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特開2023-131085酸窒化物の製造方法、光触媒の製造方法及び水素の製造方法
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  • 特開-酸窒化物の製造方法、光触媒の製造方法及び水素の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131085
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】酸窒化物の製造方法、光触媒の製造方法及び水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 15/00 20060101AFI20230913BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230913BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230913BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20230913BHJP
   B01J 27/24 20060101ALI20230913BHJP
   C01G 17/00 20060101ALI20230913BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C01G15/00 J
B01J35/02 J
B01J37/08
B01J37/04 101
B01J27/24 M
C01G17/00
C01B3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141198
(22)【出願日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2022035531
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度~令和4年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(さきがけ)「電荷移動が制御された高効率可視光応答型光触媒の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】久富 隆史
(72)【発明者】
【氏名】堂免 一成
(72)【発明者】
【氏名】滕 ▲鎮▼▲遠▼
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 捺伽
(72)【発明者】
【氏名】阿部 慎太郎
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA04
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA26B
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB04C
4G169BB08B
4G169BB08C
4G169BB11A
4G169BB11B
4G169BB11C
4G169BC02A
4G169BC03A
4G169BC04A
4G169BC05A
4G169BC06A
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC12A
4G169BC13A
4G169BC16A
4G169BC17A
4G169BC17B
4G169BC18A
4G169BC22A
4G169BC23A
4G169BC23B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC42A
4G169BC58B
4G169BC67B
4G169BC71B
4G169BC74B
4G169BD11C
4G169BD12B
4G169CB81
4G169CC33
4G169DA08
4G169EA01Y
4G169EB18Y
4G169EC25
4G169EC28
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB07
4G169FB14
4G169FB27
4G169FB30
4G169FB58
4G169FC02
4G169HA02
4G169HA12
4G169HB10
4G169HC01
4G169HC28
4G169HD04
4G169HE09
(57)【要約】
【課題】光触媒として有用な酸窒化物を効率良く製造可能な、新規の酸窒化物の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属酸化物(A)と、金属窒化物(B)と、ハロゲン化金属(C)との混合物を閉鎖系内で加熱する反応工程を備える、酸窒化物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物(A)と、金属窒化物(B)と、ハロゲン化金属(C)との混合物を閉鎖系内で加熱する反応工程を備える、酸窒化物の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物(A)が、Zn、Al、Ga、In、Ge及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物(A)が、Al、Ga、In、Ge及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する金属酸化物(A-1)を含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物(A)が、Znを含有する金属酸化物(A-2)を更に含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属窒化物(B)が、Zn、Al、Ga、In、Ge、Sn、Li、Na、Mg、Ca、Sr、Ba及びLaからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記金属窒化物(B)が、金属元素と、窒素原子と、ハロゲン原子とを含有する化合物(B’)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記化合物(B’)が、ZnNX(Xはハロゲン原子を示す。)である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化金属(C)が、Zn、Al、Ga、In、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba及びLaからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記酸窒化物が、金属窒化物(i)と金属酸化物(ii)との固溶体である、請求項1に記載の酸窒化物の製造方法。
【請求項10】
前記金属酸化物(A)及び前記金属窒化物(B)のうち少なくとも一方が、Znを含有し、前記金属酸化物(ii)が、ZnOを含有する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記金属酸化物(A)及び前記金属窒化物(B)のうち少なくとも一方が、Al、Ga、In、Ge及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素(α)を含有し、
前記金属窒化物(i)が、前記金属元素(α)を含有する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記反応工程で得られた酸窒化物を焼成する焼成工程を更に備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記焼成工程が、酸素含有雰囲気下での焼成を含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記焼成工程が、アンモニア含有雰囲気下での焼成を含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記焼成工程が、不活性ガス雰囲気下での焼成を含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の製造方法で製造された酸窒化物に、酸化反応助触媒及び還元反応助触媒を担持させて、光触媒を得る工程を備える、光触媒の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の製造方法で製造された光触媒と水とを接触させて、前記水を分解する工程を備える、水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸窒化物の製造方法、光触媒の製造方法及び水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光を利用して水を分解し、水素を製造する方法が検討されている。例えば、特許文献1には、光半導体に酸化反応助触媒及び還元反応助触媒が担持されてなる光水分解反応用光触媒が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
光触媒に使用される光半導体としては、金属窒化物と金属酸化物との固溶体である酸窒化物が知られており、その製造方法が種々検討されている。例えば、特許文献2には、Ga粉末とZnO粉末を窒素ガス、アンモニアガス、炭化水素ガスを含む気相中に浮遊させ、600~1000℃に加熱する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-173102号公報
【特許文献2】特開2006-116415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規の酸窒化物の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、光触媒の製造方法、及び、光触媒を用いた水素の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下の(1)~(17)に関する。
(1)
金属酸化物(A)と、金属窒化物(B)と、ハロゲン化金属(C)との混合物を閉鎖系内で加熱する反応工程を備える、酸窒化物の製造方法。
(2)
前記金属酸化物(A)が、Zn、Al、Ga、In、Ge及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する、(1)に記載の製造方法。
(3)
前記金属酸化物(A)が、Al、Ga、In、Ge及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する金属酸化物(A-1)を含む、(2)に記載の製造方法。
(4)
前記金属酸化物(A)が、Znを含有する金属酸化物(A-2)を更に含む、(3)に記載の製造方法。
(5)
前記金属窒化物(B)が、Zn、Al、Ga、In、Ge、Sn、Li、Na、Mg、Ca、Sr、Ba及びLaからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する、(1)~(4)のいずれか一つに記載の製造方法。
(6)
前記金属窒化物(B)が、金属元素と、窒素原子と、ハロゲン原子とを含有する化合物(B’)である、(1)~(5)のいずれか一つに記載の製造方法。
(7)
前記化合物(B’)が、ZnNX(Xはハロゲン原子を示す。)である、(6)に記載の製造方法。
(8)
前記ハロゲン化金属(C)が、Zn、Al、Ga、In、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba及びLaからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する、(1)~(7)のいずれか一つに記載の製造方法。
(9)
前記酸窒化物が、金属窒化物(i)と金属酸化物(ii)との固溶体である、(1)~(8)のいずれか一つに記載の酸窒化物の製造方法。
(10)
前記金属酸化物(A)及び前記金属窒化物(B)のうち少なくとも一方が、Znを含有し、前記金属酸化物(ii)が、ZnOを含有する、(9)に記載の製造方法。
(11)
前記金属酸化物(A)及び前記金属窒化物(B)のうち少なくとも一方が、Al、Ga、In、Ge及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素(α)を含有し、
前記金属窒化物(i)が、前記金属元素(α)を含有する、(9)又は(10)に記載の製造方法。
(12)
前記反応工程で得られた酸窒化物を焼成する焼成工程を更に備える、請求項(1)~(11)のいずれか一つに記載の製造方法。
(13)
前記焼成工程が、酸素含有雰囲気下での焼成を含む、(12)に記載の製造方法。
(14)
前記焼成工程が、アンモニア含有雰囲気下での焼成を含む、(12)又は(13)に記載の製造方法。
(15)
前記焼成工程が、不活性ガス雰囲気下での焼成を含む、(12)~(14)のいずれか一つに記載の製造方法。
