(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131132
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】外科用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
A61B17/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023032947
(22)【出願日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】10 2022 202 314.5
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-ペーター ファームバッハ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェニア アンホーン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】膝関節置換手術に使用するための外科用器具を提供する。
【解決手段】外科用器具は、切断ブロックであって、切除された大腿骨の遠位端面に当接するように構成されたブロック後面と、ブロック後面から遠位に反対側のブロック前面に達し、ソーブレードを受け入れてガイド案内するように構成されたガイドスロットを有する切断ブロックと、切断ブロックの後部ブロック下面の領域において、切断ブロックに取付可能または取り付けられ、前方を向く足部上面を有する基準足部であって、大腿骨の後顆に当接するように構成される基準足部と、ブロック下面の前方に反対側に位置するブロック上面の領域において、切断ブロックに取付可能または取り付けられるプローブであって、プローブの取り付け状態で、ブロック後面を越えて近位に突出し、大腿骨の前面に当接するように構成されるプローブ先端部を有するプローブと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節置換手術に使用するための外科用器具(1、1a、1b)であって、
切断ブロック(100、100a、100b)であって、
切除された大腿骨(F)の遠位端面(S)に当接するように構成された、近位を向くブロック後面(101、101a)と、
前記ブロック後面(101、101a)から遠位に反対側のブロック前面(102、102a)に達し、内外方向に細長く、ソーブレードを受け入れてガイドするように構成された少なくとも1つのガイドスロット(107、108、110; 107a、108a、109a、110a)と、
を有する前記切断ブロック(100、100a、100b)と、
前記切断ブロック(100、100a、100b)の後部ブロック下面(104、104a)の領域において、前記切断ブロック(100、100a、100b)に取付可能または取り付けられ、前方を向く足部上面(201、201a)を有する基準足部(200、200a、200b)であって、前記基準足部(200、200a、200b)の取付状態において、前記足部上面(201、201a)は前記ブロック後面(101、101a)を越えて近位に突出し、前記大腿骨(F)の後顆(KL、KM)に当接するように構成される、前記基準足部(200、200a、200b)と、
前記ブロック下面(104、104a)の前方に反対側に位置するブロック上面(103、103a)の領域において、前記切断ブロック(100、100a、100b)に取付可能または取り付けられるプローブ(300、300b)であって、前記プローブ(300、300b)の取付状態において、前記ブロック後面(101、101a)を越えて近位に突出し、前記大腿骨(F)の前面(A)に当接するように構成されるプローブ先端部(301)を有する、前記プローブ(300、300b)と、
を有する、前記外科用器具(1、1a、1b)。
【請求項2】
前記切断ブロック(100、100a)は、後方に配置された第1の固定凹部(112、112a)を有し、
前記基準足部(200、200a)は、相補的な固定要素(202、202a)を有し、
前記第1の固定凹部(112、112a)および前記固定要素(202、202a)は、形状嵌めおよび/または力嵌め係合で互いに取外可能に接続可能であるか、または互いに接続されることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項3】
前記第1の固定凹部(112)は、前記ブロック後面(101)から前記ブロック前面(102)に達し、前記内外方向に直線的かつ細長い受入れスロット(113)であり、
前記固定要素(202)は、前記受入れスロット(113)に形状嵌めおよび/または力嵌め係合で差し込まれるように構成された平板形状のプラグ要素(203)であることを特徴とする、請求項2に記載の外科用器具(1)。
【請求項4】
前記プラグ要素(203)は、前後方向に延在し、弾性的に(elastically resiliently)可動なばね舌部(2034、2036)を形成するように、長手方向に実質的にU字形である少なくとも1つの分離隙間(2033、2035)を有し、
前記基準足部(200)の取付状態において、前記ばね舌部(2034、2036)は、前記受入れスロット(113)の内壁に対して付勢されることを特徴とする、請求項3に記載の外科用器具(1)。
【請求項5】
前記受入れスロット(113)は、ウェブ(114)によって前記内外方向に互いに分離された2つの別個のスロット部(1131、1132)を有し、
前記プラグ要素(203)は、隙間(204)によって前記内外方向に互いに分離された2つの別個のプラグ部(2031、2032)を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の外科用器具(1)。
【請求項6】
前記受入れスロット(113)は、前記基準足部(200)の非取付状態において、前記ソーブレードを受け入れてガイドするように構成され、前記切断ブロック(100)の後部ガイドスロット(108)を形成することを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項7】
前記第1の固定凹部(112a)は、前記ブロック前面内に近位に沈んだ受入れポケット(113a)であり、
前記固定要素(202a)は、前記受入れポケット(113a)とのラッチ接続および/またはクランプ接続を形成するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の外科用器具(1a)。
【請求項8】
前記基準足部(200、200a、200b)は、平板形状の伸長部(205、205a)を形成し、前記伸長部(205、205a)は前記固定要素(202、202a)から、特に後方に離間され、その上面が前記足部上面(201、201a)を形成することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a、1b)。
