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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131066
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】パック化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20230913BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q19/00
A61K8/25
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035743
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】藤田 麻奈
(72)【発明者】
【氏名】村上 大
(72)【発明者】
【氏名】小森 咲
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC182
4C083AC662
4C083AD091
4C083AD352
4C083AD411
4C083AD412
4C083BB04
4C083CC07
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】肌上で滑らかに伸ばすことができ、肌上で乾燥させた際には剥がれ落ちにくく、こすらずに洗い流すことができ、洗浄後の肌にすべすべ感を付与し得るパック化粧料の提供。
【解決手段】粘土鉱物(a)を10~50質量%、増粘性多糖類(b)を0.1~1質量%、HLB13~16のノニオン性界面活性剤(c)を0.05~5質量%、「CERACUTE(登録商標)-F」や「CERACUTE(登録商標)-L」等の共重合体(d)を0.0005~0.25質量%含み、前記(d)成分に対する前記(b)成分の質量比〔(b)/(d)〕が1~200であるパック化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土鉱物(a)を10~50質量%、増粘性多糖類(b)を0.1~1質量%、HLB13~16のノニオン性界面活性剤(c)を0.05~5質量%、下記式(1)および式(2)で表される各単量体を含有する単量体混合物から得られた共重合体(d)を0.0005~0.25質量%含み、前記(d)成分に対する前記(b)成分の質量比〔(b)/(d)〕が1~200であるパック化粧料。
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは1~4の整数である。)
【化2】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Lは-C-、-C10-、-(C=O)-O-、-(C=O)-NH-、-O-(C=O)-を表し、Lは炭素数10~22のアルキル基を表す。)
【請求項2】
さらに、プロテオグリカン(e)を含む請求項1に記載のパック化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパック化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
パック化粧料は、毎日使用されるデイリースキンケア製品とは別にスペシャルケア製品として週に数回使用され、フェイス、ボディなどの肌の状態を整えることを主目的とする製品である。主な機能は「肌に潤いを与えて肌を整える(皮膚の保湿および賦活)」および「肌の汚れを除去しながら肌を整える(皮膚表面の汚垢除去、皮膚の保湿および賦活)」であり、これらパック化粧料は日常的なスキンケア製品では除去し難い汚れを除去し、さらに整肌効果も有するので、肌の状態を良く保つために効果的である。
【0003】
その中でも広く使用されているパック化粧料に「泥パック」がある。「泥パック」は、泥(粘土)の吸着力を利用して肌の汚れを除去するとともに、ミネラルの付与などによる整肌効果を期待するパック化粧料であり、主に粘土鉱物を含み、ノニオン性界面活性剤や油剤を組み合わせた組成物が開示されている(特許文献1、2)。
汚れの吸着効果が特に高いアイテムとして、泥を高配合した化粧料を塗布した後、肌上で水分を乾燥させて泥に汚れをしっかりと吸着させ、洗い流すタイプの泥パックが人気である。一方で、泥の高配合による肌上での伸びの低下や、洗浄後の肌の乾燥感が懸念される。
【0004】
特許文献3には、粘土鉱物、陰イオン性界面活性剤、油性成分、水溶性高分子化合物、多価アルコールを含むパック化粧料が開示されている。このパック化粧料は伸びが良く使用後の肌にみずみずしさを与えすべすべに整える効果に優れるが、すすぐ際には十分にこすり流す必要があり、肌への負担軽減について改善の余地があった。
