(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131136
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】2層フィードバック制御システム及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
G05B 13/02 20060101AFI20230913BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G05B13/02 A
H02M3/155 P
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023034150
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】63/269,041
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/048,852
(32)【優先日】2022-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/435,214
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/177,765
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521287935
【氏名又は名称】エクスメムス ラブズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジェム ユエ リヤーン
(72)【発明者】
【氏名】張 傑堯
(72)【発明者】
【氏名】シイ‐シュヨン チェン
【テーマコード(参考)】
5H004
5H730
【Fターム(参考)】
5H004GA14
5H004HA14
5H004HB14
5H004KB01
5H004KC31
5H004KC39
5H004KD61
5H004LA12
5H730AS01
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD16
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】さまざまな動作条件下で一貫した結果を生み出すことができるフィードバック制御システム、及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、フィードバック制御システムを開示する。フィードバック制御システムは、制御信号に従って出力を生成するように構成されているプラントと、入力信号と測定された出力信号との間の第1差分を生成するように構成されている第1合計ブロックと、第1差分が第1閾値未満に減少するように、又は第1閾値未満であるように、制御信号を生成するように構成されている第1コントローラとを備えている。第1コントローラは、テーブルを記憶するように構成されているメモリを含み、テーブルは、複数の動作条件に対応する複数の伝達関数の情報を含む。第1コントローラは、プラントが動作する動作条件を決定し、動作条件に対応する伝達関数を利用して、伝達関数と第1差分とに従って制御信号を生成することを選択する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に従って出力を生成するように構成されているプラントと、
入力信号と測定された出力信号との間の第1差分を生成するように構成されている第1合計ブロックと、
前記第1差分が第1閾値未満に減少するように、又は前記第1閾値未満であるように、前記制御信号を生成するように構成されている第1コントローラとを備え、
前記第1コントローラは、テーブルを記憶するように構成されているメモリを含み、前記テーブルは、複数の動作条件に対応する複数の伝達関数の情報を含み、
前記第1コントローラは、前記プラントが動作する動作条件を決定し、前記動作条件に対応する伝達関数を利用して、前記伝達関数と前記第1差分とに従って前記制御信号を生成することを選択する、フィードバック制御システム。
【請求項2】
前記第1コントローラは、前記入力信号又は測定された前記出力信号に従って前記動作条件を決定する、請求項1記載のフィードバック制御システム。
【請求項3】
前記テーブルは、複数の行を有する2次元アレイを含み、
複数の前記行は、前記複数の動作条件に対応する複数の離散化された伝達関数を表す、請求項1記載のフィードバック制御システム。
【請求項4】
前記第1コントローラは、前記入力信号又は測定された前記出力信号に従って、前記テーブルの行インデックスを決定する、請求項1記載のフィードバック制御システム。
【請求項5】
前記第1コントローラは、前記第1差分に従って、前記テーブルの列インデックスを決定する、請求項1記載のフィードバック制御システム。
【請求項6】
さらに、
前記メモリに結合されている第2コントローラと、
前記第2コントローラに結合され、第2差分を生成するように構成されている第2合計ブロックとを備え、
前記第2コントローラは、前記第2差分に従って、前記テーブルに含まれる前記情報を更新するように構成され、その結果、前記第2差分は、第2閾値未満に減少し、又は前記第2閾値未満である、請求項1記載のフィードバック制御システム。
【請求項7】
前記プラントが第1動作条件で動作すると前記第1コントローラが決定した場合に、前記第2合計ブロックは、前記第1動作条件に対応する意図された量を受領し、
前記第2合計ブロックは、前記意図された量と、前記第1動作条件に対応する実際の量との間の前記第2差分を生成し、
前記第2コントローラは、前記第2差分に従って、前記第1動作条件に対応する第1情報を更新し、その結果、前記第1動作条件に対応する前記第2差分は、前記第2閾値未満に減少し、又は前記第2閾値未満である、請求項6記載のフィードバック制御システム。
【請求項8】
前記第1コントローラは、前記プラントに対して前記第1動作条件に対応する第1制御信号を生成し、前記プラントは、前記第1制御信号に従って第1出力を動作させて生成し、
前記第2合計ブロックは、前記第1出力に従って前記第1動作条件に対応する前記実際の量を取得する、請求項7記載のフィードバック制御システム。
