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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131108
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】回路モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/02 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
H01P5/02 603Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006895
(22)【出願日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2022035452
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】今西 由浩
(57)【要約】
【課題】伝送信号の品位の劣化を最小限に抑え、実装エリアを最適化する。
【解決手段】回路モジュールは、配線基板と、前記配線基板の外部に設けられた第1回路に伝送すべき信号と前記第1回路に電力を供給するための電源電圧とを送るために前記配線基板に設けられた第1線路と、前記第1回路とは別に前記配線基板の外部に設けられた第2回路に伝送すべき信号と前記第2回路に電力を供給するための電源電圧とを送るために前記配線基板に前記第1線路に並んで設けられた第2線路と、一端が前記第1線路に接続され、かつ、他端が前記電力を供給するための電源回路に接続され、前記配線基板に設けられた第1インダクタと、前記第1インダクタを保持する筐体の前記第2線路側の側面の少なくとも一部に設けられたシート状の第1導体と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板の外部に設けられた第1回路に伝送すべき信号と前記第1回路に電力を供給するための電源電圧とを送るために前記配線基板に設けられた第1線路と、
前記第1回路とは別に前記配線基板の外部に設けられた第2回路に伝送すべき信号と前記第2回路に電力を供給するための電源電圧とを送るために前記配線基板に前記第1線路に並んで設けられた第2線路と、
一端が前記第1線路に接続され、かつ、他端が前記電力を供給するための電源回路に接続され、前記配線基板に設けられた第1インダクタと、
前記第1インダクタを保持する筐体の前記第2線路側の側面の少なくとも一部に設けられたシート状の第1導体と、
を備える回路モジュール。
【請求項2】
前記第1導体は、前記第1インダクタを保持する筐体の上面を覆う部分を有する請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項3】
一端が前記第2線路に接続され、かつ、他端が電力を供給するための電源回路に接続され、前記配線基板に設けられた第2インダクタと、前記第2インダクタの前記第1線路側の側面の少なくとも一部に設けられたシート状の第2導体とをさらに備える請求項1または請求項2に記載の回路モジュール。
【請求項4】
前記第1インダクタの前記第2線路側の側面と、前記第2インダクタの前記第1線路側の側面とは、互いに対向している請求項3に記載の回路モジュール。
【請求項5】
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、前記第1線路と前記第2線路との並走部分の長さ方向に対して互いにずれた位置に設けられる請求項3に記載の回路モジュール。
【請求項6】
前記第1導体は、グランド電位に電気的に接続される請求項1または請求項2に記載の回路モジュール。
【請求項7】
前記第1導体は、前記第1線路に接続される請求項1または請求項2に記載の回路モジュール。
【請求項8】
前記第2導体は、グランド電位に電気的に接続される請求項3に記載の回路モジュール。
【請求項9】
前記第2導体は、前記第2線路に接続される請求項3に記載の回路モジュール。
【請求項10】
前記第1線路と前記第2線路との間に設けられ、かつ、グランド電位に電気的に接続されるガードパターンをさらに含む請求項1または請求項2に記載の回路モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に平行に設けられた配線同士の間でクロストークが生じることがある。クロストークによって、一方の配線を伝送する信号が他方の配線に移ったり、ノイズが発生したりする現象が起こる。配線間のクロストークを抑制するためには、平行に設けられた配線間距離を広くとることが効果的である。
【0003】
しかしながら近年の製品は小型化要求も加速しているため、配線間距離を十分に取れない場合がある。その場合、配線同士が並走する距離を短くしてクロストークを抑制する手段がある。しかしながら、レイアウト設計の観点からそれを実現できないことがある。
【0004】
特許文献1には、複数の配線パターンを平行に配置せずに複雑に屈曲させることによってクロストークを抑制させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-119087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、配線パターンを複雑に屈曲させるレイアウトは伝送信号の品位を劣化させる。このため、伝送速度の高速化が進むと、特許文献1に開示の技術は不向きである。このように、伝送特性を劣化させずにクロストークを抑え、かつ実装エリアのレイアウトの最適化を図る方法を検討する必要がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は伝送信号品位の劣化を最小限に抑え、実装エリアを最適化できる回路モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の一態様による回路モジュールは、配線基板と、前記配線基板の外部に設けられた第1回路に伝送すべき信号と前記第1回路に電力を供給するための電源電圧とを送るために前記配線基板に設けられた第1線路と、前記第1回路とは別に前記配線基板の外部に設けられた第2回路に伝送すべき信号と前記第2回路に電力を供給するための電源電圧とを送るために前記配線基板に前記第1線路に並んで設けられた第2線路と、一端が前記第1線路に接続され、かつ、他端が前記電力を供給するための電源回路に接続され、前記配線基板に設けられた第1インダクタと、前記第1インダクタを保持する筐体の前記第2線路側の側面の少なくとも一部に設けられたシート状の第1導体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる回路モジュールは、伝送信号の品位の劣化を最小限に抑え、実装エリアを最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の回路モジュールの前提となる伝送システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、伝送回路の等価回路を示す図である。
図3図3は、図2に示す等価回路を簡略化した模式図である。
図4図4は、配線間のクロストークを説明する図である。
