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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131090
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】消火器収納装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 13/78 20060101AFI20230913BHJP
   A62C 35/20 20060101ALI20230913BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A62C13/78 A
A62C35/20
A62C3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159924
(22)【出願日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2022035088
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB01
2E189EB09
(57)【要約】
【課題】監視員通路の通行を妨げることがなく、消火器を容易に取り出すことを可能とする。
【解決手段】消火栓装置10は、道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面に配置された架台30の上に筐体11a、11bが設置される。消火栓装置10の消火器収納部に近い側面には側面消火器扉16が設けられる。道路利用者が消火栓側面扉16の引き出し操作を行うと、消火器72を縦置きして載置した引出本体32が側面の引出開口34から外部に引き出され、消火器72の取り出しを可能とする。筐体11bの前面及び側面には、側面消火器扉16の引出操作による消火器72の取り出し方法を案内する操作説明1614が表示されている。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置された消火器収納装置であって、
前記筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、前記筐体の側面から外部に出し入れ可能とする消火器引出構造を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火器収納装置において、
前記消火器引出構造は、
前記筐体の側面に形成された引出開口と、
前記引出開口に対応して前記筐体の内部に形成された消火器収納部と、
前記引出開口の底部側に位置して前記消火器収納部に対し出し入れ自在に設けられ、前記消火器を縦置き状態で取り出し自在に載置する引出本体と、
前記引出本体の引出側の端部に設けられ、前記引出本体の出し入れに伴い前記引出開口に対し開閉される側面消火器扉と、
前記消火器収納部に対し前記引出本体を引出方向に移動自在に支持する引出機構と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項3】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記側面消火器扉は、引出操作に応じて前記引出開口との係止を解除する扉ハンドルを備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項4】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記側面消火器扉は、側面に、縦書きされた「消火器」の文字列が表示されたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項5】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記筐体は、前記消火器収納部に対応した前面に、
横書き又は縦書きされた「消火器」の文字列が表示され、
前記消火器の収納状態を視認可能とする覗き窓を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項6】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記筐体は、前記消火器収納部に対応した前面に、前記側面消火器扉の引出操作による前記消火器の取り出し方法を案内する操作説明が表示されたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項7】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記筐体は、前記消火器収納部に対応した前面に、横開き自在な前面消火器扉を開閉自在に備え、
前記前面消火器扉は、開放時に前記引出本体に載置された前記消火器が取り出し可能となることを特徴とする消火器収納装置。
【請求項8】
請求項7記載の消火器収納装置において、
前記前面消火器扉は、
横書き又は縦書きされた「消火器」の文字列と、
前記側面消火器扉の引出操作による前記消火器の取り出し方法を案内する操作説明と、
が表示され、
開操作に応じて扉開口に対する係止を解除する扉ハンドルと、
前記消火器の収納状態を視認可能とする覗き窓と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項9】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記引出機構は、水平方向に対し斜め下向きに傾斜した所定角度の引出方向に前記引出本体を移動自在に支持することを特徴とする消火器収納装置。
【請求項10】
請求項2記載の消火器収納装置において、更に、
前記消火器引出構造により前記消火器が前記筐体の側面外部の引出位置へ移動した場合に、所定の操作により前記消火器の縦置きされた状態を維持しながら前方の前記監視員通路の路面上に移動させる消火器移動機構を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項11】
請求項10記載の消火器収納装置において、
前記消火器移動機構は、
少なくとも前方及び上方に開口し、内部に前記消火器を縦置き状態で載置して前記引出本体に搭載された箱枠体と、
前記引出本体が前記引出位置に移動された場合に、所定の操作により前記箱枠体を前記引出本体から前記監視員通路の路面上の所定位置に移動させる平行リンク機構と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項12】
請求項11記載の消火器収納装置において、
前記平行リンク機構は、
前記引出本体の底部に固定された基台と、
下端が前記基台の後端側に軸支されるとともに上端が前記箱枠体の側面上部の後端側に軸支された第1横リンクと、
下端が前記基台の前端側に軸支されるとともに上端が前記箱枠体の側面上部の前端側に軸支された第2横リンクと、
を備え、
前記基台に前記第1横リンク及び前記第2横リンクの下端が軸支される位置が、前記基台に対し前記第1横リンクと前記第2横リンクが前方に回動して前記箱枠体が前記監視員通路の路面上に移動する際に、前記箱枠体の下部が前記基台に接触することなく通過する高さであることを特徴とする消火器収納装置。
【請求項13】
請求項11記載の消火器収納装置において、
前記消火器移動機構は、
前記消火器引出構造により前記引出本体が前記引出位置へ移動された場合に、所定の操作により前記箱枠体の前方への移動の固定を解除して前記平行リンク機構により前記箱枠体を前方へ移動可能とする固定機構を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火器を収納してトンネル内に設置される消火栓装置及び消火器箱などの消火器収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内には、トンネル非常用設備として消火栓装置が設置されている。消火栓装置は、前傾扉(消火栓扉)を備えた筐体の消火栓収納部に、先端にノズルを装着した消火用ホースと消火栓弁を含むバルブ類が収納され、また、消火器扉を備えた消火器収納部に、例えば、2本の消火器が収納されている。また、消火栓装置は、一般的に、トンネル長手方向に、例えば、50メートル間隔でトンネル壁面を箱抜きして埋込み設置されている。
【0003】
ところで、シールド工法等により作られたトンネルにあっては、トンネル躯体の構造上、トンネル壁面を箱抜きして消火栓装置を埋込み設置することがコストや手間の関係から困難であることから、監視員通路に消火栓装置を露出した状態で設置する必要がある。
【0004】
また、消火栓装置をトンネル壁面に箱抜きすることなく設置するため、トンネル壁面に設置された架台に消火栓装置を取り付け固定する壁掛け構造が提案されており、この場合、架台は壁面に固定される主支持部と消火栓装置の姿勢を保持する姿勢保持部材等から構成されている(特許文献2)。
【0005】
また、壁掛け構造の消火栓装置はトンネル壁面への取付けに工数と時間がかかる等の課題があることから、設置が容易である監視員通路の路面上に設置した架台に消火栓装置を露出した状態で取り付け固定する、いわゆる据置き構造とすることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-055073号公報
【特許文献2】特開2020-078429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、壁掛け構造又は据え置き構造の消火栓装置にあっても、消火器扉を備えた筐体の消火器収納部に、例えば、2本の消火器が収納されており、火災発生に伴い道路利用者が消火器を使用する場合には、消火器扉を横開き(片側が軸支された扉が回動)して消火器収納部から消火器を取り出して消火作業を行うことになるが、消火器が取り出された後に消火器扉が横開きされたままになっていると、監視員通路から避難する避難者の通行を妨げるという問題がある。
【0008】
また、道路利用者が消火器扉を横開きした扉開口から消火器を取り出す場合、消火器上端の固定レバーを掴んで前に倒すようにして斜め上方に取り出す必要があり、消火器は10キログラム程度と比較的重いことから、女性や高齢者などの弱者にあっては、消火器の取り出しが困難となり、取り出す際に消火器を落としてしまうといったことが懸念される。
【0009】
この問題は、交通量やトンネル長さ等により分けられた低いランクのトンネルの非常用設備として設置されている消火器箱についても同様となる。
【0010】
本発明は、監視員通路の通行を妨げることがなく、また、道路利用者が消火器を容易に取り出すことを可能とする消火器収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(消火器収納装置)