(16)
(1)~(15)のいずれか一項に記載の製造方法で製造された酸窒化物に、酸化反応助触媒及び還元反応助触媒を担持させて、光触媒を得る工程を備える、光触媒の製造方法。
(17)
(16)に記載の製造方法で製造された光触媒と水とを接触させて、前記水を分解する工程を備える、水素の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規の酸窒化物の製造方法が提供される。また、本発明によれば、光触媒の製造方法、及び、光触媒を用いた水素の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、実施例A-1、比較例X-1、比較例X-2、比較例X-3及び比較例X-4で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図1(b)は、実施例A-1、比較例X-1、比較例X-2、比較例X-3及び比較例X-4で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図2図2(a)は、実施例A-1、実施例A-2及び実施例A-3で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図2(b)は、実施例A-1、実施例A-2及び実施例A-3で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図3図3(a)は、実施例A-1で得られた酸窒化物のFE-SEM画像を示す図であり、図3(b)は、実施例A-2で得られた酸窒化物のFE-SEM画像を示す図である。
図4図4は、実施例B-1及び実施例B-2で得られた光触媒の水素生成活性の評価結果を示す図である。
図5図5(a)は、実施例A-2、実施例C-1及び比較例X-5で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図5(b)は、実施例A-2、実施例C-1及び比較例X-5で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図6図6は、実施例B-2、実施例C-1及び比較例X-5で得られた光触媒の水素生成活性の評価を示す図である。
図7図7(a)は、実施例A-1及び実施例D-1で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図7(b)は、実施例A-1及び実施例D-1で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図8図8(a)は、実施例A-1で得られた酸窒化物のFE-SEM画像を示す図であり、図8(b)は、実施例D-1で得られた酸窒化物のFE-SEM画像を示す図である。
図9図9(a)は、実施例A-1、実施例E-1及び実施例E-2で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図9(b)は、実施例A-1、実施例E-1及び実施例E-2で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図10図10は、実施例E-1及び実施例E-2で得られた光触媒の水分解活性の評価結果を示す図である。
図11図11(a)は、実施例A-1、実施例F-1、実施例F-2及び実施例F-3で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図11(b)は、実施例A-1、実施例F-1、実施例F-2及び実施例F-3で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図12図12(a)は、実施例F-1、実施例G-1、実施例G-2及び実施例G-3で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図12(b)は、実施例F-1、実施例G-1、実施例G-2及び実施例G-3で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図13図13(a)は、実施例H-1、比較例Y-1及び比較例Y-2で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図13(b)は、実施例H-1、比較例Y-1及び比較例Y-2で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図14図14(a)は、実施例H-1、実施例H-2、実施例H-3及び実施例H-4で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図14(b)は、実施例H-1、実施例H-2、実施例H-3、実施例H-4及び比較例Y-2で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図15図15(a)は、実施例A-1、実施例J-1及び実施例J-2で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図15(b)は、実施例J-1及び実施例J-2で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図16図16は、実施例K-1及び実施例K-2で得られた光触媒の水分解活性の評価結果を示す図である。
図17図17は、実施例L-1及び実施例L-2で得られた光触媒の水分解活性の評価結果を示す図である。
図18図18(a)は、実施例M-1及び実施例M-2で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図18(b)は、実施例M-1及び実施例M-2で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
図19図19は、実施例N-1及び実施例N-2で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図である。
図20図20は、実施例O-1、実施例O-2、及び実施例O-3で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図である。
図21図21は、実施例O-4~O-7で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(酸窒化物の製造方法)
本実施形態の酸窒化物の製造方法は、金属酸化物(A)と、金属窒化物(B)と、ハロゲン化金属(C)との混合物を閉鎖系内で加熱する反応工程を備える。このような製造方法によれば、酸窒化物を効率良く製造することができる。
【0011】
本実施形態において、酸窒化物は、金属元素と酸素原子と窒素原子とを含有する。酸窒化物は、金属窒化物(i)と金属酸化物(ii)とを含有するものであってよく、金属窒化物(i)と金属酸化物(ii)との固溶体であってもよい。本実施形態によれば、金属酸化物(ii)の固溶量が多い酸窒化物が得られやすい傾向がある。
【0012】
本実施形態の製造方法では、例えば、金属窒化物(B)が窒素源となり、金属酸化物(A)が窒化されて、金属窒化物(i)及び金属酸化物(ii)を含有する酸窒化物が形成されてよい。すなわち、本実施形態では、金属酸化物(A)が有する金属元素を、金属窒化物(i)が有していてよく、金属窒化物(B)が有する金属元素を、金属酸化物(ii)が有していてよい。
【0013】
本実施形態の製造方法において、ハロゲン化金属(C)は、反応工程中の加熱により溶融して、固体粉末である金属酸化物(A)及び金属窒化物(B)を分散させる分散媒として機能すると考えられる。すなわち、ハロゲン化金属(C)の存在により、金属酸化物(A)及び金属窒化物(B)の反応が効率良く均一に進行すると考えられる。なお、ハロゲン化金属の非存在下で反応工程を行った場合、金属酸化物の窒化が十分に進行せず、複合酸化物が形成される場合がある。
【0014】
なお、従来の製造方法では、開放系であると金属成分(例えば金属酸化物)の揮発によって構成成分に偏りが生じたり、金属酸化物の固溶量が多い酸窒化物の製造が困難である場合があった。また、閉鎖系であっても窒素源として塩化アンモニウムを使用した場合は水素が大量に発生して内圧が上昇し、開封時の爆発等の危険があって大量生産が困難であったり、発生した水素によって酸窒化物が還元・分解して金属成分が不純物として混入したりする場合があった。本実施形態の製造方法では、金属成分の揮発を抑制できるため、得られる酸窒化物の構成成分が均一になり、且つ、金属酸化物の固溶量が多い酸窒化物が得られやすい。また、本実施形態の製造方法では、系内に水素の発生が無いため、安全性に優れ、且つ、還元されやすい金属元素を構成成分とする酸窒化物を高純度で得ることができる。
【0015】
本実施形態の製造方法において、金属酸化物(A)及び金属窒化物(B)は、目的とする酸窒化物が有する金属元素(金属窒化物(i)及び金属酸化物(ii)が有する金属元素)に応じて適宜選択してよい。
【0016】
例えば、酸窒化物中の金属窒化物(i)が、Al、Ga、In、Ge及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素(α)を含有する場合、金属酸化物(A)及び金属窒化物(B)のうち少なくとも一方は、金属元素(α)を含有していてよい。
【0017】
また、例えば、酸窒化物中の金属酸化物(ii)が、Znを含有する場合、金属酸化物(A)及び金属窒化物(B)のうち少なくとも一方は、Znを含有していてよい。
【0018】
酸窒化物としては、例えば、AlN:ZnO、GaN:ZnO、InN:ZnO、ZnGeN:ZnO、ZnSnN:ZnO、及び、これらの固溶体等が挙げられる。なお、酸窒化物についてのX:Yという表記は、XとYとの固溶体を意味する。例えば、AlN:ZnOはAlNとZnOとの固溶体を示す。
【0019】
金属酸化物(A)は、Zn、Al、Ga、In、Ge及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有することが好ましい。
【0020】
金属酸化物(A)は、Al、Ga、In、Ge及びSnからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する金属酸化物(A-1)を含んでいてよい。金属酸化物(A-1)は、Ga、Ge及びInからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有することが好ましく、Ga及びGeからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有することがより好ましい。
【0021】
金属酸化物(A-1)は、例えば、Al、Ga、ZnGa、In、GeO、ZnGeO及びSnOからなる群より選択される少なくとも一種であってよく、好ましくはAl、Ga、In、GeO及びSnOからなる群より選択される少なくとも一種であり、より好ましくはGa、In及びGeOからなる群より選択される少なくとも一種であり、更に好ましくはGa及びGeOからなる群より選択される少なくとも一種である。
【0022】
また、金属酸化物(A)は、金属酸化物(A-1)と共に、Znを含有する金属酸化物(A-2)を更に含んでいてもよい(但し、金属酸化物(A-2)は金属酸化物(A-1)とは異なる。)。
【0023】
金属酸化物(A-2)としては、例えば、ZnO、ZnGa、ZnGeO等が挙げられる。金属酸化物(A-2)は、例えば、ZnOであってよい。
【0024】
金属窒化物(B)は、Zn、Al、Ga、In、Ge、Sn、Li、Na、Mg、Ca、Sr、Ba及びLaからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有することが好ましい。
【0025】
金属窒化物(B)としては、例えば、Zn、AlN、GaN、InN、Ge、ZnGeN、ZnSnN、LiN、NaN、Mg、Ca、Sr、Ba、LaN等が挙げられる。
【0026】
金属窒化物(B)は、Znを含有する金属窒化物(B-1)を含んでいてよい。金属酸化物(B-1)としては、例えば、Zn、ZnGeN、ZnSnN等が挙げられ、好ましくはZnである。
【0027】
金属窒化物(B)は、金属窒化物(B-1)以外の金属窒化物(B-2)を更に含んでいてもよい。金属窒化物(B-1)がZnである場合、金属窒化物(B-2)は、例えばAlN、GaN、InN、Ge、ZnGeN、ZnSnN、LiN、NaN、Mg、Ca、Sr、Ba及びLaNからなる群より選択される少なくとも一種であってよく、好ましくはAlN、GaN、InN、Ge、ZnGeN及びZnSnNからなる群より選択される少なくとも一種である。
【0028】
金属窒化物(B)は、金属元素と窒素原子とハロゲン原子とを含有する化合物(B’)であってもよい。化合物(B’)としては、例えば、ZnNX、LiNX、MgNX等が挙げられる(Xはハロゲン原子を示し、好ましくはCl、Br又はIである。)。化合物(B’)は、例えば、ZnNXであってよい。
【0029】