【請求項9】
前記基準足部(200、200a)は、遠位に配置されたグリップ部(207、207a)を有し、前記固定要素(202、202a)および/または前記伸長部(205、205a)は、前記グリップ部(207、207a)から近位方向に突出し、
前記グリップ部(207、207a)は、外方向を向く第1のグリップ面(2071、2071a)と、内方向を向く第2のグリップ面(2072、2072a)と、近位を向く停止面(2073、2073a)と、を有することを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項10】
前記切断ブロック(100、100a)は、前方に配置された第2の固定凹部(115、115a)を有し、
前記プローブ(300)は、相補的な固定要素(302)を有し、
前記第2の固定凹部(115、115a)および前記プローブ(300)の前記固定要素(302)は、形状嵌めおよび/または力嵌め係合で、互いに取外可能に接続可能であるか、または接続されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項11】
前記第2の固定凹部(115、115a)は、汎用固定システムの構成部として設計され、さらなる器具構成品、好ましくは外科用ナビゲーション装置に接続するように構成されることを特徴とする、請求項10に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項12】
前記第2の固定凹部(115、115a)は、前記ブロック上面(103、103a)内に後方に沈み、前記内外方向に細長く、内側または外側端部で開いているラッチ凹部(116、116a)を有し、
前記プローブ(300)の前記固定要素(302)は、前記切断ブロック(100、100a)の前記ラッチ凹部と相互作用して取外可能なスナップフィット接続を形成する相補的ラッチ部(304)を有することを特徴とする、請求項10または11に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項13】
前記第2の固定凹部(115、115a)は、前記切断ブロック(100、100a)のブロック外面(105、106; 105a、106a)内に内外方向に延びるプラグ凹部(117、117a)を有し、
前記プローブ(300)の前記固定要素(302)は、前記プラグ凹部(117、117a)と相互作用して取外可能なプラグ接続を形成する相補的なプラグ部(305)を有することを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項14】
異なる前後方向厚さを有する複数の異なる補償要素(400、400´、400´´、400´´´)が存在し、前記異なる補償要素(400、400´、400´´、400´´´)のそれぞれは、前記足部上面(201、201a)に取付可能か、好ましくは差込可能であり、前記後顆(KL、KM)の異なる摩耗度合いを補償するように構成されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a、1b)。
【請求項15】
膝関節置換手術で使用するための外科用器具システム(10)であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の少なくとも1つの外科用器具(1、1a)を有し、
前記基準足部(200、200a)および前記プローブ(300)は、それぞれ、前記切断ブロック(100、101a)に取外可能に取り付けられ、
前記システム(10)は、少なくとも1つの寸法、特に前後方向および/または内外方向の寸法に関して互いに異なるさらなる異なる切断ブロック(100´、100´´)を有し、
前記基準足部(200、200a)および前記プローブ(300)は、それぞれ、前記さらなる異なる切断ブロック(100´、100´´)のそれぞれに取付可能である、外科用器具システム(10)。
【請求項16】
前記基準足部(200b)および前記プローブ(300b)はそれぞれ、前記切断ブロック(100b)に恒久的に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1b)。
【請求項17】
請求項16に記載の複数の異なる外科用器具(1b、1b´、1b´´)を有する、膝関節置換手術に使用するための外科用器具システム(10b)であって、
前記複数の異なる外科用器具(1b、1b´、1b´´)は、それぞれの切断ブロック(100b、100b´、100b´´)の少なくとも1つの寸法、特に前後方向及び/又は内外方向の寸法が互いに異なる、外科用器具システム(10b)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節置換手術に使用するための外科用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
損傷または摩耗した天然骨構造のための人工置換物としての整形外科用プロテーゼを使用することは、一般的な医療行為である。特に、股関節および膝関節置換手術は、今日、整形外科において日常的である。
【0003】
膝関節置換手術、または人工膝関節全置換術(TKA)では、病気または損傷によって摩耗したか、または影響を受けた大腿骨および/または脛骨の関節表面が、膝関節プロテーゼによって置換される。そのような膝関節プロテーゼは、通常、大腿骨の遠位端に移植される大腿骨構成要素と、脛骨の近位端に移植される脛骨構成要素と、を備える。人工関節が適切に機能することを確実にするために、前述の構成要素は、患者の解剖学的構造および身体の軸に対して、規定された位置および向きで可能な限り正確に配置されなければならない。そうでなければ、患者にとって不満足な結果が予想されなければならない。構成要素の位置決めに関して、様々な外科的アプローチがある。
【0004】
これまで主に使用されてきた、機械的アライメントとして知られるアプローチでは、膝関節プロテーゼの人工関節軸の位置および向きは、患者のいかなる整形外科的な変形も考慮することなく、機械的に理想的であるように提供されてきた。脛骨の長手方向軸は、ここでは、向きおよび位置決めのための基準軸として使用されることが多かった。臨床研究は、機械的アライメントアプローチが、人工膝関節の機能が不自然に感じられることにつながり得ることを示している。
【0005】
さらなるアプローチは、運動学的アライメントとして知られているアプローチである。この技法では、大腿骨構成要素および脛骨構成要素は、患者の任意の整形外科的な変形を考慮して位置決めされる。その目的は、患者の自然な関節の向きを回復させることであり、これは、場合によっては、変形によって影響を受ける。臨床研究は、運動学的アライメントアプローチが、患者の満足度の改善としばしば関連することを示している。特に、人工膝関節の機能が患者によってより自然に感じられる。
【0006】
