(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131073
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20230913BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230913BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
H02J13/00 301K
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022052550
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】522121724
【氏名又は名称】蜷川 忠三
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 忠三
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC09
5G064BA02
5G064CB08
5G064DA03
5G066AA03
5G066AE04
5G066AE07
5G066AE09
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、配電系統の電圧分布およ時間変化を使用者に一目で直感的に状況変化把握できる配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法を提供することである。
【解決手段】対象とする配電系統線路を街区モデルとともに3次元画像で示す背景とし、配電系統各ノードの現在電圧と基準電圧の差を3次元空間の高さ方向で示すことにより、隣り合うノード間の電圧勾配を垂直台形面で表現し、その台形を系統全体で接続して屏風状に電圧空間分布を表示して、電圧変化に合わせて各垂直台形の高さを変化させていくことにより、配電系統電圧分布を時間変化を持って3次元空間上に3Dアニメーションとして直感的を示すことを特徴とする配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法であって、
3次元空間に配電系統線路と注目物件を合わせて表示した画像を背景にして、
配電系統各ノードにおいて基準値と現在値の電圧偏差値に比例した垂直線分を作り、
各ノード垂直線分を左右辺とする垂直台形面を形成させ、それらを各ノード垂直線で接続することで系統全体線路に沿って立つ屏風状の垂直連接台形面群を3次元画像として形成し、
系統状態の時間変化に対応するように、上記垂直連接台形面群の各ノード垂直線分の高さを変化させることにより、
系統電圧全体にわたる系統電圧の空間分布と時間変化を直感的に表示させるようにコンピュータグラフィックスで生成するアニメーション画面を特徴とする配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法。
【請求項2】
前記画面上で、任意のノード点を指定操作することにより、
当該ノード上に垂直線とその頂部に系統連系されている機器の定格皮相電力を半径とする円盤画像をポップアップ生成させ、
円盤上に当該機器の現在連系電力変化に応じて有効・無効電力ベクトルの長さを変化させてアニメーション表示することを特徴とする請求項1に記載の配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統における電圧電圧制御に関する、制御システムの研究、技術者教育、および実システム運用のために使用する配電系統シミュレータ用において、系統電圧空間分布および時間変化を使用者が直感的イメージできる画面表示方法に係る。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電やEV急速充電スタンド等の分散型電源の連携拡大により、高圧(6.6kV)系統電圧の分布が複雑化している。これら分散型電源が及ぼす影響及び対策を検討するため系統状態をコンピュータ解析することが行われてきた。配電系統の電圧管理における制御アルゴリズム研究開発や教育訓練に用いるためのシミュレータシステムが知られている。通常、このシミュレータには配電系統を抽象化した系統モデル上の高圧(6.6kV)配線への各接続点(ノード)における系統電圧変化を表示する機能が備えられている。
【0003】
まず従来技術の配電系統シミュレータの系統電圧示方法を挙げる。まず初歩的な方法として、配電系統ノードを行として各ノードを列として電圧値をエクセルシートのように示す、いわば数表表示方法があった(
図0に例示する)。次に、各ノード毎に電圧値を示すメータ状グラフィックスおよび電圧変化を時系列グラフで示す、いわばメータ表示方法があった(
図0に例示する)。さらには、配電系統線路を模した2次元線図の各ノード近傍に電圧の数値表示窓を配置した、いわば2次元表示方法があった(
図0に例示する)。
【0004】
ここで、前段落で挙げた過去の電圧表示方法の問題点について述べる。これらの方法、すなわち、数表方法、メータ表示方法、および2次元表示方法に共通する特徴は、各ノード毎に独立して電圧値を表示している点である。これら従来方法では、個々のノード電圧値を数値で正確に表示できる長所があるものの、使用者が系統全体にわたる電圧分布およびその時間変化を瞬時に直感的に理解することが困難であった。熟練した使用者であれば多数のノードの数値を眺めていくだけで系統全体状況がある程度把握できるであろう。
【0005】
