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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131049
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035715
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】大野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊吾
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA18
3H081BB02
3H081CC20
3H081CC24
3H081DD07
3H081DD12
3H081HH04
(57)【要約】
【課題】本発明は、封止部材に取り付けたカバー部材が外れにくい構造を有する流体圧アクチュエータを提供することを目的とする。
【解決手段】封止部材における自由端側に、前記流体圧アクチュエータとは別体のカバー部材を係止保持可能とするたけのこ部が形成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブと、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、前記チューブの外周面を覆うスリーブと、前記チューブの軸方向における端部を封止する封止部材と、を備えた、流体圧アクチュエータであって、
前記封止部材における自由端側に、前記流体圧アクチュエータとは別体のカバー部材を係止保持可能とするたけのこ部が形成されていることを特徴とする、流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記たけのこ部は、断面非円形状である、請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記たけのこ部は、断面において、楕円形状又は長方形状である、請求項2に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記たけのこ部は、前記断面における長軸が前記流体圧アクチュエータの湾曲する方向と直交する方向に配置されている、請求項2又は3に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記封止部材は、金属製である、請求項1~4のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スリーブに覆われたチューブの膨張及び収縮によって所望の動作を実現可能な流体圧アクチュエータ(「マッキベン型の流体圧アクチュエータ」とも呼ばれる。)をロボットの分野に用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、流体圧アクチュエータは、物を持ち上げるためのリフト部(ロボットアーム)としてだけでなく、人の指の挙動を実現させるための把持部(指ロボットハンド)としても用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-088999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のロボットハンドでは、対象物を把持する際に対象物と接する先端部と対象物との間に滑りが生じる場合があった。これに対し、先端部となる封止部材に滑り止め用のカバー部材を取り付けることも考えられるが、対象物の重さや繰り返しの使用により、カバー部材が封止部材から外れたり破れたりするおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、封止部材に取り付けたカバー部材が外れにくい構造を有する流体圧アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブと、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、前記チューブの外周面を覆うスリーブと、前記チューブの軸方向における端部を封止する封止部材と、を備えた、流体圧アクチュエータであって、
前記封止部材における自由端側に、前記流体圧アクチュエータとは別体のカバー部材を係止保持可能とするたけのこ部が形成されていることを特徴とする、流体圧アクチュエータ。
【0007】
(2)前記たけのこ部は、断面非円形状である、上記(1)に記載の流体圧アクチュエータ。
【0008】
(3)前記たけのこ部は、断面において、楕円形状又は長方形状である、上記(2)に記載の流体圧アクチュエータ。
【0009】
(4)前記たけのこ部は、前記断面における長軸が前記流体圧アクチュエータの湾曲する方向と直交する方向に配置されている、上記(2)又は(3)に記載の流体圧アクチュエータ。
【0010】
(5)前記封止部材は、金属製である、上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、封止部材に取り付けたカバー部材が外れにくい構造を有する流体圧アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】流体圧アクチュエータの側面図である。
図2】流体圧アクチュエータの一部分解斜視図である。
図3】封止機構を含む流体圧アクチュエータの軸方向DAXに沿った一部断面図である。
図4】アクチュエータ本体部の径方向DRに沿った断面図である。
図5】流体圧アクチュエータの挙動の説明図である。
図6】流体圧アクチュエータを用いたロボットハンドの構成例を示す図である。
