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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131054
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】セラミックシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/10 20060101AFI20230913BHJP
   C04B 35/447 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C04B35/10
C04B35/447
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035720
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】村上 康之
(72)【発明者】
【氏名】白井 孝
(57)【要約】
【課題】新規な構造を有する高品質なセラミックシートを提供する。
【解決手段】樹脂及びセラミック材料を含む組成物をシート状に成形して得た一次シートからなる一次シート積層体を得て、かかる積層体をスライスして二次シートを得て、得られた二次シートを基板層の一方の主面上に積層して基板層積層体を得て、これを焼成することを含む、セラミックシートの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及びセラミック材料を含む組成物を加圧してシート状に成形し、一次シートを得る一次シート成形工程と、
前記一次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記一次シートを折畳又は捲回して一次シート積層体を得る、一次シート積層体形成工程と、
前記一次シート積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして二次シートを得る、スライス工程と、
前記セラミック材料と同一のセラミック材料を含む基板層の一方の主面上に、1枚又は複数枚の前記二次シートを積層して基板層積層体を得る、基板層積層体形成工程と、
前記基板層積層体を焼成する焼成工程と、を含むセラミックシートの製造方法。
【請求項2】
前記基板層が前記一次シートである、請求項1に記載のセラミックシートの製造方法。
【請求項3】
前記基板層が前記二次シートである、請求項1に記載のセラミックシートの製造方法。
【請求項4】
前記基板層が、前記一次シート及び前記二次シートとは異なる、セラミック含有シートである、請求項1に記載のセラミックシートの製造方法。
【請求項5】
前記二次シートが、前記一次シートからなる条片が該条片の幅方向に並列接合されてなる構成を有しており、
前記基板層が前記二次シートであり、
前記基板層積層体形成工程において、
i)前記基板層を構成する前記二次シートにおける前記条片の整列方向と前記基板層に対して積層された前記二次シートにおける前記条片の整列方向とが、5度以上90度以下の角度を成すように配置するか、或いは、
ii)前記整列方向が0度以上5度未満となるようにするとともに、前記基板層を構成する前記二次シートにおける前記条片間の接合線のうちの少なくとも一部と、前記基板層に対して積層された前記二次シートにおける前記条片間の接合線のうちの少なくとも一部とが、前記セラミックシートの主面方向から見て一致しないように配置する、
請求項1に記載のセラミックシートの製造方法。
【請求項6】
前記一次シート中における前記セラミック材料の体積分率が、前記樹脂及び前記セラミック材料の合計体積を基準として、40体積%以上65体積%以下である、請求項1~5のいずれかに記載のセラミックシートの製造方法。
【請求項7】
積層構造を有するセラミックシートであって、
前記積層構造が、複数のセラミック層の積層焼結体よりなり、
前記複数のセラミック層のうちの少なくとも一層が、a軸配向度の値が4.00以上である配向セラミック層である、セラミックシート。
【請求項8】
前記複数のセラミック層間の界面にて、別個の層に含有されるセラミックの少なくとも一部が相互に融着して融着構造を形成してなる、請求項7に記載のセラミックシート。
【請求項9】
前記配向セラミック層が、前記セラミックシートの主面のうちの少なくとも一方を構成する、請求項7又は8に記載のセラミックシート。
【請求項10】
前記配向セラミック層を、ロットゲーリング解析した場合のa軸の値が正である、請求項7~9の何れかに記載のセラミックシート。
【請求項11】
前記セラミックがアルミナ又はアパタイトを含む、請求項7~10の何れかに記載のセラミックシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックシート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックシートは、従来から幅広い用途に使用されてきた。セラミックシートは、その構造を制御することで、様々な属性を向上させうることが知られている。