鑑み、本発明は、船舶を係留したり操船したりする必要なく、船尾または船首が船舶押し当て対象に押し当てられた状態に船舶を維持することができる船舶、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部と、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有する船舶制御装置とを備え、前記船舶制御装置は、前記船舶の船尾を船舶押し当て対象に押し当てる船舶押し当てモードを有し、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船尾を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行し、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記船舶制御装置は、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の後進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する、船舶である。
【0007】
本発明の一態様は、船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部と、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有する船舶制御装置とを備え、前記船舶制御装置は、前記船舶の船首を船舶押し当て対象に押し当てる船舶押し当てモードを有し、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船首を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行し、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記船舶制御装置は、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の前進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する、船舶である。
【0008】
本発明の一態様は、船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置であって、前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、前記船舶制御装置は、前記船舶の船尾を船舶押し当て対象に押し当てる船舶押し当てモードを有し、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船尾を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行し、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記船舶制御装置は、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の後進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する、船舶制御装置である。
【0009】
本発明の一態様は、船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置であって、前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、前記船舶制御装置は、前記船舶の船首を船舶押し当て対象に押し当てる船舶押し当てモードを有し、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船首を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行し、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記船舶制御装置は、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の前進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する、船舶制御装置である。
【0010】
本発明の一態様は、船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置の船舶制御方法であって、前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、前記船舶制御装置は、前記船舶の船尾を船舶押し当て対象に押し当てるモードである船舶押し当てモードを有し、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて、前記船舶制御装置が、前記船尾を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行する第1ステップと、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶制御装置が、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の後進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する第2ステップとを備える、船舶制御方法である。
【0011】
本発明の一態様は、船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置の船舶制御方法であって、前記船舶制御装置は、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、前記船舶制御装置は、前記船舶の船首を船舶押し当て対象に押し当てるモードである船舶押し当てモードを有し、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて、前記船舶制御装置が、前記船首を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行する第1ステップと、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船舶制御装置が、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の前進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する第2ステップとを備える、船舶制御方法である。
【0012】
