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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013114
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ファン装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/32 20060101AFI20230119BHJP
   F04D 29/70 20060101ALI20230119BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
F04D29/32 D
F04D29/70 N
H02K7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117060
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】太田 秀岳
(72)【発明者】
【氏名】永元 里司
【テーマコード(参考)】
3H130
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB07
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC15
3H130BA52C
3H130BA52G
3H130BA73C
3H130BA73G
3H130CB07
3H130DA03Z
3H130DD02Z
3H130EA01C
3H130EA01G
3H130EA07C
3H130EA07G
3H130EB01C
3H130EB01G
5H607AA05
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB09
5H607BB14
5H607BB17
5H607BB25
5H607CC05
5H607DD14
5H607FF04
(57)【要約】
【課題】モータの軸心とファンの回転中心との位置決めを確実にしながらも、モータのベアリング部の被水を抑制することが可能なファン装置を提供する。
【解決手段】駆動源であるモータ2とモータ2により回転するファン本体3とを備えるファン装置1において、モータ2には、ファン本体3が嵌合される被嵌合部281と、被嵌合部281からベアリング部22に向かって軸方向に延在してロータヨーク232の内周壁232Bの内側に圧入された円筒状の圧入部282と、を有し、ファン本体3とベアリング部22との間をシールするシールリング28が設けられ、シャフト21の軸方向において、被嵌合部281がロータヨーク232の連結壁232Cよりもファン本体3側に位置すると共に、圧入部282におけるベアリング部22側の端部が連結壁232Cよりもベアリング部22側に位置している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端部がブラケットに固定されたシャフトと、前記シャフトの軸心周りにベアリング部を介して回転自在に支持されるロータと、前記シャフトの軸心と同心となるように前記ロータの内部に配置されて前記ロータを回転させるための磁界を発生する環状のステータと、を有するモータと、
前記シャフトの軸方向の他端部の側において締結部材により前記ロータに取り付けられて前記シャフトの軸心上を回転中心として前記ロータと一体に回転するボス部と、前記ボス部の外周から放射状に張り出された複数の羽根と、を有するファン本体と、
を備え、
前記ロータは、
前記ステータの外周側に前記シャフトの軸心と同心に配置された円筒状の外周壁と、
前記ステータの内側に前記シャフトの軸心と同心に配置されて前記ベアリング部の外周面に固定された円筒状の内周壁と、
前記シャフトの軸方向において前記ブラケットとの間に前記ステータを挟んで配置されて前記外周壁と前記内周壁とを連結する環状の連結壁と、
を有するファン装置において、
前記ボス部には、
前記回転中心と同心に形成され、前記シャフトの外周側において前記ベアリング部に向かって延在して前記回転中心の位置を前記シャフトの軸心の位置に位置決めする筒部が設けられ、
前記モータには、
前記ボス部と対向して配置され、前記筒部が嵌合される被嵌合穴が前記シャフトの軸心と同心に形成された被嵌合部と、前記被嵌合部から前記ベアリング部に向かって前記シャフトの軸方向に延在して前記内周壁の内側に圧入された円筒状の圧入部と、を有し、前記ボス部と前記ベアリング部との間をシールするシール部材が設けられ、