例えば、特許文献1では、所定の非強磁性体粉末を溶媒に分散して得たスラリーを磁場中で固化成形した後に焼結する配向性セラミックス焼結体の製造方法、及び、アルミナ結晶のC面が配向した面においてX線回折による(006)回折強度が、(110)回折強度の1.2倍以上となる配向性アルミナセラミックス焼結体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-193672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な構造を有する高品質なセラミックシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、樹脂及びセラミック材料を含む組成物をシート状に成形して得た一次シートからなる一次シート積層体を得て、かかる積層体をスライスして二次シートを得て、得られた二次シートを基板層の一方の主面上に積層して基板層積層体を得て、これを焼成することにより、新規な構造を有する高品質なセラミックシートが得られることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のセラミックシートの製造方法は、樹脂及びセラミック材料を含む組成物を加圧してシート状に成形し、一次シートを得る一次シート成形工程と、前記一次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記一次シートを折畳又は捲回して一次シート積層体を得る、一次シート積層体形成工程と、前記一次シート積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして二次シートを得る、スライス工程と、前記セラミック材料と同一のセラミック材料を含む基板層の一方の主面上に、1枚又は複数枚の前記二次シートを積層して基板層積層体を得る、基板層積層体形成工程と、前記基板層積層体を焼成する焼成工程と、を含むことを特徴とする。
かかる製造方法によれば、新規な構造を有する高品質なセラミックシートを効率的に提供することができる。
【0007】
ここで、本発明のセラミックシートの製造方法において、前記基板層が前記一次シートであってもよい。あるいは、本発明のセラミックシートの製造方法において、前記基板層が前記二次シートであってもよい。さらには、本発明のセラミックシートの製造方法において、前記基板層が、前記一次シート及び前記二次シートとは異なる、セラミック含有シートであってもよい。
【0008】
また、本発明のセラミックシートの製造方法において、前記一次シートの厚みが2.5mm以下であることが好ましい。かかる製造方法によれば、新規な構造を有する高品質なセラミックシートを一層効率的に提供することができる。
【0009】
また、本発明のセラミックシートの製造方法において、前記二次シートが、前記一次シートからなる条片が該条片の幅方向に並列接合されてなる構成を有しており、前記基板層が前記二次シートであり、前記基板層積層体形成工程において、
i)前記基板層を構成する前記二次シートにおける前記条片の整列方向と前記基板層に対して積層された前記二次シートにおける前記条片の整列方向とが、5度以上90度以下の角度を成すように配置するか、或いは、
ii)前記整列方向が0度以上5度未満となるようにするとともに、前記基板層を構成する前記二次シートにおける前記条片間の接合線のうちの少なくとも一部と、前記基板層に対して積層された前記二次シートにおける前記条片間の接合線のうちの少なくとも一部とが、前記セラミックシートの主面方向から見て一致しないように配置する、
ことが好ましい。かかる製造方法によれば、新規な構造を有するセラミックシートの品質を一層高めることができる。
【0010】
また、本発明のセラミックシートの製造方法において、前記一次シート中における前記セラミック材料の体積分率が、前記樹脂及び前記セラミック材料の合計体積を基準として、40体積%以上65体積%以下であることが好ましい。かかる製造方法によれば、新規な構造を有するセラミックシートの品質を一層高めることができる。
【0011】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のセラミックシートは、積層構造を有するセラミックシートであって、前記積層構造が、複数のセラミック層の積層焼結体よりなり、前記複数のセラミック層のうちの少なくとも一層が、a軸配向度の値が4.00以上である配向セラミック層である、ことを特徴とする。
かかるセラミックシートは、新規な構造を有するとともに、高品質である。なお、セラミックシートを構成するセラミック層のa軸配向度は、実施例に記載の方法に従って実施することができる。
【0012】
ここで、本発明のセラミックシートは、前記複数のセラミック層間の界面にて、別個の層に含有されるセラミックの少なくとも一部が相互に融着して融着構造を形成してなることが好ましい。セラミック層間の界面にて、別個の層に含有されるセラミックの少なくとも一部が相互に融着して融着構造を形成していれば、セラミックシート全体としての強度が高くなり、品質が一層向上する。
【0013】
また、本発明のセラミックシートは、前記配向セラミック層が、前記セラミックシートの主面のうちの少なくとも一方を構成することが好ましい。配向セラミック層が、セラミックシートの主面のうちの少なくとも一方を構成していれば、セラミックの配向性により生じる特性を良好に発揮することが可能となる。
【0014】
また、本発明のセラミックシートは、ロットゲーリング解析した場合のa軸の値が正である、ことが好ましい。ロットゲーリング解析した場合のa軸の値が正であれば、かかるセラミックシートは配向性に優れる。
【0015】
また、本発明のセラミックシートは、前記セラミックがアルミナ又はアパタイトを含んでいてもよい。セラミックシートの品質を高めることができるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、新規な構造を有する高品質なセラミックシートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
(セラミックシート)
本発明のセラミックシートは、セラミックの焼結体よりなるセラミックシートであり、新規な構造を有する。より具体的には、本発明のセラミックシートは、積層構造を有するセラミックシートであって、かかる積層構造が、複数のセラミック層の積層焼結体よりなりなる。そして、かかる複数のセラミック層のうちの少なくとも一層が、a軸配向度の値が4.00以上である配向セラミック層である。かかるセラミックシートは、新規な構造を有する。そして、セラミック層が積層されてなる積層構造を含む焼結体であることで、積層構造がセラミック間の焼結により一体化されているため、強度に富み高品質である。さらに、セラミックシートの主面の方向と厚み方向とで、セラミックの配向性に起因する属性の程度が異なり、異方性を有する。なお、セラミック層の層数は走査型電子顕微鏡(SEM)観察により確認することができる。
