(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131137
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】化粧用抗菌性スポンジ
(51)【国際特許分類】
A45D 33/34 20060101AFI20230913BHJP
A01P 3/00 20060101ALN20230913BHJP
A01N 65/22 20090101ALN20230913BHJP
A01N 65/28 20090101ALN20230913BHJP
A01N 65/08 20090101ALN20230913BHJP
A01N 65/06 20090101ALN20230913BHJP
A01N 65/36 20090101ALN20230913BHJP
A01N 65/26 20090101ALN20230913BHJP
【FI】
A45D33/34 J
A45D33/34 G
A01P3/00
A01N65/22
A01N65/28
A01N65/08
A01N65/06
A01N65/36
A01N65/26
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034174
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2022034904
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591254958
【氏名又は名称】株式会社タイキ
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 宗十
(72)【発明者】
【氏名】中村 興司
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA03
4H011AA05
4H011BB22
4H011DA09
(57)【要約】
【課題】有機合成系抗菌剤を使用しなくても抗菌性に優れており、抗菌維持性および耐洗濯性にも優れている化粧用抗菌性スポンジ、および当該化粧用抗菌性スポンジを有し、例えば、液状ファンデーション、粉体化粧料などの化粧料を肌に塗布する際に好適に使用することができる化粧用抗菌性塗布具を提供する。
【解決手段】化粧用のスポンジであって、精油成分として植物性精油を含有していることを特徴とする化粧用抗菌性スポンジおよび当該化粧用抗菌性スポンジを有する化粧用抗菌性塗布具。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧用のスポンジであって、精油成分として植物性精油を含有していることを特徴とする化粧用抗菌性スポンジ。
【請求項2】
植物性精油がペパーミント油、ラベンダー油、ティートリー油、ユーカリ油、レモン油、ヒノキチオール油およびニーム油からなる群より選ばれた少なくとも1種の植物性精油である請求項1に記載の化粧用抗菌性スポンジ。
【請求項3】
植物性精油がスポンジを構成しているポリマーに含有されている請求項1に記載の化粧用抗菌性スポンジ。
【請求項4】
スポンジを構成しているポリマーの不揮発分100質量部あたりの植物性精油の量が0.0002~0.9質量部である請求項3に記載の化粧用抗菌性スポンジ。
【請求項5】
スポンジを構成しているポリマーがアクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、セルロース、ポリビニルアルコール、熱可塑性ポリエステル、ポリオレフィンおよび軟質ポリウレタンからなる群より選ばれた少なくとも1種のポリマーである請求項3に記載の化粧用抗菌性スポンジ。
【請求項6】
