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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131158
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】オレフィン多量体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/06 20060101AFI20230913BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20230913BHJP
   C07C 11/107 20060101ALI20230913BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20230913BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
C07C2/06
C07C11/02
C07C11/107
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035308
(22)【出願日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2022035697
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 聖一
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 浩志
(72)【発明者】
【氏名】道上 憲司
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA04
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BA36A
4G169BC16A
4G169BC22A
4G169BC23A
4G169BC58A
4G169BC58B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD03A
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD05A
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD11A
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE32A
4G169BE33A
4G169BE35A
4G169CB47
4G169DA02
4H006AA02
4H006AC21
4H006AC23
4H006BA09
4H006BA14
4H006BA29
4H006BA32
4H006BA46
4H006BA47
4H039CA10
4H039CF10
4H039CL10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】触媒活性を増大させ、かつ、得られるオレフィン多量体の選択性および/またはオレフィン多量体の生産効率に優れるオレフィン多量体の製造方法を提供すること。
【解決手段】成分(A)~(C)を含む触媒の存在下で、オレフィンの多量化反応を行うオレフィン多量体の製造方法;
(A)クロム化合物;
(B)一般式(1)で表されるアミン化合物;

一般式(1)中、RおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を表し、Rは、ハロゲン原子、炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を表し、nは0~4の整数を表す。
(C)(C-1)有機金属化合物、(C-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(C-3)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる選択される化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含むオレフィン多量化用触媒の存在下で、オレフィンを多量化反応させることを含む、オレフィン多量体の製造方法;
(A)クロム化合物;
(B)下記一般式(1)で表されるアミン化合物;
【化1】
一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を表し、R1とR2は互いに連結して環構造を形成してもよく、R3はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を表し、nは0~4の整数を表す。
(C)(C-1)有機金属化合物、(C-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、(C-3)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物。
【請求項2】
前記オレフィンの多量化反応を帯電防止剤の存在下で行う、請求項1に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【請求項3】
前記オレフィンがエチレンである、請求項1または請求項2に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【請求項4】
得られるオレフィン多量体が1-オクテンである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン多量体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-オレフィンは、例えばポリオレフィンの原料として広く工業的に用いられる重要な化合物である。例えば1-ヘキセンおよび1-オクテンは、ポリオレフィンの原料として需要が高い。α-オレフィンの製造方法のうち工業化されている方法としては、有機アルミニウムや遷移金属化合物を触媒として使用する方法がある。しかし、工業化されている方法においては、通常、多種類のα-オレフィンの混合物が得られる。このため、各成分の市況の変化に対して柔軟な事業的対応が困難となる場合がある。したがって、目的とするα-オレフィンの選択性の高い製造方法が望まれる。
【0003】
近年、フェノキシイミン配位子を有する遷移金属錯体化合物を利用して、エチレンの3量化反応によって1-ヘキセンを選択的に製造できる触媒が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、1-オクテンを選択的に製造する為の触媒として、リン原子を含有する配位子を用いたクロム系触媒が開示されている(例えば、特許文献2~4参照)。
また、本発明者らも一般式(1)で表されるアミン化合物とクロム化合物とを組み合わせた触媒を用い、オクテンや、ヘキセンを高い生産性で製造するオレフィン多量体の製造方法ができることを開示している。(例えば、特許文献5参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/005003号
【特許文献2】国際公開第2004/056479号
【特許文献3】国際公開第2013/137676号
【特許文献4】国際公開第2009/022770号
【特許文献5】国際公開第2019/009390号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、上記の特許文献1~4のような触媒では、反応活性、熱安定性、および、製造されるα-オレフィンの選択性のうちの1つ以上の性能が十分とは言えず、さらなる改良が望まれる場合があった。特に1-ヘキセンを選択的に製造するための従来の触媒を用いた場合は、1-ヘキセンの選択性に比べて1-オクテンの選択性が低いか、または、1-オクテンが十分に得られず、さらなる検討が求められる。
【0007】
特許文献5に開示されたオレフィン多量体の製造方法では、クロム化合物と、一般式(1)で表されるアミン化合物との組み合わせが開示されているが、その実施例において用いられているアミン化合物では、当該化合物が有する2つの窒素原子間の炭素原子数が1のアミン化合物の実施例が多い。また、特許文献5において、アミン化合物が有する2つの窒素原子間の炭素原子数が2以上のアミン化合物を用いると、窒素原子間の炭素原子数が1のアミン化合物全般に比べて1-オクテン生産性がやや低い実施例の結果となっている。特許文献5に開示された記載からは、炭素原子数が2以上のアミン化合物において、当該アミン化合物の窒素原子と結合する置換基は分子量が比較的小さい、メチル基の様な例が開示されており、高温の反応条件では触媒中に含まれるクロム化合物との相互作用が弱まり、高い触媒活性が十分に得られない可能性も考えられる。
【0008】
1-オクテンは、1-ヘキセンと同様にポリオレフィン原料として重要な成分であり、特に高性能ポリオレフィンを製造する場合に重要な成分である。また、1-オクテンは、潤滑油の原料としても重要になる可能性がある。
【0009】
本発明は、これらの課題に鑑みなされたものである。すなわち、本発明に係る一実施形態が解決しようとする課題は、触媒活性を増大させ、かつ、得られるオレフィン多量体の特異な選択性および/またはオレフィン多量体の生産効率に優れるオレフィン多量体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の遷移金属化合物、特定の構造を有するアミン化合物および助触媒を含有する触媒の存在下でオレフィンの多量化反応を行うことにより、触媒活性を増大させ、かつ、得られるオレフィン多量体の特異な選択性および/またはオレフィン多量体の生産効率に優れること、特にオレフィンとしてエチレンを用いた場合は、エチレンの4量体である1-オクテンを高活性で得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記成分(A)~(C)を含むオレフィン多量化用触媒の存在下で、オレフィンを多量化反応させることを含む、オレフィン多量体の製造方法;
(A)クロム化合物;
(B)下記一般式(1)で表されるアミン化合物;
【0012】
【化1】
【0013】
一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を表し、R1とR2は互いに連結して環構造を形成してもよく、R3はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を表し、nは0~4の整数を表す。
【0014】
(C)(C-1)有機金属化合物、(C-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、(C-3)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物。
【0015】
<2> 前記オレフィンの多量化反応を帯電防止剤の存在下で行う、<1>に記載のオレフィン多量体の製造方法。
<3> 前記オレフィンがエチレンである、<1>または<2>に記載のオレフィン多量体の製造方法。
<4> 得られるオレフィン多量体が1-オクテンである、<1>~<3>のいずれか1つに記載のオレフィン多量体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る一実施形態によれば、触媒活性を増大させ、かつ、得られるオレフィン多量体の選択性および/またはオレフィン多量体の生産効率に優れるオレフィン多量体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0018】
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後いずれか一方に記載される単位は、特に断りがない限り同じ単位を示すことを意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本発明においてオレフィンの多量化とは、オレフィンを2~10量体にすることを意味し、好ましくはオレフィンを3量体~4量体にすることを意味する。