本発明は、道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置された消火器収納装置であって、
筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、筐体の側面から外部に出し入れ可能とする消火器引出構造を備えたことを特徴とする。
【0012】
(消火器引出構造)
消火器引出構造は、
筐体の側面に形成された引出開口と、
引出開口に対応して筐体の内部に形成された消火器収納部と、
引出開口の底部側に位置して消火器収納部に対し出し入れ自在に設けられ、消火器を縦置き状態で取り出し自在に載置する引出本体と、
引出本体の引出側の端部に設けられ、引出本体の出し入れに伴い引出開口に対し開閉される側面消火器扉と、
消火器収納部に対し引出本体を引出方向に移動自在に支持する引出機構と、
を備える。
【0013】
(扉ハンドル)
側面消火器扉は、引出操作に応じて前記引出開口との係止を解除する扉ハンドルを備える。
【0014】
(側面消火器扉の消火器名称の表示)
側面消火器扉は、側面に、縦書きされた「消火器」の文字列が表示される。
【0015】
(筐体前面の消火器名称と覗き窓)
筐体は、消火器収納部に対応した前面に、
横書き又は縦書きされた「消火器」の文字列が表示され、
消火器の収納状態を視認可能とする覗き窓を備える。
【0016】
(側面消火器扉の操作説明)
筐体は、消火器収納部に対応した前面に、側面消火器扉の引出操作による消火器の取り出し方法を案内する操作説明が表示される。
【0017】
(筐体前面の消火器扉)
筐体は、消火器収納部に対応した前面に、横開き自在な前面消火器扉を開閉自在に備え、
前面消火器扉は、開放時に引出本体に載置された消火器が取り出し可能となる。
【0018】
(消火器前扉の構造と表示)
前面消火器扉は、
横書き又は縦書きされた「消火器」の文字列と、
側面消火器扉の引出操作による消火器の取り出し方法を案内する操作説明と、
が表示され、
開操作に応じて扉開口に対する係止を解除する扉ハンドルと、
消火器の収納状態を視認可能とする覗き窓と、
を備える。
【0019】
(斜め下向きの引出)
引出機構は、引出本体を引出水平方向に対し斜め下向きに傾斜した所定角度の方向に引出本体を移動自在に支持する。
【0020】
(消火器移動機構)
消火器収納装置は、さらに、消火器引出構造により消火器を筐体の側面外部の引出位置へ移動した場合に、所定の操作により消火器の縦置きされた状態を維持しながら前方の監視員通路の路面上に移動させる消火器移動機構を備える。
【0021】
(消火器移動機構の構成)
消火器移動機構は、
少なくとも前方及び上方に開口し、内部に消火器を縦置き状態で載置して引出本体に搭載された箱枠体と、
引出本体が引出位置に移動された場合に、所定の操作により箱枠体を引出本体から監視員通路の路面上の所定位置に移動させる平行リンク機構と、
を備える。
【0022】
(平行リンク機構と設置高さ)
消火器移動機構の平行リンク機構は、
引出本体の底部に固定された基台と、
下端が基台の後端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の後端側に軸支された第1横リンクと、
下端が基台の前端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の前端側に軸支された第2横リンクと、
を備え、
基台に第1横リンク及び第2横リンクの下端が軸支される位置が、基台に対し第1横リンクと第2横リンクが前方に回動して箱枠体が監視員通路の路面上に移動する際に、箱枠体の下部が基台に接触することなく通過する高さである。
【0023】
(消火器移動機構の固定機構)
消火器移動機構は、
消火器引出構造により引出本体が引出位置へ移動された場合に、所定の操作により箱枠体の前方への移動の固定を解除して平行リンク機構により箱枠体を前方へ移動可能とする固定機構を備える。
【発明の効果】
【0024】
(消火器収納装置の効果)
本発明によれば、道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置された消火器収納装置であって、筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、筐体の側面から外部に出し入れ可能とする消火器引出構造を備えたため、道路利用者が消火器を使用して消火活動を行う場合には、消火栓装置の筐体側面方向に消火器を引き出して取り出すことができ、筐体前面の監視員通路の通行を妨げることなく、消火器を取り出すことを可能とする。
【0025】
また、筐体側面方向に引き出された消火器は、前方及び上方に露出した縦置き状態にあり、道路利用者は、消火器上端の固定レバーを握って下から上へ持ち上げる操作により消火器を取り出すことができ、消火器を下から上に持ち上げる操作は、無理のない姿勢で力を出すことができる操作となり、そのため、女性や高齢者などの弱者であっても、容易に消火器を取り出して使用することを可能とする。
【0026】
(消火器引出構造による効果)
また、消火器引出構造は、筐体の側面に形成された引出開口と、引出開口に対応して筐体の内部に形成された消火器収納部と、引出開口の底部側に位置して消火器収納部に対し出し入れ自在に設けられ、消火器を縦置き状態で取り出し自在に載置する引出本体と、引出本体の引出側の端部に設けられ、引出本体の出し入れに伴い引出開口に対し開閉される側面消火器扉と、消火器収納部に対し引出本体を引出方向に移動自在に支持する引出機構とを備えたため、引出本体に縦置き状態で筐体内の消火器収納部に収容されている消火器を、引出本体の前端部に固定されている側面消火器扉を道路利用者が手前に引くことで、引出本体が移動機構によって筐体側面方向の露出した位置に、例えば、机の引出しを開けるようにして、消火器を取り出し可能な状態とすることを可能とする。
【0027】
(扉ハンドルの効果)
また、側面消火器扉は、引出操作に応じて引出開口との係止を解除する扉ハンドルを備えたため、通常時は、側面消火器扉は扉ハンドルによる係止で確実にロックされており、道路利用者が消火器を使用する場合には、扉ハンドルに手をかけて引出操作を行うと係止が解除されて、消火器を縦置き配置した引出本体を筐体側面方向の外部に露出した位置に容易に引き出すことを可能とする。
【0028】
(側面消火器扉の消火器名称の表示による効果)
また、側面消火器扉は、側面に、縦書きされた「消火器」の文字列が表示されることで、消火栓装置から消火器を取り出すための扉位置が筐体側面にあることを、道路利用者に分かり易く示すことを可能とする。
【0029】
(筐体前面の消火器名称と覗き窓による効果)
また、筐体は、消火器収納部に対応した前面に、横書き又は縦書きされた「消火器」の文字列が表示されたことで、消火栓装置における消火器の収納側が容易にわかり、また、消火器の収納状態を視認可能とする覗き窓を備えたことで、点検時などに消火器が正しく収納されていることを外部から容易に確認可能とする。
【0030】
(側面消火器扉の操作説明による効果)
また、筐体は、消火器収納部に対応した前面に、側面消火器扉の引出操作による消火器の取り出し方法を案内する操作説明が表示されることで、消火栓装置から消火器を取り出そうとする道路利用者は、筐体前面の操作説明を見て、消火器扉が筐体側面にあり、消火器扉を引き出すことで消火器を取り出せることを知り、確実に側面消火器扉により消火器を引き出して取り出すことを可能とする。特に、従来の消火栓装置の消火器扉は筐体前面に横開き自在に設けられていることが常識的に知られており、本発明による筐体側面の消火器扉は、従来の常識にはないユニークが構造であることから、道路利用者は、筐体前面の操作説明によって、迷うことなく、筐体側面に設けられた側面消火器扉の引き出し操作による消火器の取り出しを可能とする。
【0031】
(筐体前面の消火器扉による効果)
また、筐体は、消火器収納部に対応した前面に、横開き自在な前面消火器扉を開閉自在に備え、前面消火器扉は、開放時に引出本体に載置された消火器を取り出し可能となることで、筐体側面の側面消火器扉の引き出し操作による消火器の取り出しに加え、筐体前面の前面消火器扉の横開きによる従来の消火栓装置と同様な消火器の取り出しが可能となり、筐体側面からの消火器の取り出しが行いづらい場合、例えば、道路利用者が監視員通路より低い道路面に立って消火栓装置から消火器を取り出す場合にも、容易に消火器を取り出すことを可能とする。
【0032】
(前面消火器扉の構造と表示の効果)
また、消火器扉は、横書き又は縦書きされた「消火器」の文字列と、側面消火器扉の引出操作による消火器の取り出し方法を案内する操作説明とが表示され、開操作に応じて扉開口に対する係止を解除する扉ハンドルと、消火器の収納状態を視認可能とする覗き窓とを備えることで、側面消火器扉に加え、前面消火器扉による消火器の取り出し操作や点検時の消火器の外部からの確認を可能とする。
【0033】
(斜め下向きの引出による効果)
また、引出機構は、水平方向に対し斜め下向きに傾斜した所定角度の方向に引出本体を移動自在に支持するため、水平方向に対し、例えば、2~3°程度の斜め下向きの傾斜角の方向に引出本体を移動自在に支持することで、道路利用者が扉ハンドルにより側面消火器扉の係止を解除した場合に、軽い力で消火器を引き出して取り出し位置に露出させることを可能とし、また、消火器が縦置きされている引出本体の自重により傾斜方向に移動させる力が作用し、扉ハンドルを離しても、消火器を取り出し位置に移動させることを可能とする。
【0034】
(消火器移動機構の効果)
消火器収納装置は、さらに、消火器引出構造により消火器を筐体の側面外部の引出位置へ移動した場合に、所定の操作により消火器の縦置きされた状態を維持しながら前方の監視員通路の路面上に移動させる第2の消火器移動機構を備えたため、消火器引出構造により道路利用者が筐体の側面外側へ消火器を引き出して所定の操作を行うと、消火器移動機構により縦置きされた状態を維持しながら消火器が前方の監視員通路の路面上に移動して露出状態で据え置かれ、消火器が筐体から離れた監視員通路上に置かれることで、消火器を安全かつ容易に消火器を取り出すことが可能となり、消火器を用いた迅速な消火活動を可能とする。
【0035】
(消火器移動機構の構成による効果)
また、消火器移動機構は、少なくとも前方及び上方に開口し、内部に消火器を縦置き状態で載置して引出本体に搭載された箱枠体と、引出本体が引出位置に移動された場合に、所定の操作により箱枠体を引出本体から監視員通路の路面上の所定位置に移動させる平行リンク機構と、を備えたため、消火器引出構造により道路利用者が筐体の側面外側へ引出本体を引き出し、続いて、所定の操作により筐体の側面外側の引出位置に引き出された消火器を縦置きして載置した箱枠体を、平行リンク機構により引出本体の前方の監視員通路上に移動して据え置くことができ、監視員通路上に露出して据え置かれた箱枠体から消火器を安全かつ容易に消火器を取り出すことが可能となる。