また泥パックは、乾燥させた際にぽろぽろと剥がれてしまう傾向があるため、主に浴室内で入浴のタイミングにあわせて使用される。近年は朝洗顔を習慣とする人口が増えており、洗浄効果と整肌効果を有する泥パックが朝洗顔としてアウトバスで使用される機会が増している。そのため従来の機能に加え、肌上で乾燥させた際に剥がれ落ちにくい性能が求められつつある。
すなわち、肌上で滑らかに伸ばすことができ、肌上で乾燥させた際には剥がれ落ちにくく、こすらずに洗い流すことができ、洗浄後の肌にすべすべ感を付与し得るパック化粧料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-215256号公報
【特許文献2】国際公開第2014/157265号
【特許文献3】特開2006-206448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、肌上で滑らかに伸ばすことができ、肌上で乾燥させた際には剥がれ落ちにくく、こすらずに洗い流すことができ、洗浄後の肌にすべすべ感を付与し得るパック化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねたところ、粘土鉱物、増粘性多糖類、所定のHLBを有するノニオン性界面活性剤、特定の共重合体を特定の比率で組み合わせることにより、目的とするパック化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明のパック化粧料は、粘土鉱物(a)を10~50質量%、増粘性多糖類(b)を0.1~1質量%、HLB13~16のノニオン性界面活性剤(c)を0.05~5質量%、下記式(1)および式(2)で表される各単量体を含有する単量体混合物から得られた共重合体(d)を0.0005~0.25質量%含み、前記(d)成分に対する前記(b)成分の質量比〔(b)/(d)〕が1~200のパック化粧料である。
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは1~4の整数である。)
【化2】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Lは-C-、-C10-、-(C=O)-O-、-(C=O)-NH-、-O-(C=O)-を表し、Lは炭素数10~22のアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明のパック化粧料は、肌上で滑らかに伸ばすことができ、肌上で乾燥させた際には剥がれ落ちにくく、こすらずに洗い流すことができ、洗浄後の肌にすべすべ感を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
また、濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」および「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」および「8~10質量%」の記載も包含される。
さらに、「(メタ)アクリレート」はアクリレートまたはメタクリレートを表す。
【0011】
本発明のパック化粧料は、下記の粘土鉱物(a)(以下、成分(a)と称呼する場合がある。)、増粘性多糖類(b)(以下、成分(b)と称呼する場合がある。)、HLB13~16のノニオン性界面活性剤(c)(以下、成分(c)と称呼する場合がある。)、ならびに下記式(1)および式(2)で表される各単量体を含有する単量体混合物から得られた共重合体(d)(以下、成分(d)と称呼する場合がある。)を少なくとも含む。以下、これら成分について順次説明する。
【0012】
〔成分(a):粘土鉱物〕
本発明で用いられる成分(a)は粘土鉱物である。粘土鉱物(a)は、ケイ酸塩鉱物、タルクおよびマイカ(雲母)であり、これらの中から選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。ケイ酸塩鉱物としては、例えば、フィロケイ酸塩鉱物(カオリン族、モンモリロナイト族、粘土雲母族、緑泥石族、蛇紋石族など)、テクトケイ酸塩鉱物(ゼオライト族など)などが挙げられる。
粘土鉱物の具体的な例としては、パイロフィライト、タルク、緑泥石、クリソタイル、アンチゴライト、リザダイト、カオリナイト、デッカイト、ナクライト、ハロサイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ベントナイト、ソーダ沸石族(ソーダ沸石、中沸石、スコレス沸石、トムソン沸石など)、輝沸石族(輝沸石、束沸石、剥沸石など)、ゼオライト(方沸石、重十字沸石、灰十字沸石、菱沸石、グメリン沸石など)、ライトなどが挙げられる。
【0013】
粘土鉱物は、その性質によって水膨潤性粘土鉱物(a1)(以下、成分(a1)と称呼する場合がある。)および非水膨潤性粘土鉱物(a2)(以下、成分(a2)と称呼する場合がある。)に分けられる。