前記シャフトの軸方向において、前記被嵌合部が前記連結壁よりも前記ボス部側に位置すると共に、前記圧入部における前記ベアリング部側の端部が前記連結壁よりも前記ベアリング部側に位置している
ことを特徴とするファン装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファン装置において、
前記圧入部は、
前記内周壁との接触部分における前記シャフトの軸方向に沿った長さが、前記ボス部における前記被嵌合部との対向領域と前記被嵌合部との間の距離よりも長い
ことを特徴とするファン装置。
【請求項3】
請求項1に記載のファン装置において、
前記ボス部は、
周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた複数の係合部を有し、
前記シール部材の前記被嵌合部は、
前記シャフトの軸周り方向において前記複数の係合部に対応する位置に互いに間隔を空けて設けられた複数の被係合部を有している
ことを特徴とするファン装置。
【請求項4】
請求項3に記載のファン装置において、
前記複数の係合部は、
一の係合部の形状が、その他の係合部の形状と異なっており、
前記複数の被係合部は、
前記複数の係合部と同数であって、一の被係合部が前記一の係合部の形状に対応した形状に形成されている
ことを特徴とするファン装置。
【請求項5】
請求項3に記載のファン装置において、
前記複数の係合部はそれぞれ、
前記筒部の外周面において径方向の外側に向かって突出する凸部または径方向の内側に向かって凹む凹部として形成され、
前記複数の被係合部は、
複数の前記凸部の形状または複数の前記凹部の形状に対応して前記被嵌合穴の外縁が径方向に切り欠かれることにより形成されている
ことを特徴とするファン装置。
【請求項6】
請求項3に記載のファン装置において、
前記ボス部には、
前記回転中心と同心となるように前記筒部の外周側に配置された環状のプレート部材が取り付けられており、
前記複数の係合部はそれぞれ、
前記プレート部材において、前記シール部材の前記被嵌合部との対向面から前記被嵌合部に向かって突出する第1突出部、または、前記被嵌合部とは反対側に向かって窪む第1窪み部として形成され、
前記複数の被係合部はそれぞれ、
前記被嵌合部において、前記第1突出部の形状に対応して前記圧入部側に向かって窪んだ第2窪み部、または、前記第1窪み部の形状に対応して前記プレート部材の前記対向面に向かって突出する第2突出部として形成されている
ことを特徴とするファン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却風を生成するファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という)の推進に向けた取り組みが行われている。それに伴い、持続可能な生産消費形態の確保などのため、廃棄物や不良品の削減などを目指す技術が知られている。
【0003】
冷却風を生成して熱を冷ますファン装置では、一般的に、モータの軸心とファンの回転中心とがずれると回転バランスが悪くなって作動時に振動が発生し、異音が生じたり、耐久性が低下したりする。この場合、不良品の増加や新品への交換サイクルが短くなるといった問題につながるため、ファン装置を組み立てる際に、モータの軸心の位置とファンの回転中心の位置とがずれないようにモータとファンとの位置決めを行うことが求められる。
【0004】
例えば、特許文献1には、自動車などの車両に搭載されたエンジンの冷却水などを冷却するファン装置として、センターピースに一端が固定されたモータシャフトと、モータシャフトの軸心を中心に回転するロータハウジングを有するロータと、ロータハウジングに固定されロータハウジングと一体で回転するファンと、を備え、ファンは、モータシャフトとの嵌合によりモータシャフトの軸心とファンの回転中心とが一致するようモータシャフトを案内するための円筒形状の案内部を有したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/130927号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のファン装置のように、車両に搭載されてエンジンの冷却水などを冷却するファン装置は、一般的に、エンジンと共にエンジンルームに配設されている。エンジンルームは、例えば洗車時や雨天時などにおいて内部に水が浸入しやすいため、モータの内部に水が浸入しないよう、ファン装置に対して防水対策を講じる必要がある。したがって、このようなファン装置は、モータの軸心の位置とファンの回転中心の位置との位置決めを確実に行うことの他、モータ内部への水の浸入を抑制することが必要となる。