本発明の一態様は、船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置であって、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、かつ、前記船舶の船尾を船舶押し当て対象に押し当てるモードである船舶押し当てモードを有する前記船舶制御装置を構成するコンピュータに、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて、前記船尾を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行する第1ステップと、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船尾を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の後進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する第2ステップとを実行させるためのプログラムである。
【0013】
本発明の一態様は、船舶の推力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる入力操作を受け付ける操作部と、前記船舶の船首方位を検出する船首方位検出部とを備える前記船舶に備えられる船舶制御装置であって、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて前記アクチュエータを作動させる機能を有し、かつ、前記船舶の船首を船舶押し当て対象に押し当てるモードである船舶押し当てモードを有する前記船舶制御装置を構成するコンピュータに、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付ける前に、前記操作部が受け付けた入力操作に応じて、前記船首を前記船舶押し当て対象に向ける制御を実行すると共に、前記船舶を前記船舶押し当て対象に向かって微速移動させる制御を実行する第1ステップと、前記船舶制御装置を前記船舶押し当てモードに設定する入力操作を前記操作部が受け付けた後、前記操作部が入力操作を受け付ける必要なく、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てた状態で、前記船首を前記船舶押し当て対象に押し当てる向きの前記船舶の前進推力を発生し続ける制御を実行すると共に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の船首方位である実船首方位を前記船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する第2ステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、船舶を係留したり操船したりする必要なく、船尾または船首が船舶押し当て対象に押し当てられた状態に船舶を維持することができる船舶、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の船舶1の一例を示す図である。
【
図2】ノズル112Aおよびバケット112Bの構成の一例を示す図である。
【
図3】船舶制御装置14の船舶押し当てモード中などに船舶制御装置14によって実行される制御の一例を説明するための図である。
【
図4】船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に船舶制御装置14によって実行される他の制御の一例を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態の船舶1の船舶制御装置14によって実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】第3実施形態の船舶1の船舶制御装置14の船舶押し当てモード中などに船舶制御装置14によって実行される制御の一例を説明するための図である。
【
図7】第3実施形態の船舶1の船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に船舶制御装置14によって実行される他の制御の一例を説明するための図である。
【
図8】第3実施形態の船舶1の船舶制御装置14によって実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明の船舶、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムの第1実施形態について説明する。
【0017】
図1は第1実施形態の船舶1の一例を示す図である。
図1に示す例では、第1実施形態の船舶1が、例えば特開2003-237693号公報、特開2014-073790号公報の
図1等に記載されたパーソナルウォータークラフト(PWC、水上オートバイ)が有する基本的な機能と同様の機能を有するPWCである。船舶1は、例えばアクチュエータ11と、操作部12と、船首方位検出部13と、船舶制御装置14と、傾斜検出部15とを備えている。
アクチュエータ11は、船舶1の推力を発生する機能と船舶1にモーメントを発生させる機能とを有する。具体的には、アクチュエータ11は、エンジン111と、ジェット推進装置112とを備えている。エンジン111は駆動力を出力する。ジェット推進装置112は、エンジン111から出力された駆動力によって船舶1の推力を発生する。ジェット推進装置112は、ノズル112Aと、バケット112Bとを備えている。ノズル112Aは、エンジン111から出力された駆動力によって生成されたジェット噴流を噴出する。バケット112Bは、ノズル112Aから噴出されたジェット噴流の向きを変更する。
【0018】
図2はノズル112Aおよびバケット112Bの構成の一例を示す図である。詳細には、
図2はバケット112Bの基本的な位置の一例を説明するための図である。具体的には、
図2(A)はバケット112Bが前進位置Fに配置された状態におけるノズル112Aとバケット112Bとの位置関係およびジェット噴流を示している。
図2(B)はバケット112Bが中立位置Nに配置された状態におけるノズル112Aとバケット112Bとの位置関係およびジェット噴流を示している。
図2(C)はバケット112Bが後進位置Rに配置された状態におけるノズル112Aとバケット112Bとの位置関係およびジェット噴流を示している。
【0019】
図2(A)に示すように、バケット112Bが前進位置Fに配置された状態においては、ノズル112Aから噴出されたジェット噴流が、バケット112Bに当たらない。つまり、ノズル112Aから噴出されたジェット噴流の向きは、バケット112Bによって変更されない。その結果、バケット112Bが前進位置Fに配置された状態では、ジェット推進装置112が、船舶1を前進させる推力(つまり、船舶1を