図5図5は、本開示の第1実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図6図6は、図5中のX1-X1部の断面図である。
図7図7は、本開示の第2実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図8図8は、図7中のX2-X2部の断面図である。
図9図9は、本開示の第3実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図10図10は、シート状の導体を設けた場合の効果を説明する図である。
図11図11は、クロストークの結合メカニズム解明のためのシミュレーションを説明する図である。
図12図12は、クロストークの結合メカニズム解明のためのシミュレーションを説明する図である。
図13図13は、クロストークの結合メカニズム解明のためのシミュレーションを説明する図である。
図14図14は、図11に示す基板を用いてシミュレーションを行った結果を示す図である。
図15図15は、図12および図13に示すように基板を用いてシミュレーションを行った結果を示す図である。
図16図16は、図5および図6を参照して説明した基板を、その一主面の上方から見た状態を示す平面図である。
図17図17は、配線の長手方向に対する、インダクタの位置をずらして配置した基板を示す図である。
図18図18は、基板を、その一主面の上方から見た状態を示す平面図である。
図19図19は、図17および図18のように配置した場合におけるSパラメータの測定結果を示す図である。
図20図20は、クロストークの抑制効果について検証するためのシミュレーションモデルを示す図である。
図21図21は、基板の層間厚み0.25mmの50Ω整合されたマイクロストリップラインモデルでのシミュレーション結果を示す図である。
図22図22は、基板の層間厚み0.25mmの50Ω整合されたマイクロストリップラインモデルでのシミュレーション結果を示す図である。
図23図23は、基板の層間厚み0.25mmの50Ω整合されたマイクロストリップラインモデルでのシミュレーション結果を示す図である。
図24図24は、基板の層間厚み0.15mmの50Ω整合されたマイクロストリップラインモデルでのシミュレーション結果を示す図である。
図25図25は、基板の層間厚み0.15mmの50Ω整合されたマイクロストリップラインモデルでのシミュレーション結果を示す図である。
図26図26は、基板の層間厚み0.15mmの50Ω整合されたマイクロストリップラインモデルでのシミュレーション結果を示す図である。
図27図27は、クロストークを抑制するための配線設計において、配線間の距離と並走距離との関係を示す図である。
図28図28は、第4実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図29図29は、第5実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図30図30は、第6実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図31図31は、第7実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図32図32は、第8実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図33図33は、第9実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図34図34は、図33に示すインダクタを下面側から見た図である。
図35図35は、第10実施形態による回路モジュールに用いるインダクタを下面側から見た図である。
図36図36は、各実施形態において用いる配線基板の条件を示す図である。
図37図37は、第11実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図38図38は、第12実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図39図39は、第13実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。
図40図40は、図39中のX3-X3部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施形態に係る伝送システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では、実施形態1と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0012】
(伝送システム)
図1は、本開示の回路モジュールの前提となる伝送システムの概略構成を示す図である。
【0013】
図1において、伝送システム100は、接続対象機器として、例えば、SerDes伝送方式により車載カメラ等の車載デバイス機器(以下、「DEV」とも称する)300と電子制御ユニット(以下、「ECU」とも称する)200との間のインターフェースを実現する。具体的に、伝送システム100は、図1に示すように、第1回路モジュール1と第2回路モジュール2A、2B、2C、2Dとの間が同軸ケーブル3A、3B、3C、3Dでそれぞれ接続される。第1回路モジュール1と第2回路モジュール2A、2B、2C、2Dとの間で信号をそれぞれ伝送する。
【0014】
また、伝送システム100は、信号の伝送経路に直流電圧を印加し、同軸ケーブル3を介してDEV300に電力供給を行うPoC(Power over Coax)を実現する。
【0015】
図1に示す例において、第1回路モジュール1は、第1インターフェースIC11、第1電源回路(電源回路)12A、12B、12C、12D、およびPoC回路13を備えている。また、第1回路モジュール1の外部に設けられた回路である第2回路モジュール2Aは、第2インターフェースIC21A、第2電源回路22A、およびPoC回路23Aを備えている。PoC回路13AおよびPoC回路23Aは、少なくともインダクタを含む。
【0016】
第1回路モジュール1の外部に設けられた別々の回路である第2回路モジュール2B、2C、2Dについても、第2回路モジュール2Aと同様の構成要素を有する。すなわち、第2回路モジュール2Bは、第2インターフェースIC21B、第2電源回路22B、およびPoC回路23Bを備えている。PoC回路13BおよびPoC回路23Bは、少なくともインダクタを含む。第2回路モジュール2Cは、第2インターフェースIC21C、第2電源回路22C、およびPoC回路23Cを備えている。PoC回路13CおよびPoC回路23Cは、少なくともインダクタを含む。第2回路モジュール2Dは、第2インターフェースIC21D、第2電源回路22D、およびPoC回路23Dを備えている。PoC回路13DおよびPoC回路23Dは、少なくともインダクタを含む。
【0017】
第1インターフェースIC11は、ECU200から入力された信号を変換して、同軸ケーブル3A、3B、3C、3Dを介して各第2回路モジュール2A、2B、2C、2Dに出力する。また、第1インターフェースIC11は、同軸ケーブル3A、3B、3C、3Dを介して入力された信号を変換して、ECU200に出力する。第1インターフェースIC11と同軸ケーブル3Aとは、配線40Aによって接続される。第1インターフェースIC11と同軸ケーブル3Bとは、配線40Bによって接続される。第1インターフェースIC11と同軸ケーブル3Cとは、配線40Cによって接続される。第1インターフェースIC11と同軸ケーブル3Dとは、配線40Dによって接続される。
