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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013112
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】抗菌性または抗ウイルス性組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20230119BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20230119BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230119BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20230119BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20230119BHJP
   A01N 57/06 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A01N59/16 Z
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/10
A01N37/02
A01N57/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117058
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】江幡 一朗
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA04
4H011BB06
4H011BB17
4H011BB18
4H011BC19
4H011DA07
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】抗菌性または抗ウイルス性組成物を提供する。
【解決手段】
2,2′-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウムおよび特定の亜鉛塩を含有する抗菌性または抗ウイルス性組成物は優れた抗菌性または抗ウイルス性を発揮することから、樹脂コンパウンド、フィルムまたはシート等のプラスチック材、塗料、表面処理剤などのコーティング剤、接着剤、織布、不織布などの繊維、紙などに該組成物を配合することにより抗菌性または抗ウイルス性加工品として使用することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウムおよび下記一般式(I)に示される亜鉛塩を含有する抗菌性または抗ウイルス組成物。


(式中、R1およびR2は、同一であって、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数5~28のアルキル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数5~18のヒドロキシアルキル基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の抗菌性または抗ウイルス性組成物を配合してなる加工品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性または抗ウイルス性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸菌、黄色ブドウ球菌などの細菌またはインフルエンザウイルス、ノロウイルスなどのウイルスは、種々の疾病の原因となることから、このような細菌やウイルスに対して効果を有する組成物が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、細菌やウイルスに対して優れた性能を示す抗菌性または抗ウイルス性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に至った。すなわち本発明は、
〔1〕2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウムおよび下記一般式(I)に示される亜鉛塩を含有する抗菌性または抗ウイルス性組成物。
(式中、R1およびR2は、同一であって 、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数5~28のアルキル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数5~18のヒドロキシアルキル基 を示す。)
〔2〕上記の抗菌性または抗ウイルス性組成物を配合してなる加工品。
を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、細菌またはウイルスに対して優れた性能を示す抗菌性または抗ウイルス性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に使用される2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウムは、市販品を使用することができる。
【0007】
本発明に使用される一般式(I)に示される亜鉛塩であって、式中、R1およびR2は、同一であって、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数5~28のアルキル基を示す亜鉛塩としては、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛などが挙げられる。一方のR1およびR2は、同一であって、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数5~18のヒドロキシアルキル基を示す亜鉛塩としては、グルコン酸亜鉛、1,2ヒドロキシステアリン酸亜鉛、リシノレイン酸亜鉛などが挙げられる。
【0008】
このうち前記亜鉛塩が、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛といった液体性状を有する場合、JIS K5101-13-1により測定された吸油量が1.5~5ml/gの範囲の担体に担持させて使用することが好ましい。当該担体として、例えば、前記吸油量を有するケイ酸カルシウム、二酸化ケイ素が挙げられ、フローライト(登録商標)RやRT(富田製薬株式会社製)、トクシール(登録商標)NR(Oriental Silicas Corporation)などが挙げられる。担体に担持させる際、通常、担体の重量に対し前記液体性状を有する亜鉛塩の重量が4倍以下となるようにして担持させる。
【0009】
2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウムと前記亜鉛塩の混合比は、通常、重量比で1:9~9:1の範囲であり、好ましくは2:8~8:2の範囲であり、より好ましくは3:7~7:3の範囲である。
【0010】
本発明の抗菌性または抗ウイルス性組成物には、必要に応じ、光安定化剤、紫外線吸収剤などを配合してもよい。
【0011】
本発明の抗菌性または抗ウイルス性組成物は、通常、樹脂コンパウンド、フィルムまたはシート等のプラスチック剤、塗料、表面処理剤などのコーティング剤、接着剤、織布、不織布などの繊維、紙などに配合され抗菌性または抗ウイルス性加工品として使用される。このうち、樹脂コンパウンドに配合された場合により好適に抗菌性または抗ウイルス性効果を発揮する。樹脂コンパウンドとしてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0012】
前記の抗菌性または抗ウイルス性加工品には、本発明の抗菌性または抗ウイルス性組成物の配合量が0.1~30重量%、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.1~15重量%となるように加工品に配合される。
【0013】
本発明の抗菌性組成物が対象とする細菌としては、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌などが挙げられる。また本発明の抗ウイルス性組成物が対象とするウイルスとしては、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなどが挙げられる。
【0014】
本発明における抗菌性とは、細菌の増殖を抑制することを意味する。また、抗ウイルス性とはウイルスの増殖を抑制すること、ウイルスを殺すこと、ウイルスの感染性を低減することを意味する。