JIS L-1902(2015)の規定に基づく抗菌活性値が2.0以上であり、JIS L-1902(2015)の規定に基づくハロー幅が検出されない請求項1~5のいずれかに記載の化粧用抗菌性スポンジ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の化粧用抗菌性スポンジを有する化粧用抗菌性塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用抗菌性スポンジに関する。さらに詳しくは、本発明は、抗菌性、抗菌維持性および耐洗濯性に優れている化粧用抗菌性スポンジおよび当該化粧用抗菌性スポンジを有し、例えば、液状ファンデーション、粉体化粧料などの化粧料を肌に塗布する際に好適に使用することができる化粧用抗菌性塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料を化粧用具で肌に塗布するとき、当該化粧用具に肌の皮脂、剥離した皮膚などが付着する。肌の皮脂、剥離した皮膚などが付着している化粧用具をそのままの状態で放置したとき、当該化粧用具に雑菌が繁殖し、悪臭が発生することがある。そこで、化粧用具に雑菌が発生することを防止するために、抗菌剤としてジンクピリチオンなどのピリチオン金属塩系抗菌剤、チアベンダゾールなどのチアベンゾール系抗菌剤などの有機合成系抗菌剤が当該化粧用具に含有されている(例えば、特許文献1の請求項1および特許文献2の段落[0059]参照)。
【0003】
しかし、近年、人体に対する安全性および環境保護の観点から有機合成系抗菌剤の使用が規制される方向にあることから、有機合成系抗菌剤を化粧用具に使用しなくても抗菌性を有する化粧用具の開発が望まれている。
【0004】
また、化粧用抗菌性塗布具に化粧料が付着したとき、当該化粧用抗菌性塗布具を衛生に保つために、一般に当該化粧用抗菌性塗布具が洗浄される。しかし、有機合成系抗菌剤が使用されている化粧用抗菌性塗布具を洗浄したとき、付着した化粧料とともに有機合成系抗菌剤が化粧用抗菌性塗布具から除去されるため、当該化粧用抗菌性塗布具の抗菌性を維持することができなくなるのみならず、当該化粧用抗菌性塗布具から除去された有機合成系抗菌剤が排水されることから自然環境への影響が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-85034号公報
【特許文献2】特開2017-123907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、有機合成系抗菌剤を使用しなくても抗菌性に優れており、抗菌維持性および耐洗濯性にも優れている化粧用抗菌性スポンジ、および当該化粧用抗菌性スポンジを有し、例えば、液状ファンデーション、粉体化粧料などの化粧料を肌に塗布する際に好適に使用することができる化粧用抗菌性塗布具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) 化粧用のスポンジであって、精油成分として植物性精油を含有していることを特徴とする化粧用抗菌性スポンジ、
(2) 植物性精油がペパーミント油、ラベンダー油、ティートリー油、ユーカリ油、レモン油、ヒノキチオール油およびニーム油からなる群より選ばれた少なくとも1種の植物性精油である前記(1)に記載の化粧用抗菌性スポンジ、
(3) 植物性精油がスポンジを構成しているポリマーに含有されている前記(1)に記載の化粧用抗菌性スポンジ、
(4) スポンジを構成しているポリマーの不揮発分100質量部あたりの植物性精油の量が0.0002~0.9質量部である前記(3)に記載の化粧用抗菌性スポンジ、
(5) スポンジを構成しているポリマーがアクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、セルロース、ポリビニルアルコール、熱可塑性ポリエステル、ポリオレフィンおよび軟質ポリウレタンからなる群より選ばれた少なくとも1種のポリマーである前記(3)に記載の化粧用抗菌性スポンジ、
(6) JIS L-1902(2015)の規定に基づく抗菌活性値が2.0以上であり、JIS L-1902(2015)の規定に基づくハロー幅が検出されない前記(1)~(5)のいずれかに記載の化粧用抗菌性スポンジ、および
(7) 前記(1)~(5)のいずれかに記載の化粧用抗菌性スポンジを有する化粧用抗菌性塗布具
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機合成系抗菌剤を使用しなくても抗菌性に優れており、抗菌維持性および耐洗濯性にも優れている化粧用抗菌性スポンジ、および当該化粧用抗菌性スポンジを有し、例えば、液状ファンデーション、粉体化粧料などの化粧料を肌に塗布する際に好適に使用することができる化粧用抗菌性塗布具が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の化粧用抗菌性スポンジは、前記したように、精油成分として植物性精油を含有していることを特徴とする。本発明の化粧用抗菌性スポンジは、植物性精油を含有しているので、従来用いられている有機合成系抗菌剤を使用しなくても抗菌性に優れており、洗濯した後でも抗菌性が維持されることから抗菌維持性および耐洗濯性にも優れている。
