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特開2023-131112巻取装置、巻取設備、及び、繊維機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131112
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】巻取装置、巻取設備、及び、繊維機械
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/52 20060101AFI20230913BHJP
   B65H 54/42 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B65H54/52 B
B65H54/42
B65H54/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014761
(22)【出願日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2022035177
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】近田 秀和
(57)【要約】
【課題】パッケージの重量を接圧に利用しつつ、接圧の変動を抑えることのできる巻取装置を提供する。
【解決手段】回転ドラム40の軸方向から見て、クレードルアーム30は、パッケージPwの径が大きくなるにつれて、揺動支点Uとクレードルアーム30に支持されたボビンBwの中心Vとを結ぶ直線Lの傾きが徐々に鉛直方向に近づくように揺動する。糸の巻き取りを開始してから直線Lの傾きが鉛直方向に一致するまでの間、回転ドラム40とボビンBw又はパッケージPwとの接点Sが、回転ドラム40の中心Cを基点として水平方向を0度としたときに0度より大きく45度より小さい範囲に位置する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置であって、
一端部に設けられた揺動支点を中心に揺動し、他端部で前記ボビンを回転可能に支持するクレードルアームと、
前記クレードルアームに支持された前記ボビン又は前記パッケージの周面に接触した状態で回転する回転ドラムと、
を備え、
前記回転ドラムの軸方向から見て、
前記クレードルアームは、前記パッケージの径が大きくなるにつれて、前記揺動支点と前記クレードルアームに支持された前記ボビンの中心とを結ぶ直線の傾きが徐々に鉛直方向に近づくように揺動し、
前記糸の巻き取りを開始してから前記直線の傾きが鉛直方向に一致するまでの間、前記回転ドラムと前記ボビン又は前記パッケージとの接点が、前記回転ドラムの中心を基点として水平方向を0度としたときに0度より大きく45度より小さい範囲に位置することを特徴とする巻取装置。
【請求項2】
前記直線の傾きが鉛直方向と一致するまでに前記パッケージの形成を終えることを特徴とする請求項1に記載の巻取装置。
【請求項3】
前記クレードルアームは、前記揺動支点が前記回転ドラムの中心よりも下方に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の巻取装置。
【請求項4】
前記クレードルアームは、前記揺動支点が前記回転ドラムの下端よりも下方に位置するように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の巻取装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の巻取装置が鉛直方向に複数並んで配置されていることを特徴とする巻取設備。
【請求項6】
請求項5に記載の巻取設備を備えることを特徴とする繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置、並びに、当該巻取装置を備える巻取設備及び繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の糸巻取ユニットは、回動軸周りに揺動可能なクレードルアーム(特許文献1ではパッケージ支持フレーム)を有している。クレードルアームは、ボビン(パッケージ)を回転可能に支持する。クレードルアームに支持されているパッケージの周面には、巻取ドラムが接触しており、巻取ドラムが回転駆動されることでパッケージに糸が巻き取られる。パッケージの径が大きくなるにつれて、クレードルアームは巻取ドラムから遠ざかるように揺動する。