【0007】
特許文献1に記載のファン装置は、案内部を有することでモータシャフトの軸心とファンの回転中心との位置決めを行っているが、一方で、ファンとロータハウジングとが複数のネジで固定されており、これら複数のネジがそれぞれ挿通される穴部やファンとロータハウジングとの間の微小な隙間から洗水や雨水などの水がモータ内部に侵入する可能性がある。モータ内部に水が侵入すると、ベアリング部が被水して内部のグリスが流れ出てしまう場合があり、異音の発生や耐久性の低下につながるおそれがある。なお、ベアリング部を耐水仕様にすることも考え得るが、その場合にはコストが高くなってしまう。したがって、特許文献1に記載のファン装置では、SDGsにおける持続可能な生産消費形態の確保などへの貢献を十分に果たすことができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、モータの軸心とファンの回転中心との位置決めを確実にしながらも、モータのベアリング部の被水を抑制することが可能なファン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、軸方向の一端部がブラケットに固定されたシャフトと、前記シャフトの軸心周りにベアリング部を介して回転自在に支持されるロータと、前記シャフトの軸心と同心となるように前記ロータの内部に配置されて前記ロータを回転させるための磁界を発生する環状のステータと、を有するモータと、前記シャフトの軸方向の他端部の側において締結部材により前記ロータに取り付けられて前記シャフトの軸心上を回転中心として前記ロータと一体に回転するボス部と、前記ボス部の外周から放射状に張り出された複数の羽根と、を有するファン本体と、を備え、前記ロータは、前記ステータの外周側に前記シャフトの軸心と同心に配置された円筒状の外周壁と、前記ステータの内側に前記シャフトの軸心と同心に配置されて前記ベアリング部の外周面に固定された円筒状の内周壁と、前記シャフトの軸方向において前記ブラケットとの間に前記ステータを挟んで配置されて前記外周壁と前記内周壁とを連結する環状の連結壁と、を有するファン装置において、前記ボス部には、前記回転中心と同心に形成され、前記シャフトの外周側において前記ベアリング部に向かって延在して前記回転中心の位置を前記シャフトの軸心の位置に位置決めする筒部が設けられ、前記モータには、前記ボス部と対向して配置され、前記筒部が嵌合される被嵌合穴が前記シャフトの軸心と同心に形成された被嵌合部と、前記被嵌合部から前記ベアリング部に向かって前記シャフトの軸方向に延在して前記内周壁の内側に圧入された円筒状の圧入部と、を有し、前記ボス部と前記ベアリング部との間をシールするシール部材が設けられ、前記シャフトの軸方向において、前記被嵌合部が前記連結壁よりも前記ボス部側に位置すると共に、前記圧入部における前記ベアリング部側の端部が前記連結壁よりも前記ベアリング部側に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モータの軸心とファンの回転中心との位置決めを確実にしながらも、モータのベアリング部の被水を抑制することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るファン装置の一構成例を示す外観斜視図である。
図2】モータとファン本体とを分解した場合の分解斜視図である。
図3】モータの構成を示す外観斜視図である。
図4】ロータヨークを除いた状態のモータの構成を示す斜視図である。
図5】モータの軸心周りを構成する各部品を分解した場合の分解斜視図である。
図6図1におけるVI-VI線断面図である。
図7】ファン本体の裏側の構成を示す斜視図である。
図8図7におけるX部拡大図である。
図9】シールリングの構成例を示す斜視図である。
図10】シールリングをファン本体側から見た場合の平面図である。
図11】筒部の構成例を示す斜視図である。
図12】筒部をモータ側から見た場合の平面図である。
図13】本発明の実施形態の変形例1に係るシールリングの構成を示す斜視図である。
図14】変形例1に係るシールリングをファン本体側から見た場合の平面図である。
図15】変形例1に係る筒部の構成を示す斜視図である。
図16】変形例1に係る筒部をモータ側から見た場合の平面図である。