【0036】
(平行リンク機構と設置高さの効果)
また、消火器移動機構の平行リンク機構は、消火器収納部の底部に固定された基台と、下端が基台の後端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の後端側に軸支された第1横リンクと、下端が基台の前端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の前端側に軸支された第2横リンクと、を備え、基台に第1横リンク及び第2横リンクの下端が軸支される位置が、基台に対し第1横リンクと第2横リンクが前方に回動して箱枠体が監視員通路の路面上に移動する際に、箱枠体の下部が基台に接触することなく通過する高さであるため、基台、第1横リンク、第2横リンク及び箱枠体により平行リンク機構が簡単且つ堅牢に構成され、また、基台に第1横リンク及び第2横リンクの下端が軸支される位置が所定の高さであることで、箱枠体の下部が基台に接触することなく平行リンク機構により前方の監視員通路の路面上に移動して据え置くことが可能となる。
【0037】
(消火器移動機構の固定機構の効果)
また、消火器移動機構は、消火器引出構造により引出本体が引出位置へ移動された場合に、所定の操作により箱枠体の前方への移動の固定を解除して平行リンク機構により箱枠体を前方へ移動可能とする固定機構を備えたため、消火器引出構造により引出本体が筐体の外部側方に引き出された際には、引出本体に搭載された消火器を載置した箱枠体は固定されているが、固定機構に対し道路利用者が固定を解除するための所定の操作を行うと、消火器を載置した箱枠体が平行リンク機構により前方の監視員通路の路面上に自動的に移動して、筐体の側方と前方への2段階の消火器移動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】トンネル内における消火栓装置の設置状態をトンネル縦断面で示した説明図である。
図2図1の消火栓装置の設置状態をトンネル横断面で示した説明図である。
図3】消火栓装置の設置状態をトンネル横断面で概略的に示した説明図である。
図4】消火栓装置の内部構造を、前傾扉が開いた状態で正面から示した説明図である。
図5】消火栓装置の内部構造を平面で示した説明図である。
図6】消火栓装置の内部構造を右側面から示した説明図である。
図7】消火栓装置の消火器収納側の側面を示した説明図である。
図8】消火器引出構造の引出本体を取り出して示した説明図である。
図9】消火器引出構造の筐体側を示した説明図である。
図10】消火器引出構造の引出機構を取り出して動作を示した説明図である。
図11】側面消火器扉を閉じた消火器収納状態を示した説明図である。
図12図11の内部構造を正面から見て一部断面で示した説明図である。
図13】側面消火器扉が開いて消火器が引き出された状態を示した説明図である。
図14図13の内部構造を正面から見て一部断面で示した説明図である。
図15】側面消火器扉に加えて前面消火器扉を備えた消火栓装置の実施形態を示した説明図である。
図16】消火器の引出方向に斜め下向きの傾斜角が設定された消火器引出構造を示した説明図である。
図17】側面消火器扉が横開きする消火栓装置の実施形態を示した説明図である。
図18】消火器が引き出される前の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した説明図である。
図19】消火器が筐体側方の引出位置へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した説明図である。
図20】消火器が監視員通路の路面上へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した説明図である。
図21】消火器が引き出される前の消火栓装置の内部構造を側面から示した説明図である。
図22】消火器が監視員通路の路面上へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を側面の断面で示した説明図である。
図23】消火器引出構造に搭載された消火器移動機構を取出して示した説明図である。
図24】消火栓移動機構の移動前の状態を示した斜視図である。
図25】消火栓移動機構の移動後の状態を示した斜視図である。
図26】箱枠体の固定を操作ノブにより解除する固定機構を示した説明図である。
図27】箱枠体の下部が基台に接触しないように移動させる平行リンク機構の配置(位置関係)を示した説明図である。
図28】消火器引出構造を備えた消火器箱の実施形態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明に係る消火器収納装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0040】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、筐体内に消火器が収納又は配置される消火器収納装置に関するものである。
【0041】
ここで、「消火器収納装置」とは、消火対象領域となる高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であり、消火対象領域に設置された筐体内に消火用ホース等の消火栓機器、電装扉に赤色表示灯や発信機等の電装機器、及び消火器が配置又は収納された消火栓装置及び電装扉に赤色表示灯や発信機等の電装機器、及び消火器が配置又は収納された消火器箱を含むものである。
【0042】
また、消火器収納装置は、道路を有するトンネルの内部の壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上の所定の高さに露出した状態で設置されるものである。ここで、「所定の高さ」とは、消火器収納装置をトンネル壁面に近接又は当接した位置に設置することが可能な高さであり、例えば、監視員通路の路面上に設置された架台の上部に筐体を取り付け固定すること、或いは、監視員通路の路面上方のトンネル壁面に設置された架台の道路側となる前部に筐体を取り付け固定することで、所定の高さに設置されるものである。
【0043】
また、「架台」とは、柱と梁などによって物を支える構造を指すものであり、具体例は図示していないが、支持台、土台、基台、台座、ベースなどの概念を含むものである。
【0044】
本実施形態の消火器収納装置は、筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、筐体の側面から外部に出し入れする消火器引出構造が設けられたことを特徴とするものであり、道路利用者が消火器を使用して消火活動を行う場合には、監視員通路の通行を妨げることなく、消火器収納装置の筐体側面方向に消火器を引き出して取り出すことを可能とするものである。ここで、「消火器の縦置き」とは、消火器の容器を下にし、開栓レバーと固定レバーを上にして消火器を立てた状態で置くことを意味する。
【0045】
また、筐体側面方向に引き出された消火器は、前方及び上方に露出した縦置き状態にあり、道路利用者は消火器上端の固定レバーを握って下から上へ持ち上げる操作により消火器を取り出すことができ、消火器を下から上に持ち上げる操作は、無理のない姿勢で力を出すことができる操作であることから、女性や高齢者などの弱者であっても、容易に消火器を取り出して使用することを可能とするものである。
【0046】
「消火器引出構造」は、筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、道路利用者が筐体の側面から外部に出し入れする構造であり、その形状や構造は任意であるが、例えば、引出開口、消火器収納部、引出本体、側面消火器扉及び引出機構で構成されるものである。
【0047】
また、「引出開口」とは筐体の消火器収納側の側面に形成された開口である。また、「消火器収納部」とは、引出開口に対応して筐体の内部に形成された消火器が収納される空間である。また、「引出本体」とは、消火器を載置する上部に開口した箱型の容器であり、外部に出し入れ自在に、引出開口の底部側に配置されるものである。
【0048】
また、「側面消火器扉」とは、筐体の側面に設けられた消火器扉であり、引出本体の引出側に設けられ、引出本体の出し入れに伴い引出開口を開閉させるものである。さらに、「引出機構」とは、消火器収納部に対し引出本体を引出方向に移動自在に支持する機構であり、その構造や機能は任意であるが、例えば、事務机や書類ロッカーなどの引出機構が利用可能であり、筐体側に固定されたガイドレールに、引出本体側に固定されたガイドレールが、ガイドローラを介して摺動自在に嵌め込まれるものである。なお、「側面消火器扉」は「消火器側面扉」の概念を含むものである。
【0049】
また、側面消火器扉には扉ハンドルが設けられる。「扉ハンドル」とは、側面消火器扉の引出操作に応じて引出開口との係止を解除するものであり、側面消火器扉は、通常時、扉ハンドルによる係止でロックされており、扉ハンドルによる引出操作が行われると係止が解除されて、引出本体が筐体側面方向の外部に露出した位置に移動して消火器の取り出しを可能とするものである。
【0050】
また、側面消火器扉には、縦書きされた「消火器」の文字列が表示されるものであり、消火器を取り出すための扉位置が筐体側面にあることを、道路利用者に示すものである。また、消火器収納部に対応した筐体の前面にも、縦書き又は横書きされた「消火器」の文字列が表示されるものであり、消火器収納装置における消火器の収納側を分かり易くするものである。
【0051】
また、消火器収納部に対応した筐体の前面には、「覗き窓」が設けられるものであり、点検時などに消火器が正しく収納されていることを外部から容易に確認可能とするものである。
【0052】
また、消火器収納部に対応した筐体の前面に、「操作説明」が表示されるものである。ここで、「操作説明」とは、側面消火器扉の引出操作による消火器の取り出しを案内する表示である。消火器収納装置から消火器を取り出そうとする道路利用者は、筐体前面の「操作説明」を見て、消火器扉が筐体側面にあり、側面消火器扉を引き出すことで消火器を取り出せることを知って、容易に消火器を取り出すことを可能とするものである。特に、従来の消火器収納装置の消火器扉は、筐体前面に横開き自在に設けられていることが常識的に知られており、そうであっても、道路利用者は、筐体前面の「操作説明」によって、迷うことなく、筐体側面に設けられた側面消火器扉の引き出し操作により消火器の取り出しを可能とするものである。
【0053】
