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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131081
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】回転角度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
G01D5/245 110W
G01D5/245 110L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083918
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2022035402
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】ニデックコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 竜樹
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077CC02
2F077DD05
2F077JJ03
2F077JJ07
2F077JJ23
2F077UU12
2F077VV02
(57)【要約】
【課題】 磁気を検出し易い構成で、回転角度を検出する回転角度検出装置を提供することにある。
【解決手段】 回転角度検出装置10は、回転軸1と、回転軸1の回転に対応するように、回転軸1の軸方向に、回転軸1と相対的に移動する磁石2と、磁石2による磁界を伝達する磁性体3と、磁性体3の第1端部に設けられ、磁性体3により伝達された磁界の強さを検出する磁気センサ4と、磁気センサ4により検出された磁界の強さに基づいて、回転軸1の回転角度を検出する回転角度検出手段とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の回転に対応するように、前記回転軸の軸方向に、前記回転軸と相対的に移動する磁石と、
前記磁石による磁界を伝達する磁性体と、
前記磁性体の第1端部に設けられ、前記磁性体により伝達された前記磁界の強さを検出する第1磁気センサと、
前記第1磁気センサにより検出された前記磁界の強さに基づいて、前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出手段と
を備えることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
前記第1磁気センサが前記磁界を検出し易くするように、前記第1磁気センサの前記磁性体と反対側に設けられる第1端部側磁性体
を備えることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記磁性体の前記第1端部と反対側の第2端部に設けられ、前記磁性体により伝達された前記磁界の強さを検出する第2磁気センサを備え、
前記回転角度検出手段は、前記第2磁気センサにより検出された前記磁界の強さに基づいて、前記回転軸の回転角度を検出すること
を特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
前記第1磁気センサが前記磁界を検出し易くするように、前記第1磁気センサの前記磁性体と反対側に設けられる第1端部側磁性体と、
前記第2磁気センサが前記磁界を検出し易くするように、前記第2磁気センサの前記磁性体と反対側に設けられる第2端部側磁性体と
を備えることを特徴とする請求項3に記載の回転角度検出装置。
【請求項5】
前記磁石は、N極とS極が前記軸方向に並ぶように配置されること
を特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項6】
前記磁石は、N極とS極が前記軸方向と垂直に並ぶように配置されること
を特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項7】
前記回転軸は、前記回転軸の回転により、前記磁石が前記回転軸と相対的に移動するように雄ネジが形成された部分を含むこと
を特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項8】
前記磁石が設けられ、前記磁性体が貫通して前記軸方向に摺動する穴が設けられた磁石ホルダ
を備えることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項9】