【0019】
(オレフィン多量体の製造方法)
本発明に係るオレフィン多量体の製造方法は、成分(A)~(C)を含むオレフィン多量化用触媒の存在下で、オレフィンの多量化反応を行う製造方法である。
【0020】
本発明に係るオレフィン多量体の製造方法は、上記構成を有するオレフィン多量化用触媒の存在下で、オレフィンの多量化反応を行うことにより、触媒活性を増大させ、かつ、得られるオレフィン多量体の選択性および/またはオレフィン多量体の生産効率に優れる。この理由は明らかではないが以下のように推定している。
【0021】
本発明のオレフィン多量化用触媒に含まれるアミン化合物(B)は、ピリジン(誘導体)骨格にアミノメチル基が結合する構造を有する。このようなアミン化合物(B)が、平面性の高いピリジン骨格を有すること、および、柔軟なアミノメチル基を有することによって、クロム化合物(A)に上記アミン化合物(B)が配位する際、その配位空間が適度な広さを有する構造を取ることが予想される。
【0022】
この適度な広さの配位空間を有するため、メタラシクロペンタンへチレン配位が起こり易くなる為、1-ヘキセン、1-オクテンなどの工業的に有用とされるオレフィン多量体の特異的な選択率が高まると推定している。また、上記アミン化合物(B)はピリジン環を有するので芳香族骨格に由来する電子雲の広さにより、アミノメチル基における窒素原子と前記芳香族骨格との相互作用や、アミン化合物(B)とクロム化合物(A)との相互作用が高まることで、触媒反応活性がさらに高くなっているとも推察している。
【0023】
本発明に係るオレフィン多量体の製造方法は、オレフィンとしてエチレンを用いた場合は、エチレンの4量体である1-オクテンを高活性で得ることもできる。
【0024】
<オレフィン多量化用触媒>
オレフィン多量化用触媒は、成分(A)~(C)を含む。
以下、オレフィン多量体の製造方法に用いられるオレフィン多量化用触媒の各成分について詳細に説明する。
【0025】
<<クロム化合物(A)>>
クロム化合物(A)は、特に制限はなく、通常、クロムの無機塩もしくは有機塩または金属有機錯体を用いることができる。
【0026】
クロム化合物(A)の具体例としては、塩化クロム(III)、塩化クロム(II)、臭化クロム(III)、臭化クロム(II)、ヨウ化クロム(III)、ヨウ化クロム(II)、フッ化クロム(III)、フッ化クロム(II)、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)トリフルオロアセチルアセトナート、および、クロム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート等が挙げられる。ただし、クロム化合物(A)はこれらに限定されない。これらの中では、クロム化合物(A)としては、3価のクロム化合物およびハロゲン原子を含有するクロム化合物が好ましく、ハロゲン原子を含有する3価のクロム化合物がより好ましい。また、ハロゲン原子を含有するクロム化合物も好ましい。
クロム化合物(A)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
<<アミン化合物(B)>>
成分(B)としてのアミン化合物(以下、「アミン化合物(B)」ともいう)は、下記一般式(1)で表される。
【0028】
【化2】
【0029】
〔R1~R3
一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を表し、R1とR2は互いに連結して環構造を形成してもよく、R3は複数ある場合を含み、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を表し、nは0~4の整数を表す。
1とR2は互いに同一の置換基であってもよいし、互いに異なる置換基であってもよい。また、R1、R2とR3とは同一である場合を含む。
【0030】
ハロゲン原子としては、特に制限はなく、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0031】
炭化水素基は、特に制限はなく、他の基と結合する部分としての炭化水素基を含む基であり、飽和または不飽和炭化水素基であってもよいし、直鎖状、分岐状、または、環状であってもよいし、無置換または置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、後述する芳香族炭化水素基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0032】
直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基は、好ましくは炭素数1~30、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10であり、特に好ましくは炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基である。直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、3-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。
【0033】
直鎖状または分岐状の不飽和炭化水素基は、好ましくは炭素数が2~30、より好ましくは炭素数2~20の直鎖状または分岐状の不飽和炭化水素基である。直鎖状または分岐状の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル(allyl)基、イソプロペニル基などのアルケニル基;エチニル基、2-プロピニル(プロパルギル)基などアルキニル基が挙げられる。
【0034】
環状の飽和炭化水素基は、好ましくは炭素数3~30、より好ましくは5~20、さらに好ましくは5~10の環状の飽和炭化水素基である。環状の飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0035】
環状の不飽和炭化水素基は、不飽和脂肪族環状炭化水素基、または、芳香族炭化水素基であってもよい。環状の不飽和炭化水素基は、単環であってもよいし、環状の不飽和炭化水素基どうしの縮合環であってもよいし、上記環状の飽和炭化水素基と環状の不飽和炭化水素基との縮合環であってもよい。
【0036】
環状の不飽和炭化水素基は、好ましくは炭素数5~30、より好ましくは5~20の環状の不飽和炭化水素基である。環状の不飽和炭化水素基としては、例えば、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0037】
芳香族炭化水素基は置換基をさらに有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~30(好ましくは炭素数1~20)のアルキル基、炭素数6~30(好ましくは炭素数6~20)の芳香族炭化水素基等が挙げられる。置換基を有する芳香族炭化水素基としては、トリル基、イソプロピルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ-t-ブチルフェニル基などの炭素数が7~14のアルキル置換アリール基を挙げられる。また、例えば、ベンジル基、クミル基、ジフェニルエチル基、トリチル基などの炭素数7~19のアリール基置換アルキル基;ベンジリデン基、メチリデン基、エチリデン基などの炭素原子数が1~30、好ましくは5~10のアリール基置換のアルキリデン基が挙げられる。
【0038】
炭化水素基において、炭化水素基中の少なくとも1つの水素原子は、炭化水素基以外の置換基で置換されていてもよい。炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、ホウ素含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基からなる群から選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
【0039】
炭化水素基中の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換された炭化水素基(ハロゲン置換された炭化水素基)としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1~30、好ましくは1~20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0040】
ホウ素含有基としては、特に制限はなく、ボランジイル(-BH-)基、ボラントリイル基、ジボラニル基等が挙げられる。さらに、アルキル基置換ホウ素、アリール基置換ホウ素、ハロゲン化ホウ素、アルキル基置換ハロゲン化ホウ素の基も挙げられる。
【0041】
アルキル基置換ホウ素の基としては、例えば、(Et)2B-、(iPr)2B-、(iBu)2B-、(Et)3B、(iPr)3B、(iBu)3Bがある。アリール基置換ホウ素の基としては、例えば、(C652B-、(C653B、(C653B、(3,5-(CF32633Bがある。ハロゲン化ホウ素の基としては、例えば、BCl2-、BCl3がある。アルキル基置換ハロゲン化ホウ素の基としては、例えば、(Et)BCl-、(iBu)BCl-、(C652BClがある。ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。また、三置換のホウ素は、配位結合した状態にある場合がある。
【0042】
アルミニウム含有基としては、特に制限はなく、例えば、アルキル基置換アルミニウム、アリール基置換アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、アルキル基置換ハロゲン化アルミニウム基等が挙げられる。
【0043】
アルキル基置換アルミニウム基としては、例えば、(Et)2Al-、(iPr)2Al-、(iBu)2Al-、(Et)3Al、(iPr)3Al、(iBu)3Alがある。アリール基置換アルミニウムの基としては、例えば、(C652Al-がある。ハロゲン
化アルミニウムの基としては、例えば、AlCl2-、AlCl3がある。アルキル基置換ハロゲン化アルミニウムの基としては、例えば、(Et)AlCl-、(iBu)AlCl-がある。ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。また、三置換のアルミニウムは、配位結合した状態にある場合がある。
【0044】
ケイ素含有基の具体例としては、シリル基、シロキシ(H3SiO-)基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基が挙げられる。
炭化水素置換シリル基としては、例えば、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリルが挙げられる。これらの中でも、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、および、トリフェニルシリルが好ましく、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、および、ジメチルフェニルシリルがより好ましい。炭化水素置換シロキシ基としては、トリメチルシロキシがある。
【0045】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、それらの基の具体例としては、先に例示したケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムまたはスズに置換したものが挙げられる。
上記の中では、ハロゲン原子、ホウ素含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基を含まない炭化水素基が好ましいことが多い。
【0046】
一般式(1)においては、R1とR2は互いに結合して環構造を形成していてもよい。