図7】カバー部材が取り付けられた、本実施形態の流体圧アクチュエータの封止部材の概略斜視図である。
図8】本実施形態の流体圧アクチュエータの封止部材の概略斜視図(上図)及び封止部材に取り付けるカバー部材の概略斜視図(下図)である。
図9】たけのこ部の断面形状について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0014】
<流体圧アクチュエータ>
<<流体圧アクチュエータの全体概略構成>>
図1は、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ10の側面図である。図1に示すように、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100、封止機構200及び封止機構300を備える。また、流体圧アクチュエータ10の両端には、連結部20がそれぞれ設けられる。
【0015】
アクチュエータ本体部100は、チューブ110とスリーブ120とによって構成される。アクチュエータ本体部100には、接続口211aを介して流体が流入する。
【0016】
アクチュエータ本体部100は、基本的な特性として、チューブ110内への流体の流入によって、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXにおいて収縮し、径方向Dにおいて膨張する。また、アクチュエータ本体部100は、チューブ110から流体の流出によって、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXにおいて膨張し、径方向Dにおいて収縮する。このようなアクチュエータ本体部100の形状変化によって、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータとしての機能を発揮する。
【0017】
このような流体圧アクチュエータ10は、いわゆるマッキベン型であり、人工筋肉用として適用できることは勿論のこと、より高い能力(収縮力)が要求されるロボットの体肢(上肢や下肢など)用としても好適に用い得る。連結部20には、当該体肢を構成する部材などが連結される。
【0018】
本実施形態では、このような基本的な特性を有するマッキベン型の流体圧アクチュエータを用いつつ、軸方向DAXの圧縮を拘束する(規制または制限すると呼んでもよい、以下同)拘束部材150(図1において不図示、図2,3など参照)を設けることによって、軸方向DAXに直交する直交方向、つまり、径方向DRに湾曲(カール)することができる。
【0019】
流体圧アクチュエータ10の駆動に用いられる流体は、空気などの気体、または水、鉱物油などの液体のどちらでもよいが、特に、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100に高い圧力が掛かる油圧駆動にも耐え得る高い耐久性を有し得る。
【0020】
封止機構200及び封止機構300は、軸方向DAXにおけるアクチュエータ本体部100の両端部を封止する。具体的には、封止機構200は、封止部材210及びかしめ部材230を含む。封止部材210は、アクチュエータ本体部100の軸方向D A X の端部を封止する。また、かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210とともにかしめる。かしめ部材230の外周面には、治具によってかしめ部材230がかしめられた痕である圧痕231が形成される。
【0021】
封止機構200と封止機構300との相違点は、接続口211aが設けられているか否か及び後述の凸部400が設けられているか否かである。従って、これらの点を除いて、封止機構300の構造は、封止機構200について代表して説明される構造と同様である。
【0022】
接続口211aは、流体圧アクチュエータ10の駆動圧力源、具体的には、気体や液体のコンプレッサと接続されたホース(管路)を取り付けられる。接続口211aを介して流入した流体は、通過孔(不図示)を通過してアクチュエータ本体部100の内部、具体的には、チューブ110の内部に流入する。
【0023】
図2は、流体圧アクチュエータ10の一部分解斜視図である。図2示すように、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100及び封止機構200を備える。
【0024】
アクチュエータ本体部100は、上述したように、チューブ110とスリーブ120とによって構成される。
【0025】
チューブ110は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ110は、流体による収縮及び膨張を繰り返すため、ブチルゴムなど弾性材料によって構成される。また、流体圧アクチュエータ10を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、または水素化NBR、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とすることが好ましい。
【0026】
スリーブ120は、円筒状であり、チューブ110の外周面を覆う。スリーブ120は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ120は、このような形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ110の収縮及び膨張を規制しつつ追従する。
【0027】