【0010】
なお、本発明において、抗菌維持性は、植物性精油が化粧用抗菌性スポンジから滲出(ブリード)しがたく、植物性精油が化粧用抗菌性スポンジに保持されることによって抗菌性が維持される性質を意味する。また、本発明において、耐洗濯性は、化粧用抗菌性スポンジを洗濯した後であっても抗菌性が維持される性質を意味する。
【0011】
本発明の化粧用抗菌性スポンジに用いられる植物性精油は、天然由来のものであるため、一般に使用されている有機合成系抗菌剤とは区別される。植物性精油として、ペパーミント油、ラベンダー油、ティートリー油、ユーカリ油、レモン油、ヒノキチオール油およびニーム油が挙げられる。これらの植物性精油は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。本発明の化粧用抗菌性スポンジに用いられる植物性精油には、前述の植物性精油以外の精油が本発明の目的を阻害しない範囲内で使用されていてもよい。
【0012】
植物性精油は、通常、複数の成分の混合物である。ペパーミント油には、メントール、メントンおよび1,8-シネオールが主成分として含まれており、その他の成分としてメチルアセテート、メントフラン、イソメントン、リモネン、ピネンなどが微量成分として含まれている。ペパーミント油に含まれる各成分の含有率は、ペパーミントの茎葉を水蒸気で蒸留するときの条件などによって異なるので一概には決定することができないが、その一例として、メントール40~60質量%程度、メントン15~25質量%程度および1,8-シネオール5~10質量%程度を主成分として含有するペパーミント油が挙げられる。ペパーミント油は、前述の軟質発泡樹脂からなるスポンジとの親和性に優れており、植物性精油の溶出を防止し、耐洗濯性を向上させることができることから、本発明において好適に用いることができる。ラベンダー油には、主成分として酢酸リナリルが30~40質量%の含有率で含まれており、リモネン、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シネオール、d-ボルネオールなどの成分が含まれている。ティートリー油には、テルピネオール、シネオールなどが含まれている。ユーカリ油には、シトロネラール、シネオール、カンフェン、ピネンなどが含まれている。レモン油には、d-リモネン、シトラールなどが含まれている。ヒノキチオール油には、ヒノキチオールなどが含まれている。ニーム油には、アザディラクチンなどが含まれている。
【0013】
植物性精油のなかでは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ウレタンゴムなどのゴム、軟質ポリウレタンフォームなどの軟質発泡樹脂などからなるスポンジとの親和性に優れており、植物性精油の溶出を防止し、耐洗濯性を向上させることができることから、ペパーミント油が好ましい。
【0014】
植物性精油は、スポンジを構成するポリマーに含有されていることが好ましい。植物性精油がスポンジを構成するポリマーに含有されていることには、スポンジの原料のポリマーに植物性精油があらかじめ含有されていること、スポンジを作製した後、当該スポンジを構成しているポリマーに植物性精油が吸収されていること、およびスポンジを作製した後、当該スポンジを構成しているポリマーに植物性精油が吸着されていることが含まれる。植物性精油は、化粧用抗菌性スポンジの抗菌維持性および耐洗濯性を向上させる観点から、スポンジの原料のポリマーにあらかじめ含有されていることが好ましい。
【0015】
スポンジを構成するポリマーの不揮発分100質量部あたりの植物性精油の量は、当該植物性精油の種類によって異なることから一概には決定することができないが、スポンジに抗菌性を十分に付与する観点から、好ましくは0.0002質量部以上、より好ましくは0.0015質量部以上、さらに好ましくは0.0075質量部以上、さらに一層好ましくは0.015質量部以上であり、植物性精油によるべとつきがスポンジに付与されることを低減させるとともに、植物性精油の臭いを抑制する観点から、好ましくは0.9質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下、さらに一層好ましくは0.15質量部以下、特に好ましくは0.145質量部以下である。なお、ポリマーの不揮発分は、当該ポリマーに含まれている溶媒などの揮発性成分が除去されているポリマーを意味する。
