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▶ 株式会社綾野製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131053
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】家具用の引手
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/944 20170101AFI20230913BHJP
【FI】
A47B88/944
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035719
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000139643
【氏名又は名称】株式会社綾野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 貴大
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 章人
【テーマコード(参考)】
3B160
【Fターム(参考)】
3B160AA03
3B160AA04
3B160CA13
3B160DA22
3B160DA52
3B160DA58
(57)【要約】
【課題】逆手方向および順手方向の何れの方向にも開閉操作が可能な家具用引手を提供する。
【解決手段】
全体としてF形の断面構造を成し、上部側に断面コの字形の指挿入部、下部側に断面鉤形の扉上端への取付部を有する家具等の扉の上端に直線的に取り付けられる引手であって、断面コの字形の指挿入部を形成する上下両片の前端に上下逆方向に伸びる第1、第2のリブを設けることによって、逆手方向に指を掛ける第1の指掛け部と順手方向に指を掛ける第2の指掛け部との2組の指掛け部を形成し、上下方向の高さを異にする多段構造の引き出しのどの位置の引き出しにあっても容易に開閉操作を行えるようにした。
【選択図】 図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体としてF形の断面構造を成し、上部側に断面コの字形の指挿入部、下部側に断面鉤形の扉上端への取付部を有する家具等の扉の上端に直線的に取り付けられる引手であって、
断面コの字形の指挿入部を形成する上下両片の前端に上下逆方向に伸びる第1、第2のリブを設けることによって、逆手方向に指を掛ける第1の指掛け部と順手方向に指を掛ける第2の指掛け部との2組の指掛け部を形成し、
上下方向の高さを異にする多段構造の引き出しのどの位置の引き出しにあっても容易に開閉操作を行えるようにした
ことを特徴とする家具用引手。
【請求項2】
断面コの字形の指挿入部を形成する上片の前後方向の寸法を下片の前後方向の寸法よりも後方側に所定寸法短く形成したことを特徴とする請求項1記載の家具用引手。
【請求項3】
第1、第2のリブの内側をそれぞれ円弧面に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の家具用引手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、家具用の引手の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチンの流し台、調理棚、洗面化粧台などの各種収納家具の引き出し(扉部)には、指挿入構造の引手(取っ手又はハンドルとも呼ばれる)が多く使用されている。そのような引手の中でも、最近では扉の上部に一直線で取り付けられる引手(一般にライン引手と呼ばれる)の人気が高い。
【0003】
この引手は、左右に複数の引き出し(扉部)が並ぶ場合にも、それらが同じ高さにある場合には全ての引手が左右に一直線に連続することになり、家具全体として非常にすっきりしたものとなり、デザイン的に優れたものとなる。しかも、形状や構造はシンプルで掃除もしやすい。さらに、扉の上部(上端)に取り付けたものでは扉前面からの出っ張りもなく、調理中の動作の邪魔にもならない。
【0004】
これまで提案されているこの種の引手は、全体として略F型の断面構造を成し、上部側に断面コの字状の扉開閉用の指挿入部、下部側に断面鉤状の扉上端への取付部を有して構成されている。上部側の指挿入部は、扉の板厚に対応して前方に水平に伸びる上片の前端を所定の角度下方に折り曲げてフック構造の指掛け部を形成している。下部側の扉上端への取付部は、扉部上端のコーナー部に背面側から嵌合して取り付けられるようになっており、扉(前板)の板厚に対応して前方に水平に伸び、扉の上端面に当接する指挿入部の下片と同指挿入部の下片後端から所定の長さ下方に伸び、扉上端のコーナー部の背面に当接してビス等の螺合手段で固定される取り付け片とからなっている。
【0005】
フック構造の指掛け部を形成している指挿入部の上片および扉の上端面に当接して扉上端への取付部の一部を形成する指挿入部の下片の背面側縦壁部から前方への突出寸法は、それぞれ共に扉の板厚に対応した等しい寸法となっている。また、扉上端への取付部の一部を形成する指挿入部の下片の前端は、前側でも扉の上端に少し嵌合するように、そのまま下方に折り曲げられている(たとえば特許文献1の構成を参照)。
【0006】
なお、この特許文献1の構成では、扉上端への取付部の一部を形成する指挿入部の下片は、部材的に引手本体の後端側縦壁部と別体となっており、扉上端への取付時において一体化されるようになっているが、他の例では部材的にも引手本体と一体となっているものも多い(たとえば扉への取り付け方は異なるが、特許文献2の引手の構成を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6654063号公報
【特許文献2】特開2008-104554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、従来のラインタイプの引手の指挿入部は、上片の前端を所定の角度下方に折り曲げてフック構造の指掛け部を形成しているが、下片の方には指を掛けるフック構造の指掛け部は設けられていない。つまり、下方側から上方側の逆手方向に指を掛ける構造にしかなっていない。
【0009】
そのため、たとえば多段階に上下方向の位置を異にして複数の引き出し(扉)が並ぶ場合に操作しにくい問題があった。すなわち、下方側から上方側の逆手方向に指を掛ける指掛け部の場合、例えば下方の引き出しを開けようとすると、相当に俯くか、又は腰を落として操作しなければならない。
【0010】