また、クレードルアームの回転軸には、パッケージを巻取ドラムに対して所定の接圧で押し付けるための接圧調整機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-155030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パッケージに所定の接圧を付与するに当たって、全接圧を接圧調整機構によって付与しようとすると、接圧調整機構の出力を大きくする必要があり、コストアップにつながる。この点、特許文献1では、巻取ドラムの上方にパッケージが位置しており(図1参照)、パッケージの重量のうち接圧面に直交する方向の成分が接圧として寄与する。このため、出力の小さな接圧調整機構でも所定の接圧を付与することが可能となる。しかしながら、パッケージの径が大きくなり、パッケージの重量が増加するにつれて接圧が増大するため、接圧の変動が大きくなりやすいという課題があった。このような課題は、低接圧を維持しながら糸を巻き取る「ソフト巻き」を行う場合に特に顕著であった。
【0005】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、パッケージの重量を接圧に利用しつつ、接圧の変動を抑えることのできる巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る巻取装置は、ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置であって、一端部に設けられた揺動支点を中心に揺動し、他端部で前記ボビンを回転可能に支持するクレードルアームと、前記クレードルアームに支持された前記ボビン又は前記パッケージの周面に接触した状態で回転する回転ドラムと、を備え、前記回転ドラムの軸方向から見て、前記クレードルアームは、前記パッケージの径が大きくなるにつれて、前記揺動支点と前記クレードルアームに支持された前記ボビンの中心とを結ぶ直線の傾きが徐々に鉛直方向に近づくように揺動し、前記糸の巻き取りを開始してから前記直線の傾きが鉛直方向に一致するまでの間、前記回転ドラムと前記ボビン又は前記パッケージとの接点が、前記回転ドラムの中心を基点として水平方向を0度としたときに0度より大きく45度より小さい範囲に位置することを特徴とする。
【0007】
本発明では、パッケージの径が大きくなるにつれて、クレードルアームの揺動支点とクレードルアームに支持されたボビンの中心とを結ぶ直線の傾きが徐々に鉛直方向に近づくように揺動する。そして、糸の巻き取りを開始してから上記直線の傾きが鉛直方向に一致するまでの間、回転ドラムとボビン又はパッケージとの接点が、回転ドラムの中心を基点として水平方向を0度としたときに0度より大きく45度より小さい範囲に位置する。つまり、回転ドラムの中心を通る水平面よりも上側でパッケージが回転ドラムと接触する状態を維持するので、パッケージの重量を接圧に利用することができる。しかも、後で詳細に説明するように、パッケージの重量のうち接圧面に直交する方向の割合を1/√2未満に抑えることができるので、接圧の変動を抑えることが可能となる。
【0008】
本発明において、前記直線の傾きが鉛直方向と一致するまでに前記パッケージの形成を終えるとよい。
【0009】
上記直線の傾きが鉛直方向を超えてからも糸を巻き取り続けると、パッケージの重量がパッケージを回転ドラムから離間させる方向に作用し、パッケージの重量を接圧に利用できなくなる。したがって、上記直線の傾きが鉛直方向と一致するまでにパッケージの形成を終えることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記クレードルアームは、前記揺動支点が前記回転ドラムの中心よりも下方に位置するように配置されているとよい。
【0011】
このような配置によれば、クレードルアームは回転ドラムの中心を上下に跨ぐように延びるので、鉛直方向においてクレードルアームと回転ドラムとを重複させることができる。したがって、巻取装置の高さを抑えることができるという点で有利である。
【0012】
本発明において、前記クレードルアームは、前記揺動支点が前記回転ドラムの下端よりも下方に位置するように配置されているとよい。
【0013】
このような配置によれば、鉛直方向においてクレードルアームと回転ドラムとをより広い範囲で重複させることが可能となり、巻取装置の高さを一層抑えることができる。
【0014】
本発明に係る巻取設備は、上記何れかの巻取装置が鉛直方向に複数並んで配置されていることを特徴とする。
【0015】
巻取装置が鉛直方向に複数並んで配置されている場合、上段の巻取装置の高さが高くなってしまい、上段の巻取装置においてパッケージの回収やボビンの供給等の作業が困難となる。この点、上述のように、本発明に係る巻取装置を用いることで、巻取装置の高さを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る仮撚加工機の概略側面図である。