正確な位置決めに加えて、大腿骨構成要素および脛骨構成要素が、それぞれ患者の解剖学的構造に適したサイズで選択され、移植されることが重要である。大腿骨構成要素のサイズは、大腿骨のサイズに広く依存し、サイズは、この目的のために提供される測定機器を使用して、施術中に決定される。そのような測定機器は、大腿骨サイザー(sizers)または大腿骨サイジングシステムとも呼ばれる。
【0007】
遠位大腿骨の切除後にサイズを決定することが通例である。既知の測定器具が、遠位大腿骨の切除された端面に配置され、解剖学的基準面または解剖学的目印に対して方向づけられる。サイズが決定された後、遠位大腿骨は、大腿骨構成要素を適用するためにさらに準備される。これはさらなる切除を必要とし、これは、通常、前方切除、後方切除、およびいわゆる面取り切除を含む。これらの切除は、大腿骨の遠位端面に固定される切断ブロックまたは切断治具を使用して行われる。大腿骨のサイズは異なるため、様々な前後および/または内外方向寸法を有する様々な切断ブロックが通常存在する。それぞれの場合において、必要とされる寸法は、施術外科医によって以前に決定された大腿骨のサイズに従って選択される。大腿骨のサイズを個別に決定し、その後適切な切断ブロックを選択し、そして切断ブロックを大腿骨へ適用することは、時間および器具の点で費用の増加を伴い得、潜在的な過誤の原因となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
患者の満足度をさらに改善することを目的として、運動学的アライメントの実施のために、可能な限り正確で、使用しやすく、費用効率が高い外科用器具が抜本的に必要とされている。本発明は、そのような外科用器具および対応する器具システムを扱う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、膝関節置換手術に使用するための外科用器具を提供することであり、この器具は、従来技術の欠点を克服するかまたは軽減し、特に時間および/または器具類に関して節約を可能にする。
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を有する外科用器具を提供することによって達成される。
【0011】
本発明による外科用器具は、切断ブロックであって、切除された大腿骨の遠位端面に当接するように構成された、近位を向くブロック後面と、ブロック後面から遠位に反対側のブロック前面に達し、内外方向に細長く、ソーブレードを受け入れてガイドするように構成された少なくとも1つのガイドスロットと、を有する切断ブロックと、切断ブロックの後部ブロック下面の領域において、切断ブロックに取付可能または取り付けられ、前方を向く足部上面を有する基準足部であって、基準足部の取付状態において、足部上面はブロック後面を越えて近位に突出し、大腿骨の後顆に当接するように構成される、基準足部と、ブロック下面の前方に反対側に位置するブロック上面の領域において、切断ブロックに取付可能または取り付けられるプローブであって、プローブの取付状態において、ブロック後面を越えて近位に突出し、大腿骨の前面に当接するように構成されるプローブ先端部を有する、プローブと、を有する。本発明による解決策によって、個別のサイズ測定および/またはサイズチェックを省くことができ、この目的のために通常必要とされる個別の測定機器を省くことができる。このようにして、時間を節約し、機器に対する出費を低減し、したがって関連するコストを低減することが可能である。本発明による外科用器具は、一方では、大腿骨の必要なサイズ測定および/またはサイズチェックを可能にする。特にこの目的のために基準足部およびプローブが存在し、切断ブロックに取り付けられるかまたは取付可能である。一方、本発明による外科用器具は、大腿骨のさらなる切除に必要な切断部のガイドを可能にする。この目的のために、切断ブロックが存在し、ソーブレードを受け入れてガイドするための前述の少なくとも1つのガイドスロットを有する。一実施形態では、基準足部およびプローブはそれぞれ、切断ブロックに取外可能に取り付けられる。さらなる実施形態では、基準足部およびプローブはそれぞれ、切断ブロックに恒久的に接続される。切断ブロックは、ソーイングブロックまたは切断治具と呼ぶこともできる。好ましい実施形態では、切削ブロックは、複数のガイドスロット、好ましくは前部ガイドスロット、後部ガイドスロット、および2つの面取りガイドスロットを有し、フォーインワン(four-in-one)切断ブロックと呼ぶこともできる。ブロック後面は、遠位方向の参照のために役立つ。外科用器具の使用中、ブロック後面は、切除された大腿骨の遠位端面に接触する。足部上面は、後部の参照のために役立つ。外科用器具の使用中、足部上面は、大腿骨の後顆に接触する。プローブ、より正確にはそのプローブ先端部は、前方の参照のために役立つ。外科用器具の使用中、プローブ先端部は、大腿骨の前述の前面に接触する。プローブは、スタイラスとすることもできる。一実施形態では、プローブ先端部は、切断ブロックに対して移動可能であり、好ましくは近位遠位方向に直線的に移動可能であり、および/または前後回動軸の周りを回動可能である。さらなる実施形態では、プローブ先端部は、切断ブロックに対して移動可能ではない。
【0012】
本明細書で使用される位置、向き、および/または方向の指定は、患者の身体、特に患者の大腿骨に関連し、この程度まで、それらは、その通常の解剖学的意味に従って理解されるべきである。したがって、「前方」は、前部、または前方に向けて広がることを示し、「後方」は、後部、または後方に向けて広がることを示し、「内側」は、内側部、または内側に向けて広がることを示し、「外側」は、外側部、または外側に向けて広がることを示し、「近位」は、身体の中心に向かうことを示し、「遠位」は、身体の中心から離れることを示す。さらに、「近位遠位方向」は、近位-遠位軸に沿って、好ましくは平行であることを示し、「前後方向」は、前方-後方軸に沿って、好ましくは平行であることを示し、「内外方向」は、内側-外側軸に沿って、好ましくは平行であることを示す。前述の軸は、互いに直交しており、もちろん、患者の解剖学的構造に関連付けられていないX軸、Y軸、およびZ軸に関して理解することができる。例えば、近位-遠位軸は、代替的にX軸とすることができる。内側-外側軸は、Y軸とすることができる。前方-後方軸は、Z軸とすることができる。より良い説明および名称の簡略化のために、前述の解剖学的位置、向きおよび/または方向の名称が、主に以下で使用される。さらに、近位を向く観察方向に関して、例えば、切断ブロックなどの構成品または外科用器具の一部分の「後面」などの名称が使用される。対照的に、「前面」などの名称が、遠位を向く観察方向に関して使用される。
【0013】