【0019】
本発明のセラミックシートにおいて、「複数のセラミック層のうちの少なくとも一層が、a軸配向度の値が4.00以上である」ということは、当該セラミックシートを構成する全てのセラミック層が、a軸配向度の値が4.00以上の配向セラミック層であってもよいし、セラミックシートを構成する複数のセラミック層の中の一部が、a軸配向度の値が4.00以上の配向セラミック層であってもよい、ということを意味する。そして、配向セラミック層の「a軸配向度の値」は、実施例に記載したX線回折(X‐ray diffraction;XRD)により得られた結晶のa軸方向に相当する面における散乱強度を、c軸方向に相当する面における散乱強度により除算して得ることができる。
【0020】
配向セラミック層のa軸配向度の値は、4.00以上である必要があり、40.00以上であることが好ましく、60.00以上であることがより好ましい。なお、a軸配向度の値の上限は特に限定されないが、例えば70.00以下でありうる。積層構造に含まれるあるセラミック層のa軸配向度の値が上記下限値以上であれば、配向に起因する属性が、十分な異方性を伴って発揮されることとなる。
【0021】
さらに、配向セラミック層をロットゲーリング解析した場合のa軸の値(ロットゲーリングファクター)が正であることが好ましく、0.0100以上であることがより好ましく、0.0140以上であることがさらに好ましい。かかるセラミックシートは、配向に起因する属性が、十分な異方性を伴って発揮されることとなる。なお、ロットゲーリング解析した場合のa軸の値の上限は特に限定されることなく、例えば、1.0000以下でありうる。ロットゲーリング解析の原理上、完全配向している場合には、ロットゲーリングファクターの値が1.0000となり、無配向の場合にはロットゲーリングファクターの値がゼロとなる。そして、ロットゲーリングファクターの値が1に近いほど、配向度が高いことを意味する。
【0022】
さらに、配向セラミック層が、セラミックシートの主面のうちの少なくとも一方を構成することが好ましい。言い換えれば、配向セラミック層が、セラミックシートの少なくとも一方の表面に露出していることが好ましい。配向セラミック層が、セラミックシートの主面のうちの少なくとも一方を構成していれば、セラミックの配向性により生じる特性を良好に発揮することが可能となる。
【0023】
さらに、セラミックシートを構成するセラミックとしては、特に限定されることなく、アルミナ、チタン酸バリウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、及びハイドロキシアパタイトなどが挙げられる。中でも、セラミックシートの品質向上の観点から、セラミックがアルミナ又はアパタイトを含んでいることが好ましい。
【0024】
ここで、セラミックシートを構成するセラミックは、個々に独立して存在するのではなく、複数の個体が相互に結合(融着)してなる緻密な構造体となっていることが好ましい。より具体的には、積層構造を構成する個々のセラミック層内においてセラミックが相互に結合しているだけでなく、複数のセラミック層間の界面にて、それぞれ別個の層に含有されるセラミックの少なくとも一部が相互に結合(融着)して融着構造を形成してなることが好ましい。これにより、セラミックシート全体としての強度が高くなり、品質が一層向上する。なお、セラミック間の融着構造は、SEM観察により確認することができる。
【0025】
本発明のセラミックシートは、種々の用途に好適に用いることができる。例えば、セラミック材料としてアルミナを含有するセラミックシートは、熱伝導性に優れており基板として好適に用いることができる。また、セラミック材料としてハイドロキシアパタイトを含有するセラミックシートは、触媒として好適に用いることができる。
【0026】
(セラミックシートの製造方法)
このような特徴を有する本発明のセラミックシートは、本発明のセラミックシートの製造方法に従って効率的に製造することができる。本発明のセラミックシートの製造方法は、樹脂及びセラミック材料を含む組成物を加圧してシート状に成形し、一次シートを得る一次シート成形工程と、一次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、一次シートを折畳又は捲回して一次シート積層体を得る、一次シート積層体形成工程と、一次シート積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして二次シートを得る、スライス工程と、上記のセラミック材料と同一のセラミック材料を含む基板層の一方の主面上に、1枚又は複数枚の前記二次シートを積層して基板層積層体を得る、基板層積層体形成工程と、を含むことを特徴とする。さらに、本発明の製造方法は、焼成工程に先立って、300℃以上の雰囲気で二次シートを加熱して脱脂する脱脂工程を含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0027】
<一次シート成形工程>
一次シート成形工程では、樹脂及びセラミック材料を含む組成物を加圧してシート状に成形し、一次シートを得る。
【0028】
[組成物]
ここで、組成物は、樹脂と、セラミック材料と、任意の他の成分とを混合して調製することができる。
【0029】
-セラミック材料-
セラミック材料としては、本発明のセラミックシートに含まれ得る、上述した各種のセラミックよりなるセラミック材料を用いることができる。セラミック材料が粒子状である場合には、特に限定されることなく、体積平均粒子径D50が0.4μm以上30.0μm以下の粒子状セラミック材料を用いることができる。なお、セラミック材料が「粒子状である」とは、アスペクト比が5以下であることを意味する。ここで、アスペクト比は、セラミック材料をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個のセラミック材料について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