ハロゲン化金属(C)は、Zn、Al、Ga、In、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba及びLaからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有することが好ましい。
【0030】
ハロゲン化金属(C)としては、例えば、ZnX、AlX、GaX、InX、LiX、NaX、KX、RbX、CsX、MgX、CaX、SrX、BaX、LaX等が挙げられる(Xはハロゲン原子を示し、好ましくはCl、Br又はIである。)。
【0031】
ハロゲン化金属(C)が有する金属元素は、金属酸化物(A)及び金属窒化物(B)が有する金属元素の少なくとも一つと同じであることが好ましく、金属窒化物(B)が有する金属元素の少なくとも一つと同じであることがより好ましい。
【0032】
ハロゲン化金属(C)は、反応工程の加熱温度で溶融する化合物であることが好ましい。すなわち、ハロゲン化金属(C)の融点は、反応工程の加熱温度以下であることが好ましい。
【0033】
ハロゲン化金属(C)の融点は、例えば1000℃以下であってよく、好ましくは850℃以下、より好ましくは500℃以下である。ハロゲン化金属(C)の融点は、低くても特に問題はなく、常温で液体であってもよいが、保存性、作業性に優れる観点からは、例えば50℃以上であってよく、100℃以上であってもよい。
【0034】
反応工程において、混合物中の金属酸化物(A)及び金属窒化物(B)の含有量は、目的とする酸窒化物の組成に応じて適宜調整してよい。
【0035】
混合物中の金属窒化物(B)の含有量は、例えば、目的とする酸窒化物の形成に必要な窒素原子の量の理論値Nに対する金属窒化物(B)が有する窒素原子の量Nの比(N/N)が、1.0以上5.0以下となる含有量であってよい。上記比(N/N)は、例えば1.0以上であり、1.1以上であってもよい。また、上記比(N/N)は、例えば5.0以下であり、4.0以下、3.0以下、2.0以下又は1.5以下であってもよい。なお、上記理論値Nは、例えば、酸窒化物が金属窒化物(i)と金属酸化物(ii)との固溶体である場合、酸窒化物を構成する金属窒化物(i)を形成するために化学量論的に必要な窒素原子の量の理論値、ということができる。
【0036】
反応工程において、混合物中のハロゲン化金属(C)の含有量は、例えば、金属酸化物(A)及び金属窒化物(B)が有する金属元素の合計量(M+M)に対する、ハロゲン化金属(C)が有する金属元素の量(M)のモル比(M/(M+M))が、0.05~20となる含有量であってよい。上記モル比(M/(M+M))は、例えば0.05以上であり、0.1以上、0.2以上又は0.3以上であってもよい。また、上記モル比(M/(M+M))は、例えば20以下であり、15以下、10以下、5以下、3以下又は1以下であってもよい。
【0037】
本実施形態において、金属酸化物(A)、金属窒化物(B)及びハロゲン化金属(C)の混合方法は特に限定されないが、金属窒化物(B)の酸化、ハロゲン化金属(C)の吸湿等を避けるため、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で混合することが好ましい。
【0038】
反応工程では、金属酸化物(A)、金属窒化物(B)及びハロゲン化金属(C)の混合物を閉鎖系内で加熱する。閉鎖系の形成方法は特に限定されず、例えば、真空封管、オートクレーブ等の方法が挙げられる。
【0039】
反応工程では、閉鎖系内において、水及び酸素が十分に排除されていることが望ましい。この観点から、閉鎖系内での加熱は、減圧下、真空下、又は、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましく、減圧下又は真空下で実施することがより好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。
【0040】
反応工程における加熱温度は、例えば600℃以上であってよく、好ましくは700℃以上であり、より好ましくは750℃以上である。加熱温度が高いと、より結晶性の高い酸窒化物が得られやすくなる傾向がある。また、反応工程における加熱温度は、例えば1000℃以下であってよく、900℃以下又は850℃以下であってもよい。これにより、酸窒化物の熱分解による不純物の混入、内圧の上昇による閉鎖系の破裂、閉鎖系の化学的腐食による不純物の混入等の問題が起こりにくくなる傾向がある。
【0041】
反応工程における加熱時間は、例えば1時間以上であってよく、好ましくは4時間以上であり、より好ましくは10時間以上である。これにより、より結晶性の高い酸窒化物が得られやすくなる傾向がある。反応工程における加熱時間の上限は特に限定されないが、酸窒化物の熱分解による不純物の混入、結晶性の低下、閉鎖系の化学的腐食による不純物の混入等の問題が起こりにくくなる観点からは、例えば168時間以下、96時間以下又は48時間以下であってもよい。
【0042】
反応工程は、例えば、金属酸化物(A)であるGaと、金属窒化物(B)であるZnと、ハロゲン化金属(C)と、の混合物を閉鎖系内で加熱して、GaNとZnOとの固溶体である酸窒化物(GaN:ZnO)を得る工程であってよい。当該工程において、ハロゲン化金属は、ZnX(Xは、ハロゲン原子を示し、好ましくはCl、Br又はIである。)であることが好ましい。
【0043】
反応工程はまた、金属酸化物(A)であるGeO及びZnOと、金属窒化物(B)であるZnと、ハロゲン化金属(C)と、の混合物を閉鎖系内で加熱して、ZnGeNとZnOとの固溶体である酸窒化物(ZnGeN:ZnO)を得る工程であってよい。当該工程において、ハロゲン化金属は、ZnX(Xは、ハロゲン原子を示し、好ましくはCl、Br又はIである。)であることが好ましい。
【0044】
反応工程における混合物は、金属酸化物(A)、金属窒化物(B)及びハロゲン化金属(C)以外の他の成分を更に含有していてもよい。
【0045】
他の成分としては、例えば、酸窒化物にドープされるドーパントが挙げられる。ドーパントとしては、例えば、LiO、MgO、Al等が挙げられる。
【0046】
混合物中のドーパントの含有量は、例えば、金属酸化物(A)及び金属窒化物(B)が有する金属元素の合計量(M+M)に対する、ドーパントが有する金属元素の量(M)のモル比(M/(M+M))が、0.1以下となる量であってよい。上記モル比(M/(M+M))は、例えば0.1以下であり、0.05以下又は0.01以下であってもよい。
【0047】
他の成分としては、また、酸窒化物の粒成長を促す元素の単体が挙げられる。単体としては、例えば、Zn、I等が挙げられる。
【0048】
混合物中の単体の含有量は、例えば、金属酸化物(A)及び金属窒化物(B)が有する金属元素の合計量(M+M)に対する、単体の量(M)のモル比(M/(M+M))が、0.5以下となる量であってよい。上記モル比(M/(M+M))は、例えば0.5以下であり、0.1以下又は0.01以下であってもよい。
【0049】
本実施形態の製造方法は、反応工程で得られた酸窒化物を焼成する焼成工程を更に備えていてよい。焼成工程によれば、焼成によって酸窒化物の欠陥密度が低減されて、酸窒化物が、光触媒としてより好適となる傾向がある。
【0050】
焼成工程における焼成としては、酸素含有雰囲気下での焼成(以下、焼成(1)ともいう。)、及び、アンモニア含有雰囲気下での焼成(以下、焼成(2)ともいう。)が挙げられる。焼成工程では、焼成(1)及び焼成(2)のいずれか一方を実施してよく、両方を実施してもよい。焼成(1)及び焼成(2)の両方を実施する場合、実施の順は特に限定されず、焼成(1)、焼成(2)の順であってもよく、焼成(2)、焼成(1)の順であってもよい。
【0051】
また、焼成工程における焼成としては、不活性ガス雰囲気下での焼成(以下、焼成(3))も挙げられる。焼成工程では、焼成(3)のみを実施してもよく、焼成(1)及び焼成(2)のいずれか一方又は両方と組み合わせて実施してもよい。このとき、実施の順は特に限定されない。
【0052】
焼成(1)は、例えば、大気下での焼成であってよい。
【0053】
焼成(1)の焼成温度は、例えば400℃以上であってよく、好ましくは500℃以上、より好ましくは550℃以上である。これにより、焼成による上述の効果がより顕著に奏される。また、焼成(1)の焼成温度は、例えば800℃以下であってよく、好ましくは700℃以下、より好ましくは600℃以下である。これにより、酸窒化物の分解による機能低下が抑制され、酸窒化物が光触媒としてより好適となる傾向がある。
【0054】
焼成(1)の焼成時間は、例えば1分以上であってよく、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。これにより、焼成による上述の効果がより顕著に奏される。また、焼成(1)の焼成時間は、例えば5時間以下であってよく、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下である。これにより、酸窒化物の分解による機能低下が抑制され、酸窒化物が光触媒としてより好適となる傾向がある。
【0055】
焼成(2)は、例えば、アンモニア気流下での焼成であってよい。また、焼成(2)は、不活性ガスで希釈したアンモニア気流下での焼成であってもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。
【0056】
焼成(2)では、酸窒化物に対して、ZnO、ZnX、AlX、GaX、InX、LiX、NaX、KX、RbX、CsX、MgX、CaX、SrX、BaX及びLaX(Xはハロゲン原子を示し、好ましくはCl、Br又はIである。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を添加してもよい。添加する化合物の量は、酸窒化物100質量部に対して、例えば200質量部以下であってよく、100質量部以下であってもよく、50質量部以下であってもよい。
【0057】
焼成(2)の焼成温度は、例えば500℃以上であってよく、好ましくは600℃以上、より好ましくは700℃以上である。これにより、焼成による上述の効果がより顕著に奏される。また、焼成(2)の焼成温度は、例えば1000℃以下であってよく、好ましくは900℃以下、より好ましくは850℃以下である。これにより、金属酸化物の揮発による酸窒化物に固溶する金属酸化物の量の低下が抑制される。
【0058】
焼成(2)の焼成時間は、例えば1分以上であってよく、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。これにより、焼成による上述の効果がより顕著に奏される。また、焼成(2)の焼成時間は、例えば5時間以下であってよく、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下である。これにより、酸窒化物の分解による機能低下が抑制され、酸窒化物が光触媒としてより好適となる傾向がある。
【0059】
焼成(3)は、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)雰囲気下での焼成であり、不活性ガス気流中での焼成であってもよい。
【0060】
焼成(3)の焼成温度は、例えば400℃以上であってよく、好ましくは500℃以上、より好ましくは550℃以上である。これにより、焼成による上述の効果がより顕著に奏される。また、焼成(3)の焼成温度は、例えば800℃以下であってよく、好ましくは700℃以下、より好ましくは600℃以下である。これにより、酸窒化物の分解による機能低下が抑制され、酸窒化物が光触媒としてより好適となる傾向がある。
【0061】
焼成(3)の焼成時間は、例えば1分以上であってよく、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。これにより、焼成による上述の効果がより顕著に奏される。また、焼成(3)の焼成時間は、例えば5時間以下であってよく、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下である。これにより、酸窒化物の分解による機能低下が抑制され、酸窒化物が光触媒としてより好適となる傾向がある。
【0062】
本実施形態の製造方法は、反応工程後の酸窒化物に酸性溶液を接触させる酸処理工程を更に備えていてよい。
【0063】
酸処理工程によれば、酸窒化物中の酸化物等の不純物を溶解除去することができる。これにより、酸窒化物に酸化反応助触媒及び還元反応助触媒を担持させて、光触媒を得る担持工程をより効果的に行うことができる。
【0064】
酸処理工程における酸性溶液は、酸成分を溶媒に溶解させた溶液であってよい。酸成分としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、ポリ(4-スチレンスルホン酸)等の有機酸などが挙げられる。溶媒としては、例えば、水が挙げられる。
【0065】
本実施形態の製造方法で製造された酸窒化物は、光触媒(特に、光水分解反応用光触媒)における光半導体として、好適に用いることができる。また、本実施形態の製造方法で製造された酸窒化物は、蛍光体、顔料、触媒担体等の用途にも好適に用いることができる。
【0066】