図2】巻取開始時の巻取装置の模式図である。
図3】巻取パッケージが完成したときの巻取装置の模式図である。
図4】巻取パッケージを解放するときの巻取装置の模式図である。
図5】ボビンを受け渡すときの巻取装置の模式図である。
図6】ボビン又は巻取パッケージと回転ドラムとの接点を示す模式図である。
図7】巻取パッケージの重量が接圧に寄与する割合を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(仮撚加工機の構成)
図1は、本実施形態に係る仮撚加工機1(本発明の繊維機械に相当)の概略構成を示す側面図である。以下、図1の紙面垂直方向を機台長手方向とし、紙面左右方向を機台幅方向とする。機台長手方向と機台幅方向の両方が直交する方向を、重力の作用する鉛直方向とする。以下、これらの方向語を適宜使用して説明する。
【0019】
仮撚加工機1は、ポリエステル又はナイロン等の合成繊維からなる糸Yに仮撚加工を施す。仮撚加工機1は、複数の糸Yを供給するための給糸部2と、給糸部2から供給された複数の糸Yを仮撚加工する加工部3と、加工部3によって加工された複数の糸Yを巻き取る巻取部4と、を備える。給糸部2、加工部3及び巻取部4が有する各構成要素は、機台長手方向において複数配列されている。
【0020】
給糸部2は、複数の給糸パッケージPsを支持するクリールスタンド7を有し、加工部3に複数の糸Yを供給する。加工部3は、糸が走行する糸走行方向の上流側から順に、第1フィードローラ11、撚止ガイド12、第1加熱装置13、冷却装置14、仮撚装置15、第2フィードローラ16、交絡装置17、第3フィードローラ18、第2加熱装置19、第4フィードローラ20が配置された構成となっている。巻取部4は、巻取装置21が鉛直方向に複数並んで配置された巻取設備5を有する。巻取設備5は、加工部3で仮撚加工された複数の糸Yを複数の巻取装置21でボビンBwに巻き取って巻取パッケージPw(本発明のパッケージに相当)を形成する。
【0021】
仮撚加工機1は、機台幅方向に間隔を空けて配置された主機台8及び巻取台9を有する。主機台8及び巻取台9は、機台長手方向に略同じ長さに延設されており、互いに対向するように配置されている。主機台8の上部と巻取台9の上部とは、支持フレーム10によって連結されている。加工部3を構成する各装置は、主に主機台8や支持フレーム10に取り付けられている。主機台8と巻取台9と支持フレーム10とによって、作業者が各装置に対して糸掛け等の作業を行うための作業空間22が形成されている。糸道は、糸Yが主に作業空間22の周りを走行するように形成されている。
【0022】
次に、加工部3の各構成要素について説明する。第1フィードローラ11は、給糸部2から供給された糸Yを第1加熱装置13へ送るためのものである。第1フィードローラ11は、巻取台9の上方に配置されている。
【0023】
撚止ガイド12は、後述する仮撚装置15で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側に伝播しないようにするためのものである。撚止ガイド12は、第1フィードローラ11の糸走行方向下流側、且つ、第1加熱装置13の糸走行方向上流側に配置されている。
【0024】
第1加熱装置13は、第1フィードローラ11から送られてきた糸Yを加熱するためのものであり、支持フレーム10に設置されている。
【0025】
冷却装置14は、第1加熱装置13で加熱された糸Yを冷却するためのものである。冷却装置14は、第1加熱装置13の糸走行方向下流側、且つ、仮撚装置15の糸走行方向上流側に配置されている。
【0026】
仮撚装置15は、糸Yに撚りを付与するための装置である。仮撚装置15は、冷却装置14の糸走行方向におけるすぐ下流側に配置されている。
【0027】
第2フィードローラ16は、仮撚装置15で撚りが付与された糸Yを、交絡装置17に向けて送るローラである。第2フィードローラ16は、主機台8において仮撚装置15の糸走行方向下流側に配置されている。第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度は、第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度よりも速い。このため、糸Yは、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸される。
【0028】
交絡装置17は、空気の噴射作用によって糸Yに交絡を付与する装置である。交絡装置17は、主機台8において第2フィードローラ16の下方に配置されている。