【0018】
各第2インターフェースIC21A、21B、21C、21Dは、DEV300から入力された信号を変換して、同軸ケーブル3A、3B、3C、3Dを介して第1回路モジュール1に出力する。また、第2インターフェースIC21A、21B、21C、21Dは、同軸ケーブル3A、3B、3C、3Dを介して入力された信号を変換して、DEV300A、300B、300C、300Dに出力する。
【0019】
図1では、第1インターフェースIC11から第2インターフェースIC21A、21B、21C、21Dへの信号の伝送方向を破線矢示している。また、第2インターフェースIC21A、21B、21C、21Dから第1インターフェースIC11への信号の伝送経路を実線矢示している。
【0020】
第1電源回路12Aは、第1インターフェースIC11、ECU200等に電力を供給する。また、第1電源回路12Aは、PoC回路13Aを介して同軸ケーブル3Aによる信号の伝送経路に電力を供給する。第2電源回路22Aには、同軸ケーブル3Aによる信号の伝送経路からPoC回路23Aを介して電力が供給される。第2電源回路22Aは、第2インターフェースIC21A、DEV300A等に電力を供給する。
【0021】
第1電源回路12Bには、PoC回路13Bを介して同軸ケーブル3Bによる信号の伝送経路に電力を供給される。第2電源回路22Bは、第2インターフェースIC21B、DEV300B等に電力を供給する。
【0022】
第1電源回路12Cには、PoC回路13Cを介して同軸ケーブル3Cによる信号の伝送経路に電力を供給される。第2電源回路22Cは、第2インターフェースIC21C、DEV300C等に電力を供給する。
【0023】
第1電源回路12Dには、PoC回路13Dを介して同軸ケーブル3Dによる信号の伝送経路に電力を供給される。第2電源回路22Dは、第2インターフェースIC21D、DEV300D等に電力を供給する。
【0024】
なお、本例では、4つの第2回路モジュール2A、2B、2C、2Dに一対一に対応する、4つの第1電源回路12A、12B、12C、12Dを設けているが、4つより少ない数の第1電源回路を設け、1つの第1電源回路から複数の第2回路モジュールに電力を供給するようにしてもよい。
【0025】
図1において、第1インターフェースIC11から第2インターフェースIC21A、21B、21C、21Dへの信号の伝送速度は、第2インターフェースIC21A、21B、21C、21Dから第1インターフェースIC11への信号の伝送速度よりも遅い構成を想定している。具体的に、第1インターフェースIC11から第2インターフェースIC21A、21B、21C、21Dへの信号の伝送速度は、例えば1[MHz]から数十[MHz]の比較的低速な伝送速度を想定している。また、第2インターフェースIC21A、21B、21C、21Dから第1インターフェースIC11への信号の伝送速度は、例えば数百[MHz]から数千[MHz]の比較的高速な伝送速度を想定している。
【0026】
図2は、伝送回路の等価回路を示す図である。図3は、図2に示す等価回路を簡略化した模式図である。図2において、PoC回路13は、図1におけるPoC回路13A、13B、13Cおよび13Dを代表して示している。図2において、PoC回路23は、図1におけるPoC回路23A、23B、23Cおよび23Dを代表して示している。
【0027】
図2に示すように、伝送回路10は、第1ポートP1と第2ポートP2との間に設けられた伝送線路P1’-P2’と、第1ポートP1と伝送線路P1’-P2’との間に設けられた第1コンデンサC1と、第2ポートP2と伝送線路P1’-P2’との間に設けられた第2コンデンサC2と、第1コンデンサC1と伝送線路P1’-P2’との接続点にシャント接続されたPoC回路13と、第2コンデンサC2と伝送線路P1’-P2’との接続点にシャント接続されたPoC回路23と、を備える。
【0028】
図2に示す例において、PoC回路13は、例えば、インダクタL11と抵抗R11との並列回路と、インダクタL12と抵抗R12との並列回路と、インダクタL13と抵抗R13との並列回路と、が直列接続されている。PoC回路13の端部は、図1に示すように、第1電源回路(電源回路)12(12A、12B、12C、12D)に接続されるが、ここでは等価回路としてGND電位に接続された構成を示している。
【0029】
また、PoC回路13は、図3に示すように、第1インダクタL1に簡略化することができる。第1コンデンサC1と第1インダクタL1は、第1バイアスT回路T1を構成する。図3に示すように、本開示では、図2に示す抵抗R11、R12、R13を省略(OPEN)して、後述するシミュレーションを実施している。
【0030】
図2に示す例において、PoC回路23は、例えば、インダクタL21と抵抗R21との並列回路と、インダクタL22と抵抗R22との並列回路と、インダクタL23と抵抗R23との並列回路と、が直列接続されている。PoC回路23の端部は、図1に示すように、第2電源回路(電源回路)22に接続されるが、ここでは等価回路としてGND電位に接続された構成を示している。
【0031】
また、PoC回路23は、図3に示すように、第2インダクタL2に簡略化することができる。第2コンデンサC2と第2インダクタL2は、第2バイアスT回路T2を構成する。図3に示すように、本開示では、図2に示す抵抗R21、R22、R23を省略(OPEN)して、後述するシミュレーションを実施している。
【0032】
図2および図3において、第1ポートP1は、第1インターフェースIC11の信号入出力端子に対応する。第2ポートP2は、第2インターフェースIC21の信号入出力端子に対応する。伝送線路P1’-P2’は、同軸ケーブル3に対応し、ポートP1’は、第1回路モジュール1の信号入出力端子に対応し、ポートP2’は、第2回路モジュール2A、2B、2C、2Dの信号入出力端子に対応する。
【0033】
(クロストークの原因および対策)
図1に戻り、第1インターフェースIC11から各同軸ケーブル3A、3B、3C、3Dまでの配線間にクロストークが生じることがある。また、各PoC回路13A、13B、13C、13Dの配置によっては、インダクタ同士が結合してクロストークが生じることがある。例えば、PoC回路13AのインダクタとPoC回路13Bのインダクタとの配置によっては、両者が誘導結合し、クロストークが生じることがある。発明者は、これらのクロストークの原因および対策について検討した。発明者が検討したクロストークの原因および対策について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、以下の説明では、PoC回路13Aを「インダクタ13A」とし、PoC回路13Bを「インダクタ13B」とする。また、以下は、主に、インダクタ13Aおよび13Bに着目して説明するが、PoC回路13CおよびPoC回路13Dについても同様に、クロストークの対策を適用できる。
【0034】
図4は、配線間のクロストークを説明する図である。図4に示すように、基板50には、伝送すべき信号の伝送ラインである配線40A、配線40Bが設けられている。配線40A、配線40Bは、伝送すべき信号とともに、電力を供給するための電源電圧を送る。配線40Aは、配線40Bと並んで略平行に設けられている。本例では、配線40Aと配線40Bとの間にガードパターン51が設けられている。