水膨潤性粘土鉱物は、ケイ酸マグネシウム・アルミニウムおよびケイ酸マグネシウム・ナトリウムを主成分とする粘土鉱物である。一般的に、水膨潤性粘土鉱物としては、スメクタイト族鉱物が好ましく、例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトなどが挙げられる。また、非水膨潤性粘土鉱物としては、例えば、カオリン、シルトなどが挙げられる。
【0014】
本発明のパック化粧料では、肌上での剥がれ落ちにくさをより向上させるために、水膨潤性粘土鉱物(a1)および非水膨潤性粘土鉱物(a2)を併用することが好ましい。併用する場合、成分(a2)に対する成分(a1)の質量比(a1/a2)は、1/0.1~1/5の範囲で用いることが好ましく、より好ましくは1/0.5~1/2である。
上記の粘土鉱物は、天然品および合成品のいずれでもよい。
【0015】
成分(a)の含有量は、パック化粧料の合計質量を100質量%としたとき、10~50質量%であり、好ましくは12~42質量%、より好ましく15~30質量%である。成分(a)の含有量が少なすぎる場合は、肌上での伸びの滑らかさや、洗浄後の肌のすべすべ感が弱くなることがある。成分(a)の含有量が多すぎる場合は、肌上での剥がれ落ちにくさ、洗い流しやすさ、洗浄後の肌のすべすべ感が弱くなることがある。
成分(a)として上記粘土鉱物から選ばれる1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、上記のように、水膨潤性粘土鉱物(a1)と非水膨潤性粘土鉱物(a2)とを特定の割合で含むことがより好ましい。2種類以上の粘土鉱物を用いる場合は、その合計含有量が上記範囲内であればよい。
【0016】
〔成分(b):増粘性多糖類〕
本発明で用いられる成分(b)は増粘性多糖類である。増粘性多糖類は、複数の糖からなる水溶性の多糖類であって、水に溶解することにより粘度が上昇する性質を有する多糖類である。例えば、セルロース及びセルロース誘導体、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、グアガム、デキストラン、ローカストビーンガム、キチン、キトサン、寒天等が挙げられる。
これらの中から選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。中でも、伸びの滑らかさや、洗い流し性を考慮して、キサンタンガムが好ましい。
【0017】
成分(b)の含有量は、パック化粧料の合計質量を100質量%としたとき、0.1~1質量%、好ましくは0.2~0.9質量%、より好ましくは0.3~0.8質量%である。成分(b)の含有量が少なすぎる場合は、肌上でのパック化粧料の伸びの滑らかさが低下したり、肌上でパック化粧料が剥がれやすくなったりすることがある。成分(b)の含有量が多すぎる場合は、肌上での伸びの滑らかさや、洗い流しやすさが低下することがある。
成分(b)として上記増粘性多糖類から選ばれる1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の増粘性多糖類を用いる場合は、その合計含有量が上記範囲内であればよい。
【0018】
〔成分(c):HLB13~16のノニオン性界面活性剤〕
本発明で用いられる成分(c)は、HLBが13~16のノニオン性界面活性剤である。HLB13~16のノニオン性界面活性剤は、滑らかな伸びと肌上での剥がれ落ちにくいさ、洗い流しやすさに寄与する。ノニオン性界面活性剤のHLBが過度に低い場合および過度に高い場合は、パック化粧料中の他の成分との相溶性が低下して、パック化粧料が肌上で滑らかに伸びにくくなったり、剥がれ落ちやすくなったりすることがある。
【0019】
成分(c)として具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル等を例示できる。特に、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(化粧品成分表示名称:ステアレス)が好ましく、例えばステアレス-15(HLB14.2)やステアレス-20(HLB15.3)を用いることができる。
なお、HLBは、下記式で示されるグリフィン法によって求めることができる。
HLB=20×(親水基の分子量/全体の分子量)
【0020】
成分(c)の含有量は、パック化粧料の合計質量を100質量%としたとき、0.05~5質量%、好ましくは0.1~4.5質量%、より好ましくは0.3~4質量%である。成分(c)の含有量が少なすぎる場合は、洗い流しやすさが弱くなったり、また洗浄後の肌のすべすべ感も低下したりすることがある。成分(c)の含有量が多すぎる場合は、肌上での伸びの滑らかさや、肌上での剥がれ落ちにくさが低下することがある。
成分(c)として上記ノニオン性界面活性剤から選ばれる1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上のノニオン性界面活性剤を用いる場合は、その合計含有量が上記範囲内であればよい。
【0021】
〔成分(d):式(1)および式(2)で表される各単量体を含有する単量体混合物から得られた共重合体〕