本発明の一実施形態では、切断ブロックは、後方に配置された第1の固定凹部を有し、基準足部は、相補的な固定要素を有し、第1の固定凹部および固定要素は、形状嵌めおよび/または力嵌め係合で互いに取外可能に接続可能であるか、または互いに接続される。異なる実施形態では、第1の固定凹部および固定要素は、異なる種類の結合接続を形成する。一実施形態では、取外可能なプラグ接続がある。他の実施形態では、ラッチ接続、クランプ接続、および/またはスナップフィット接続などがある。さらに、ねじ接続が考えられる。切断ブロックと基準足部との間の取外可能な接続は、サイズチェックが行われた後に、基準足部が切断ブロックから取り外され、取り除かれることができることを意味する。その後、切断ブロックを使用して適切な切断を行うことができる。
【0014】
本発明のさらなる実施形態では、第1の固定凹部は、ブロック後面からブロック前面に達し、内外方向に直線的かつ細長い受入れスロットであり、固定要素は、受入れスロットに形状嵌めおよび/または力嵌め係合で差し込まれるように構成された平板形状のプラグ要素である。基準足部を固定するために、プラグ要素は、ブロック前面から始まって、近位方向に受入れスロットに差し込まれる。プラグ要素は、受入れスロットを補完する形状を有し、逆もまた同様である。差込み状態では、差込み要素は、形状嵌めおよび/または力嵌め係合で、受入れスロット内に保持される。これにより、簡単であるが強固に基準足部を固定できる。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、プラグ要素は、前後方向に延在し、弾性的に(elastically resiliently)可動なばね舌部を形成するように、長手方向に実質的にU字形である少なくとも1つの分離隙間を有し、基準足部の取付状態において、ばね舌部は、受入れスロットの内壁に対して付勢される。このようにして、基準足部、より正確にはばね舌部と、受入れスロット、より正確には受入れスロットの内壁と、の間で摩擦が増加する。これにより、基準足部の固定が改善される。分離隙間の実質的にU字形の長手方向の広がりにより、ばね舌部は、舌形状であり、および/または舌形状を有する。分離隙間は前後方向に延在し、したがって、プラグ要素の前方を向く上面から始まって、プラグ要素の後方を向く下面まで完全に到達する。一実施形態では、ばね舌部は、プラグ要素の上面から(前方に)、さらなる実施形態では、プラグ要素の下面から(後方に)、受入れスロットの内壁を押圧する。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、受入れスロットは、ウェブによって内外方向に互いに分離された2つの別個のスロット部を有し、プラグ要素は、隙間によって内外方向に互いに分離された2つの別個のプラグ部を有する。基準足部の固定状態では、ウェブは隙間に入り、固定をさらに改善する。これは、特に内外方向においてである。本発明のこの実施形態では、第1のスロット部および第2のスロット部、したがって、第1のプラグ部および第2のプラグ部に言及することも可能である。
【0017】
本発明のさらなる実施形態では、受入れスロットは、基準足部の非取付状態において、ソーブレードを受け入れてガイドするように構成され、切断ブロックの後部ガイドスロットを形成する。これは、本発明の特に好ましい実施形態である。この実施形態では、受入れスロットは、特に有利な多数の機能を有する。一方では、受入れスロットは、基準足部を切断ブロックに取外可能に固定する目的で、プラグ要素を受入れる働きをする。他方では、受入れスロットは、ソーブレードのためのガイドスロットとして機能する。このようにして、切断ブロックの特に簡単でコンパクトな構造を達成することができる。
【0018】
本発明のさらなる実施形態では、第1の固定凹部は、ブロック前面内に近位に沈んだ受入れポケットであり、固定要素は、受入れポケットとのラッチ接続および/またはクランプ接続を形成するように構成される。したがって、固定要素は、一実施形態ではラッチ要素であり、別の実施形態ではクランプ要素である。
【0019】
本発明のさらなる実施形態では、基準足部は平板形状の伸長部を形成し、伸長部は固定要素から後方に離間され、その上面が足部上面を形成する。基準足部の固定状態では、伸長部はブロック下面の下方に、すなわち、ブロック下面から後方に離間して配置される。
この目的のために、伸長部は、固定要素から後方に離間される。伸長部の上面は前方を向き、大腿骨の後顆に当接するように構成される。伸長部は、ブロック後面を越えて近位方向に突出する。一実施形態では、伸長部は、ウェブによって内外方向に互いに分離された2つの別個の伸長部を有する。この実施形態では、第1の伸長部および第2の伸長部、または代替的に、内側伸長部および外側伸長部も参照することができる。内側伸長部は、内側後顆を参照するために設けられている。したがって、外側伸長部は、外側後顆を参照するために設けられる。
【0020】
本発明のさらなる実施形態では、基準足部は、遠位に配置されたグリップ部を有し、固定要素および/または伸長部は、グリップ部から近位方向に突出し、グリップ部は外方向を向く第1のグリップ面と、内方向を向く第2のグリップ面と、近位を向く停止面と、を有する。グリップ部は、施術する外科医による基準足部の人間工学的な手動操作を可能にする。この目的のために、グリップ部は、基準足部上の遠位に配置される。したがって、基準足部の固定状態では、グリップ部は、ブロック前面に容易にアクセス可能に配置される。グリップ部は片手の指の間で把持することができ、この目的のために、2つのグリップ面を有する。外側を向く第1のグリップ面は外方向に配置され、したがって、外側グリップ面とすることもできる。内側を向く第2のグリップ面は内方向に配置され、したがって、内側グリップ面とすることもできる。近位を向く停止面は、基準足部の固定要素が板状のプラグ要素として設計される実施形態に関連して特に有利である。この場合、近位を向く停止面は、プラグ要素が受入れスロットに差し込まれる深さを制限する。
【0021】
本発明のさらなる実施形態では、切断ブロックは、前方に配置された第2の固定凹部を有し、プローブは、相補的な固定要素を有し、第2の固定凹部およびプローブの固定要素は、形状嵌めおよび/または力嵌め係合で、互いに取外可能に接続可能であるか、または接続される。このようにして、サイズ測定および/またはサイズチェックが実行された後、プローブは切断ブロックから容易に取り外され、取り除かれることができる。その後、切断ブロックを使用して、遠位大腿骨のさらなる切除を行うことができる。異なる実施形態では、第2の固定凹部およびプローブの固定要素は、異なる結合接続、例えば、プラグ接続、ラッチ接続、クランプ接続、および/またはスナップフィット接続を形成する。さらに、ねじ接続が考えられる。
【0022】
本発明のさらなる実施形態では、第2の固定凹部は、汎用固定システムの構成部として設計され、さらなる器具構成品、好ましくは外科用ナビゲーション装置に接続するように構成される。したがって、さらなる器具構成品は、同様に、相補的な固定要素を有する。汎用固定システムは、切断ブロックに固定され、切断ブロックから取り外される様々な器具構成品の選択肢を可能にする。特に、プローブおよび代替的に少なくとも1つのさらなる器具構成品、特に前述のナビゲーション装置が、切断ブロックに取外可能に固定され得る。