【0029】
第3フィードローラ18は、交絡装置17によって交絡が付与された糸Yを、第2加熱装置19に向けて送るローラである。第3フィードローラ18は、主機台8において交絡装置17の下方に配置されている。第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度は、第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩される。
【0030】
第2加熱装置19は、第3フィードローラ18から送られてきた糸Yを加熱するための装置である。第2加熱装置19は、主機台8において第3フィードローラ18の下方に配置されている。
【0031】
第4フィードローラ20は、第2加熱装置19によって熱処理された糸Yを、巻取装置21に向けて送るローラである。第4フィードローラ20は、巻取台9の下部に配置されている。第4フィードローラ20による糸Yの搬送速度は、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩される。
【0032】
以上のように構成された加工部3では、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸された糸Yに、仮撚装置15によって撚りが付与される。仮撚装置15によって形成される撚りは、撚止ガイド12までは伝播するが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第1加熱装置13で加熱されて熱固定された後、冷却装置14で冷却される。仮撚装置15から下流では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって各フィラメントが波状に仮撚りされた状態が維持される。
【0033】
仮撚装置15によって仮撚りが施された糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩されながら、交絡装置17によって交絡が付与され、糸走行方向における下流側へ案内される。さらに、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩されながら、第2加熱装置19で熱固定される。最後に、第4フィードローラ20から送られた糸Yは、巻取装置21によって巻き取られ、巻取パッケージPwが形成される。
【0034】
巻取部4は、複数の巻取装置21を有する。巻取装置21は、第4フィードローラ20から送られる糸YをボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成するための装置である。本実施形態の巻取部4は、複数の巻取装置21が鉛直方向に4段に配置された構成、すなわち、4つの巻取装置21が鉛直方向に並んだ構成を有する。ただし、鉛直方向に並ぶ巻取装置21の数は4つに限定されるものではない。
【0035】
(巻取装置の詳細)
図2図5を参照しつつ、巻取装置21の詳細について説明する。図2は、巻取開始時の巻取装置21の模式図である。図3は、巻取パッケージPwが完成したときの巻取装置21の模式図である。図4は、巻取パッケージPwを解放するときの巻取装置21の模式図である。図5は、ボビンBwを受け渡すときの巻取装置21の模式図である。
【0036】
巻取装置21は、クレードルアーム30と、回転ドラム40と、パッケージ貯留部50と、ストッカー60とを含む。巻取装置21は、クレードルアーム30に装着された空のボビンBwに糸Yを巻き取って巻取パッケージPwを形成する。糸Yが巻かれていない空のボビンBwはストッカー60から供給され、完成した巻取パッケージPwはパッケージ貯留部50に一時的に貯留される。ストッカー60への空のボビンBwの補給及びパッケージ貯留部50からの巻取パッケージPwの回収は、オペレータ又は自動で動作するロボット装置によって適宜行われる。
【0037】
クレードルアーム30は、ボビンBwを回転可能に支持するための長尺状の部材である。クレードルアーム30は、機台長手方向において対向するように一対配置されている。一対のクレードルアーム30は、ボビンBw(巻取パッケージPw)を挟んで支持するとともに、支持している巻取パッケージPwを解放することが可能である。
【0038】
クレードルアーム30は、下端部(本発明の一端部に相当)に設けられた揺動軸31を中心に揺動可能であり、上端部(本発明の他端部に相当)でボビンBwを回転可能に支持する。揺動軸31は、機台長手方向と平行である。よって、クレードルアーム30は、揺動軸31を中心に機台長手方向と直交する面内、すなわち、図2図5の紙面内で揺動する。