従来の配電系統とは異なり、今後の配電系統は分散電源が大量導入された複雑な電力潮流から構成される。したがって今後は、いかに熟練した使用者であっても、これら数表方法やメータ表示方法では、使用者の頭の中で系統全体にわたるの電圧分布と時間変化の双方を結合、構築して系統状況をイメージとして理解するのが困難となってくる。ましてや、制御システム研究者や教育受講者では、瞬時に系統状態をイメージすることは不可能である。
【0006】
これらの従来技術の問題点を解決しようとして、3D画面状に電圧分布を画像表示する方法が考案されている(特許文献1)。しかし、この表示方法では各ノード位置に円柱画像を建てるが、それらを頂上高さを接続する線分画像がないので、個々の円柱画像が垂直方向に伸び縮みして変化してとしても、系統全体の電圧分布形状を直感的に把握には不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、分散電源等を含む複雑な配電系統における系統電圧の全体分布および時間変化を使用者に一目で直感的に状況変化把握できる配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の手段を以下に述べる。まず、本発明の配電系統シミュレータ電圧分布表示画面の全体概念図を
図1に示す。その概念図に沿って、以下、本発明における課題解決の手段を述べる。
【0010】
手段1:配電系統モデルの配電線形状が実システムを想起するに十分な抽象度をもって3D俯瞰した配電系統モデル画像を背景とする。その配電系統モデル画像の各ノードに、そこに接続されている高圧需要家、EV充電スタンド、太陽光発電所、電力蓄電池の3Dアイコン画像を配置する。そして、各ノード系統電圧を3D俯瞰モデル空間の垂直方向に電圧変化分を高さを表示することにより、系統電圧が変電所から幹線、分岐線の全域にわたりどのように分布しているかを、屏風のような壁状の画像として示す。そして、分刻みといった時間粒度でEV充電スタンド、太陽光発電所、電力蓄電池などの充放電が変化した場合、上記系統電圧屏風の壁高さの変化として電圧分布の時間変化を3Dアニメーションの動きで表現し、系統全体の電圧分布を画像変化として表現する。
【0011】
手段2:逆に、個々のノードの系統連系電力を詳細にかつ変化を直感的に表示するニーズに対しては、3D電圧分布を示す屏風状の画像における各ノード点に電力ベクトルを円盤上に表示可能とする。この電力ベクトル円盤画像は、注目しているノードだけ必要なときだけそのノード点を指定してポップアップ表示させる。表示された円盤は半径を定格皮相電力として有効電力と無効電力をベクトル成分として、現在値に比例した長さとして時間変化を表示させる。
【発明の効果】
【0012】
この電圧分布の3Dアニメーション屏風方法により、配電系統各ノードの時々刻々電圧変化をいちいち個別メータと時系列グラフから使用者が頭の中でイメージ組み立てることなく、直感的に瞬時にイメージを把握することを可能とできた。
【0013】
さらに、各ノードの系統連系電力を有効・無効電力ベクトルとしてメータ表示できるので、特定のノードの系統電圧を作り出している状態を詳細に把握することも可能である。すなわち、配電系統全体の電圧分布と時間変化を俯瞰できるのみならず、特定のノードにおける系統連系状態である有効・無効電力の時間変化も詳細に時々刻々示すことができる。つまり、配電系統全体の電圧分布を大局的に表示できるのならず、使用者が注目する特定ノードの系統連系状態を局所的に表示することもできるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法の全体概念図である。
【
図2】
図2は本発明の配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法の背景画面である。
【
図3】
図3は本発明の配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法の対象設備画像である。
【
図4】
図4は本発明の配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法の電力ベクトル画像である。
【
図5】
図5は本発明の配電系統シミュレータ3D電圧分布表示方法のアニメーション説明図である。
【
図6】
図6は従来技術の配電系統シミュレータ電圧分布の数表表示方法である。
【
図7】
図7は従来技術の配電系統シミュレータ電圧分布のメータ表示方法である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について適宜図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の全体概念を示す図である。本発明の具体的実施例としては、近い将来の分散電源、すなわち、太陽光発電所、EVスタンド、電力蓄電池が大量導入された配電系統を想定する。電力分野では、6.6kVの高圧系統を配電線、そこから柱上トランスを介して低圧需要家に配るのを引き込み線と呼ばれる。ここでは、高圧系統のみを説明に用いる。配電系統の想定としては、都市部の典型的な規模、すなわち、10MVA程度で幹線亘長が数km程度の配電系統線路を仮定して実施形態を説明する。
【0017】
まず、
図2を用いて、この配電系統の背景画像0の表示について説明する。実際の配電系統線路1の幾何学形状を模して、あるいは必要な程度に抽象化して、幹線と分岐線からなる分岐形状、および、各ノードを3次元空間の平面に描画させる。ここで、ノード2とは、分散電源や高圧需要家が高圧配電系統に接続する点の意味であり、同時にそこが分岐点となる場合もある。ここの説明では、ノードは高圧のみを意味しており、引き込み線からの低圧需要家への接続点は画面表示を省略するものとする。その理由は、配電系統の維持管理や全体制御は、高圧系統が中心でありシミュレータの主な目的からして低圧引き込み線という末端動作までは取り扱わないという配電系統シミュレータを前提としているからである。