本発明で用いられる成分(d)は、下記式(1)および式(2)で表される各単量体を含有する単量体混合物から得られた共重合体である。
【0022】
【化1】
【0023】
式(1)におけるRは水素原子またはメチル基を表し、安定性の高さの観点から、好ましくはメチル基である。nは1~4の整数であり、好ましくは2または3であり、入手のし易さから、より好ましくは2である。
式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体としては、好ましくは、Rがメチル基であり、nが2又は3(より好ましくは2)である化合物である。
式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、グリセロール-1-メタクリロイルオキシエチルウレタン、グリセロール-1-メタクリロイルオキシプロピルウレタン等が挙げられ、合成のし易さから、グリセロール-1-メタクリロイルオキシエチルウレタンが好ましい。
【0024】
【化2】
【0025】
式(2)におけるRは水素原子またはメチル基を表し、安定性の高さの観点から、好ましくはメチル基である。
は-C-、-C10-、-(C=O)-O-、-(C=O)-NH-、または-O-(C=O)-を表し、好ましくは-(C=O)-O-または-O-(C=O)-である。
は炭素数10~22のアルキル基を表す。Lで示される炭素数10~22のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよく、具体例としては、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、イコサニル基、イコセニル基、エイコサニル基、ヘンイコサニル基、ヘンエイコサニル基、ドコサニル基等が挙げられる。Lで示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは12~22であり、より好ましくは16~22である。
【0026】
式(2)で表される長鎖アルキル基含有単量体としては、好ましくは、Rがメチル基であり、Lが、-(C=O)-O-または-O-(C=O)-であり、Lが炭素数12~22(より好ましくは炭素数16~22)のアルキル基である化合物である。
式(2)で表される長鎖アルキル基含有単量体の具体例としては、例えば、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ドコサニル(メタ)アクリレート、デカン酸ビニル、ドデカン酸ビニル、ヘキサデカン酸ビニル、オクタデカンビニル、ドコサン酸ビニル等が挙げられ、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートまたはドコサニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0027】
成分(d)の共重合体を構成する単量体混合物における、式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体の含有割合は任意である。しかし、肌上での剥がれ落ちにくさや、伸びの滑らかさの観点からは、上記単量体混合物の合計量を100質量%としたとき、式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体の含有割合は、10~80モル%が好ましく、20~70モル%がより好ましい。
【0028】
成分(d)の共重合体を構成する単量体混合物における、式(2)で表される長鎖アルキル基含有単量体の含有割合は任意である。しかし、肌上での剥がれ落ちにくさの観点から、上記単量体混合物の合計量を100質量%としたとき、式(2)で表される長鎖アルキル基含有単量体の含有割合は、10~80モル%が好ましく、20~70モル%がより好ましい。
【0029】
成分(d)の共重合体を構成する単量体混合物は、式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体および式(2)で表される長鎖アルキル基含有単量体に加えて、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、これら以外の単量体を含んでもよい。しかし、上記単量体混合物における、式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体の含有割合と、式(2)で表される長鎖アルキル基含有単量体の含有割合との合計は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上が更に好ましく、100モル%であってもよい。
【0030】
成分(d)の共重合体の重量平均分子量は、肌上での剥がれ落ちにくさ、伸びの滑らかさの観点および配合のしやすさの点から、好ましくは5000~5000000の範囲であり、より好ましくは100000~2000000の範囲である。なお、本発明において「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるものをいう。