【0035】
基板50の一主面には、インダクタ13Aおよび13Bが設けられている。これらは図1中のインダクタ13Aおよび13Bに相当し、バイアスT回路を構成するためのインダクタである。
【0036】
インダクタ13Aの一端は、配線40Aに接続されている。インダクタ13Aの他端は、電源パターン120Aに接続されている。電源パターン120Aには、図1の第1電源回路12Aからの電源電圧が供給されている。インダクタ13Bの一端は、配線40Bに接続されている。インダクタ13Bの他端は、電源パターン120Bに接続されている。電源パターン120Bには、図1の第1電源回路12Bからの電源電圧が供給されている。
【0037】
図4に示すように、配線40Aと配線40Bとを平行に配置したり、インダクタ13Aとインダクタ13Bとを近傍に設けたりすると、クロストークが生じることがある。このクロストークを抑制するための構成について、図5から図10を参照して説明する。
【0038】
(第1実施形態)
図5は、本開示の第1実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図5は、回路モジュールの主要部である基板50aを示す。図6は、図5中のX1-X1部の断面図である。図6は、基板50aを含めたインダクタ13A、13Bの断面図である。本開示では、PoC回路に着眼し、PoC回路に用いられるインダクタの構成を特有なものにすることで、厳しいクロストーク要求に応える。
【0039】
図6に示す基板50aにおいて、インダクタ13Aは、磁性体のコア130Aと、コア130Aに巻き付けられた巻線131Aと、これらを支持する筐体132Aとを含む。巻線131Aの一端は、端子133Aに電気的に接続されている。端子133Aは、第1線路である配線40Aに電気的に接続されている。巻線131Aの他端は、端子134Aに電気的に接続されている。端子134Aは、電源パターン120Aに電気的に接続されている。
【0040】
また、インダクタ13Bは、磁性体のコア130Bと、コア130Bに巻き付けられた巻線131Bと、これらを支持する筐体132Bとを含む。巻線131Bの一端は、端子133Bに電気的に接続されている。端子133Bは、第2線路である配線40Bに電気的に接続されている。巻線131Bの他端は、端子134Bに電気的に接続されている。端子134Bは、電源パターン120Bに電気的に接続されている。なお、ガードパターン51は、スルーホールH1により、グランド層GNDに電気的に接続されている。
【0041】
図5および図6に示すように、第1実施形態による回路モジュールの基板50aにおいて、インダクタ13A、13Bには、シート状の導体15A、15Bが設けられている。図6に示すように、導体15Aおよび15Bは、L字型に屈曲している。シート状とは、2次元の面としての広がりを持ち、長さおよび幅に比較して厚さが薄い形状(平面状)をいう。
【0042】
導体15Aは、インダクタ13Aの表面の一部を覆う。導体15Aは、側面部150Aと上面部151Aとを有する。導体15Aの側面部150Aは、インダクタ13Aの筐体の側面のうち、第2線路である配線40B側の側面を覆う。すなわち、インダクタ13Aの筐体の側面のうち、配線40Bに近い側の側面を覆う。また、導体15Aの上面部151Aは、インダクタ13Aの上面を覆う。
【0043】
導体15Bは、インダクタ13Bの表面の一部を覆う。導体15Bは、側面部150Bと上面部151Bとを有する。導体15Bの側面部150Bは、インダクタ13Bの筐体の側面のうち、第1線路である配線40A側の側面を覆う。すなわち、インダクタ13Bの筐体の側面のうち、配線40Aに近い側の側面を覆う。また、導体15Bの上面部151Bは、インダクタ13Bの上面を覆う。
【0044】
本実施形態において、導体15Aおよび15Bは、銅箔を折り曲げることによって形成する。導体15Aおよび15Bにより、インダクタ13Aとインダクタ13Bとの対向する面、および、それらの上面を覆うことができる。これにより、クロストークを抑えることができる。
【0045】
インダクタの筐体の高さ方向を含む側面に導体15A、15Bが配置されたインダクタ13A、13Bを2つの配線40A、40Bそれぞれに実装する。これにより、導体15Aは、インダクタ13Aを保持する筐体の配線40B側の側面の少なくとも一部に設けられる。導体15Bは、インダクタ13Bを保持する筐体の配線40A側の側面の少なくとも一部に設けられる。このようにインダクタ13A、13Bを配置することにより、導体15A、15Bで発生する渦電流損失(吸収損失)効果によりクロストークを抑制できる。
【0046】
ここで、導体15Aおよび15Bは、例えば、以下の(1)から(3)のように形成する。
(1)インダクタ13A、13Bの表面に、薄い金属箔による導体を粘着剤で接合する。
(2)曲げ加工が可能な金属板を用いてプレス成型によって導体を作成する。インダクタの筐体132A、132Bの形状に部分的に引っかかるように金属板を成型し、ラッチにより筐体132A、132Bに接合する。
(3)インダクタの筐体132A、132Bの一部に金属部を設けておき、その金属部に熱圧着などの方法で導体を接合する。
【0047】
以下の各実施形態においても同様に形成した導体を用いる。シート状の導体には、インダクタの筐体の表面に蒸着やめっきによって形成された導体が含まれる。すなわち、導体15Aおよび15Bなどを用いる代わりに、インダクタの筐体に導電性塗料を直接塗布したり、インダクタの筐体の表面に蒸着やめっきによって導体を形成したりしてもよい。以下の各実施形態においても同様である。なお、蒸着やめっきによって導体を形成する実施形態については、後述する。
【0048】
(第2実施形態)
図7は、本開示の第2実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図7は、回路モジュールの主要部である基板50bを示す。図8は、図7中のX2-X2部の断面図である。図8は、基板50bを含めたインダクタ13A、13Bの断面図である。第2実施形態においては、一方のインダクタについてシート状の導体を設け、他方のインダクタについてはシート状の導体を設けない。
【0049】
図7および図8に示すように、第2実施形態による回路モジュールの基板50bにおいては、インダクタ13Bにシート状の導体15Bが設けられ、インダクタ13Aにシート状の導体は設けられていない。導体15Bは、第1実施形態の場合と同様に形成する。図8に示すように、導体15Bは、L字型に屈曲している。
【0050】
第2の実施形態においては、インダクタの筐体の高さ方向を含む即面に導体を設けたインダクタ13Bを一方の配線40Bに実装する。そのようにインダクタ13Bを配置することにより、導体15Bで発生する渦電流損失(吸収損失)効果によりクロストークを抑制できる。
【0051】
(第3実施形態)
図9は、本開示の第3実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図9は、回路モジュールの主要部である基板50cを示す。図9は、基板50cにおいて、図7のX2-X2部に相当する部分で切断した断面図である。図9は、基板50cを含めたインダクタ13A、13Bの断面図である。第3実施形態においては、導体15Aおよび15Bをグランド電位とする。