1とR2は互いに結合して形成する環構造の環員数としては、3以上が好ましく、5以上がより好ましい。R1とR2が連結して窒素原子とともに形成する好ましい環状構造を有する基としては、アジリジニル基、アゼチジル基、ピロリジル基及びピペリジル基を挙げることができ、これらの中では、ピロリジル基及びピペリジル基が更に好ましい。
【0047】
触媒活性を増大させ、かつ、得られるオレフィン多量体の選択性および/またはオレフィン多量体の生産効率に優れる観点から、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、および、アルミニウム含有基であり、水素原子および炭化水素基であり、かつ、R1とR2の両方が水素原子となる場合がないことがより好ましい。前記炭化水素基として具体的には、直鎖状、分岐状、環状から選ばれる炭化水素基が好ましく、直鎖状の炭素数1~10の炭化水素基や、環状、分岐状の炭素数3~10のヘテロ原子フリーの炭化水素基がより好ましい。前記の直鎖状の炭化水素基としては、炭素原子数が2以上のものがさらに好ましく、炭素原子数が3以上のものが特に好ましい。また、直鎖状の炭素数1~6の炭化水素基が好ましい場合があり、さらには、炭素原子数が2~6の直鎖状炭化水素基が好ましい。また、環状や分岐状の炭化水素基としては、炭素数3~6の炭化水素基がさらに好ましい。
【0048】
一般式(1)中、R3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を表し、nは0~4の整数を表す。nが2~4である場合、隣接するR3は、互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0049】
3におけるハロゲン原子、炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、および、スズ含有基は、上述のR1とR2における炭化水素基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、および、スズ含有基と同義である。
【0050】
オレフィンの反応活性がより高くなる傾向があり、かつ、オレフィンの2~5量体(好ましくは3~4量体)である比較的低沸点のα-オレフィンをより効率的に製造し易くなる観点から、R3としては、水素原子、ハロゲン原子、および炭化水素基であることがこのましく、水素原子および炭化水素基であることがより好ましい。
【0051】
一般式(1)中、nは0~4の整数を表し、好ましくは0~2であり、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。
1~R3が以上の好ましい各基のうちの何れかである場合、オレフィンの反応活性がより高くなる傾向があり、かつオレフィンの2~5量体(好ましくは3~4量体)である比較的低沸点のα-オレフィンをより効率的に製造し易くなる傾向がある。ここでオレフィンの多量化反応に用いる原料のオレフィンがエチレンである場合は、エチレンの3~4量体はヘキセンおよびオクテンに相当する。すなわち、炭素原子数が10以下のオレフィンの製造に適する傾向がある。
【0052】
本発明に係るオレフィン多量体の製造方法に使用されるアミン化合物(B)は、2つの窒素間に炭素原子が2つ存在する特定の構造を有するので、例えば特許文献5の実施例の化合物に比して分子量も比較的大きな化合物であり、多量化反応の温度が高くても後述するオレフィンの多量化反応が効率的に進行することが期待できるので、オレフィンの多量体、すなわちオレフィンの2~5量体(好ましくは3~4量体)の生成量の全生成物の生成量に対する割合が高くなる傾向がある。
【0053】
本発明に係るオレフィン多量体の製造方法は、得られるオレフィン多量体において、オレフィンの2~5量体(好ましくは3~4量体)の生成量が高くなる傾向がある。
オレフィンの2~5量体(好ましくは3~4量体)の生成量は、得られる生成物の全質量に対して、望ましくはその下限値が70質量%、より好ましくは73質量%、さらに好ましくは75質量%、特に好ましくは77質量%である。一方、好ましい上限値は100質量%、より好ましくは98質量%、さらに好ましくは95質量%、特に好ましくは90質量%、特に好ましくは85質量%である。このように、例えば2~5量体(好ましくは3~4量体)の生成量の割合が高い場合は、生成する多量体の種類が少なくなる傾向にある。また、各成分の沸点の差も比較的大きいので蒸留で分離することが容易になる(例えば、1-ヘキセンの沸点は63℃であり、1-オクテンの沸点は122~123℃である。)。その結果、製造コストを抑制でき、市況の影響にも対応し易いと考えられる。
【0054】
本発明において、オレフィン多量化用触媒の性能を総合的に判断する為の指標の一つとして、後述する実施例に記載の1-オクテンの触媒活性が挙げられる。
1-オクテンの触媒活性とは、単位時間当たりおよび触媒の単位量当たりの1-オクテンの生成量を表し、すなわち、1-オクテンの触媒活性とは1-オクテンの生成効率を意味している。なお、この1-オクテンの生成効率は、1-オクテンの選択率とは異なる指標である。
【0055】
さらに、以上説明した好適な各態様においては、エチレンの3量体(1-ヘキセン)や4量体(1-オクテン)の生成効率がより向上するだけでなく、エチレンの反応活性や1-オクテンの効率的な製造の点においても好ましい。
【0056】
本発明においてエチレンの多量体を製造する場合、1-ヘキセンおよび1-オクテンが主生成物となる。そして、両者は蒸留によって分離することが比較的容易である。したがって、先に説明した1-オクテンの生成効率は、工業的な観点から重要な指標となると考えられる。特に、1-ヘキセンと1-オクテンとを併産する為の製造設備を使用する場合、重要な項目となる場合がある。
【0057】
以下にアミン化合物(B)の具体例を示す。ただし、本発明において、アミン化合物(B)はこれらに限定されない。下記具体例中、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「nPr」はn-プロピル基を表し、「iPr」はイソプロピル基を表し、「nBu」はn-ブチル基を表し、「nHex」はn-ヘキシル基を表す。
【0058】
【化3】
【0059】
アミン化合物(B)は、合成してもよいし、市販のアミン化合物を使用してもよい。アミン化合物(B)を合成する場合は、例えば、特定のアミン化合物(例えば、ピリジン誘導体)を一般的な方法でアルキル化またはアリール化することによって、アミン化合物(B)を得ることができる。また、イミン化合物を一般的な方法で還元することによっても、アミン化合物(B)を得ることができる。
【0060】
アミン化合物(B)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミン化合物(B)を含むオレフィン多量化用触媒を用いると、以上説明したように1-オクテンを効率的に生成できる傾向がある。例えば、生成する炭素原子数が10以下のオレフィン多量体の中で、1-オクテンの含有量は、上記オレフィン多量体の全質量に対して、望ましくは40重量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは65質量%以上、最も好ましくは70質量%以上である。
【0061】
<<化合物(C)>>
成分(C)として、有機金属化合物(C-1)(以下、「成分(C-1)」ともいう)、有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)(以下、「成分(C-2)」ともいう)および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物(C-3)(以下、「成分(C-3)」ともいう)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物(C)」ともいう)が用いられる。以下、これら化合物(C-1)~(C-3)について説明する。以下の記載において、化合物(C-3)は「イオン化イオン性化合物(C-3)」と記す。
【0062】
〔有機金属化合物(C-1)〕
有機金属化合物(C-1)としては、例えば、以下に記載する化合物(C-1a)、(C-1b)および(C-1c)のような周期律表第1、2、12、13族の有機金属化合物を使用できる。本発明において、有機金属化合物(C-1)には後述する有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)は含まれないものとする。
【0063】
(C-1a):一般式Ra mAl(ORbnpq(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である)で表される有機アルミニウム化合物。
【0064】
(C-1b):一般式M2AlRa 4(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
【0065】
(C-1c):一般式Rab3(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M3はMg、Z
nまたはCdである)で表される周期律表第2または12族金属のジアルキル化合物。
【0066】
前記有機アルミニウム化合物(C-1a)としては、例えば、一般式Ra mAl(ORb3-m(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である。
)で表される有機アルミニウム化合物、一般式Ra mAlX3-m(式中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、一般式Ra mAlH3-m(式中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、mは好ましくは2≦m<3の数である)で表される有機アルミニウム化合物、一般式Ra mAl(ORbnq(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1
~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である)で表される有機アルミニウム化合物を使用できる。
【0067】
前記有機アルミニウム化合物(C-1a)の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ(n-ブチル)アルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリ(n-アルキル)アルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ(sec-ブチル)アルミニウム、トリ(tert-ブチル)アルミニウム、トリ(2-メチルブチル)アルミニウム、トリ(3-メチルブチル)アルミニウム、トリ(2-メチルペンチル)アルミニウム、トリ(3-メチルペンチル)アルミニウム、トリ(4-メチルペンチル)アルミニウム、トリ(2-メチルヘキシル)アルミニウム、トリ(3-メチルヘキシル)アルミニウム、トリ(2-エチルヘキシル)アルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;(iC49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。iC49はイソブチル基を表す。)などで表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;例えばRa 2.5Al(ORb0.5(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドのように部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドのように部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドのように部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムが挙げられる。
【0068】
有機アルミニウム化合物(C-1a)に類似する化合物、例えば、(C252AlN(C25)Al(C252のように窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物も使用できる。
