(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131125
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】延伸フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 55/02 20060101AFI20230913BHJP
C08F 224/00 20060101ALI20230913BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230913BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20230913BHJP
B29C 41/28 20060101ALI20230913BHJP
B29K 33/04 20060101ALN20230913BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
B29C55/02
C08F224/00
C08J5/18 CEY
B29C41/36
B29C41/28
B29K33:04
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027636
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2022035457
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】井本 慎也
(72)【発明者】
【氏名】平間 進
【テーマコード(参考)】
4F071
4F205
4F210
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA33
4F071AA88
4F071AC03
4F071AE19
4F071AF14
4F071AF30
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4F071AH16
4F071AH19
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4F205AA21
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4J100FA21
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4J100GC25
4J100JA32
(57)【要約】
【課題】
溶液製膜法を採用した、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む延伸フィルムの製造方法であって、十分な強度及び硬度を有する延伸フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】
α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む延伸フィルムの製造方法であって、共重合体と溶媒とを含むドープを用いて、溶液製膜法によって未延伸フィルムを得る工程と、未延伸フィルムを面倍率1.8~10倍に延伸する工程とを備え、未延伸フィルム中の残存溶媒量は0.05~5.0質量%である、延伸フィルムの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む延伸フィルムの製造方法であって、
前記共重合体と溶媒とを含むドープを用いて、溶液製膜法によって未延伸フィルムを得る工程と、
前記未延伸フィルムを面倍率1.8~10倍に延伸する工程とを備え、
前記未延伸フィルム中の残存溶媒量は0.05~5.0質量%である、延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記未延伸フィルム中の残存溶媒量は0.1~5.0質量%である、請求項1に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記未延伸フィルムの厚さは60~200μmである、請求項1又は2に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記共重合体は、炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を更に有する、請求項1又は2に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記溶媒は塩化メチレンを含む、請求項1又は2に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ドープの粘度は0.1~50.0Pa・sである、請求項1又は2に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ドープの固形分濃度は5~40質量%である、請求項1又は2に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項8】
α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む延伸フィルムであって、
塩化メチレンを10~20000質量ppm含む、延伸フィルム。
【請求項9】
厚み方向位相差の絶対値は30nm以下である、請求項8に記載の延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、延伸フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体は、透明性などに優れ、光学部材への適用が期待されている。例えば、特許文献1には、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む光学等方性アクリル樹脂フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルムの製膜方法としては、例えば、溶融製膜法や溶液製膜法が知られているが、特許文献1に開示されるように、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含むフィルムは、溶融製膜法によって製造されることが多かった。しかしながら、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体は溶融状態において粘度が高いので、フィルムの製造効率に改善の余地があった。そのため、溶液製膜法による製造が好ましいと考えられた。
【0005】
ところで、フィルムには十分な強度及び硬度が要求されるところ、一般的には、溶融製膜法や溶液製膜法によって得られる未延伸フィルムを延伸することによって、当該要求に応えている。しかしながら、溶液製膜法によって得られる未延伸フィルムを延伸して得られる延伸フィルムについては、強度及び硬度について改善の余地があった。
【0006】
本開示の主な目的は、溶液製膜法を採用した、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む延伸フィルムの製造方法であって、十分な強度及び硬度を有する延伸フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の[1]~[7]に記載の延伸フィルムの製造方法、及び[8]~[9]に記載の延伸フィルムを含む。
[1] α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む延伸フィルムの製造方法であって、前記共重合体と溶媒とを含むドープを用いて、溶液製膜法によって未延伸フィルムを得る工程と、前記未延伸フィルムを面倍率1.8~10倍に延伸する工程とを備え、前記未延伸フィルム中の残存溶媒量は0.05~5.0質量%である、延伸フィルムの製造方法。