前記回転軸は、前記回転軸の回転により、前記磁石が前記回転軸と相対的に移動するように雄ネジが形成された部分を含み、
前記磁石ホルダは、前記回転軸の前記雄ネジと嵌合する雌ネジが形成された部分を含むこと
を特徴とする請求項8に記載の回転角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転角度を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、磁気を利用して、多回転の回転角度を検出することが行われている。例えば、多回転を高分解能かつ非接触で検出するシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6359237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁気を利用して、回転角度を検出する場合、回転角度の検出精度を向上させるために、磁気の検出精度が高い磁気センサを要求されることが多い。
本実施形態は、磁気を検出し易い構成で、回転角度を検出する回転角度検出装置を提供することにある。
【発明の効果】
【0005】
実施形態によれば、磁気を検出し易い構成で、回転角度を検出する回転角度検出装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の回転角度検出装置は、回転軸と、前記回転軸の回転に対応するように、前記回転軸の軸方向に、前記回転軸と相対的に移動する磁石と、前記磁石による磁界を伝達する磁性体と、前記磁性体の第1端部に設けられ、前記磁性体により伝達された前記磁界の強さを検出する第1磁気センサと、前記第1磁気センサにより検出された前記磁界の強さに基づいて、前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る回転角度検出装置の構成を示す構成図。
図2】第1実施形態に係る磁石がネジ部分の先端にある状態の磁界を表すイメージ図。
図3】第1実施形態に係る磁石がネジ部分の中間にある状態の磁界を表すイメージ図。
図4】第1実施形態に係る磁石がネジ部分の後端にある状態の磁界を表すイメージ図。
図5】第1実施形態に係る磁石の位置と磁気センサの出力電圧との関係を示すグラフ図。
図6】第1実施形態の変形例に係る回転角度検出装置の構成を示す構成図。
図7】第1実施形態の変形例に係る磁石による磁界を表すイメージ図。
図8】本発明の第2実施形態に係る回転角度検出装置の構成を示す構成図。
図9】本発明の第3実施形態に係る回転角度検出装置の構成を示す構成図。
図10】第3実施形態に係る磁石がネジ部分の先端にある状態の磁界を表すイメージ図。
図11】第3実施形態に係る磁石がネジ部分の中間にある状態の磁界を表すイメージ図。
図12】第3実施形態に係る磁石がネジ部分の後端にある状態の磁界を表すイメージ図。
図13】第3実施形態に係る磁石の位置と2つの磁気センサ出力電圧との関係を示すグラフ図。
図14】第3実施形態に係る2つの素子の出力特性を示すイメージ図。
図15】第3実施形態の第1変形例に係る回転角度検出装置の構成を示す構成図。
図16】第3実施形態の第2変形例に係る回転角度検出装置の構成を示す構成図。
図17】本発明の第3実施形態の第3変形例に係る回転角度検出装置の構成を示す構成図。
図18】本発明の第4実施形態に係る回転角度検出装置の主要部分の構成を示す構成図。
図19】第4実施形態に係る磁石ホルダを後端側磁気センサ側から見た側面図。
図20】第4実施形態の変形例に係る磁石ホルダの構成を示す後端側磁気センサ側から見た側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る回転角度検出装置10の構成を示す構成図である。図面における同一部分には、同一符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0009】
回転角度検出装置10は、回転軸1、磁石2、磁性体3、磁気センサ4、及び、演算処理部20を備える。回転角度検出装置10は、多回転(少なくとも1回転以上)する回転軸1の回転した角度を検出する装置である。回転角度検出装置10の形状及び構成は、ここで説明するものに限らない。例えば、回転角度検出装置10は、適用される装置に適合するように任意に変更することができる。また、回転角度検出装置10の一部又は全部を覆うようにハウジングが設けられてもよい。回転角度検出装置10は、様々な装置の部品として主に用いられるが、単独で用いられてもよい。
【0010】