【請求項9】
フィードバック制御システムは、センサを備え、
前記センサは、前記第1出力に従って第1の測定された出力信号を生成し、
フィードバック制御システムは、サブ回路を備え、前記サブ回路は、前記センサに結合され、前記第1の測定された出力信号に従って前記第1動作条件に対応する前記実際の量を生成するように構成されている、請求項8記載のフィードバック制御システム。
【請求項10】
フィードバック制御システムは、アクチュエータを駆動するように構成されている、請求項1記載のフィードバック制御システム。
【請求項11】
前記プラントは、負荷に対してDC-DC(直流から直流へ)動作を実行するように構成されているスイッチング回路を含み、
前記DC-DC動作は、充電動作又は放電動作である、請求項1記載のフィードバック制御システム。
【請求項12】
前記プラントはさらに、前記スイッチング回路を制御するために、PWM信号を生成するように構成されているパルス幅変調(PWM)信号発生器を含む、請求項11記載のフィードバック制御システム。
【請求項13】
前記第1コントローラは、前記PWM信号発生器に対して前記制御信号としてパルス幅制御コード(PWCC)を生成し、その結果、前記PWM信号発生器によって発生された前記PWM信号は、前記PWCCに対応するパルス幅を有する、請求項12記載のフィードバック制御システム。
【請求項14】
前記テーブルは、2次元(2D)アレイを含み、前記2次元アレイのエントリは、パルス幅制御コードである、請求項12記載のフィードバック制御システム。
【請求項15】
フィードバック制御システムは、測定された前記出力信号としてフィードバック信号を生成するように構成されているアナログ/デジタル変換器(ADC)を含み、
前記第1コントローラは、前記入力信号、又は前記ADCによって生成された前記フィードバック信号に従って、動作サイクルについて行インデックスを決定する、請求項12記載のフィードバック制御システム。
【請求項16】
前記第1合計ブロックは、前記ADCに結合され、前記第1合計ブロックは、前記入力信号と、前記ADCによって生成された前記フィードバック信号との間の前記第1差分を生成するように構成され、
前記第1コントローラは、前記入力信号と前記フィードバック信号との間の前記第1差分に従って、前記動作サイクルについて列インデックスを決定する、請求項15記載のフィードバック制御システム。
【請求項17】
さらに、
前記メモリに結合されている第2コントローラと、
前記ADCに結合され、第2差分を生成するように構成されている第2合計ブロックとを備え、
前記第2コントローラは、前記第2差分に従って、前記テーブルに記憶されたパルス幅制御コード(PWCC)を更新し、その結果、前記第2差分は、第2閾値未満に減少し、又は前記第2閾値未満である、請求項12記載のフィードバック制御システム。
【請求項18】
前記第1コントローラが、動作サイクルについて前記テーブルのテーブルアドレスから元のPWCCをフェッチした場合に、前記第2合計ブロックは、動作サイクルに対応する前記負荷の意図された電圧差を受領し、
前記第2合計ブロックは、前記意図された電圧差と、前記テーブルアドレスに対応する実際の電圧差との間の前記第2差分を生成し、
前記第2コントローラは、前記第2差分に従って、更新されたPWCCを生成し、その結果、前記テーブルアドレスに対応する前記第2差分は、前記第2閾値未満に減少し、又は前記第2閾値未満であり、
更新された前記PWCCは、前記テーブルの前記テーブルアドレスに保存される、請求項17記載のフィードバック制御システム。
【請求項19】
前記PWM信号発生器は、前記元のPWCCに従って前記PWM信号を生成し、
前記動作サイクルの間に、前記スイッチング回路は前記PWM信号に従って前記DC-DC動作を行い、
前記動作サイクルの間に、前記スイッチング回路が前記DC-DC動作を行った後、前記プラントは、第1出力を生成し、
前記第2合計ブロックは、前記第1出力に従って、前記テーブルアドレスに対応する前記実際の電圧差を取得する、請求項18記載のフィードバック制御システム。
【請求項20】
前記ADCは、前記第1出力に従って第1フィードバック信号を生成し、
フィードバック制御システムは、サブ回路を備え、前記サブ回路は、前記ADCに結合され、前記第1フィードバック信号に従って前記テーブルアドレスに対応する前記実際の電圧差を生成するように構成されている、請求項19記載のフィードバック制御システム。
【請求項21】
前記テーブルアドレスは、行インデックスと列インデックスとを含み、
前記意図された電圧差は、前記列インデックスに関連する、請求項18記載のフィードバック制御システム。
【請求項22】
制御信号に従って出力を生成するように構成されているプラントを含む、フィードバック制御システムに適用される方法であって、
前記プラントが動作する動作条件を決定するステップと、
複数の伝達関数の中から前記動作条件に対応する伝達関数を利用することを選択するステップと、
前記伝達関数に従って前記制御信号を生成するステップとを備え、
フィードバック制御システムは、テーブルを記憶するように構成されているメモリを含み、前記テーブルは、複数の動作条件に対応する前記複数の伝達関数の情報を含む、方法。
【請求項23】
前記テーブルは、複数の行を有する2次元(2D)アレイを含み、
複数の前記行は、前記複数の動作条件に対応する複数の離散化された伝達関数を表し、
方法は、
入力信号又は測定された出力信号に従って、前記テーブルの行インデックスを決定するステップと、
前記入力信号と測定された前記出力信号との間の第1差分に従って、前記テーブルの列インデックスを決定するステップとを備えている、請求項22記載の方法。
【請求項24】
さらに、
意図された量と、第1動作条件に対応する実際の量との間の第2差分を生成するステップと、
前記第2差分に従って、前記テーブルに含まれる前記情報を更新するステップとを備えている、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記テーブルは、複数の行を有する2次元(2D)アレイを含み、
複数の前記行は、前記複数の動作条件に対応する複数の離散化された伝達関数を表し、