[2] 前記未延伸フィルム中の残存溶媒量は0.1~5.0質量%である、[1]に記載の延伸フィルムの製造方法。
[3] 前記未延伸フィルムの厚さは60~200μmである、[1]又は[2]に記載の延伸フィルムの製造方法。
[4] 前記共重合体は、炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を更に有する、[1]~[3]のいずれか1つに記載の延伸フィルムの製造方法。
[5] 前記溶媒は塩化メチレンを含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の延伸フィルムの製造方法。
[6] 前記ドープの粘度は0.1~50.0Pa・sである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の延伸フィルムの製造方法。
[7] 前記ドープの固形分濃度は5~40質量%である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の延伸フィルムの製造方法。
[8] α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む延伸フィルムであって、塩化メチレンを10~20000質量ppm含む、延伸フィルム。
[9] 厚み方向位相差の絶対値は30nm以下である、[8]に記載の延伸フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、溶液製膜法を採用した、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む延伸フィルムの製造方法であって、十分な強度及び硬度を有する延伸フィルムの製造方法を提供できる。また、本発明によれば、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含み、十分な強度及び硬度を有する延伸フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されない。以下の説明において、「(メタ)アクリル」はアクリルとメタクリルとの両方を包含する用語である。樹脂と重合体とは同義の用語である。「X~Y」と示される数値範囲はX以上Y以下を示す。例えば、「1.8~10倍」は1.8倍以上10倍以下を示す。
【0010】
本開示の一実施形態に係る延伸フィルムの製造方法は、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む延伸フィルムの製造方法であって、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体と溶媒とを含むドープを用いて、溶液製膜法によって未延伸フィルムを得る工程と、当該未延伸フィルムを面倍率1.8~10倍に延伸する工程とを備え、上記未延伸フィルム中の残存溶媒量は0.05~5.0質量%であることを特徴とする。
【0011】
[α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体]
α-メチレンラクトン由来の構成単位は、ラクトン環のα位の炭素にメチレン基が結合したα-メチレンラクトン単量体に由来する構造を有する。α-メチレンラクトン由来の構成単位は、代表的には、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-δ-バレロラクトンなどの単量体に由来する構造を有していてもよい。
【0012】
ラクトン環は、得られる延伸フィルムの機械的特性をより向上させる観点から、5員環(γ-ラクトン)又は6員環(δ-ラクトン)であることが好ましい。
【0013】
α-メチレンラクトン由来の構成単位は、以下の式(1)に示す構造を有することが好ましい。
【0014】
【0015】
式(1)におけるR1~R4は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。
【0016】
炭化水素基は、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は、例えば、アルキル基であってもよい。アルキル基は直鎖状でもよく、分岐を有していてもよく、環状でもよい。アルキル基は、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などであってもよい。芳香族炭化水素基は、具体的には、フェニル基、トリル基、ベンジル基などであってもよい。
【0017】
R1~R4は、互いに独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、全て水素原子であることが更に好ましい。
【0018】
式(1)に示す構造を有する構成単位は、以下の式(2)に示す化合物の重合により形成できる。
【0019】
【0020】
式(2)におけるR1~R4は、式(1)におけるR1~R4と同一である。そのため、詳細な説明を省略する。
【0021】
共重合体は、α-メチレンラクトン由来の構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよいが、少なくともα-メチレン-γ-ブチロラクトンに由来する構造単位を有することが好ましい。
【0022】
共重合体は、α-メチレンラクトン由来の構成単位以外に、α-メチレンラクトン単量体と共重合可能な単量体に由来する構成単位を有する。そのような構成単位は、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの単量体に由来する構造を有していてもよい。共重合体は、α-メチレンラクトン単量体と共重合可能な単量体に由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0023】
共重合体は、得られる延伸フィルムの耐熱性、透明性をより向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位は、(メタ)アクリル酸アルキル単量体に由来する構造を有する。(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位は、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの単量体に由来する構造を有していてもよい。
【0024】
特に、共重合体は、炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を有することが好ましく、炭素数1~3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を有することがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル由来の構成単位を有することが更に好ましい。共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよいが、少なくとも(メタ)アクリル酸メチル由来の構成単位を有することが好ましい。
【0025】