スリーブ120を構成するコードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)やポリエチレンテレフタラート(PET)の繊維コードを用いることが好ましい。但し、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの高強度繊維のコードでもよい。
【0028】
また、本実施形態では、チューブ110とスリーブ120との間には、拘束部材150が設けられる。
【0029】
拘束部材150は、軸方向DAXには圧縮せず、径方向DR(撓み方向と呼んでもよい)に沿ってのみ変形可能である。つまり、拘束部材150は、軸方向DAXに沿った圧縮に対して抵抗し、軸方向DAXに直交する直交方向(径方向DR)に変形可能である。
【0030】
換言すると、拘束部材150は、軸方向DAXに沿って変形し難く、径方向DRに沿って撓める特性を有している。なお、変形可能とは、湾曲、或いはカール可能と言い換えてもよい。
【0031】
また、拘束部材150は、拘束部材150が設けられているチューブ110の外周上の位置において、径方向DR外側へのチューブ110(及びスリーブ120)の膨張を拘束(規制)する機能も有している。
【0032】
本実施形態では、拘束部材150は、スリーブ120の内側、具体的には、スリーブ120の径方向内側の空間において、軸方向DAXの一端側から他端側に亘って設けられる。また、本実施形態では、拘束部材150は、板バネ(leaf spring)を用いて形成される。
【0033】
板バネの寸法は、流体圧アクチュエータ10のサイズ、及び必要とされる発生力などに応じて選択されればよく、特に限定されない。また、板バネの材料についても特に限定されないが、典型的には、ステンレス鋼などの金属など、曲げ易く、圧縮に強い材料であればよい。例えば、拘束部材150は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の薄板などによって形成されてもよい。CFRPは、金属に比べて塑性変形をし難いため、流体圧アクチュエータ10が湾曲後、元の真っ直ぐな状態に戻りやすい。
【0034】
封止機構200は、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXにおける端部を封止する。封止機構200は、封止部材210、係止リング220及びかしめ部材230によって構成される。
【0035】
封止部材210は、管状のアクチュエータ本体部100に挿通される。具体的には、封止部材210は、頭部211と胴体部212とを有し、胴体部212は、チューブ110に挿通される。
【0036】
封止部材210としては、ステンレス鋼などの金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いてもよい。
【0037】
係止リング220は、封止部材210にスリーブ120を係止する。具体的には、スリーブ120は、係止リング220を介して径方向DR外側に折り返される(図2において不図示、図3参照)。
【0038】
係止リング220には、封止部材210と係合できるように一部が切り欠かれた切欠き部221が形成されている。係止リング220としては、封止部材210と同様の金属、硬質プラスチック材料などの材料や、自然繊維(自然繊維の糸)、ゴム(例えばOリング)などの材料を用いることができる。
【0039】
かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210とともにかしめる。具体的には、かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100の封止部材210が挿通された部分の外周面に設けられ、アクチュエータ本体部100を封止部材210にかしめる。
【0040】
かしめ部材230としては、アルミニウム合金、真鍮、及び鉄などの金属を用いることができる。かしめ用の治具によってかしめ部材230がかしめられると、かしめ部材230には、図1に示したような圧痕231が形成される。
【0041】
<<封止機構200の構成>>
図3は、封止機構200を含む流体圧アクチュエータ10の軸方向DAXに沿った一部断面図である。
【0042】
図3に示すように、チューブ110は、胴体部212に挿通される。また、スリーブ120 は、係止リング220を介して径方向DR外側に折り返されている。
【0043】
スリーブ120の径方向DR内側には、拘束部材150が設けられる。具体的には、拘束部材150は、チューブ110とスリーブ120との間に設けられる。
【0044】
また、拘束部材150は、アクチュエータ本体部100 の周方向における一部に設けられる。つまり、拘束部材150は、チューブ110(及びスリーブ120)の周方向における一部のみに設けられる。
【0045】
拘束部材150は、アクチュエータ本体部100(つまり、チューブ110及びスリーブ1 20)の軸方向DAXにおける一端側から他端側に亘って設けられる。具体的には、拘束部材150は、封止機構200から封止機構300に亘って設けられてもよい。
【0046】
但し、拘束部材150は、必ずしも完全に封止機構200から封止機構300に亘って設けられていなくてもよく、封止機構200及び封止機構300の何れか一方(特に、湾曲時に自由端となる可能性が高い封止機構300側)には、拘束部材150が延在していなくてもよい。
【0047】
かしめ部材230は、封止部材210の胴体部212の外径よりも大きく、胴体部212に挿通された上で治具によってかしめられる。かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210とともにかしめる。
【0048】
具体的は、かしめ部材230は、胴体部212に挿通されたチューブ110、及びチューブ110の径方向DR外側に位置するスリーブ120をかしめる。つまり、かしめ部材230は、チューブ110及びスリーブ120を封止部材210とともにかしめる。