【0052】
図9に示すようにインダクタを実装し、さらにインダクタ13Aの一部、インダクタ13Bの一部を囲うように導体15A、15Bを設けた。導体15Aの端部は、ガードパターン51aに電気的に接続される。このため、導体15Aは、グランド電位になる。導体15Bの端部は、ガードパターン51aに電気的に接続される。このため、導体15Bは、グランド電位になる。導体15A、15Bにおいて発生する渦電流損失(吸収損失)効果によりクロストークを抑制することができる。
【0053】
(クロストーク抑制効果)
発明者は、導体による、クロストークを抑制する効果について検証した。具体的には、まず、図5に示す基板50aにおいて、配線40Aの一端をポートP1、他端をポートP2とし、配線40Bの一端をポートP3、他端をポートP4とした。そして、ポートP1とポートP3とを測定対象とし、Sパラメータ(S31)を確認した。測定においては、約3.2mmの長さで約2.5mmの幅の大きさで、インダクタンス値が2.2μHのインダクタを用いた。
【0054】
図10は、導体を設けた場合の効果を説明する図である。図10は、Sパラメータの測定結果を示す図である。図10において、一点鎖線は銅箔を設けない場合のクロストークを示し、実線は銅箔を設けた場合のクロストークを示す。図10から理解できるように、導体15Aおよび15Bを設けることにより、クロストークを10dB程度抑えられることが確認できる。すなわち、導体15Aおよび15Bを設けた場合は、それらを設けない場合に比べてSパラメータ(S31)の値が低くなっており、クロストークが抑えられている。
【0055】
次に、発明者は、クロストークの結合メカニズム解明のためのシミュレーションを実施した。図11から図13は、クロストークの結合メカニズム解明のためのシミュレーションを説明する図である。
【0056】
図11において、基板52は、グランド層GND1およびGND2と、グランド層GND1の上方に設けられた配線41Aと、グランド層GND2の上方に設けられた配線41Bとを有する。図11において、グランド層GND1と配線41Aとの間には誘電体が設けられる。また、グランド層GND2と配線41Bとの間には誘電体が設けられる。
【0057】
図11においては、導電層が設けられない絶縁部D1があるため、グランド層GND1とグランド層GND2とが電気的に分離されている。図11のようなグランド層の分離によってクロストークを抑制できる場合、クロストークは基板52の内層のグランド層を通じて発生していることになる。
【0058】
図12は、配線41Bをシールドで覆う例を示す図である。図12の基板53は、配線41Aおよび配線41Bが図11中の基板52と同じで、図11中の絶縁部D1が無い基板に金属製のシールド15を設けた状態を示す。シールド15は、基板53のグランド層に電気的に接続される。
【0059】
図13は、図12中の矢印Y13の方向から基板53を見た状態を示す図である。図12および図13に示すように、シールド15は、配線41Bを覆うように設けられる。すなわち、配線41Bは、シールド15と基板53のグランド層とで囲まれた空間に設けられる。このため、シールド15の追加によってクロストークを抑制できる場合、クロストークは基板53の上部の空間を通じて発生していることになる。
【0060】
図14は、図11に示す基板を用いてシミュレーションを行った結果を示す図である。図14において、一点鎖線は、絶縁部D1を設けてグランド層GND1とグランド層GND2とを電気的に分離した場合を示す。また、図14において、破線は、絶縁部D1を設けず、グランド層が分離されていない場合を示す。図14に示すように、一点鎖線と破線とは、同じような特性を示す。このため、グランド層の分離は、クロストークを抑制する効果がないことが分かる。
【0061】
図15は、図12および図13に示すように基板を用いてシミュレーションを行った結果を示す図である。図15において、一点鎖線は、シールド15を設けていない場合を示す。また、図15において、実線は静電シールドとしての特性を示し、破線は磁気シールドとしての特性を示す。
【0062】
図15に示すように、図12および図13に示すようにシールド15を設けた場合に、静電シールドとしての効果が生じ、かつ、磁気シールドとしての効果が生じ、クロストークが抑制されることが分かった。そして、シールド15を設けることによって、磁気シールドと静電シールドとの両方でクロストークの抑制効果が得られる。
【0063】
図14および図15に示す結果から、図12の基板53の上部の空間を通じて配線間の結合が生じていることを確認できた。シールド15を設けることにより、図10に示すようにクロストークを抑制する効果が得られる。
【0064】
(ずらして配置する場合)
上記により、基板上部におけるシールドが有効であることを確認できた。発明者は、事実上のシールド面積を大きくするためにインダクタの実装位置を互いに配線長方向にずらした場合における、クロストークの抑制効果を確認した。
【0065】
図16は、図5および図6を参照して説明した基板50aを、その一主面の上方から見た状態を示す平面図である。図16に示す状態においては、配線40A、40Bの長手方向に対する、インダクタ13A、13Bの位置は同じである。このため、インダクタ13Aの配線40B側の側面と、インダクタ13Bの配線40A側の側面とは、互いに対向している。
【0066】
図17は、配線40A、40Bの長手方向に対する、インダクタ13A、13Bの位置をずらして配置した基板50a’を示す図である。図18は、基板50a’を、その一主面の上方から見た状態を示す平面図である。図17および図18に示すように、インダクタ13A、13Bは、配線40A、40Bの長手方向にずらした位置に実装される。本例において、ずれ量Zは4mmとする。上述した図16の場合、ずれ量は0mmである。
【0067】
図19は、図17および図18のように配置した場合におけるSパラメータ(S31)の測定結果を示す図である。図19において、実線はずれ量が0mmである場合、一点鎖線はずれ量が4mmである場合を示す。図19に示すように、ずれ量が4mmである場合には、ずれ量が0mmである場合に比べて、3dBから5dBのクロストーク抑制効果が得られた。
【0068】
(配線間の距離、並走距離)
次に、発明者は、配線間の距離や配線同士が並行して設けられる距離を変更した場合における、クロストークの抑制効果について検証した。まず、クロストークの抑制効果について検証するためのシミュレーションモデルを作成した。
【0069】
図20は、クロストークの抑制効果について検証するためのシミュレーションモデルを示す図である。図20において、基板50’には、配線40Aと配線40Bとが設けられている。すなわち、2つのマイクロストリップラインが近接して設けられている。配線40Aと配線40Bとの間の長さを距離Dとする。また、配線40Aと配線40Bとが並行して設けられる距離を並走距離Lとする。このようなシミュレーションモデルにおいて、距離Dや並走距離Lを変化させた際のSパラメータ(S31)を測定し、クロストークの抑制効果について検証した。
【0070】
図21から図23は、基板50’の層間厚み0.25mmの50Ω整合されたマイクロストリップラインモデルでのシミュレーション結果を示す図である。基板厚み1.5mmの6層基板または基板厚み0.8mmの4層基板を想定している。図21は、距離D=2mmの場合を示す。図22は、距離D=3mmの場合を示す。図23は、距離D=4mmの場合を示す。