この出願の発明は、このような課題を解決するためになされたもので、指挿入部の上片側前端に逆手方向に指を掛ける指掛け部、指挿入部の下片側前端に順手方向に指を掛ける指掛け部を設け、多段構造の複数の引き出しのどの位置にあっても開閉操作を容易にした家具用の引手を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0012】
(1)請求項1の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、全体としてF形の断面構造を成し、上部側に断面コの字形の指挿入部、下部側に断面鉤形の扉上端への取付部を有する家具等の扉の上端に直線的に取り付けられる引手であって、
断面コの字形の指挿入部を形成する上下両片の前端に上下逆方向に伸びる第1、第2のリブを設けることによって、逆手方向に指を掛ける第1の指掛け部と順手方向に指を掛ける第2の指掛け部との2組の指掛け部を形成し、上下方向の高さを異にする多段構造の引き出しのどの位置の引き出しにあっても容易に開閉操作を行えるようにしたことを特徴としている。
【0013】
この発明の課題解決手段では、上記のように、断面コの字形の指挿入部を形成する上下両片の前端に上下逆方向に伸びる第1、第2のリブを設けており、それによって下方側から上方側の逆手方向に指を掛ける指掛け部と上方側から下方側の順手方向に指を掛ける指掛け部との指挿入方向の異なる2組の指掛け部を形成している。
【0014】
したがって、このような構成によれば、上下方向の高さを異にする多段構造の引き出しのどの位置の引き出しにあっても、容易に開閉操作を行えるようになる。
【0015】
例えば、複数段ある引き出しを開閉操作する場合、一般的に言って、中間部より上方側にある引き出しを開閉操作する場合には、下方側から上方側への逆手方向に指を掛けて開閉操作する方が操作しやすい。他方、中間部より下方側にある引き出しを開閉操作する場合には、上方側から下方側への順手方向に指を掛けて開閉操作する方が操作しやすい。この現象は、引き出しの段数が多くなるほど顕著になる。
【0016】
それにもかかわらず、すでに述べたように従来の引手の構造では、全ての引手に逆手方向の指掛け部しか設けられておらず、順手方向の指掛け部は全く設けられていなかった。そのため、例えば下方の引き出しを開けようとすると、相当に俯くか、又は腰を落として操作するしかなく、非常に操作しづらかった。
【0017】
ところが、この発明の課題解決手段では、上述のように、断面コの字形の指挿入部を形成する上下両片の前端に上下逆方向に伸びる第1、第2のリブを設けており、それによって下方側から上方側への逆手方向に指を掛ける指掛け部と上方側から下方側への順手方向に指を掛ける指掛け部との指挿入方向の異なる2組の指掛け部を形成している。
【0018】
したがって、引き出しの位置に応じて、逆手方向又は順手方向いずれの方向にも自由に指を掛けることができ、ユーザーの操作しやすい所望の操作方法で引き出しを開閉することができる。
【0019】
上記の事情はユーザーの身長によっても異なり、必ずしも一様ではないが、逆手方向および順手方向いずれの方向でも操作可能になっていると、ユーザーの身長に応じた自由な操作を可能とすることができる。
【0020】
なお、この発明の課題解決手段の場合、上記断面コの字形の指挿入部を形成する上下両片の前後方向の寸法は、相互に等しくても異なっていても構わない。すなわち、上下逆方向に伸びる第1、第2のリブの位置は前後方向の同一の位置でも、異なった位置でも構わない。
【0021】
(2)請求項2の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、断面コの字形の指挿入部を形成する上片の前後方向の寸法を下片の前後方向の寸法よりも後方側に所定寸法短く形成したことを特徴としている。
【0022】
断面コの字形の指挿入部を形成する上下両片の前端に上下逆方向に伸びる第1、第2のリブを設ける場合、上下両片の前後方向の寸法が同じであると、上下逆方向に伸びる第1、第2のリブが同じ位置で相互に対向することになる。そのため、引手本体の寸法を変えないとすると、どうしても断面コの字形の指挿入部の指挿入用の開口の開口間隔が狭くなり、逆手方向、順手方向いずれの方向への指の挿入も一定の制約を受け、指を掛けづらくなる。
【0023】
そこで、この発明の課題解決手段では、上記のように、断面コの字形の指挿入部を形成する上片の前後方向の寸法を下片よりも後方側に短く形成している。
【0024】
このような構成の場合、指挿入部の上片の前後方向の寸法が下片と等しい場合と異なり、指挿入部の指挿入用の開口が斜め上方に大きく開口することになり、指挿入部に対して下方側から上方、上方側から下方の何れの方向に対しても容易に指を挿入することができるようになり、上片側逆手方向の指掛け部および下片側順手方向の指掛け部の何れを利用して引き出しを開閉する場合にも開閉操作しやすくなる。
【0025】
したがって、多段構造の引き出しの上下どの位置にある引き出しを開閉する場合にも、指挿入部に指を挿入しやすく、より開閉しやすくなる。
【0026】
(3)請求項3の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1又は2の発明の課題解決手段の構成において、第1、第2のリブの内側をそれぞれ円弧面に形成したことを特徴としている。
【0027】
断面コの字形の指挿入部を形成する上下両片の前端に上下逆方向に伸びる第1、第2のリブを設けることによって、逆手方向に指を掛ける第1の指掛け部と順手方向に指を掛ける第2の指掛け部との2組の指掛け部を形成した場合、断面コの字形の指挿入部を形成する上下両片の前端と第1、第2のリブが直角に交わることになり、そのままでは指掛け部における指先の接触感が悪く、指を掛けづらい。また、爪などへの悪影響も想定される。
【0028】
そこで、この発明の課題解決手段では、第1、第2のリブの内側をそれぞれ滑らかな円弧面に形成し、操作性を向上させると共に、指掛け部における指先の接触感を良好にし、爪などを傷めないようにしている。
【0029】
この結果、操作性を悪化させることなく、引手本体の前面部を形成する第1、第2のリブ部分のエッジを立てることができ、より斬新なライン引手のデザインを実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上の結果、本願発明の家具用引手によれば、逆手方向および順手方向の何れの方向にも開閉操作が可能になり、多段構造の引き出しの扉用引手として重宝なものとなる。
【0031】
また、全体に亘り、エッジを立てたシャープなデザインのライン引手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手が適用される家具の一例としてのキッチンキャビネットの構成を示す斜視図である。