【0023】
本発明のさらなる実施形態では、第2の固定凹部は、ブロック上面内に後方に沈み、内外方向に細長く、内側または外側端部で開いているラッチ凹部を有し、プローブの固定要素は、切断ブロックのラッチ凹部と相互作用して取外可能なスナップフィット接続を形成する相補的ラッチ部を有する。ラッチ凹部は内外方向に細長く、一実施形態では、内側ブロック外面の方向に開いており、さらなる実施形態では、外側ブロック外面の方向に開いている。したがって、相補的なラッチ部は、外側方向または内側方向に、ラッチ凹部内に押し込まれることができ、スナップフィット接続を形成するために、ラッチ凹部に接続されることができる。ラッチ凹部は、さらに、ブロック上面に沈み、その分、前方方向に開いている。このようにして、スナップフィット接続は、外科医が見ることが特に容易である。したがって、スナップフィット接続が、必要とされるように形成されているか否かを容易に識別することができる。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、第2の固定凹部は、切断ブロックのブロック外面内に内外方向に延びるプラグ凹部を有し、プローブの固定要素は、プラグ凹部と相互作用して取外可能なプラグ接続を形成する相補的なプラグ部を有する。好ましくは、プラグ凹部は、柱形(cylindrical)、好ましくは円柱形(circular cylindrical)の断面形状を有する。プローブの相補的なプラグ部の断面形状にも、必要な変更を加えて同じことが当てはまる。プラグ部はまた、ピン、ボルト、および/またはペグとすることもできる。したがって、プラグ凹部は、ボア、ピン凹部、ペグ凹部、および/またはボルト凹部とすることもできる。一実施形態では、プラグ凹部は、切断ブロックの外側ブロック外面から始まり、切断ブロックの内部まで内方向に延在する。別の実施形態では、これとは対照的に、プラグ凹部は、内側ブロック外面から始まり、切断ブロック内部まで外方向に延在する。本発明のこの実施形態は、第2の固定凹部が追加的にラッチ凹部を有する実施形態と組み合わせて特に有利である。この場合、プラグ凹部は、改善された固定に役立つ。プラグ凹部は、好ましくは、ラッチ凹部から後方に離間した位置で切断ブロック上に配置される。
【0025】
本発明のさらなる実施形態では、異なる前後方向厚さを有する複数の異なる補償要素が存在し、異なる補償要素のそれぞれは、足部上面に取付可能か、好ましくは差込可能であり、後顆の異なる摩耗度合いを補償するように構成される。異なる補償要素は、大腿骨の長手方向軸に対する切断ブロックの向きを補正するのに役立つ。換言すれば、近位遠位方向軸を中心とする切断ブロックの回転は、異なる補償要素によって調整されることができる。運動学的アライメントアプローチは、一般に、いわゆる0°配向(0° orientation)を提供する。0°配向を確実にするために、後顆のいかなる摩耗も補償されなければならない。摩耗はもちろん、大幅に変化し得る。したがって、様々な寸法の、より正確には様々な厚さの、複数の補償要素が存在する。摩耗の程度が大きいほど、必要とされる補償要素は厚くなる。異なる補償要素は、それぞれ足部上面に取付可能であり、後顆と直接接触するように構成される。好ましくは、複数の異なる補償要素は、外側後顆に接触するための外側補償要素と、内側後顆に接触するための内側補償要素と、を含む。
【0026】
本発明は、さらに、膝関節置換手術で使用するための外科用器具システムであって、上記の説明による少なくとも1つの外科用器具を有し、基準足部およびプローブは、それぞれ、切断ブロックに取外可能に取り付けられ、システムは、少なくとも1つの寸法、特に前後方向および/または内外方向の寸法に関して互いに異なるさらなる異なる切断ブロックを有し、基準足部およびプローブは、それぞれ、さらなる異なる切断ブロックのそれぞれに取付可能である、外科用器具システムに関する。外科用器具システムの使用中、適切な切断ブロックが、例えば、術前検査、X線画像などに基づいて選択される。複数の異なる切断ブロックから切断ブロックを事前に選択した後、基準足部およびプローブを切断ブロックに取り付けることができる。ここで、基準足部およびプローブは、第1の例では、切断ブロックのサイズの事前選択をチェックするのに役立つ。この目的のために、足部上面は、上述の方法で大腿骨の後顆に配置される。ブロック後面は、切除された大腿骨の遠位端面に配置される。実際のチェックは、プローブ先端部によって行われる。したがって、足部上面およびブロック後面が位置決めされた状態で、プローブ先端部が移植された大腿骨構成要素の前側保護部が後に位置する領域において、同時に大腿骨の前面に接触すると、正しいサイズの切断ブロックが事前に選択されたと推測することが可能である。
【0027】
本発明のさらなる実施形態では、基準足部およびプローブはそれぞれ、切断ブロックに恒久的に取り付けられる。この実施形態では、基準足部と切断ブロックとの間、およびプローブと切断ブロックとの間の対応する接続は、少なくとも施術中には取外可能ではない。例えば、それぞれの場合に、取外不可能な結合接続が存在することができる。
【0028】
本発明は、さらに、前述の実施形態による複数の異なる外科用器具を有する、膝関節置換手術で使用するための外科用器具システムに関し、複数の異なる外科用器具は、それぞれの切断ブロックの少なくとも1つの寸法、特に前後方向及び/又は内外方向の寸法が互いに異なる。この外科用器具システムでは、複数の異なる外科用器具のそれぞれは、それぞれの切断ブロック、基準足部、およびプローブを有する。異なる外科用器具の基準足部およびプローブはそれぞれ、それぞれの切断ブロック上に恒久的におよび/または取外不可能に取り付けられる。
【0029】
本発明のさらなる利点および特徴は、特許請求の範囲より、および図面を参照して説明される本発明の好ましい例示的な実施形態の以下の説明より得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】切断ブロックと、基準足部と、プローブと、を有する、本発明による外科用器具の実施形態の概略的な斜視図を示す。
【
図2】
図1による外科用器具のさらなる概略的な斜視図を示す。
【
図3】
図1および
図2による外科用器具を概略的な平面図で示す。
【
図4】
図1および
図2による外科用器具を概略的な側面図で示す。
【
図5】
図1および
図4による外科用器具が遠位大腿骨上に配置される、手術中の状況の例示の概略的な斜視図を示す。
【
図6】
図5による手術中の状況をさらに概略的な斜視図で示す。
【
図7】
図1~
図6による外科用器具の切断ブロックを、ブロック前面の向きに見た別の概略的な斜視図で示す。
【
図8】
図1~
図6による外科用器具の切断ブロックを、ブロック後面の向きに見た別の概略的な斜視図で示す。
【
図9】
図1~
図6による外科用器具の基準足部の概略的な斜視図を示す。
【
図10】
図9による基準足部の概略的な側面図を示す。
【
図11】
図1~
図6による外科用器具のプローブの概略的な斜視図を示す。