【0016】
スポンジを構成するポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴムなどのゴム;カルボキシメチルセルロースなどのセルロース;ポリビニルアルコール;熱可塑性ポリエステル;ポリオレフィン;軟質ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂などが挙げられるが、本願発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
前記熱可塑性ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0018】
スポンジを構成するポリマーのなかでは、植物性精油との親和性に優れていることから、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴムおよび軟質ポリウレタンが好ましく、スポンジの抗菌性の維持性を向上させる観点から、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)およびスチレン-ブタジエンゴム(SBR)がより好ましく、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)がさらに好ましい。
【0019】
本発明においては、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)とペパーミント油との親和性に優れており、植物性精油の溶出を防止し、耐洗濯性を向上させるとともに、スポンジの抗菌性の維持性を向上させる観点から、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)とペパーミント油との併用が好ましい。
【0020】
ポリマーとしてゴムを用いる場合、当該ゴムをラテックスとして用いることができる。熱可塑性樹脂、セルロースなどのポリマーは、溶液、乳化液、懸濁液などの当該ポリマーに適した形態で用いることができる。ポリマーとしてポリオレフィンを用いる場合、加熱溶融させたポリオレフィンと植物性精油とを均一な組成となるように混練してもよい。ポリマーとして軟質ポリウレタンを用いる場合、当該軟質ポリウレタンの発泡体(軟質ポリウレタンフォーム)をスポンジとして用いることができる。
【0021】
本発明の化粧用抗菌性スポンジは、例えば、植物性精油とポリマーとを混合し、ポリマー中に植物性精油を分散させることによって植物性精油を含有するポリマーを調製し、当該ポリマーに、スポンジが所定の発泡倍率を有するようにポリマーに空気、窒素ガス、炭酸ガスなどの気体を混入させて当該気体の気泡をポリマー中に分散させ、当該気泡が分散しているポリマーを成形型内に充填した後、所定温度に加熱することによって化粧用抗菌性スポンジを製造する方法(以下、製法Aという)、ポリマーと植物性精油と炭酸塩、重炭酸塩などの化学発泡剤とを混合し、得られた混合物を加熱し、化学発泡剤を分解させてポリマーを発泡させることにより、化粧用抗菌性スポンジを製造する方法(以下、製法Bという)、スポンジに植物性精油を含浸させた後、必要に応じて水などの溶媒を用いて当該スポンジを洗浄することによってスポンジ内で遊離している植物性精油を除去することにより、化粧用抗菌性スポンジを製造する方法(以下、製法Cという)などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。これらの方法のなかでは、化粧用抗菌性スポンジが有する抗菌性の持続性および耐洗濯性を向上させる観点から、製法Aおよび製法Bが好ましく、製法Aがより好ましい。製法Aおよび製法Bを採用した場合、植物性精油は、ポリマー中に分散するが、ポリマーの表面に存在していてもよい。
【0022】