方法は、
意図された量と、前記動作条件に対応する実際の量との間の第2差分を生成するステップと、
前記第2差分に従って、前記テーブルに含まれるエントリを更新するステップとを備えている、請求項22記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、フィードバック制御システム、さらに詳しくは、さまざまな動作条件下で一貫した結果を生み出すことができるフィードバック制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィードバック制御システム(FCS)、即ち閉ループ制御システムは、さまざまな用途に広く適用されている。
図1a又は1bに、従来のフィードバック制御システム(10a又は10bと表記)の概略図を示す。表1に、いくつかの用途を例として示す。
【0003】
FCSは、FCSが達成しようとしている望ましい値又は目標値を表すセットポイントSPを受領する。FCSは、システム出力とみなされる制御されるプロセス変数(PV)を、望ましい値又はセットポイント(SP)と比較する。プロセス変数PVは、測定されたプロセス変数MPをフィードバック信号として生成するセンサによって、監視されることができる。
【0004】
コントローラは、プロセス変数PVがセットポイントSPに近づく、例えば、|SP-PV|<εとなるように、SP-PVエラー(又は測定されたエラーe)に従って、制御変数CVを介してプラントを制御する。ここで、ε(実際の状況に応じて決定される特定の閾値として)は、SPとPVとの間の公差を表してよい。
【表1】
【0005】
FCSはさらに、追跡システムのコンテキストで使用されるように、拡張される可能性がある。この場合に、セットポイントSPとプロセス変数PVとは、時間変化し、コントローラは、|SP(t)-PV(t)|<εの収束条件を追求する。ここで、SP(t)とPV(t)とは、SPとPVとの時間変化関数を表し、|・|は絶対値演算子を表す。
【0006】
図1a及び1bのコンテキストでは、コントローラは、伝達関数F
Cを伴う単一入力/単一出力(SISO)システムである可能性がある。コントローラは、測定されたエラーe又はSP-PVエラーを受領し、制御変数CVを決定/出力する。入出力関係は、伝達関数F
C、即ちCV=F
C(e)又はCV=F
C(SP-PV)で記述できる。コントローラ又は伝達関数F
Cの目的は、PVがSPに近づくように制御変数CVを生成することである。
【0007】
プラントの動作は、さまざまな要因(又は動作条件)によって影響を受ける。PVはそれらの要因(動作条件)によって期待値/動作から影響を受け、逸脱する。
【0008】
例えば、プラントの動作中に擾乱が発生する可能性がある。その擾乱によって、逸脱したPVをプラントが生成するようになる。
【0009】
実際には、プラントの動作中に要因(動作条件)が変化する可能性がある。例えば、車両が上り/下り勾配の丘を時折通過する可能性がある場合に、エンジン(プラント)に必要な加速度は、平地を走行する場合とは異なることが必要になる。
【0010】
さまざまな動作条件を扱う1つの解決策は、要因又は動作条件を表すパラメータに関して、コントローラ伝達関数をパラメータ化することである。
【0011】
しかし、1つの(パラメータ化された)伝達関数を、あらゆる種類のパラメータ/要因を組み込んだり適合させたりする、ユニバーサルな方法で表現することは複雑であり、又はさらに、不可能である。要因(動作条件)が定常又は静的であると仮定すると、ユニバーサル伝達関数を見つけることの複雑さは、少なくとも以下の理由による可能性がある。
・プラントの動作に影響を与える要因が多すぎる。
・パラメータが連続(可変)である可能性があり、可能な伝達関数の数が無限であることを意味する。
・観測不可能な要因があり、観測不可能な要因に応じてコントローラが伝達関数を選択することが困難である。
【発明の概要】
【0012】
また、要因(動作条件)は時間的に変動する場合があり、伝達関数FC又はFPは時間の経過とともにモーフィングする必要がある。例えば、プラント(バッテリを必要としてよい)が稼働している間、バッテリ電圧(1つの要因として機能してよい)は自然に弱くなる。プラントでの時間で変化する要因は、ユニバーサル伝達関数のモデリングを複雑にする。
【0013】
プラント内のコンポーネントの特性(例えば、静電容量、インダクタンス、抵抗)は、通常、コンポーネントごとに異なる。これらのコンポーネント特性の変動は、プラントが生成するPVにも影響を与える可能性がある。ユニバーサル伝達関数のモデリングも、複雑になる。
【0014】
さらに、プラントの入出力関係は、通常非線形である。線形性(入力と出力との間での)がその性能指数(figure of merit)であるいくつかの用途では、非線形性を考慮する必要がある。
【0015】
従って、この分野での重要な目的は、従来技術の欠点をどのように改善するかということである。
【0016】
従って、本出願の主要な目的は、従来技術の欠点を改善するために、さまざまな動作条件下で一貫した結果を生み出すことができるフィードバック制御システムを提供することである。
【0017】
本発明の実施形態は、フィードバック制御システムを開示する。フィードバック制御システムは、制御信号に従って出力を生成するように構成されているプラントと;入力信号と測定された出力信号との間の第1差分を生成するように構成されている第1合計ブロックと;第1差分が第1閾値未満に減少するように、又は第1閾値未満であるように、制御信号を生成するように構成されている第1コントローラとを備え;第1コントローラは、テーブルを記憶するように構成されているメモリを含み、テーブルは、複数の動作条件に対応する複数の伝達関数の情報を含み;第1コントローラは、プラントが動作する動作条件を決定し、動作条件に対応する伝達関数を利用して、伝達関数と第1差分とに従って制御信号を生成することを選択する。
【0018】
本発明の別の実施形態は、制御信号に従って出力を生成するように構成されているプラントを含む、フィードバック制御システムに適用される方法を開示する。方法は、プラントが動作する動作条件を決定するステップと;複数の伝達関数の中から動作条件に対応する伝達関数を利用することを選択するステップと;伝達関数に従って制御信号を生成するステップとを備え;フィードバック制御システムは、テーブルを記憶するように構成されているメモリを含み、テーブルは、複数の動作条件に対応する複数の伝達関数の情報を含む。