図2(A)の右向きに移動させる推力)を発生する。
図2(B)に示すように、バケット112Bが中立位置Nに配置された状態においては、ノズル112Aから噴出されたジェット噴流の一部分がバケット112Bに当たり、ノズル112Aから噴出されたジェット噴流の残りの部分はバケット112Bに当たらない。そのため、バケット112Bが中立位置Nに配置された状態では、ノズル112Aから噴出されたジェット噴流が、
図2(B)中の矢印によって表される。その結果、バケット112Bが中立位置Nに配置された状態では、ジェット推進装置112が、船舶1を前進または後進させる推力を発生しない。
図2(C)に示すように、バケット112Bが後進位置Rに配置された状態においては、ノズル112Aから噴出されたジェット噴流のすべてが、バケット112Bに当たる。つまり、ノズル112Aから噴出されたジェット噴流の向きは、バケット112Bによって
図2(C)の右向きに変更される。その結果、バケット112Bが後進位置Rに配置された状態では、ジェット推進装置112が、船舶1を後進させる推力(つまり、船舶1を
図2(C)の左向きに移動させる推力)を発生する。
【0020】
図2に示す例では、バケット112Bが、水平方向(
図2の手前側-奥側方向)に延びている回転中心軸線まわりに回動可能に構成されているが、他の例では、バケット112Bが、鉛直方向(
図2の上下方向)に延びている回転中心軸線まわりに回動可能に構成されていてもよい。詳細には、例えば特許第3971161号公報に記載されているように、バケット112Bが2つの部材によって構成されており、2つの部材が左右開き式に構成されていてもよい。
【0021】
図1に示す例では、操作部12が、アクチュエータ11を作動させる操船者の入力操作を受け付ける。操作部12は、スロットル操作部121と、シフト操作部122と、操舵部123と、船舶押し当てモード設定部124とを備えている。
スロットル操作部121は、例えば特開2014-073790号公報に記載されたスロットル操作部と同様に構成されており、エンジン111の回転速度を調整する操船者の入力操作を受け付ける。シフト操作部122は、例えば特開2014-073790号公報に記載されたシフト操作部と同様に構成されており、バケット112Bの位置を前進位置Fと中立位置Nと後進位置Rとの間で切り替える操船者の入力操作を受け付ける。操舵部123が操船者の入力操作を受け付けることによって、アクチュエータ11は船舶1にモーメントを発生させる。操舵部123およびスロットル操作部121は、例えば特許第5196649号公報の
図1に記載されたステアリングハンドル装置、特開2019-171925号公報の
図1に記載されたステアリングユニットなどと同様に構成されている。
船舶押し当てモード設定部124は、船舶制御装置14を後述する船舶押し当てモードに設定する操船者の入力操作を受け付ける。
船首方位検出部13は、船舶1の船首方位を検出する。船首方位検出部13は、例えば方位センサを備えている。方位センサは、例えば地磁気を利用することによって、船舶1の実船首方位を算出する。
他の例では、方位センサが、高速回転するジャイロスコープに指北装置と制振装置とを付加し、常に北を示すようにした装置(ジャイロコンパス)であってもよい。
更に他の例では、方位センサが、複数のGPS(Global Positioning System)アンテナを備え、複数のGPSアンテナの相対的な位置関係から船首方位を算出するGPSコンパスであってもよい。
【0022】
図1に示す例では、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた操船者の入力操作に応じてアクチュエータ11を作動させる機能を有する。また、船舶制御装置14は、船舶1の船尾1B(
図3参照)を船舶押し当て対象TG(
図3参照)に押し当てる船舶押し当てモードを有する。第1実施形態の船舶1では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14が、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGとしての桟橋に押し当てる制御などを実行する。
傾斜検出部15は、船舶1の前後方向の傾斜を検出する。傾斜検出部15は、例えば特開平8-156884号公報に記載された艇トリム検出センサと同様の技術を用いることによって、船舶1の前後方向の傾斜を検出する。
【0023】
図3は船舶制御装置14の船舶押し当てモード中などに船舶制御装置14によって実行される制御の一例を説明するための図である。詳細には、
図3(A)は船舶制御装置14が船舶押し当てモードに設定される前に船舶制御装置14によって実行される制御を示しており、
図3(B)は船舶制御装置14が船舶押し当てモードに設定される前に船舶制御装置14によって実行される他の制御を示しており、
図3(C)は船舶制御装置14が船舶押し当てモードに設定された後(つまり、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中)に船舶制御装置14によって実行される制御を示している。
図3に示す例では、操作部12の船舶押し当てモード設定部124が、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を受け付ける前(つまり、船舶制御装置14が船舶押し当てモードに設定される前)に、船舶制御装置14は、操作部12の操舵部123が受け付けた入力操作に応じて、
図3(A)の時計回りの矢印で示すように、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGに向ける制御を実行する。すなわち、この制御によって、船舶1の船尾1Bが、船舶押し当て対象TGの側(
図3の下側)に向けられる。
次いで、
図3(B)の下向きの矢印で示すように、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた入力操作(詳細には、操作部12のシフト操作部122が受け付けたバケット112Bの位置を中立位置Nから後進位置Rに切り替える入力操作、および、操作部12のスロットル操作部121が受け付けたエンジン111の回転速度を僅かに増加させる入力操作)に応じて、船舶1を船舶押し当て対象TGに向かって微速移動させる制御を実行する。
【0024】
次いで、
図3(C)に示すように、例えば船舶1の船尾1Bが船舶押し当て対象TGに押し当てられた時(つまり、船舶1の船尾1Bが船舶押し当て対象TGに接触した時)等に、操作部12の船舶押し当てモード設定部124が、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する操船者の入力操作を受け付ける。