図2】同キッチンキャビネットの引き出し部前端の構成を示す一部切欠斜視図である。
図3】同キッチンキャビネットの引き出し部前端における引手の構成および引手の取り付け状態を示す断面図である。
図4】同キッチンキャビネットの所定の引き出し部前端に取り付けられた引手とその上部側の引き出し部前端との関係を示す断面図である。
図5】同キッチンキャビネットの引き出し部前端に設けられた本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す斜視図である。
図6】同本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手の構成を示すキャップを取り外した状態の斜視図である。
図7】同本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す図6の要部を拡大して示す斜視図である。
図8】同本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す正面図である。
図9】同本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す背面図である。
図10】同本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す右側面図である。
図11】同本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す図8のA―A断面図である。
図12】同本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手の逆手方向での使用状態を示す断面図である。
図13】同本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手の順手方向での使用状態を示す断面図である。
図14】本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手が適用される家具の一例としてのキッチンキャビネットの構成を示す斜視図である。
図15】同キッチンキャビネットの引き出し部前端の構成を示す一部切欠斜視図である。
図16】同キッチンキャビネットの引き出し部前端における引手の構成および引手の取り付け状態を示す断面図である。
図17】同キッチンキャビネットの所定の引き出し部前端に取り付けられた引手とその上部側の引き出し部前端との関係を示す断面図である。
図18】同キッチンキャビネットの引き出し部前端に設けられた本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す斜視図である。
図19】同本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手の構成を示すキャップを取り外した状態の斜視図である。
図20】同本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す図19の要部を拡大して示す斜視図である。
図21】同本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す正面図である。
図22】同本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す背面図である。
図23】同本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す右側面図である。
図24】同本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手の構成を示す図21のA―A断面図である。
図25】同本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手の逆手方向での使用状態を示す断面図である。
図26】同本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手の順手方向での使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の家具用引手を実施するための第1、第2の形態(以下、単に第1、第2の実施の形態という)について詳細に説明する。
【0034】
(1)第1の実施の形態
<本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手が適用される家具の一例>
本願発明の第1の実施の形態では、本願発明の家具用引手が適用される家具の一例として、たとえばキッチンキャビネットが採用されている。図1は、同キッチンキャビネットの概略的な構成を示している。また図2図4は、本願発明の第1の実施の形態に係る家具用引手20が取り付けられた当該キッチンキャビネットの引き出し部前端(扉部)の構成を示している。
【0035】
図1に示すキッチンキャビネットは、上キャビネットAと下キャビネットBのユニット構造の上下2組のキャビネットを所望に組み合わせて構成されている。上キャビネットAは、天板1と、側板2,2と、背板3よりなる箱型筐体内の空間を中板4を介して上下2つの空間に仕切り、上部側に食器棚C、下部側に調理家電機器設置スペースDを設けて構成されている。
【0036】
食器棚Cの内側は左右方向中間部で2室に仕切られ、それら各室には所定の寸法ピッチで高さ調節が可能な複数枚の棚板(図示省略)が設けられていると共に、前側には右又は左方向にスライド可能な引き戸5,5が設けられている。調理家電機器設置スペースDには、左右両側板2,2の内側に位置して電子レンジ、トースターなどの調理家電機器に対応した耐熱性の電源コンセント6,6(右側のコンセント6については図示省略)が設けられている。
【0037】
下キャビネットBは、天板でもあるカウンター(カウンターテーブル)7と、側板8,8(左側の側板8は見えないので符号の図示を省略)と、背板9と、台輪10よりなる箱型の筐体内空間左側に収納物を分類して収納することができる第1~第4の4段構造の引き出し11~14(以下、単に第1~第4の引き出し11~14という)、右側上部に電気炊飯器、電気ポットなどの調理家電機器をスライドテーブル15を介して収納し、使用時に引き出すことができるようにした調理家電機器収納スペース16、右側下部にダストボックスその他の収納用途の引き出し17を設けて構成されている。この場合、上記収納物分類用の第1~第4の引き出し11~14部分と上記調理家電機器収納スペース16およびダストボックスその他の収納用途の引き出し17部分は、それぞれ独立したユニット構造になっていても構わない。
【0038】