共重合体における各構成単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは次のとおりである。α-メチレンラクトン由来の構成単位の含有量は、得られる延伸フィルムの機械的強度をより向上させる観点から、5~60質量%であることが好ましく、7.5~50質量%であることがより好ましく、10~45質量%であることが更に好ましい。炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位の含有量は、40~95質量%であることが好ましく、50~92.5質量%であることがより好ましく、55~90質量%であることが更に好ましい。α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位と異なる構成単位の含有量は、0~30質量%であってもよく、0~25質量%であってもよく、0~20質量%であってもよい。なお、共重合体における各構成単位の含有量は、共重合体を重溶媒に溶解させ、1H-NMRを測定し各構成単位に対応するピークの面積比を算出することで求められる。
【0026】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、50000~1500000であることが好ましく、100000~1000000であることがより好ましく、150000~800000であることが更に好ましく、200000~600000であることが特に好ましい。共重合体の数平均分子量(Mn)は、例えば30000~500000であってもよい。分散度(Mw/Mn)は、例えば1.5以上5以下であってもよい。
【0027】
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、得られる延伸フィルムの耐熱性、寸法安定性をより向上させる観点から、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましく、125℃以上であることが特に好ましい。また、得られる延伸フィルムの機械的特性をより向上させる観点から、共重合体のガラス転移温度(Tg)は、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましい。
【0028】
共重合体のHSP値(Hansen SolubilityParameters)は、得られる延伸フィルムの耐水性をより向上させる観点から、δDが14~22MPa1/2、δPが8~15MPa1/2、δHが5~10MPa1/2であることが好ましく、δDが16~21MPa1/2、δPが10~13MPa1/2、δHが6~9MPa1/2であることがより好ましく、δDが17~20MPa1/2、δPが11~13MPa1/2、δHが6~9MPa1/2であることが更に好ましい。共重合体のHSP値はHansenSolubility Parameters: A User’s Handbook, Second Edition. Charles M. Hansenの記載に準拠した方法で求められる。HSP値が公知の溶媒への溶解性試験を行い、その結果に基づいて、HSPiPversion:5.3.08を用いて算出できる。なお、計算方法はClassic GAを用いて求められる。
【0029】
共重合体は、例えば懸濁重合で製造できる。懸濁重合では、共重合体を得るための単量体やその他の添加剤を水溶媒に分散させる工程と、単量体を重合させる重合工程とを含む。
【0030】
水溶媒は、水単独であってもよいし、水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。水溶性有機溶媒は、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メチルプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノールなどのアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン溶媒;酢酸エチルなどのエステル溶媒;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル溶媒;などであってもよい。
【0031】
水溶媒における水溶性有機溶媒の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
【0032】
実質的に重合が開始する前に、共重合体を得るための単量体の全量が反応器へ投入されていることが好ましい。例えば、反応器の温度を重合温度まで上昇させる前に単量体の全量を反応器へ投入することが好ましい。
【0033】
単量体を水溶媒中に分散させるときには、パドル翼などで攪拌して分散させてもよく、高速せん断タービン型分散機、高圧ジェットホモジナイザー、超音波式乳化分散機、媒体攪拌分散機、強制間隙通過型分散機などの乳化分散装置を用いて分散させてもよい。
【0034】
単量体を重合させる際には、必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤、分散剤などの添加剤を添加してもよい。
【0035】
重合開始剤は、具体的には、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)などのアゾ化合物などであってもよい。重合開始剤の添加量は適宜設定すればよく、単量体100質量部に対して、0.01~5質量部であってもよい。
【0036】
連鎖移動剤は、具体的には、n-ドデシルメルカプタン、β-メルカプトプロピオン酸などの単官能チオール化合物;両末端メルカプト変性ポリシロキサンなどの2官能チオール化合物;側鎖がメルカプト変性された側鎖多官能メルカプト変性ポリシロキサンなどであってもよい。連鎖移動剤の添加量は適宜設定すればよく、単量体100質量部に対して、0.001~1質量部であってもよい。
【0037】
分散剤は、具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムなどの水溶性高分子系分散安定剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム)などのアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイドなどの両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤;その他アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末などの無機分散剤などであってもよい。分散剤の添加量は適宜設定すればよく、単量体100質量部に対して、0.1~3質量部であってもよい。
【0038】
更に、分散剤以外の種々の添加剤を、得られる共重合体に含有させるようにしてもよい。分散剤以外の種々の添加剤は、例えば、紫外線吸収剤;アンチブロッキング粒子;酸化防止剤;4-ターシャリーブチルカテコール(TBC)、ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4H-TEMPO)などの重合禁止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤などの位相差調整剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;樹脂改質剤;などであってもよい。
【0039】
紫外線吸収剤は、例えば、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物などであってもよい。紫外線吸収剤は、トリアゾール系化合物及びトリアジン系化合物から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、トリアゾール系化合物から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましい。
【0040】
トリアゾール系化合物は、具体的には、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールなどであってもよい。
【0041】