また、本実施形態の消火器収納装置は、側面消火器扉に加え、必要に応じて、消火器収納部に対応した筐体の前面に、従来構造と同様に、横開き自在な前面消火器扉が設けられるものである。このため、筐体側面の側面消火器扉の引き出し操作による消火器の取り出しに加え、筐体前面の前面消火器扉の横開きによる従来の消火器収納装置と同様な消火器の取り出しを可能とすることで、筐体側面からの消火器の取り出しが行いづらい場合、例えば、監視員通路より低い道路面に立って消火器を取り出すような場合にも、道路利用者は、前面消火器扉を開いて容易に消火器を取り出すことを可能とするものである。なお、「前面消火器扉」は「消火器前面扉」の概念を含むものである。
【0054】
また、本発明に係る消火器収納装置の引出機構の変形として、水平方向に対し斜め下向きに傾斜した所定角度の引出方向に引出本体を移動自在に支持する機構を含むものである。斜め下向きの傾斜角は任意であるが、例えば、2~3°程度とする。このため、扉ハンドルにより側面消火器扉の係止が解除された場合に、軽い力で消火器の引き出しを可能とし、また、道路利用者が扉ハンドルで係止を解除して軽く引くと、消火器を縦置きしている引出本体の自重により傾斜方向に移動させる力が作用し、扉ハンドルを離しても、消火器を取り出し位置に移動させることを可能とするものである。ここで、「水平」とは、水準器が示す水平に平行即ち鉛直に対し垂直を成すことに限らず、トンネル路面に略平行、路面に変化勾配等がある場合には少なくとも設置場所に対応する路面に略平行であることを含み、更に、筐体幅方向が概ねこのような平行に沿って設置されているときには設置状態の筐体横方向(左右方向、幅方向)に略平行或いは筐体縦方向(上下方向、高さ方向)に略垂直であることを含む概念である。また、「水平線」は、「水平」な方向に略平行な線である。
【0055】
また、実施形態の「消火器引出構造」は「消火器移動機構」を備えるものである。「消火器移動機構」とは、消火器引出構造により消火器が筐体の側面外部の引出位置へ移動した場合に、所定の操作により消火器が縦置きされた状態を維持しながら前方の監視員通路の路面上に移動させるものであり、その構造や機構は任意であるが、例えば、箱枠体と平行リンク機構を備えるものである。
【0056】
ここで、「箱枠体」とは、少なくとも前方及び上方に開口し、内部に消火器を縦置き状態で載置し、引出本体に搭載される容器として機能するものである。また、「平行リンク機構」とは、箱枠体の両側面の各々に設けられ、引出本体が引出位置に移動した場合に、所定の操作により箱枠体を筐体内の消火器収納部から監視員通路の路面上の所定位置に移動させる機構である。
【0057】
また、「平行リンク機構」は、基台、第1横リンク、第2横リンク及び箱枠体で構成されるものである。ここで、「基台」とは、引出本体の上部に固定されるものである。また、「第1横リンク」とは、下端が基台の後端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の後端側に軸支される部材である。また、「第2横リンク」とは、下端が基台の前端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の前端側に軸支される部材である。
【0058】
さらに、「平行リンク機構」は、基台に第1横リンク及び第2横リンクの下端が軸支される位置が、基台に対し第1横リンクと第2横リンクが前方に回動して箱枠体が監視員通路の路面上に移動する際に、箱枠体の下部が基台に接触することなく通過する高さである。
【0059】
このため、消火器移動機構によれば、消火器引出構造により引出本体が筐体の側面方向の露出した引出位置に移動した状態で道路利用者が所定の操作を行うと、消火器を縦置きして載置した箱枠体が、平行リンク機構により引出本体の前方の監視員通路上に移動して据え置かれ、消火器を安全かつ容易に消火器を取り出すことが可能となり、消火器を用いた迅速な消火活動を可能とする。また、消火器が監視員通路上に移動して据え置かれることで、道路利用者による監視員通路から消火器の取出しは勿論のこと、道路側からも道路利用者が安全かつ容易に消火器を取り出すことが可能となる。
【0060】
また、「消火器移動機構」は、消火器引出構造により引出本体が引出位置へ移動した場合に、所定の操作により箱枠体の前方への移動の固定を解除して平行リンク機構により箱枠体を前方へ移動可能とする「固定機構」を備えるものである。消火器引出構造により引出本体が筐体の外部側方に引き出された際には、引出本体に搭載された消火器を載置した箱枠体は固定されているが、固定機構に対し道路利用者が固定を解除するための所定の操作を行うと、消火器を載置した箱枠体が平行リンク機構により前方の監視員通路の路面上に自動的に移動し、筐体の側方と前方への2段階の消火器移動により消火器の取出しが可能となる。
【0061】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、トンネル内の監視員通路に設置された架台に取付け固定され、監視員通路よりも上方の高い位置に露出して設置される「据置き型の消火栓装置」であり、まず「消火器引出構造」が設けられた場合について説明し、続いて、「消火器引出構造」と「消火器移動機構」が設けられた場合について説明する。さらに、トンネル内に設置される「消火器箱」について説明する。
【0062】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「消火器収納装置」が「消火栓装置」又は「消火器箱」であり、「消火栓装置又は消火器箱がトンネル内の監視員通路上に設置された架台上に取り付け固定された」ものであり、筐体の消火器収納部に「消火器の引出収納構造」が設けられ、筐体の消火器収納部に近い側面に設けられた消火器扉が「側面消火器扉」であり、筐体の消火器収納部に近い前面に設けられた消火器扉が「前面消火器扉」である場合について説明する。
【0063】
[実施形態の具体的内容]
消火器収納装置について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.消火栓装置の概要
b.消火栓装置の設置
c.消火栓装置の設置高さと薄型化
d.消火栓装置の薄型化に対応した構成
e.側面消火器扉を備えた消火栓装置の構造
e1.第1筐体の構造
e2.第2筐体の構造
e3.消火器収納部
f.消火器引出構造
f1.引出本体側の構造
f2.筐体側の構造
f3.引出機構
f4.消火器の引出操作
g.前面消火器扉を備えた実施形態
h.引出機構が傾斜配置された消火栓装置の実施形態
i.側面消火器扉が横開きする消火栓装置の実施形態
j.消火器移動機構の概要
k.消火器移動機構の構成
k1.箱枠体
k2.平行リンク機構
k3.固定機構
k4.平行リンク機構の下リンクの高さ
l.消火器箱の実施形態
m.本発明の変形例
【0064】
[a.消火栓装置の概要]
消火器収納装置を消火栓装置とした場合の消火栓装置の概要について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、トンネル内における消火栓装置の設置状態をトンネル縦断面(トンネル長手方向の断面)で示した説明図である図1、及び、図1の消火栓装置の設置状態をトンネル横断面で示した説明図である図2を参照する。
【0065】
ここで、図1及び図2の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、消火栓装置10の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。この点は、本発明の実施形態を示す図3図28においても、X-Y-Z方向は同様となる。
【0066】
図1に示すように、本実施形態の消火栓装置10の筐体は、第1筐体11a及び第2筐体11bに分割されている。第1筐体11aの前面には化粧枠13aが装着されている。化粧枠13aの扉開口部は上下に分割され、扉開口部の下側にヒンジ12aにより下向きに開く消火栓扉として機能する前傾扉12が配置され、扉開口部の上側にヒンジ14aにより上向きに開く保守扉14が配置され、第1筐体11aの内部となる消火栓機器の収納部に消火用ホース及び消火栓弁等のバルブ類を含む所定の消火栓機器が収納されている。
【0067】
第2筐体11bの前面には化粧枠13bが装着されている。化粧枠13bの右側には扉開口部が設けられ、扉開口部の右側にはヒンジ18aにより右向きに横開きする電装扉18が配置され、左側にはヒンジ20aにより左向きに横開きして、内部の端子箱26a,26bへのアクセスを可能とする補助扉20が配置されている。電装扉18には、電装機器として、例えば、赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ25が設けられ、内側には電話ジャックが設けられている。
【0068】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から確認できるようになっている。火災が発生し、発信機24が押されて押し釦スイッチがオンすると、発信信号が送信され、これを受信した電気室等に設置された防災受信盤から火災警報が出力される。消火栓装置10は、防災受信盤からの応答信号を受信して、赤色表示灯22が点滅し、応答ランプ25が点灯する。
【0069】
補助扉20に相対した第2筐体11b内の後面には、高圧用の端子箱26aと低圧用の端子箱26bが上下方向に配置されている。高圧用の端子箱26aは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた強電用ケーブルと赤色表示灯22を接続する。低圧用の端子箱26bは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた弱電用ケーブルと発信機24、応答ランプ25及び電話ジャック等を接続する。
【0070】
また、第2筐体11bの内側は消火器収納部となっており、消火器収納部に近い第2筐体11bの左側面には、図2に示すように、消火器引出構造における側面消火器扉16が設けられている。側面消火器扉16には扉ハンドル1610と、「消火器」と縦書きされた機器名表示1612が設けられている。
【0071】
側面消火器扉16は、道路利用者が扉ハンドル1610に手をかけて手前方向(側面方向)に引き出すことでラッチが解除され、消火器収納部に収納されている消火器を取り出し可能とする露出状態に引き出すことができる。このため、側面消火器扉16の引出開口の上部の筐体側面には、側面消火器扉16により消火器を引き出して取り出し可能とする操作を図形により表示した操作説明1614が配置されている。
【0072】
また、図1に示すように、第2筐体11bの左側の消火器収納部に対応した化粧枠13bには、「消火器」と横書きされた器具名表示1612、図2の筐体側面と同じ操作表示1614、及び覗き窓19が設けられ、覗き窓19は外部から消火器の有無を確認可能としている。
【0073】
[b.消火栓装置の設置]