この実施の形態の場合、下キャビネットBの前後方向の奥行き寸法は、上キャビネットAの前後方向の奥行き寸法よりも所定寸法以上大きく形成されていて、カウンター7での作業が容易で、調理家電機器などが使用しやすい構成となっている。
【0039】
そして、上記収納物分類用の第1~第4の引き出し11~14およびダストボックスその他の収納用途の引き出し17には、それぞれその前板(扉部)11a~14a,17aの上端部に位置して左右方向両端間にかけて直線的に伸びる同一の上下幅、同一の奥行、同一の断面構造の引手20,20・・が設けられており、この引手20,20・・に設けられた指挿入部の指掛け部(後述)に指を掛けて開閉操作されるようになっている。
【0040】
この第1の実施の形態の場合、上記第3の引き出し13の引手20とダストボックス用の引き出し17の引手20は左右の長さが少し異なるが、相互に上下方向の位置が同じ位置に設けられており、下キャビネットB前面の左右両端間に亘って一直線に連続しており、ライン引手独特のアクセントのあるスッキリとしたデザインを実現している。
【0041】
<本願発明の第1の実施の形態に係る引手20の構造>
次に、上記第1~第4の引き出し11~14およびダストボックスその他の収納用途の引き出し17における引手20,20・・の構造について詳細に説明する。
【0042】
図5図11は、それぞれ本願発明の第1の実施の形態に係る各引手20,20・・の共通する構造を示している。
【0043】
この引手20は、たとえば図5図11に示すように、全体として略F形の断面構造を成し、上部側に断面コの字形の指挿入部(水平方向前方に向けてコの字形に開口した指挿入用の凹溝部)21、下部側に断面鉤形の取付部(引き出し11~14,17の前板11a~14a,17aの上端に背後から直角に嵌合して取り付けられるアングル形状の固定部)22を有して構成されている。
【0044】
断面コの字形の指挿入部21の縦壁部21aと断面鉤形の取付部22の縦壁部22aは上下に一体に連続しており、断面コの字形の指挿入部21を形成する上片21bと下片21cは、それら上下に連続する縦壁部21aの上端に位置して上片21bが、縦壁部22aの下部と縦壁部22aの上部との連続部に位置して下片21cが、それぞれ水平方向前方に所定の長さ伸びて設けられている。断面コの字形の指挿入部21を形成する下片21cは、同時に断面鉤形の取付部22の縦壁部22aの上端から水平方向前方に所定の長さ伸びる取付部22の上片22bを兼ねて形成されている。
【0045】
この実施の形態の場合、断面コの字形の指挿入部21の下片21c(および断面鉤形の取付部22の上片22b)は、たとえば図10および図11に示すように、その前端部が断面コの字形の指挿入部21の縦壁部21aの下端よりも低くなるように所定の傾斜角θ1だけ下降傾斜させて設けられており、それによって断面コの字形の指挿入部21内の後述する第4のコーナー部の開口角θ2(図10および図11を参照)を90度よりも大きくすると共に断面コの字形の指挿入部21の水平方向に伸びる上片21b前端部との間の上下垂直方向の間隔(後に述べる第1の指掛け部形成用の第1のリブ24の下片24bの下端と第2の指掛け部形成用の第2のリブ25の上片25aの上端との間の上下垂直方向の間隔a)が十分に広くなるようにしている。
【0046】
上記のように、断面鉤形の取付部22の縦壁部22aの上端から水平方向前方に所定の長さ伸びる取付部22の上片22bは、断面コの字形の指挿入部21の下片21cを兼ねたものとなっており、両者は実質的に一体に形成されている。そして、その本体部は、上記のように所定傾斜角θ1だけ前方に向けて下降傾斜している。したがって、そのままでは上記引き出し11~14,17の前板11a~14a,17aの上端に水平に対応する当接面を形成することができない。
【0047】
そこで、上記取付部22の縦壁部22a上端と取付部22の上片22b(指挿入部21の下片21c)とのコーナー部位置と同取付部22の上片22b(指挿入部21の下片21c)の前端部側下面位置の各々に引手本体長手方向に伸びる帯状の当接面23a,23bを部分的に同一水平面状態に形成して、上記引き出し11~14,17の前板11a~14a,17aの上端に水平に対応する当接面を形成している。これにより、上記のように指挿入部21の下片21c(および取付部22の上片22b)を前方に向けて下降傾斜させながらも、当該引手20を引き出し11~14,17の前板11a~14a,17aの上端部分に直角に対応させて取り付けることができるようにしている。
【0048】
また、指挿入部21の下片21c(および取付部22の上片22b)の前端には、同部分から所定寸法上下両方向に略垂直に伸びる第2のリブ25が設けられており、同リブ25の下片25bが引き出し11~14,17の前板11a~14a,17aの上端部前面側に嵌め合わせ状態で係合するようになっている(図2および図3を参照)。これにより、引き出し11~14,17の前板11a~14a,17aの上端部に引手20を取り付けるに際して、まず引手20を引き出し11~14,17の前板11a~14a,17aの上端部に上方から嵌合し、仮止めしておくことができることから、縦壁部22aのネジ止め作業も楽になる。他方、この第2のリブ25は、その上部側に所定の寸法上方側に伸びる上片25aを有している(後述)。
【0049】
この実施の形態の場合、引手20の取付部22の縦壁部22aには、たとえば図8図9図11に示すように、左右長手方向に所定の間隔を開けて取付ネジ30,30・・挿通用のネジ穴31,31・・が設けられており、同ネジ穴31,31・・を通して取付ネジ30,30・・を螺合することにより、図2図3に示すように、引き出し11~14,17の前板11a~14a,17aの上端部に取り付けられる。ネジ穴31,31・・は、後述するキャップ40,40の係合片47,47を係合するための左右方向に伸びる蟻溝27部分に対応して設けられている。
【0050】
一方、指挿入部21の上片21bの前端には、同部分から所定寸法下方に略垂直に伸びる第1のリブ24が設けられている。この第1のリブ24は、その上端24a部分が上記指挿入部21の上片21bの前端と直角に交わる形で一体に連続しており、その内側には指挿入部21の上片21b前端との間で、引き出し開操作時において、たとえば図12に示すように、指挿入部21の上片21b側に指を挿入し、逆手方向に指先を掛ける第1の指掛け部を形成している。この第1のリブ24の上片24aの内側に形成される第1の指掛け部は滑らかな円弧面よりなり、断面コの字形の指挿入部21内に後述する第1のコーナー部C3を形成している。
【0051】
他方、上記指挿入部21の下片21c前端側の第2のリブ25の上片25aは、その内側に当該前方に向けて下降傾斜する指挿入部21の下片21c前端との間で、引き出し開操作時において、たとえば図13に示すように、指挿入部21の下片21c側に指を挿入し、順手方向に指先を掛ける第2の指掛け部を形成している。この第2のリブ25の上片25aの内側に形成される第2の指掛け部は滑らかな円弧面よりなり、断面コの字形の指挿入部21内に後述する第3のコーナー部C3を形成している。