トリアジン系化合物は、具体的には、2-モノ(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4-ビス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4,6-トリス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物などであってもよい。
【0042】
ベンゾフェノン系化合物は、具体的には、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、4-n-オクチルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノンなどであってもよい。サリシレート系化合物は、具体的には、p-t-ブチルフェニルサリシレートなどであってもよい。ベンゾエート系化合物は、具体的には、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエートなどであってもよい。
【0043】
紫外線吸収剤は市販品であってもよく、具体的には、「チヌビン(登録商標)928(BASFジャパン社製)」、「アデカスタブ(登録商標)LA―32(ADEKA社製)」、「アデカスタブ(登録商標)LA―31(ADEKA社製)」、「アデカスタブ(登録商標)LA―29(ADEKA社製)」、「アデカスタブ(登録商標)LA―24(ADEKA社製)」、「Eversorb(登録商法)BL4(エバーライトケミカル社製)」などであってもよい。紫外線吸収剤は、「アデカスタブ(登録商標)LA―31(ADEKA社製)」、「アデカスタブ(登録商標)LA―29(ADEKA社製)」から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0044】
アンチブロッキング粒子は無機粒子であってもよく、有機粒子であってもよい。
【0045】
無機粒子は、具体的には、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウムなどからなる粒子であってもよい。無機粒子はシリカ粒子を含むことが好ましい。シリカ粒子は表面が親水性処理されていてもよく、疎水性処理されていてもよい。無機粒子の平均一次粒子径は、例えば1~500nmであってもよい。
【0046】
有機粒子は、具体的には、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル架橋粒子などからなる粒子であってもよい。有機粒子は(メタ)アクリル架橋粒子を含むことが好ましい。(メタ)アクリル架橋粒子はスチレンと共重合されたものでもよく、コアシェル構造を有するものであってもよい。コアシェル構造を有する(メタ)アクリル架橋粒子は、コア部が(メタ)アクリル樹脂で構成され、シェル部がスチレン樹脂で構成されていてもよい。有機粒子の平均一次粒子径は、例えば10nm~10μmであってもよい。
【0047】
酸化防止剤は、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤、ベンゾフェノン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、サルチル酸エステル系酸化防止剤、トリアジン系酸化防止剤などであってもよい。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましい。
【0048】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、具体的には、2,4-ビス[(ラウリルチオ)メチル]-o-クレゾール、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)などであってもよい。
【0049】
ヒンダードアミン系酸化防止剤は、具体的には、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,6-ヘキサメチレンジアミン、2-メチル-2-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)(1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチル((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)]などであってもよい。
【0050】
リン系酸化防止剤は、トリス(イソデシル)フォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、フェニルイソオクチルフォスファイト、フェニルイソデシルフォスファイト、フェニルジ(トリデシル)フォスファイト、ジフェニルイソオクチルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、4,4’イソプロピリデンジフェノールアルキルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリスジノニルフェニルフォスファイト、その他フォスファイト構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物などであってもよい。
【0051】
イオウ系酸化防止剤は、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,4-ビス[(ラウリルチオ)メチル]-o-クレゾールなどや、その他チオエーテル構造を有するオリゴマータイプやポリマータイプの化合物などであってもよい。
【0052】
重合工程の後に、固液分離して共重合体粒子を回収できる。固液分離の方法は、濾取、遠心分離、それらの組み合わせなどであってもよい。
【0053】
得られた共重合体を乾燥させてもよい。乾燥温度は、例えば60℃以上120℃以下であってもよい。
【0054】
また、固液分離をせずに乾燥させてもよい。ドライヤーを用いて乾燥させることで、共重合体を粉体として取得できる。
【0055】
もちろん、改めて説明するまでもないが、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体は乳化重合などの他の重合方法でも製造できる。
【0056】
[溶媒]
溶媒は、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する重合体を溶解させることができれば、その種類は限定されない。溶媒は有機溶媒であってもよく、例えば、鎖状ケトン溶媒、環状ケトン溶媒、塩化アルキル溶媒、環状エステル溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、芳香族系溶媒、アルコール溶媒であってもよい。鎖状ケトン溶媒は、具体的には、アセトン、メチルエチルケトンなどであってもよい。環状ケトン溶媒は、具体的には、シクロヘキサノン(アノン)、シクロペンタノンなどであってもよい。塩化アルキル溶媒は、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエタンなどであってもよい。環状エステル溶媒は、具体的には、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンなどであってもよい。アミド溶媒は、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)などであってもよい。スルホキシド溶媒は、具体的には、ジメチルスルホキシドなどであってもよい。芳香族系溶媒は、具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼンなどであってもよい。アルコール溶媒は具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどであってもよい。溶媒は、有機溶媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0057】