次いで(つまり、操作部12の船舶押し当てモード設定部124が、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を受け付けた後)、
図3(C)の下向きの矢印で示すように、船舶制御装置14は、操作部12が入力操作を受け付ける必要なく、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGに押し当てた状態で、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGに押し当てる向き(
図3の下向き)の船舶1の後進推力を発生し続ける制御を実行する。
詳細には、
図3に示す例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付ける前に、操作部12のスロットル操作部121が受け付けた入力操作に応じて船舶1を船舶押し当て対象TGに向かって微速移動させる制御を船舶制御装置14が実行する時(つまり、
図3(B)に示す時点)の船舶1の後進推力の値が、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後に、操作部12が入力操作を受け付ける必要なく、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGに押し当てた状態で、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGに押し当てる向き(
図3の下向き)の船舶1の後進推力を発生し続ける制御を船舶制御装置14が実行する時(つまり、
図3(C)に示す時点)の船舶1の後進推力の値として用いられる。
他の例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後、操作部12が入力操作を受け付ける必要なく、船舶制御装置14が、予め設定された値の船舶1の後進推力をアクチュエータ11に発生させてもよい。つまり、この例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の船舶1の後進推力の値が予め設定されている。そのため、この例では、
図3(B)に示す時点の船舶1の後進推力の値と、
図3(C)に示す時点の船舶1の後進推力の値とが異なる場合があり得る。
【0025】
また、
図3に示す例では、
図3(C)に示すように、船舶制御装置14が、船首方位検出部13によって検出された船舶1の船首方位である実船首方位を船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位(
図3(C)の上向きの矢印で示す)に維持する方位保持制御を実行する。
詳細には、
図3に示す例では、船舶制御装置14は、船舶制御装置14が船舶押し当てモードになった瞬間(例えば、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた瞬間など)の実船首方位を、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位に設定する。
他の例では、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた入力操作(例えばボタンを押す入力操作、ステアリングを動かす入力操作など)に応じて船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位を設定してもよい。具体的には、例えば船舶制御装置14は、操作部12がボタンを押す入力操作を受け付けた時の実船首方位を、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位に設定してもよい。あるいは、船舶制御装置14は、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後、操作部12がステアリングを動かす入力操作を受け付けた時にステアリングが指し示す向きを、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位に設定してもよい。
【0026】
図4は船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に船舶制御装置14によって実行される他の制御の一例を説明するための図である。
図4に示す例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後(つまり、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中)に、船舶制御装置14は、バケット112Bの位置を変更することによって船舶1を船首トリム状態にするトリム制御を実行する。
詳細には、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14は、バケット112Bを、
図2(B)に示す中立位置Nと
図2(C)に示す後進位置Rとの間の位置に配置する。その結果、
図4に示すように、船舶1の後進推力(
図4参照)が発生すると共に、船舶1の船尾1Bを浮上させる浮力(
図4参照)が発生する。
船舶1を船首トリム状態にすることによって、船舶1の船尾1Bが押し当てられている船舶押し当て対象TG(桟橋)から船舶1への/船舶1から船舶押し当て対象TGへの乗船者の乗り降りを容易にすることができる。
他の例(ノズル112Aが上下方向に揺動可能に構成されている例)では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後(つまり、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中)に、船舶制御装置14が、ノズル112Aの位置を変更することによって船舶1を船首トリム状態にするトリム制御を実行してもよい。
更に他の例(ノズル112Aが上下方向に揺動可能に構成されている例)では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後(つまり、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中)に、船舶制御装置14が、ノズル112Aおよびバケット112Bの位置を変更することによって船舶1を船首トリム状態にするトリム制御を実行してもよい。
【0027】
図4に示す例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14は、
図2(B)に示す中立位置Nと
図2(C)に示す後進位置Rとの間でバケット112Bの位置を調整すると共に、エンジン111の駆動力(