図17】本発明の実施形態の変形例2に係るシールリングの構成を示す斜視図である。
図18】変形例2に係るシールリングをファン本体側から見た場合の平面図である。
図19】変形例2に係るファン本体のボス部の中央領域を示す拡大斜視図である。
図20】変形例2に係るファン本体のボス部の中央領域をモータ側から見た場合の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るファン装置の一態様として、例えば自動車などの車両に搭載され、ラジエータ内を流れるエンジンの冷却水などを冷却するファン装置について説明する。
【0013】
(ファン装置1の全体構成)
まず、ファン装置1の全体構成について、図1および図2を参照して説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係るファン装置1の一構成例を示す外観斜視図である。図2は、モータ2とファン本体3とを分解した場合の分解斜視図である。
【0015】
ファン装置1は、駆動源であるモータ2と、モータ2により回転駆動されて冷却風を生成するファン本体3と、を備え、エンジンルーム内においてラジエータと対向するように配設されている。
【0016】
図2に示すように、ファン本体3は、複数のネジ10によってモータ2に締結される。複数のネジ10は、ファン本体3の表側(モータ2と対向する側とは反対側)から、ファン本体3の中心部となるボス部31に形成されたネジ孔に取り付けられる。
【0017】
本実施形態では、ファン本体3の回転バランスを考慮して、3つのネジ10が、ファン本体3の回転中心を中心とする円周上において等間隔となるように取り付けられる。なお、ファン本体3をモータ2に締結する締結部材として必ずしも3つのネジ10を用いる必要はなく、ファン本体3がモータ2に締結可能であれば、ネジ10の数や締結部材の種類については特に制限はない。
【0018】
(モータ2の構成)
次に、モータ2の構成について、図2~6を参照して説明する。
【0019】
図3は、モータ2の構成を示す外観斜視図である。図4は、ロータヨーク232を除いた状態のモータ2の構成を示す斜視図である。図5は、モータ2の軸心周りを構成する各部品を分解した場合の分解斜視図である。図6は、図1におけるVI-VI線断面図である。
【0020】
モータ2は、電動モータであって、アウターロータ型のブラシレスモータ201と、ブラシレスモータ201を制御するコントローラ202と、を含んで構成される。
【0021】
図2図5、および図6に示すように、ブラシレスモータ201およびコントローラ202はそれぞれ、板状のブラケット203に支持されている。ブラシレスモータ201は、ブラケット203における厚み方向の一側の面(表面)に配置されている。コントローラ202は、ブラケット203における厚み方向の他側の面(裏面)に配置されている。
【0022】
また、ブラケット203の表面の一端部には、外部ハーネスが接続されるコネクタ204が2つ取り付けられている。ブラシレスモータ201、コントローラ202、および2つのコネクタ204は、ブラケット203を介して互いに電気的に接続されている。
【0023】
ブラシレスモータ201は、シャフト21と、シャフト21の外周に設けられたベアリング部22と、シャフト21の軸心周りにベアリング部22を介して回転自在に支持されたロータ23と、ロータ23を回転させるための磁界を発生する環状のステータ24と、を有する。
【0024】
シャフト21は、図6に示すように、軸方向の一端部(基端部)がブラケット203に固定された固定軸である。なお、以下、モータ2の構成要素に関する説明において、シャフト21の軸方向を単に「軸方向」とし、シャフト21の軸心を中心とした径方向を単に「径方向」とし、シャフト21の軸心を中心とした周方向を単に「周方向」とする。
【0025】
ベアリング部22は、図5および図6に示すように、軸方向に所定の間隔を空けて並んで配置された一対の環状のベアリング22A,22Bを有する。一対のベアリング22A,22Bの間には、一対のベアリング22A,22Bの間の距離を一定(所定の間隔)に保つためのスペーサ22Cが設けられている。
【0026】
一対のベアリング22A,22Bのうち、軸方向におけるブラケット203側(図6では下側に示される方)に位置する第1ベアリング22Aは、内輪がシャフト21の外周面に接しており、外輪が後述するロータヨーク232の内周壁232Bに固定されている。
【0027】