【0071】
図24から図26は、基板50’の層間厚み0.15mmの50Ω整合されたマイクロストリップラインモデルでのシミュレーション結果を示す図である。基板厚み1.5mmの12層基板または基板厚み0.8mmの6層基板を想定している。図24は、距離D=1mmの場合を示す。図24は、図25は、距離D=2mmの場合を示す。図26は、距離D=3mmの場合を示す。
【0072】
図27は、クロストークを抑制するための配線設計において、配線間の距離Dと並走距離Lとの関係を示す図である。図5で示したように、導体15A、15Bを追加したインダクタ13A、13Bを用いると、約10dBクロストークが抑制される。周波数1GHzにおいてクロストークの閾値が-45dB以下とすれば、図27に示す基準に従う必要がある。
【0073】
図27において、「導体あり」は導体を設ける場合、「導体無し」は導体を設けない場合を示す。配線基板の層間の厚みが0.25mmである場合、配線40A、40Bの幅(配線幅)は0.35mm以上0.5mm以下であることが好ましい。その場合に、配線間の距離Dが2mmのとき並走距離Lは「導体無し」では不可、「導体あり」で12mm以下であることが好ましい。また、配線間の距離Dが3mmのときに並走距離Lは「導体無し」で4mm以下、「導体あり」で20mm以下であることが好ましい。配線間の距離Dが4mmのときに並走距離Lは「導体無し」で10mm以下、「導体あり」の場合(図中の*)で20mm以上であってもよい。
【0074】
一方、配線基板の層間の厚みが0.12mmである場合、配線40A、40Bの幅(配線幅)は0.1mm以上0.2mm以下であることが好ましい。その場合に、配線間の距離Dが1mmのとき並走距離Lは「導体無し」で2mm以下、「導体あり」で10mm以下であることが好ましい。また、配線間の距離Dが2mmのときに並走距離Lは「導体無し」で8mm以下、「導体あり」の場合(図中の*)で20mm以上であってもよい。配線間の距離Dが3mmのときに並走距離Lは「導体無し」および「導体あり」の場合(図中の*)において20mm以上あってもよい。
【0075】
ここで、図27中の「導体無し」の場合と「導体あり」の場合とを比較すると、本開示の回路モジュールの場合である「導体あり」の場合に、配線基板を設計する上での制限値が緩和されていることがわかる。このように、本開示の回路モジュールによれば、自由度の高い設計レイアウトが可能となる。したがって、伝送信号の品位の劣化を最小限に抑え、実装エリアを最適化できる。
【0076】
(第4実施形態)
図28は、第4実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図28は、回路モジュールの主要部である基板50dにおいて、図6と同じ位置でインダクタ13Aおよび13Bなどを切断した断面を示す。図28に示すように、インダクタ13Aに導体15Aが設けられている。図28に示すように、導体15Aは、側面部150Aと上面部151Aとを有し、L字型に屈曲している。上面部151Aは、筐体132Aの上面に設けられる。側面部150Aの一端は、ガードパターン51aに電気的に接続される。
【0077】
また、図28に示すように、インダクタ13Bに導体15Bが設けられている。図28に示すように、導体15Bは、側面部150Bと上面部151Bとを有し、L字型に屈曲している。上面部151Bは、筐体132Bの上面に設けられる。側面部150Bの一端は、ガードパターン51aに電気的に接続される。
【0078】
ガードパターン51aは、スルーホールH1によってグランド層GNDに電気的に接続される。このため、配線40Aまたは配線40Bによって生じる電界が導体15A、15Bに容量結合した後、電流がグランド層GNDに向かって流れる。したがって、クロストーク抑制効果を高めることができる。
【0079】
(第5実施形態)
図29は、第5実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図29は、回路モジュールの主要部である基板50eにおいて、図6と同じ位置でインダクタ13Bなどを切断した断面を示す。第5実施形態は、第4実施形態のインダクタ13Aを省いた構成になっている。第4実施形態と同様に、側面部150Bの一端は、ガードパターン51aに電気的に接続される。このため、配線40Aによって生じる電界が導体15Bに容量結合した後、電流がグランド層GNDに向かって流れる。したがって、クロストーク抑制効果を高めることができる。
【0080】
(第6実施形態)
図30は、第6実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図30は、回路モジュールの主要部である基板50fにおいて、図6と同じ位置でインダクタ13Aおよび13Bなどを切断した断面を示す。第6実施形態においては、シート状の導体15A、15Bが、配線40A、40Bに電気的に接続されている。
【0081】
図30に示すように、導体15Aの側面部150Aの一端は、配線40Aに電気的に接続されている。導体15Bの側面部150Bの一端は、配線40Bに電気的に接続されている。このように接続することにより、実施形態4の場合に比べて、シート状の導体を含めたインダクタ全体のサイズを小さくすることができる。このため、第6実施形態は、省スペース化に寄与できる。
【0082】
伝送すべき信号の伝送ラインである配線40A、40Bに導体15A、15Bを接続することにより、配線40A、40Bの信号の高周波成分が導体15A、15Bに容量結合する。この容量結合によって、導体15A、15Bからグランド層GNDに電流が流れやすくなる。このため、クロストークを抑制できる。
【0083】
なお、配線40A、40Bが電力を供給する電源ラインである場合、電源側のインピーダンスは低いため、グランド層GNDに接続した状態と似たような効果が得られる。
【0084】
(第7実施形態)
図31は、第7実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図31は、回路モジュールの主要部である基板50gにおいて、図6と同じ位置でインダクタ13Aおよび13Bなどを切断した断面を示す。第7実施形態においては、1つのインダクタに複数のシート状の導体が設けられている。すなわち、インダクタ13Aには、導体15Aおよび17Aが設けられている。導体15Aは、側面部150Aと、上面部151Aとを有する。側面部150Aの一端は、ガードパターン51aに接続されている。シート状の導体17Aは、側面部170Aと、上面部171Aとを有する。側面部170Aの一端は、電源パターン120Aに接続されている。導体15Aと導体17Aとは電気的に分離されており、電源パターン120Aとグランド層GNDとの絶縁状態は保たれている。
【0085】
なお、図31において、グランド電極G2は、スルーホールH2により、グランド層GNDに電気的に接続されている。グランド電極G3は、スルーホールH3により、グランド層GNDに電気的に接続されている。
【0086】
また、インダクタ13Bには、シート状の導体15Bおよび17Bが設けられている。導体15Bは、側面部150Bと、上面部151Bとを有する。側面部150Bの一端は、配線40Bに接続されている。導体17Bは、側面部170Bと、上面部171Bとを有する。側面部170Bの一端は、グランド電極G3に接続されている。導体15Bと導体17Bとは電気的に分離されており、配線40Bとグランド層GNDとの絶縁状態は保たれている。