トンネル内の消火栓装置の設置について、より詳細に説明する。シールド工法により構築された円筒状(円形断面)のトンネル躯体の下部には、図1及び図2に示すように、道路15がトンネル長手方向(左右方向)に構築され、道路15の後側に沿ったトンネル壁面17の下側に、道路15に対し所定高さの監視員通路35が構築されている。
【0074】
シールド工法によるトンネル壁面17は、消火栓装置10を設置するための箱抜きが困難であることから、監視員通路35の路面上にトンネル壁面17に近接させて架台30を設置し、連結された第1筐体11a及び第2筐体11bを架台30上に取付け固定することで、消火栓装置10が設置されている。ここで、監視員通路35の路面から消火栓装置10に配置された発信機24までの高さが、法的に定められた800mm~1500mmの間に入るように、架台30の高さH1が設定されている。
【0075】
また、本実施形態の架台30は、図2に示すように、側面形状を底辺に対し上辺が長い逆台形とし、トンネル壁面17の湾曲形状に沿って後側が斜め下向きの傾斜面となっている。架台30の上端面は、消火栓装置10の連結された第1筐体11a及び第2筐体11bが取付け固定されるものである。また、消火栓装置10に対しては監視員通路35の路面下のダクト内から架台30を通して立ち上げられた給水配管48が接続されている。
【0076】
[c.消火栓装置の設置高さと薄型化]
消火栓装置の設置高さと薄型化について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、トンネル横断面における消火栓装置の設置状態を概略的に示した説明図である図3を参照する。
【0077】
本実施形態にあっては、架台30により監視員通路35の路面上に設置された消火栓装置10の、トンネル壁面17からの突出(出っ張り)による通路幅の制約を低減するため、消火栓装置10の設置高さを最適化し、併せて、消火栓装置10を可能な限り薄型化している。
【0078】
まず、消火栓装置10の設置高さは、架台30により定まるものであるから、架台30の高さH1の最適化について、より詳細に説明する。消火栓装置10が設置されるトンネル壁面17は円形断面となっており、図3(A)にあっては、トンネル中心(円形断面の中心)Pからの水平方向のトンネル中心線SL1に対し、監視員通路35上に設置された消火栓装置10は、その高さ方向の中心を通る横方向の筐体中心線SL2が可能な限り近付くように、架台30の高さH1が設定されている。
【0079】
この場合、筐体中心線SL2をトンネル中心線SL1に近づけるほど、消火栓装置10がトンネル壁面17から突出する度合いを低減することができる。
【0080】
図3(B)は、筐体中心線SL2をトンネル中心線SL1に一致させるように架台30の高さH1が設定された場合を示す。この場合には、消火栓装置10がトンネル壁面17から突出する度合いを最小とすることができる。ただし、架台30の高さH1は消火器の取出し等を踏まえ、可能な範囲での調整となる。
【0081】
次に、消火栓装置10の薄型化について、より詳細に説明する。消火栓装置10に収納される機器の中で前後方向のサイズが最大となるのは、第2筐体11bに収納される消火器であり、消火栓装置の幅(前後方向の厚さ)が第2筐体11bに消火器が収納できる最小値であれば、消火栓装置10の薄型化が可能であるから、消火栓装置10の幅は第2筐体11bに収納する消火器の外径に対応した所定の幅に設定される。
【0082】
消火器の外径は150~160mm程度であり、収納された消火器が第2筐体11bに接触しないように隙間を確保すると、消火栓装置10の最小幅は、例えば、180~200mm程度の範囲内となり、消火栓装置10の幅は当該範囲内の所定の幅に設定される。これに対し、トンネル躯体の壁面を箱抜きして埋込設置する従来の消火栓装置10の幅は300mm程度であることから、本実施形態の消火栓装置10の幅は従来の2/3以下にすることができ、消火栓装置10を薄型化することができる。
【0083】
[d.消火栓装置の薄型化に対応した構成]
消火栓装置10を消火器の外径に対応して、180~200mm程度の範囲の所定の幅に薄型化した場合、第1筐体11aに従来の消火栓装置と同様に所定長の消火用ホース、例えば、30mの保形ホースを内巻き状態で収納することが困難となる。そこで、本実施形態にあっては、第1筐体11aの横幅(左右方向の幅)を拡大することで、従来と同じ所定長の保形ホースが内巻き状態で収納可能となっている。
【0084】
また、消火栓装置10の薄型化に伴い、従来の消火栓装置のように、消火器が収納される消火器収納部の後側の筐体後面に端子箱26a,26bを配置することが困難となる。そこで、本実施形態にあっては、第2筐体11bの横幅(左右方向の長さ)を消火器の収納に加え、電装機器と端子箱を配置可能とする横幅に拡大している。
【0085】
[e.側面消火器扉を備えた消火栓装置の構造]
側面消火器扉を備えた消火栓装置の構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火栓装置の内部構造を、前傾扉を開いて正面から示した図4、消火栓装置の内部構造を平面で示した図5、消火栓装置の内部構造を右側面から示した図6、及び、消火栓装置の消火器収納側の側面(左側面)を示した図7を参照する。このうち、図5図4の切断線a-aで示す断面であり、図6図4の切断線b-bで示す断面である。なお、図6の前傾扉12については、図4の扉側面を示している。
【0086】
(e1.第1筐体の構造)
第1筐体11aの構造について、より詳細に説明する。消火栓機器の収納部となる第1筐体11aの内部は、バルブ類収納部50aとホース収納部50bに分けられている。バルブ類収納部50aには、架台30を通して下から給水配管48が引き込まれて給水栓52に接続され、また、給水配管48は下向きに分岐し、分岐先には消火栓弁54及び自動調圧弁56が設けられ、続いて保形ホースを用いた消火用ホース60が接続されている。
【0087】
消火栓弁54は、消火栓弁開閉レバー58により開閉操作されるものであり、消火栓弁開閉レバー58が開閉操作されると公知のワイヤーリンク機構により消火栓弁54が遠隔的に開閉する。また、消火栓弁開閉レバー58が開閉操作されると、操作ボックスに設けられたポンプ起動連動スイッチがオン、オフする。また、給水栓52の右上には、消防隊が使用するポンプ起動スイッチ64が設けられている。
【0088】
ホース収納部50bには、ホース収納フレーム62が設けられ、下側から引き込まれた消火用ホース60が右回り又は左回りの内巻き状態で収納されている。ここで、ホース収納フレーム62は、消火栓装置10の薄型化に伴う第1筐体11aの横幅の拡大に対応して横幅を広くしており、従来の消火栓装置に比べて少ない巻き数で従来と同じ所定長の消火用ホース60が収納可能となっている。また、ホースガイド66を通して引き出された消火用ホース60の先端にはノズル68が装着され、ノズル68はノズルホルダー70に着脱自在に保持されている。
【0089】
また、図6に示すように、ホース収納部50bの上部には、1筐体11aの外部から引き込まれたケーブル、例えば、架台30を通して立ち上げられたケーブルを第2筐体11b側へ通線するため、ケーブルラック49が設けられ、ケーブルラック49の左端に相対する第1筐体11aの隔壁には通線口が開口している。
【0090】
(e2.第2筐体の構造)
第2筐体11bの電装機器配置側の構造について、より詳細に説明する。図4及び図5に示すように、第2筐体11bの内部は消火器収納部50cとなっており、第2筐体11bの前面右側となる扉開口部には、ヒンジ18aにより右方向に横開きする電装扉18が配置され、電装扉18には、上から順に赤色表示灯22、発信機24、電話ジャック28、及び応答ランプ25が配置され、電話ジャック28は電装扉18の内側に配置されている。
【0091】
ここで、電装機器の内、第2筐体11bの内部となる消火器収納部50cでの前後方向のサイズが最大となるのは赤色表示灯22であり、そのサイズは120mm程度であるから、消火栓装置10を180~200mm程度の範囲の所定の幅に薄型化した場合でも、第1筐体11a側から引き込まれたケーブルの通線スペースを確保した上で各電装機器を配置することができる。
【0092】
また、電装扉18の左側にはヒンジ20aにより左方向に横開きする補助扉20が配置され、図4に示すように、補助扉20に相対した第2筐体11bの筐体後面に、端子箱26a,26bが上下方向に配置されている。
【0093】
端子箱26a ,26bは、箱本体と蓋部材で構成され、第2筐体11bに配置された状態での縦(上下)×横(左右)×奥行(前後)のサイズは、220mm×140mm×80mm程度である。
【0094】
このため、消火栓装置10を180~200mm程度の範囲の所定の幅に薄型化した場合でも、端子箱26a,26bの奥行(前後)のサイズは80mm程度であるから、第2筐体11b内には端子箱26a,26bを配置する十分なスペースが確保される。また、端子箱26a,26bは第1扉18に配置された赤色表示灯22等の電装機器に近い位置に配置されることから、端子箱26a,26bと電装機器との間は短い配線長による接続が可能となっている。
【0095】
このため、工場での第2筐体11bの組み立て等の段階で、図5に示すように、電装扉18と補助扉20を想像線で示す位置に開くことで第2筐体11bの前面を開放し、端子台26a,26bと電装扉18に配置した電装機器との間を信号線で接続する作業を容易に行うことが可能となっている。
【0096】
また、消火栓装置10をトンネル内に設置する場合にも、電装扉18と補助扉20の扉固定を解除し、図5に示すように、電装扉18と補助扉20を想像線で示す位置に開くことで、端子箱26a,26bに第1筐体11a側から引き込まれたケーブルを接続する作業を容易に行うことが可能となっている。
【0097】
(e3.消火器収納部)
図4及び図5に示すように、第2筐体11bの内部の消火器収納部50cには、消火器引出構造によって、外径が150~160mm程度となる消火器72が2台収納されている。また、前述したように、消火栓装置10を薄型化するため、消火栓装置10の幅は消火器72の外径に対応した180~200mmの範囲の所定の幅となっており、消火器引出構造によって収納された消火器72の前後に15~25mm程度の隙間が確保され、消火器72が第2筐体11bに接触することなく収納可能となっている。
【0098】
図7に示すように、消火器収納部50cに近い第2筐体11bの左側面には、図2に示したのと同様に、側面消火器扉16が手前側に引き出し自在に配置され、扉面に扉ハンドル1610と機器名表示1612が設けられ、また、扉上方の筐体側面に操作説明1614が設けられている。側面消火器扉16の内側に固定された消火器引出構造の引出本体32には、2本の消火器72が縦置き状態で取り出し自在に載置されている。扉ハンドル1610の操作により、図5に想像線で示すように、引出本体32を側方に引き出して消火器72を取り出し可能とするものである。