【0069】
前記化合物(C-1b)の具体例としては、LiAl(C254、LiAl(C7154が挙げられる。
【0070】
前記化合物(C-1c)の具体例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウムが挙げられる。
【0071】
以上説明した化合物(C-1a)~(C-1c)以外の有機金属化合物(C-1)の具体例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドが挙げられる。
【0072】
多量化反応系内で有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、例えばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せを使用することもできる。
【0073】
以上説明した有機金属化合物(C-1)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。また、以上説明した有機金属化合物(C-1)の中では、有機アルミニウム化合物(C-1a)が特に好ましい。
【0074】
[有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)]
有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。従来公知のアルミノキサンは、例えば以下の方法によって製造でき、通常、溶液として得られる。
【0075】
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類(例えば、塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物)と炭化水素溶媒を含む懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
【0076】
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
【0077】
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの溶媒中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物にジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0078】
アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。上記各方法において回収されたアルミノキサンの溶液から溶媒および未反応有機アルミニウム化合物を蒸留除去し、そのアルミノキサンをさらに溶媒に再溶解させてもよいし、アルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0079】
アルミノキサンの製造の為に用いる有機アルミニウム化合物の具体例は、先に説明した有機アルミニウム化合物(C-1a)の具体例と同様である。有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。中でも、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
【0080】
アルミノキサンの製造の為に用いる溶媒としては、例えば、炭化水素溶媒、エーテル系溶媒を使用できる。炭化水素溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ガソリン、灯油、軽油などの石油留分;芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素または脂環族炭化水素のハロゲン化物(特に塩素化物または臭素化物)が挙げられる。
【0081】
エーテル系溶媒の具体例としては、エチルエーテル、テトラヒドロフランが挙げられる。中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素が好ましい。ベンゼンに対して不溶性または難溶性の有機アルミニウムオキシ化合物を使用する場合、60℃のベンゼンに溶解するAl成分の量はAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。
【0082】
有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)としては、下記一般式(2)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も使用できる。
【0083】
【化4】
【0084】
(一般式(2)中、R3は炭素原子数が1~10の炭化水素基、あるいは炭素原子数が1~10のハロゲン化炭化水素基を示す。4つのR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。4つのR4は、互いに同一であっても、これらに異なる基の組合せが1つ以上含まれてもよく、これらが互いに異なっていてもよい。)
【0085】
一般式(2)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、例えば、下記一般式(3)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、-80℃~室温の温度で1分~24時間反応させることにより製造できる。
【0086】
3-B(OH)2・・・(3)
(一般式(3)中、R3は上記一般式(2)におけるR3と同じ基を示す)
【0087】
一般式(3)で表されるアルキルボロン酸の具体例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸が挙げられる。中でも、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらアルキルボロン酸は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0088】
アルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物の具体例は、先に説明した有機アルミニウム化合物(C-1a)の具体例と同様である。有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。中でも、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムがより好ましい。
【0089】
以上説明した有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0090】
[イオン化イオン性化合物(C-3)]
イオン化イオン性化合物(C-3)は、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物である。したがって、少なくとも遷移金属化合物と接触させるとイオン対を形成する性質を有する化合物は、このイオン化イオン性化合物(C-3)に相当する。
【0091】
イオン化イオン性化合物(C-3)としては、例えば、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、米国特許5321106号に記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物、カルボラン化合物を使用できる。さらに、ヘテロポリ化合物、イソポリ化合物も使用できる。
【0092】
前記ルイス酸としては、例えば、一般式BR3(Rはフッ素、メチル基、トリフルオロ
メチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である)で表される化合物がある。その具体例としては、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンが挙げられる。
【0093】
前記イオン性化合物の具体例としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0094】
【化5】
【0095】
一般式(4)中、R5+としては、例えば、H+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンが挙げられる。R6~R9は、それぞれ独立して、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基を示す。これらの基は、互いに同一であっても、これらに異なる基の組合せが1つ以上含まれてもよく、これらが互いに異なっていてもよい。
【0096】
5+がカルボニウムカチオンである場合の具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンが挙げられる。
【0097】
5+がアンモニウムカチオンである場合の具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0098】
5+がホスホニウムカチオンである場合の具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0099】
5+としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、トリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンがより好ましい。
【0100】
以上説明した一般式(4)で表される化合物以外に、前記イオン性化合物としては、さらにトリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩も使用できる。
【0101】
前記トリアルキル置換アンモニウム塩の具体例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-プロピル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-プロピル)アンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ボレートが挙げられる。
【0102】
前記N,N-ジアルキルアニリニウム塩の具体例としては、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレートが挙げられる。
【0103】
前記ジアルキルアンモニウム塩の具体例としては、ジ(n-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートが挙げられる。
【0104】
以上説明した各塩以外に、前記イオン性化合物としては、さらにトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記一般式(5)または(6)で表されるホウ素化合物も使用できる。
【0105】
【化6】
【0106】
(一般式(5)中、Etはエチル基を示す。)
【0107】
【化7】
【0108】
(一般式(6)中、Etはエチル基を示す。)
前記ボラン化合物の具体例としては、デカボラン(14);ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩が挙げられる。
【0109】
前記カルボラン化合物の具体例としては、4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、6,9-ジカルバデカボラン(14)、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン(13)、2,7-ジカルバウンデカボラン(13)、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(14)、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート(13)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩が挙げられる。