(光触媒の製造方法)
本実施形態の光触媒の製造方法は、上述の製造方法で製造された酸窒化物に、酸化反応助触媒及び還元反応助触媒を担持させて、光触媒を得る担持工程を備える。
【0067】
酸化反応助触媒としては、公知の光触媒に使用される酸化反応助触媒を特に制限無く用いることができる。
【0068】
酸化反応助触媒は、例えば、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Ir等の金属元素を含有する触媒であってよい。また、酸化反応助触媒は、単体金属、酸化物又はオキシ水酸化物であってよい。酸化反応助触媒の具体例としては、例えば、MnO、MnO、Mn、Mn、FeOOH、CoO、Co、CoOOH、RuO、IrO等が挙げられる。
【0069】
酸化反応助触媒の担持量は特に限定されず、光触媒の用途、性能等に応じて適宜選択してよい。酸化反応助触媒の担持量は、酸化反応助触媒が有する金属元素の量(以下、金属担持量ともいう。)によって規定してよい。酸化反応助触媒の金属担持量は、酸窒化物100質量部に対して、例えば0.001質量部以上であってよい。好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上である。また、酸化反応助触媒の金属担持量は、酸窒化物の100質量部に対して、例えば5質量部以下であってよく、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
【0070】
酸化反応助触媒は、2種以上を併用してもよい。本実施形態では、特に、酸化反応助触媒として、Ir、Ru、Mn及びFeからなる群より選択される金属元素(好ましくはIr)を含有する第一の触媒と、Coを含有する第二の触媒と、を併用することで、水素生成能により優れた光触媒が得られる傾向がある。
【0071】
還元反応助触媒としては、公知の光触媒に使用される還元反応助触媒を特に制限無く用いることができる。
【0072】
還元反応助触媒としては、例えば、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Ni、Cu、Au、Fe、NiO、RuO、IrO、Rh、Rh-Cr複合酸化物、コア/シェル型Rh/Cr、Pt/Cr等が挙げられる。
【0073】
還元反応助触媒の担持量は特に限定されず、光触媒の用途、性能等に応じて適宜選択してよい。還元反応助触媒の担持量は、還元反応助触媒が有する金属元素の量(以下、金属担持量ともいう。)によって規定してよい。還元反応助触媒の金属担持量は、酸窒化物100質量部に対して、例えば0.01質量部以上となる量であってよい。好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。また、還元反応助触媒の金属担持量は、酸窒化物の100質量部に対して、例えば10質量部以下であってよく、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0074】
酸化反応助触媒及び還元反応助触媒の担持方法は特に限定されず、公知の担持方法を特に制限無く用いることができる。担持方法としては、例えば、含浸法、光電着法、マイクロ波加熱法、水熱法、沈殿法、吸着法、蒸着法、スパッタリング法、原子層堆積法、アークプラズマ法等が挙げられる。
【0075】
(水素(及び酸素)の製造方法)
本実施形態の水素の製造方法は、上述の製造方法で製造された光触媒と水とを接触させて、水を分解する水分解工程を備える。水分解工程では、水の分解により水素が発生する。また、水分解工程では、水の分解により酸素が更に発生してもよい。すなわち、本実施形態の水素の製造方法は、酸素の製造方法ということも、水素及び酸素の製造方法ということもできる。
【0076】
水分解工程では、光触媒と水とを接触させた状態で、光触媒が光を受けることで、光触媒の酸化反応助触媒上で酸素が発生し、還元反応助触媒上で水素が発生する。光触媒が受ける光は、自然光(太陽光)であっても人工光であってもよい。
【0077】
水分解工程では、水にpH調整剤を添加して、水のpHを調整してもよい。pH調整剤としては、酸、酸性化合物、塩基、塩基性化合物、及び、これらの塩等が挙げられる。
【0078】
水分解工程では、水に有機化合物を添加してもよい。有機化合物が存在していると、有機化合物が光触媒反応によって酸化されて、脱水素反応が起こり、水素が発生する場合がある。また、光触媒中の正孔が消費されることで、励起電子が正孔との再結合を免れ、水の還元反応がより効率良く進行し、水素の生成速度が向上する傾向がある。
【0079】
有機化合物としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類;グルコース等の糖類;アルコルビン酸等のカルボン酸類などを用いることができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0081】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例A-1)
以下の方法で、酸窒化物(GaN:ZnO)の製造を行った。
(i)Znの合成
Zn粉末(株式会社高純度化学研究所、99%)を2g秤量し、アルミナボートに乗せ、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、アンモニア流量100mL/分で10時間加熱して、Znを合成した。
(ii)反応工程
Ga(株式会社高純度化学研究所、99.99%)、Zn及びZnI(Sigma-Aldrich、≧98%)をモル比が1:1.1:2となるように秤量(1.87g、2.47g及び6.38g)し、混合し、内容積が約100cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合は、Znの酸化及びZnIの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間の昇温速度で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間の昇温速度で850℃まで昇温し、10時間加熱した。室温まで自然冷却し、封管を破壊して、酸窒化物を得た。
(iii)焼成工程
反応工程で得られた酸窒化物を1g、アルミナるつぼにはかり取り、大気中にて10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、1時間加熱した。加熱後の酸窒化物を、0.5M硝酸水溶液で処理し、水で洗浄し、一晩乾燥させた。
【0083】
(比較例X-1)
以下の方法で、酸窒化物の製造を行った。
Ga(株式会社高純度化学研究所、99.99%)とZnO(関東化学株式会社、≧99.5%)をモルでZn/Ga=2となるように秤量(順に0.73g、1.27g)し、十分に混合した後、アルミナボートに載せ、250mL/分のアンモニア流通下で、10℃/分の昇温速度で850℃まで昇温し、15時間加熱した。生成物をアルミナるつぼに移し、大気中にて10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、1時間加熱して、酸窒化物を得た。
【0084】
(比較例X-2)
以下の方法で酸窒化物の製造を行った。
Ga(株式会社高純度化学研究所、99.99%)とZnO(関東化学株式会社、≧99.5%)をモル比でZn/Ga=2となるように秤量(順に0.73g、1.27g)し、十分に混合した後、アルミナボートに載せ、250mL/分のアンモニア流通下で、10℃/分の昇温速度で950℃まで昇温し、15分加熱した。加熱後の試料を、0.5M硝酸水溶液で処理し、水で洗浄し、一晩乾燥させて、酸窒化物を得た。
【0085】
(比較例X-3)
以下の方法で、酸窒化物の製造を行った。
GaCl(和光純薬、99.9%)、ZnCl(和光純薬、≧98%)、尿素(和光純薬、99%)をモル比でGaCl:ZnCl:尿素=1:1:1(0.528g、0.409g及び0.180g)となるように秤量し、純水10mLを加えた後、撹拌しながら70℃以上の温度で保持して完全に水を蒸発乾固させた。生成物をアルミナボートに載せ、250mL/分のアンモニア流通下で、10℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、8時間加熱して、酸窒化物を得た。
【0086】
(比較例X-4)
アンモニア流通下での加熱温度を800℃としたこと以外は、比較例X-3と同様の方法で、酸窒化物の製造を行った。
【0087】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例A-1、比較例X-1、比較例X-2、比較例X-3及び比較例X-4で得られた酸窒化物について、デスクトップX線回折装置(XRD、株式会社リガク社製MiniFlex、CuKα線)、拡散反射分光光度計(日本分光株式会社製V-670)、エネルギー分散型X線分析装置付き卓上走査電子顕微鏡(SEM-EDX、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製PhenonPharos)、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、株式会社日立ハイテク製、SU-8000)、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(XRF、株式会社島津製作所製EDX-800HS2)、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-OES、株式会社島津製作所製ICPS-8100)、及び、酸素・窒素分析装置(株式会社堀場製作所製EMGA-620W)による分析を行った。
【0088】
また、酸窒化物の結晶性を、粉末X線回折パターン中の33°~38°に現れる回折ピーク(101回折に相当)に、以下のシェラー式を適用して得られる結晶子径から評価した。
τ=Kλ/βcosθ
(式中、τは結晶子、K(=0.89)は形状因子、λはX線波長、βはピーク半値全幅、θはブラッグ角である。)
【0089】
図1(a)は、実施例A-1、比較例X-1、比較例X-2、比較例X-3及び比較例X-4で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図1(b)は、実施例A-1、比較例X-1、比較例X-2、比較例X-3及び比較例X-4で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
【0090】
図1(a)に示すとおり、実施例A-1の酸窒化物は、比較例X-1及びX-2の酸窒化物と比較して、ZnO側にピークがシフトしており、ZnOの固溶量が多いことが確認された。また、図1(b)に示すとおり、実施例A-1の酸窒化物は、比較例X-1及びX-2の酸窒化物と比較して、吸収の立ち上がりが高波長側にシフトしており、より広範囲での可視光吸収が可能であることが確認された。
【0091】
また、図1(a)に示すとおり、実施例A-1の酸窒化物は、比較例X-3及びX-4の酸窒化物と比較して、ピーク角度は同程度であってZnOの固溶量は同程度であると考えられるが、ピークがより鋭く、高い結晶性を有することが確認された。
【0092】
なお、SEM-EDX、XRF及びICP-OESによる元素分析により、実施例A-1の酸窒化物は、Zn/(Zn+Ga)(モル比)は0.57であることが確認された。また、比較例X-1、X-2、X-3及びX-4の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は、それぞれ0.23、0.35、0.50及び0.32であった。
【0093】
また、上記方法で求められる結晶子径は、実施例A-1の酸窒化物は39nm、比較例X-1の酸窒化物は51nm、比較例X-2の酸窒化物は31nm、比較例X-3の酸窒化物は12nm、比較例X-4の酸窒化物は12nmであった。
【0094】
上述のとおり、比較例X-1~X-4では、アンモニア流通下での熱窒化によって酸窒化物を合成しているが、このような製造方法では、酸窒化物中のZnOが系外に排出されやすく、ZnOの固溶量と高い結晶性とを両立することが難しい。これに対して、実施例A-1では、ZnOの固溶量が多く、且つ、結晶性の高い酸窒化物が得られた。
【0095】
(実施例A-2)
(ii)反応工程における加熱温度を850℃から700℃に変更したこと以外は、実施例A-1と同様にして酸窒化物を得た。
【0096】
(実施例A-3)
(ii)反応工程における加熱時間を10時間から50時間に変更したこと以外は、実施例A-1と同様にして酸窒化物を得た。
【0097】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例A-1、A-2及びA-3で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図2(a)は、実施例A-1、実施例A-2及び実施例A-3で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図2(b)は、実施例A-1、実施例A-2及び実施例A-3で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。図3(a)は、実施例A-1で得られた酸窒化物のFE-SEM画像を示す図であり、図3(b)は、実施例A-2で得られた酸窒化物のFE-SEM画像を示す図である。