回転軸1は、回転角度検出装置10による回転角度を検出する対象の部品である。回転軸1は、どのような動力源で回転してもよい。例えば、回転軸1は、手動、機械的又は電気的(モータ等)に動作してもよい。回転軸1は、本体部分11及びネジ部分12を備える。本体部分11は、円柱形状であり、回転するための動力を受ける部分である。ネジ部分12は、本体部分11の円形の平面の中心部分から突き出るように設けられる。ネジ部分12は、円柱の棒形状であり、側面(曲面)にネジS1が形成された部分である。ネジ部分12は、側面に形成されたネジS1と磁石2に形成されたネジS2を嵌合するように配置される。
【0011】
磁石2は、永久磁石である。磁石2は、磁性体3に近接し、可動するように回転軸1のネジ部分12に設けられる。磁石2の回転軸1側には、ネジS2が形成される。磁石2のネジS2は、回転軸1のネジS1に嵌合する。これにより、磁石2は、回転軸1の回転に対応するように、回転軸1の軸方向(回転軸方向)に直線的に移動する。したがって、磁石2は、移動距離が回転軸1の回転角度と比例するように、回転軸1と相対的に移動する。
【0012】
磁石2は、N極とS極が回転軸方向に並ぶように配置される。換言すると、磁石2の内部に発生する反磁界の磁束が回転軸方向になるように配置される。具体的には、磁石2のN極が回転軸方向の先端側(本体部分11と反対側)に位置し、磁石2のS極が回転軸方向の後端側(本体部分11側)に位置する。なお、磁石2のN極とS極の位置は、入れ替えてもよい。
【0013】
磁性体3は、磁石2で発生する磁界を集めて(集磁作用)、磁気センサ4に伝達する物質である。例えば、磁性体3は、パーマロイである。パーマロイは、ニッケルと鉄を主成分とした高透磁率の金属材料であり、ニッケルの含有率は、35~80%である。なお、磁性体3は、透磁率が高い材質が望ましいが、磁石2で発生する磁界を磁気センサ4に伝達し、磁気センサ4がその磁界による磁気を検出できれば、どのような物質でもよい。磁性体3の透磁率を高くすることで、漏れ磁束を少なくし、磁気センサ4に伝達される磁界を強くすることができる。
【0014】
磁性体3は、磁石2を介して、回転軸1のネジ部分12と隣接するように設けられる。磁性体3は、回転軸方向を長手方向とする直方体である。磁性体3の回転軸方向の長さは、磁石2の可動領域に合わせて決定される。具体的には、磁石2が任意に移動した位置で、磁石2による磁気が磁性体3を介して磁気センサ4に伝達されるように、磁性体3の長さが決定される。例えば、磁石2が任意の位置に移動しても、磁石2の少なくとも一部が磁性体3と回転軸1のネジ部分12との間に位置するように構成される。但し、磁石2がネジ部分12の先端付近又は後端(本体部分11との接続箇所)付近では、磁石2が磁性体3と回転軸1のネジ部分12との間に位置していなくてもよい。
【0015】
磁気センサ4は、磁性体3の回転軸方向の先端側の端部に設けられる。磁気センサ4は、主に回転軸方向(図1では、左右方向)の磁束を検出する。なお、磁気センサ4は、磁性体3の後端側の端部に設けられてもよい。磁気センサ4は、磁石2により発生し、磁性体3により集磁された磁界の強さを検出する。例えば、磁気センサ4は、ホール素子である。ホール素子は、ホール効果を利用して、磁界の強さを電圧(電気信号)に変換して出力する。
【0016】
演算処理部20は、磁気センサ4と電気的に接続される。演算処理部20は、磁気センサ4により検出される磁界の強さを示す検出信号を受信する。演算処理部20は、予め決められた演算式(関数等)を用いて、磁気センサ4により検出される磁界の強さに基づいて、回転軸1の回転角度を演算する。演算処理部20は、演算した回転角度を回転角度検出装置10の検出結果として出力する。演算処理部20は、マイクロコンピュータ等のコンピュータである。コンピュータは、1つに限らず、複数設けてもよい。例えば、メインで使用するコンピュータの他に、このコンピュータを補助するための外付け型のマイクロコンピュータを設けてもよい。演算処理部20は、プログラム等により実行される演算処理により、各種機能を実現する。
【0017】
例えば、磁気センサ4により検出される磁界の強さと回転軸1の回転角度との相関関係を把握するためのシミュレーション又はテスト等が行われる。把握された相関関係に基づいて、演算処理部20で用いられる回転軸1の回転角度を求める演算式等が決定される。
【0018】