【0087】
図31のような構成によれば、第4実施形態による効果と第6実施形態による効果とを合わせた効果が得られる。
【0088】
(第8実施形態)
図32は、第8実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図32は、回路モジュールの主要部である基板50hにおいて、図6と同じ位置でインダクタ13Aおよび13Bなどを切断した断面を示す。第8実施形態においては、インダクタ13Aおよび13Bの各電極にシート状の導体を設けている。すなわち、図32に示すように、インダクタ13Aの端子133Aに導体18Aが接続されている。導体18Aは、側面部180Aと、下面部181Aとを有する。端子133Aは、下面部181Aを介して配線40Aに電気的に接続される。側面部180Aは、端子133Aの高さ方向(配線40Aから離れる方向)に延びる。
【0089】
また、インダクタ13Aの端子134Aにシート状の導体19Aが接続されている。導体19Aは、側面部190Aと、下面部191Aとを有する。端子134Aは、下面部191Aを介して電源パターン120Aに電気的に接続される。側面部190Aは、端子134Aの高さ方向(電源パターン120Aから離れる方向)に延びる。
【0090】
さらに、インダクタ13Bの端子133Bにシート状の導体18Bが接続されている。導体18Bは、側面部180Bと、下面部181Bとを有する。端子133Bは、下面部181Bを介して配線40Bに電気的に接続される。側面部180Bは、端子133Bの高さ方向(配線40Bから離れる方向)に延びる。
【0091】
また、インダクタ13Bの端子134Bにシート状の導体19Bが接続されている。導体19Bは、側面部190Bと、下面部191Bとを有する。端子134Bは、下面部191Bを介して電源パターン120Bに電気的に接続される。側面部190Bは、端子134Bの高さ方向(電源パターン120Bから離れる方向)に延びる。
【0092】
図32に示すように、インダクタ13A、13Bの各電極の高さ方向に延びる部分を有する導体18A、19A、18B、19Bを設けることにより、クロストークを抑制できる。
【0093】
(第9実施形態)
図33は、第9実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図33は、回路モジュールの主要部である基板50iにおいて、図6と同じ位置でインダクタ13Aおよび13Bなどを切断した断面を示す。図34は、図33に示すインダクタ13Aを下面側から見た図である。第9実施形態において、インダクタ13Aおよび13Bは複数の端子を有しており、少なくとも1つの端子が巻線に接続されないオープン端子になっている。
【0094】
図33において、端子133Aは、配線40Aに電気的に接続される。端子134Aは、電源パターン120Aに電気的に接続される。端子133Bは、配線40Bに電気的に接続される。端子134Bは、電源パターン120Bに電気的に接続される。
【0095】
また、図33および図34において、インダクタ13Aの筐体132Aは、端子133A、134A、135Aおよび136Aを有する。端子133Aには巻線131Aの一端が電気的に接続されている。端子134Aには巻線131Aの他端が電気的に接続されている。端子135Aおよび136Aは、巻線131Aに接続されないオープン端子である。端子135Aは、下面部181Aを介してガードパターン51aに電気的に接続されている。端子136Aは、下面部191Aを介してグランド電極G2に電気的に接続されている。
【0096】
同様に、インダクタ13Bの筐体132Bは、端子133B、134B、135Bおよび136Bを有する。端子133Bには巻線131Bの一端が電気的に接続されている。端子134Bには巻線131Bの他端が電気的に接続されている。端子135Bおよび136Bは、巻線131Bに接続されないオープン端子である。端子135Bは、下面部181Bを介してガードパターン51aに電気的に接続されている。端子136Bは、下面部191Bを介してグランド電極G3に電気的に接続されている。
【0097】
(第10実施形態)
図35は、第10実施形態による回路モジュールに用いるインダクタ13Aを下面側から見た図である。インダクタ13Aが複数の端子を有する場合、図33および図34に示す端子の配列に限らず、図35に示す端子の配列であってもよい。すなわち、配線40A、ガードパターン51a、電源パターン120Aなどの配置によっては、図35に示すオープン端子を有するインダクタ13Aが用いられてもよい。
【0098】
図35に示すインダクタ13Aにおいて、端子133Aには巻線131Aの一端が電気的に接続されている。端子134Aには巻線131Aの他端が電気的に接続されている。端子135Aおよび136Aは、巻線131Aに接続されないオープン端子である。インダクタ13Aは、端子133A、134A、135Aおよび136Aによって、基板に実装される。
【0099】
図36は、上述した各実施形態において用いる配線基板の条件を示す図である。図36に示すように、配線基板の層間の厚みが0.25mmである場合、配線40A、40Bの幅(配線幅)は0.35mm以上0.5mm以下であることが好ましい。その場合に、配線間の距離Dが2mmのときに並走距離Lは12mm以下であることが好ましい。また、配線間の距離Dが3mmのときに並走距離Lは20mm以下であることが好ましい。なお、配線基板の層間の厚みが0.25mmは、厚み1.5mmの6層基板や厚み0.8mmの4層基板を想定している。
【0100】
一方、配線基板の層間の厚みが0.12mmである場合、配線40A、40Bの幅(配線幅)は0.1mm以上0.2mm以下、配線間の距離Dが1mmで並走距離Lは10mm以下であることが好ましい。なお、配線基板の層間の厚みが0.12mmは、厚み1.5mmの12層基板や厚み0.8mmの6層基板を想定している。図36に示す条件を満たす配線基板を用いてインダクタ13A、13Bを実装することにより、一般的に要求される程度にクロストークを抑制できる。
【0101】
(第11実施形態)
図37は、第11実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図37は、回路モジュールの主要部である基板50jにおいて、図6と同じ位置でインダクタ13Aおよび13Bなどを切断した断面を示す。第11実施形態においては、蒸着またはめっきによって形成した導体16A、16Bを有する。導体16Aは、インダクタ13Aの筐体の表面に沿って形成される。導体16Bは、インダクタ13Bの筐体の表面に沿って形成される。
【0102】
導体16Aは、インダクタ13Aの筐体の上面に形成された上面部161Aと、インダクタ13Aの筐体の側面に形成された側面部160Aと、を含む。上面部161Aと側面部160Aとは連続しており、電気的に導通している。本例の側面部160Aの端部16ATは、端子133Aに接続されていない。側面部160Aは、端子133Aの高さ方向(配線40Aから離れる方向)に延びる。
【0103】