延伸フィルムの製造効率をより向上させる観点から、溶媒は揮発しやすいものが好ましい。そのため、溶媒は塩化メチレンを含むことが好ましい。特に、溶媒は塩化メチレンを50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことが更に好ましい。また、溶媒は塩化メチレンとアルコール溶媒とを含むことが好ましく、塩化メチレンとエタノールとを含むことがより好ましい。塩化メチレンとエタノール(アルコール溶媒)との含有量の比(質量比)は、95:5~50:50であることが好ましく、90:10~60:40であることがより好ましく、90:10~70:30であることが更に好ましい。
【0058】
[ドープ]
ドープは、上述したα-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を、上述した溶媒に溶解又は分散したものである。ドープは、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体に加えて、その他の重合体や添加剤を含んでいてもよい。
【0059】
その他の重合体は、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)などのオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などの含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体などのスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムなどの弾性有機微粒子;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂、ASA樹脂などのゴム質重合体;などであってもよい。ドープは、その他の重合体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0060】
添加剤は、具体的には、紫外線吸収剤;アンチブロッキング粒子;酸化防止剤;4-ターシャリーブチルカテコール(TBC)、ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4H-TEMPO)などの重合禁止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤などの位相差調整剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;樹脂改質剤;などであってもよい。
【0061】
なお、これらの添加剤は、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を製造する際に共重合体に添加し得るものと同様である。つまり、これらの添加剤は、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を製造する際、及び、ドープを製造する際の両方または一方において適宜添加すればよい。
【0062】
α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体、及びその他の重合体や添加剤を溶媒に溶解又は分散する方法は従来公知の方法であってもよい。溶媒への投入順は適宜調整すればよい。調製における温度及び圧力は適宜調整すればよい。ドープの調製に使用する原料は、事前に精製してもよい。得られたドープをろ過及び/又は脱泡してもよい。
【0063】
ろ過は、ディスクフィルタ―、プリーツフィルターなどの公知フィルターを使用して行ってもよい。ろ過精度は0.1~20μmであることが好ましく、1~15μmであることがより好ましく、2~10μmであることが更に好ましい。更に、ろ過前に金網などで荒濾ししてもよい。
【0064】
脱泡は、減圧脱泡、超音波脱泡など公知方法を採用してもよい。減圧脱泡をする際には、ドープ表面に皮張りが起こらないよう減圧度を適宜調整してもよい。また、溶媒の蒸気で満たした雰囲気下で行ってもよい。
【0065】
ドープの固形分濃度は、延伸フィルムの製造効率をより向上させる観点から、5~40質量%であることが好ましく、8~35質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが更に好ましい。
【0066】
ドープの固形分における各成分の含有量は、特に制限されないが、好ましくは次のとおりである。α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する共重合体の含有量は80~99.99質量%であることが好ましく、80~99.95質量%であることがより好ましく、90~99質量%であることが更に好ましい。その他の重合体の含有量は0~20質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましく、0~10質量%であることが更に好ましく、0~5質量%であることが特に好ましい。紫外線吸収剤の含有量は0.1~10質量%であることが好ましく、0.3~6質量%であることがより好ましく、0.6~4質量%であることが更に好ましい。アンチブロッキング粒子の含有量は0.01~1質量%であることが好ましく、0.02~0.7質量%であることがより好ましく、0.03~0.5質量%であることが更に好ましい。酸化防止剤の含有量は0.01~1質量%であることが好ましく、0.02~0.6質量%であることがより好ましく、0.03~0.3質量%であることが更に好ましい。その他の添加剤の含有量は0~5質量%であってもよい。
【0067】
ドープの粘度は、延伸フィルムの製造効率をより向上させる観点から、0.1~50.0Pa・sであることが好ましく、0.2~40.0Pa・sであることがより好ましく、0.3~30.0Pa・sであることが更に好ましい。ドープの粘度は、重合体や溶媒の種類、固形分濃度、添加剤の有無などによって調整できる。
【0068】
[未延伸フィルムを得る工程]
本開示の一実施形態に係る延伸フィルムの製造方法は、上述したドープを用いて、溶液製膜法によって未延伸フィルムを得る工程を備える。
【0069】
溶液製膜法は、従来公知の方法であってもよく、例えば、上述したドープを支持体に塗工する工程と、塗工されたドープから溶媒を除去して未延伸フィルムを得る工程とを備える方法であってもよい。
【0070】
支持体は、溶液製膜法にて採用される従来公知の支持体であってもよい。そのような支持体は、具体的には、ステンレス鋼のエンドレスベルト、回転する金属ドラムなどの金属支持体、フィルム(例えば、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム(二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)などのプラスチックフィルム)、ガラスなどであってもよい。
【0071】
ドープの塗工方法は、溶液製膜法にて採用される従来公知の方法であってもよい。そのような塗工方法は、具体的には、ダイコーター、ドクターブレードコーター、ロールコーター、コンマコーター、リップコーターなどを用いて塗工する方法であってもよい。
【0072】
ドープに含まれる溶媒の除去方法は、溶液製膜法にて採用される従来公知の方法であってもよいが、以下の工程を備えることが好ましい。
工程1:支持体とは逆側の面(エアー面)が固化するまで乾燥する工程
工程2:ドープが自己支持性を有する程度まで乾燥する工程