製法A~製法Cでは、植物性精油は、そのままの状態で用いてもよく、有機溶媒溶液として用いてもよい。有機溶媒の種類は、植物性精油の種類に応じて適宜選択して用いることが好ましい。好適な有機溶媒としては、例えば、エタノールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。植物性精油の有機溶媒溶液における植物性精油の濃度は、特に限定されず、当該植物性精油の濃度を各製法に適するように調整することが好ましい。製法Cでは、植物性精油の有機溶媒溶液を用いることが好ましく、植物性精油の濃度が10~5000ppm程度である植物性精油の有機溶媒溶液を用いることがより好ましい。
【0023】
本発明の化粧用抗菌性スポンジでは、当該化粧用抗菌性スポンジが有する抗菌性の持続性および耐洗濯性を向上させる観点から、植物性精油を含有するポリマーに気体の気泡が分散していることが好ましい。
【0024】
スポンジは、独立気泡および連続気泡のいずれを有していてもよいが、スポンジ内における植物性精油の保持性を高める観点から、連続気泡を有することが好ましい。
【0025】
化粧用抗菌性スポンジの発泡倍率は、特に限定されないが、化粧用抗菌性スポンジを例えばパフなどの化粧用抗菌性塗布具に使用するときの使用性を向上させる観点から、3~10倍程度であることが好ましい。なお、発泡倍率は、スポンジの体積をスポンジの原料であるポリマーの体積で除することによって得られる値である。スポンジに含まれている気泡の直径は、特に限定されないが、通常、0.01~50μm程度であることが好ましい。
【0026】
本発明の化粧用抗菌性スポンジには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、オリーブ油などの植物油、着色剤、芳香剤などの添加剤を含有させてもよい。添加剤は、スポンジを構成するポリマーに含有されていてもよく、スポンジを構成する気泡内に含まれていてもよい。本発明の化粧用抗菌性スポンジにオリーブ油などの植物油を含有させた場合、当該化粧用抗菌性スポンジの柔軟性を高めることができる。
【0027】
以上のようにして本発明の化粧用抗菌性スポンジを得ることができる。本発明の化粧用抗菌性スポンジは、従来の有機合成系抗菌剤を使用しなくても抗菌性を有し、例えば、液状ファンデーション、粉体化粧料などの化粧料が付着した後に当該化粧用抗菌性スポンジを洗濯した後でも抗菌性を維持することができことから耐洗濯性に優れているので、化粧用抗菌性塗布具に好適に使用することができる。
【0028】
本発明の化粧用抗菌性スポンジのなかでは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)とペパーミント油との親和性に優れており、植物性精油の溶出を防止し、耐洗濯性を向上させるとともに、スポンジの抗菌性の維持性を向上させる観点から、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)とペパーミント油とが併用されており、ペパーミント油を含有するアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)に気泡が分散しているスポンジが好ましい。
【0029】
化粧用抗菌性スポンジにおける植物性精油、有機合成系抗菌剤などの成分の種類およびその含有率は、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの分析機器を用いて特定することができる。より具体的には、化粧用抗菌性スポンジにおける植物性精油、有機合成系抗菌剤などの成分の種類およびその含有率は、例えば、化粧用抗菌性スポンジに含まれている成分を抽出溶媒で抽出することによって抽出液を調製し、ガスクロマトグラフィーを用いて当該抽出液の保持時間(リテンションタイム)および各成分のピークの大きさを調べることにより、各成分の定性分析および定量分析を行なうことができる。
【0030】
本発明の化粧用抗菌性スポンジは、JIS L-1902(2015)の規定、より具体的には以下の実施例に記載の測定方法に基づいて測定された抗菌活性値が2.0以上であり、ハロー幅が検出されないことから、抗菌維持性に優れている。
【0031】
本発明の化粧用抗菌性塗布具は、前記化粧用抗菌性スポンジを有する。化粧用抗菌性塗布具としては、例えば、化粧用スポンジパフ、洗顔用スポンジ、化粧用チップなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。化粧用スポンジパフは、化粧料をスポンジパフに取り、当該化粧料をヒトの皮膚に塗布する際に用いられるスポンジパフである。洗顔用スポンジは、洗顔料をスポンジに取り、当該洗顔料をヒトの顔の皮膚に塗布する際に用いられるスポンジである。