【0110】
前記ヘテロポリ化合物は、通常、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素または錫からなる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とからなる。その具体例としては、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジンン酸、ゲルマノタングストバナジンン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸が挙げられる。また、これら各酸の塩であってもよい。塩の具体例としては、例えば、周期律表第1または2族の金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩、イソポリ化合物が挙げられる。
【0111】
以上説明したイオン化イオン性化合物(C-3)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0112】
以上のオレフィン多量化用触媒を用いれば高い活性でオレフィン多量体が得られ、特にオレフィンとしてエチレンを用いた場合には、1-オクテンの選択性が高い。例えば助触媒成分としてメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)を併用すると、エチレンに対してより高い活性を示し、1-オクテンを製造することができる。
また助触媒成分としてトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのイオン化イオン性化合物(C-3)を用いても、より良好な活性かつより高い選択率でエチレンから1-オクテンが得られる。
【0113】
<<担体(D)>>
オレフィン多量化用触媒は、担体(D)をさらに含んでいてもよい。担体(D)は、無機化合物または有機化合物であって、かつ、通常、顆粒状または微粒子状の固体である。担体(D)は、クロム化合物(A)、アミン化合物(B)および化合物(C)からなる群から選択される少なくとも1種の成分を担持することが好ましい。また、必要に応じて後述する有機化合物(E)を担持してもよい。担体(D)に用いられる無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物、および、イオン交換性層状化合物が好ましい。
【0114】
前記多孔質酸化物の具体例としては、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2、またはこれらを含む複合物もしくは混合物(例えば、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgO)が挙げられる。
【0115】
これらの中でも、SiO2および/またはAl23を主成分とする多孔質酸化物が好ましい。多孔質酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO43、BaSO4、KNO3、Mg(NO32、Al(NO33、Na2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩または酸化物成分を含有していてもよい。多孔質酸化物の粒径、比表面積、細孔容積は特に限定されず、材料の種類や製法に応じて適宜決定すればよい。
【0116】
多孔質酸化物の粒径は、好ましくは0.5~300μm、より好ましくは20~200μmであり、比表面積は好ましくは50~1000m2/g、より好ましくは100~700m2/gであり、細孔容積は好ましくは0.3~3.0cm3/gである。
多孔質酸化物は、必要に応じて、好ましくは100~1000℃、より好ましくは150~700℃で焼成される。
【0117】
前記無機ハロゲン化物の具体例としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2が挙げられる。無機ハロゲン化物は、そのまま使用してもよいし、ボールミル、または、振動ミルにより粉砕した後に使用してもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものであってもよい。
【0118】
前記粘土は、通常、粘土鉱物を主成分として含む。また、前記イオン交換性層状化合物は、イオン結合によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能な化合物である。
【0119】
イオン交換性層状化合物としては、例えば、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物が挙げられる。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。これらの粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物としては、天然のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0120】
粘土、および、粘土鉱物の具体例としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、雲母、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、テニオライト、リョクデイ石、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトが挙げられる。
【0121】
イオン交換性層状化合物の具体例としては、α-Zr(HAsO42・H2O、α-Zr(KPO42・3H2O、α-Ti(HPO42、α-Ti(HAsO42・H2O、α-Sn(HPO42・H2O、γ-Zr(HPO42、γ-Ti(HPO42、γ-Ti(NH4PO42・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩が挙げられる。
【0122】
これらの中でも、担体(D)としては、粘土、および、粘土鉱物が好ましく、合成雲母、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、および、テニオライトがより好ましい。
【0123】
粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物の細孔容積は、好ましくは0.1cc/g以上、より好ましくは0.3~5cc/gである。この細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20~3×104Åの範囲について測定した容積である。細孔半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものを担体として用いた場合は、高い多量化活性が得られやすい傾向がある。
【0124】
粘土、および、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、例えば、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理がある。化学処理の具体例としては、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理が挙げられる。酸処理によれば、表面の不純物を取り除くだけでなく、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大できる。アルカリ処理によれば、粘土の結晶構造を破壊して、粘土の構造を変化させることができる。塩類処理や有機物処理によれば、イオン複合体、分子複合体または有機誘導体を形成することによって、表面積や層間距離を変化させることができる。
【0125】
イオン交換性層状化合物は、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することによって層間を拡大した状態の層状化合物であってもよい。この嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担い、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することは、インターカレーションという。
インターカレーションするゲスト化合物(別の物質)の具体例としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+などの金属水酸化物イオンが挙げられる。ゲスト化合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。ゲスト化合物をインターカレーションする際に、例えば、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)を加水分解して得た二量化物、SiO2などのコロイド状無機化合物を共存させることもできる。
ピラーの具体例としては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後で加熱脱水することにより生成する酸化物が挙げられる。
【0126】
粘土、粘土鉱物、および、イオン交換性層状化合物は、そのまま使用してもよいし、ボールミル、または、ふるい分けなどの処理を行った後に使用してもよい。また、新たに水を添加して吸着させた後に使用してもよいし、あるいは加熱脱水処理した後に使用してもよい。
【0127】
担体(D)に用いる有機化合物としては、例えば、粒径が10~300μmの顆粒状または微粒子状の固体有機化合物が挙げられる。有機化合物を構成する重合体のモノマーの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)二量化体、ビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)二量化体、およびそれらの変性体が挙げられる。
【0128】
<<有機化合物成分(E)>>
オレフィン多量化用触媒は、必要に応じて、上記アミン化合物(B)以外の有機化合物成分(E)をさらに含んでいてもよい。
【0129】
有機化合物成分(E)は、例えば、多量化性能を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、例えば、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、スルホン酸塩を使用できる。ただし、有機化合物成分(E)はこれに限られるものではない。
【0130】
前記アルコール類および前記フェノール性化合物としては、通常、R10-OHで表される化合物が使用される。R10は炭素原子数1~50の炭化水素基または炭素原子数1~50のハロゲン化炭化水素基を示す。アルコール類としては、R10がハロゲン化炭化水素基である化合物が好ましい。フェノール性化合物としては、水酸基のα,α’-位が炭素原子数1~20の炭化水素で置換された化合物が好ましい。
【0131】
前記カルボン酸としては、通常、R11-COOHで表される化合物が使用される。R11は炭素原子数1~50の炭化水素基または炭素原子数1~50のハロゲン化炭化水素基を示す。特に、R11が炭素原子数1~50のハロゲン化炭化水素基である化合物が好ましい。
【0132】
前記リン化合物としては、P-O-H結合を有するリン酸類、P-OR結合またはP=O結合を有するホスフェートまたはホスフィンオキシド化合物が好ましい。
【0133】
前記スルホン酸塩としては、例えば、下記一般式(7)で表される化合物を使用できる。
【0134】
【化8】
【0135】
一般式(7)中、M2は周期律表第1~14族の元素であり、R13は水素、炭素原子数1~20の炭化水素基または炭素原子数1~20のハロゲン化炭化水素基である。R12が複数あるときには、複数のR12は、それぞれ独立して上記と同様に定義される。Zは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1~20の炭化水素基または炭素原子数が1~20のハロゲン化炭化水素基であり、tは1~7の整数であり、uは1≦u≦7の整数であり、かつt-u≧1である。