なお、第1ベアリング22Aの内輪は、軸方向における第2ベアリング22B側(ブラケット203側とは反対側)の端部側(図6では第1ベアリング22Aの上端側)に設けられた環状のリング部材25によってシャフト21に対して固定されている。
【0028】
他方、一対のベアリング22A,22Bのうち、軸方向におけるブラケット203とは反対側(軸方向におけるファン本体3側であって、図6では上側に示される方)に位置する第2ベアリング22Bは、内輪がシャフト21の外周面に接しており、外輪が第1ベアリング22Aと同様にロータヨーク232の内周壁232Bに固定されている。
【0029】
本実施形態では、リング部材25と第2ベアリング22Bとの間には、軸方向に圧縮されたばね26が介装されている。ばね26は、第2ベアリング22Bの内輪に対して軸方向に予圧を与えることにより、第1ベアリング22Aおよび第2ベアリング22Bの耐久性を向上させている。
【0030】
ロータ23は、図4に示すように、ステータ24の外周を囲むように周方向に等間隔に並んで配置された複数(本実施形態では5つ)の磁石231と、ステータ24および複数の磁石231を覆うロータヨーク232と、を有する。
【0031】
ロータヨーク232は、図3図5、および図6に示すように、複数の磁石231の外周を囲む円筒状の外周壁232Aと、ステータ24の内側に配置されてベアリング部22の外周面(一対のベアリング22A,22Bの外輪)に固定された円筒状の内周壁232Bと、軸方向におけるブラケット203とは反対側で外周壁232Aと内周壁232Bとを連結する環状の連結壁232Cと、を有する。ロータヨーク232は、シャフト21の軸心と同心になるようにブラケット203上に配置されている。
【0032】
ステータ24および複数の磁石231は、径方向の外側を外周壁232Aで、径方向の内側を内周壁232Bで、それぞれ囲まれ、軸方向にはブラケット203と連結壁232Cとの間に挟まれた状態となっている。
【0033】
本実施形態では、図6に示すように、ロータヨーク232は、内周壁232Bにおけるブラケット203側(連結壁232Cとは反対側)の端部からシャフト21側に向かって突出する環状の当接壁232Dをさらに有する。
【0034】
当接壁232Dには、第1ベアリング22Aが環状のワッシャ27を介して軸方向に向かって突き当てられており、これにより、第1ベアリング22Aの軸方向の位置が規定されている。
【0035】
ステータ24は、図4および図6に示すように、円筒状のステータコア241と、ステータコア241の径方向の外側に突出された複数のティースに対して軸方向の両側に装着される絶縁性のインシュレータ242と、インシュレータ242上に巻き回された導電性のコイル243と、を有する。
【0036】
ステータ24は、コイル243に電流が流れることにより磁界を発生する。そして、ステータ24で発生した磁界によってロータヨーク232がシャフト21の軸心を中心として回転する。
【0037】
(ファン本体3の構成)
次に、ファン本体3の構成について、図1図2図6、および図7を参照して説明する。
【0038】
図6は、図1におけるVI-VI線断面図である。図7は、ファン本体3の裏側の構成を示す斜視図である。
【0039】
ファン本体3は、シャフト21の軸心上を回転中心としてロータ23と一体に回転するボス部31と、ボス部31の外周から放射状に張り出された複数(本実施形態では7枚)の羽根32と、隣り合う羽根32同士を先端部の側で連結する複数(本実施形態では7つ)の連結部材33と、を有する。
【0040】
ボス部31は、図6および図7に示すように、ロータ23の連結壁232Cと対向して配置された円盤状の円盤部311と、円盤部311の外縁からロータ23の外周壁232Aの外周側に延出して複数の羽根32が取り付けられた周壁部312と、を含む。
【0041】
また、ボス部31には、回転中心と同心に形成され、シャフト21の外周側においてベアリング部22に向かって延在する有底筒状の筒部313が円盤部311の中央領域に設けられている。この筒部313は、ファン本体3の回転中心の位置をシャフト21の軸心の位置に位置決めする。なお、ファン本体3の回転中心とシャフト21の軸心との位置合わせ(ファン本体3とモータ2との軸出し)については後述する。
【0042】
本実施形態では、図6および図7に示すように、ボス部31には、環状のプレート部材としてのファンプレート310が筒部313の外周側に取り付けられている。筒部313の外周とファンプレート310の内周との間には、所定の隙間が空いており、この所定の隙間に後述するシールリング28が嵌合されている。