【0052】
この実施の形態の場合、上記断面コの字形の指挿入部(水平方向前方に向けてコの字形に開口した指挿入用の凹溝部)21内には、図10および図11に示すように、指挿入部21の上片21b前端の第1のリブ24の下片24bと指挿入部21の上片21b前端との間に形成される第1のコーナー部C1、指挿入部21の上片21b後端と指挿入部21の縦壁部21a上端の間に形成される第2のコーナー部C2、指挿入部21の下片21c前端の第2のリブ25の上片25aと指挿入部21の下片21c前端との間に形成される第3のコーナー部C3、指挿入部21の下片21c後端と指挿入部21の縦壁部21a下端との間に形成される第4のコーナー部C4との4組のコーナー部が形成されるが、これら第1~第4の各コーナー部C1~C4は、いずれも所定の曲率の滑らかな円弧面に形成されている。
【0053】
そして、図12に示す逆手方向又は図13に示す順手方向の何れの方向に指を挿入した場合にも挿入した指先がスムーズにガイドされて、上記第1のリブ24よりなる第1の指掛け部又は上記第2のリブ25よりなる第2の指掛け部に、それぞれ適切、かつソフトに係合されるようになる。その結果、図12に示す逆手方向又は図13に示す順手方向の何れの操作方向での開操作も容易になる。
【0054】
たとえば、図12に示す逆手方向の操作の場合、図12に示すように第2のコーナー部C2方向に挿入された指先は、同第2のコーナー部C2の円弧面でガイドされて、矢印で示すように、第1の指掛け部を形成している第1のコーナー部C1に係合するように滑らかに移動する。そして、第1のリブ24内側の第1のコーナー部C1により形成される第1の指掛け部での係合力により手前側に引き出されてスムーズに開放される。また、最終的な引き出し用の係合部である第1の指掛け部が滑らかな円弧面よりなる第1のコーナー部C1により形成されているので、引き出し時の指先の操作感(当接感)もソフトなものとなる。したがって、爪先を傷めるようなこともない。
【0055】
また、たとえば図13に示す順手方向の操作の場合、図13に示すように第4のコーナー部C4方向に挿入された指先は、同第4のコーナー部C4の円弧面で滑らかにガイドされて、矢印で示すように、第2の指掛け部を形成している第3のコーナー部C3に係合するように滑らかに移動する。そして、第3のコーナー部C3により形成される第2のリブ25内側の第2の指掛け部での係合力により手前側に引き出されてスムーズに開放される。また、最終的な引き出し用の係合部である第2の指掛け部が滑らかな円弧面よりなる第3のコーナー部C3により形成されているので、引き出し時の指先の操作感(当接感)もソフトなものとなる。したがって、爪先を傷めるようなこともない。
【0056】
そして、この実施の形態では、上記のように、引手部に逆手方向で操作する第1の指掛け部(第1のリブ24)および順手方向で操作する第2の指掛け部(第2のリブ25)を設けるに際して、断面コの字形の指挿入部21を形成する上片21b、下片21cのうち、下片21cを前方に向けて下降傾斜する傾斜片とすることにより、相互に対向する第1のリブ24と第2のリブ25との間の上下垂直方向の間隔aを十分に大きなものとして、逆手方向および順手方向の何れの方向に指を挿入する場合にもスムーズに指を挿入し、操作できるようにしている。
【0057】
この実施の形態の場合には、上記断面コの字形の指挿入部(水平方向前方に向けてコの字形に開口した指挿入用の凹溝部)21を形成する上片21bと下片21cの後端側縦壁部21a、22aから前端側指掛け部形成用のリブ24,25までの突出長(水平方向の寸法)は、それぞれ上下に位置する引き出し13,14の前板13a,14aの板厚に合わせて等しい寸法に形成されている(引き出し11~13、17の引手20,20・・の場合にも同様である)。
【0058】
<各引手20両端のキャップ40,40部分の構成>
上記構成の引手20は、たとえばアルミ材などの引き抜き成型により製造され、適用される引き出しの横幅寸法に応じて所望の長さに切断して使用されるようになっている。そして、その両端には、たとえば図5図7に示すように、同一断面形状のF型の合成樹脂製のキャップ40,40が嵌合一体化されている。
【0059】
このF型のキャップ40,40は、上記断面コの字形の指挿入部21に対応する断面コの字形の指挿入部41と上記断面鉤形の取付部22に対応する断面鉤形の取付部42を一体に成形して構成されており、同様の縦壁部41a,上片41b,下片41c、縦壁部42a,上片42b,リブ44(上端44a,下片44b)、リブ45(上片45a,下片45b)を備えている。
【0060】
そして、断面コの字形の指挿入部41の上片41bの前後両端および下片41cの前後両端には、それぞれ引手20本体との対向面側に位置して第1,第2の嵌合軸46a,46b、第3,第4の嵌合軸46c,46dが設けられている。また、断面鉤形の取付部42の縦壁部42aには、引手20本体との対向面側に位置して蟻溝27に係合する係合片47が設けられている。
【0061】
一方、引手20本体側の断面コの字形の指挿入部21の上片21bの前後両端部および下片21cの前後両端部には、上記キャップ40側上片41bの第1,第2の嵌合軸46a,46bおよび下片41cの第3,第4の嵌合軸46c,46dが嵌合される第1,第2の軸穴26a,26b、第3、第4の軸穴26c,26dが設けられている。また、引手20本体側の断面鉤形の取付部22の縦壁部22aの前面側には、上記キャップ40側取付部42の縦壁部42aに設けられている係合片47が係合される蟻溝27が設けられている。
【0062】
そして、それらの各々を図6および図7のように対応させて嵌合することにより、図5に示すようにキャップ40,40が引手20本体の左右両端に確実に一体化されている。図11は、同キャップ40が嵌合された状態における引手20本体の中央断面を示している。
【0063】
キャップ40側上片41bの第1,第2の嵌合軸46a,46bおよび下片41cの第3,第4の嵌合軸46c,46dが嵌合される引手20本体側の第1,第2の軸穴26a,26b、第3、第4の軸穴26c,26dは、それぞれ上記断面コの字形の指挿入部21の第1、第2のコーナー部C1,C2、第2、第3のコーナー部C3,C4を所定の曲率の緩やかな円弧面に形成することにより得られた有効な肉厚部を利用して形成されており、それにより十分に大きな略円径の軸穴を形成している。この結果、引手20本体の全体としては、十分に肉厚が薄く、かつエッジの立ったシャープなデザインのライン引手を実現することができる。また使用するアルミ材も少なくすることができ、コストも下げることができる。また軽量化も可能となる。