【0031】
成分(d)の共重合体としては市販品を使用することができる。当該市販品としては、例えば、日油株式会社製の「CERACUTE(登録商標)-F」、「CERACUTE(登録商標)-L」等が挙げられる。
【0032】
成分(d)の含有量は、パック化粧料の合計質量を100質量%としたとき、0.0005~0.25質量%、好ましくは0.001~0.2質量%、より好ましくは0.01~0.15質量%である。成分(d)の含有量が少なすぎる場合は、肌上での剥がれ落ちにくさ、洗い流しやすさが低下したり、洗浄後の肌のすべすべ感を与える効果が弱くなることがある。成分(d)の含有量が多すぎる場合は、肌上での伸びの滑らかさ、洗い流し挿すさが低下することがある。
成分(d)として上記共重合体から選ばれる1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の共重合体を用いる場合は、その合計含有量が上記範囲内であればよい。
【0033】
本発明のパック化粧料において、(d)成分に対する(b)成分の質量比〔(b)/(d)〕は1~200であり、好ましくは2~150、より好ましくは5~100である。当該質量比〔(b)/(d)〕が小さすぎると、肌上での伸びの滑らかさ、肌上での剥がれ落ちにくさが低下することがある。また当該質量比〔(b)/(d)〕が大きすぎると、洗い流し後のすべすべ感が弱まったり、また洗い流しやすさが低下したりすることがある。
【0034】
〔成分(e):プロテオグリカン〕
本発明のパック化粧料は、上述のとおり、粘土鉱物(a)、増粘性多糖類(b)、HLB13~16のノニオン性界面活性剤(c)および共重合体(d)を少なくとも含み、好ましくはプロテオグリカン(e)(以下、成分(e)と称呼する場合がある。)を更に含む。
【0035】
プロテオグリカンは、特殊な構造を有する糖とタンパク質との複合体であり、動物性および植物性のプロテオグリカンが存在する。
動物性のプロテオグリカンは、1個のコアタンパク質に、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸等のグリコサミノグリカンが複数本共有結合した糖タンパク質であり、細胞外マトリックスの一成分として、臓器、脳、皮膚、軟骨など体内に広く分布している。
植物性のプロテオグリカンは、アラビノガラクタンとコアタンパク質が一定の様式で結合したものであり、正式にはアラビノガラクタン-プロテイン(AGP)と呼ばれており、植物の細胞壁や樹液に細胞外マトリックスとして存在する。
【0036】
本発明において成分(e)として、動物性プロテオグリカン、植物性プロテオグリカンのいずれをも用いることができるが、製造コストや、近年の植物性原料が好まれる傾向等を考慮すると、植物性プロテオグリカンを用いることが好ましい。
植物性プロテオグリカンとしては、マメ科ネムノキ亜科のアカシア(Acacia)属に属するアラビアゴムノキ(Acacia senegal Willdenow)、またはその同属近縁植物から得られるアラビアゴムを原料とするものが好ましく用いられる。ここで、アラビアゴムは、前記植物の樹皮の傷口から滲出する分泌液を乾燥させたものである。
動物性プロテオグリカンと同等またはそれ以上の生理活性を有するものが得られることから、本発明の目的には、アラビアゴムノキ(Acacia senegal Willdenow)、またはそのセヤル種であるAcacia seyal Delileから得られるアラビアゴムを原料とするものがより好ましく、アラビアゴムノキ(Acacia senegal Willdenow)から得られるアラビアゴムを原料とするものがさらに好ましく用いられる。
本発明において成分(e)として好ましく用いられる植物性プロテオグリカンは、上記したアラビアゴムノキ等の植物から得たアラビアゴムから、主にアラビノガラクタンとグリコプロテインを除いた精製物として得られる。
【0037】
植物性プロテオグリカンは、重量平均分子量が900,000~3,500,000であるものが好ましく用いられ、1,000,000~3,000,000であるものがより好ましく用いられる。なお、本明細書において植物性プロテオグリカンの重量平均分子量は、多角度光散乱検出器および示差屈折率検出器をオンライン接続したサイズ排除クロマトグラフィーにより測定される。
また、植物性プロテオグリカンは、総アルデヒド含有量が0.005~2.0μmol当量/gであるものが好ましく用いられる。本明細書において総アルデヒド含有量は、アンプライト(Amplite)(商標)アルデヒド定量キット(比色)(Colorimetric Aldehyde Quantitation Kit)(製品番号:10051)(エイエイティー バイオクウェスト(AAT Bioquest)社製)等のアルデヒド定量キットにより測定される。
【0038】