工程3:支持体から剥離したフィルムを乾燥する工程
【0073】
工程1では、乾燥温度は使用される溶媒に合わせて適宜設定できるが、溶媒の突沸を抑制する観点から、未揮発の溶媒量に応じて徐々に乾燥温度を上げることが好ましい。また、フィルムの表面での結露を抑制する観点から、乾燥エアー下で乾燥することが好ましい。また、支持体側からヒーターなどによる輻射熱で乾燥することが好ましい。
【0074】
工程2では、自己支持性を有する程度、すなわち自重や搬送張力によって伸びたり垂れたりして破断しない程度までフィルムを乾燥させる。工程2では、エアー面側と支持体側の両側から加熱することが好ましい。エアー面側から温風を吹き付けてもよい。工程2の後、フィルムは支持体から剥離される。このとき、フィルムにおける残存溶媒量は、その後の工程におけるフィルムの搬送性をより向上させる観点から、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下の順により好ましく、また、3質量%超であることが好ましい。
【0075】
工程3では、フィルムをさらに乾燥させる。乾燥方法は、テンター方式又は垂直パス方式の少なくとも一方であることが好ましい。テンター方式は、テンターにて幅方向両端部を把持しながら、必要に応じてフィルムのたるみや乾燥による収縮に応じた拡縮調整を行いながら乾燥する方法である。垂直パス方式は、オーブン内の上下に配置した多数のロールにフィルムを交互に通し乾燥させる方法である。
【0076】
このようにして、未延伸フィルムが製造される。未延伸フィルムの厚さは、次の延伸工程において十分な面倍率で延伸する観点から、60~200μmであることが好ましく、70~180μmであることがより好ましく、100~160μmであることが更に好ましい。
【0077】
未延伸フィルムには、未延伸フィルムの製造に用いたドープに含まれていた溶媒が含まれる。このような溶媒を残存溶媒という。未延伸フィルム中の残存溶媒量は0.05~5.0質量%であるが、得られる延伸フィルムの強度や硬度、寸法安定性をより向上させる観点から、0.1~5.0質量%であることが好ましく、0.1~3.0質量%であることがより好ましく、0.15~2.0質量%であることが更に好ましく、0.4~1.6質量%であることが特に好ましい。残存溶媒は塩化メチレンを含むことが好ましい。
【0078】
[延伸フィルムを得る工程]
本開示の一実施形態に係る延伸フィルムの製造方法は、上述した未延伸フィルムを延伸して、延伸フィルムを得る工程を有する。
【0079】
延伸方法は、従来公知の延伸方法であってもよく、具体的には一軸延伸(自由幅一軸延伸、定幅一軸延伸)であってもよく、二軸延伸(逐次二軸延伸、同時二軸延伸)であってもよい。
【0080】
延伸温度は、未延伸フィルムに含まれる共重合体のガラス転移温度近辺であり、具体的には、(ガラス転移温度-30)℃~(ガラス転移温度+100)℃であることが好ましく、(ガラス転移温度-20)℃~(ガラス転移温度+50)℃であることがより好ましく、(ガラス転移温度-10)℃~(ガラス転移温度+30)℃であることが更に好ましい。
【0081】
延伸の面倍率は、従来公知の倍率であってもよく、具体的には1.8~10倍である。延伸の面倍率は、得られる延伸フィルムの機械的特性をより向上させる観点から、2~7倍であることが好ましく、2.2~6倍であることがより好ましく、2.5~5倍であることが更に好ましく、2.8~4倍であることが特に好ましい。延伸方法が二軸延伸である場合は、縦方向及び横方向の延伸倍率は、それぞれ1.05~10倍の範囲であることが好ましい。
【0082】
なお、面倍率とは、延伸前後におけるフィルムの主面の面積比率に概ね一致する。すなわち、延伸方法が一軸延伸である場合は、一方向への延伸倍率が面倍率とされ、延伸方法が二軸延伸である場合は、縦方向への延伸倍率と横方向への延伸倍率との積が面倍率とされる。
【0083】
延伸速度は、従来公知の速度であってもよく、延伸方向のそれぞれにおいて、例えば10~1000%/minであってもよく、30~500%/minであってもよい。
【0084】
このようにして、延伸フィルムが製造される。延伸フィルムの厚さは、例えば10~60μmであってもよいが、15~55μmであることが好ましく、20~50μmであることがより好ましい。
【0085】
延伸フィルムは、残存溶媒を10~20000質量ppm含む。延伸フィルムにおける残存溶媒の含有量は、15質量ppm以上であることが好ましい。延伸フィルムにおける残存溶媒の含有量は、10000質量ppm以下であることが好ましく、6000質量ppm以下であることがより好ましく、2000質量ppm以下であることが更に好ましく、1000質量ppm以下であることが特に好ましい。残存溶媒は塩化メチレンを含むことが好ましい。
【0086】
[延伸フィルム]
本開示の別の実施形態に係る延伸フィルムは、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体を含む延伸フィルムであって、塩化メチレンを10~20000質量ppm含むことを特徴とする。延伸フィルムは、例えば、上述した延伸フィルムの製造方法において、溶媒が塩化メチレンを含むことで製造できる。
【0087】
α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体は、上述のα-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体と同様である。
【0088】
延伸フィルムは、α-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体に加えて、その他の重合体や添加剤を含んでいてもよい。
【0089】
その他の重合体は、上述したその他の重合体、すなわちドープが含み得るその他の重合体と同様である。添加剤は、上述した添加剤、すなわちドープが含み得る添加剤と同様であり、例えば、上述した紫外線吸収剤、上述したアンチブロッキング粒子、上述した酸化防止剤などであってもよい。
【0090】
延伸フィルムにおける各成分の含有量は、特に制限されないが、好ましくは次のとおりである。α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する共重合体の含有量は80~99.99質量%であることが好ましく、80~99.95質量%であることがより好ましく、90~99質量%であることが更に好ましい。その他の重合体の含有量は0~20質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましく、0~10質量%であることが更に好ましく、0~5質量%であることが特に好ましい。紫外線吸収剤の含有量は0.1~10質量%であることが好ましく、0.3~6質量%であることがより好ましく、0.6~4質量%であることが更に好ましい。アンチブロッキング粒子の含有量は0.01~1質量%であることが好ましく、0.02~0.7質量%であることがより好ましく、0.03~0.5質量%であることが更に好ましい。酸化防止剤の含有量は0.01~1質量%であることが好ましく、0.02~0.6質量%であることがより好ましく、0.03~0.3質量%であることが更に好ましい。その他の添加剤の含有量は0~5質量%であってもよい。
【0091】
延伸フィルムは、塩化メチレンを10~20000質量ppm含む。延伸フィルムにおける塩化メチレンの含有量は、15質量ppm以上であることが好ましい。延伸フィルムにおける塩化メチレンの含有量は、10000質量ppm以下であることが好ましく、6000質量ppm以下であることがより好ましく、2000質量ppm以下であることが更に好ましく、1000質量ppm以下であることが特に好ましい。
【0092】