【0099】
[f.消火器引出構造]
側面消火器扉で操作される消火器引出構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器引出構造の引出本体を取り出して示した図8、消火器引出構造の筐体側を示した図9、消火器引出構造の引出機構を取り出して動作を示した図10、側面消火器扉を閉じた消火器収納状態を示した図11図11の内部構造を示した図12、側面消火器扉を開いて消火器を引き出した状態を示した図13、及び、図13の内部構造を示した図14を参照する。なお、図8(A)、(B)、(C)、(D)は消火器引出構造の左側面、正面、右側面、及び、平面を示し、図8(E)は図8(C)のA部を拡大して図8(B)の切断線d-dで示す。また、図9(A)、(B)、(C)、(D)は消火器引出構造の筐体側の正面、側面、平面、及び、筐体ガイドレールの拡大部分を示している。
【0100】
本実施形態の消火器引出構造は、第2筐体11bの消火器収納部に収納された消火器を、道路利用者が側面消火器扉16により筐体内から引き出すものであり、その構造や機構は任意であるが、例えば、引出側の構造と筐体側の構造で構成されるものである。
【0101】
(f1.引出本体側の構造)
消火器引出構造の引出側の構造について、より詳細に説明する。消火器引出構造の引出側の構造は、消火器を筐体に対し出し入れする構造であり、その形状や構造は任意であるが、例えば、図8に示すように、側面消火器扉16と引出本体32で構成されるものである。
【0102】
引出本体32は、消火器72を消火器収納部に収納するとともに筐体側方の外部に移動させるものであり、その構造や形状は任意であるが、例えば、図8に示すように、側面消火器扉16の下部内側に上部に開いた箱部材である引出本体32の一端が片持ち状態で固定されている。引出本体32の内部には、ゴム等の弾性部材で作られた消火器受け台38が2基配置され、消火器72の底部が嵌め入れられることで、消火器72が縦置き状態で上側から取り出し自在に載置される。
【0103】
引出本体32の両側の側板外側には、筐体の消火器収納部に対し引出本体32を引出方向(左右方向)に移動自在に支持する引出機構の本体ガイドレール36が固定されている。本体ガイドレール36は、図8(C)のA部を拡大した図8(E)に示すように、引出本体32の側板の外側に矩形断面のレール突起36aが形成されている。また、図8(B)に示すように、本体ガイドレール36の奥側(右側)の先端にはローラ40が設けられ、ローラ40の上側には手前側(左側)が持ち上がった傾斜面のストッパ片3612が形成されている。
【0104】
引出本体32を下部内側に固定した側面消火器扉16には、扉ハンドル1610と「消火器」と縦書きされた機器名表示1612が設けられている。扉ハンドル1610は、扉裏面側に上方に向けてラッチ爪1616を有し、扉ハンドル1610が手前に引かれるとラッチ爪1616が引き込み、筐体側面の引出開口に対する扉ロックが解除されて引き出し可能となる。
【0105】
(f2.筐体側の構造)
消火器引出構造の筐体側の構造について、より詳細に説明する。消火器引出構造の筐体側の構造は、筐体本体32を筐体内に引出自在に支持するものであり、その形状や構造は任意であるが、例えば、図9に示すように、第2筐体11bの内部となる消火器収納部50cの底部の両側コーナーに、筐体ガイドレール42が固定されている。
【0106】
筐体ガイドレール42は、図8に示した本体ガイドレール36と同じか、それより長い所定の長さをもつ。また、筐体ガイドレール42は、図9(A)のB部を拡大した図9(D)に示すように、横向きに開いたコ字形の枠板部材であり、図8に示した本体ガイドレール36の先端側に配置されたローラ40が、コ字形の枠板部材の中を転動することになる。
【0107】
また、筐体ガイドレール42は、引出開口34側に上側が広がった開口部4210が形成され、図8に示した本体ガイドレール36の先端のローラ40が斜め上方からレール内に差し込み可能となっている。また、筐体ガイドレール42の開口部4210の上側には、所定の隙間を介してストッパ46が固定され、筐体ガイドレール42にはめ込まれた本体ガイドレール36が引き出される際に、ストッパ片3612が当接して抜け出さないようにしている。
【0108】
さらに、筐体ガイドレール42の開口部4210の下側にはローラ44が配置される。ローラ44は、図9(D)に示すように、ローラ44の上側が筐体ガイドレール42の底面部を超えて内側に入り込んでおり、筐体ガイドレール42に差し込まれた本体ガイドレール36のレール突起36aの下面が、ローラ44に乗った状態での移動を可能としている。
【0109】
(f3.引出機構)
消火器引出構造における引出機構について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器引出構造の引出機構を取り出して動作を示した図10を参照する。なお、図10(A)は引出側が取り外された状態を示し、図10(B)は引出側が嵌め入れられた初期状態又は完全に引き出された状態を示し、図10(C)は引き出し途中状態を示し、図10(D)は引出側が閉じた状態を示している。また、図10(A)~(D)で筐体ガイドレール42は透視状態で示している。
【0110】
図10に示すように、引出機構は、図8に示した本体ガイドレール36と図9に示した筐体ガイドレール42で構成されるものである。勿論、ローラ40,44、ストッパ46を含む。
【0111】
筐体側の消火器収納部50cに引出本体32を収納する場合には、図10(A)に示すように、作業者は引出本体32側に設けられた本体ガイドレール36の先端のローラ40を、筐体ガイドレール42の開口部4210に位置合わし、本体ガイドレール36を斜め下向きにして筐体ガイドレール42の中に差し込む。このとき本体ガイドレール36のストッパ片3612が筐体側のストッパ46の上側を通るように差し入れる。
【0112】
これにより、図10(B)に示すように、筐体ガイドレール42の中に本体ガイドレール36のローラ40が入り、本体ガイドレール36のレール突起36aの下側にローラ44が接触し、更に、ストッパ46にストッパ片3612が当接して抜け止めされた状態となり、この状態が引出本体32が最も筐体側から引き出された位置となる。
【0113】
続いて、側面消火器扉16が押し込まれると、図10(C)に示すように、ローラ40,44の転動によって、筐体ガイドレール44に対し本体ガイドレール36が滑らかに移動し、図10(D)に示すように、引出本体32は、消火器収納部50cに完全に収納された位置に移動することができる。このとき、図8に示した側面消火器扉16の扉ハンドル1610に設けられたラッチ爪1616が、図9(B)に示した枠部材47に係合し、側面消火器扉16が閉鎖位置にロックされる。
【0114】
(f4.消火器の引出操作)
消火器引出構造による消火器の引出操作について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、側面消火器扉を閉じた消火栓装置の消火器収納状態を示した図11図11の内部構造を示した図12、側面消火器扉を開いて消火器が引き出された状態を示した図13、及び、図13の内部構造を示した図14を参照する。
【0115】
図11に示すように、通常時、消火栓装置10の側面消火器扉16は閉鎖状態にロックされており、図12に示すように、側面消火器扉16が筐体側面の引出開口を閉鎖する位置に保持されていることで、2本の消火器72を載置した引出本体32は、第2筐体11bの消火器収納部50cに収納されている。
【0116】
道路利用者が消火器を使用する場合には、側面消火器扉16の扉ハンドル1610を手前に引くことでロックが解除され、図13及び図14に示すように、消火器72を載置した引出本体32を引出開口34から外側に引き出す。このとき、引出本体32の本体ガイドレール36が筐体側の筐体ガイドレール42に沿ってローラ40,44の転動を受けながら移動することになる。
【0117】
筐体の側面側に引き出された消火器72は、その前方及び上方が開放空間となっていることから、道路利用者は、消火器72の上部に設けられた開栓レバー7210と固定レバー7212の内、下側の固定レバー7212を握って上に持ち上げることで、引出本体32の消火器受け台38から消火器72を取り出すことができる。
【0118】
このように固定レバー7212を握って下から上へ持ち上げる操作は、無理のない姿勢で力を出すことができ、そのため、女性や高齢者などの弱者であっても、容易に消火器を取り出して使用することを可能とする。
【0119】
また、消火栓装置10の筐体側面の外側に消火器72を引き出すことができるため、避難者が通行する筐体前面方向の監視員通路35が制約されず、監視員通路35の通行を妨げることなく、消火器72を引き出して取り出すことを可能とする。
【0120】
[g.前面消火器扉を備えた実施形態]
側面消火器扉に加え、前面消火器扉を備えた消火栓装置の他の実施形態について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、側面消火器扉に加えて前面消火器扉を設けた消火栓装置の実施形態を示した図15を参照する。
【0121】
図15に示すように、本実施形態の消火栓装置10にあっては、第2筐体11bの左側面に設けた側面消火器扉16に加え、第2筐体11bの前面の化粧枠13aに、前面消火器扉1600が設けられている。
【0122】
前面消火器扉1600は、化粧枠13bの左側の扉開口部に、ヒンジ16aにより左向きに横開き自在に設けられている。また、前面消火器扉1600には、扉ハンドル1610、機器名表示1612、操作説明1614、及び覗き窓19が設けられている。
【0123】
道路利用者が扉ハンドル1610を手前に引いて前面消火器扉1600を開いた場合には、図12に示したように、引出本体32に載置された状態で消火栓収納部50cに収納されている消火器72の前面が開放され、道路利用者が筐体前面側から消火器72を取り出すことを可能とする。
【0124】
このように前面消火器扉1600は、従来の消火栓装置と同様な消火器の取り出しを可能とするものであり、側面消火器扉16による筐体側面からの消火器の取り出しが行いづらい場合、例えば、道路利用者が監視員通路35より低い道路に立って消火栓装置10から消火器を取り出すような場合にも、前面消火器扉1600を開いて容易に消火器を取り出すことを可能とする。
【0125】
[h.引出機構が傾斜配置された消火栓装置の実施形態]
消火器引出構造の引出機構が傾斜配置された消火栓装置の他の実施形態について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器の引出方向に斜め下向きの傾斜角が設定された消火器引出構造を示した図16を参照する。