本発明のパック化粧料が成分(e)を含有する場合、その含有量は、パック化粧料の合計質量を100質量%としたとき、好ましくは0.0001~0.1質量%、より好ましくは0.001~0.09質量%、さらに好ましくは0.01~0.08質量%である。成分(e)の含有量が少なすぎる場合は、肌上での剥がれ落ちにくさ、洗い流しやすさが低下したり、洗浄後の肌のすべすべ感を与える効果が弱くなったりすることがある。成分(e)の含有量が多すぎる場合は、肌上での伸びの滑らかさが低下することがある。
【0039】
本発明のパック化粧料は、成分(a)~成分(e)以外に、溶媒として精製水などの水を含有する。水の含有量は、パック化粧料の合計質量を100質量%としたとき、好ましくは50~90質量%であり、より好ましくは60~85質量%であり、更に好ましくは70~80質量%である。
【0040】
本発明のパック化粧料には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記の成分(a)~成分(e)および水以外に他の成分として添加剤を含有させることができる。
本発明のパック化粧料に含まれ得る添加剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、イソマルチトールなどの多価アルコール類;乳糖、果糖、ショ糖、マルトース、トレハロース、イソマルトオリゴ糖などの糖類;牛脂、豚脂などの天然油脂類;ミツロウ、カルナバロウなどのロウ類;高重合ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン誘導体;セラミド、コレステロール、タンパク誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、レシチンなどの油性基剤;アミドアミノ酸塩、アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、アルカノールアミドなどの非イオン性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどの陽イオン界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシドなどの半極性界面活性剤;ピロリドンカルボン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、食塩などの有機または無機塩類;pH調製剤としての酸およびアルカリ;殺菌剤;キレート剤;抗酸化剤;血行促進剤;紫外線吸収剤;紫外線散乱剤;動植物由来の天然エキス;アスコルビン酸およびその誘導体;アントシアニンなどのフラボノイド類およびその誘導体;ビタミン類;アミノ酸類;感光素;色素;顔料;香料などが挙げられる。
本発明のパック化粧料が他の成分を含有する場合、その含有量は、パック化粧料の合計質量を100質量%としたとき、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【実施例0041】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。なお、表1中の成分の割合は質量%であり、固形分または有効成分の換算量を表している。
【0042】
〔実施例1~5および比較例1~5〕
表1中の各成分を表1に示す組成にて精製水に添加し混合して、実施例および比較例のパック化粧料を調製し、下記の方法により評価を行った。
【0043】
表1中の成分(d)および成分(e)は下記のものを用いた。
〔成分(d)〕
共重合体1: 式(1)で表される単量体(Rはメチル基、n=2)と式(2)で表される単量体(Rはメチル基、Lは-(C=O)-O-およびLはオクタデシル基)を含有する単量体混合物から得られた二元共重合体であり、各単量体のモル比は式(1)で表される単量体:式(2)で表される単量体=6:4である。市販品として、「CERACUTE(登録商標)-L」(日油株式会社製、重量平均分子量5万)が挙げられる。
〔成分(e)〕
植物性プロテオグリカン(「プロテオグリカン(植物)」(日油株式会社製))(重量平均分子量=約1,200,000、総アルデヒド含有量=1.8μmol当量/g)
なお、成分(a)として配合されるベントナイトは水膨潤性粘土鉱物であり、カオリンおよび海シルトは非水膨潤性粘土鉱物である。
【0044】
<評価方法>
男女20名(25~45歳)をパネラーとし、得られたパック化粧料を顔に塗布し、塗布10分後に洗い流した。その際の(1)肌上での伸びの滑らかさ、(2)肌上での剥がれ落ちにくさ、(3)洗い流しやすさ、(4)洗浄後の肌のすべすべ感の各項目について評価を得た。その結果を表1に示す。下記に各評価項目の評価基準を示す。
【0045】
(1)肌上での伸びの滑らかさ
2点:伸びが滑らかであると感じた。
1点:伸びがやや滑らかであると感じた。
0点:伸びが滑らかでないと感じた。
20名の合計点を求め、以下のように判定した。

◎:合計点が35点以上であり、かつ0点と評価したパネラーが0人である。