【0064】
<本願発明の第1の実施の形態に係る引手の基本的な特徴について>
以上の説明から明らかなように、本願発明の第1の実施の形態に係る引手20は、全体として略F形の断面構造を成し、上部側に断面コの字形の指挿入部21、下部側に断面鉤形の扉上端への取付部22を有してキッチンキャビネットなどの家具の扉の上端に直線的に取り付けられるようになっている。
【0065】
そして、断面コの字形の指挿入部21を形成する上下両片21b、21cの前端に上下逆方向に伸びる第1、第2のリブ24,25を設けることによって、逆手方向に指を掛ける第1の指掛け部と順手方向に指を掛ける第2の指掛け部との2組の指掛け部を形成し、上下方向の高さを異にする多段構造の引き出し11~14、17のどの位置の引き出しにあっても容易に開閉操作を行えるようにしている。
【0066】
このような構成によれば、上下方向の高さを異にする多段構造の引き出し11~14、17のどの位置の引き出しにあっても、容易に開閉操作を行えるようになる。
【0067】
例えば、上下に複数段ある引き出し11~14、17を開閉操作する場合、一般的に言って、中間部より上方側にある引き出しを開閉操作する場合には、下方側から上方側に逆手方向に指を掛けて開閉操作する方が操作しやすい。他方、中間部より下方側にある引き出しを開閉操作する場合には、上方側から下方側に順手方向に指を掛けて開閉操作する方が操作しやすい。この現象は、上下方向の引き出しの段数が多くなるほど顕著になる。
【0068】
それにもかかわらず、すでに述べたように従来の引手の構造では、全ての引手に逆手方向の指掛け部しか設けられておらず、順手方向の指掛け部は全く設けられていなかった。そのため、例えば下方の引き出し14を開けようとすると、相当に俯くか、又は腰を落として操作するしかなく、非常に操作しづらかった。
【0069】
ところが、この発明の実施の形態では、上述のように、断面コの字形の指挿入部21を形成する上下両片21b、21cの前端に上下逆方向に伸びる第1、第2のリブ24,25を設けることによって、逆手方向に指を掛ける第1の指掛け部と順手方向に指を掛ける第2の指掛け部との操作方向を異にする2組の指掛け部を形成している。
【0070】
したがって、引き出しの位置に応じて、逆手方向又は順手方向いずれの方向にも自由に指を掛けることができ、ユーザーの操作しやすい操作方法で引き出しを開閉することができる。
【0071】
上記の事情はユーザーの身長によっても異なり、必ずしも一様ではないが、逆手方向および順手方向いずれの方向でも操作可能になっていると、ユーザーの身長に応じた自由な操作を可能とすることができる。
【0072】
(2)第2の実施の形態
<本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手が適用される家具の一例>
この本願発明の第2の実施の形態でも、本願発明の家具用引手が適用される家具の一例としては、上述した第1の実施の形態の場合と同様のキッチンキャビネットが採用されている。図14は、同キッチンキャビネットの概略的な構成を示している。また図15図17は、同本願発明の第2の実施の形態に係る家具用引手20が取り付けられた当該キッチンキャビネットの引き出し部前端(扉部)の構成を示している。
【0073】
図14に示すキッチンキャビネットは、上キャビネットAと下キャビネットBのユニット構造の上下2組のキャビネットを所望に組み合わせて構成されている。上キャビネットAは、天板1と、側板2,2と、背板3よりなる箱型筐体内の空間を中板4を介して上下2つの空間に仕切り、上部側に食器棚C、下部側に調理家電機器設置スペースDを設けて構成されている。
【0074】
食器棚Cの内側は左右方向中間部で2室に仕切られ、それら各室には所定の寸法ピッチで高さ調節が可能な複数枚の棚板(図示省略)が設けられていると共に、前側には右又は左方向にスライド可能な引き戸5,5が設けられている。調理家電機器設置スペースDには、左右両側板2,2の内側に位置して電子レンジ、トースターなどの調理家電機器に対応した耐熱性の電源コンセント6,6(右側のコンセント6については図示省略)が設けられている。
【0075】
下キャビネットBは、天板でもあるカウンター(カウンターテーブル)7と、側板8,8(左側の側板8は見えないので符号の図示を省略)と、背板9と、台輪10よりなる箱型の筐体内空間左側に収納物を分類して収納することができる第1~第4の4段構造の引き出し11~14(以下、単に第1~第4の引き出し11~14という)、右側上部に電気炊飯器、電気ポットなどの調理家電機器をスライドテーブル15を介して収納し、使用時に引き出すことができるようにした調理家電機器収納スペース16、右側下部にダストボックスその他の収納用途の引き出し17を設けて構成されている。この場合、上記収納物分類用の第1~第4の引き出し11~14部分と上記調理家電機器収納スペース16およびダストボックスその他の収納用途の引き出し17部分とは、それぞれ独立したユニット構造になっていても構わない。
【0076】
この実施の形態の場合、上記下キャビネットBの前後方向の奥行き寸法は、上キャビネットAの前後方向の奥行き寸法よりも所定寸法以上大きく形成されていて、カウンター7での作業が容易で、調理家電機器などが使用しやすい構成となっている。
【0077】
そして、上記収納物分類用の第1~第4の引き出し11~14およびダストボックスその他の収納用途の引き出し17には、それぞれその前板(扉部)11a~14a,17aの上端部に位置して左右方向両端間にかけて直線的に伸びる同一の上下幅、同一の奥行、同一の断面構造の引手20,20・・が設けられており、この引手20,20・・に設けられた指挿入部の指掛け部(後述)に指を掛けて開閉操作されるようになっている。
【0078】
この第2の実施の形態のキッチンキャビネットの場合にも、上記第3の引き出し13の引手20とダストボックス用の引き出し17の引手20は左右の長さが少し異なるが、相互に上下方向の位置が同じ位置に設けられており、下キャビネットB前面の左右両端間に亘って一直線に連続しており、ライン引手独特のアクセントのあるスッキリとしたデザインを実現している。
【0079】
本願発明の第2の実施の形態に係る各引手20の構造>
次に、本願発明の第2の実施の形態に係る上記第1~第4の引き出し11~14およびダストボックスその他の収納用途の引き出し17における各引手20,20・・の共通する構造について詳細に説明する。
【0080】
添付図面の図18図24は、それぞれ本願発明の第2の実施の形態に係る各引手20,20・・の共通する構造を示している。
【0081】