【0019】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、さまざまな図及び図面に示す好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読むと、当業者にとって疑いなく明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】フィードバック制御システムの概略図である。
【
図1b】フィードバック制御システムの概略図である。
【
図2】本出願の実施形態によるフィードバック制御システムの概略図である。
【
図3】本出願の実施形態によるフィードバック制御システムの概略図である。
【
図4】本出願の実施形態によるフィードバック制御スキームの概略図である。
【
図5】
図4のフィードバック制御スキームの詳細を示す。
【
図6】本出願の実施形態によるフィードバック制御システムの概略図である。
【
図7】本出願の実施形態によるフィードバック制御システムの概略図である。
【
図8】本出願の実施形態によるプラントの概略図である。
【
図9】本出願の実施形態によるPWM信号発生器の概略図である。
【
図10】本出願の実施形態によるスイッチング回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
観測可能なプラント動作に影響を与えるさまざまな要因に関して、コントローラは、いくつかの伝達関数FC,mをコントローラ内に記憶してよい(FCSが動作する前)。ここで伝達関数FC,mは、第m動作条件に対応する。コントローラは、プラントが第m動作条件の下にあることを観測及び決定し、SP-PVエラーに従って、制御変数CVを生成するための伝達関数としてFC,mを利用することを選択/決定してよい。
【0022】
本出願のフィードバック制御システム(内のコンポーネント)は、本出願では、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プロセッサなどの論理回路、又は、それに限定されないいくつかの既存のモジュール又は回路コンポーネントを介して実施されてよい。
【0023】
図2は、本出願の実施形態によるFCS20を示す。FCS20は、
図1aに示したFCS10aに類似する。しかし、FCS10aとは異なり、FCS20はコントローラctrl_0を含む。コントローラctrl_0は、メモリ22を含む。コントローラctrl_0は、直接記憶された複数の制御伝達関数F
C,1ないしF
C,Mを有してよい。又は、伝達関数F
C,1ないしF
C,Mが、取得又は完全に再現/再構築されることができる情報又はパラメータを、コントローラctrl_0は有してよい。ここで、制御伝達関数F
C,1ないしF
C,Mの情報/パラメータ、又は関数F
C,1ないしF
C,M自体が、メモリ22に記憶されてよい。
【0024】
コントローラctrl_0(例:SP又はPV/MP)によって観測可能である信号に基づいて、コントローラctrl_0は、プラントが現在どの動作条件にあるかを決定することができる。その後、コントローラctrl_0は、制御変数CVを生成するために、対応する伝達関数を使用することを選択する。例えば、コントローラctrl_0は、コントローラctrl_0によって観測可能である信号に従って、プラントが動作条件m(mは動作条件インデックス)にあることを決定してよい。コントローラctrl_0は、その後、対応する伝達関数FC,mを使用して、SP-PV又はSP-MPエラーに従って制御変数CVを生成することを選択してよい。
【0025】
さらに、非線形性に関しては、システム全体(例えば、プラント)を、複数の区分的線形サブシステムに分割すること、又は、システム全体(例えば、プラント)を、複数の区分的線形サブシステムの集合体とみなすことによる、分割統治法が採用されている。これにアプローチする1つの方法は、伝達関数、例えばFC,iをテーブル内の行ベクトルの形式に離散化することである。このように、伝達関数を参照して制御変数CVを生成することは、テーブルを参照して制御変数CVを生成することと同じである。
【0026】
コントローラで、又はコントローラにより複数の伝達関数を保持し、複数の伝達関数を離散化するというアイデアを組み合わせて、2次元(2D)マッピングテーブルをコントローラに記憶してよい。ここで、テーブルの行iは、動作条件iに対応する伝達関数FC,iの離散化形式を表している。なお、行インデックス(本出願で)も、動作条件インデックスとみなされることに留意するものとする。
【0027】
一実施形態では、連続入力変数(例:SP-PVエラー)内の伝達関数(例:FC,i(e))を離散化することは、時間で変化する関数(例:x(t))をサンプリングしてx(nTS)を抽出する時間サンプリングプロセスに類似してよい。この場合に、伝達関数FC,iの離散化形式は、[FC,i]D=[FC,i(Δ),FC,i(2・Δ),...,FC,i(N・Δ)](数式1)と表してよい。ここで、[・]Dは離散化プロセスに対応する離散化演算子を定義し、Δは離散化プロセスの単位ステップサイズであり、時間サンプリングプロセスにおけるサンプリング間隔TSのアナロジーである。
【0028】
数式1では、離散化プロセスは、ステップサイズ(Δ、ただしe=n・Δ)の整数倍である入力引数(例:e)に対応する関数値を抽出するが、これに限定されない。離散化プロセスの入力引数は、Δの任意の特定の分布に従ってよい。つまり、離散化された伝達関数FC,I(又はFC,i)は、[FC,i]D=[FC,i(Δ1),FC,i(Δ2),...,FC,i(Δn),...,FC,i(ΔN)]と表してよいことを意味する。Δnは、実用的な要件に応じて、nに関してバリアントであってよく、これは本発明の範囲内である。
【0029】
図3は、本出願の実施形態によるFCS30を示す。FCS30は、FCS20と類似する。しかし、FCS20とは異なり、FCS30はコントローラctrl_1を含み、コントローラctrl_1は2DテーブルLUTが記憶されたメモリ32を含む。本出願ではLUTは、2Dテーブルの表記、又は用語、ルックアップテーブルの省略形のいずれかを表してよく、これらは交換可能に使用される。