図2図5を参照して、磁石2の位置と磁気センサ4により検出される磁界の強さとの関係について説明する。図2は、磁石2がネジ部分12の先端にある状態の磁界を表すイメージ図である。図3は、磁石2がネジ部分12の中間にある状態の磁界を表すイメージ図である。図4は、磁石2がネジ部分12の後端にある状態の磁界を表すイメージ図である。図5は、磁石2の位置と磁気センサ4の出力電圧V1との関係を示すグラフ図である。図5の横軸において、「左」は、磁石2がネジ部分12の先端に最も接近した位置を示し、「右」は、磁石2がネジ部分12の先端から最も離れた位置を示す。
【0019】
図2に示すように、磁石2がネジ部分12の先端にあるとき、磁石2は、磁気センサ4に最も接近する。この状態のときに、磁気センサ4は、磁石2による磁界を最も強く受ける。
【0020】
図3に示すように、磁石2がネジ部分12の中間にあるとき、磁石2は、図2に示す状態よりも磁気センサ4から離れ、図4に示す状態よりも磁気センサ4に接近している。この状態のときに、磁気センサ4は、図2に示す状態より弱く磁界を受け、図4に示す状態よりも強く磁界を受ける。
【0021】
図4に示すように、磁石2がネジ部分12の後端にあるとき、磁石2は、磁気センサ4から最も離れる。この状態のときに、磁気センサ4は、磁石2による磁界を最も弱く受ける。
【0022】
上述のことから、磁気センサ4は、磁石2がネジ部分12の先端に近いほど、強い磁界を受ける。また、磁気センサ4は、受ける磁界の強さが大きいほど、出力電圧V1が高くなる。したがって、磁石2の位置と磁気センサ4の出力電圧V1との関係は、図5に示すようになる。磁石2がネジ部分12の先端に近付くにつれて、急激に上昇する曲線を描くように出力電圧V1が高くなる。
【0023】
ここで、磁気センサ4により検出される磁界は、回転軸1の回転角度に比例して直線的に変化することが望ましい。しかし、実際には、漏れ磁束が多いため、このような線形の変化にはならない。このため、磁気センサ4の検出信号を補正する機能を設けて、回転軸1の回転角度を求め易くしてもよい。また、回転軸1の1回転毎の回転角度(0~360度の範囲)を検出する角度センサを追加して設け、この角度センサに基づいて、磁気センサ4による検出結果を補正してもよい。さらに、磁気センサ4の出力電圧V1は、温度変化によるオフセットをしてもよいし、演算処理部20に予め設定された温度補正テーブルに従って補正をしてもよい。
【0024】
回転軸1が初期状態のとき、磁石2は、ネジ部分12の後端に位置し、回転軸1の回転角度は0度(0回転)とする。磁石2がネジ部分12の先端に近付くにつれて、回転軸1の回転角度が増加し、磁気センサ4の出力電圧V1が上昇する。磁石2がネジ部分12の先端に到達すると、回転軸1の回転角度が最大値を示し、磁気センサ4の出力電圧V1が最大値となる。なお、回転軸1が初期状態では、磁石2は、ネジ部分12の先端に位置するようにしてもよい。この場合、磁石2がネジ部分12の後端に到達すると、回転軸1の回転角度が最大値を示し、磁気センサ4の出力電圧V1が最小値となる。
【0025】
図6は、本実施形態の変形例の回転角度検出装置10aの構成を示す構成図である。
回転角度検出装置10aは、図1に示す回転角度検出装置10において、磁石2を磁石2aに替えたものである。
【0026】
磁石2aは、N極とS極が回転軸方向と垂直に並ぶように配置される。換言すると、磁石2aの内部に発生する反磁界の磁束が回転軸方向と垂直になるように配置される。具体的には、磁石2aのN極が回転軸方向に垂直な方向の磁性体3側に位置し、磁石2aのS極が回転軸方向に垂直な方向の回転軸1側に位置する。磁石2aの磁界は、図7に示すようになる。なお、磁石2aのN極とS極の位置は、入れ替えてもよい。
【0027】
このような変形例についても、磁石2aがネジ部分12の先端に近付くにつれて、出力電圧V1が高くなる。したがって、本変形例による回転角度検出装置10aは、本実施形態に係る回転角度検出装置10と同様に構成することができる。
【0028】
本実施形態によれば、磁性体3を介して、移動する磁石2の磁界を磁気センサ4に伝達することで、磁石2の磁界を磁気センサ4に確実に伝達することができる。これにより、磁気センサ4により検出された磁界の強さに基づいて、回転軸1の回転角度を求めることができる。例えば、磁石2の磁界が磁気センサ4に伝達し易い構成にすることで、磁気センサ4は、磁界を検出するために、高精度なセンサを採用する必要がなく、安価なセンサを採用することができる。
【0029】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係る回転角度検出装置10Aの構成を示す構成図である。
回転角度検出装置10Aは、図1に示す第1実施形態に係る回転角度検出装置10において、先端側磁性体5を追加したものである。その他の点は、第1実施形態に係る回転角度検出装置10と同様である。