【0136】
<<オレフィン>>
本発明に係るオレフィン多量体の製造方法に使用されるオレフィンは特に限定されない。多量化用原料としてのオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、1-オクテン、1-デセンなどのビニル化合物、2-ブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネンなどの内部オレフィンが挙げられる。これらの中でも、オレフィンとしては、エチレンが好ましい。オレフィンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。オレフィン多量体の製造方法において、2種以上のオレフィンを用いて、共多量化させてもよい。
【0137】
<<多量化反応>>
本発明に係るオレフィン多量体の製造方法における多量化反応は、用いるオレフィンの種類によって適宜選択することができるが、好ましくは3量化または4量化反応、より好ましくは4量化反応である。多量化反応の条件等は後述する。
【0138】
<<オレフィン多量体>>
選択率に優れる観点から、本発明に係るオレフィン多量体の製造方法は、エチレンを多量化反応させてオレフィン多量体を製造することが好ましく、エチレンを3量化反応および4量化反応させて1-ヘキセンおよび1-オクテンを製造することがより好ましく、エチレンを4量化反応させて1-オクテン製造することが特に好ましい。
【0139】
触媒活性に優れ、かつ、得られるオレフィン多量体の選択性および/またはオレフィン多量体の生産効率に優れる観点から、本発明に係るオレフィン多量体の製造方法は、得られるオレフィン多量体が1-ヘキセンおよび1-オクテンであることが好ましく、得られるオレフィン多量体が1-オクテンであることがさらに好ましい。
【0140】
オレフィン多量体の製造方法は、上記成分(A)~(C)を含むオレフィン多量化用触媒の存在下で、オレフィンを多量化反応させること以外の工程をさらに含んでいてもよい。オレフィン多量体の製造方法において、アミン化合物(B)とクロム化合物(A)は、別々に反応器へ添加してもよい。ただし、オレフィン多量体の製造方法において、予めアミン化合物(B)とクロム化合物(A)を反応させることが好ましく、この反応により形成した遷移金属錯体を、反応器へ添加することが好ましい。
【0141】
例えば、アミン化合物(B)を溶媒に溶解し、これをクロム化合物(A)と混合し、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、-78℃から室温または還流条件下で、約5分~48時間撹拌することによって、遷移金属錯体を得ることができる。
【0142】
遷移金属錯体を合成する際に用いる溶媒は特に限定されない。このような反応において使用可能なことが知られている一般的な溶媒を使用できる。溶媒の具体例としては、エーテル、テトラヒドロフランなどの極性溶媒;トルエン、メチルシクロヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素溶媒;塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。
【0143】
遷移金属錯体は、溶媒に溶解または懸濁した状態で得られる。この遷移金属錯体の溶液または懸濁液をそのまま使用してもよいし、また遷移金属錯体を一度単離して、再び溶媒に溶解または懸濁させて使用してもよい。
【0144】
オレフィン多量体の製造方法に係るオレフィンの多量化反応において、クロム化合物(A)、アミン化合物(B)、化合物(C)およびその他の成分(例えば担体(D)、有機化合物成分(E))を反応器に添加する順序は特に限定されない。添加方法の具体例は以下の通りである。
【0145】
以下の各成分の添加の順序に関する説明において、クロム化合物(A)、アミン化合物(B)、化合物(C)及び有機化合物(E)をそれぞれ成分(A)~(C)及び(E)と略称する。
【0146】
(1)成分(A)と、成分(B)とをそのまま任意の順序で反応器に添加する方法。
(2)成分(A)と、成分(B)とを予め接触させて形成した遷移金属錯体を反応器に添加する方法。
【0147】
(3)成分(A)と、成分(B)と、成分(C)とをそのまま任意の順序で反応器に添加する方法。
(4)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体と、成分(C)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
【0148】
(5)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体に成分(C)を予め接触させた触媒成分を反応器に添加する方法。
(6)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体に成分(C)を予め接触させた触媒成分と、成分(C)とを任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、各成分(C)は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0149】
(7)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体を担持した担体(D)を反応器に添加する方法。
(8)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体を担持した担体(D)と、成分(C)を任意の順序で反応器に添加する方法。
【0150】
(9)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体ならびに成分(C)を担持した担体(D)を反応器に添加する方法。
(10)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体ならびに成分(C)を担持した担体(D)と、成分(C)とを任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、各成分(C)は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0151】
(11)成分(C)を担持した担体(D)と、成分(A)と、成分(B)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
(12)成分(C)を担持した担体(D)と、成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体とを任意の順序で反応器に添加する方法。
【0152】
(13)成分(C)を担持した担体(D)と、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)とを任意の順序で反応器に添加する方法。この場合各成分(C)は同一でもよいし、異なっていてもよい。
(14)成分(C)を担持した担体(D)と、成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体と、成分(C)とを任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、各成分(C)は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0153】
(15)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体を担持した担体(D)と、成分(C)を担持した担体(D)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
(16)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体を担持した担体(D)と、成分(C)を担持した担体(D)と、成分(C)とを任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、各成分(C)は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0154】
(17)成分(A)と、成分(B)と、成分(E)とをそのまま任意の順序で反応器に添加する方法。
(18)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体と、成分(E)を任意の順序で反応器に添加する方法。
【0155】
(19)成分(A)と、成分(B)と、成分(C)と、成分(E)とをそのまま任意の順序で反応器に添加する方法。
(20)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体と、成分(C)と、成分(E)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
【0156】
(21)成分(C)および成分(E)を予め接触させた成分と、成分(A)と、成分(B)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
(22)成分(C)および成分(E)を予め接触させた成分と、成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体とを任意の順序で反応器に添加する方法。
【0157】
(23)成分(E)を担持した担体(D)と、成分(A)と、成分(B)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
(24)成分(E)を担持した担体(D)と、成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体とを任意の順序で反応器に添加する方法。
【0158】
(25)成分(C)および成分(E)を担持した担体(D)と、成分(A)と、成分(B)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
(26)成分(C)および成分(E)を担持した担体(D)と、成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体とを任意の順序で反応器に添加する方法。
【0159】
(27)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体に成分(C)を予め接触させた触媒成分と、成分(E)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
(28)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体に成分(C)を予め接触させた触媒成分と、成分(C)と、成分(E)とを任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、各成分(C)は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0160】
(29)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体に成分(C)を予め接触させた触媒成分と、成分(C)および成分(E)を予め接触させた成分とを任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、各成分(C)は同一でもよいし、異なっていてもよい。
(30)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体を担持した担体(D)と、成分(C)と、成分(E)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
【0161】
(31)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体を担持した担体(D)と、成分(E)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