【0030】
前述のように、テーブルLUTの第m行(又は行m)は、伝達関数FC,mの離散化形式を表し、例えば、[FC,m]D=[FC,m(Δ),FC,m(2・Δ),...,FC,m(N・Δ)]となり、行mの各エントリ(FC,m(n・Δ)と表記される)は、伝達関数FC,mのセグメント(例:セグメントn)の代表値である。この点、ここでの列インデックスも、セグメントインデックスとみなされる。
【0031】
コントローラctrl_1(例:SP又はPV/MP、又はコントローラctrl_1の、又はコントローラctrl_1への、その他の入力)によって観測可能である信号(又は収集可能である情報)に応じて、コントローラctrl_1は、プラントが現在どの動作条件にあるかを決定することができる。言い換えれば、コントローラctrl_1によって収集された観測可能な信号又は情報に応じて、コントローラctrl_1は、動作条件インデックスmをテーブルLUTの行インデックスmとして決定してよい。一方、SP-PVエラー(又は
図1bに示す測定されたエラーe)に応じて、コントローラctrl_1は、それ(ctrl_1)が伝達関数F
C,mのどのセグメントmを参照したいかを決定してよい。つまり、SP-PVエラー(又はSP-MPエラー、即ち測定されたエラーe)に応じて、コントローラctrl_1は、セグメントインデックスn、即ちテーブルLUTの列インデックスnを決定してよい。
【0032】
FCS内のセンサは、簡潔にするため、
図2及び
図3では省略している。実際には、
図1bのようにセンサを含めてよい。従って、合計ブロックSB1は、PV又はMPを受領してよい。状況によっては、合計ブロックSB1によって受領されたPVはさらに、MP、測定プロセス変数、又は測定出力と呼ばれてよい。
【0033】
テーブルLUTの行アドレスと列アドレスとを示すタプル(m,n)が与えられると、コントローラctrl_1はテーブルLUTを検索してよく、テーブルLUTのアドレス(m,n)のエントリをフェッチしてよく、テーブルLUTの第(m,n)エントリに従って制御変数CV(m,n)を生成してよく、又はテーブルLUTの第(m,n)エントリとして制御変数CV(m,n)を直接生成してよい。
【0034】
時間で変化する伝達関数(又はテーブル)に関しては、適応/学習メカニズムを採用して、伝達関数又はテーブルを調整し、時間で変化する要因、又はコンポーネントごとに変化する要因、又は観測可能でない要因に対応されてよい。さらに、適応アルゴリズムは、フィードバック制御メカニズムによって実現されてよい。
【0035】
図4は、本出願の実施形態によるフィードバック制御スキーム40を示す。プラントの動作に影響するいくつかの要因が時間の経過とともに変化するか、又はコンポーネントごとに変化することを考慮すると、フィードバック制御スキーム40は、時間の経過が生じた場合に、又は時間の経過とともに、テーブルLUT(
図3に示す)又は複数の伝達関数(
図2に示す)の信頼性及び/又は有効性を維持するように構成されている。
【0036】
一実施形態では、フィードバック制御スキーム40は、FCS30の内部に埋め込まれてよい。例えば、
図4に示すコントローラctrl_2と合計ブロックSB2とは、FCS30内のコントローラctrl_1内の回路の一部であってよく、
図4に示すプラントと
図3に示すプラントとは、同じデバイスであってよい。
【0037】
図4を参照すると、制御変数CV
(m,n)がプラントに出力された場合に、コントローラctrl_1は、PV
intend
(m,n)の情報を有していてよい。これはプラントにCV
(m,n)を適用した場合のPVの意図された値である。コントローラctrl_1は、フィードバック制御スキーム40にPV
intend
(m,n)を提供する。FCS10と同様に、コントローラctrl_2は、PV
actual
(m,n)がPV
intend
(m,n)に近づくようにCV
(m,n)を調整することを試行し、PV
intend
(m,n)は、フィードバック制御スキーム40のセットポイントの役割として機能する。
【0038】
フィードバック制御スキーム40の詳細は、
図5で、参照することができる。テーブルLUTの第(m,n)エントリが取得されて制御変数が生成されると、コントローラctrl_1は、フィードバック制御スキーム40にPV
intend
(m,n)を通知し、元の制御変数CV
org
(m,n)をプラントに出力する。プラントは、CV
org
(m,n)に従って動作し、結果的なPV
actual
(m,n)は、合計ブロックSB2にフィードバックされる。合計ブロックSB2は、エラーPV
intend
(m,n)-PV
actual
(m,n)を生成する。エラーPV
intend
(m,n)-PV
actual
(m,n)に従って、コントローラctrl_2は、|PV
intend
(m,n)-PV
actual
(m,n)|を最小化するために、更新された制御変数CV
upd
(m,n)を生成する(又は、更新された制御変数CV
upd
(m,n)を生成する基礎となれるパラメータを生成する)。更新された制御変数CV
upd
(m,n)(又は相対パラメータ)は、アドレス(m,n)でLUTに、逆に書き込まれる。
【0039】
図5に示され、CV
org
(m,n)及びCV
upd
(m,n)と表記されている矢印は、それ自体がCV
org
(m,n)とCV
upd
(m,n)とを指し示してよく、又は、CV
org
(m,n)とCV
upd
(m,n)とを生成する基礎となれる情報/パラメータを指し示してよいことに留意するものとする。
【0040】
ある観点(perspective,態様)では、
図5は、フィードバック制御スキーム40がテーブルLUTの第(m,n)エントリに対して特別に動作することを示す。
図5に示すフィードバック制御スキーム40の反復は、テーブルLUTの第(m,n)エントリがフェッチされたときに開始され、テーブルLUTの第(m,n)エントリが書き換えられたときに終了してよい。もう1つの反復では、フィードバック制御スキーム40は別の第(m’,n’)エントリに対して機能してよく、第(m,n)エントリに対する適応は一時的に凍結される。