【0039】
クレードルアーム30には、揺動軸31を中心にクレードルアーム30を図2図5の反時計回りに付勢するエアシリンダ32が連結されている。エアシリンダ32によって、クレードルアーム30が反時計回りに付勢されることで、クレードルアーム30に支持されている巻取パッケージPwが回転ドラム40に押し付けられ、巻取パッケージPwに接圧が付与される。
【0040】
エアシリンダ32は、クレードルアーム30を反時計回りに付勢するだけでなく、クレードルアーム30を解放位置(図4に示すクレードルアーム30の位置)に移動させる機能も有する。解放位置とは、クレードルアーム30が巻取パッケージPwを解放することで、巻取パッケージPwをパッケージ貯留部50に送ることが可能となるクレードルアーム30の位置である。なお、本実施形態では、エアシリンダ32によって巻取パッケージPwに接圧を付与しているが、他の構成によって巻取パッケージPwに接圧を付与してもよい。
【0041】
回転ドラム40は、クレードルアーム30に支持されたボビンBw又は巻取パッケージPwの周面に接触した状態で回転する。回転ドラム40は、モータ41によって回転駆動されることで、回転ドラム40と接触しているボビンBw又は巻取パッケージPwを従動回転させる。ただし、回転ドラム40を回転駆動させる代わりに、ボビンBwを直接回転駆動させるようにしてもよい。
【0042】
パッケージ貯留部50は、機台幅方向においてクレードルアーム30の一方側に配置されており、完成した巻取パッケージPwを一時的に貯留する。本実施形態のパッケージ貯留部50は、最大で2個の巻取パッケージPwを貯留可能であるが、巻取パッケージPwをいくつ貯留可能とするかは適宜変更が可能である。パッケージ貯留部50は、機台幅方向の他方側から一方側に向かって下方に傾斜しており、下端部には巻取パッケージPwの落下を防止するための不図示のストッパーが設けられている。このため、解放位置に位置するクレードルアーム30から解放された巻取パッケージPwは、傾斜に沿ってパッケージ貯留部50の他方側から一方側へと転がり、パッケージ貯留部50の一方側から順番に貯留される。
【0043】
ストッカー60は、機台幅方向においてクレードルアーム30の他方側に配置されており、空のボビンBwを貯留する。本実施形態のストッカー60は、最大で3個のボビンBwを貯留可能であるが、ボビンBwをいくつ貯留可能とするかは適宜変更が可能である。ストッカー60は、機台幅方向の他方側から一方側に向かって下方に傾斜している。ストッカー60の一方側の端部には、ストッカー60から下方に延びるストッカーアーム61が配置されている。
【0044】
ストッカーアーム61は、下端部に設けられた揺動軸62を中心に揺動可能であり、上端部でストッカー60に貯留された複数のボビンBwのうち最も一方側にあるボビンBwを支持可能である。揺動軸62は、機台長手方向と平行である。よって、ストッカーアーム61は、揺動軸31を中心に機台長手方向と直交する面内、すなわち、図2図5の紙面内で揺動する。ストッカーアーム61には、ストッカーアーム61を図2図4に示す待機位置と図5に示す受渡位置との間で揺動させるエアシリンダ63が連結されている。なお、ストッカーアーム61を揺動させる駆動源は、エアシリンダ63以外の構成でもよい。
【0045】
(巻取装置の一連の動作)
あるボビンBwへの巻取開始から次のボビンBwへの巻取開始までの、巻取装置21の一連の動作について、図2図5を参照しつつ説明する。
【0046】
図2に示すように、糸Yの巻取開始時には、エアシリンダ32によってクレードルアーム30は回転ドラム40に向けて付勢される。これによって、クレードルアーム30は、揺動軸31を中心に回転ドラム40側へと下方に揺動し、ボビンBwが回転ドラム40に接触する。以降、ボビンBwに糸Yを巻き取って巻取パッケージPwを形成している間は、エアシリンダ32によってクレードルアーム30が回転ドラム40に向けて付勢された状態が維持される。これによって、巻取パッケージPwが回転ドラム40に押し付けられ、巻取パッケージPwに接圧が付与される。
【0047】
糸Yの巻き取りが進み、巻取パッケージPwの径が大きくなるにつれて、クレードルアーム30は回転ドラム40から遠ざかるように徐々に立ち上がる(図2の時計回りに揺動する)。ただし、図3に示す巻取パッケージPwの完成時に至るまでの間、クレードルアーム30が鉛直面を超えて、機台幅方向の一方側に傾くことはない。
【0048】
巻取パッケージPwが完成すると、不図示のカッターによって糸Yを切断した後、図4に示すように、エアシリンダ32によってクレードルアーム30を解放位置に揺動させる。クレードルアーム30が解放位置で巻取パッケージPwを解放することで、巻取パッケージPwはクレードルアーム30から外れてパッケージ貯留部50に貯留される。