【
図14】本発明による外科用器具のさらなる実施形態の概略的な斜視図を示す。
【
図15】
図14による外科用器具の切断ブロックを、ブロック前面の向きに見た概略的な斜視図を示す。
【
図16】
図14による外科用器具の基準足部の概略的な斜視図を示す。
【
図17】本発明による外科用器具システムの実施形態の簡略化された概略的なブロック図を示す。
【
図18】
図17に対応する方法で、本発明による外科用器具システムのさらなる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1~
図6によると、膝関節置換手術に使用するための外科用器具1が提供され、外科用器具1は、切断ブロック100、基準足部200、およびプローブ300を有する。
【0032】
切断ブロック100は、近位に配向されたブロック後面101と、遠位に反対側のブロック前面102と、前部ブロック上面103と、後部ブロック下面104と、外側ブロック外面105と、内側ブロック外面106とを有する。ブロック後面101は、切除された大腿骨Fの遠位端面Sに当接するように構成される(
図5および6参照)。ブロック後面101の法線方向は、
図1および
図2に示される近位遠位方向軸に平行に配向され、近位方向を指す。切断ブロック100はさらに、少なくとも1つのガイドスロット107を有する。本例では、複数のガイドスロット、すなわち少なくとも1つのガイドスロット107が提供され、これらは、前部ガイドスロット107、後部ガイドスロット108、および面取りガイドスロット109、110としても指定され得る。ガイドスロット107、108、109、110は、それぞれ、ブロック前面102からブロック後面101まで延在する。さらに、ガイドスロット107、108、109、110は、それぞれ、内外方向に細長く、すなわち、
図1および
図2に示される内外方向軸に平行である。ガイドスロット107、108、109、110はそれぞれ、ソーブレード(図示せず)を受け入れてガイドするように構成される。
【0033】
基準足部200は、後部ブロック下面104の領域の切断ブロックに取り付けられ、前方に向けられた足部上面201を有する。したがって、足部上面201の表面法線(図示せず)は、
図1および
図2に示される前後方向軸に平行であり、前方方向を指す。足部上面201は、ブロック後面101を越えて近位方向に突出し、大腿骨Fの後顆KL、KMに当接するように構成される(
図5および6参照)。本実施形態では、基準足部200は、後に詳細に説明するように、切断ブロック100に取外可能に接続される。
【0034】
プローブ300は、ブロック上面103の領域において切断ブロック100に取り付けられ、プローブ先端部301を有する。プローブ先端部301は、ブロック後面101を越えて近位方向に突出し、大腿骨Fの前面Aに当接するように構成される(
図5および6参照)。本実施形態では、プローブ300は、後に詳細に説明するように、切断ブロック100に取外可能に接続される。
【0035】
外科用器具1は、複数の目的を果たす。一方では、外科用器具1は、遠位切除された大腿骨Fのサイズ測定および/またはサイズチェックのために使用することができる。他方では、外科用器具は、大腿骨の切除中に、前述のソーブレードをガイドする働きをする。
【0036】
サイズ測定および/またはサイズチェックのために、ブロック後面101が端面Sに接触する。同時に、足部上面201が後顆KL、KMに接触する。このようにして、外科用器具は、大腿骨Fの前後方向軸および近位遠位方向軸に対して方向づけされる。実際のサイズ測定および/またはサイズチェックは、プローブ300によって、外科用器具1が端面Sおよび後顆KL、KM上に当接する所定の向きにある時に、プローブ先端部301が大腿骨Fの前面Aに接触するかどうかに基づいて実行される。
【0037】
サイズ測定および/またはサイズチェックが行われた後、切断ブロック100は、当業者に知られている方法で、例えば、適切なピン、ねじなどによって大腿骨に固定される。これらは、この目的のために切断ブロックに設けられた固定開口部111に導入することができる(
図7および8を参照)。切断ブロック100が大腿骨に固定された後、大腿骨Fのさらなる切除が行われる。この目的のために、ソーブレードは、当業者に公知の方法でガイドスロット107、108、109、110を通ってガイドされ、それによって大腿骨が切除される。ここに図示される実施形態では、基準足部200およびプローブ300の両方は、切除が行われる前に、切断ブロック100から取り外され、取り除かれる。
【0038】
図示の実施形態では、切断ブロック100および基準足部200は、取外可能な力嵌めおよび/または形状嵌め接合接続によって互いに接続される。この目的のために、切断ブロック100は、後方に配置された第1の固定凹部112を有する(
図7および8を参照)。基準足部200は、第1の固定凹部112を補完する固定要素202(
図9および
図10参照)を有する。
【0039】
第1の固定凹部112は、ブロック下面104の領域に配置される。図示の実施形態では、第1の固定凹部112は、ブロック後面101からブロック前面102に達する受入れスロット113であり、内外方向に真っ直ぐで細長い。図示の実施形態では、受入れスロット113は2つの別個のスロット部1131、1132を有し、これらは内側スロット部1132および外側スロット部1131と呼ぶこともできる。2つのスロット部1131、1132は、ウェブ114によって内外方向に互いに分離されている。外側スロット部1131は、ウェブ114とは反対側の端部において外側方向に開いている。内側スロット部1132は、ウェブ114とは反対側の端部で内側方向に開いている。
【0040】
図示の実施形態では、受入れスロット113は、特に有利な多数の機能を有する。一方では、受入れスロットは、形状嵌めおよび/または力嵌め係合で相補的な固定要素202を受入れるように働く。他方では、受入れスロット113は、基準足部200が切断ブロック100に固定されていない状態では、後部ガイドスロット108として機能する。言い換えれば、後部ガイドスロット108は、受入れスロット113として同時に機能する。
【0041】
相補的な固定要素202(
図9および
図10参照)は、受入れスロット113に合うように設計され、本例では、受入れスロット113に形状嵌めおよび/または力嵌め係合で差し込まれるように構成された平板形状のプラグ要素203である。プラグ要素203は、本例では、内外方向に対して、および近位遠位方向軸に対して平坦である。最も広い意味では、2つの部分からなる受入れスロット113に対応して、プラグ要素203は、2つの別個のプラグ部2031、2032を有する。これらはまた、内側プラグ部2032および外側プラグ部2031と呼ぶこともできる。2つのプラグ部2031、2032は、隙間204によって、内外方向に互いに分離されている。ここでは、隙間204の内外方向の広がりは、ウェブ114の対応する広がりよりも大きい。
【0042】