【0030】
-樹脂-
樹脂としては、特に限定されることなく、各種の樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、直鎖状、又は分岐鎖状の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン系結晶性樹脂、直鎖状、又は分岐鎖状の高密度ポリプロピレン、低密度ポリプロピレンなどのポリプロピレン系結晶性樹脂、及び、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリメチルブテン、ポリメチルヘキセン、ポリビニルナフタレン、ポリキシレン等からなる群で示されるポリオレフィン系結晶性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリエステル等からなる群で示されるポリエステル系結晶性樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-12、ポリアミドイミド等からなる群で示されるポリアミド系結晶性樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等からなる群で示されるフッ素系結晶性樹脂や、その他として、ロジン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、セルロース、アセタール樹脂、塩素化ポリエーテル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、液晶ポリマー(芳香族多環縮合系ポリマー)等の結晶性樹脂;並びに、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、ブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムなどのエラストマーが挙げられる。中でも、アクリロニトリルブタジエンゴムが好ましい。
【0031】
-他の成分-
組成物中に任意に配合し得る他の成分としては、必要に応じて、一次シートの成形に使用され得る他の成分をさらに配合することができる。そして、組成物中に配合し得る他の成分としては、特に制限されることなく、例えば、架橋剤;反応開始剤;赤りん系難燃剤、りん酸エステル系難燃剤等の難燃剤;脂肪酸エステル系可塑剤等の可塑剤;ウレタンアクリレート等の靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ性向上剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤;などが挙げられる。
【0032】
なお、上述した成分の混合は、特に制限されることなく、ニーダー;ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー、ハイスピードミキサー等のミキサー;二軸混練機;ロール;などの既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒に予め樹脂を溶解又は分散させて樹脂溶液として、セラミック材料及び任意の他の成分と混合してもよい。そして、混合時間は、例えば、5分以上60分以下とすることができる。また、混合温度は、例えば、5℃以上160℃以下とすることができる。
【0033】
[組成物の成形]
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡及び解砕した後に、加圧してシート状に成形することができる。このように組成物を加圧成形したシート状のものを、一次シートとすることができる。なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば、真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
【0034】
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば、特に制限されることなく、プレス成形、圧延成形又は押し出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。
【0035】
[一次シート]
そして、組成物を加圧してシート状に成形してなる一次シートでは、セラミック材料が主として面内方向に整列すると推察される。一次シートの段階で面内方向に整列する「セラミック材料」は、複数の結晶粒の集合体である多結晶体である。一次シートにおいては、多結晶体が面内方向にて整列しているが、多結晶体を構成する複数の結晶粒の結晶軸は、この段階では原材料としての多結晶体の状態からほぼ変化していないと推察される。後述する積層体形成工程、さらに、スライス工程を経ることにより、結果的に、得られたセラミックシート中においてはa軸の配向度が高くなる。
【0036】
一次シートの厚みは、2.5mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましく、1.5mm以下であることがさらに好ましい。一次シートの厚みが上記上限値以下であれば、後続する焼成工程における収縮によりシートにひびが入る、或いはシートが割れることを良好に抑制することができ、効率的にセラミックシートを形成することが可能となる。なお、一次シートの厚みの下限値は特に限定されないが、例えば、0.1mm以上でありうる。
【0037】
そして、一次シート中のセラミック材料の体積分率が、樹脂及びセラミック材料の合計体積を基準として、40体積%以上であることが好ましく、50体積%以上であることがより好ましく、65体積%以下であることが好ましい。一次シート中のセラミック材料の体積分率が上記下限値以上であれば、後述する焼成工程においてセラミックシートにひび又は割れが生じることを良好に抑制する、あるいは焼成収縮を小さくすることができ、これにより、後述する焼成工程において二次シートに条片剥離が生じることを効果的に抑制することができる。その結果、得られるセラミックシートが一層強度に富み品質なものとなりうる。また、一次シート中のセラミック材料の体積分率が上記上限以下であれば、焼成前の一次シート自体のひび割れを防ぐことにより、得られるセラミックシートの強度を一層高めて品質を向上させ得る。