【0049】
<<アクチュエータ本体部100の構成>>
図4は、アクチュエータ本体部100の径方向DRに沿った断面図である。図4に示すように、拘束部材150は、チューブ110とスリーブ120との間に設けられる。拘束部材150は、チューブ110及びスリーブ120と密着していてもよいし、拘束部材150と、チューブ110及び/またはスリーブ120との間、及び拘束部材150の側方には、多少隙間が形成されても構わない。
【0050】
拘束部材150は、チューブ110の周方向における一部に設けられる。拘束部材150の幅は、特に限定されないが、チューブ110の外径と基準とすれば、概ね当該外径の半分程度としてよい。一例としては、チューブ110の外径11mm、収縮するアクチュエータ本体部100部分の長さ185mm、拘束部材150(板バネ)の幅6mm、厚さ0.5mm程度とすることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、拘束部材150は、平板状であるが、撓み方に影響がない範囲において、チューブ110及びスリーブ120の断面形状に沿って多少湾曲させてもよい。
【0052】
<< 流体圧アクチュエータ10の挙動>>
図5は、流体圧アクチュエータ10の挙動の説明図である。図5に示されている流体圧アクチュエータ10は、封止機構200側が固定されており、封止機構300側は自由に移動できる状態である。つまり、封止機構200側が固定端であり、封止機構300側が自由端である。
【0053】
上述したように、流体圧アクチュエータ10の内部に流体が流入すると、軸方向DAXに収縮しようとするが、拘束部材150が設けられているため、軸方向DAXに沿った収縮が拘束(規制)される。
【0054】
つまり、板バネなどの硬質な部材によって形成された拘束部材150が、背骨のような役割を果たし、拘束部材150が設けられているチューブ110及びスリーブ120の外周上の位置と反対側(図5における下側)において、径方向DR外側に膨張することによって、軸方向DAXにおける流体圧アクチュエータ10の寸法が短くなり、方向D1に沿って流体圧アクチュエータ10(具体的には、アクチュエータ本体部100)が撓む。なお、方向D1は、可撓方向と呼んでもよい。
【0055】
拘束部材150は、ゴム製のチューブ110と、スリーブ120との間に設けられ、軸方向DAXにおける圧縮に対して抵抗し、に直交する直交方向(径方向DR)に沿って変形できる部材であり、アクチュエータ本体部100の周方向における一部に配置される。
【0056】
つまり、アクチュエータ本体部100への流体の流入(加圧) によって、アクチュエータ本体部100(マッキベン)が軸方向DAXに沿って収縮しようとすると、拘束部材150の部分は圧縮剛性が高いため、拘束部材150が配置された部分は収縮することができない。一方、その他のアクチュエータ本体部100の部分は収縮しようとするため、直交方向(径方向DR)に沿った曲げ方向の力が発生し、拘束部材150を背面として湾曲する。
【0057】
<<流体圧アクチュエータ10を用いたロボットハンドの構成例>>
図6は、流体圧アクチュエータ10を用いたロボットハンドの構成例を示す。具体的には、図6は、ロボットハンドを備えたシステム30の概略側面図である。
【0058】
図6に示すように、ロボットハンドは、複数の流体圧アクチュエータ10を用いて構成される。システム30は、複数の流体圧アクチュエータ10、台座部35、支柱部40、アクチュエータ接続部50及びアクチュエータ接続部60を備える。
【0059】
流体圧アクチュエータ10は、上述したように拘束部材150を備え、湾曲可能なマッキベン型のアクチュエータである。
【0060】
台座部35の上面には、支柱部40が立設されている。支柱部40の上端部は、下方に向けて折り返されており、支柱部40の先端部分には、アクチュエータ接続部50が連結されている。
【0061】
アクチュエータ接続部50には、流体圧アクチュエータ15が吊り下げられている。流体圧アクチュエータ15は、流体圧アクチュエータ10のような拘束部材は備えられておらず、一般的なマッキベン型のアクチュエータであり、軸方向( 図中の矢印方向) に沿って収縮及び膨張する。つまり、流体圧アクチュエータ15は、単に軸方向の長さが変化するだけであり、流体圧アクチュエータ10のように湾曲することはできない。
【0062】
流体圧アクチュエータ15の下端には、アクチュエータ接続部60が連結されている。アクチュエータ接続部60には、複数の流体圧アクチュエータ10が吊り下げられている。
【0063】
流体圧アクチュエータ15は、流体圧アクチュエータ10と比較して大型であり、より大きな力を発生できる。一方、アクチュエータ接続部60に吊り下げられている複数の流体圧アクチュエータ10は、湾曲するため、ヒトの指に似た挙動を実現し得る。
【0064】
複数の流体圧アクチュエータ10は、鶏卵のような柔らかくて壊れやすい物体を損傷させずに把持できる。また、流体圧アクチュエータ10及び流体圧アクチュエータ15は、一定以上の重量があるような物体、例えば、砲丸投げの砲丸(7.26kg以上)を把持して持ち上げることも可能である。
【0065】
流体圧アクチュエータ10は、湾曲角度が大きい、発生力が大きい、力の制御が容易(圧力に発生力が比例)、構造がシンプル、表面をコートすることによって、取り扱う物体に直接触れることも可能、という特徴を有する。
また、流体圧アクチュエータ10に備えられる拘束部材150は、アクチュエータ本体部1 00( 具体的には、チューブ110)の軸方向DAXに沿った圧縮に対して抵抗し、軸方向DAXに直交する径方向DRに変形可能である。