図4に示すジェット噴流の強さ)を調整することによって、船舶1の後進推力を一定値に維持しつつ、船舶1の船尾1Bの浮力の大きさを調整することができる。また、船舶押し当て対象TGから船舶1への/船舶1から船舶押し当て対象TGへの乗り降りをする乗船者の人数、重量などに応じて、容易な乗り降りを実現するために必要な船舶1の船尾1Bの浮力の大きさは異なる。
その点に鑑み、
図4に示す例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14は、傾斜検出部15によって検出された船舶1の前後方向の傾斜に基づいて、船舶1が適切な船首トリム状態になるように、アクチュエータ11に発生させる船舶1の船尾1Bの浮力の大きさを制御する。
【0028】
図3および
図4に示す例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶1の後進推力が一定値に維持される。
他の例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶1の後進推力の値が調整可能であってもよい。この例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後(つまり、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中)に、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた操船者の入力操作(例えばボタンを押す入力操作、レバーを動かす入力操作など)に応じて、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TG(桟橋)に押し当てる向きの船舶1の後進推力の値を調整する制御を実行する。
【0029】
また、
図3および
図4に示す例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶1の目標船首方位が、変更されることなく維持される。
他の例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶1の目標船首方位が変更可能であってもよい。この例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた操船者の入力操作(例えばボタンを押す入力操作、ステアリングを動かした後に操船者の手をステアリングから離す入力操作など)に応じて、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の船舶1の目標船首方位を変更する制御を実行する。
【0030】
図5は第1実施形態の船舶1の船舶制御装置14によって実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図5に示す例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付ける前に、操作部12が受け付けた入力操作に応じて、ステップS11が実行される。
具体的には、ステップS11において、船舶制御装置14は、操作部12の操舵部123が受け付けた入力操作に応じて、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGに向ける制御を実行する。
また、ステップS11において、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた入力操作に応じて、船舶1を船舶押し当て対象TGに向かって微速移動させる制御を実行する。
【0031】
次いで、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後、操作部12が入力操作を受け付ける必要なく、ステップS12が実行される。
具体的には、ステップS12において、船舶制御装置14は、操作部12が入力操作を受け付ける必要なく、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGに押し当てた状態で、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGに押し当てる向きの船舶1の後進推力を発生し続ける制御を実行する。
また、ステップS12では、船舶制御装置14が、船首方位検出部13によって検出された船舶1の船首方位(実船首方位)を船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する。
その結果、第1実施形態の船舶1では、船舶1を係留する必要なく、操船者が船舶1を操船する必要もなく、船尾1Bが船舶押し当て対象TGに押し当てられた状態に船舶1を維持することができる。
【0032】
第1実施形態の船舶1によれば、横移動が不可能な船舶1であっても、桟橋停留を自動で維持することができる。
また、第1実施形態の船舶1では、船舶1の桟橋停留を自動で維持することができるため、乗船者が安心して船舶1に/船舶1から乗り降りすることができる。
更に、船舶1の係留が必要な場合であっても、船舶1の船尾1Bが船舶押し当て対象TGに押し当てられた状態が維持されているため、船舶1の係留を容易に行うことができる。
また、第1実施形態の船舶1では、船舶1の船尾1Bが船舶押し当て対象TGに押し当てられた状態が安定して維持されるため、船舶1の係留の必要性を排除することができる。
【0033】
<第2実施形態>
以下、本発明の船舶、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の船舶1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の船舶1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の船舶1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の船舶1と同様の効果を奏することができる。
【0034】
上述したように、第1実施形態の船舶1では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14が、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGとしての桟橋に押し当てる制御などを実行する。
一方、第2実施形態の船舶1では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14が、船舶1の船尾1Bを船舶押し当て対象TGとしての他の船舶(図示せず)に押し当てる制御などを実行する。
【0035】
第1実施形態の船舶1では、船舶1が桟橋(船舶押し当て対象TG)に押し当てられている船舶制御装置14の船舶押し当てモード中における船舶1の船速がゼロである。