【0030】
先端側磁性体5は、磁気センサ4の先端側に設けられる。先端側磁性体5の材質は、磁性体3と同様に、高い透磁率の材質が望ましく、パーマロイ等である。先端側磁性体5は、磁性体3と同じ材質でなくてもよい。例えば、先端側磁性体5を磁性体3よりも透磁率を高くしてもよいし、先端側磁性体5を磁性体3よりも透磁率を低くしてもよい。先端側磁性体5又は磁性体3の少なくとも1つに、透磁率の低い材質を採用することで、製造コストを抑制してもよい。
【0031】
先端側磁性体5を設けることで、磁気センサ4は、先端側磁性体5と磁気センサ4の後端側に設けられた磁性体3で挟まれた状態になる。磁石2により発生した磁束は、磁性体3から磁気センサ4に入り、磁気センサ4を通り抜けた磁束は、先端側磁性体5から外部に出る。即ち、先端側磁性体5は、磁気センサ4を通り抜けた磁束の出口としての役割を持つ。これにより、磁性体3は、磁石2による磁界を磁気センサ4に伝達するための主要な役割を持ち、先端側磁性体5は、磁石2による磁界を磁気センサ4に伝達するための補助的な役割を持つ。
【0032】
本実施形態によれば、第1実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。磁気センサ4の先端側に先端側磁性体5を設けることで、磁気センサ4を2つの磁性体3,5で挟む構成にすることができる。磁気センサ4を貫通する磁束の通り道の入口と出口に磁性体3,5を設けることで、第1実施形態よりも、磁束が磁気センサ4を通り抜け易くなる。
【0033】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係る回転角度検出装置10Bの構成を示す構成図である。
回転角度検出装置10Bは、図8に示す第2実施形態に係る回転角度検出装置10Aにおいて、後端側磁気センサ6及び後端側磁性体7を追加し、演算処理部20を演算処理部20Bに代えたものである。その他の点は、第2実施形態に係る回転角度検出装置10Aと同様である。
【0034】
後端側磁気センサ6は、磁性体3の後端側の端部に設けられる。後端側磁気センサ6は、磁性体3の先端側に設けられた磁気センサ(先端側磁気センサ)4と設けられた位置が異なる点以外は、同様である。
【0035】
後端側磁性体7は、後端側磁気センサ6の後端側に設けられる。後端側磁性体7は、先端側磁性体5と設けられた位置が異なる点以外は、同様である。
【0036】
演算処理部20Bは、後端側磁気センサ6の出力電圧V2の極性が先端側磁気センサ4の出力電圧V1の極性と反対になるように、先端側磁気センサ4及び後端側磁気センサ6と電気的に接続される。演算処理部20Bは、2つの磁気センサ4,6により検出される磁界の強さに基づいて、回転角度を演算する。その他の点については、演算処理部20Bは、第1実施形態に係る演算処理部20と同様である。
【0037】
図10図13を参照して、磁石2の位置と磁気センサ4,6により検出される磁界の強さとの関係について説明する。図10は、磁石2がネジ部分12の先端にある状態の磁界を表すイメージ図である。図11は、磁石2がネジ部分12の中間にある状態の磁界を表すイメージ図である。図12は、磁石2がネジ部分12の後端にある状態の磁界を表すイメージ図である。図13は、磁石2の位置と2つの磁気センサ4,6の出力電圧V1,V2との関係を示すグラフ図である。図13の横軸において、「左」は、磁石2がネジ部分12の先端に最も接近した位置を示し、「右」は、磁石2がネジ部分12の先端から最も離れた位置を示す。
【0038】
先端側磁気センサ4については、第1実施形態で、図2図4を参照して説明した状態と同様であるため、以下では、後端側磁気センサ6について、主に説明する。
【0039】
図10に示すように、磁石2がネジ部分12の先端にあるとき、磁石2は、後端側磁気センサ6から最も離れる。この状態のときに、後端側磁気センサ6は、磁石2による磁界を最も弱く受ける。
【0040】
図11に示すように、磁石2がネジ部分12の中間にあるとき、磁石2は、先端側磁気センサ4と後端側磁気センサ6から等距離に位置している。この状態のときに、2つの磁気センサ4,6は、磁石2による磁界を同程度の強さで受ける。また、後端側磁気センサ6は、図10に示す状態より強く磁界を受ける。
【0041】
図12に示すように、磁石2がネジ部分12の後端にあるとき、磁石2は、後端側磁気センサ6に最も接近する。この状態のときに、後端側磁気センサ6は、磁石2による磁界を最も強く受ける。
【0042】