(32)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体を担持した担体(D)と、成分(C)および成分(E)を予め接触させた成分とを任意の順序で反応器に添加する方法。
【0162】
(33)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体に成分(E)を予め接触させた触媒成分を反応器に添加する方法。
(34)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体に成分(C)および成分(E)を予め任意の順序で接触させた触媒成分を反応器に添加する方法。
【0163】
(35)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体に成分(C)および成分(E)を予め任意の順序で接触させた触媒成分と、成分(C)とを任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、各成分(C)は同一でもよいし、異なっていてもよい。
(36)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体ならびに成分(E)を担持した担体(D)を反応器に添加する方法。
【0164】
(37)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体、成分(C)ならびに成分(E)を担持した担体(D)を反応器に添加する方法。
(38)成分(A)および成分(B)を予め接触させて形成した遷移金属錯体、成分(C)ならびに成分(E)を担持した担体(D)と、成分(C)とを任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、各成分(C)は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0165】
上記オレフィンの多量化反応は、溶解反応や懸濁反応などの液相反応法、気相反応法のいずれにおいても実施できる。
【0166】
液相反応法においては、通常、不活性炭化水素媒体を用いる。不活性炭化水素媒体の具体例としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロへキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラリンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、またはこれらの混合物が挙げられる。中でも、ペンタン、n-ヘキサン、n-へブタンなどの炭素数5~7の直鎖状飽和炭化水素;メチルシクロヘキサンなどの脂環式飽和炭化水素が好ましい。
【0167】
オレフィン多量化用触媒を用いて、例えば、主としてエチレンの3~4量化反応により1-ヘキセンや1-オクテンを製造する場合は、成分(A)中のクロム原子は、反応容積1リットル当り、通常10-12~10-2モル、好ましくは10-10~10-3モルとなるような量で用いられる。本発明では、成分(A)を比較的低い濃度で用いた場合であっても、触媒活性が高く、優れた生成効率にてオレフィン多量体を得ることができる。
【0168】
成分(B)は成分(A)中のクロム原子(M)とのモル比〔(B)/M〕が、通常0.1~10、好ましくは0.5~2となるような量で用いられる。
成分(C)のうち、成分(C-1)は、成分(C-1)と、成分(A)中のクロム原子(M)とのモル比〔(C-1)/M〕が、通常0.01~100,000、好ましくは0.05~50,000となるような量で用いられる。
【0169】
成分(C-2)は、成分(C-2)中のアルミニウム原子と、成分(A)中のクロム原子(M)とのモル比〔(C-2)/M〕が、通常10~500,000、好ましくは20~100,000となるような量で用いられる。
【0170】
成分(C-3)は、成分(C-3)と、成分(A)中のクロム原子(M)とのモル比〔(C-3)/M〕が、通常1~10、好ましくは1~5となるような量で用いられる。
担体(D)は、成分(A)中のクロム原子(M)のモル当たりに対する担体(D)の質量(g)の比(g/mol)が通常100~10,000、好ましくは1,000~5,000となるような量で用いられる。
【0171】
成分(C)として成分(C-1)を用いる場合、成分(E)は、モル比〔(E)/(C-1)〕が通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で用いられる。成分(C)として成分(C-2)を用いる場合、成分(E)は、担体(D)と成分(C-2)中のアルミニウム原子とのモル比〔(E)/(C-2)〕が通常0.001~2、好ましくは0.005~1となるような量で用いられる。成分(C)として成分(C-3)を用いる場合、成分(E)は、モル比〔(E)/(C-3)〕が通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で用いられる。
【0172】
オレフィン多量化の反応温度は、通常-50~200℃、好ましくは0~170℃、より好ましくは40℃~160℃、さらに好ましくは50℃~160℃、特に好ましくは、60℃~150℃である。
【0173】
本発明に係るオレフィン多量体の製造方法で用いられるオレフィン多量化用触媒は、多量化反応の温度が高い方がポリエチレンなどの高分子量の重合体の副生が抑制され、目的とするオレフィンの多量体(特にエチレンを多量化反応させた場合は1-ヘキセンと1-オクテン)を効率的に生成する点で有利な傾向がある。
【0174】
例えば、エチレンを用いて1-ヘキセンや1-オクテンを選択的に生成する多量化反応は、メタラサイクル機構で進行することが知られている。そして、多量化反応は、温度が高い方がより効果的である理由は、本発明にかかるオレフィン多量化用触媒が1-ヘキセンや1-オクテンを生成し易い構造を持つという理由に加えて、メタラサイクル機構を形成する為には高温の方が有利であり、しかも全体の反応活性が高まるのでポリエチレンの副生が抑制されるからと推測される。
本発明の態様においては、特にこの傾向が顕著な場合がある。この要因は現時点で不明であるが、本発明者は以下のように推測している。
本発明の(B)アミン化合物は、窒素を含むアリール基を有している。このアリール基が、恐らくクロム化合物との相互作用が比較的強いので、触媒活性点の構造が温度による影響を比較的受け難く、その為、比較的高い反応温度であっても活性点の構造変化が少なく、前記の「メタラサイクル機構を形成する為には高温の方が有利」と言う性能がより顕在化し易いのであろうと考えられる。
【0175】
オレフィン多量体の製造方法において、多量化反応の圧力は、通常、常圧~10MPa、好ましくは常圧~6MPa、より好ましくは常圧~5MPaである。また下限値は、好ましくは0.5MPa、より好ましくは0.9MPa、特に好ましくは1.5MPaである。最も好ましい上限値は、4MPaである。
【0176】
オレフィン多量体化用触媒は、反応圧力が高い方が1-オクテンの生成効率が高くなる傾向がある。オレフィンとしてエチレンを用いた場合、メタラシクロペンタンへエチレンが2分子配位し、その後協奏的(または逐次的)にエチレンが挿入して生成するメタラシクロノナンを経由して1-オクテンが得られると推定される。そして、反応圧力が高い方がより効果的である理由は必ずしも明らかではないが、本発明のオレフィン多量化用触媒の構造は、高圧になるほどメタラシクロペンタンへのエチレン2分子配位が有利になる構造であるからと推測される。
【0177】
多量化反応は、回分式、半連続式、および、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
オレフィン多量体の製造方法は、オレフィンの多量化反応を帯電防止剤の存在下で行ってもよい。
【0178】
帯電防止剤の具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールジステアレート、エチレンジアミン-PEG-PPG-ブロックコポリマー、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシアルキレン(例えばポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコールブロック共重合体(PEG-PPG-PEG))が挙げられる。これらの中でも、帯電防止剤としては、ポリオキシアルキレン(例えば、PEG-PPG-PEG)が好ましい。
【0179】
帯電防止剤は、成分(A)中のクロム原子(M)のモル当たりに対する質量(g)の比(g/mol)が通常100~10,000、好ましくは100~1,000となるような量で用いられる。帯電防止剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0180】
オレフィンの多量化反応は、水素を添加して行ってもよい。反応の水素の圧力は通常0.01MPa~5MPa、好ましくは0.01MPa~1MPaである。
【実施例0181】
以下、合成例および実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
合成例で得た化合物の構造は、270MHz 1H NMR(日本電子(株)製、装置名:GSH-270)、ICP発光分光分析装置(アジレント・テクノロジー製、装置名:720-ES型)等の装置を用いて決定した。
【0182】
各反応生成物の収量と、1-ヘキセンおよび1-オクテンの選択率は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、型番:GC-14A、J&WScientificDB-5カラム)を用いて分析した。
【0183】
[触媒活性]
触媒活性は、単位時間当たりに得られた全反応生成物(副生ポリエチレンを含む)の質量を、多量化に使用した遷移金属触媒成分中の遷移金属原子量(ミリモル)で除して求めた。触媒活性の値が大きいほど、触媒活性が増大されているといえる。
【0184】
[1-オクテン活性(1-オクテンの生成効率)]
1-オクテン活性は、単位時間当たりに得られた1-オクテンの質量を、多量化に使用した遷移金属触媒成分中の遷移金属原子量(ミリモル)で除して求めた。1-オクテン活性の値が大きいほど、得られる1-オクテンの生産効率に優れるといえる。
【0185】
[1-ヘキセンまたは1-オクテンの選択率(分布)]
1-ヘキセンまたは1-オクテンの選択率は、以下の式に従い求めた。1-ヘキセンまたは1-オクテンの選択率の値が大きいほど、得られる1-ヘキセンまたは1-オクテン選択性に優れるといえる。
【0186】
S(%)=Wp/Wr×100
S(%):1-ヘキセンまたは1-オクテンの選択率(質量分率)
Wr(質量):反応により生成した炭素原子数が4以上からなる生成物の合計質量
Wp(質量):反応により生成した1-ヘキセンまたは1-オクテンの質量
【0187】
以下に、アミン化合物(B)の合成例とエチレンの多量化反応の実施例を示す。
<(1)アミン化合物(B)の合成例>
[合成例1]
十分に乾燥した100mLの反応器に、2-ピリジンカルボキシアルデヒド0.54g(5.04mmol)、メタノール20mLを仕込み、室温で撹拌させているところに40%メチルアミンメタノール溶液0.40gmL(5.15mmol)を添加し、室温で撹拌した。2時間後、減圧下溶媒留去し、エタノール20mLで希釈した。その後、水素化ホウ素ナトリウム0.20g(5.29mmol)を添加し、室温で撹拌した。17時間後、減圧下溶媒留去し、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を添加して反応をクエンチした。反応液を炭酸カリウム水溶液で中和した後、ジクロロメタンにて可溶分を抽出し、得られた分画を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を減圧下溶媒留去し、粗生成物を減圧蒸留し、下記式(B-1)で示した目的物(以下、アミン化合物(B-1)という)が0.24g(収率39%)得られた。