【0032】
本発明の化粧用抗菌性塗布具は、例えば、化粧用抗菌性スポンジの製法A~Cを利用して作製することができる。
【0033】
例えば、化粧用抗菌性スポンジの製法Aを利用して化粧用抗菌性塗布具を作製する場合、植物性精油とポリマーとを混合し、ポリマー中に植物性精油を分散させることによって植物性精油を含有するポリマーを調製し、当該ポリマーに、スポンジが所定の発泡倍率を有するように空気などの気体を混入させて当該気体の気泡をポリマー中に分散させ、当該気体の気泡が分散しているポリマーを所定形状の化粧用抗菌性塗布具に対応する内面形状を有する成形型内に充填し、当該成形型を80~130℃程度の温度に加熱することによって化粧用抗菌性スポンジを成形し、得られた化粧用抗菌性スポンジを成形型から取り出し、必要に応じて所定の厚さとなるように裁断することにより、化粧用抗菌性塗布具を作製することができる。
【0034】
例えば、化粧用抗菌性スポンジの製法Bを利用して化粧用抗菌性塗布具を作製する場合、ポリマーと植物性精油と化学発泡剤とを混合し、得られた混合物を所定形状の化粧用抗菌性塗布具に対応する内面形状を有する成形型内に充填し、当該成形型を80~130℃程度の温度に加熱することによって化学発泡剤を分解させてポリマーを発泡させ、ポリマー中に植物性精油を含有する化粧用抗菌性スポンジを成形し、得られた化粧用抗菌性スポンジを成形型から取り出し、必要に応じて所定の厚さとなるように裁断することにより、化粧用抗菌性塗布具を作製することができる。
【0035】
例えば、化粧用抗菌性スポンジの製法Cを利用して化粧用抗菌性塗布具を作製する場合、スポンジに植物性精油を含浸させて化粧用抗菌性スポンジを作製した後、必要に応じて水などの溶媒を用いて当該化粧用抗菌性スポンジを洗浄することによってスポンジ内で遊離して付着している植物性精油を除去し、当該化粧用抗菌性スポンジを必要に応じて所定の厚さとなるように裁断することにより、化粧用抗菌性塗布具を作製することができる。
【0036】
本発明の化粧用抗菌性塗布具は、本発明の化粧用抗菌性スポンジが使用されていることから、有機合成系抗菌剤を使用しなくても抗菌性に優れており、抗菌維持性および耐洗濯性にも優れており、例えば、液状ファンデーション、粉体化粧料などの化粧料を肌に塗布する際に好適に使用することができる。
【実施例0037】
次に、本発明の化粧用抗菌性スポンジを実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
実施例1~8
スポンジを構成するポリマーとしてNBRラテックス〔日本ゼオン(株)製、商品名:NIPOL LX531B、樹脂固形分含量:60質量%)100質量部、加硫剤として硫黄〔細井化学(株)製〕1.3質量部、加硫促進剤〔川口化学(株)製、商品名:アクセルMZ〕1.5質量部、加硫助剤〔ユニロイヤル(株)製、商品名:トリメンベース〕1.0質量部、酸化防止剤〔川口化学(株)製、商品名:アンテージBHT〕1.5質量部およびケイフッ化ソーダ〔三井東圧化学(株)製〕3.0質量部を均一な組成となるように混合することにより、ラテックス組成物を調製した。
【0039】
前記で得られたラテックス組成物に含まれているNBRラテックスの不揮発分100質量部あたり表1に示す植物性精油を表1に示す量で当該ラテックス組成物に添加し、均一な組成となるように混合することにより、混合物を調製した。
【0040】
前記で得られた混合物に空気を混入させることにより、当該混合物を5倍の体積に発泡させた後(発泡倍率:5倍)、当該混合物を内径が55mmであるアルミニウム製の円筒状体内に注入した。引き続いて、この円筒状体を120℃で25分間加熱することにより、円柱状のスポンジを得た。前記で得られたスポンジを円筒状体から取り出し、水洗し、乾燥させた後、厚さが8mmとなるように裁断し、縁部を研磨することにより、化粧用抗菌性スポンジを作製した。得られた化粧用抗菌性スポンジは、いずれも、連続気泡を有していた。
【0041】
〔抗菌性〕
JIS L-1902(2015)の規定に基づき、抗菌性を評価するために抗菌活性値を調べた。なお、化粧用抗菌性スポンジの異なる3箇所からスポンジ片0.4gを採取し、これを試験片とした。
【0042】