図13に示す先端側磁気センサ4の出力電圧V1は、第1の実施形態に係る図5の出力電圧V1と同じである。上述のことから、後端側磁気センサ6の出力電圧V2は、先端側磁気センサ4の出力電圧V1と左右反転させた電圧になる。また、後端側磁気センサ6の出力電圧V2は、先端側磁気センサ4の出力電圧V1と極性が反対であるため、図13に示すように、極性を反転させた電圧になる。
【0043】
図14を参照して、2つの磁気センサ4,6を用いることの利点について説明する。図14は、2つの素子の出力特性C1n,C2n,C1a,C2aを示すイメージ図である。出力特性C1nは、常温の第1素子の出力特性を示す。出力特性C2nは、常温の第2素子の出力特性を示す。出力特性C1aは、常温からの温度変化後の第1素子の出力特性を示す。出力特性C2aは、常温からの温度変化後の第2素子の出力特性を示す。ここでは、2つの素子は、ほぼ同じ出力特性であるものとする。例えば、2つの素子は、先端側磁気センサ4及び後端側磁気センサ6に相当する。
【0044】
図14に示すように、常温での2つの素子の出力特性C1n,C2nの差Dnは、常温からの温度変化後の素子の出力特性C1a,C2aの差Daにほぼ等しい。このように、2つの素子の出力特性の差Dn,Daは、温度変化による出力特性の変化の影響を取り除くことができる。ここでは、温度変化について説明したが、温度変化に限らず、湿度変化等の環境変化の影響についても同様である。したがって、2つの素子の出力の差を用いることで、2つの素子の環境変化の影響を取り除くことができる。
【0045】
図15図17を参照して、本実施形態に係る3つの変形例について説明する。
図15に示す第1変形例は、図9に示す本実施形態に係る回転角度検出装置10Bにおいて、先端側磁性体5及び後端側磁性体7を取り除いた構成である。第1変形例は、図1に示す第1実施形態に係る回転角度検出装置10において、後端側磁気センサ6を設けた構成に相当する。
【0046】
図16に示す第2変形例は、図9に示す本実施形態に係る回転角度検出装置10Bにおいて、図6に示す第1実施形態の変形例と同様に、N極とS極が回転軸方向と垂直に並ぶように配置された磁石2aを採用した構成である。
【0047】
図17に示す第3変形例は、図16に示す第2変形例において、先端側磁性体5及び後端側磁性体7を取り除いた構成である。
【0048】
上述した3つの変形例についても、2つの磁気センサ4,6を用いた回転角度検出装置10Bを構成することができる。
【0049】
本実施形態によれば、第2実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。磁性体3の先端側及び後端側に、それぞれ磁気センサ4,6を設けることで、2つの磁気センサ4,6を用いて、回転軸1の回転角度を検出することができる。これにより、回転角度検出装置10Bは、環境の変化による影響を抑制して、回転軸1の回転角度を検出することができる。
【0050】
さらに、後端側磁気センサ6の後端側に後端側磁性体7を設けることで、後端側磁気センサ6を2つの磁性体3,7で挟む構成にすることができる。これにより、先端側磁気センサ4と同様に、後端側磁気センサ6を貫通する磁束の通り道を確保し、磁束が後端側磁気センサ6を通り抜け易くなる。
【0051】
(第4実施形態)
図18は、本発明の第4実施形態に係る回転角度検出装置10Cの主要部分の構成を示す構成図である。
【0052】
回転角度検出装置10Cは、図9に示す第3実施形態に係る回転角度検出装置10Bにおいて、磁性体3の両端に設けられた磁性体5,7を取り除き、磁石ホルダ8及び2つのセンサホルダ21,22を追加したものである。その他の点は、第3実施形態に係る回転角度検出装置10Bと同様である。
【0053】
なお、回転角度検出装置10Cは、第1実施形態と同様に、先端側磁気センサ4又は後端側磁気センサ6のいずれか一方のみの検出結果に基づいて、回転軸1の回転角度を検出してもよい。また、センサホルダ21,22は、設けなくてもよい。
【0054】
図19を参照して、磁石ホルダ8について説明する。図19は、磁石ホルダ8を後端側磁気センサ6側から見た側面を示している。
【0055】
磁石ホルダ8は、磁性体3を貫通させる穴H1及び回転軸1のネジ部分12を貫通させるネジ穴H2が形成された直方体形状である。穴H1及びネジ穴H2は、それぞれ回転軸方向と平行に延びる円筒形状である。穴H1は、内部で磁性体3が滑らかに摺動するように、磁性体3の外形よりも僅かに大きい径に形成される。ネジ穴H2の内側には、送り機構であるリードスクリューの役割をするネジ部分12と嵌合する雌ネジが形成される。なお、回転軸1の回転により磁石ホルダ8を回転軸方向に移動させる構成であれば、ネジ穴H2の代わりに、どのような構成が設けられてもよい。