【0098】
図1(a)に示すとおり、実施例A-1及び実施例A-2の酸窒化物は、同程度の角度にXRDピークを示し、ZnO固溶量が同程度であることが示唆された。一方、実施例A-3の酸窒化物は、実施例A-1及び実施例A-2の酸窒化物と比較して、XRDピークが高角度側にシフトしており、ZnO固溶量が低いことが示唆された。また、各ピークを比較すると、実施例A-1のピークが最も鋭く、実施例A-2のピークが次に鋭いことから、実施例A-1の酸窒化物が最も結晶性が高く、次いで実施例A-2の酸窒化物が結晶性が高く、これらと比較して実施例A-3の酸窒化物は結晶性が低いことが示唆された。
【0099】
実施例A-1の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.57であり、実施例A-2の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.56であり、実施例A-3の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.41であった。
【0100】
また、実施例A-1の酸窒化物の結晶子径は39nm、実施例A-2の酸窒化物の結晶子径は31nm、実施例A-3の酸窒化物の結晶子径は27nmであった。
【0101】
(実施例B-1)
以下の担持工程により、実施例A-1の酸窒化物に助触媒を担持させて、光触媒を製造した。
0.15gの酸窒化物と15mLの純水を、容量30mLのマイクロ波照射装置用容器に入れた。そこに、Ir濃度が5.18mg/mLのNaIrCl・xHO水溶液を加えた。懸濁液を超音波処理により十分に分散させ、マイクロ波照射装置で150℃まで素早く加熱した後、10分間保持した。加熱時は撹拌子によって常時1000rpmで撹拌した。反応後は水で洗浄、ろ過によって回収した。
次いで、Rhを光電着法で担持した。反応溶液にはメタノール水溶液を用い、Rh源にはNaRhCl・nHO水溶液を用いた。Rh担持後、濾過により回収し、光触媒を得た。
光触媒中、酸窒化物100質量部に対するIrの担持量(金属元素換算)は0.1質量部、Rh(金属元素換算)の担持量は1.0質量部とした。
【0102】
(実施例B-2)
酸窒化物として実施例A-2の酸窒化物を用いたこと以外は、実施例B-1と同様にして光触媒を製造した。
【0103】
<水素生成活性の評価>
実施例B-1及び実施例B-2で得られた光触媒について、以下の方法で水素生成活性を評価した。
光触媒を10~20秒程度の超音波によって10体積%メタノール水溶液に分散させた。反応系を十分に脱気し、アルゴンを10kPa導入し、300Wキセノンランプの可視光を照射した。反応系に接続した熱伝導度検出器付きガスクロマトグラフにより、1時間毎の水素生成量を測定した。
図4は、実施例B-1及び実施例B-2で得られた光触媒の水素生成活性の評価結果を示す図である。
【0104】
図4に示すとおり、実施例B-1及び実施例B-2の光触媒は、可視光によって光触媒として機能することが確認された。また、実施例B-1の光触媒は、実施例B-2の光触媒と比較して高い水素生成活性を示した。
【0105】
(実施例C-1)
(ii)反応工程において、Ga、Zn及びZnIのモル比を1:1.1:1に変更したこと以外は、実施例A-2と同じ方法で酸窒化物を製造した。また、得られた酸窒化物を用いたこと以外は、実施例B-1と同じ方法で光触媒を製造した。
【0106】
(比較例X-5)
(ii)反応工程において、ZnIを使用しなかったこと以外は、実施例A-2と同じ方法で酸窒化物の製造を行った。また、得られた生成物を用いたこと以外は、実施例B-1と同じ方法で光触媒を得た。
【0107】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例A-2、実施例C-1及び比較例X-5で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図5(a)は、実施例A-2、実施例C-1及び比較例X-5で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図5(b)は、実施例A-2、実施例C-1及び比較例X-5で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
【0108】
図5(a)に示すとおり、比較例X-5では、複合酸化物(ZnGa)に類似のピークが得られており、複合酸化物の形成が示唆された。一方、実施例C-1の酸窒化物は、実施例A-2の酸窒化物と同程度の角度にXRDピークを示しており、ZnO固溶量が同程度の酸窒化物が形成されていることが確認された。また、実施例C-1では、複合酸化物(ZnGa)に類似のピークも観測されており、複合酸化物(ZnGa)が副生成物として形成されていることが示唆された。また、図5(b)に示すとおり、比較例X-5では、実施例A-2及び実施例C-1と比較して、吸収の立ち上がりが短波長側にあり、この結果からも、酸窒化物が形成されず、複合酸化物が形成されていることが示唆された。
【0109】
また、図5(a)に示すとおり、実施例A-2と実施例C-1とを比較すると、実施例A-2のピークがより鋭く、実施例A-2の酸窒化物が、より高い結晶性を有することが示唆された。
【0110】
実施例A-2の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.56であり、実施例C-1の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.49であった。
【0111】
また、実施例A-2の酸窒化物の結晶子径は31nm、実施例C-1の酸窒化物の結晶子径は24nmであった。
【0112】
<水素生成活性の評価>
実施例B-2、実施例C-1及び比較例X-5で得られた光触媒について、上記方法で水素生成活性の評価を行った。図6は、実施例B-2、実施例C-1及び比較例X-5で得られた光触媒の水素生成活性の評価を示す図である。
【0113】
図6に示すとおり、実施例B-2及び実施例C-1の光触媒では、比較例X-5の光触媒と比較して優れた水素生成活性が得られた。
【0114】
(実施例D-1)
(ii)反応工程におけるZnIを、ZnI及びZnCl(モル比1:1)に変更したこと以外は、実施例A-1と同じ方法で酸窒化物を製造した。
【0115】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例A-1及び実施例D-1で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図7(a)は、実施例A-1及び実施例D-1で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図7(b)は、実施例A-1及び実施例D-1で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。また、図8(a)は、実施例A-1で得られた酸窒化物のFE-SEM画像を示す図であり、図8(b)は、実施例D-1で得られた酸窒化物のFE-SEM画像を示す図である。
【0116】
図7(a)に示すとおり、実施例D-1の酸窒化物は、実施例A-1の酸窒化物と同様のピークを示し、ZnO固容量が同程度の酸窒化物であることが確認された。また、実施例D-1の酸窒化物は、実施例A-1の酸窒化物と比較して、ピーク幅が狭く、高い結晶性を有していることが確認された。
【0117】
実施例A-1の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.57であり、実施例D-1の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.56であった。
【0118】
また、実施例A-1の酸窒化物の結晶子径は39nm、実施例D-1の酸窒化物の結晶子径は48nmであった。
【0119】
また、図8(a)及び図8(b)に示すとおり、実施例D-1の酸窒化物は、実施例A-1の酸窒化物より粒子サイズが大きいことが確認された。この理由は、実施例D-1では、ハロゲン化金属としてZnIよりも融点の低いZnClとZnIの混合物を用いたことで粒子成長が促進されたため、と考えられる。
【0120】
(実施例E-1)
(iii)焼成工程を、以下の(iv)の工程に変更したこと以外は、実施例A-1と同じ方法で酸窒化物を製造した。
(iv)焼成工程
反応工程(ii)で得られた酸窒化物を1g、アルミナるつぼにはかり取り、大気中にて10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、1時間加熱した。加熱後の酸窒化物を、0.5M硝酸水溶液で処理し、水で洗浄し、一晩乾燥させた。次いで、酸窒化物をアルミナボートに移し、50mL/分のアンモニア流通下で、10℃/分の昇温速度で800℃まで昇温し、1時間加熱した。
【0121】
次いで、得られた酸窒化物を用いて以下の方法で光触媒を製造した。
0.15gの酸窒化物と15mLの純水を、容量30mLのマイクロ波照射装置用容器に入れた。そこに、Ir濃度が5.18mg/mLのNaIrCl・xHO水溶液を加えた。懸濁液を超音波処理により十分に分散させ、マイクロ波照射装置で150℃まで素早く加熱した後、10分間保持した。加熱時は撹拌子によって常時1000rpmで撹拌した。反応後は水で洗浄、ろ過によって回収した。
次いで、Rhを光電着法で担持した。反応溶液にはメタノール水溶液を用い、Rh源にはNaRhCl・nHO水溶液を用いた。Rh担持後、濾過により回収し、次いでCrを光電着法で担持し、光触媒を得た。反応溶液には純水を用い、Cr源にはKCrOを用いた。
光触媒中、酸窒化物100質量部に対してIrの担持量(金属元素換算)は0.1質量部、Rhの担持量は0.1質量部、Crの担持量(金属元素換算)は0.1質量部とした。
【0122】
(実施例E-2)
(iv)焼成工程(2)において、アンモニア流通下での加熱温度を800℃から850℃に変更したこと以外は、実施例E-1と同じ方法で酸窒化物を製造した。また、得られた酸窒化物を用いて、実施例E-1と同じ方法で光触媒を製造した。
【0123】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例E-1及び実施例E-2で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図9(a)は、実施例E-1及び実施例E-2で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図9(b)は、実施例E-1及び実施例E-2で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
【0124】
図9(a)に示すとおり、アンモニア流通下での焼成によって、XRDピークが高角側(GaN側)へとシフトし、酸窒化物中の酸化亜鉛が還元、揮発していることが示唆された。より高温で焼成した実施例E-2において、そのシフト量は大きくなった。101回折から求まる実施例E-1及びE-2の酸窒化物の結晶子径はそれぞれ28nm、28nmであり、焼成工程(2)を行わない実施例A-1の酸窒化物の結晶子径(39nm)と比較して小さくなった。実施例E-1及びE-2の酸窒化物のZn/(Zn+Ga)(モル比)はそれぞれ0.45、0.41と求まり、実施例A-1の酸窒化物のZn/(Zn+Ga)(0.57)より低下した。
【0125】
図9(b)からは、XRDピークのシフト及びZn/(Zn+Ga)の低下に対応して、光吸収の立ち上がりが短波長側にシフトしていることがわかる。アンモニア流通下での焼成によって、光吸収の立ち上がりは短波長側へシフトしたが、比較例X-1と比べると、光吸収の立ち上がりが長波長側にある酸窒化物が得られた。
【0126】
<水分解活性の評価>
実施例E-1及び実施例E-2で得られた光触媒について、以下の方法で水分解活性を評価した。
光触媒を10~20秒程度の超音波によって純水に分散させた。反応系を十分に脱気し、アルゴンを10kPa導入し、300Wキセノンランプの可視光を照射した。反応系に接続した熱伝導度検出器付きガスクロマトグラフにより、1時間毎の水素生成量及び酸素生成量を測定した。
図10は、実施例E-1及び実施例E-2で得られた光触媒の水分解活性の評価結果を示す図である。
【0127】
図10に示すとおり、実施例E-1及び実施例E-2で得られた光触媒は、可視光水分解活性を有する光触媒として機能することが確認された。なお、アンモニア熱窒化(例えば、比較例X-1~X-4)による合成では、500nm以降に吸収端を有し、且つ、可視光水分解活性を示すGaN:ZnOの合成は困難であり、これまでに報告例はない。
【0128】
(実施例F-1)
(iii)焼成工程を、以下の(v)の工程に変更したこと以外は、実施例A-1と同じ方法で酸窒化物を製造した。