【0043】
このファンプレート310には、複数のネジ10が挿通される複数の挿通孔が形成されており、図6に示すように、複数のネジ10はそれぞれ、ボス部31の円盤部311とファンプレート310とロータヨーク232の連結壁232Cとを一緒に締結している。
【0044】
(ファン装置1における軸出しおよびシール構造)
次に、ファン装置1におけるファン本体3とモータ2との軸出し、およびファン装置1のシール構造について、図3~6および図8~12を参照して説明する。
【0045】
図8は、図7におけるX部拡大図である。図9は、シールリング28の構成例を示す斜視図である。図10は、シールリング28をファン本体3側から見た場合の平面図である。図11は、筒部313の構成例を示す斜視図である。図12は、筒部313をモータ2側から見た場合の平面図である。
【0046】
前述したように、ファン本体3はモータ2(ロータ23)に対して複数のネジ10で締結されているのみであるため、例えば洗車時や雨天時などにおいて、エンジンルーム内に侵入した水が、複数のネジ10のネジ孔の隙間やファン本体3とロータヨーク232との間の微小な隙間などからブラシレスモータ201の内部に浸入する可能性がある。
【0047】
そこで、ブラシレスモータ201には、ファン本体3のボス部31とベアリング部22との間をシールするシール部材としてシールリング28が設けられており、これにより、ベアリング部22への水の侵入を抑制している。
【0048】
シールリング28は、図6に示すように、筒部313の外周とファンプレート310の内周との間の隙間であって、円盤部311とベアリング部22(第2ベアリング22B)との間に配置されている。
【0049】
シールリング28は、円盤部311(ボス部31)と対向して配置されて筒部313が嵌合される被嵌合穴281Aが形成された被嵌合部281と、被嵌合部281からベアリング部22に向かって軸方向に延在してロータヨーク232の内周壁232Bの内側に圧入された円筒状の圧入部282と、を有している。
【0050】
図6に示すように、シールリング28は、被嵌合部281が軸方向において連結壁232Cよりもボス部31側に位置すると共に、圧入部282におけるベアリング部22側の端部が連結壁232Cよりもベアリング部22側に位置している。このように、ファン装置1では、シールリング28を用いてボス部31とベアリング部22との間をシールすることにより、ベアリング部22への水の侵入を抑制している。
【0051】
さらに、本実施形態では、図8に示すように、圧入部282は、内周壁232Bとの接触部分における軸方向に沿った長さH1が、円盤部311における被嵌合部281との対向領域と被嵌合部281との間の距離H2よりも長く設定されている(H1>H2)。
【0052】
これにより、仮に、シールリング28が緩んでボス部31側にずれてしまった場合であっても、圧入部282が内周壁232Bに圧入された状態を維持することができるため、シールリング28によるボス部31とベアリング部22との間のシール性の向上を図ることが可能となる。
【0053】
シールリング28の被嵌合部281に形成された被嵌合穴281Aは、シャフト21の軸心と同心に形成されて軸方向に貫通する貫通穴である。したがって、ファン本体3は、回転中心と同心に形成された筒部313が被嵌合穴281Aに嵌合することにより、回転中心の位置をシャフト21の軸心の位置に正確に一致させることができる。
【0054】
すなわち、シールリング28は、ボス部31とベアリング部22との間をシールするシール部材としての役割に加え、ファン本体3の回転中心とシャフト21の軸心との位置合わせ(ファン本体3とモータ2との軸出し)の役割を果たしている。
【0055】
本実施形態では、図9および図10に示すように、被嵌合穴281Aは、外縁が径方向の外側に向かって切り欠かれて形成された3つの切り欠き部283を有する。図10に特に示すように、3つの切り欠き部283は、周方向において互いに等間隔となるように配置されている。
【0056】
また、図11および図12に示すように、筒部313の外周面には、筒部313の延在方向(シャフト21の軸方向)に延伸し、かつ、径方向の外側に向かって突出する3つの凸部314が設けられている。これら3つの凸部314は、筒部313の周方向に沿って等間隔に設けられた複数の係合部の一態様であって、被嵌合穴281Aの3つの切り欠き部283に係合する。
【0057】