黄色ブドウ球菌(初発菌数:1.5×105CFU/mL)を含む寒天培地上に試験片を載置し、37℃の恒温室内で菌を18時間培養した後、試験片を水洗することによって菌を洗い出し、生残菌数A(CFU/mL)を測定した。なお、CFU(colony forming unit)は、コロニー形成単位を示す。
【0043】
対照として試験片を寒天培地上に載置していないものについて前記と同様にして37℃の恒温室内で菌を18時間培養した後、試験片を水洗することによって菌を洗い出し、生残菌数B(CFU/mL)を測定した。
【0044】
次に、式:
[抗菌活性値]=log(生残菌数B/生残菌数A)
に基づいて抗菌活性値を求め、以下の評価基準に基づいて抗菌性を評価した。
(評価基準)
◎:抗菌活性値が5.5以上である(合格)。
○:抗菌活性値が2.0以上5.5未満である(合格)。
×:抗菌活性値が2.0未満である(不合格)。
【0045】
〔抗菌維持性〕
JIS L-1902(2015)の規定に基づき、抗菌持続性を評価するためにハロー幅を調べた。なお、化粧用抗菌性スポンジの異なる3箇所からスポンジ片0.4gを採取し、これを試験片とした。
【0046】
黄色ブドウ球菌の菌液1mL(初発菌数:1.5×105CFU/mL)と約45℃に調整された寒天培地15mLとをシャーレ内で混合した後、当該寒天培地を室温に冷却させることによって凝固させた。余剰水は、シャーレを傾けることによって除去した。
【0047】
次に、シャーレ内の寒天培地の表面に試験片を密着させて37℃の恒温室内で24時間菌を培養させた後、試験片の周囲に形成されたハロー幅を計測し、式:
[ハロー幅(mm)]=[〔ハローの直径(mm)〕-〔試験片の長さ(mm)〕]/2
に基づいてハロー幅を求め、以下の評価基準に基づいて抗菌維持性を評価した。なお、ハロー幅が小さいほど、抗菌維持性に優れている。
【0048】
(評価基準)
◎:ハロー幅が検出されない(合格)。
×:ハロー幅が検出され、1mm未満である(不合格)。
××:ハロー幅が1mm以上である(不合格)。
【0049】
〔耐洗濯性〕
JIS L-1042(2015)の規定に基づき、中性洗剤の濃度が0.1質量%であり、水温が40℃である水溶液に試験片を30分間浸漬した後、手で100回揉み洗いを行なった後、前記と同様にして試験片の抗菌性および抗菌維持性を評価した。
【0050】
〔使用感〕
洗濯試験前の試験片の臭気およびべとつき感を調べ、以下の評価基準に基づいて使用感を評価した。
【0051】
(評価基準)
◎:試験片に臭気およびべとつき感が殆ど認められず、実使用に支障がない(合格)。
〇:試験片に臭気またはべとつき感がやや認められるが、実使用に支障がない(合格)。
△:試験片に臭気またはべとつき感が認められるが、実使用が可能である(合格)。
×:試験片に実使用に支障が生じる臭気またはべとつき感が認められる(不合格)。
【0052】
〔有機合成系抗菌剤の不使用〕
試験片に有機合成系抗菌剤が使用されているかどうかを指標として、以下の評価基準に基づいて有機合成系抗菌剤の使用を評価した。
【0053】
(評価基準)
◎:試験片に有機合成系抗菌剤が使用されていない。
×:試験片に有機合成系抗菌剤が使用されている。
【0054】
【0055】
実施例37~41
スポンジを構成するポリマーとしてNBRラテックス〔日本ゼオン(株)製、商品名:NIPOL LX531B、樹脂固形分含量:60質量%)100質量部、加硫剤として硫黄〔細井化学(株)製〕1.3質量部、加硫促進剤〔川口化学(株)製、商品名:アクセルMZ〕1.5質量部、加硫助剤〔ユニロイヤル(株)製、商品名:トリメンベース〕1.0質量部、酸化防止剤〔川口化学(株)製、商品名:アンテージBHT〕1.5質量部およびケイフッ化ソーダ〔三井東圧化学(株)製〕3.0質量部を均一な組成となるように混合することにより、ラテックス組成物を調製した。
【0056】
前記で得られたラテックス組成物に空気を混入させることにより、当該ラテックス組成物を5倍の体積に発泡させた後(発泡倍率:5倍)、当該ラテックス組成物を内径が55mmであるアルミニウム製の円筒状体内に注入した。引き続いて、この円筒状体を120℃で25分間加熱することにより、円柱状のスポンジを得た。前記で得られたスポンジを円筒状体から取り出し、水洗し、乾燥させた後、厚さが8mmとなるように裁断し、縁部を研磨することにより、化粧用スポンジを作製した。
【0057】