【0041】
本出願では、FCS30とフィードバック制御スキーム40とを組み合わせることにより、2層フィードバック制御システム60を提案し、
図6に示す。フィードバック制御システム60は、その中に2層フィードバック制御スキームを備えている。
【0042】
第1層フィードバック制御スキームは、
図6の太い実線で示される、合計ブロックSB1と、コントローラctrl_1と、プラント62と、センサ64とを含み、制御変数CVを生成するように構成され、これにより、コントローラctrl_1に含まれるメモリ66内に記憶されたLUT(複数の制御伝達関数を表す)に基づいて、プロセス変数PV(又は測定プロセス変数MP)がセットポイントSPに近づくようになる。LUTにより、コントローラctrl_1は、さまざまな観測可能な動作条件の中から、制御変数を生成するのに適した制御伝達関数を選択することができる。つまり、第1層フィードバック制御スキームでは、コントローラctrl_1は、制御変数CVを可能な限り最適に生成する(即ち、プラント62が置かれている動作条件を適合させる)ために、そこに記憶されているLUTを検索する。第1層フィードバック制御スキームの詳細な動作は、ここでは説明されていないが、FCS30により参照することが可能である。
【0043】
第2層フィードバック制御スキームは、合計ブロックSB2と、コントローラctrl_2と、プラント62と、センサ64とを含む(合計ブロックSB2とコントローラctrl_2とは、コントローラctrl_1の内部に埋め込まれ、プラント62とセンサ64とは、第1層フィードバック制御スキームと共有されている)。第2層フィードバック制御スキームは、通常は観測不可能である、時間で変化する要因、又はコンポーネントごとの変動に適応するLUT(伝達関数を表す)を更新するように構成される。
図6では、サブ回路602は、測定されたプロセス変数MPに従ってPV
actual
(m,n)を計算するように構成されている。第2層フィードバック制御スキームの詳細な動作は、ここでは説明しないフィードバック制御スキーム40により参照することができる。
【0044】
簡単に説明すれば、プラントの動作がさまざまな要因や動作条件によって影響を受けることを考慮すると、FCS60は、観測可能な要因や動作条件によってもたらされる変動を克服するために第1層フィードバック制御スキームを利用し、観測不可能な要因や動作条件によってもたらされる変動を克服するために第2層フィードバック制御スキームを利用する。
【0045】
表1に記載されている用途に加えて、FCSはオーディオ駆動システムに適用されてよい。例えば、米国出願第18/048,852号は、PZT作動MEMSスピーカーを駆動するように構成されたオーディオ駆動回路又はオーディオ駆動システムを開示している。米国出願第18/048,852号に開示された駆動回路は、2層フィードバック制御システムと解釈されてよい。
【0046】
図7は、本出願の実施形態による回路70を示す。回路70の動作の大部分は、米国出願第18/048,852号で教示され、回路70は、特にフィードバック制御スキーム/システムの観点から、米国出願第18/048,852号で開示された駆動回路の再解釈として見てよい。米国出願第18/048,852号で教示されているように、回路70は容量性負荷を駆動するように構成されている。米国出願第18/048,852号の実施形態として、回路70は、高容量であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)アクチュエータを駆動するオーディオ駆動システムであってよい。
【0047】
回路70は、合計ブロックSB1とコントローラctrl_1との他に、プラント72とアナログ/デジタル変換器(ADC)74とを含む。合計ブロックSB1と、コントローラctrl_1と、プラント72と、ADC74とは、第1層フィードバック制御スキームを形成する。V
CLと表記している容量性負荷(例:PZTアクチュエータ)を横切る電圧は、(第1層フィードバック制御スキームの)プロセス変数PVとして解釈されてよい。ADC74は、(第1層フィードバック制御スキームの)センサとして機能する。
図7に、フィードバック信号FBと示されているADC74の出力は、(第1層フィードバック制御スキームの)測定されたプロセス変数MPとして解釈されてよい。
【0048】
一実施形態ではPZTアクチュエータである、容量性負荷を駆動するために、駆動回路70は、その上で充電又は放電動作を行ってよい。充電動作(放電動作)は、パルス幅変調(PWM)信号によって制御されてよい。具体的には、充電動作のPWM信号のパルス幅が、VCLのインクリメントを決定し、放電動作のPWM信号のパルス幅が、VCLのデクリメントを決定する。
【0049】
米国特許第11,271,480B2号で教示されているように、PWM信号のパルス幅を細かく制御するために、パルス幅制御コード(PWCC)を利用して、それに応じてPWM信号を生成してよい。ある観点では、ここでのPWCCは、
図7に示すように、FCS70内の制御変数CVとして解釈されてよい。
【0050】
この点に関して、入力信号INがセットポイントSPとして解釈できることを考慮すると、FCS70の目的は、VCL(プロセス変数PV)又はフィードバック信号FB(測定されたプロセス変数MP)が入力信号IN(セットポイントSP)に近づくように、プラント72を制御する適切なPWCC(制御変数)を生成することである。例えば、|IN-FB|<ε1であり、ε1(実際の状況に応じて決定される一定の閾値として)はINとFBとの間の公差を表すことができる。
【0051】
図8に示すように、プラント72は、PWM信号発生器720とスイッチング回路722とを含んでよい。PWM信号発生器720は、PWCCに従ってPWM信号S
PWMを発生する。スイッチング回路722は、PWM信号S
PWMに従って充電又は放電動作を行い、PZTアクチュエータを横切る電圧又は負荷電圧V
CLが、DC-DCサイクルの間で増減するようにする。
【0052】