この引手20は、たとえば図18図24に示すように、全体として略F形の断面構造を成し、上部側に断面コの字形の指挿入部(水平方向前方に向けてコの字形に開口した指挿入用の凹溝部)21、下部側に断面鉤形の取付部(引き出し11~14,17の前板11a~14a,17aの上端に背後から直角に嵌合して取り付けられるアングル形状の固定部)22を有して構成されている。
【0082】
断面コの字形の指挿入部21の縦壁部21aと断面鉤形の取付部22の縦壁部22aは上下に一体に連続しており、断面コの字形の指挿入部21を形成する上片21bと下片21cは、それら上下に連続する縦壁部21aの上端に位置して上片21bが、縦壁部22aの下部と縦壁部22aの上部との連続部に位置して下片21cが、それぞれ水平方向前方に所定の長さ伸びて設けられている。断面コの字形の指挿入部21を形成する下片21cは、同時に断面鉤形の取付部22の縦壁部22aの上端から水平方向前方に所定の長さ伸びる取付部22の上片22bを兼ねて形成されている。これらの構成は、基本的に上述した第1の実施の形態の構成と同一である。
【0083】
そして、この第2の実施の形態の場合にも、上記第1の実施の形態の場合と同様に、断面コの字形の指挿入部21の下片21c(および断面鉤形の取付部22の上片22b)は、たとえば図23および図24に示すように、その前端部が断面コの字形の指挿入部21の縦壁部21aの下端よりも低くなるように所定の傾斜角θ1だけ下降傾斜させて設けられており、それによって断面コの字形の指挿入部21内の後述する第4のコーナー部の開口角θ2(図23および図24を参照)を90度よりも大きくすると共に断面コの字形の指挿入部21の上片21bの前端部と下片21cの前端部との間の上下垂直方向の間隔(後述する第1の指掛け部形成用の第1のリブ24の下片24b下端と第2の指掛け部形成用の第2のリブ25の上片25aの上端との間の上下垂直方向の間隔a)が広くなるようにしている。
【0084】
また、この第2の実施の形態の場合にも、上述の第1の実施の形態の場合と同様に、上記指挿入部21の上片21bの前端には、同部分から所定寸法下方に略垂直に伸びる第1のリブ24が設けられている。この第1のリブ24は、その上端24a部分が上記指挿入部21の上片21bの前端と直角に交わる形で一体に連続しており、その内側には上記指挿入部21の上片21b前端との間で、引き出し11~14,17開操作時において、たとえば図25に示すように、指挿入部21の上片21b側に指を挿入し(下方側から上方側に指を挿入し)、逆手方向に指(指先)を掛ける第1の指掛け部を形成している。
【0085】
また、上記指挿入部21の下片21c(取付部22の上片22b)の前端には、同部分から所定寸法上下両方向に略垂直に伸びる第2のリブ25が設けられている。すなわち、この第2のリブ25は、所定の長さの上下両片25a、25bを有して構成されており、それら上下両片25a、25bの中間部分で上記指挿入部21の下片21c(取付部22の上片22b)の前端と直角に交わる形で一体に連続している。
【0086】
この第2のリブ25の上片25aは、その内側に前方に向けて下降傾斜する上記指挿入部21の下片21c前端との間で、引き出し11~14,17開操作時において、たとえば図26に示すように、指挿入部21の下片21c側に指を挿入し(上方側から下方側に指を挿入し)、順手方向に指(指先)を掛ける第2の指掛け部を形成している。
【0087】
この第2の実施の形態の場合にも、上記断面コの字形の指挿入部(水平方向前方に向けてコの字形に開口した指挿入用の凹溝部)21内には、上記第1のリブ24の下片24bと指挿入部21の上片21b前端との間に形成される第1のコーナー部C1、指挿入部21の上片21b後端と指挿入部21の縦壁部21a上端の間に形成される第2のコーナー部C2、上記第2のリブ25の上片25aと指挿入部21の下片21cとの間に形成される第3のコーナー部C3、指挿入部21の下片21c後端と指挿入部21の縦壁部21a下端との間に形成される第4のコーナー部C4との4組のコーナー部が形成され、これら第1~第4の各コーナー部C1~C4は、いずれも所定の曲率の滑らかな円弧面に形成されており、図25に示す逆手方向又は図26に示す順手方向の何れの方向に指を挿入した場合にも挿入した指先がスムーズにガイドされて、上記第1の指掛け部又は第2の指掛け部にそれぞれ適切、かつソフトに係合されるようになり、その結果、図25に示す逆手方向又は図26に示す順手方向の何れの操作方向での開操作も容易になる。
【0088】
たとえば、図25に示す逆手方向の操作の場合、同図25に示すように第2のコーナー部C2方向に挿入された指先は、同第2のコーナー部C2の滑らかな円弧面でガイドされて、矢印で示すように、上記第1の指掛け部を形成している第1のコーナー部C1に係合するように移動する。そして、同第1のコーナー部C1により形成される第1の指掛け部での係合力により手前側にスムーズに引き出されて開放される。
【0089】
この場合、最終的な引き出し用の係合部である第1の指掛け部が滑らかな円弧面よりなる第1のコーナー部C1により形成されているので、引き出し時の指先の操作感(当接感)もソフトなものとなる。その結果、爪先を傷める恐れもない。
【0090】
また、たとえば図26に示す順手方向の操作の場合、同図26に示すように第4のコーナー部C4方向に挿入された指先は、同第4のコーナー部C4の円弧面下部でガイドされて、矢印で示すように、第2の指掛け部を形成している第3のコーナー部C3に係合するように移動する。そして、第3のコーナー部C3により形成される第2の指掛け部での係合力により手前側に引き出されてスムーズに開放される。また、最終的な引き出し用の係合部である第2の指掛け部が滑らかな円弧面よりなる第3のコーナー部C3により形成されているので、引き出し時の指先の操作感(当接感)もソフトなものとなる。その結果、爪先を傷める恐れもない。
【0091】
ところで、この第2の実施の形態の場合には、図23および図24から明らかなように、上述した第1の実施の形態の場合と異なって、断面コの字形の指挿入部21の上片21bの前後方向の突出寸法(水平方向の突出寸法)が同指挿入部21の下片21c(取付部22の下片22b)の前後方向の突出寸法(水平方向の突出寸法)よりも所定寸法bだけ後方側に短く形成されている。
【0092】