【0038】
<一次シート積層体形成工程>
一次シート積層体形成工程では、一次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、一次シートを折畳又は捲回して、一次シート積層体を得る。ここで、一次シートの折畳による一次シート積層体の形成は、特に制限されることなく、折畳機を用いて一次シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、一次シートの捲回による一次シート積層体の形成は、特に制限されることなく、一次シートの短手方向又は長手方向に平行な軸の回りに一次シートを捲き回すことにより行うことができる。また、一次シートの積層による一次シート積層体の形成は、特に制限されることなく、積層装置を用いて行うことができる。例えば、シート積層装置(日機装社製、製品名「ハイスタッカー」)を用いれば、層間に空気が入り込むことを抑えることができるため、良好な積層体を効率的に得ることができる。
【0039】
なお、一次シート積層体形成工程では、得られた一次シート積層体を、加熱しながら、積層方向に加圧(二次加圧)することが好ましい。一次シート積層体を加熱しながら積層方向に加圧する二次加圧を行うことにより、積層された一次シート相互間の融着を促進することができる。
【0040】
ここで、一次シート積層体を積層方向に加圧する際の圧力は、0.05MPa以上0.50MPa以下とすることができる。また、一次シート積層体の加熱温度は、特に限定されないが、50℃以上170℃以下であることが好ましい。さらに、一次シート積層体の加熱時間は、例えば、10秒間以上30分間以下とすることができる。
【0041】
なお、一次シートを積層、折畳又は捲回して得られる一次シート積層体では、セラミック材料(多結晶体)が積層方向に略直交する方向に配向していると推察される。
【0042】
<スライス工程>
スライス工程では、上記の工程にて得られた一次シート積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、二次シートを得る。ここで、一次シート積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、二次シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
【0043】
なお、得られるセラミックシートの厚み方向における熱伝導性を高める観点からは、一次シート積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
【0044】
そして、このようにして得られた二次シートでは、厚み方向にセラミック材料(多結晶体)が良好に配向している。これにより、かかる二次シートに由来するセラミック層においてはa軸配向度が高まると考えられる。また、二次シートは、一次シートからなる条片が該条片の幅方向に並列接合されてなる構成を有している。
【0045】
<基板層積層体形成工程>
基板層積層体形成工程では、二次シートに含有されるセラミック材料と同一のセラミック材料を含む基板層の一方の主面上に、1枚又は複数枚の二次シートを積層して基板層積層体を得る。ここで、基板層としては、少なくとも、二次シートに含有されるセラミック材料と同一のセラミック材料を含む限りにおいて特に限定されることなく、あらゆる層を用いることができる。具体的には、基板層は、一次シートであってもよいし、二次シートであってもよいし、一次シート及び二次シートとは異なる、セラミック含有シートであってもよい。セラミック含有シートとしては、例えば、上述したセラミック材料と、上述した樹脂とを含む組成物を、加圧を伴わない態様で成形したシートが挙げられる。もちろん、セラミック含有シートとしては、市販のセラミック含有シートを用いてもよい。なお、セラミック含有シート中においてセラミック材料は配向していてもよいが、無配向であってもよい。なお、基板層積層体形成工程における積層操作は、特に限定されることなく、一次シート積層体形成工程と同様に、積層装置を用いて実施してもよく、手動で積層してもよく、積層後にプレス機等を使って加圧してもよく、プレス時に層間の密着性を向上させることを目的に加熱して積層してもよい。
【0046】
例えば、基板層として一次シートを用いた場合には、基板層積層体は、面内方向にセラミック材料の多結晶体が配向した一次シートと、積層方向(厚み方向又は垂直方向とも称する)にセラミック材料多結晶体が良好配向し且つa軸配向度が高まった状態の二次シートを含む積層体になる。また、基板層として二次シートを用いた場合には、基板層積層体は、積層方向(厚み方向/垂直方向)にセラミック材料多結晶体が良好配向し且つa軸配向度が高まった状態の二次シート同士の積層構造を含む積層体となる。さらに、基板層として無配向のセラミック含有シートを用いた場合には、基材層積層体は、無配向のセラミック層と積層方向(厚み方向/垂直方向)にセラミック材料多結晶体が良好に配向し且つa軸配向度が高まった状態の二次シートとの積層構造を含む積層体となる。
【0047】
さらに、基板層積層体形成工程において、一枚又は複数枚の二次シートの積層後に二次シート以外の層、例えば、一次シート及び上述したセラミック含有シートを更に積層してもよい。
【0048】
また、基材層上に少なくとも一層の二次シートを積層した後に、二次シート以外の層、例えば、一次シート及び上述したセラミック含有シートを任意の数だけ積層してから、さらに二次シートを積層することもできる。
【0049】
基板層として二次シートを用いる場合において、基板層積層体形成工程における各層の配置態様は特に限定されることなく、あらゆる態様でありうるない。中でも、焼成工程における二次シートの条片剥離を予防することにより、得られるセラミックシートの強度を高めて品質を向上させる観点から、下記の態様i)又はii)に従って、各層を配置することが好ましい。