図9に示され、米国特許第11,271,480B2号及び/又は米国出願第18/048,852号で教示されているように、PWM信号発生器720は、デジタル/アナログ変換器(DAC)7201と、鋸歯状信号発生器7202と、コンパレータ7203とを含んでよい。DAC7201は、PWCCに従ってアナログ電圧V
Aを発生する。コンパレータ7203は、鋸歯状信号発生器7202が発生する鋸歯状信号(又は鋸歯に類似する信号)S
sawをアナログ電圧V
Aと比較し、PWM信号S
PWMが発生するようにする。この場合に、PWM信号S
PWMのパルス幅は、PWCCと同様にアナログ電圧V
Aに比例する。
【0053】
スイッチング回路722は、PWM信号SPWMに応じて、負荷電圧を上げる必要がある場合は、PZT/容量性負荷に電流を流す充電動作を行い、負荷電圧を下げる必要がある場合は、PZT/容量性負荷から電流を形成する放電動作を行う。
【0054】
スイッチング回路722の回路トポロジーは、限定されない。例えば、
図10に示され、米国特許第11,336,182B2号、米国出願第18/051,015号、及び米国出願第18/048,852号で教示されているように、スイッチング回路722は、スイッチT1ないしT4とインダクタLとを含んでよく、これはエネルギーリサイクル能力を有してよい。スイッチT1及びT2は、インダクタLの第1端子に結合され、スイッチT3及びT4は、インダクタLの第2端子に結合されている。スイッチT1は、電圧源に結合され、スイッチT3は、負荷(例えば容量性負荷)に結合されている。
【0055】
FCS/回路70内のコントローラctrl_1は、ルックアップテーブル(LUT)760が記憶されたメモリ76を含む。説明のために、メモリ76内のルックアップテーブル760は、2次元テーブルとして見てよいが、これに限定されない。ルックアップテーブル760内のエントリは、本技術では1列ずつ長い1次元アレイとして配置されてよい。これも本出願の範囲内である。
【0056】
信号INとFBとによって推論できる観測可能な動作条件に、(少なくとも)2つのタイプがある。第1タイプは、回路70が、例えば充電又は放電動作のように、次回の動作サイクル(又はDC-DCサイクル)内でどの動作をすることにするかである。第2タイプは、現在の負荷電圧VCLがどれほど大きいかである。識別される必要がある第1タイプの動作条件は、充電動作と放電動作との電流経路が異なることに起因する。識別される必要がある第2タイプの動作条件は、VCLが増加するとPZTアクチュエータの静電容量が変化(実際には減少)することに起因する。これは信号SPWMのパルス幅に影響を与え、VCLでの特定の又は具体的な変化を生じる。
【0057】
第1動作条件は、IN-FB(測定されたエラーe)で識別できる。IN-FB>0の場合は、次回のDC-DCサイクルで充電動作を行うものとすることを意味する。その他に、IN-FB<0の場合は、次回のDC-DCサイクルで放電動作を行うものとすることを意味する。
【0058】
第2タイプの動作条件は、FB又はINで識別でき、FB又はINのいずれかが負荷電圧VCLの適切な推定を提供する(また、INを使用してVCLを近似すると、状況により安定性が向上することが可能である)。
【0059】
本出願のルックアップテーブル760の行インデックスmは、回路70が次回の動作サイクルでどのような動作を行うかだけでなく、現在の負荷電圧VCLがどの程度であるか(又は、次回の動作サイクルの初期時点でVPZTがどの程度であるか)を示す。なお、米国特許第11,271,480B2号には、PWM制御回路が、充電動作用のルックアップテーブル(第11,271,480号の201)と放電動作用のルックアップテーブル(第11,271,480号の202)とを有してよいと記載されていることに留意するものとする。ある観点では、ルックアップテーブル760は、充電動作用のルックアップテーブル(第11,271,480号の201)と、放電動作用のルックアップテーブル(第11,271,480号の202)とのスタックとして見てよい。別の観点では、ルックアップテーブル760は、充電動作用のルックアップテーブル7601と放電動作用のルックアップテーブル7602とを含んでよい。
【0060】
一方、ルックアップテーブル760の列インデックスnは、次回のDC-DCサイクルで実行されるDC-DC動作(即ち、充放電動作)を介して達成されると予想される電圧差dVがどれほど大きいかを示す。一実施形態では、達成されると予想される電圧差dVは、ステップサイズΔVのn(列インデックス)倍、即ち、dV=n×ΔVとして表現されてよい。ステップサイズΔVは、実際の状況に応じて決定されてよい。
【0061】
電圧差dVは、理想的には、測定されたエラーeの負の値であってよく、測定されたエラーeの負の値であるものとすることに留意するものとする。これは即ち、dV=-e,又はdV=-(IN-FB)である。従って、ある観点では、ルックアップテーブル760の行は、離散化された伝達関数の実施形態として見てよい。又は、第m行は、動作条件mに対する離散化された伝達関数として見てよい。
【0062】
要約すれば、sign(IN-FB)に従って、コントローラctrl_1は、いずれのDC-DC動作が実行されるものとするか(符号関数であり、ここで、x>0の場合に、sign(x)=1であり、x<0の場合に、sign(x)=-1)を決定することができる。IN又はFBに従って、コントローラctrl_1は、どの程度のV
CLかを決定することができる。|IN-FB|に従って、コントローラctrl_1は、どの程度のdVを達成する必要があるかを決定することができる。つまり、INとFBとによれば、コントローラctrl_1は、(m,n)としてテーブルインデックスを決定することができ、プラント72に対して、PWCC
(m,n)(
図7に示す)と示される対応するテーブルエントリPWCCをフェッチする。PWM信号発生器720は、S
PWMを生成することができ、それに応じてスイッチング回路722がDC-DC動作を実行することができる。検索テーブルのアドレスの詳細は、米国特許第11,271,480B2号及び/又は特許米国出願第18/048,852号で参照することが可能であるが、ここでは簡潔にするために説明しない。
【0063】