すなわち、3つの切り欠き部283は、シャフト21の軸周り方向において3つの凸部314に対応する位置に互いに間隔を空けて設けられた複数の被係合部の一態様である。なお、本実施形態では、3つの凸部314は、ファン本体3の回転バランスを考慮して周方向に等間隔に配置されており、それに伴って、3つの切り欠き部283も、周方向に等間隔に配置されている。
【0058】
このように、筒部313を被嵌合穴281Aに嵌合させる際に、3つの凸部314を3つの切り欠き部283に係合させることにより、筒部313の中心と被嵌合穴281Aの中心との位置合わせがしやすく、ファン本体3の回転中心とシャフト21の軸心との軸出しをより正確に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態では、図12に特に示すように、3つの凸部314のうち一の凸部314A(図12において下側に示された凸部314)が、その他の2つの凸部314の形状と異なっている。より具体的には、一の凸部314Aは、周方向に沿った幅W1が、その他の2つの凸部314の周方向に沿った幅W2よりも大きく設定されている(W1>W2)。
【0060】
これに伴い、図10に特に示すように、3つの切り欠き部283についても、一の切り欠き部283A(図10において下側に示された切り欠き部283)が、その他の2つの切り欠き部283の形状と異なっている。一の切り欠き部283Aは、一の凸部314Aの形状に対応した形状に形成されており、周方向に沿った幅L1が、その他の2つの切り欠き部283における周方向に沿った幅L2よりも大きく設定されている(L1>L2)。
【0061】
このように、筒部313に3つの凸部314が、被嵌合部281に3つ(凸部314と同数)の切り欠き部283が、それぞれ設けられている場合に、一の凸部314Aおよび一の凸部314に対応する一の切り欠き部283Aのみの形状を変えることで、ファン本体3をモータ2に組み付ける際に、ファン本体3のモータ2に対する向きを常に一定の方向に揃えることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、筒部313に設けられた複数の係合部はそれぞれ、径方向の外側に向かって突出する凸部314として形成されていたが、必ずしも「凸部」である必要はなく、例えば、筒部313の外周面において径方向の内側に向かって凹む「凹部」として形成されてもよい。したがって、複数の被係合部は、「凸部」の形状または「凹部」の形状に対応して被嵌合穴281Aの外縁が径方向に切り欠かれることにより形成される。
【0063】
また、本実施形態では、複数の係合部として3つの凸部314が筒部313の外周面に、複数の被係合部として3つの切り欠き部283が被嵌合穴281Aに、それぞれ形成されていたが、係合部および被係合部の数については特に制限はない。
【0064】
(変形例1)
次に、本発明の実施形態の変形例1に係るファン装置1の構成について、図13~16を参照して説明する。なお、図13~16において、実施形態で説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。以下、変形例2(図17~20)についても同様とする。
【0065】
図13は、変形例1に係るシールリング28Aの構成を示す斜視図である。図14は、変形例1に係るシールリング28Aをファン本体3A側から見た場合の平面図である。図15は、変形例1に係る筒部313Aの構成を示す斜視図である。図16は、変形例1に係る筒部313Aをモータ2A側から見た場合の平面図である。
【0066】
本変形例では、複数の係合部として2つの凸部315が筒部313Aの外周面に、複数の被係合部として2つの切り欠き部285が被嵌合穴284Aに、それぞれ形成されている場合について説明する。
【0067】
図13および図14に示すように、被嵌合穴284Aは、外縁が径方向の外側に向かって切り欠かれて形成された2つの切り欠き部285を有する。
【0068】
また、図15および図16に示すように、筒部313Aの外周面には、実施形態に係る凸部314と同様に、筒部313Aの延在方向(シャフト21の軸方向)に延伸し、かつ、径方向の外側に向かって突出する凸部315が2つ設けられている。2つの凸部315は、実施形態と同様にファン本体3の回転バランスを考慮し、回転中心を基準として点対称となる位置、すなわち中心を挟んで反対側に配置されていることが望ましい。
【0069】
これに伴い、図14に特に示すように、2つの切り欠き部285も、被嵌合穴284Aの中心(シャフト21の軸心)を基準として点対称となる位置、すなわち中心を挟んで反対側に配置されている。