したがって、断面コの字形の指挿入部21の上片21bの前端部と下片21c(取付部22の下片22b)の前端部との間の上下垂直方向の間隔(上記第1の指掛け部形成用の第1のリブ24の下片24bの下端と第2の指掛け部形成用の第2のリブ25の上片25aの上端との間の上下垂直方向の間隔a)は、上述した本願発明の第1の実施の形態の場合と同一であっても(引手20本体の上下方向の寸法が同一であっても)、断面コの字形の指挿入部21の上片21bの前端部と同指挿入部21の下片21c(取付部22の下片22b)の前端部との間の斜め方向の間隔(上記第1の指掛け部形成用の第1のリブ24の下片24bの下端と第2の指掛け部形成用の第2のリブ25の上片25aの上端との間の斜め方向の間隔)は有効に拡大され、しかも上記指挿入部21の上片21bの前端部(第1のリブ24部分)が所定寸法bだけ後退することにより、指挿入用の開口部が大きく開放され、図25に示す下方側から上方側に指を入れる逆手方向の操作および図26に示す上方側から下方側に指を入れる順手方向の操作の何れもが容易になる。
【0093】
たとえば図25に示す逆手方向に指を入れる場合には、指挿入用の開口部の寸法(開口幅)が斜めに拡大されることに加えて、指先を掛ける第1のリブ24下方の空間が大きく開放される結果、指の挿入、挿入した指先の係合がそれぞれ容易になる。指挿入部21の上片21bの前後方向の長さを後方に短くすると、上片21b内側の指先の挿入スペース(前後方向のスペース)は狭くなるが、図25から明らかなように、指先の爪部上下方向の厚さ寸法から見て、指先を挿入するには十分であり、第1のリブ24の位置より第2のリブ25の位置が所定寸法bだけ前方にあり、下方が広く開放されていることから、第1のリブ24の真下に第2のリブ25がある第1の実施の形態の場合に比べて、挿入した指先の第1関節を曲げて指先を第1のリブ24に掛ける自由度が十分に向上する。
【0094】
また、指挿入部21の上片21b内側の第1のコーナー部C1の円弧面と第2のコーナー部C2の円弧面が相互に連続して、指挿入部21の上片21b内側に指先の外径にフィットした所望の深さの単一の円弧面(U状の凹溝面)が形成され、指先を挿入して直ぐに引き出し操作を行うことができるようになる。第1の実施の形態のように、第1のコーナー部C1の円弧面と第2のコーナー部C2の円弧面がそれぞれ独立しており、その間にフラット面があると、指を挿入して引き出すまでにフラット面をスライドする時間が生じ、指を入れて直ぐの素早い操作ができず、相対的に操作感に欠ける。
【0095】
また、図26に示す順手方向に指を入れる場合には、第2のリブ25の上方に第1のリブ24がなく、第2のリブ25の上方が大きく開放されているので、上方から下方、また水平方向から下方への指の挿入が著しく容易になる。そして、指掛け部となる第2のリブ25の内側には、所定の曲率で前方に上り傾斜する滑らかな円弧面よりなる第3のコーナー部C3が設けられており、同第3のコーナー部C3により順手方向の第2の指掛け部が形成されているので、順手方向の引き出し操作の操作性、操作感も良好となる。
【0096】
なお、この第2の実施の形態に係る引手20,20・・の場合にも、上記引き出し11~14、17の前板11a~14a,17aに対する取付部22の構成、取付け構造、引手20,20・・両端のキャップ40,40の構成、嵌合構造などは、すべて上述した第1の実施の形態における引手20,20・・と同一であるので、それらの説明については省略する。
【0097】
<本願発明の第2の実施の形態に係る引手20の基本的な特徴>
以上のように、本願発明の第2の実施の形態の引手20では、上述した第1の実施の形態の引手20における断面コの字形の指挿入部21の上片21bの前後方向の寸法(水平方向の突出寸法)を下片21cよりも後方側に所定寸法bだけ短く形成している。
【0098】
従来の引手の構成と異なり、上述した第1の実施の形態の引手20のように、断面コの字形の指挿入部21の上下両片21b、21cの前後方向の寸法(水平方向の突出寸法)を等しいものとし、それらの前端に相互に対向する方向の第1、第2のリブ24,25を設けて逆手方向の第1の指掛け部および順手方向の第2の指掛け部を形成すると、どうしても指挿入部の指挿入用の開口の開口間隔aが狭くなり、第1、第2のリブ24,25が上下同一の位置にあるので、逆手方向の第1の指掛け部を利用して操作しようとするときには順手方向の第2のリブが支障となり、順手方向の第1の指掛け部を利用して操作しようとするときには逆手方向の第1のリブが支障となる。したがって、何れの場合にも自由でスムーズな操作ができない。
【0099】
そこで、本願発明の第2の実施の形態の引手20では、上記のように断面コの字形の指挿入部21の上片21bの前後方向の寸法(水平方向の突出寸法)を下片21cよりも所定寸法だけ後方に短く形成している。
【0100】
このような構成の場合、指挿入部21の上片21bの前後方向の寸法(水平方向の突出寸法)が下片21cの前後方向の寸法(水平方向の突出寸法)と等しい場合と異なり、指挿入部21の指挿入用の開口が斜め上方に大きく開口することになり、指挿入部21に対して上方側から下方、下方側から上方、水平方向から下方、水平方向から上方の何れの方向に対しても容易に指を挿入することができるようになり、上片21b側逆手方向の第1の指掛け部および下片21c側順手方向の第2の指掛け部の何れを利用して引き出しを開閉する場合にも非常に開閉しやすくなる。
【0101】
さらに、以上の構成の場合、たとえば図17に示すように、引き出し14を閉じた状態では、指挿入部21の上片21bの前端、第1のリブ24部分が、上部側にある引き出し13の前板13aの前面より所定寸法c(c<b)だけ後方に退避することになる。しかも、同状態において、下片21c前端の第2のリブ25は、逆に引き出し14の前板14aの前面よりも前方に突出した状態となる。
【0102】
したがって、上記上方から下方に指を挿入する順手方向の操作の場合に、上片21b側第1のリブ24だけでなく、上部側にある引き出し13の前板13a下端部の影響をも受けにくくなり、より開閉操作が容易になる。
【0103】
それらの結果、多段構造の引き出しの上下どの位置にある引き出しを開閉する場合にも、指挿入部に指を挿入しやすく、より開閉しやすくなる。
【0104】
なお、以上の場合において、断面コの字形の指挿入部21の上下両片21b、21cの内、下片21cを後方側に短くすることも考えられるが、そのようにした場合、順手方向の上方側から下方側に指を挿入する場合に、上片21bが傘になってしまい、また第2の指掛け部が扉内後方に隠れてしまうので、有効な操作が不可能となる。したがって、その意味からも本願発明の第2の実施の形態の構成が適切である。
【符号の説明】
【0105】
A:上キャビネット
B:下キャビネット
11~14:引き出し
11a~14a:前板
20:引手
21:指挿入部
21a:指挿入部の縦壁部
21b:指挿入部の上片
21c:指挿入部の下片
22:取付部
22a:取付部の縦壁部
22b:取付部の上片
24:第1の指掛け部形成用のリブ
25:第2の指掛け部形成用のリブ
図1
図2
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