【0066】
拘束部材150は、チューブ110の内側に設けられるため、流体圧アクチュエータ10のサイズが大型化することもない。さらに、拘束部材150によって、効率的に湾曲方向への力を発生させることができる。
【0067】
すなわち、流体圧アクチュエータ10によれば、サイズの大型化を回避しつつ、より大きな湾曲方向の力を発揮し得る。
【0068】
本実施形態では、拘束部材150は、チューブ110の周方向における一部に設けられる。このため、アクチュエータ本体部100の周上において、収縮する部分と収縮できない部分とが発生し、流体圧アクチュエータ10に加圧すると、一方向(拘束部材150が設けられている側と反対側)に湾曲する。これにより、効率的に湾曲方向への力を発生させることができ、より大きな湾曲方向の力を発揮し得る。
【0069】
本実施形態では、拘束部材150は、チューブ110とスリーブ120との間に設けられる。このため、チューブ110の軸方向DAXに沿った膨張を効果的に拘束(規制)できる。これにより、効率的に湾曲方向への力を発生させることができ、より大きな湾曲方向の力を発揮し得る。
【0070】
図7は、カバー部材が取り付けられた、本実施形態の流体圧アクチュエータの封止部材の概略斜視図である。図8は、本実施形態の流体圧アクチュエータの封止部材の概略斜視図(上図)及び封止部材に取り付けるカバー部材の概略斜視図(下図)である。図1図7図8(上図)に示すように、本実施形態の流体圧アクチュエータ10は、封止部材310における自由端側に、流体圧アクチュエータ10とは別体のカバー部材500を係止保持可能とするたけのこ部400が形成されている。たけのこ部400は、本例では、小径部と大径部がテーパ面で接続された外形を有する複数の截頭四角錐が、流体圧アクチュエータ10の軸方向に沿って連続した構造を有している。図示例では、截頭四角錐は、軸方向に3個連続して配置されているが、2個又は4個以上とすることもできる。これにより、封止部材300は一の截頭円錐の大径部の最大径と、該一の截頭四角錐に隣接する截頭四角錐の小径部の最小径とにより環状の段差が形成されている。なお、截頭四角錐に代えて、截頭円錐等他の様々な形状とすることもできる。図示例では、カバー部材500は、差し込み孔501を有し、この差し込み孔501がたけのこ部400と嵌合するように構成されている。
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0071】
本実施形態の流体圧アクチュエータによれば、封止部材310における自由端側に、流体圧アクチュエータ10とは別体のカバー部材500を係止保持可能とするたけのこ部400が形成されているため、(例えばゴム製の)カバー部材500を装着した際に、カバー500部材が封止部材310から外れるのを抑制することができる。このように、本実施形態の流体圧アクチュエータによれば、封止部材に取り付けたカバー部材が外れにくい構造となる。また、カバー部材500が封止部材310から外れにくくなる分、カバー部材500の厚さを厚くすることもできるため、カバー部材500を破れにくくすることもできる。
【0072】
特に、図7に示したように、たけのこ部においてが、小径部と大径部がテーパ面で接続された外形を有する複数の截頭四角錐(又は截頭円錐等)が、流体圧アクチュエータ10の軸方向に沿って連続した構造であることによれば、軸方向に対して引張力が作用した際にも、環状の段差(図示例ではそのような段差が軸方向に3か所形成されている)が抵抗となるため、より一層カバー部材500が封止部材310から外れにくくなる。例えば、ロボットハンドが重量のある対象物を把持した際にも、カバー500部材が封止部材310から外れるのを効果的に抑制することができる。このような観点からは、上記の截頭四角錐(又は截頭円錐等)は、3個以上軸方向に連続していることがさらに好ましい。
【0073】
また、上述した通り、封止部材310は、金属製とすることが好ましい。封止部材310が金属製である場合には、対象物との間で滑りが生じやすいが、カバー部材500(例えばゴム製)により、そのような滑りを防止することもできる。また、このようなカバー部材500は交換も容易であり、例えば対象物によって材質の異なるカバー部材500を用いる等することもできる。
【0074】
図9は、たけのこ部の断面形状について説明するための図である。図9に示すように、たけのこ部400は、断面非円形状であることが好ましく、断面楕円形状又は断面長方形状であることがより好ましい。カバー部材500を取り付けた際に、カバー部材500が軸方向周りに回転するのを抑制することができるからである。
【0075】
また、ロボットハンドにおいて、たけのこ部400は、断面における長軸が流体圧アクチュエータの湾曲する方向と直交する方向に配置されていることが好ましい。対象物を把持する際の接触面積を確保して、より安定的な把持が可能となるからである。
【符号の説明】
【0076】
10、15:流体圧アクチュエータ、 20:連結部、 30:把持システム、
35:台座部、 40:支柱部、 50、60:アクチュエータ接続部、
100、100A、100B:アクチュエータ本体部、
110:チューブ、 120:スリーブ、 150、150A、150B:拘束部材、
151:ピアノ線、 160:離間部材、 200、200A:封止機構、
210:封止部材、 211:頭部、 211a:接続口、 212:胴体部、
220:係止リング、 221:切欠き部、 230:かしめ部材、
231:圧痕、 300:封止機構、 310:封止部材、
400:たけのこ部、 500:カバー部材
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9