【0070】
また、本変形例においても、図16に示すように、2つの凸部315のうち一方の凸部315Aは、周方向の幅W1が、他方の凸部315の周方向に沿った幅W2よりも大きく設定されている(W1>W2)。また、図14に示すように、2つの切り欠き部285についても同様に、一方の切り欠き部285Aが、一方の凸部314Aの形状に対応した形状に形成され、その周方向に沿った幅L1が、他方の切り欠き部285における周方向に沿った幅L2よりも大きく形成されている(L1>L2)。
【0071】
(変形例2)
次に、本発明の実施形態の変形例2に係るファン装置1の構成について、図17~20を参照して説明する。
【0072】
図17は、本発明の実施形態の変形例2に係るシールリング28Bの構成を示す斜視図である。図18は、変形例2に係るシールリング28Bをファン本体3B側から見た場合の平面図である。図19は、変形例2に係るファン本体3Bのボス部31Bの中央領域を示す拡大斜視図である。図20は、変形例2に係るファン本体3Bのボス部31Bの中央領域をモータ2B側から見た場合の拡大平面図である。
【0073】
本変形例では、図17および図18に示すように、シールリング28Bの被嵌合部286には、圧入部282側に向かって窪む3つの窪み部287が、複数の被係合部の他の一態様として設けられている。3つの窪み部287はそれぞれ、被嵌合穴286Aの外縁から径方向の外側に向かって延伸している。図18に特に示すように、3つの窪み部287は、周方向において互いに等間隔となるように配置されている。
【0074】
また、図19に示すように、筒部313Bは、実施形態に係る筒部313および変形例1に係る筒部313Aと異なり、外周面に凸部が設けられておらず、円筒状に形成されている。そして、ファンプレート310Aには、筒部313Bの外周側において円盤部311側に向かって凹む凹部310Bが形成されており、この凹部310Bにシールリング28Bが嵌合された状態となっている。
【0075】
凹部310Bには、筒部313Bに向かって延伸し、被嵌合部286に向かって突出する3つの突出部310Cが、複数の係合部の他の一態様として設けられている。図20に特に示すように、3つの突出部310Cは、実施形態と同様にファン本体3の回転バランスを考慮して周方向に等間隔に配置されている。それに伴って、3つの窪み部287も、図18に特に示すように、周方向に等間隔に配置されている。
【0076】
本変形例によっても、筒部313Bを被嵌合穴286Aに嵌合させる際に、3つの突出部310Cを3つの窪み部287に係合させることにより、筒部313Bの中心と被嵌合穴286Aの中心との位置合わせがしやすく、ファン本体3の回転中心とシャフト21の軸心との軸出しをより正確に行うことができる。
【0077】
なお、本変形例では、3つの突出部310Cが凹部310B側に設けられていたが、これに限らず、筒部313B側に設けられていてもよい。この場合、3つの突出部310Cはそれぞれ、筒部313Bの外周面から凹部310Bの内側壁に向かって延伸し、被嵌合部286に向かって突出するように形成される。
【0078】
また、本変形例では、ファンプレート310Aに設けられた複数の係合部はそれぞれ、凹部310Bにおける被嵌合部286との対向面から被嵌合部286に向かって突出する突出部310Cとして形成されていたが、必ずしも「突出部」である必要はなく、例えば、被嵌合部286とは反対側(円盤部311側)に向かって窪む「窪み部」として形成されていてもよい。この場合、複数の被係合部はそれぞれ、「窪み部」の形状に対応してファンプレート310Aに向かって突出する「突出部」として形成される。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1:ファン装置
2:モータ
3:ファン本体
10:ネジ(締結部材)
21:シャフト
22:ベアリング部
23:ロータ
24:ステータ
28:シールリング(シール部材)
31:ボス部
32:羽根
203:ブラケット
232A:外周壁
232B:内周壁
232C:連結壁
281,284,286:被嵌合部
281A,284A,286A:被嵌合穴
282:圧入部
283,283A,285,285A:切り欠き部(被係合部)
287:窪み部(被係合部)
310C:突出部(係合部)
313,313A,313B:筒部
314,315:凸部(係合部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20