【0126】
図16に示すように、本実施形態の引出機構にあっては、垂直方向に位置する側面消火器扉16の底部に一端が固定された、引出本体32の本体ガイドレール36の長手方向の中心線SL2が、水平線HLに対し引出方向(左方向)に斜め下向きに傾斜する所定角度θに設定される。また、第2筐体11bの消火器収納部50cの底部コーナーに固定される筐体ガードレール42の中心線SL3が、水平線HL3に対し引出方向(左方向)に斜め下向きに傾斜する同じ所定角度θに設定される。ここで、下向きの傾斜角θは任意であるが、例えば、2~3°程度である。
【0127】
このため筐体ガイドレール44に本体ガイドレール36が摺動自在に差し込まれることで、引出本体32は、引出方向に向けて斜め下向きに傾いた状態で消火器収納部50cに収納される。この状態で、扉ハンドル1610により側面消火器扉16のロックを解除された場合には、消火器72を縦置きして載置している引出本体32には、自重により傾斜方向に滑落力が作用し、道路利用者が軽い力で引出本体32を引き出して消火器72を取り出すことを可能とする。また、道路利用者が扉ハンドル16を軽く引いて離しても、自重による滑落力を受けて引出本体32が自動的に引き出され、消火器72を取り出すことを可能とする。
【0128】
[i.側面消火器扉が横開きする消火栓装置の実施形態]
側面消火器扉が横開きする消火栓装置の他の実施形態ついて、より詳細に説明する。当該説明にあっては、側面消火器扉が横開きする消火栓装置の実施形態を示した図17を参照する。
【0129】
図17に示すように、本実施形態の消火栓装置10は、第2筐体11bの側面の引出開口34に、背面側をヒンジとして左向きに開閉するように側面消火器扉16が設けられている。側面消火器扉16が筐体側に設けられたことに伴い、引出本体32の引出端(左端)には、例えば、パイプ部材を用いた引出操作用の引出フレーム74の下端が固定されている。なお、それ以外の消火器引出構造は、前述した実施形態と同様になる。
【0130】
道路利用者が消火器を使用する場合には、扉ハンドル1610の操作でロックを解除して側面消火器扉16を後側(トンネル壁面側)に開き、続いて、引出開口34に露出した引出フレーム74に手を掛けて手前に引くことで、引出本体32が第2筐体11bの消火器収納部50cから外部に引き出され、消火器72の取り出しを可能とする。
【0131】
このように側面消火器扉16が横開きする消火栓装置10によれば、側面消火器扉16が横開きされても監視員通路の通行は妨げられず、また、引出本体32に設けられた引出フレーム74は、引出本体32の端面を閉鎖することなく開放状態としており、そのため、引き出された消火器72が見やすくなり、消火器72の取り出しがより行い易くなる。
【0132】
[j.消火器移動機構の概要]
消火栓装置の消火器収納部に設けられた消火器移動機構の概要について説明する。当該説明にあっては、消火器が引き出される前の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した図18、消火器が筐体側方の引出位置へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した図19、消火器が監視員通路の路面上へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した図20を参照する。
【0133】
図18に示すように、消火栓装置10の消火器収納部50cには、図8乃至図10に示した消火器引出構造に搭載された消火栓移動機構80により、2本の消火器72が縦置き状態で収納されている。消火器移動機構80は、消火器引出構造に設けられた引出本体32の上に、平行リンク機構で支持された箱枠体84を搭載しており、箱枠体84の中に2本の消火器72が縦置き状態で載置されている。
【0134】
道路利用者が消火器を使用する場合には、側面消火器扉16の扉ハンドル1610を手前に引くと、固定が解除されて図19に示すように、引出本体32が第1筐体11bの左側方となる外部の引出位置に引き出される。
【0135】
引出位置に引き出された消火器移動機構80には、操作部として機能する操作ノブ112が、例えば、箱枠体84の右側の中央の高さに配置されており、道路利用者が操作ノブ112を押し下げると、平行リンク機構で支持された箱枠体84の引出本体32側に対する固定が解除され、図20に示すように、平行リンク機構の前方への回動により箱枠体84は監視員通路35の路面上の位置に移動し、消火器72の取出しが可能となる。
【0136】
[k.消火器移動機構の構成]
消火器移動機構の構成について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器が引き出される前の消火栓装置の内部構造を側面から示した図21、消火器が監視員通路の路面上へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を側面の断面で示した図22、消火器引出構造に搭載された消火器移動機構を取出して示した図23、消火栓移動機構の移動前の状態を斜視図で示した図24、及び消火栓移動機構の移動後の状態を斜視図で示した図25を参照する。なお、図23(A)、(B)、(C)、(D)は消火器引出構造の左側面、正面、右側面、及び、平面を示し、図23(E)は図23(C)のC部を拡大して示す。
【0137】
図23に取り出して示すように、本実施形態の消火器移動機構80は、基台82及び箱枠体84を含む平行リンク機構で構成されている。
【0138】
(k1.箱枠体)
消火器移動機構80に設けられた箱枠体84について、より詳細に説明する。図23乃至図25に示すように、箱枠体84は、前方及び上方に開口し、例えば、2本の消火器を縦置き状態で載置するとともに、外部からの取出しを可能とする容器又は収納箱である。また、図23(B)(D)に示すように、箱枠体84の内部背面の所定高さとなる位置に、2本の消火器を着脱自在に縦置き状態で保持するホルダー102が設けられている。
【0139】
(k2.平行リンク機構)
消火器移動機構80の平行リンク機構について、より詳細に説明する。図23に取り出して示すように、消火器移動機構80の平行リンク機構は、基台82、左右二組の第1横リンク86と第2横リンク88及び箱枠体84で構成されている。
【0140】
基台82は図23及び図24に示すように、消火器引出構造の引出本体32の上に消火器移動機構80を固定する部材であり、前後及び上部が開放され、底面に対し両側面が起立した箱型の部材である。
【0141】
第1横リンク86と第2横リンク88の下端側が基台82に回動自在に軸支され、第1横リンク86と第2横リンク88の上端側が箱枠体84に回動自在に軸支される。即ち、第1横リンク86は下端が基台82の後端側に支点軸90により軸支されるとともに上端が箱枠体84の側面上部の後端側に支点軸94により軸支される。また、第2横リンク88は、下端が基台82の前端側に支点軸92により軸支されるとともに上端が箱枠体84の側面上部の前端側に支点軸96により軸支される。
【0142】
平行リンク機構は、第1横リンク86と第2横リンク88を含む4本のリンクを平行四辺形に連結するものであるが、基台82に軸支される第1横リンク86の下端の支点軸90と基台82に軸支される第2横リンク88と下端の支点軸92との間の基台82の部分により下リンクが仮想的に形成されている。また、箱枠体84に軸支される第1横リンク86の上端の支点軸94と箱枠体84に軸支される第2横リンク88の上端の支点軸96との間の箱枠体84の部分により上リンクが仮想的に形成されている。
【0143】
このため、消火器72を載置する箱枠体84は、図24に示すように、初期状態で基台82に対し第1横リンク86と第2横リンク88により吊下げ状態に支持されており、図25に示すように、第1横リンク86と第2横リンク88の前方への回動に伴い、その姿勢を維持したまま前方下方に移動する。
【0144】
また、第1横リンク86には支点軸90を中心に前方に回動させるために付勢する付勢部材が設けられている。付勢部材の構造や種類は任意であるが、例えば、巻ばね98が設けられる。巻ばね98は、支点軸90に巻着され、一端が支点軸90に固定され、他端が第1横リンク86の後ろ側に押接されている。同様に、第2横リンク88にも支点軸92を中心に前方に回動させるために付勢する付勢部材として巻ばね100が設けられている。なお、付勢部材は、第1横リンク86と第2横リンク88の両方ではなく、何れか一方に設けられる構成でも構わない。
【0145】
また、消火器移動機構80には、図22に示すように、軸支点92に緩衝装置として機能する揺動ダンパー104が設けられている。揺動ダンパー104の構造は公知であり、例えば、外部のステータと内部のローターとの間にオイルが充填され、ステータの内周に摺接するローターの突起部にオリフィスが設けられ、ステータとローターの相対回転に伴うオイルの流れをオリフィスで絞ることでトルクを発生するものである。
【0146】
このため、消火器72を載置した箱枠体84が、第1横リンク86と第2横リンク88の回動により前方へ移動する場合に、揺動ダンパー104は、ローターのオリフィス流路を流れるオイルの流動抵抗でステータの動きが抑制され、消火器72を載置した箱枠体84を緩やかな速度で前方へ移動し、監視員通路35の路面上に位置した場合に衝撃が発生しないようになっている。
【0147】
なお、揺動ダンパー104が設置される位置は任意であり、第1横リンク86及び又は第2横リンク88の下端の支点軸90,92に設置されればよい。また、消火器移動機構80の緩衝装置として揺動ダンパー104に限定されず、例えば、ピストンダンパーを連結する構造などであってもよい。
【0148】
(k3.固定機構)
消火器移動機構80に設けられる固定機構について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、箱枠体の固定を操作ノブの押込み操作により解除する固定機構を示した図26を参照する。なお、図26(A)は固定状態を示し、図26(B)は固定を解除した状態を示す。
【0149】
消火器移動機構80の固定機構は、図21に示したように、平行リンク機構により箱枠体84が基台82の上方の初期位置にある場合に、平行リンク機構と巻ばねによる箱枠体84の前方への移動を固定し、引出本体32が消火器引出構造により筐体側方の引出位置に引き出された場合に、箱枠体84の前方への移動の固定を解除して箱枠体84を前方へ移動させるものである。
【0150】
固定機構の構造や機能は任意であるが、例えば、図26(A)に示すように、基台82側に設けられた固定レバー106,軸110、ばね111と、箱枠体84側に設けられた操作ノブ112、リンクレバー114、操作棒118を含む操作部で構成される。
【0151】