基準足部200を切断ブロック100に固定するために、プラグ要素203は、受入れスロット113内に近位に差し込まれる。このとき、外側プラグ部2031が外側スロット部1131に挿入され、内側プラグ部2032が内側スロット部1132に挿入される。
【0043】
図示の実施形態では、プラグ要素203は、前後方向に延在し、弾性的かつ元に戻るように可動なばね舌部2034を形成するように、長手方向に実質的にU字形である少なくとも1つの分離隙間2033を有する。プラグ要素203が差し込まれた状態のばね舌部2034は、ばね力の負荷を受けて、受入れスロット113の内壁(詳細には図示せず)に当接する。ばね舌部2034は、前述の内壁を前方にまたは後方に押圧する。これは摩擦を増加させ、したがって、基準足部200の固定を改善し、特に確実なものとする。図示の実施形態では、分離隙間2033およびばね舌部2034は外側プラグ部2031に配置され、外側分離隙間2033および外側ばね舌部2034とも呼ばれ得る。本例では、内側プラグ部2032は、(内側)分離隙間2035および(内側)ばね舌部2036を有する対応する設計を有する。
【0044】
図示の実施形態では、足部上面201は、平板形状の伸長部205上に形成される。言い換えれば、伸長部205の上面(詳細には記載されていない)は、足部上面201を形成する。伸長部205は、内外方向軸に対して、および近位遠位方向軸に対して平坦であり、ブロック後面101を越えて近位方向に少なくとも部分的に突出する。本例では、伸長部205は、固定要素203に対して平面平行に配向される。伸長部205は、固定要素203から後方に離間される。基準足部200の固定状態において、伸長部205は、ブロック下面104の下に係合する(特に
図4参照)。
【0045】
伸長部205は、外側伸長部2051および内側伸長部2052を有する。2つの伸長部2051、2052は、隙間206によって、内外方向に互いに分離されている。外側伸長部2051は、外側後顆KLと接触するように設けられる。したがって、内側伸長部2052は、内側後顆KMと接触するように設けられる。
【0046】
後顆KL、KMの任意の摩耗を補償するために、図示の実施形態における外科用器具1はまた、複数の補償要素を有する。複数の補償要素のうちの1つの補償要素400のみが、本図面に示されている。様々な補償要素は、前後方向の厚さにおいて異なり、それぞれが足部上面201上に取付可能であるように構成される。本例では、補償要素400は、外側伸長部2051上に取り付けられる。この目的のために、補償要素400(複数の異なる補償要素)と足部上面201との間の様々な接合接続が、様々な実施形態において考えられる。本例では、補償要素400は、詳細には図示されていない方法で、外側伸長部2051に差し込まれる。外側伸長部2051上に補償要素400を取り付けることによって、外側後顆KLの任意の摩耗を補償することができるが、それは、前述の摩耗にもかかわらず、外科用器具1が、運動学的位置合わせの要件および概念を満たすように、近位遠位方向軸を中心に回転するように方向づけされることを確実にできるからである。
【0047】
外科用器具1が複数の異なる補償要素を有することを示すために、
図9の補償要素400は、括弧内のさらなる参照符号400´、400´´、400´´´によって示される。これらの参照符号は、第1の補償要素400´、第2の補償要素400´´、および第3の補償要素400´´´に関するものであり、これらは、図面では別個に示されていない。第1の補償要素400´の前後方向の厚さは、第2の補償要素400´´および第3の補償要素400´´´の前後方向の厚さよりも小さい。第2の補償要素400´´の前後方向の厚さは、第1の補償要素400´の前後方向の厚さよりも大きく、第3の補償要素400´´´の前後方向の厚さよりも小さい。第3の補償要素400´´´の前後方向の厚さは、第1の補償要素400´および第2の補償要素400´´の前後方向の厚さよりも大きい。
【0048】
図示の実施形態では、基準足部200はさらに、グリップ部207を有する。グリップ部207は基準足部200上に遠位に配置され、外側グリップ面2071、内側グリップ面2072、および停止面2073を有する。グリップ部207は、基準足部200の簡略化された手動操作のために役立つ。固定要素202は、グリップ部207から近位方向に突出する。伸長部205は、グリップ部207から近位方向に突出する。外側グリップ面2071は実質的に外方向に配向され、対応する面法線が内外方向軸にほぼ平行であり、外方向を指す。変更すべきところは変更して、内側グリップ面2072にも同じことが当てはまる。基準足部を固定し、および取り外すため、グリップ部207は、例えば、親指が外側グリップ面2071に置かれ、人差し指が内側グリップ面2072に置かれて、片手の指の間で把持される。停止面2073は近位を向き、主に、プラグ要素203が受入れスロット113に差し込まれる深さを制限する役割を果たす。差込状態において、停止面2073は、ブロック前面102に接触する。
【0049】
プローブ300を切断ブロック100に取外可能に接続するために、切断ブロックは、前方に配置された第2の固定凹部115を有する。プローブ300は、第2の固定凹部115を補完する固定要素302を有する。第2の固定凹部115およびプローブ300の固定要素302は、形状嵌めおよび/または力嵌め係合で互いに接続可能または接続される。
【0050】
特に
図7および
図8に示されるように、第2の固定凹部、ここでは115、はラッチ凹部116およびプラグ凹部117を有する。
【0051】
ラッチ凹部116は、後方方向にブロック上面103内に沈み、内側ブロック外面106から始まって、切断ブロック100内を内外方向に延在する。ラッチ凹部116は、ここでは、前方方向(上方に向かって)に開いている。したがって、ラッチ凹部116は、最も広い意味で、ポケット形状設計である。
【0052】
プラグ凹部117は、内側ブロック外面106から始まり、外方向に切断ブロック100に導入される。本例では、プラグ凹部117は円形の円筒形断面を有し、ボアと呼ばれ得る。図示されていない実施形態では、ラッチ凹部116およびプラグ凹部117の両方が、切断ブロック100上に外方向に配置される。切断ブロックが、内方向および外方向の両方に第2の固定凹部を有することも考えられる。プラグ凹部117は、ラッチ凹部116から後方に離間している。
【0053】
プローブ300の相補的な固定要素302は、ラッチ部304およびプラグ部305を有する(
図11参照)。
【0054】
ラッチ部304は、ラッチ凹部116を補完するように設計され、本例では、2つの弾性スプリングリム3041を有する。弾性スプリングリム3041は、近位遠位方向軸に対して互いに対向して位置し、同軸に沿って弾性的に移動可能である。近位遠位方向軸に関する2つのスプリングリム3041間で、ラッチ部304はガイドピン3042を有する。
【0055】