【0018】
次に、
図3を用いて、配電系統の3次元空間中の平面表示画像の上に、主な分散電源や高圧需要家や当該地域の特徴物件を画像表示する実施形態を述べる。配電系統の線路上に、当該ノードに接続されていて、かつ配電系統電圧分布に大きな影響を与える主要な分散電源や高圧需要家を3次元アイコン画像でしめす。アイコンといっても、配電変電所3、太陽光発電所4、EVスタンド4、電力蓄電池6、高圧需要家7といった種別が一目でわかるように3次元のリアルな画像を作るものとする。これにより、ユーザが一瞬にしてそのノードがどんな系統連系特性を有するのかを直感的に分かるようにする。
【0019】
ここで、一旦、従来の配電系統の電圧分布表示方法について、図を用いて実施形態を説明したのちに、本発明の実施形態の説明に移ることとする。
【0020】
従来のもっとも単純な表示方法として、
図6に示すような数表14により列方向に各ノード、行方向の時刻の順に電圧値を配置表示する例があった。この数値は各ノードのある時刻における電圧値を表すが、全体の電圧分布やその時間変化を直感的にイメージすることが困難である。
【0021】
また、
図7に示すような、配電系統の電圧分布を表示する際、各ノード毎に独立して、メータ画像15で現在電圧値を、時系列グラフ16で時間変化を表示する方法が一般的であった。これも、個々のノード状況は把握できるが、配電系統全体の電圧分布を直感的に俯瞰することが困難であった。
【0022】
ここで、
図1にもどって、本発明の手段1に対応する、各ノードの系統連系電圧の高さを3次元アニメーション画像を表示する実施形態例を述べる。上述のように典型的な都市部の配電系統の高圧配電線では、高圧ノードが数十か所あることが普通である。そこで、本発明の本実施形態では、数十もの個々のノード別に電圧値を数値表示するのではなく、3Dアニメーションの画像の動きにより配電系統の数十ノード全体の電圧分布を直感的に俯瞰できる実施形態とする。
【0023】
図1に示すように、各ノード2の配電系統上の地点から3次元空間高さ方向に垂直線分画像11を付加する。その際、この線分の長さを現在電圧に比例した長さとすることが基本である。この際、現在電圧の値そのものを高さに割り付けると表示としては使用者が分かりにくくなる。それは、一般に、電圧変化量は定格電圧に対して数パーセントと小さいからである。そこで、本実施形態では、電圧管理基準値(上限値、下限値)から現在値の差分(偏差という)電圧値に対応する垂直線分高さとして表示する。こうすることで、各ノードの垂直線分が電圧の時間変化とともに伸び縮みするので、基準値に対して近づいているかどうかが直感的に瞬時に把握できる。
【0024】
次に、
図1に示すように、
図2に示した背景画像0の各ノード点に、上記の垂直線分画像11を全て立てるように配置する。そして、隣り合うノード間2において、垂直線分を左右辺を平行辺とする台形画像12を構成させる。この台形画像はコンピュータグラフィックで生成するが、その際、半透明で背景とは異なる色をつけることで、台形の存在を示すと同時に背景を視認できるようにする。
【0025】
図1に示すように、それらの垂直な台形画像12を全て左右接続することで、背景平面上に立つ、垂直台形画像群が構成される。これで、本発明の本実施形態における主要な3Dアニメーション画像を構成できたことになる。この形状は、あたかも、日本家具の衝立てである屏風のような形の屏風状電圧分布画像10ができる。以後、「屏風状」という用語で説明を簡素にする。
【0026】
このように、屏風状電圧分布画像10を3Dアニメーションで作ることで、屏風の連結点の垂直線分がそのノードの現在電圧偏差を表す。したがって、配電系統シミュレータが、たとえば秒単位で系統電圧を計算してこの表示画面に表せば、系統全体の電圧分布の時間変化がアニメーションの動きとして直感的に俯瞰できるよう動的な表示ができるようになる。
【0027】
次に、手段2に対応する、各ノードの系統連系状態としての有効・無効電力表示の実施形態について述べる。
【0028】
本配電系統シミュレータの使用者が、ある特定のノードにおける系統連系状態を詳細に知りたい場合がある。
図4に示すように、当該注目ノードを指定することで、ノードの上方に円板状の電力ベクトル表示8をポップアップ表示する。この円板画像の半径は当該ノード機器の定格皮相電力に対応させて大きさの画像とする。その円板上に、有効電力と無効電力をベクトル成分としてその現在値に対応させて表示する。これにより、定格皮相電力半径に対して相対的に有効電力と無効電力の現在状態を直感的に把握できる。
【0029】
この電圧分布の3Dアニメーション屏風方法により、配電系統各ノードの時々刻々電圧変化をいちいち個別メータと時系列グラフから使用者が頭の中でイメージ組み立てることなく、直感的に瞬時にイメージを把握することを可能とできた。
【0030】
以上説明した実施形態では、商用電力網の配電系統シミュレータに適用した例を説明したが、常時あるいは臨時に独立した配電系統となる、いわゆるマイクログリッドのシミュレータに適用することもできる。さらに、配電系統のみならず広域の送電系統シミュレータや、他の用途のシステムにおいて用いられるものに、あるシステムの物理量分布と時間変動をあつかうシミュレータの表示画面において、3次元空間配置を示す背景画面上にその物理量の数値を高さとして屏風状3Dアニメーション表示方法を適用することもできる。
【符号の説明】
【0031】
0:背景画像、1:配電系統線路、2:ノード、3:配電変電所、4:太陽光発電所、5:EVスタンド、6:電力蓄電池、7:高圧需要家、8:電力ベクトル表示、10:屏風状電圧分布画像、11:垂直線分画像、12:台形画像、13:アニメーション画像、14:数表表示、15:メータ表示、16:時系列表示