【実施例0015】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0016】
2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%) 63.2重量部、2,2’-メチレンビス-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム(東京化成工業製) 15.8重量部およびフローライトR 21.0重量部を混合して本発明の組成物を得た。(2-エチルヘキサン酸亜鉛:2,2′-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム=8:2)
【実施例0017】
2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%) 56.8重量部、2,2’-メチレンビス-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム(東京化成工業製) 24.4重量部およびフローライトR 18.8重量部を混合して本発明の組成物を得た。(2-エチルヘキサン酸亜鉛:2,2′-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム=7:3)
【実施例0018】
2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%) 42.9重量部、2,2’-メチレンビス-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム(東京化成工業製) 42.9重量部およびフローライトR 14.2重量部を混合して本発明の組成物を得た。(2-エチルヘキサン酸亜鉛:2,2’-メチレンビス-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム=5:5)
【実施例0019】
2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%) 27.3重量部、2,2’-メチレンビス-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム(東京化成工業製) 63.7重量部およびフローライトR 9.0重量部を混合して本発明の組成物を得た。(2-エチルヘキサン酸亜鉛:2,2′-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム=3:7)
【実施例0020】
2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%) 18.8重量部、2,2’-メチレンビス-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム(東京化成工業製) 75.0重量部およびフローライトR 6.2重量部を混合して本発明の組成物を得た。(2-エチルヘキサン酸亜鉛:2,2’-メチレンビス-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム=2:8)
【比較例1】
【0021】
2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%) 63.2重量部およびフローライトR 21.0重量部を混合して比較用の組成物を得た。
【比較例2】
【0022】
2,2’-メチレンビス-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム( 東京化成工業製)を比較用の組成物とした。
【0023】
<抗ウイルス性樹脂成形体の試験片の作製>
ZEST-1300(ポリ塩化ビニル、新第一塩ビ製) 100部、フタル酸ジイソノニル 45重量部、エポキシ化大豆油 6.2重量部およびLBK-793K(堺化学工業製) 12.3重量部を混合後、ラボプラストミルにより170℃で混練し塩ビゾルを得た。
前記塩ビゾル 100重量部に対して、2-エチルヘキサン酸亜鉛および2,2’-メチレンビス-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウムの合計量が1重量部となるように前記の組成物をそれぞれ混練し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物を180℃に加温したプレス成型機にて3分間プレス後、室温になるまで冷却して厚さ0.5mmのポリ塩化ビニルシートを得て、該シートを5cm×5cmに裁断することで試験片を得た。
【0024】
(インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス性試験)
ISO21702に従い、インフルエンザウイルスH3N2株(influenza A virus:A/Hong Kong/8/68:TC adapted ATCC VR-1679)をMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)により培養しウイルス感染価2×10Plaque Forming Unit/ml(以下、PFU/mlと記す)の試験インフルエンザウイルス懸濁液を得た。試験片をプラスチックシャーレに入れ、該試験片の略中心域に上述の試験インフルエンザウイルス懸濁液を0.4ml滴下した後、試験ウイルス懸濁液全体を覆うように4cm角のポリエチレンフィルムを載置し、25℃、湿度95%下で24時間保管した。次いで試験片とポリエチレンフィルムの間の試験インフルエンザウイルス懸濁液を10mlのSCDLP培地(日本製薬)により洗い出し、この洗い出し液をEMEM培地を用いて10倍希釈を繰り返して希釈を行い、MDCK細胞を対象にプラーク測定法によりインフルエンザウイルス感染価(IV感染価対数値)を測定した。
【0025】
以下にインフルウイルス感染価の測定結果を示す。
【0026】
[表1]
【実施例0027】
グルコン酸亜鉛n水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製、グルコン酸亜鉛88%) 50重量部および2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム(東京化成工業製) 50重量部を混合して本発明の組成物を得た。
【実施例0028】
ラウリン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、ラウリン酸亜鉛含量 亜鉛として13.7%) 50重量部および2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム(東京化成工業製) 50重量部を混合して本発明の組成物を得た。
【実施例0029】
ステアリン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、ステアリン酸亜鉛含量 酸化亜鉛として13.3%) 50重量部および2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)りん酸ナトリウム(東京化成工業製) 50重量部を混合して本発明の組成物を得た。
【比較例3】
【0030】
グルコン酸亜鉛n水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製、グルコン酸亜鉛88%)を比較用の組成物とした。
【比較例4】
【0031】
ラウリン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、ラウリン酸亜鉛含量 亜鉛として13.7%)を比較用の組成物とした。
【比較例5】
【0032】
ステアリン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、ステアリン酸亜鉛含量 酸化亜鉛として13.3%)を比較用の組成物とした。
【0033】
<抗ウイルス性樹脂成形体の試験片の作製>
段落21記載の処方により作成した塩ビゾル 100重量部に対して、実施例4~6および比較例3~5の夫々の組成物が1重量部となるように混練し樹脂組成物を得た。該樹脂組成物を180℃に加温したプレス成型機にて3分間プレス後、室温になるまで冷却して厚さ0.5mmのポリ塩化ビニルシートを得て、該シートを5cm×5cmに裁断することで試験片を得た。
【0034】
(インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス性試験)
段落24に記載のインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス性試験に従い試験を実施した。
【0035】
以下にインフルエンザウイルス感染価の測定結果を示す。
【0036】
[表2]