延伸フィルムの厚さは、例えば10~60μmであってもよく、15~55μmであることが好ましく、20~50μmであることがより好ましい。
【0093】
延伸フィルムは、面内方向位相差(Re)が15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。また、延伸フィルムの厚み方向位相差(Rth)の絶対値は、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、17nm以下であることが更に好ましく、15nm以下であることが特に好ましい。位相差の絶対値が小さいと、延伸フィルムの光学等方性が高くなるため、特にディスプレイなどに使用される保護フィルムなどの部材として、一層好適に用いることができる。
【0094】
延伸フィルムは、ヘイズが1.0%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.6%以下であることが更に好ましい。延伸フィルムのヘイズは、材料の種類及び含有量の選択や、延伸フィルムにおける塩化メチレンの含有量の変更により調整することができる。
【0095】
延伸フィルムは、塑性変形し難くする観点から、弾性率が4GPa以上であると好ましい。延伸フィルムの弾性率は、例えば15GPa以下であってもよい。
【0096】
延伸フィルムは、フレキシブルディスプレイなどのデバイスに使用するために、所定の条件で延伸フィルムをU字型に折り曲げて戻すことを繰り返す強度試験において、折り曲げる回数が100000回を超えても折り曲げ部分に破断が生じないことが好ましい。なお、所定の条件は、実施例に記載の条件である。
【0097】
延伸フィルムには、必要に応じて復元層、衝撃拡散層、セルフクリーニング層、指紋防止層、スクラッチ防止層、屈折率調節層、衝撃吸収層、紫外線吸収層、ハードコート層、粘着層、易接着層などから選択される1つ以上の層を積層させてもよい。
【0098】
以上説明した延伸フィルムは種々の用途に適用できる。具体的には、ディスプレイなどを構成する保護フィルムやカバーフィルムなどとして有用である。とりわけ、フレキシブルディスプレイの構成部材として好適であり、最表面のカバーウィンドウフィルムとして使用できるし、薄膜ガラスや透明ポリイミドといった別のフィルムと積層させて各層の保護フィルムとしても使用できる。さらに、反射防止層やタッチパネル、基盤部などの保護フィルムなどとしても使用できる。
【実施例0099】
実施例を挙げて本開示をより具体的に説明する。ただし、本開示は実施例によって限定されない。以下においては、ドープや延伸フィルムの評価方法、ドープや延伸フィルムの製造例の順に説明する。
【0100】
[共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
共重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置及び測定条件は、以下のとおりである。
システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
測定側カラム構成:
・ガードカラム(東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ-L)
・分離カラム(東ソー製、TSKgel SuperHZM-M) 2本直列接続
リファレンス側カラム構成:
・リファレンスカラム(東ソー製、TSKgel SuperH-RC)
展開溶媒:クロロホルム(富士フィルム和光純薬社製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS-オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
【0101】
[共重合体のガラス転移温度(Tg)]
共重合体のガラス転移温度は、JIS K 7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製、Thermo plus EVO DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α-アルミナを用いた。
【0102】
[ドープの粘度]
ドープの粘度は、BHII型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて25℃にて測定した。
【0103】
[フィルムの厚さ]
フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)により求めた。
【0104】
[未延伸フィルム中の残存溶媒量]
未延伸フィルム中の残存溶媒量は、示差熱-熱重量同時測定装置(リガク社製、Thermo plus EVO TG-DTA-8120)を用いて測定した。具体的には、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から300℃まで昇温(昇温速度10℃/分)させ、250℃到達時の重量減少分(%)を残存溶媒量とした。リファレンスには、α-アルミナを用いた。
【0105】
[延伸フィルムの強度試験]
延伸フィルムを15mm×80mmの大きさに切り出して試験片とし、Tension-FreeFolding Clamshell-type(ユアサシステム機器製、DMLHP-CS)にテープで固定した。また、試験片を長辺の半分の位置で折り曲げ、折り畳まれた状態の試験片の長辺の両端部間の距離が5mmとなり、試験片の折り曲げ部分の曲率半径が2.5mmとなるように折り畳まれた状態を設定した。その後、25℃の環境下で、平坦に開いた状態から折り畳まれた状態にすることを1回の屈曲として、1分間に30回の屈曲回数で、10万回屈曲を繰り返した。試験後の折り畳まれた部分の延伸フィルムが破断していなければ○、破断があれば×と判断した。
【0106】
[延伸フィルムの引張試験]
延伸フィルムを120mm×10mmの大きさに切り出して試験片とし、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下で、JIS K7127に準拠し、オートグラフ(島津製作所製:AG-X)を用いて引張試験を実施した。条件は引張速度を3mm/分、チャック間距離を100mm、変位計での測定する標線間隔を80mmとして、25℃で3回試験を行い、その平均値を測定値とした。変位は非接触伸び幅計(島津製作所製:TRViewX)を用いて計測し、弾性率は歪が0.2%から0.5%までの間の傾きとして評価した。弾性率が4GPaを超えていれば○、4GPa以下であれば×とした。
【0107】
[延伸フィルムの位相差]
延伸フィルムの波長589nmの光に対する面内位相差Re及び厚さ方向位相差Rthを、全自動複屈折計(王子計測機器社製「KOBRA-WR」)を用いて入射角40°の条件で測定した。具体的には、延伸フィルムの面内における遅相軸方向の屈折率をnx、延伸フィルムの面内における進相軸方向の屈折率をny、延伸フィルムの厚さ方向の屈折率をnz、延伸フィルムの厚さをdとして、下記式から面内位相差Re及び厚さ方向位相差Rthをそれぞれ求めた。
面内位相差Re=|nx-ny|×d
厚さ方向位相差Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d
【0108】
[延伸フィルムのヘイズ]
延伸フィルムのヘイズを、濁度計(日本電色工業製、NDH5000)を用いて測定した。
【0109】
[延伸フィルム中の塩化メチレン量]
延伸フィルム中の塩化メチレン量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、装置名:GC-2014)を用いて求めた。具体的には、質量を測定したフィルムをN,N-ジメチルアセトアミドに溶解させた後に、ガスクロマトグラフィーで塩化メチレン量を定量することで、延伸フィルム中の塩化メチレン量を算出した。