i)基板層を構成する二次シートにおける条片の整列方向と基板層に対して積層された二次シートにおける条片の整列方向とが、5度以上90度以下の角度を成すように配置する。
ii)上記の整列方向が0度以上5度未満となるようにするとともに、基板層を構成する二次シートにおける条片間の接合線のうちの少なくとも一部と、基板層に対して積層された二次シートにおける条片間の接合線のうちの少なくとも一部とが、セラミックシートの主面方向から見て一致しないように配置する。
【0050】
上記i)又はii)の配置態様に従って、積層構造を形成した場合には積層構造に含まれる二次シートが、条片間の接合部において剥離することを良好に抑制することができる。これは、積層構造に含まれる複数のセラミック層(基板層を含む)間の界面において、別個の層に含有されるセラミック同士が焼成工程において焼結体を形成することにより、条片の一部が剥離する(条片剥離する)ことを効果的に抑制することができる。
【0051】
なお、上記i)の場合において、基板層を構成する二次シートにおける条片の整列方向と基板層に対して積層された二次シートにおける条片の整列方向とがなす角度は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。角度が上記下限値以上であれば、焼成工程において条片剥離が発生することを一層効果的に抑制することができる。これは、上下の層間において、セラミック同士の融着が良好に進行するためであると推察される。
【0052】
また、上記ii)の場合において、上下の層の接合線間の間隙は、条片の幅(各層を構成する条片の幅が均一ではないときはその平均値)の1/4以上1/2以下であることが好ましい。上下の層の接合線間の間隙が上記範囲内であれば、焼成工程において条片剥離が発生することを一層効果的に抑制することができる。これは、上下の層間において、セラミック同士の融着が良好に進行するためであると推察される。
【0053】
<脱脂工程>
任意で実施されうる脱脂工程では、300℃以上の雰囲気で二次シートを加熱して脱脂する。脱脂工程における雰囲気の温度は、350℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることがさらに好ましい。脱脂工程における加熱温度の上限は、焼成工程の雰囲気の温度よりも低い必要があり、例えば、600℃以下でありうる。脱脂工程における雰囲気の温度が上記下限値以上であれば、一次シート中に含まれる樹脂を残すことなく脱脂工程を行うことができる。また、脱脂工程における雰囲気の温度が上記上限以下であれば、一次シート中に含まれる樹脂を炭化することなく脱脂工程を行うことが出来る。
【0054】
ここで、脱脂工程は不活性ガス(例えば、窒素ガス及びアルゴンガスなど)の雰囲気下で、常圧(1atm)にて実施することが好ましい。
【0055】
<焼成工程>
焼成工程では、基板層積層体を焼成する。焼成工程における雰囲気は、1000℃以上であることが好ましく、1500℃以上であることがより好ましく、2000℃以下であることが好ましい。焼成工程における雰囲気の温度が上記下限値以上であれば、より緻密にセラミックを焼結することができる。
【0056】
ここで、焼成工程は、脱脂工程と同様に、不活性ガス(例えば、窒素ガス及びアルゴンガスなど)の雰囲気下で、常圧(1atm)にて実施することが好ましい。
【0057】
以上のような工程を含む本発明の製造方法によれば、本発明のセラミックシート、すなわち、複数のセラミック層が積層されてなる積層構造を含む焼結体よりなり、複数のセラミック層のうちの少なくとも一層が、a軸配向度の値が4.00以上である配向セラミック層である、セラミックシートを効率的に製造することができる。
【実施例0058】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0059】
各実施例及び各比較例において、各種の属性及び評価は、それぞれ以下の方法に従って測定又は評価した。
【0060】
<XRDプロファイルの測定>
実施例、比較例で得られたセラミックシート及び無配向サンプルとしてのセラミック粒子について、XRD装置(Rigaku製、商品名「RINT2200」)を用いてX線を照射したときの2θ=20~90°の範囲でXRDプロファイルを測定した。無配向サンプルとしてのセラミック粒子は、各実施例、比較例で得たセラミックシートを乳鉢で粉末状になるまで粉砕して調製した。具体的には、CuKα線を用いて電圧40kV、電流400mAという条件で測定した。なお、セラミックシートについては、シート表面に対してXRDプロファイルを測定した。
<<ロットゲーリング解析>>
そして、得られたXRDプロファイルから、ロットゲーリング法に従ってa軸配向度及びc軸配向度を算出した。具体的には、下記の手順にしたがって各軸の配向度に関するロットゲーリングファクターfを算出した。
ロットゲーリングファクターfは、対象とする結晶面から回折されるX線のピーク強度を用いて、次式(1)により計算する。
f=(ρ-ρ)/(1-ρ) (1)
ここで、ρは無配向サンプルのX線の回折強度(I)を用いて計算され、c軸配向の場合、全回折強度の和(ΣI(hkl))に対する、c軸と垂直な全ての面(C軸垂直面)の回折強度の合計の割合として、次式(2)により求める。
ρ0=ΣI(C軸垂直面)/ΣI(hkl) (2)
ρは配向サンプルのX線の回折強度(I)を用いて計算され、c軸配向の場合、全回折強度の和(ΣI(hkl))に対する、C軸垂直面の回折強度の合計の割合として、上式(2)と同様に次式(3)により求める。
ρ=ΣI(C軸垂直面)/ΣI(hkl) (3)
a軸配向の場合についても、上記と同じ要領に従ってロットゲーリングファクターfを算出した。
<<a軸配向度の算出>>
セラミック材料としてアルミナを用いた実施例1~5、7~8及び比較例1について、XRDプロファイルにおける(300)面での散乱強度(2θ=68°;a軸方向に相当する面での散乱強度)を(006)面での散乱強度(2θ=37°;c軸方向に相当する面での散乱強度)で除して、a軸配向度の値:(a/c)を算出した。