一方、第2実施形態の船舶1では、船舶1が他の船舶(船舶押し当て対象TG)に押し当てられている船舶制御装置14の船舶押し当てモード中における船舶1の船速がゼロより大きくてもよい。
他の船舶(船舶押し当て対象TG)が、完全に止まっておらず、例えば波、風、潮流などによって流されている場合には、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中における船舶1の船速がゼロより大きくなる。
他の船舶(船舶押し当て対象TG)が完全に止まっている場合には、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中における船舶1の船速がゼロになる。
【0036】
<第3実施形態>
以下、本発明の船舶、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムの第3実施形態について説明する。
第3実施形態の船舶1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の船舶1と同様に構成されている。従って、第3実施形態の船舶1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の船舶1と同様の効果を奏することができる。
【0037】
上述したように、第1実施形態の船舶1では、船舶制御装置14が、船舶1の船尾1B(
図3参照)を船舶押し当て対象TG(
図3参照)に押し当てる船舶押し当てモードを有する。
一方、第3実施形態の船舶1では、船舶制御装置14が、船舶1の船首1A(
図6参照)を船舶押し当て対象TG(
図6参照)に押し当てる船舶押し当てモードを有する。船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14は、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGとしての桟橋に押し当てる制御などを実行する。
【0038】
図6は第3実施形態の船舶1の船舶制御装置14の船舶押し当てモード中などに船舶制御装置14によって実行される制御の一例を説明するための図である。詳細には、
図6(A)は第3実施形態の船舶1の船舶制御装置14が船舶押し当てモードに設定される前に船舶制御装置14によって実行される制御を示しており、
図3(B)は第3実施形態の船舶1の船舶制御装置14が船舶押し当てモードに設定される前に船舶制御装置14によって実行される他の制御を示しており、
図3(C)は第3実施形態の船舶1の船舶制御装置14が船舶押し当てモードに設定された後(つまり、第3実施形態の船舶1の船舶制御装置14の船舶押し当てモード中)に船舶制御装置14によって実行される制御を示している。
図6に示す例では、操作部12の船舶押し当てモード設定部124が、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を受け付ける前(つまり、船舶制御装置14が船舶押し当てモードに設定される前)に、船舶制御装置14は、操作部12の操舵部123が受け付けた入力操作に応じて、
図6(A)の反時計回りの矢印で示すように、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGに向ける制御を実行する。すなわち、この制御によって、船舶1の船首1Aが、船舶押し当て対象TGの側(
図6の下側)に向けられる。
次いで、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた入力操作(詳細には、操作部12のシフト操作部122が受け付けたバケット112Bの位置を中立位置Nから前進位置Fに切り替える入力操作、および、操作部12のスロットル操作部121が受け付けたエンジン111の回転速度を僅かに増加させる入力操作)に応じて、
図6(B)の下向きの矢印で示すように、船舶1を船舶押し当て対象TGに向かって微速移動させる制御を実行する。
【0039】
次いで、
図6(C)に示すように、例えば船舶1の船首1Aが船舶押し当て対象TGに押し当てられた時(つまり、船舶1の船首1Aが船舶押し当て対象TGに接触した時)等に、操作部12の船舶押し当てモード設定部124が、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する操船者の入力操作を受け付ける。
次いで(つまり、操作部12の船舶押し当てモード設定部124が、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を受け付けた後)、
図6(C)の下向きの矢印で示すように、船舶制御装置14は、操作部12が入力操作を受け付ける必要なく、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGに押し当てた状態で、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGに押し当てる向き(
図6の下向き)の船舶1の前進推力を発生し続ける制御を実行する。
詳細には、
図6に示す例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付ける前に、操作部12のスロットル操作部121が受け付けた入力操作に応じて船舶1を船舶押し当て対象TGに向かって微速移動させる制御を船舶制御装置14が実行する時(つまり、
図6(B)に示す時点)の船舶1の前進推力の値が、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後に、操作部12が入力操作を受け付ける必要なく、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGに押し当てた状態で、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGに押し当てる向き(
図6の下向き)の船舶1の前進推力を発生し続ける制御を船舶制御装置14が実行する時(つまり、
図6(C)に示す時点)の船舶1の前進推力の値として用いられる。
他の例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後、操作部12が入力操作を受け付ける必要なく、船舶制御装置14が、予め設定された値の船舶1の前進推力をアクチュエータ11に発生させてもよい。つまり、この例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の船舶1の前進推力の値が予め設定されている。そのため、この例では、
図6(B)に示す時点の船舶1の前進推力の値と、
図6(C)に示す時点の船舶1の前進推力の値とが異なる場合があり得る。