(判定内容)滑らかに塗り伸ばしやすいパック化粧料である。
○:合計点が30点以上35点未満、または合計点が35点以上かつ0点と評価したパネラーが1人以上2人以下である。
(判定内容)やや滑らかに塗り伸ばしやすいパック化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満である。
(判定内容)やや滑らかに塗り伸ばしにくいパック化粧料である。
×:合計点が19点未満である。
(判定内容)滑らかに塗り伸ばしにくいパック化粧料である。
【0046】
(2)肌上での剥がれ落ちにくさ
2点:パック化粧料の乾燥時に指で触ると、泥が剥がれ落ちなかった。
1点:パック化粧料の乾燥時に指で触ると、泥がやや剥がれ落ちた。
0点:パック化粧料の乾燥時に指で触ると、泥がしっかりと剥がれ落ちた。
20名の合計点を求め、以下のように判定した。

◎:合計点が35点以上であり、かつ0点と評価したパネラーが0人である。
(判定内容)肌上で剥がれ落ちにくいパック化粧料である。
○:合計点が30点以上35点未満、または合計点が35点以上かつ0点と評価したパネラーが1人以上2人以下である。
(判定内容)ほとんど肌上で剥がれ落ちにくいパック化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満である。
(判定内容)肌上でやや剥がれ落ちやすいパック化粧料である。
×:合計点が19点未満である。
(判定内容)肌上で剥がれ落ちやすいパック化粧料である。
【0047】
(3)洗い流しやすさ
2点:シャワーを当てたとき、こすらずに洗い流せた。
1点:シャワーを当てたとき、少しだけこすると洗い流せた。
0点:シャワーを当てたとき、こすらないと洗い流せなかった。
20名の合計点を求め、以下のように判定した。

◎:合計点が35点以上であり、かつ0点と評価したパネラーが0人である。
(判定内容)洗い流し性に優れるパック化粧料である。
○:合計点が30点以上35点未満、または合計点が35点以上かつ0点と評価したパネラーが1人以上2人以下である。
(判定内容)洗い流し性にやや優れるパック化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満である。
(判定内容)洗い流し性がやや不足したパック化粧料である。
×:合計点が19点未満である。
(判定内容)洗い流し性が不足したパック化粧料である。
【0048】
(4)洗浄後の肌のすべすべ感
2点:洗浄後の肌がすべすべしていると感じた。
1点:洗浄後の肌がややすべすべしていると感じた。
0点:洗浄後の肌にすべすべ感が無かった。
20名の合計点を求め、以下のように判定した。

◎:合計点が35点以上であり、かつ0点と評価したパネラーが0人である。
(判定内容)非常に優れたすべすべ感が得られるパック化粧料である。
○:合計点が25点以上35点未満、または合計点が35点以上かつ0点と評価したパネラーが1人以上2人以下である。
(判定内容)優れたすべすべ感が得られるパック化粧料である。
△:合計点が15点以上25点未満である。
(判定内容)わずかにすべすべ感が得られるパック化粧料である。
×:合計点が15点未満である。
(判定内容)すべすべ感が十分に得られないパック化粧料である。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示される結果から明らかなように、実施例1~5のパック化粧料は、肌上で滑らかに伸ばすことができ、肌上で乾燥させた際には剥がれ落ちにくく、すすぎ時にはこすらずに洗い流すことができ、洗浄後の肌にすべすべ感を付与することができた。
【0051】
一方、比較例1~5のパック化粧料では、十分な性能は得られなかった。
比較例1では、成分(a)の配合量が少なかったために、肌上での伸びの滑らかさが低下し、洗浄後の肌のすべすべ感も低かった。
比較例2では、成分(b)が配合されなかったために、肌上での伸びの滑らかさ、剥がれ落ちにくさが低下した。
比較例3では、成分(c)が配合されなかったために、いずれの評価項目も評価が低かった。
比較例4では、成分(d)が配合されなかったために、肌上で剥がれ落ちやすく、また洗い流し効果も低下し、洗浄後の肌にすべすべ感を与える効果も得られなかった。
比較例5では、成分(b)と成分(d)の質量比〔(b)/(d)〕の値が高すぎるため、剥がれ落ちにくさが低下し、洗浄後の肌のすべすべ感も不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のパック化粧料は、日常的なスキンケア製品では除去し難い汚れを除去し、さらに整肌効果を得ることを目的に顔面や身体等に施すパックとして使用することができ、例えば、顔面や身体に塗布し、乾燥後に洗い流す泥パックとして使用することができる。本発明のパック化粧料は、肌上で滑らかに伸ばすことができ、洗浄後の肌にすべすべ感を付与し得るだけでなく、乾燥させた際には剥がれ落ちにくく、こすらずに洗い流すことができるので、朝洗顔としてアウトバスで好適に使用することができる。