(v)焼成工程
反応工程(ii)で得られた酸窒化物を1g、アルミナボートに移し、10mL/分のアンモニア及び40mL/分の窒素の混合気体流通下で、10℃/分の昇温速度で850℃まで昇温し、1時間加熱した。ついで、酸窒化物をアルミナるつぼにはかり取り、大気中にて10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、1時間加熱した。加熱後の酸窒化物を、0.5M硝酸水溶液で処理し、水で洗浄し、一晩乾燥させて酸窒化物を得た。
【0129】
(実施例F-2)
(v)焼成工程における「10mL/分のアンモニア及び40mL/分の窒素の混合気体流通下」を「25mL/分のアンモニア及び25mL/分の窒素の混合気体流通下」に変更したこと以外は、実施例F-1と同じ方法で酸窒化物を製造した。
【0130】
(実施例F-3)
(v)焼成工程における「10mL/分のアンモニア及び40mL/分の窒素の混合気体流通下」を「50mL/分のアンモニア流通下」に変更したこと以外は、実施例F-1と同じ方法で酸窒化物を製造した。
【0131】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例F-1、実施例F-2及び実施例F-3で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図11(a)は、実施例A-1、実施例F-1、実施例F-2及び実施例F-3で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図11(b)は、実施例A-1、実施例F-1、実施例F-2及び実施例F-3で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
【0132】
図11(a)に示すとおり、焼成工程におけるアンモニア濃度が高いほど、XRDピークが高角側(GaN側)へとシフトしており、酸窒化物中の酸化亜鉛が焼成工程中に還元及び揮発しやくなる傾向が示唆された。
【0133】
実施例A-1の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.57であり、実施例F-1の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.53であり、実施例F-2の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.48であり、実施例F-3の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.48であった。
【0134】
また、実施例A-1の酸窒化物の結晶子径は39nm、実施例F-1の酸窒化物の結晶子径は30nm、実施例F-2の酸窒化物の結晶子径は28nm、実施例F-3の酸窒化物の結晶子径は27nmであった。
【0135】
(実施例G-1)
(v)焼成工程において、酸窒化物1.00gに対してZnO(関東化学株式会社、≧99.0%)を0.25g加えて混合したこと以外は、実施例F-1と同じ方法で酸窒化物を製造した。
【0136】
(実施例G-2)
(v)焼成工程において、酸窒化物1.00gに対してZnO(関東化学株式会社、≧99.0%)を0.50g加えて混合したこと以外は、実施例F-1と同じ方法で酸窒化物を製造した。
【0137】
(実施例G-3)
(v)焼成工程において、酸窒化物1.00gに対してZnO(関東化学株式会社、≧99.0%)を1.00g加えて混合したこと以外は、実施例F-1と同じ方法で酸窒化物を製造した。
【0138】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例G-1、実施例G-2及び実施例G-3で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図12(a)は、実施例F-1、実施例G-1、実施例G-2及び実施例G-3で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図12(b)は、実施例F-1、実施例G-1、実施例G-2及び実施例G-3で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
【0139】
図12(a)に示すとおり、ZnOの添加により、XRDピークのブロード化が抑制された。
【0140】
実施例F-1の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.53であり、実施例G-1の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.53であり、実施例G-2の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.53であり、実施例G-3の酸窒化物におけるZn/(Zn+Ga)(モル比)は0.55であった。
【0141】
また、実施例F-1の酸窒化物の結晶子径は30nm、実施例G-1の酸窒化物の結晶子径は36nm、実施例G-2の酸窒化物の結晶子径は36nm、実施例G-3の酸窒化物の結晶子径は37nmであった。
【0142】
(実施例H-1)
以下の方法で、酸窒化物(ZnGeN:ZnO)の製造を行った。
(i)Znの合成
Zn粉末(株式会社高純度化学研究所、99%)を2g秤量し、アルミナボートに乗せ、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、アンモニア流量100mL/分で10時間加熱して、Znを合成した。
(ii)反応工程
ZnO(関東化学株式会社、≧99.0%)、GeO(株式会社高純度化学研究所、99.99%)、Zn及びZnCl(関東化学株式会社、≧98%)を、モル比が1:1:1.1:2となるように秤量(順に0.326g、0.419g、0.986g、1.090g)し、混合し、内容積が約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnの酸化及びZnClの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は、2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間の昇温速度で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間の昇温速度で750℃まで昇温し、20時間加熱した。室温まで自然冷却し、封管を破壊して、酸窒化物を得た。
(iii)焼成工程
反応工程で得られた酸窒化物を0.3g、アルミナボートにはかり取り、20mL/分のアンモニア流通下で、10℃/分の昇温速度で850℃まで昇温し、1時間加熱した。その後、アルミナるつぼに移し、大気中にて10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、1時間加熱した。加熱後の酸窒化物は、0.15Mの硝酸水溶液で処理し、水で洗浄し、一晩乾燥させた。
【0143】
(実施例H-2)
反応工程(ii)において、750℃での加熱時間を10時間に変更したこと以外は、実施例H-1と同じ方法で、酸窒化物(ZnGeN:ZnO)を製造した。
【0144】
(実施例H-3)
反応工程(ii)において、750℃での加熱時間を40時間に変更したこと以外は、実施例H-1と同じ方法で、酸窒化物(ZnGeN:ZnO)を製造した。
【0145】
(実施例H-4)
反応工程(ii)において、750℃での加熱時間を80時間に変更したこと以外は、実施例H-1と同じ方法で、酸窒化物(ZnGeN:ZnO)を製造した。
【0146】
(比較例Y-1)
以下の方法で、酸窒化物の製造を行った。
(i)反応工程
ZnO(関東化学株式会社、≧99.0%)、GeO(株式会社高純度化学研究所、99.99%)、Zn(株式会社高純度化学研究所、99%)及びNHCl(関東化学株式会社、≧99.5%)を、モル比が1:1:3:2となるように秤量(順に0.366g、0.471g、0.883g、0.481g)し、混合し、内容積が約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnの酸化及びNHClの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は、2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間の昇温速度で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間の昇温速度で750℃まで昇温し、20時間加熱した。室温まで自然冷却し、封管を破壊して、内容物を回収した。内容物を水で洗浄し、乾燥させることで酸窒化物を得た。
(ii)焼成工程
反応工程で得られた酸窒化物を0.3g、アルミナボートにはかり取り、20mL/分のアンモニア流通下で、10℃/分の昇温速度で850℃まで昇温し、1時間加熱した。その後、アルミナるつぼに移し、大気中にて10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、1時間加熱した。加熱後の酸窒化物は、0.15Mの硝酸水溶液で処理し、水で洗浄し、一晩乾燥させた。
【0147】
(比較例Y-2)
以下の方法で、酸窒化物の製造を行った。
ZnO(関東化学株式会社、≧99.0%)、GeO(関東化学株式会社、99.99%)を、モル比が5:1となるように秤量(順に1.59g、0.41g)し、混合し、石英ウールに充填して管状炉に装填した。試料を20mL/分のアンモニア流通下で、10℃/分の昇温速度で850℃まで昇温し、15時間加熱して、酸窒化物を得た。
【0148】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例H-1、実施例H-2、実施例H-3、実施例H-4、比較例Y-1及び比較例Y-2で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。
【0149】
図13(a)は、実施例H-1、比較例Y-1及び比較例Y-2で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図13(b)は、実施例H-1、比較例Y-1及び比較例Y-2で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
【0150】
図13(a)に示すとおり、実施例H-1の酸窒化物は、比較例Y-2の酸窒化物と比較して、ZnO側にピークがシフトしており、比較例Y-2の酸窒化物よりZnOの固溶量が多いことが確認された。また、図13(b)に示すとおり、実施例H-1の酸窒化物は、比較例Y-2の酸窒化物と比較して、吸収の立ち上がりが高波長側にシフトしており、より広範囲での可視光吸収が可能であることが確認された。
【0151】
また、図13(a)に示すとおり、比較例Y-1の酸窒化物は、不純物として金属Geを含むことが確認された。また、図13(b)に示すとおり、比較例Y-1の酸窒化物は、長波長側に連続した吸収を示した。長波長域の連続的な光吸収は、酸窒化物中の不純物の金属Geによるものであると考えられ、この結果からも金属Geの混入が示唆された。なお、金属Geは、NHClの分解で発生した水素により、酸窒化物の形成中又は形成後にGeOの還元、酸窒化物の還元的分解等が生じることで生成したと考えられる。
【0152】
図14(a)は、実施例H-1、実施例H-2、実施例H-3及び実施例H-4で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図14(b)は、実施例H-1、実施例H-2、実施例H-3、実施例H-4及び比較例Y-2で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
【0153】
図14(a)に示すとおり、実施例H-1、実施例H-2、実施例H-3及び実施例H-4の酸窒化物は同程度の角度にXRDピークを有し、同程度のZnO固溶量を有する酸窒化物であることが確認された。また、実施例H-1~H-3の酸窒化物は、実施例H-4の酸窒化物と比較してXRDピークがシャープであり、適切な加熱時間の設定により、結晶性により優れる酸窒化物が得られることが示唆された。
【0154】
(実施例I-1)
以下の担持工程により、実施例H-1の酸窒化物に助触媒を担持させて、光触媒を製造した。
0.11gの酸窒化物を純水に入れ、60秒程度の超音波照射処理により十分に分散させた。そこに、NaRhCl水溶液とCr(NO水溶液を加えた。懸濁液の液量は3mL程度となるように調整した。懸濁液を湯浴上で蒸発乾固させた後、回収して磁性るつぼに移し、大気中にて10℃/分で350℃まで昇温し、1時間加熱した。
光触媒中、酸窒化物100質量部に対してRhの担持量(金属元素換算)は3.0質量部、Crの担持量(金属元素換算)は0.2質量部とした。
【0155】
(実施例I-2)
実施例H-3の酸窒化物を用いたこと以外は、実施例I-1と同じ方法で光触媒を製造した。
【0156】
(実施例I-3)