プラグ部305は、プラグ凹部117を補完するように設計され、したがって、本例では、ペグ形状、ピン形状、および/またはボルト形状を有する。プラグ部305は、内外方向に真っ直ぐで細長い。
【0056】
プローブ300の固定状態では、プラグ部305は、プラグ凹部117と同軸上に方向づけられ、プラグ凹部に軸方向に差し込まれる。これにより、ラッチ部304は、ラッチ凹部116にラッチ接続される。2つのスプリングリム3041は、ラッチ凹部116の内側輪郭(詳細には図示せず)に形状嵌め係合でラッチ接続される。第2の固定凹部115および相補的な固定要素302のこの設計は、特に、内外方向軸を中心とするトルク支持を改善する。このようにして、切断ブロック100に対するプローブ先端部301の望ましくない相対運動が妨げられる。
【0057】
図示の実施形態では、第2の固定凹部115は、汎用固定システムの構成(一体)部分であり、図面に詳細には示されていないさらなる器具部品に接続するように構成される。このようにして、プローブ300の代わりに、同様に相補的な固定要素を備えるさらなる器具部品が、切断ブロック100に取外可能に接続されるように選択され得る。対象の器具部品は、特に、外科用ナビゲーション装置などである。
【0058】
図示の実施形態では、プローブ先端部301は、切断ブロック100に対して移動可能である。この目的のために、プローブ300は、本例では、軸受ブロック306と、その上に移動可能に取り付けられたプローブ要素307と、を有する。
【0059】
プローブ要素307は、第1の端部3071と第2の端部3072との間で細長く、プローブ先端部301は第2の端部3072に形成される。プローブ要素307は、軸受ブロック306に対して長手方向にガイドされ、その上を直線的に移動可能である。さらに、プローブ要素307は、軸受ブロック306に対して回動軸を中心として回動可能である。回動軸(詳細には図示せず)は、前後方向軸に平行に配向される。軸受ブロック306は相補的な固定要素302を有し、したがって、ラッチ部304およびプラグ部305の両方を有する。
【0060】
図14は、本発明による外科用器具1aのさらなる実施形態を示す。外科用器具1aの機能および構造は、
図1~
図6による外科用器具1の機能および構造とほぼ同一である。繰り返しを避けるために、外科用器具1に関する外科用器具1aの主要な相違点のみを以下に説明する。外科用器具1aの機能的に同一の構造部分および/または部分は、個別に説明されない。代わりに、外科用器具1の開示が明確に参照される。
【0061】
外科用器具1aは、主に、基準足部200aが切断ブロック100aに固定される方法において異なる。対照的に、プローブ300およびその切断ブロック100aへの固定は、外科用器具1のプローブ300と同一である。
【0062】
切断ブロック100aは、第1の固定凹部112aを有する。第1の固定凹部112aは、本例では、ブロック前面102a内に近位に沈む受入れポケット113aである。受入れポケット113aは、切断ブロック100aの後部ガイドスロット108aから前方に離間され、ブロック外面105a、106aの間のほぼ中央に配置される。
【0063】
基準足部200a(
図16)は、受入れポケット113aを補完する固定要素202aを有する。固定要素202aは、受入れポケット113aとのラッチ接続および/またはクランプ接続を確立するように構成される。図示の実施形態では、固定要素202aは、楔形設計を有し、遠位端部2021aと近位端部2022aとの間に延在する。固定要素202aは、近位前端部2022aの方向に楔形状を有しつつ平坦化する。
【0064】
切断ブロック100aへの取外可能な接続のために、固定要素202aは、近位端部2022aを前方にして、受入れポケット113a内に挿入される。このようにして、上述のラッチ接続および/またはクランプ接続が得られる。
【0065】
他の点では、基準足部200aは、
図1~
図13による外科用器具1の基準足部200に実質的に対応する構造を有する。ここでもまた、外側伸長部2051aおよび内側伸長部2052aが存在する。ここで、内側伸長部2052aには、基準脚部の固定を摩擦的に支持するために、ばね力の負荷でブロック下面104aを押圧するばね舌部2036aが設けられている。顆の摩耗を補償するために、補償要素400が外側伸長部2051aに差し込まれるが、これはもちろん必須ではない。
【0066】
図17は、本発明による外科用器具システム10の実施形態を示す。外科用器具システム10は、
図1~
図6による外科用器具1を有し、さらに、さらなる切断ブロック100´、100´´を備える。切断ブロック100、100´、100´´は、以下では、第1の切断ブロック100、第2の切断ブロック100´、および第3の切断ブロック100´´としても呼ばれる。切断ブロック100、100´、100´´は寸法が異なり、異なるサイズの大腿骨に使用するために提供される。寸法が異なる以外には、第2の切断ブロック100´および第3の切断ブロック100´´は、第1の切断ブロック100と同一の機能および設計を有する。
【0067】
基準足部200およびプローブ300はそれぞれ、切断ブロック100、100´、100´´のそれぞれに取り付けることができる。これは、上述の固定凹部および固定要素によって行われる。
【0068】
図18は、本発明による外科用器具システム10bのさらなる実施形態を示す。外科用器具システム10bは、やはり切断ブロック100b、基準足部200b、およびプローブ300bを備える外科用器具1bを有する。その機能および設計に関して、外科用器具1bは、
図1~
図6による外科用器具1と実質的に同一である。第1の相違点は、基準足部200bおよびプローブ300bが切断ブロック100bに固定される方法である。取外可能な固定の代わりに、外科用器具1b内の基準足部200bおよびプローブ300bはそれぞれ、切断ブロック100b上に恒久的に取り付けられる。恒久的とは、基準足部200b及びプローブ300bがそれぞれ切断ブロック100b上に配置され取り外されるように構成されていないことを意味する。代わりに、恒久的な接合接続(図示せず、または詳細に説明せず)が、一方では基準足部200bと切断ブロック100bとの間に、他方ではプローブ300bと切断ブロック100bとの間に存在する。
【0069】
外科用器具システム10bはまた、さらなる外科用器具1b´、1b´´を有する。外科用器具1b、1b´、1b´´は、以下では、第1の外科用器具1b、第2の外科用器具1b´、および第3の外科用器具1b´´と呼ばれる。外科用器具1b、1b´、1b´´はその寸法に関して異なり、異なるサイズの大腿骨に使用するために提供される。ここで、外科用器具1b、1b´、1b´´は、それぞれの切断ブロック100b、100b´、100b´´の内外方向の寸法に関して少なくとも異なる。さらに、それぞれのプローブ300b、300b´、300b´´は、特に近位遠位方向軸に沿って、異なる寸法を有することができる。同じことが、基準足部200b、200b´、200b´´の場合に当てはまり得る。
【外国語明細書】