【0049】
続けて、図5に示すように、クレードルアーム30を解放位置に維持したまま、エアシリンダ63によってストッカーアーム61を待機位置から受渡位置に揺動させる。これによって、ストッカーアーム61に支持されているボビンBwが、解放位置にあるクレードルアーム30に受け渡される。ボビンBwの受け渡しが終わった後、エアシリンダ32によってクレードルアーム30を回転ドラム40に向けて付勢するとともに、エアシリンダ63によってストッカーアーム61を受渡位置から待機位置に戻す。その結果、図2に示すように、新しいボビンBwへの糸Yの巻き取りが可能な状態となる。
【0050】
(接圧の変動を抑えるための構成)
本実施形態では、図3に示すように、巻取パッケージPwを回転ドラム40の斜め上方から回転ドラム40の周面に接触させるようにしている。こうすることによって、巻取パッケージPwの重量のうち接圧面に直交する方向の成分を接圧として利用することができ、エアシリンダ32が小出力のものであっても所定の接圧を付与することができる。しかしながら、巻取パッケージPwの径が大きくなるにつれて、巻取パッケージPwの重量由来の接圧が増大するため、接圧の変動が大きくなりやすいという課題があった。
【0051】
接圧の変動を抑えるための構成について、図6を参照しつつ説明する。図6は、ボビンBw又は巻取パッケージPwと回転ドラム40との接点を示す模式図である。以下では、図6に示すように、回転ドラム40の軸方向(機台長手方向)から見た状態に基づいて説明を行う。図6に記載の各符号の意味は以下の通りである。
C:回転ドラム40の中心
U:クレードルアーム30の揺動支点(クレードルアーム30の揺動軸31の中心)
V:クレードルアーム30に支持されたボビンBwの中心
L:クレードルアーム30の揺動支点Uとクレードルアーム30に支持されたボビンBwの中心Vとを結ぶ直線
S:ボビンBw又は巻取パッケージPwと回転ドラム40との接点
S1:巻取開始時におけるボビンBwと回転ドラム40との接点
S2:直線Lの傾きが鉛直方向と一致するときの巻取パッケージPwと回転ドラム40との接点
図6における一点鎖線は巻取開始時の状態を示しており、実線は直線Lが鉛直方向と一致するときの状態を示している。
【0052】
本実施形態では、クレードルアーム30の揺動支点Uは、回転ドラム40の中心Cよりも下方、さらには、回転ドラム40の下端よりも下方に位置している。一方、ボビンBwの中心Vは、回転ドラム40の中心Cよりも上方に位置する。したがって、巻取パッケージPwが上方から回転ドラム40に接触し、巻取パッケージPwの重量のうち接圧面(接点S1や接点S2における接線)に直交する方向の成分を接圧として利用することができる。また、上述のような位置関係のため、巻取パッケージPwの径が大きくなるにつれて、直線Lの傾きが徐々に鉛直方向に近づくようにクレードルアーム30は揺動する。
【0053】
仮に接点Sが回転ドラム40の上端部に近いところだと、巻取パッケージPwの重量の大部分が接圧として作用する。このため、糸Yの巻き取りが進み、巻取パッケージPwの重量が大きくなるについて、接圧が顕著に増加する。その結果、接圧が低い状態を維持しながら糸Yを巻き取るソフト巻きを適切に行うことができない等の課題が発生していた。
【0054】
そこで、本実施形態では、糸Yの巻取開始から直線Lの傾きが鉛直方向に一致するまでの間、ボビンBw又は巻取パッケージPwと回転ドラム40との接点Sが、回転ドラム40の中心Cを基点として水平方向を0度としたときに0度より大きく45度より小さい範囲(図6の矢印の範囲)に位置するように構成している。言い換えると、糸Yの巻取開始から直線Lの傾きが鉛直方向に一致するまでの間、巻取パッケージPwと回転ドラム40との接点Sは、接点S1から接点S2へと変化するが、その間、上記範囲から逸脱することはない。また、実際には図6の実線で示す状態まで巻き取りを続けることはせず、直線Lの傾きが鉛直方向に一致するまでに、巻取パッケージPwの形成を終えるようにしている(図3参照)。
【0055】
巻取パッケージPwと回転ドラム40との接点Sが、糸Yを巻き取っている間、回転ドラム40の中心Cを基点として0度より大きく45度より小さい範囲に収まることで、巻取パッケージPwの重量が接圧に寄与する割合を一定以下に抑えることができる。以下、詳しく説明する。
【0056】