固定レバー106は、レバー先端に固定爪108が上向きに形成され、基台82の内部側面の軸110により回動自在に軸支されている。また、固定レバー106と基台82の底部との間にはばね111が配置され、固定レバー106を左回り(反時計回り)に付勢している。
【0152】
操作ノブ112は、支点軸116により箱枠体84の内側面に軸支されたリンクレバー114の先端に設けられている。リンクレバー114の途中にはスライド支点軸115により操作棒118の上端が軸支されている。操作棒118は、箱枠体84の内側面に固定された通し穴を有する案内部120,122を貫通し、下端が箱枠体84の底面の通し穴を介して固定レバー106の上端面に相対している。操作棒118を通す案内部120とその上の位置で操作棒118に固定された止め輪124との間にコイルばね126が配置されている。
【0153】
ここで、操作ノブ112は、図19に示すように、引出本体32が第2筐体11bの側方外部の引出位置に引き出された場合に、消火器72は道路からの高さが1.5m以下となる位置、例えば、電装扉18に設けられた発信機24と同じ高さに配置され、消防法の基準を準拠している。
【0154】
このため、図18に示すように、引出本体32が第2筐体11bの消火器収納部に収納された状態では、図26(A)に示すように、固定レバー106の固定爪108が箱枠体84の底部先端に当接し、箱枠体84が前方に移動しないように初期位置に固定されている。
【0155】
一方、図19に示したように、引出本体32が第2筐体11bの側方外部の引出位置に引出した状態で、図26(B)に示すように、道路利用者が操作ノブ112を押し下げると、リンクレバー114の回動により操作棒118が降下し、操作棒118の先端で固定レバー106を右回り(時計回り)に回動させ、固定爪108が箱枠体84の底部先端から外れて箱枠体84の初期位置への固定が解除される。
【0156】
箱枠体84の初期位置への固定が解除されると、図22に示したように、箱枠体84は、平行リンク機構の第1横リンク86と第2横リンク88の巻ばね98,100による右回り(時計回り)の付勢を受けて前方へ回動し、消火器72が縦置き状態で載置された箱枠体84が監視員通路35の路面上に移動し、消火器の取出しが可能となる。なお、固定機構の他の実施形態として、操作ノブ112の位置に設けられたスイッチの操作で、電磁ソレノイドに通電して固定レバー106を作動させて固定を解除するようにしてもよい。
【0157】
また、使用された消火器を新たな消火器に交換して収納する場合には、係員が箱枠体84を引出本体32の上部の初期位置に押し戻すと固定機構により固定され、この状態で新たな消火器を箱枠体84に搭載し、側面消火器扉16により引出本体32を第2筐体11b内の消火栓収納部50cに押し込んで扉ハンドル16aにより閉鎖位置に保持させることになる。
【0158】
(k4.平行リンク機構の下リンクの高さ)
次に、箱枠体84の下部が基台82に接触することなく通過するための平行リンク機構の下リンクの高さについて、より詳細に説明する。当該説明にあっては、箱枠体の下部が基台に接触しないように移動させる平行リンク機構の配置(位置関係)を示した図27を参照する。
【0159】
図27に示すように、消火器移動機構80は、平行リンク機構の第1横リンク86と第2横リンク88の下端を軸支して前方への回動により、第1横リンク86と第2横リンク88の上端に吊下げ状態に軸支された箱枠体84を前方の監視員通路35の路面上に移動する場合、箱枠体84の底部下面8410が基台82の底部上面8210に接触しないようにする必要がある。なお、下リンク87は基台82により仮想的に形成されており、また、上リンク89は箱枠体84により仮想的に形成されている。
【0160】
ここで、図27は、箱枠体84の後部が基台82の前端に一致する位置に移動した状態を示しており、このとき箱枠体84の底部下面8410の後端が基台82の底部上面8210の先端に接触しないようにする高さLx、即ち、基台82の底部上面8210から平行リンク機構の下リンク87までの高さLxを決定する必要がある。
【0161】
ここで、第2横リンク86の長さをL、下リンク87の長さをW、箱枠体84が基台82の先端へ移動した場合の第2横リンク88の傾斜角をθ、下リンク87及び上リンク89の箱枠体84の前方及び後方の端部までの水平方向の間隔をW1、第2横リンク88が傾斜角θにあるときの箱枠体84の上端から基台82の底部下面8210までの垂直方向の高さをL1、第1横リンク86及び第2横リンク88から箱枠体84の上方及び下方の端部までの垂直方向の間隔をL2とすると、次式の関係が得られる。
Lcosθ=W+3・W1 (式1)
θ=cos-1(W+3・W1)/L (式2)
Lsinθ=L1-L2-Lx (式3)
Lx=L1-L2-Lsinθ (式4)
即ち、L,W,W1,L2は定数として与えられることから、(式2)から傾斜角θを求め、(式4)に代入することで高さLxを求めることができる。
【0162】
ここで、初期位置にある箱枠体84について示すように、下リンク87から基台82の底部上面8210までの高さは、下リンク87から基台82の底部上面8210までの高さはL2に箱枠体84の底部下面8410から基台82の底部上面8210までの高さLsを加えた(L2+Ls)であり、
Lx≦(L2+Ls)
の関係にあれば、平行リンク機構は、箱枠体84を基台82に接触させることなく、箱枠体84を前方へ通過させることができる。
【0163】
[l.消火器箱の実施形態]
消火器収納装置を消火器箱とした場合の側面消火器扉を備えた消火器箱の構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器引出構造を備えた消火器箱の実施形態を示した図28を参照する。なお、28(A)は消火器が収納された状態を示し、図28(B)は消火器が引き出された状態を示す。
【0164】
図28に示すように、本実施形態の消火器箱100は、図1乃至図17に示した消火栓装置10の第2筐体11bを分離して右側面を閉鎖した構造に相当する。消火器箱100の筐体1100の内部には、消火栓装置10の場合と同様な消火器引出構造が設けられていることから、同一の符号を付して説明は省略する。
【0165】
通常時は、図28(A)に示すように、消火器箱100の側面消火器扉16が筐体側面の引出開口を閉鎖する位置にロックされていることで、2本の消火器を載置した引出本体は筐体1100の内部の消火器収納部に収納されている。
【0166】
道路利用者が消火器を使用する場合には、側面消火器扉16の扉ハンドル1610を手前に引くことでロックが解除され、図28(B)に示すように、消火器72を載置した引出本体32が引出開口34から外側に引き出され、消火器72を下が上へ持ち上げるようにして取り出すことを可能とする。
【0167】
また、消火器箱100の他の実施形態として、図18乃至図27に示した消火栓装置10の第2筐体11bを分離して右側面を閉鎖した構造であってもよい。
【0168】
[m.本発明の変形例]
本発明による消火栓装置の変形例について説明する。本発明の消火器収納装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。消火器箱も同様となる。
【0169】
(壁掛け構造の消火栓装置)
上記の実施形態は、トンネル壁面側に近接又は当接して監視員通路の路面に設置された架台の上部に筐体が取り付け固定される据え置き構造の消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、監視員通路の路面上方のトンネル壁面に設置された架台の道路側となる前部に筐体が取り付け固定される壁掛け構造の消火栓装置についても、同様に、筐体の側面に側面扉が設けられ、側面扉を開いて筐体内に対する作業を側面外部から可能とするものである。
【0170】
(トンネル壁面が円形断面以外の場合)
上記の実施形態におけるトンネル断面形状は円形となっているが、トンネル断面が円形以外、例えば、三心円等の場合には、トンネル断面形状の水平方向の幅が最も広い位置の水平線を、上記の説明におけるトンネル中心線SL1とすることで、本発明を適用することができる。
【0171】
(薄型化に対応した消火栓装置の構造)
上記の実施形態における消火栓装置では、消火栓装置の薄型化に対応して第1筐体及び第2筐体の横幅を広くして薄型化により減少した分の内部容積を確保しているが、第1筐体及び第2筐体の上下幅を広くして薄型化により減少した分の内部容積を確保するようにしても良い。
【0172】
(引出機構)
上記の実施形態における消火器引出構造の引出機構は、固定側の筐体ガイドレールに対し引出本体の本体ガイドレールが摺動自在に嵌め入れた、2本のガイドレールを用いた引出機構となっているが、筐体ガイドレールと本体ガイドレールとの間に中間レールが配置された3本のガイドレールを用いた引出機構であってもよい。
【0173】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、さらに、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0174】
10:消火栓装置
11a:第1筐体
11b:第2筐体
12:前傾扉
13a,13b:化粧枠
14:保守扉
15:道路
16:側面消火器扉
1600:前面消火器扉
1610:扉ハンドル
1612:機器名表示
1614:操作案内
17:トンネル壁面
18:電装扉
19:覗き窓
20:補助扉
22:赤色表示灯
24:発信機
25:応答ランプ
26a,26b:端子箱
28:電話ジャック
30:架台
32:引出本体
34:引出開口
35:監視員通路
36:本体ガイドレール
38:消火器取付台
40,44:ローラ
42:筐体ガイドレール
45:道路
46:ストッパ
48:給水配管
49:ケーブルラック
50a:バルブ類収納部
50b:ホース収納部
50c:消火器収納部
52:給水栓
54:消火栓弁
56:自動調圧弁
58:消火栓弁開閉レバー
60:消火用ホース
62:ホース収納フレーム
64:ポンプ起動スイッチ
65:ポンプ起動連動スイッチ
66:ホースガイド
68:ノズル
70:ノズルホルダー
72:消火器
7210:開栓レバー
7212:固定レバー
74:引出フレーム
80:消火器移動機構
82:基台
8210:基台底面
84:箱枠体
86:第1横リンク
88:第2横リンク
90,92,94,96:支点軸
98,100:巻ばね
102:ホルダー
104:揺動ダンパー
106:固定レバー
108:固定爪
110:回動軸
111:ばね
112:操作ノブ
114:リンクレバー
115:スライド支点軸
116:支点軸
118:操作棒
120,122:案内部
124:止め輪
126:コイルばね
1100:消火器箱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図28