【0040】
また、
図6に示す例では、
図6(C)に示すように、船舶制御装置14が、船首方位検出部13によって検出された船舶1の船首方位(実船首方位)を船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位(
図6(C)参照)に維持する方位保持制御を実行する。
詳細には、
図6に示す例では、船舶制御装置14は、船舶制御装置14が船舶押し当てモードになった瞬間(例えば、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた瞬間など)の実船首方位を、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位に設定する。
他の例では、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた入力操作(例えばボタンを押す入力操作、ステアリングを動かす入力操作など)に応じて船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位を設定してもよい。具体的には、例えば船舶制御装置14は、操作部12がボタンを押す入力操作を受け付けた時の実船首方位を、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位に設定してもよい。あるいは、船舶制御装置14は、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後、操作部12がステアリングを動かす入力操作を受け付けた時にステアリングが指し示す向きを、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位に設定してもよい。
【0041】
図7は第3実施形態の船舶1の船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に船舶制御装置14によって実行される他の制御の一例を説明するための図である。
図7に示す例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後(つまり、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中)に、船舶制御装置14は、バケット112Bの位置を変更することによって船舶1を船尾トリム状態にするトリム制御を実行する。
詳細には、
図7に示すように、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14は、ジェット噴流(
図7参照)の向きが船舶1の後向き(
図7の左向き)かつ上向き(
図7の上向き)になる位置にバケット112Bを配置する。そのため、船舶1の前進推力(
図7参照)が発生すると共に、船舶1の船尾1Bを押し下げる力(押し下げ力(
図7参照))が発生する。その結果、船舶1の船尾1Bが下がり、かつ、船首1Aが上がった船尾トリム状態になる。
船舶1を船尾トリム状態にすることによって、船舶1の船首1Aが押し当てられている船舶押し当て対象TG(桟橋)から船舶1への/船舶1から船舶押し当て対象TGへの乗船者の乗り降りを容易にすることができる。
他の例(ノズル112Aが上下方向に揺動可能に構成されている例)では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後(つまり、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中)に、船舶制御装置14が、ノズル112Aの位置を変更することによって船舶1を船尾トリム状態にするトリム制御を実行してもよい。
更に他の例(ノズル112Aが上下方向に揺動可能に構成されている例)では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後(つまり、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中)に、船舶制御装置14が、ノズル112Aおよびバケット112Bの位置を変更することによって船舶1を船尾トリム状態にするトリム制御を実行してもよい。
【0042】
図7に示す例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14は、ジェット噴流の向きが船舶1の後向きかつ上向きになるバケット112Bの位置を調整すると共に、エンジン111の駆動力(
図7に示すジェット噴流の強さ)を調整することによって、船舶1の前進推力を一定値に維持しつつ、船舶1の船尾1Bを押し下げる力の大きさを調整することができる。また、船舶押し当て対象TGから船舶1への/船舶1から船舶押し当て対象TGへの乗り降りをする乗船者の人数、重量などに応じて、容易な乗り降りを実現するために必要な船舶1の船尾1Bを押し下げる力の大きさは異なる。
その点に鑑み、
図7に示す例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14は、傾斜検出部15によって検出された船舶1の前後方向の傾斜に基づいて、船舶1が適切な船尾トリム状態になるように、アクチュエータ11に発生させる船舶1の船尾1Bを押し下げる力(押し下げ力(
図7参照))の大きさを制御する。
【0043】
図6および
図7に示す例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶1の前進推力が一定値に維持される。
他の例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶1の前進推力の値が調整可能であってもよい。この例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後(つまり、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中)に、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた操船者の入力操作(例えばボタンを押す入力操作、レバーを動かす入力操作など)に応じて、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TG(桟橋)に押し当てる向きの船舶1の前進推力の値を調整する制御を実行する。
【0044】
また、
図6および
図7に示す例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶1の目標船首方位が、変更されることなく維持される。