【0056】
磁石2は、磁石ホルダ8の穴H1とネジ穴H2の間の部分に埋め込まれる。磁石2は、N極が回転軸方向の先端側に位置し、S極が回転軸方向の後端側に位置するように、配置される。即ち、磁石2は、第3実施形態と同じ向きに配置される。
【0057】
なお、磁石2は、磁性体3が貫通する穴H1の近傍に設けられるのが望ましいが、磁石ホルダ8のどの部分に設けられてもよい。例えば、磁石2は、磁石ホルダ8の穴H1の上側部分に埋め込まれてもよい。また、磁石2は、磁石ホルダ8に完全に埋め込まれていなくてもよく、磁石2の一部が磁石ホルダ8から露出してもよい。
【0058】
磁石ホルダ8は、どのような材質でもよいが、磁性体3の摺動性が良い材質が望ましい。例えば、磁性体3が金属であるため、磁石ホルダ8の材質を樹脂等にすることで、磁性体3の摺動性を良くすることができる。なお、磁性体3の摺動性を確保するために、磁性体3が貫通する穴H1の内側に加工又は塗装等の処理を施してもよいし、穴H1の内側部分の材質を磁石ホルダ8の他の部分と材質を変えてもよい。また、穴H1の径は、磁性体3の摺動性が確保できる範囲内で、できるだけ小さくすることで、回転軸1の回転中の磁石ホルダ8の揺れ幅が制限される。
【0059】
磁性体3は、摺動性を良くするために、任意の形状及び材質を採用してよい。例えば、磁性体3の形状を円柱形状の丸棒とすることで、真円度を出し易くすることができる。また、磁性体3を加工が容易な材質にすることで、磁性体3の生産性を向上させることができる。
【0060】
先端側センサホルダ21は、先端側磁気センサ4を保持する。後端側センサホルダ22は、後端側磁気センサ6を保持する。なお、センサホルダ21,22は、一部又は全部を磁性体で形成されてもよいし、センサホルダ21,22の内側(磁性体3側)に、磁性体が設けられてもよい。これにより、磁気センサ4,6の外側に磁性体が配置される構成となるため、回転角度検出装置10Cは、第3実施形態に係る磁性体5,7が設けられた構成と同様の作用効果が得られる。
【0061】
次に、回転角度検出装置10Cの磁石ホルダ8の役割について説明する。
回転軸1のネジ部分12が回転すると、磁性体3が磁石ホルダ8の穴H1に貫通した状態で、磁石ホルダ8が回転軸方向に移動する。穴H1に貫通している磁性体3が磁石ホルダ8の移動のガイドとなることで、磁石ホルダ8が移動している間、磁石ホルダ8に内包された磁石2と磁性体3との間の距離は、常に一定の間隔に保たれる。また、磁性体3が磁石ホルダ8の穴H1に貫通していることで、ネジ部分12の回転に伴って、磁石ホルダ8が回転して左右に振れるような動作が制限される。
【0062】
図20は、本実施形態の変形例に係る磁石ホルダ8aの構成を示す後端側磁気センサ6側から見た側面図である。
【0063】
磁石ホルダ8aに内包された磁石2aは、図6に示す第1実施形態の変形例と同様に、N極を穴H1側(磁性体3側)に、S極をネジ穴H2側(回転軸1側)に位置するように配置される。なお、磁石2aのN極とS極の位置は、入れ替えてもよい。また、磁石2aは、発生する磁束を所望の方向にするように、任意の向きに配置してよい。
【0064】
本実施形態によれば、第3実施形態による作用効果に加え、磁性体3が貫通する磁石ホルダ8を設けることで、磁石2の移動中でも、磁性体3と磁石2を一定の間隔に保ち、かつ磁石2が振れるのを抑制することができる。これにより、磁性体3は、磁石2による磁界を常に一定の距離から受けることができる。また、回転軸1の回転による磁石2の移動時の振れを抑制することができる。したがって、磁気センサ4,6は、磁性体3から伝達された磁石2による磁界に基づいて、磁石2の位置(即ち、回転軸1の回転角)を精度良く検出することができる。
【0065】
なお、追加の利点及び修正について当業者により容易に生じることがある。したがって、そのより広い態様における本発明は、本明細書に示して説明される特定の詳細で代表的な実施形態に限定されない。したがって、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物により定義される一般的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1…回転軸、2…磁石、3…磁性体、4…磁気センサ、10…回転角度検出装置、11…本体部分、12…ネジ部分、20…演算処理部。
図1
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図20