図7は、巻取パッケージPwの重量Wが接圧に寄与する割合を示す模式図である。より詳細には、巻取パッケージPwと回転ドラム40との接点Sが、回転ドラム40の中心Cを基点として45度の位置にある場合を示した図である。図7に示すように、仮に巻取パッケージPwと回転ドラム40との接点Sが、回転ドラム40の中心Cを基点として45度の位置にある場合、巻取パッケージPwの重量Wのうち接圧面に直交する方向の成分、すなわち、接圧として寄与する成分はW/√2である。したがって、巻取パッケージPwと回転ドラム40との接点Sが、回転ドラム40の中心Cを基点として45度より小さいと、巻取パッケージPwの重量Wのうち接圧として寄与する成分をW/√2未満に抑えることができる。したがって、巻取パッケージPwの重量Wの変化に伴う接圧の変動を抑えることが可能となる。
【0057】
(効果)
本実施形態の巻取装置21では、巻取パッケージPwの径が大きくなるにつれて、クレードルアーム30の揺動支点Uとクレードルアーム30に支持されたボビンBwの中心Vとを結ぶ直線Lの傾きが徐々に鉛直方向に近づくように揺動する。そして、糸Yの巻き取りを開始してから直線Lの傾きが鉛直方向に一致するまでの間、回転ドラム40とボビン又は巻取パッケージPwとの接点Sが、回転ドラム40の中心Cを基点として水平方向を0度としたときに0度より大きく45度より小さい範囲に位置する。つまり、回転ドラム40の中心Cを通る水平面よりも上側で巻取パッケージPwが回転ドラム40と接触する状態を維持するので、巻取パッケージPwの重量Wを接圧に利用することができる。しかも、巻取パッケージPwの重量Wのうち接圧面に直交する方向の割合を1/√2未満に抑えることができるので、接圧の変動を抑えることが可能となる。
【0058】
本実施形態では、直線Lの傾きが鉛直方向と一致するまでに巻取パッケージPwの形成を終えるようにしている。直線Lの傾きが鉛直方向を超えてからも糸Yを巻き取り続けると、巻取パッケージPwの重量Wが巻取パッケージPwを回転ドラム40から離間させる方向に作用し、巻取パッケージPwの重量Wを接圧に利用できなくなる。したがって、直線Lの傾きが鉛直方向と一致するまでに巻取パッケージPwの形成を終えることが好ましい。
【0059】
本実施形態では、クレードルアーム30は、揺動支点Uが回転ドラム40の中心Cよりも下方に位置するように配置されている。このような配置によれば、クレードルアーム30は回転ドラム40の中心Cを上下に跨ぐように延びるので、鉛直方向においてクレードルアーム30と回転ドラム40とを重複させることができる。したがって、巻取装置21の高さを抑えることができる。このような構成は、本実施形態のように複数の巻取装置21を鉛直方向に複数に並べている場合に、上段の巻取装置21の高さを抑えることができるという点で特に有利である。上段の巻取装置21の高さを抑えることで、パッケージ貯留部50からの巻取パッケージPwの回収やストッカー60へのボビンBwの供給等の作業を容易にすることができる。
【0060】
本実施形態では、クレードルアーム30は、揺動支点Uが回転ドラム40の下端よりも下方に位置するように配置されている。このような配置によれば、鉛直方向においてクレードルアーム30と回転ドラム40とをより広い範囲で重複させることが可能となり、巻取装置21の高さを一層抑えることができる。
【0061】
(他の実施形態)
以下、本発明の変形例について説明する。
【0062】
上記実施形態では、クレードルアーム30の揺動支点Uが、回転ドラム40の中心Cよりも下方に位置していた。しかしながら、クレードルアーム30の揺動支点Uが、回転ドラム40の中心Cよりも上方に位置するようにしてもよい。
【0063】
上記実施形態では、機台幅方向において、パッケージ貯留部50がクレードルアーム30の一方側に、ストッカー60がクレードルアーム30の他方側に配置されているものとした。しかしながら、このような配置は必須ではなく、パッケージ貯留部50及びストッカー60が、機台幅方向においてクレードルアーム30の同じ側に配置されていてもよい。また、パッケージ貯留部50及びストッカー60の具体的な構成は、上記実施形態に記載したものに限定されず、適宜変更が可能である。
【0064】
上記実施形態では、巻取装置21を仮撚加工機1に適用するものとした。しかしながら、巻取装置21を他の繊維機械に適用してもよい。
【0065】
上記実施形態では、複数の巻取装置21が鉛直方向に並んで配置されている構成とした。しかしながら、巻取装置21が1つのみ設けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1:仮撚加工機(繊維機械)
5:巻取設備
21:巻取装置
30:クレードルアーム
40:回転ドラム
Y:糸
Bw:ボビン
Pw:巻取パッケージ(パッケージ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7