セラミック材料としてハイドロキシアパタイトを用いた実施例6及び比較例2について、XRDプロファイルにおける(300)面での散乱強度(2θ=32.90°;a軸方向に相当する面での散乱強度)を(002)面での散乱強度(2θ=25.88°;c軸方向に相当する面での散乱強度)で除して、a軸配向度の値:(a/c)を算出した。
【0061】
<熱伝導率>
セラミックシートの主面内について、それぞれ、熱拡散率α(m/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)及び比重ρ(g/m)を以下の方法で測定した。
[熱拡散率α(m/s)]
熱物性測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用してX、Y、Z方向の熱拡散率を測定した。
[定圧比熱Cp(J/g・K)]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下における比熱を測定した。
[比重ρ(g/m)]
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER-H」)を用いて比重(密度)(g/m)を測定した。
そして、得られた測定値を用いて下記式(I):
λ=α×Cp×ρ・・・(I)
に代入し、セラミックシートについて、Z方向(厚み方向)の熱伝導率λ(W/m・K)を求めた。
【0062】
<セラミックシートの品質>
得られたセラミックシートの品質を目視で評価した。焼成工程において条片同士が離れる不具合(条片剥離)が生じるか否か、生じた場合にはその程度を確認した。
A:条片が剥がれることなく、一枚のシートで焼成出来た。
B:条片剥離が1~2か所で生じるも、一枚のシートで焼成出来た。
C:条片剥離が3~4か所で生じるも、一枚のシートで焼成出来た。
D:条片剥離が4~5か所で生じるも、一枚のシートで焼成出来た。
E:条片剥離が生じ、その結果、焼成後のシートが2枚以上のパーツに分離した。
【0063】
(製造例1)
<一次シート成形工程>
<<組成物の調製>>
樹脂としての、常温常圧下で液体のニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 1312」、分解開始温度:336℃)62部及び常温常圧下で固体のニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 3350」、分解開始温度:375℃)62部と、セラミック材料としての粒子状アルミナ材料(日本軽金属製、商品名「LS-711C」、体積平均粒子径:0.5μm、アスペクト比:1.2、比重:3.8)700部とを加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。
<<一次シートの成形>>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙1000μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み1mmの一次シートを得た。
【0064】
<一次シート積層体形成工程>
続いて、上記で得られた一次シートを縦150mm×横150mm×厚み0.8mmに裁断し、一次シートの厚み方向に188枚積層し、更に、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約150mmの一次シート積層体を得た。
【0065】
<スライス工程>
その後、二次加圧された一次シート積層体の積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(丸仲鐵工所社製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層された一次シートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦150mm×横150mm×厚み0.30mmの二次シートを得た。得られた二次シートは、a軸配向方向が厚み方向(垂直方向)に沿う傾向があるものであった。シート属性を表1に示す。
【0066】
(製造例2)
製造例1の<一次シート成形工程>において得られた一次シートを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙300μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形することにより0.30mmに圧延したものを一次シートとして得た。この一次シートを実施例2において基板層として用いた。かかる一次シートにおいては、a軸配向方向が一次シートの面内方向(平面方向)に沿う傾向があるものであった。シート属性を表1に示す。
【0067】
(製造例3)
製造例1の<一次シート成形工程>にて組成物を調製する際に配合するセラミック材料としての粒子状アルミナ材料の配合量を390部とした。それ以外は製造例1と同様にして、二次シートを得た。得られた二次シートは、a軸配向方向が厚み方向(垂直方向)に沿う傾向があるものであった。シート属性を表1に示す。
【0068】
(製造例4)
製造例1の<一次シート成形工程>にて組成物を調製する際に配合するセセラミック材料としての粒子状アルミナ材料をハイドロキシアパタイト(HAP、太平化学産業株式会社製、製品名「HAP-200」、体積平均粒子径D50:8μm、比重:3.2)600部とした。それ以外は実施例1と同様にして、二次シートを得た。得られた二次シートは、a軸配向方向が厚み方向(垂直方向)に沿う傾向があるものであった。シート属性を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例1)
<基板層積層体形成工程>