次に、表2に示すペパーミント油の濃度を有するペパーミント油のエタノール溶液(液温:23℃)中に前記で得られた化粧用スポンジを1時間浸漬させた後、当該化粧用スポンジを前記エタノール溶液から取り出し、当該化粧用スポンジを水洗することにより、当該化粧用スポンジ内で遊離しているペパーミント油を除去し、内温が80℃である乾燥機で当該化粧用スポンジを3時間乾燥させることにより、化粧用抗菌性スポンジを作製した。得られた化粧用抗菌性スポンジは、いずれも、連続気泡を有していた。
【0058】
次に、前記で得られた化粧用抗菌性スポンジの物性を実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
比較例1~9
実施例1において、NBRラテックスの不揮発分100質量部あたりペパーミント油0.0002質量部を用いる代わりに表3に示す有機合成系抗菌剤を表3に示す量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして化粧用抗菌性スポンジを作製した。
【0061】
次に、各比較例で得られた化粧用抗菌性スポンジを用いて実施例1と同様にして物性を評価した。その結果を表3に示す。なお、抗菌維持性のカッコ内の数値は、検出されたハロー幅を示す。
【0062】
なお、表3において、有機合成系抗菌剤の各略号は、以下のことを意味する。
ZPT:ジンクピリチオン
IPBC:ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピル
CCR:クロロクレゾール
【0063】
【0064】
表3に示された結果から、各比較例では、化粧用抗菌性スポンジに有機合成系抗菌剤が使用されていることから、当該化粧用抗菌性スポンジから除去された有機合成系抗菌剤が排水されるので自然環境への影響が懸念されることがわかる。また、各比較例で得られた化粧用抗菌性スポンジは、耐洗濯性または使用感に劣り、ハロー幅が確認されたことから抗菌維持性に劣ることがわかる。また、比較例1で得られた化粧用抗菌性スポンジには、有機合成系抗菌剤(ジンクピリチオン)が使用されており、ハロー幅(細菌の発育阻止幅)が認められ、さらに洗濯試験後にハロー幅の減少が認められることから、有機合成系抗菌剤が試験片から滲出(ブリード)し、滲出した有機合成系抗菌剤が直接的にヒトの肌に接触するおそれがあることがわかる。
【0065】
これに対して、各実施例で得られた化粧用抗菌性スポンジは、表1および表2に示されるように、有機合成系抗菌剤が使用されていないことから、当該化粧用抗菌性スポンジから有機合成系抗菌剤が排出されることがないので、自然環境に優しいという利点を有することがわかる。
【0066】
また、各実施例で得られた化粧用抗菌性スポンジは、ラベンダー油、ティートリー油、ユーカリ油、レモン油、ヒノキチオール油またはニーム油が用いられているので、抗菌性を発揮するのに充分な抗菌活性値を示すことが確認され、ハロー幅が検出されなかった。また、各実施例で得られた化粧用抗菌性スポンジは、各比較例で得られた化粧用抗菌性スポンジと対比して、抗菌活性値が100倍以上高いことが確認された。
【0067】
したがって、各実施例で得られた化粧用抗菌性スポンジは、ハロー幅が検出されないことから抗菌維持性に優れており、植物性精油の滲出により、当該植物性精油がヒトの肌に接触しがたいことがわかる。また、各実施例で得られた化粧用抗菌性スポンジを洗濯したとき、当該洗濯後でも抗菌性が維持されており、ハロー幅が検出されないので抗菌維持性に優れていることから、耐洗濯性にも優れていることがわかる。
【0068】
さらに、実施例1~7で得られた化粧用抗菌性スポンジ、なかでも実施例1~6で得られた化粧用抗菌性スポンジは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)とペパーミント油とが併用されているので、
植物性精油の溶出を防止し、耐洗濯性を向上させるとともに、スポンジの抗菌性の維持性を向上させ、使用感にも優れていることがわかる。
【0069】
したがって、本発明の化粧用抗菌性スポンジは、従来の有機合成系抗菌剤が使用されていないので、自然環境に優しく、優れた抗菌性を有しているのみならず、植物性精油が滲出(ブリード)しがたいので抗菌維持性に優れており、例えば、液状ファンデーション、粉体化粧料などの化粧料が付着した後に洗濯したときでも当該抗菌性が維持されることから耐洗濯性にも優れているので、化粧用抗菌性塗布具に好適に使用することができる。