実施例H-4の酸窒化物を用いたこと以外は、実施例I-1と同じ方法で光触媒を製造した。
【0157】
<水素生成活性の評価>
実施例I-1、実施例I-2及び実施例I-3で得られた光触媒について、上記の方法で水素生成活性を評価した。
その結果、実施例I-1の光触媒の水素生成速度は0.2μmol/hであり、実施例I-2の光触媒の水素生成速度は1.5μmol/hであり、実施例I-3の光触媒の水素生成速度は、6.1μmol/hであった。これらの結果から、実施例I-1~I-3の光触媒が、可視光によって光触媒として機能することが確認された。
【0158】
(実施例J-1)
以下の方法で、酸窒化物(GaN:ZnO)の製造を行った。
(i)Znの合成
Zn粉末(株式会社高純度化学研究所、99%)を2g秤量し、アルミナボートに乗せ、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、アンモニア流量100mL/分で10時間加熱して、Znを合成した。
(ii)反応工程
Ga(株式会社高純度化学研究所、99.99%)、Zn及びZnBr(東京化成工業株式会社、≧98.0%)をモル比が1:1.27:3.19となるように秤量(0.68g、0.986g及び2.480g)し、混合し、内容積が約100cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合は、Znの酸化及びZnBrの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間の昇温速度で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間の昇温速度で700℃まで昇温し、10時間加熱した。室温まで自然冷却し、封管を破壊して、酸窒化物を得た。
(iii)焼成工程
反応工程(ii)で得られた酸窒化物を1g、アルミナボートに移し、50mL/分のアンモニア流通下で、10℃/分の昇温速度で850℃まで昇温し、1時間加熱した。ついで、酸窒化物をアルミナるつぼにはかり取り、大気中にて10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、1時間加熱した。加熱後の酸窒化物を、0.5M硝酸水溶液で処理し、水で洗浄し、一晩乾燥させて酸窒化物を得た。
【0159】
(実施例J-2)
反応工程(ii)における加熱温度を700℃から800℃に変更したこと以外は、実施例J-1と同じ方法で、酸窒化物(GaN:ZnO)を製造した。
【0160】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例A-1、実施例J-1及び実施例J-2で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図15(a)は、実施例A-1、実施例J-1及び実施例J-2で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図15(b)は、実施例A-1、実施例J-1及び実施例J-2で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
【0161】
図15(a)に示すとおり、実施例J-1及び実施例J-2の酸窒化物は、実施例A-1の酸窒化物と同様のピークを示し、かつピークがより低角度側(ZnO側)であることから、ZnO固容量が同程度かやや大きい酸窒化物であることが確認された。また、図15(b)に示すとおり、実施例J-1及び実施例J-2の酸窒化物は、実施例A-1の酸窒化物と同程度か、やや長波長域まで可視光を吸収することが確認された。
【0162】
また、実施例J-1の酸窒化物の結晶子径は26nm、実施例J-2の酸窒化物の結晶子径は38nmであった。
【0163】
(実施例K-1)
以下の方法で酸窒化物(GaN:ZnO)及び光触媒の製造を行った。
(i)GaN:ZnOの製造
Zn粉末(高純度化学、99%)を2.5g秤量し、アルミナボートに乗せ、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、アンモニア流量300mL/分で4時間加熱して、Znを合成した。
次に、Ga、Zn、Znlをモル比が1:1.1:5となるように秤量(順に1.4996g、1.9725g、12.769g)し、混合し、内容積約80cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnの酸化及びZnlの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間で850℃まで昇温し、10時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊して試料を取り出した。試料を純水で洗浄後、真空乾燥機で乾燥させた。
乾燥後の試料0.5gをアルミナボートにはかり取り、850℃で1時間、窒素希釈したNH(NH 10mL/分+N 40mL/分)流通下で加熱した。次いで、試料をアルミナるつぼに移し、大気中にて10℃/分で600℃まで昇温し、1時間加熱した。加熱後、0.5M希硝酸で処理し、水で洗浄し、ろ過したのち一晩乾燥させて、酸窒化物(GaN:ZnO)を得た。
(ii)光触媒の製造
酸窒化物(GaN:ZnO)に、酸化反応助触媒として酸化イリジウム(IrO)をマイクロ波照射によって担持した。加熱は1000rpmで撹拌しながら150℃で10分行った。その後、試料粉末を蒸留水で洗浄し、ろ過して回収した。ついで、試料粉末に対し、還元反応助触媒としてRhをメタノール水溶液中での光電着により担持した。Rh源にはNaRhCl水溶液を用いた。さらに、Cr/Rhのコアシェルを形成するために、Crを蒸留水中での光電着法にて担持して、光触媒を得た。Cr源にはKCrO水溶液を用いた。なお、光触媒中、酸窒化物100質量部に対して、Irの担持量(金属元素換算)は0.1質量部、Rhの担持量(金属元素換算)は0.1質量部、Crの担持量(金属元素換算)は0.1質量部とした。
【0164】
(実施例K-2)
実施例K-1で得られた光触媒に、更に、酸化反応助触媒として、酸化コバルト(CoO)を、光電着法で担持させた。まず、実施例K-1で得られた光触媒に、Co(NO水溶液を、Coの担持量が酸窒化物100質量部に対して0.1質量部となるように添加し、反応系を十分に脱気した。その後、アルゴンを10kPa導入し、300Wキセノンランプの可視光を照射することで、実施例K-2の光触媒を得た。
【0165】
<水分解活性の評価>
実施例K-1及び実施例K-2で得られた光触媒について、以下の方法で水分解活性を評価した。
光触媒を10~20秒程度の超音波によって純水に分散させた。反応系を十分に脱気し、アルゴンを10kPa導入し、300Wキセノンランプの可視光を照射した。反応系に接続した熱伝導度検出器付きガスクロマトグラフにより、水素の生成速度及び酸素の生成速度を測定した。
図16は、実施例K-1及び実施例K-2で得られた光触媒の水分解活性の評価結果を示す図である。測定の結果、実施例K-1の光触媒では、水素の生成速度が0.8μmol/h、酸素の生成速度が0.4μmol/hであった。また、実施例K-2の光触媒では、水素の生成速度が1.5μmol/h、酸素の生成速度が0.5μmol/hであった。
【0166】
(実施例L-1)
以下の方法で酸窒化物(ZnGeN:ZnO)及び光触媒の製造を行った。
(i)ZnGeN:ZnOの製造
Zn粉末(高純度化学、99%)を2g秤量し、アルミナボートに乗せ、10℃/分で600℃まで昇温し、アンモニア流量100mL/分で10時間加熱してZnを合成した。
次に、ZnO、GeO、Zn、ZnClをモル比が1:1:1.1:2となるように秤量(順に0.3256g、0.4185g、0.9863g、1.090g)し、混合し、内容積約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnの酸化及びZnClの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間で750℃まで昇温し、40時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊して試料を取り出した。
次いで、試料0.3gをアルミナボートにはかり取り、850℃で1時間、20mL/分のアンモニア流通下で加熱した。次いで、試料をアルミナるつぼに移し、大気中にて10℃/分で600℃まで昇温し、1時間加熱した。加熱後、0.15M希硝酸で処理し、水で洗浄し、ろ過したのち一晩乾燥させて、酸窒化物(ZnGeN:ZnO)を得た。
(ii)光触媒の製造
酸窒化物(ZnGeN:ZnO)に、酸化反応助触媒として酸化イリジウム(IrO)をマイクロ波加熱法により担持した。具体的には、0.11gの酸窒化物と蒸留水を容器に入れ、60秒程度の超音波照射処理により十分に分散させた。そこに、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸ナトリウム六水和物(NaIrCl・6HO)水溶液を加えて、懸濁液を得た。なお、純水及び水溶液の量は、懸濁液の液量は15mL程度となるように、且つ、Irの金属元素換算の担持量が酸窒化物100質量部に対して0.1質量部となるように、調節した。次いで、マイクロ波照射により150℃まで昇温し、10分保持した後、エアーコンプレッサーを用い、70℃まで急速冷却し、吸引ろ過で試料を回収した。
次に、光電着法により、還元反応助触媒であるロジウム(Rh)を担持した。具体的には、試料0.1gを秤量し、反応容器中で10体積%メタノール水溶液100mLに懸濁させた。次いで、Rhの金属元素換算の担持量が酸窒化物100質量部に対して0.1質量部となるように、ヘキサクロロロジウム(III)酸ナトリウムn水和物(NaRhCl・nHO)水溶液を反応容器に加え、閉鎖循環系に取り付け、スターラーで撹拌した。系内を十分に脱気し、アルゴンガスを10kPa程度になるように導入した。20Aに調節したキセノンランプ(300W)、全反射鏡、カットオフフィルター(L-42)を用い可視光(λ>420nm)を反応容器に照射することで、Rhを担持した試料を得た。
次に、光電着法により、酸化クロム(Cr)を担持した。具体的には、Rhを担持した試料0.1gを秤量し、反応容器中で100mLの蒸留水に分散させた。次いで、Crの金属元素換算の担持量が酸窒化物100質量部に対して0.1質量部となるように、クロム酸カリウム(KCrO)水溶液を反応容器に加え、閉鎖循環系に取り付け、スターラーで撹拌した。系内を十分に脱気し、アルゴンガスを10kPa程度になるように導入した。20Aに調節したキセノンランプ(300W)、全反射鏡、カットオフフィルター(L-42)を用い可視光(λ>420nm)を反応容器に照射することで、実施例L-1の光触媒を得た。
【0167】
(実施例L-2)
実施例L-1で得られた光触媒に、更に、酸化反応助触媒として、酸化コバルト(CoO)を、光電着法により担持させた。具体的には、まず、実施例L-1で得られた光触媒0.1gを秤量し、反応容器中で100mLの蒸留水に分散させた。次いで、Coの金属元素換算の担持量が酸窒化物100質量部に対して0.1質量部となるように、硝酸コバルト(II)六水和物(Co(NO・6HO)水溶液を反応容器に加え、閉鎖循環系に取り付け、スターラーで撹拌した。系内を十分に脱気し、アルゴンガスを10kPa程度になるように導入した。20Aに調節したキセノンランプ(300W)、全反射鏡、カットオフフィルター(L-42)を用い可視光(λ>420nm)を反応容器に照射することで、実施例L-2の光触媒を得た。
【0168】
<水分解活性の評価>
実施例L-1及び実施例L-2で得られた光触媒について、以下の方法で水分解活性を評価した。
反応容器中で、光触媒を60秒程度の超音波によって蒸留水に分散させた。反応系を十分に脱気し、アルゴンを10kPa導入した。20Aに調節したキセノンランプ(300W)、全反射鏡、カットオフフィルター(L-42)を用い可視光(λ>420nm)を反応容器に照射した。反応系に接続した熱伝導度検出器付きガスクロマトグラフにより、水素の生成速度及び酸素の生成速度を測定した。
図17は、実施例L-1及び実施例L-2で得られた光触媒の水分解活性の評価結果を示す図である。測定の結果、15時間平均で、実施例L-1の光触媒では、水素の生成速度が0.29μmol/h、酸素の生成速度が0.14μmol/hであった。また、実施例L-2の光触媒では、水素の生成速度が0.61μmol/h、酸素の生成速度が0.22μmol/hであった。
【0169】
<実施例M-1>
以下の方法でハロゲン化窒化金属及び酸窒化物(ZnGeN:ZnO)の製造を行った。
(i)ZnNClの製造
Zn粉末(高純度化学、99%)を2g秤量し、アルミナボートに乗せ、10℃/分で600℃まで昇温し、アンモニア流量100mL/分で10時間加熱してZnを合成した。