【0110】
ドープや延伸フィルムの製造に用いた材料について説明する。
メタクリル酸メチル(MMA):東京化成工業社製
α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML):東京化成工業社製
ジラウロイルパーオキサイド(LPO)(商品名:パーロイル(登録商標)L):日油社製
ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(商品名(ハイテノール(登録商標)NF-08):第一工業製薬社製
【0111】
<共重合体1の製造>
攪拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器を用意した。反応器に分散剤であるハイテノール(登録商標)NF-08を1質量部溶解した脱イオン水75質量部を仕込んだ。更に、MMA37.5質量部、ML12.5質量部、重合開始剤であるLPO0.25質量部、連鎖移動剤であるnDM0.05質量部との混合液を反応器に仕込んだ。そして、T.K.ホモミクサーMARK II model2.5(プライミクス株式会社製)を用いて、3000rpmで15分間攪拌して懸濁液を製造した。
【0112】
懸濁液に脱イオン水125質量部を追加してから別の反応器に移送した。移送後の反応器において、窒素ガスを吹き込みながら懸濁液を攪拌して、65℃まで昇温した。65℃になった時点を反応開始時として、暫くは自己発熱により反応液(懸濁液)の温度を変化させた。ピーク温度に到達した後に75℃まで昇温して、反応開始時から2時間経つまで温度を一定に保った。その後、反応液(懸濁液)を90℃まで昇温して、4時間攪拌しながら、重合反応を進行及び完了させた。更にその後、冷却及び濾過を行って共重合体を回収した。熱風乾燥機を用いて乾燥して共重合体1(粉体)を得た。共重合体の分子量Mwは283000、Mnは129000、Tgは127℃あった。溶解性試験から算出したHSP値はδD17.5MPa1/2、δPが12.2MPa1/2、δH6.7MPa1/2であった。
【0113】
<共重合体2の製造>
MMAを30質量部、MLを20質量部とした以外は、共重合体1の製造と同様にして、共重合体2(粉体)を得た。共重合体の分子量Mwは263000、Mnは117000、Tgは136℃あった。溶解性試験より算出したHSP値はδD19.1MPa1/2、δPが11.3MPa1/2、δH7.9MPa1/2であった。
【0114】
<共重合体3の製造>
MMAを25質量部、MLを25質量部とした以外は、共重合体1の製造と同様にして、共重合体3(粉体)を得た。共重合体の分子量Mwは213000、Mnは87000、Tgは146℃あった。
【0115】
<ドープ1の製造>
塩化メチレン70質量部とエタノール10質量部とをミキシングタンクに投入し、攪拌しながら共重合体1を20質量部投入して溶解させた。減圧脱泡を行ってドープ1を得た。ドープ1の粘度は2.0Pa・sであった。
【0116】
<ドープ2の製造>
塩化メチレン66質量部とエタノール9質量部とをミキシングタンクに投入し、攪拌しながら共重合体2を25質量部投入して溶解させた。減圧脱泡を行ってドープ2を得た。ドープ2の粘度は11.0Pa・sであった。
【0117】
<ドープ3の製造>
塩化メチレン75質量部とエタノール15質量部とをミキシングタンクに投入し、攪拌しながら共重合体2を10質量部投入して溶解させた。減圧脱泡を行ってドープ3を得た。ドープ3の粘度は0.3Pa・sであった。
【0118】
<ドープ4の製造>
塩化メチレン85質量部とエタノール11質量部とをミキシングタンクに投入し、攪拌しながら共重合体2を4質量部投入して溶解させた。減圧脱泡を行ってドープ4を得た。ドープ4の粘度は装置の定量下限の0.1Pa・s未満であった。
【0119】
<ドープ5の製造>
塩化メチレン70質量部とエタノール10質量部とをミキシングタンクに投入し、攪拌しながら共重合体3を20質量部投入して溶解させた。減圧脱泡を行ってドープ5を得た。ドープ5の粘度は3.0Pa・sであった。
【0120】
<未延伸フィルムN1の製造>
ドープ1を、平均孔径10μmのフィルターと平均孔径3μmのフィルターとに順に通して濾過した。濾過後のドープ1をダイスからステンレスベルト上に連続的に流延して製膜した。その後、ステンレスベルト上で、ステンレスベルト側とは反対側の面(エアー面)が固化するまでドープ1を乾燥した。流延及び乾燥は、結露が起こらないように乾燥エアーを満たした流延室内で行った。フィルムを、ステンレスベルトから剥離した後、複数ロールの渡り部を介して連続的にテンターに搬送して、テンター方式で乾燥した。テンターから搬送されたフィルムを、クリップで把持されていた幅方向両端部を切り落とした後、複数ロールの渡り部を介して連続的にオーブンに搬送して、垂直パス方式で乾燥した。このようにして得られた未延伸フィルムN1を、厚さ30μmのポリエチレン製保護フィルム(商品名:トレテック7332、東レフィルム加工社製)を貼り付けた後、巻取装置で巻き取った。このようにして、厚さ160μm、残存溶媒量0.8質量%の未延伸フィルムN1を得た。
【0121】
<未延伸フィルムN2~N7の製造>
使用するドープ、ドープの流延速度、流延室内での乾燥温度、テンターでの乾燥温度及びオーブンでの乾燥温度を異ならせることで、未延伸フィルムN2~N7を得た。表1に、未延伸フィルムN1~N7について、使用したドープ、並びに、厚さ及び残存溶媒量を示す。なお、ドープの流延速度に応じて、流延室内での乾燥温度、テンターでの乾燥温度及びオーブンでの乾燥温度を調整して残存溶媒量を調整した。
【0122】
【0123】
<延伸フィルムB1の製造>
オーブン延伸機へ未延伸フィルムN1を導入し、オーブン内で(Tg+16)℃まで加熱して縦方向に2倍延伸して一軸延伸フィルムを得た。そして、一軸延伸フィルムを連続的にテンターへ導入して横方向に2倍延伸して二軸延伸フィルムB1を得た。テンターでは、まず予熱ゾーンで一軸延伸フィルムを(Tg+16)℃まで加熱し、次いで延伸ゾーンで(Tg+18)℃で横方向に延伸した。このようにして得られた二軸延伸フィルムB1に、クリップで把持されていた幅方向両端部を切り落とした後に、厚さ30μmのポリエチレン製保護フィルム(商品名:トレテック7332、東レフィルム加工社製)を貼り付けた。その後、巻取装置で巻き取った。
【0124】
<延伸フィルムB2~B6の製造>
同様に、未延伸フィルムN2~N6のそれぞれから、延伸倍率を異ならせながら二軸延伸フィルムB2~B6を得た。表2に、延伸フィルムB1~B6について、使用した未延伸フィルム、並びに、縦延伸倍率、横延伸倍率及び面倍率を示す。また、二軸延伸フィルムB1~B6及び未延伸フィルムN7の物性を表3に示す。
【0125】
【0126】
【0127】
未延伸フィルムN1~N5から得られた二軸延伸フィルムB1~B5は、強度及び硬度に優れた。未延伸フィルムN6から得られた二軸延伸フィルムB6は、強度及び硬度が不足した。未延伸フィルムN7は、強度が不足する一方、硬度は優れた。
【0128】
二軸延伸フィルムB1~B5の強度が優れているのは、延伸されているからだと推察される。二軸延伸フィルムB6は、延伸されているから十分な強度を有するように期待されたが、塩化メチレンの含有量が過剰であるため、強度が不足したと推察される。未延伸フィルムN7の強度が不足しているのは、延伸されていないからだと推察される。
【0129】
二軸延伸フィルムB1~B5の硬度が優れているのは、塩化メチレンの含有量が好適化されているからだと推察される。二軸延伸フィルムB6の硬度が不足しているのは、塩化メチレンの含有量が過剰であると推察される。未延伸フィルムN7の硬度が優れているのは、塩化メチレンの含有量が好適化されているからだと推察される。