導体16Bは、インダクタ13Bの筐体の上面に形成された上面部161Bと、インダクタ13Bの筐体の側面に形成された側面部160Bと、を含む。上面部161Bと側面部160Bとは連続しており、電気的に導通している。本例の側面部160Bの端部16BTは、端子133Bに接続されていない。側面部160Bは、端子133Bの高さ方向(配線40Bから離れる方向)に延びる。側面部160Aと側面部160Bとは互いに対向している。第11実施形態による回路モジュールにおいても、クロストークを抑制でき、かつ、PoCを実現する性能を確保できる。
【0104】
(第12実施形態)
図38は、第12実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図38は、回路モジュールの主要部である基板50kにおいて、図6と同じ位置でインダクタ13Aおよび13Bなどを切断した断面を示す。第12実施形態においては、蒸着またはめっきによって形成した導体16A、16Bを有する。
【0105】
第12実施形態による回路モジュールが第11実施形態による回路モジュールと異なる点は、側面部160Aの端部16ATが端子133Aに接続されており、かつ、側面部160Bの端部16BTが端子133Bに接続されている点である。これにより、導体16Aは、端子133Aを介して、配線40Aに電気的に接続される。また、導体16Bは、端子133Bを介して、配線40Bに電気的に接続される。第12実施形態による回路モジュールにおいても、クロストークを抑制でき、かつ、PoCを実現する性能を確保できる。
【0106】
(第13実施形態)
図39は、第13実施形態による回路モジュールの主要部の構成を示す図である。図40は、図39中のX3-X3部の断面図である。図39は、基板50mを含めたインダクタ13A、13Cの断面図である。本開示では、PoC回路に着眼し、PoC回路に用いられるインダクタの構成を特有なものにすることで、厳しいクロストーク要求に応える。
【0107】
図39に示すインダクタ13Aは、図37を参照して説明した第11実施形態のインダクタ13Aと同様の構成である。第13実施形態においては、蒸着またはめっきによって形成した導体16A、16Cを有する。導体16Aは、第11実施形態による回路モジュールと同様である。図39に示すインダクタ13Cについては、筐体の形状がインダクタ13Aとは異なる。インダクタ13Cの筐体は、凸部PTを有する。凸部PTは、インダクタ13Cの側面部からインダクタ13A側に突出している。本例の凸部PTは、直方体である。本例において、凸部PTのガードパターン51に沿った方向の長さは、インダクタ13Cの筐体のガードパターン51に沿った方向の長さと同じである。インダクタ13Cは、凸部PTがインダクタ13A側を向くように、基板50mの表面に実装される。
【0108】
インダクタ13Cの表面に形成される導体16Cは、上面部161Cと、側面部160Cと、を含む。上面部161Cと、側面部160Cとは連続しており、電気的に導通している。側面部160Cは、凸部PTの表面形状に沿って形成される。すなわち、側面部160Cは、凸部PTの上面PTU、側面PTSに連続して形成されており、さらに底面PTDの一部にも形成される。側面部160Cの端部16CTは、底面PTDに位置している。底面PTDにおいて、導体16Cとガードパターン51とが電気的に接続されている。凸部PTを有するインダクタ13Cを用いることにより、導体16Cとガードパターン51との良好な電気的接続を実現できる。ガードパターン51は、スルーホールH1により、グランド層GNDに電気的に接続されている。これにより、導体16Cがグランド層GNDに電気的に接続される。このため、クロストークを抑制でき、かつ、PoCを実現する性能を確保できる。
【0109】
なお、凸部PTの形状は、図39に示すような直方体に限定されない。凸部PTの形状は、凸部PTの表面に形成される導体16Cとガードパターン51とが電気的に接続できる形状であればよい。また、インダクタ13Aの代わりに、インダクタ13Cのように凸部PTを有するインダクタを用いてもよい。この場合、ガードパターン51を挟んで向かいあうインダクタがともに凸部PTを有することになる。
【0110】
請求項の記載に関して、本開示は以下の態様をとりうる。
<1>
配線基板と、
前記配線基板の外部に設けられた第1回路に伝送すべき信号と前記第1回路に電力を供給するための電源電圧とを送るために前記配線基板に設けられた第1線路と、
前記第1回路とは別に前記配線基板の外部に設けられた第2回路に伝送すべき信号と前記第2回路に電力を供給するための電源電圧とを送るために前記配線基板に前記第1線路に並んで設けられた第2線路と、
一端が前記第1線路に接続され、かつ、他端が前記電力を供給するための電源回路に接続され、前記配線基板に設けられた第1インダクタと、
前記第1インダクタを保持する筐体の前記第2線路側の側面の少なくとも一部に設けられたシート状の第1導体と、
を備える回路モジュール。
<2>
前記第1導体は、前記第1インダクタを保持する筐体の上面を覆う部分を有する<1>に記載の回路モジュール。
<3>
一端が前記第2線路に接続され、かつ、他端が電力を供給するための電源回路に接続され、前記配線基板に設けられた第2インダクタと、前記第2インダクタの前記第1線路側の側面の少なくとも一部に設けられたシート状の第2導体とをさらに備える<1>または<2>に記載の回路モジュール。
<4>
前記第1インダクタの前記第2線路側の側面と、前記第2インダクタの前記第1線路側の側面とは、互いに対向している<3>に記載の回路モジュール。
<5>
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、前記第1線路と前記第2線路との並走部分の長さ方向に対して互いにずれた位置に設けられる<3>に記載の回路モジュール。
<6>
前記第1導体は、グランド電位に電気的に接続される<1>から<5>のいずれか1つに記載の回路モジュール。
<7>
前記第1導体は、前記第1線路に接続される<1>から<5>のいずれか1つに記載の回路モジュール。
<8>
前記第2導体は、グランド電位に電気的に接続される<3>から<5>のいずれか1つに記載の回路モジュール。
<9>
前記第2導体は、前記第2線路に接続される<3>から<5>のいずれか1つに記載の回路モジュール。
<10>
前記第1線路と前記第2線路との間に設けられ、かつ、グランド電位に電気的に接続されるガードパターンをさらに含む<1>から<9>のいずれか1つに記載の回路モジュール。
【符号の説明】
【0111】
1 第1回路モジュール
2A、2B、2C、2D 第2回路モジュール
12A、12B、12C、12D 電源回路
13A、13B インダクタ
15A、15B、17A、17B、
18A、18B、19A、19B 導体
22A、22B、22C、22D 電源回路
41A、41B 配線
50、50a、50b、50c、50d、
50e、50f、50g、50h、50i、
50j、50k、50m、52、53 基板
51、51a ガードパターン
100 伝送システム
120A、120B 電源パターン
130A、130B コア
131A、131B 巻線
132A、132B 筐体
133A、133B、134A、134B、
135A、135B、136A、136B 端子
G2、G3 グランド電極
GND、GND1、GND2 グランド層
P1、P2、P3、P4 ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図35
図36
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図38
図39
図40