次に、Zn、ZnClをモル比が1.1:1となるように秤量(順に1.2328g、0.6814g)し、混合し、内容積約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnの酸化及びZnClの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて10℃/分で550℃まで昇温し、20時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊してZnNClを取り出した。
(ii)ZnGeN:ZnOの製造
ZnO、GeO、ZnNCl、ZnClをモル比が1:1:2:1となるように秤量(順に0.1628g、0.2093g、0.7209g、0.2720g)し、混合し、内容積約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnNClの酸化及びZnClの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間で750℃まで昇温し、10時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊して試料を取り出した。
【0170】
<実施例M-2>
以下の方法でハロゲン化窒化金属及び酸窒化物(ZnGeN:ZnO)の製造を行った。
(i)ZnNClの製造
Zn粉末(高純度化学、99%)を2g秤量し、アルミナボートに乗せ、10℃/分で600℃まで昇温し、アンモニア流量100mL/分で10時間加熱してZnを合成した。
次に、Zn、ZnClをモル比が1.1:1となるように秤量(順に1.2328g、0.6814g)し、混合し、内容積約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnの酸化及びZnClの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて10℃/分で550℃まで昇温し、20時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊してZnNClを取り出した。
(ii)ZnGeN:ZnOの製造
ZnO、GeO、ZnNClをモル比が1:1:2となるように秤量(順に0.1628g、0.2093g、0.7209g)し、混合し、内容積約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnNClの酸化を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間で750℃まで昇温し、10時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊して試料を取り出した。
【0171】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例M-1及び実施例M-2で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図18(a)は、実施例M-1及び実施例M-2で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図であり、図18(b)は、実施例M-1及び実施例M-2で得られた酸窒化物の拡散反射スペクトルを示す図である。
【0172】
図18(a)に示すとおり、実施例M-1及び実施例M-2の酸窒化物は同程度の角度にXRDピークを有し、同程度のZnO固溶量を有する酸窒化物であることが確認された。また、実施例M-1及び実施例M-2の酸窒化物は、比較例Y-2の酸窒化物と比較してXRDピークがより低角度側(ZnO側)であることから、ZnO固容量が大きい酸窒化物であることが確認されたほか、不純物として金属Geを含むことが確認された。また、図18(b)に示すとおり、実施例M-1及び実施例M-2の酸窒化物は、比較例Y-2の酸窒化物と比べてやや長波長域まで可視光を吸収することが確認された。また、図18(b)に示すとおり、実施例M-1及び実施例M-2の酸窒化物は、長波長側に連続した吸収を示した。長波長域の連続的な光吸収は、酸窒化物中の不純物の金属Geによるものであると考えられ、この結果からも金属Geの混入が確認された。
【0173】
<実施例N-1>
以下の方法でハロゲン化窒化金属及び酸窒化物(GaN:ZnO)の製造を行った。
(i)ZnNIの製造
Zn粉末(高純度化学、99%)を2.5g秤量し、アルミナボートに乗せ、10℃/分で600℃まで昇温し、アンモニア流量300mL/分で4時間加熱してZnを合成した。
次に、Zn、ZnIをモル比が1.1:1となるように秤量(順に0.971g,1.277g)し、混合し、内容積約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnの酸化及びZnIの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて10℃/分で550℃まで昇温し、20時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊してZnNIを取り出した。
(ii)GaN:ZnOの製造
Ga、ZnNIをモル比が1:2.2となるように秤量(順に0.206g、0.834g)し、混合し、内容積約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnNIの酸化及び吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間で850℃まで昇温し、10時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊して試料を取り出した。試料を、0.5M硝酸水溶液で処理し、水で洗浄し、一晩乾燥させて酸窒化物を得た。
【0174】
<実施例N-2>
(i)ZnNIの製造
Zn粉末(高純度化学、99%)を2.5g秤量し、アルミナボートに乗せ、10℃/分で600℃まで昇温し、アンモニア流量300mL/分で4時間加熱してZnを合成した。
次に、Zn、ZnIをモル比が1.1:1となるように秤量(順に0.971g,1.277g)し、混合し、内容積約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnの酸化及びZnIの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて10℃/分で550℃まで昇温し、20時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊してZnNIを取り出した。
(ii)GaN:ZnOの製造
Ga、ZnNI、ZnIをモル比が1:2.2:5となるように秤量(順に0.375g、1.301g、3.192g)し、混合し、内容積約9.5cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnNIの酸化及び吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間で850℃まで昇温し、10時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊して試料を取り出した。試料を、0.5M硝酸水溶液で処理し、水で洗浄し、一晩乾燥させて酸窒化物を得た。
【0175】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例N-1及び実施例N-2で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図19は、実施例N-1及び実施例N-2で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図である。
【0176】
図19に示すとおり、実施例N-1及び実施例N-2の酸窒化物は同程度の角度にXRDピークを有し、同程度のZnO固溶量を有する酸窒化物であることが確認された。また、実施例N-1及び実施例N-2の酸窒化物は、例えば比較例X-1の酸窒化物と比較してXRDピークがより低角度側(ZnO側)であることから、ZnO固容量が大きい酸窒化物であることが確認された。また、実施例N-1及び実施例N-2の酸窒化物の結晶子径はそれぞれ41nm、38nmであり、実施例A-1の酸窒化物の結晶子径(39nm)と同程度であった。これは反応工程においてZnNIがZn及びZnIの混合物と同様に亜鉛源かつ窒素源としての機能することを示唆している。
【0177】
<実施例O-1>
Zn粉末(高純度化学、99%)を2.5g秤量し、アルミナボートに乗せ、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、アンモニア流量300mL/分で4時間加熱して、Znを合成した。
次に、原料としてGa、Zn、Znlをモル比が1:1.1:5となるように秤量(順に0.562g、0.740g、4.788g)し、混合し、内容積約80cmの石英管に移した。なお、秤量及び混合はZnの酸化及びZnlの吸湿を防ぐために窒素置換グローブボックス内で行った。混合物を入れた石英管は2時間真空引きした後、バーナーで封じて、真空封管とした。真空封管を電気炉にて150℃/時間で430℃まで昇温し、2時間保持し、続けて150℃/時間で850℃まで昇温し、10時間保持した後、室温まで自然冷却した。室温まで冷却後、封管を破壊して試料を取り出した。試料を純水で洗浄後、真空乾燥機で乾燥させた。
【0178】
<実施例O-2>
原料としてGa、Zn、Znl、Iをモル比が1:1.1:5:0.1となるように秤量(順に0.562g、0.740g、4.788g、0.039g)したほかは実施例O-1と同様の手順で酸窒化物(GaN:ZnO)を得た。
【0179】
<実施例O-3>
原料としてGa、Zn、Znl、Iをモル比が1:1.1:5:0.2となるように秤量(順に0.562g、0.740g、4.788g、0.076g)したほかは実施例O-1と同様の手順で酸窒化物(GaN:ZnO)を得た。
【0180】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例O-1、実施例O-2、及び実施例O-3で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図20は、実施例O-1、実施例O-2、及び実施例O-3で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図である。
【0181】
図20に示すとおり、実施例O-1、実施例O-2、及び実施例O-3の酸窒化物は同程度の角度にXRDピークを有し、同程度のZnO固溶量を有する酸窒化物であることが確認された。また、実施例O-1、実施例O-2、及び実施例O-3の酸窒化物は、例えば比較例X-1の酸窒化物と比較してXRDピークがより低角度側(ZnO側)であることから、ZnO固容量が大きい酸窒化物であることが確認された。また、実施例O-1の酸窒化物の結晶子径は36nmであるのに対し、実施例O-2及び実施例O-3の酸窒化物の結晶子径はそれぞれ40nm、39nmであり、適当量のIを添加することで酸窒化物の結晶性が向上することが確認された。
【0182】
<実施例O-4>
原料としてGa、Zn、ZnClをモル比が1:1.1:5となるように秤量(順に1.500g、1.973g、5.455g)したほかは実施例O-1と同様の手順で酸窒化物(GaN:ZnO)を得た。
【0183】
<実施例O-5>
原料としてGa、Zn、ZnCl、Iをモル比が1:1.1:5:0.05となるように秤量((順に0.562g、0.740g、2.045g、0.019g))したほかは実施例O-1と同様の手順で酸窒化物(GaN:ZnO)を得た。
【0184】
<実施例O-6>
原料としてGa、Zn、ZnCl、Iをモル比が1:1.1:5:0.1となるように秤量(順に0.562g、0.740g、2.045g、0.038g)したほかは実施例O-1と同様の手順で酸窒化物(GaN:ZnO)を得た。
【0185】
<実施例O-7>
原料としてGa、Zn、ZnCl、Iをモル比が1:1.1:5:0.2となるように秤量(順に0.562g、0.740g、2.045g、0.076g)したほかは実施例O-1と同様の手順で酸窒化物(GaN:ZnO)を得た。
【0186】
<酸窒化物の分析及び評価>
実施例O-4~O-7で得られた酸窒化物について、上記と同様に分析及び評価を行った。図21は、実施例O-4~O-7で得られた酸窒化物の粉末X線回折パターンを示す図である。
【0187】
図21に示すとおり、実施例O-4~O-7の酸窒化物は同程度の角度にXRDピークを有し、同程度のZnO固溶量を有する酸窒化物であることが確認された。また、実施例O-4~O-7の酸窒化物は、例えば比較例X-1の酸窒化物と比較してXRDピークがより低角度側(ZnO側)であることから、ZnO固容量が大きい酸窒化物であることが確認された。また、実施例O-4の酸窒化物の結晶子径は46nmであるのに対し、実施例O-5、実施例O-6、及び実施例O-7の酸窒化物の結晶子径はそれぞれ50nm、52nm、50nmであり、適当量のIを添加することで酸窒化物の結晶性が向上することが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21