【0188】
1H-NMR(400MHz,CDCl3):8.55(1H,dd,J=4.9、0.9Hz),7.64(1H,td,J=7.6、1.8Hz),7.30(1H,d, J=7.6Hz),7.15(1H,dd, J=7.6、4.9Hz),3.86(2H,s),2.47(3H,s)ppm
【0189】
【化9】
【0190】
[合成例2]
十分に乾燥した100mLの反応器に、2-ピリジンカルボキシアルデヒド0.57g(5.32mmol)、ジクロロメタン20mLを仕込み、室温で撹拌させているところにn-ヘキシルアミン0.54g(5.34mmol)を添加し、室温で撹拌した。2時間後、減圧下溶媒留去し、エタノール20mLで希釈した。その後、水素化ホウ素ナトリウム0.21g(5.55mmol)を添加し、室温で撹拌した。17時間後、減圧下溶媒留去し、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を添加して反応をクエンチした。反応液を炭酸カリウム水溶液で中和した後、ジクロロメタンにて可溶分を抽出し、得られた分画を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を減圧下溶媒留去し、粗生成物を減圧蒸留し、下記式(B-2)で示した目的物(以下、アミン化合物(B-2)という)が0.36g(収率35%)得られた。
【0191】
得られたアミン化合物(B-2)の1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):8.56(1H,dd,J=4.9、0.9Hz),7.63(1H,td,J=7.7、1.7Hz),7.30(1H,d, J=7.7Hz),7.15(1H,dd, J=7.7、4.9HZ),3.90(2H,s),2.65(3H,t, J=7.1Hz), 1.65-1.57(2H,m),1.45-1.30(6H,m),0.88(3H,t, J=7.2Hz)ppm
【0192】
【化10】
【0193】
[合成例3]
十分に乾燥した100mLの反応器に、2-ピリジンカルボキシアルデヒド0.74g(6.91mmol)、ジクロロメタン25mLを仕込み、室温で撹拌させているところにシクロヘキシルアミン0.69g(6.96mmol)を添加し、室温で撹拌した。2時間後、減圧下溶媒留去し、エタノール25mLで希釈した。その後、水素化ホウ素ナトリウム0.27g(7.14mmol)を添加し、室温で撹拌した。17時間後、減圧下溶媒留去し、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を添加して反応をクエンチした。反応液を炭酸カリウム水溶液で中和した後、ジクロロメタンにて可溶分を抽出し、得られた分画を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を減圧下溶媒留去し、粗生成物を減圧蒸留し、下記式(B-3)で示した目的物(以下、アミン化合物(B-3)という)が0.42g(収率32%)得られた。
【0194】
得られたアミン化合物(B-3)の1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):8.55(1H,dd,J=4.9、1.0Hz),7.63(1H,td,J=7.6、1.9Hz),7.30(1H,d, J=7.6Hz),7.15(1H,dd, J=7.6、4.9Hz),3.93(2H,s),2.52-2.45(1H,m), 2.04-1.92(2H,m),1.76-1.72(2H,m),1.31-1.10(6H,m)ppm
【0195】
【化11】
【0196】
[合成例4]
十分に乾燥した100mLの反応器に、2-ピリジンカルボキシアルデヒド0.60g(5.60mmol)、ジクロロメタン25mLを仕込み、室温で撹拌させているところに3-アミノペンタン0.49g(5.62mmol)を添加し、室温で撹拌した。2時間後、減圧下溶媒留去し、エタノール25mLで希釈した。その後、水素化ホウ素ナトリウム0.22g(5.82mmol)を添加し、室温で撹拌した。18時間後、減圧下溶媒留去し、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を添加して反応をクエンチした。反応液を炭酸カリウム水溶液で中和した後、ジクロロメタンにて可溶分を抽出し、得られた分画を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を減圧下溶媒留去し、粗生成物を減圧蒸留し、下記式(B-4)で示した目的物(以下、アミン化合物(B-4)という)が0.52g(収率52%)得られた。
【0197】
得られたアミン化合物(B-4)の1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):8.55(1H,dd,J=4.9、1.0Hz),7.63(1H,td,J=7.6、1.9Hz),7.29(1H,d, J=7.6Hz),7.14(1H,dd, J=7.6、4.9Hz),3.90(2H,s),2.92-2.82(1H,m), 1.12(6H,d、J=6.3Hz)ppm
【0198】
【化12】
【0199】
[合成例5]
十分に乾燥した100mLの反応器に、2-ピリジンカルボキシアルデヒド0.71g(6.63mmol)、ジクロロメタン25mLを仕込み、室温で撹拌させているところにピペリジン0.57g(6.69mmol)を添加し、室温で撹拌した。2時間後、減圧下溶媒留去し、エタノール25mLで希釈した。その後、水素化ホウ素ナトリウム0.26g(6.87mmol)を添加し、室温で撹拌した。17時間後、減圧下溶媒留去し、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を添加して反応をクエンチした。反応液を炭酸カリウム水溶液で中和した後、ジクロロメタンにて可溶分を抽出し、得られた分画を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を減圧下溶媒留去し、粗生成物を減圧蒸留し、下記式(B-5)で示した目的物(以下、アミン化合物(B-5)という)が0.40g(収率34%)得られた。
【0200】
得られたアミン化合物(B-5)の1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):8.55(1H,dd,J=4.9、1.0Hz),7.64(1H,td,J=7.6、1.9Hz),7.42(1H,d, J=7.6Hz),7.14(1H,dd, J=7.6、4.9Hz),3.62(2H,s),2.44(4H,bs), 1.63-1.44(6H,m)ppm
【0201】
【化13】
【0202】
[合成例6]
十分に乾燥した100mLの反応器に、2-ピリジンカルボキシアルデヒド0.68g(6.35mmol)、ジクロロメタン25mLを仕込み、室温で撹拌させているところにピロリジン0.46g(6.47mmol)を添加し、室温で撹拌した。2時間後、減圧下溶媒留去し、エタノール25mLで希釈した。その後、水素化ホウ素ナトリウム0.25g(6.61mmol)を添加し、室温で撹拌した。18時間後、減圧下溶媒留去し、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を添加して反応をクエンチした。反応液を炭酸カリウム水溶液で中和した後、ジクロロメタンにて可溶分を抽出し、得られた分画を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を減圧下溶媒留去し、粗生成物を減圧蒸留し、下記式(B-6)で示した目的物(以下、アミン化合物(B-6)という)が0.43g(収率42%)得られた。
【0203】
得られたアミン化合物(B-6)の1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):8.55(1H,dd,J=4.9、1.0Hz),7.63(1H,td,J=7.6、1.9Hz),7.30(1H,d, J=7.6Hz),7.15(1H,dd, J=7.6、4.9Hz),3.93(2H,s),2.52-2.45(1H,m), 2.04-1.92(2H,m),1.76-1.72(2H,m),1.31-1.10(6H,m)ppm
【0204】
【化14】
【0205】
<(2)エチレンの多量化反応>
[実施例1]
十分に乾燥した100mLのシュレンク管に、上記合成例1で得られたアミン化合物(B-1)0.11g(0.90mmol)、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン0.25g(0.67mmol)、および、ジクロロメタン10mLを加え、アルゴン雰囲気下で20時間撹拌した。反応液にn-ヘキサン5mLを加え、不溶分をガラスフィルターでろ取し、n-ヘキサン10mLで洗浄し、減圧乾燥することでクロム化合物0.12gを得た。このクロム化合物から、クロム原子換算で0.001mmol/mLのトルエン溶液(触媒溶液)を調製した。
【0206】
十分に窒素置換した内容積100mLのオートクレーブにメチルシクロヘキサン29.6mLを入れ、続いて、メチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム(株)製、製品名;MMAO-3A、5.7質量%ヘキサン溶液)をアルミニウム原子換算で0.5mmol加えた。引き続き、先に調製した触媒溶液を0.10mL(0.0001mmol)加え、エチレン(0.8MPa-G)で加圧して反応を開始した。同圧力でエチレンを供給しながら60℃で60分間反応させた後、少量のイソプロパノールを添加することにより反応を停止した。反応終了後、0.1規定塩酸水および純水で反応液を洗浄し、減圧下に液体窒素トラップを用いて低沸点成分(炭素原子数10以下の成分)を高沸点成分およびポリエチレンから分離し、ガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った。
【0207】
低沸点成分の生成量(炭素原子数10以下のα-オレフィン成分の生成量)は28mg、ポリエチレンの生成量は151mgであり、これらの生成物量合計から算出した触媒活性は1790(g-生成物/(mmol-Cr・hr))であった。低沸点成分のうち、1-ヘキセンの選択率は11.1質量%であり、1-オクテンの選択率は64.8質量%であり、1-オクテンの触媒活性は181(g-生成物/(mmol-Cr・hr))であった。結果を表1に示す。
【0208】
[実施例2~6]
化合物(B-1)の代わりに上記の合成例で得られた化合物(B-2)~(B-6)をそれぞれ個々に用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエチレンの多量化反応を行った。結果を表1に示す。
【0209】
[実施例7~12]
反応温度を90℃で行った以外は、実施例1~6と同様にしてエチレンの多量化反応を行った。結果を表1に示す。
【0210】
【表1】
【0211】
[比較例1]
化合物(B-1)の代わりに下記式(O-1)で表される化合物をそれぞれ個々に用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエチレンの多量化反応を行った。結果を表2に示す。
【0212】
【化15】
【0213】
[比較例2]
反応温度を90℃にした以外は比較例1と同様にしてエチレンの多量化反応を行った。結果を表2に示す。
【0214】
【表2】
【0215】
表1および表2に示されるとおり、実施例1~12の本発明に係るオレフィン多量体の製造方法は、比較例1および2のオレフィン多量体の製造方法に比べて、触媒活性を増大させ、かつ、得られるオレフィン多量体の選択性および/またはオレフィン多量体の生産効率に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明のオレフィン多量化用触媒は優れた活性を有し、特に1-オクテン等のオレフィン多量体の選択性や生産効率が高く、オレフィン多量体の製造において極めて有用である。したがって、本発明は工業的に極めて高い価値がある。