基板層として、製造例1で得られた二次シートを用い、基材層の一方の主面上に積層する二次シートとして製造例1で得られた二次シートを用いた。基板層を構成する製造例1にかかる二次シートにおける条片の整列方向と、基板層に対して積層する二次シート(以下、「上層」とも称する。)における条片の整列方向とが、90度の角度を成すように、基板層に対して上層を積層して、積層体を得た。得られた積層体を離型PET(polyethylene terephthalate)でキャラメル包装しテープ止めを行い、PETレトルト包装で真空包装した。これをオートクレーブ(羽生田鉄工所社製、小型オートクレーブ「DANDELION」)にて150℃雰囲気下、0.8MPaの圧力条件下にて、30分間加熱加圧処理して、基板層積層体を作製した。
【0071】
<脱脂工程~焼成工程>
その後、得られた積層体を常圧の窒素雰囲気下にて400℃で3日間加熱して、脱脂工程を行い、樹脂成分を燃焼させ(脱脂工程)、続いて、同雰囲気下で温度を10℃/分で1600℃まで昇温して1日間焼成を行った(焼成工程)。これらの工程を経て、セラミックシートを得た。得られたセラミックシートについて、上述した各種の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0072】
(実施例2)
基板層として、製造例2で得られた一次シートを用いた。そして、上層として、製造例1で得られた二次シートを用いた。これらの点以外は実施例1と同様にして、セラミックシートを得て、実施例1と同様にして各種の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0073】
(実施例3)
基板層として、セラミック材料としてアルミナを含有する市販のセラミックシート(株式会社MARUWA製、製品名「HBS」、厚さ300μm)を用い、上層として、製造例1で得られた二次シートを用いた。それ以外は実施例1と同様にして、セラミックシートを得て、実施例1と同様にして各種の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0074】
(実施例4)
基板層として製造例1で得られた二次シートを用い、上層として、製造例1で得られた二次シートを用いた。そして、基板層積層体形成工程において基板層を構成する製造例1にかかる二次シートにおける条片の整列方向と、上層における条片の整列方向とが、10度の角度を成すように、上層を積層して、積層体を得た。それ以外は実施例1と同様にして、セラミックシートを得て、実施例1と同様にして各種の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0075】
(実施例5)
基板層として製造例1で得られた二次シートを用い、上層として、製造例3で得られた二次シートを用いた。それ以外は実施例1と同様にして、セラミックシートを得て、実施例1と同様にして各種の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0076】
(実施例6)
基板層として製造例4で得られた二次シートを用い、上層として、製造例4で得られた二次シートを用いた。さらに、焼成工程における焼成温度を1150℃に変更した。これらの点以外は実施例1と同様にして、セラミックシートを得て、実施例1と同様にして各種の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0077】
(実施例7)
基板層及び上層として、共に製造例1で得られた二次シートを用いた。そして、基板層積層体形成工程において、基板層を構成する製造例1にかかる二次シートにおける条片の整列方向と、上層における条片の整列方向とが、0度の角度を成すように配置するとともに、基板層を構成する二次シートにおける条片間の接合線と、上層における条片間の接合線とが、積層方向から見て一致しないように、相互に500μm離間するように配置した。言い換えると、上下の層において条片半幅分ずらして配置した。かかる点以外は実施例1と同様にして、セラミックシートを得て、実施例1と同様にして各種の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0078】
(実施例8)
実施例7において、基板層積層体を形成するに際して、基板層を構成する二次シートにおける条片間の接合線と、上層における条片間の接合線とが、積層方向から見て一致するように配置した。言い換えると、積層する際に基板層の条片間の接合線と上層の条片間の接合線とが、上下に重なり合うように積層した。かかる点以外は実施例1と同様にして、セラミックシートを得て、実施例1と同様にして各種の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0079】
(比較例1)
製造例1で得られた二次シートを実施例1と同じ焼成条件にて焼成し、所定の積層構造を有さないセラミックシートを得た。言い換えると、基板層積層体形成工程を実施せずに、二次シートの焼結物としてのセラミックシート(セラミック種:アルミナ)を得た。得られたセラミックシートについて、実施例1と同様にして各種の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0080】
(比較例2)
製造例4で得られた二次シートを実施例1と同じ焼成条件にて焼成した。所定の積層構造を有さないセラミックシートを得た。言い換えると、基板層積層体形成工程を実施せずに、二次シートの焼結物としてのセラミックシート(セラミック種:ハイドロキシアパタイト)を得た。得られたセラミックシートについて、実施例1と同様にして各種の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
表2より、実施例1~8にかかる製造方法に従って得られた、セラミック層の積層構造を含む焼結体よりなるセラミックシートは、高品質であったことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、新規な構造を有する高品質なセラミックシートを提供することができる。