ただし、前述したように、(離散化された)伝達関数又はテーブルは、さまざまな観測不可能な要因によってモーフィングする可能性がある。モーフィング伝達関数又はテーブルを引き起こす(観測不可能な)要因の1つは、PZTアクチュエータの誘電率/容量、及び/又はスイッチング回路722内のインダクタのインダクタンスなど、回路パラメータの変動である可能性がある。インダクタの公差は、±20%までであることに留意するものとする。これは通常の状況として扱われるが、インダクタを通過する電流に大きく影響する。もう1つの(観測不可能な)要因は、バッテリ電圧レベルの変動であり、使用時間の経過とともに減衰したり、及び/又はバッテリの充電時に昇圧したりする可能性がある。これらの要因はすべて、スイッチング回路722によって駆動される電流の量に影響を与え、dVactualと表記され負荷に実際に適用される電圧差は、特定の動作サイクルの間で、dVintendと表記され負荷に予想/意図された電圧差から、逸脱することになる。このような逸脱により、全高調波歪み(THD)などの歪みが発生し、オーディオシステムのパフォーマンスが低下する。
【0064】
このような問題を克服するための解決法は、テーブルのエントリを適応的に調整する第2層フィードバック制御スキームを採用することである。同様に、
図7の回路70の第2層フィードバック制御スキームは、合計ブロックSB2と、コントローラctrl_2と、プラント72と、ADC74とを含む。一実施形態では、合計ブロックSB2とコントローラctrl_2とがコントローラctrl_1の内部に埋め込まれてよく、プラント72とADC74とが第1層フィードバック制御スキームと共有されている。
【0065】
動作サイクルkの場合に、コントローラctrl_1は、PWCCorg
(m,n)をPWCC(m,n)としてプラント72に出力してよく、プラント72は、PWCC(m,n)に基づいてDC-DC動作を行うことができる。動作サイクルkの終わりに、ADC74は、VCLをフィードバック信号FBkに変換することができる。サブ回路702は、フィードバック信号FBk(現在の動作サイクルkに対応)とフィードバック信号FBk-1(以前の動作サイクルk-1に対応)を比較して、実際の電圧差dVactual
(m,n)を取得してよい。一実施形態では、サブ回路702は、実際の電圧差dVactual
(m,n)をdVactual
(m,n)=FBk-FBk-1として計算してよい。合計ブロックSB2は、実際の電圧差dVactual
(m,n)を意図された電圧差dVintend
(m,n)と比較する。コントローラctrl_2は、dVactual
(m,n)とdVintend
(m,n)との差分DDに従って、LUT760のアドレス(m,n)のPWCC(即ち、PWCC(m,n))を更新する。一実施形態では、意図された電圧差dVintend
(m,n)をdVintend
(m,n)=n×ΔVとして決定してよい。ここで、ΔVはステップサイズを表す。
【0066】
一実施形態では、合計ブロックSB2は、差分DDをdVintend
(m,n)-dVactual
(m,n)として計算してよい。
【0067】
例えば、コントローラctrl_2は、充電(放電)動作が不十分であることを差分DDが示している場合に、PWCCを増加させてよく、充電(放電)動作が過剰であることを差分DDが示している場合に、PWCCを減少させてよい。例えば、コントローラctrl_2は、実際の電圧インクリメントが意図された電圧インクリメント未満である場合(電圧インクリメントが充電動作の電圧差を表す場合)に、充電LUT内のPWCCを増加させてよい。又は、コントローラctrl_2は、実際の電圧デクリメントが意図された電圧デクリメント未満である場合(電圧デクリメントが放電動作の電圧差の量を表す場合)に、放電LUT内のPWCCを増加させてよい。一方、実際の電圧インクリメントが意図された電圧インクリメントよりも大きい場合には、コントローラctrl_2は、充電LUT内のPWCCを減少させてよい。又は、実際の電圧デクリメントが意図された電圧デクリメントよりも大きい場合には、コントローラctrl_2は、放電LUT内のPWCCを減少させてよい。
【0068】
一実施形態では、コントローラctrl_2は、PWCC(m,n)を増加させる必要がある場合に、PWCCupd
(m,n)=PWCCorg
(m,n)+1を生成してよい。PWCC(m,n)を減少させる必要がある場合に、PWCCupd
(m,n)=PWCCorg
(m,n)-1を生成してよい。ただし、これに限定されない。
【0069】
ある観点では、dVintend
(m,n)は、第2層フィードバック制御スキームのセットポイントSPとみなしてよい。dVactual
(m,n)は、第2層フィードバック制御スキームの測定プロセス変数MPとみなしてよい。
【0070】
PWCCupd
(m,n)を生成するコントローラctrl_2の詳細は、米国出願第18/048,852号を参照することが可能であるが、ここでは簡潔にするために説明しない。
【0071】
回路70内の第2層フィードバック制御スキームは、米国出願第18/048,852号でテーブル学習と呼ばれる。回路70内の第2層フィードバック制御スキームの効果は、その
図8を参照することが可能である。
図8と、これに関連する米国出願第18/048,852号の記載から分かるように、音質(sound quality)は、第2層フィードバック制御スキーム又はテーブル学習動作を適用することによって大幅に向上される。
【0072】
要約すると、プラントの運転がさまざまな要因や動作条件に影響されることを考慮すると、本出願のFCSは、複数の伝達関数を記憶したテーブルを有する第1層フィードバック制御スキームを利用して、観測可能なさまざまな動作条件に対処し;伝達関数を学習することが可能な第2層フィードバック制御スキームを利用して、観測不可能な要因を克服する。
【0073】
本出願では、PVは(システム)出力とみなされてよく、CVは制御信号とみなされてよく、SPは(システム)入力信号と見られてよく、MPは測定された出力信号と解釈されてよい。
【0074】
当業者は、本発明の教示を保持しながら、デバイス及び方法の多数の改変及び変更が行われてよいことを容易に観察することである。従って、上記の開示は、添付された請求項の内容及び範囲によってのみ制限されるものと解釈されるものとする。
【外国語明細書】