他の例では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶1の目標船首方位が変更可能であってもよい。この例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた操船者の入力操作(例えばボタンを押す入力操作、ステアリングを動かした後に操船者の手をステアリングから離す入力操作など)に応じて、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の船舶1の目標船首方位を変更する制御を実行する。
【0045】
図8は第3実施形態の船舶1の船舶制御装置14によって実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図8に示す例では、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付ける前に、操作部12が受け付けた入力操作に応じて、ステップS21が実行される。
具体的には、ステップS21において、船舶制御装置14は、操作部12の操舵部123が受け付けた入力操作に応じて、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGに向ける制御を実行する。
また、ステップS21において、船舶制御装置14は、操作部12が受け付けた入力操作に応じて、船舶1を船舶押し当て対象TGに向かって微速移動させる制御を実行する。
【0046】
次いで、船舶制御装置14を船舶押し当てモードに設定する入力操作を操作部12の船舶押し当てモード設定部124が受け付けた後、操作部12が入力操作を受け付ける必要なく、ステップS22が実行される。
具体的には、ステップS22において、船舶制御装置14は、操作部12が入力操作を受け付ける必要なく、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGに押し当てた状態で、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGに押し当てる向きの船舶1の前進推力を発生し続ける制御を実行する。
また、ステップS22では、船舶制御装置14が、船首方位検出部13によって検出された船舶1の船首方位(実船首方位)を船舶制御装置14の船舶押し当てモード中の目標船首方位に維持する方位保持制御を実行する。
その結果、第3実施形態の船舶1では、船舶1を係留する必要なく、操船者が船舶1を操船する必要もなく、船首1Aが船舶押し当て対象TGに押し当てられた状態に船舶1を維持することができる。
【0047】
第3実施形態の船舶1によれば、横移動が不可能な船舶1であっても、桟橋停留を自動で維持することができる。
また、第3実施形態の船舶1では、船舶1の桟橋停留を自動で維持することができるため、乗船者が安心して船舶1に/船舶1から乗り降りすることができる。
更に、船舶1の係留が必要な場合であっても、船舶1の船首1Aが船舶押し当て対象TGに押し当てられた状態が維持されているため、船舶1の係留を容易に行うことができる。
また、第3実施形態の船舶1では、船舶1の船首1Aが船舶押し当て対象TGに押し当てられた状態が安定して維持されるため、船舶1の係留の必要性を排除することができる。
【0048】
<第4実施形態>
以下、本発明の船舶、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムの第4実施形態について説明する。
第4実施形態の船舶1は、後述する点を除き、上述した第3実施形態の船舶1と同様に構成されている。従って、第4実施形態の船舶1によれば、後述する点を除き、上述した第3実施形態の船舶1と同様の効果を奏することができる。
【0049】
上述したように、第3実施形態の船舶1では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14が、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGとしての桟橋に押し当てる制御などを実行する。
一方、第4実施形態の船舶1では、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中に、船舶制御装置14が、船舶1の船首1Aを船舶押し当て対象TGとしての他の船舶(図示せず)に押し当てる制御などを実行する。
【0050】
第3実施形態の船舶1では、船舶1が桟橋(船舶押し当て対象TG)に押し当てられている船舶制御装置14の船舶押し当てモード中における船舶1の船速がゼロである。
一方、第4実施形態の船舶1では、船舶1が他の船舶(船舶押し当て対象TG)に押し当てられている船舶制御装置14の船舶押し当てモード中における船舶1の船速がゼロより大きくてもよい。
他の船舶(船舶押し当て対象TG)が、完全に止まっておらず、例えば波、風、潮流などによって流されている場合には、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中における船舶1の船速がゼロより大きくなる。
他の船舶(船舶押し当て対象TG)が完全に止まっている場合には、船舶制御装置14の船舶押し当てモード中における船舶1の船速がゼロになる。
【0051】
<第5実施形態>
以下、本発明の船舶、船舶制御装置、船舶制御方法およびプログラムの第5実施形態について説明する。
第5実施形態の船舶1は、後述する点を除き、上述した第1から第4実施形態の船舶1と同様に構成されている。従って、第5実施形態の船舶1によれば、後述する点を除き、上述した第1から第4実施形態の船舶1と同様の効果を奏することができる。
【0052】
上述したように第1から第4実施形態の船舶1はPWCであるが、第5実施形態の船舶1は、例えば特開2020-019321号公報の
図1に記載されたスポーツボートが有する基本的な機能と同様の機能を有する船舶、ジェット推進機を備えていない船舶(例えば特許第6198192号公報、特開2007-22284号公報などに記載された船外機を装備した船舶、船内外機または船内エンジンを備える船舶、サイドスラスタを備える大型船舶など)等のいずれかのようなPWC以外の船舶である。
【0053】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0054】
なお、上述した実施形態における船舶1が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1…船舶、1A…船首、1B…船尾、11…アクチュエータ、111…エンジン、112…ジェット推進装置、112A…ノズル、112B…バケット、F…前進位置、N…中立位置、R…後進位置、12…操作部、121…スロットル操作部、122…シフト操作部、123…操舵部、124…船舶押し当てモード設定部、13…船首方位検出部、14…船舶制御装置、15…傾斜検出部、TG…船舶押し当て対象